JP3698375B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大容量の電力変換装置における、装置保護用のヒューズの並列接続に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に「サイリスタ応用ハンドブック」(日刊工業新聞社発行)3.3.4ヒューズによる保護P.85〜P.88で記載のように、自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置では、短絡電流による素子保護のためヒューズを適用する。
【0003】
図5は従来の自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。図において、11は自己消弧型スイッチング素子、12a〜12nはこの自己消弧型スイッチング素子11に対しn個並列に接続されたヒューズであり、回路条件で決まる通電電流最大値がヒューズ12a〜12nのうちの1個の定格容量を超える場合、当該ヒューズは溶断されるようになっている。13は複数のヒューズ12a〜12nを並列に接続するための支持導体であり、この支持導体13と自己消弧型スイッチング素子11とは直列に接続されている。14は自己消弧型スイッチング素子11が破壊に至るようなストレスを与えないように電流上昇率を抑制するため、自己消弧型スイッチング素子11に対して直列に接続されたリアクトル、15はリアクトル14により発生する磁束である。
【0004】
図6,図7は自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す回路図であり、図6は正面から、図7は側面から見た場合を示している。図において、Lはリアクトル14のインダクタンス、ILはリアクトル14を流れる電流、Ia,Ib,Ic,Idはそれぞれヒューズ12a,12b,12c,12dを流れる電流である。尚、図6においては例としてヒューズの数が4個の場合を示している。
【0005】
次に動作について説明する。図5において、自己消弧型スイッチング素子11が異常動作をしたとき、短絡電流が流れてヒューズ12a〜12nが溶断し、装置の事故の拡大を防止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の大容量の電力変換装置は以上のように構成されているので、図5の自己消弧型スイッチング素子11がオン、あるいはオフすることにより、リアクトル14に流れる負荷電流が変化するので、リアクトル14により発生する磁束15も変化する。
【0007】
ここで、支持導体13は図7の側面の回路図で示すように、リアクトル14の中心線Oを含む同一平面上に接続されておらず前後方向にずれているため、変化する磁束15は導体13に対して図5においてX方向にある角度をもって鎖交する。よって各ヒューズ12a〜12nには、その磁束15の変化を妨げる方向に誘導起電力が生じる。例えば、図5で示すように支持導体13に鎖交する磁束がX軸の負方向に(紙面表から裏へ向かって)増加するならば、ヒューズ12aには矢印A方向を正とする誘導起電力が生じ、ヒューズ12nにも矢印B方向を正とする誘導起電力が生じる。従って、導体13には、矢印方向に誘導電流Iが流れる。
【0008】
このような状態を図6、図7の回路図で説明する。リアクトル14に電流ILが流れると図7に示すように磁束15が発生し、この磁束15により誘導起電力が発生するため電流Iが流れる。ILが全て理想的にヒューズ12a,12b,12c,12dに分流したとすれば、Ia=IL/4+I,Id=IL/4−Iとなり、ヒューズ12a,12dで流れる電流が異なるため、ヒューズ12a,12d間で温度差が生じる。
【0009】
このように、リアクトル14に流れる負荷電流が各ヒューズ12a〜12dに理想的に分流されても、誘導電流Iが流れるため、各ヒューズに流れる電流はアンバランスになり、各ヒューズに温度差が生じ、場合によっては多く流れる方のヒューズが不正に溶断するという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、リアクトル14による磁束の変化により生ずる各ヒューズ12a〜12nに流れる誘導電流をなくし、負荷電流が各ヒューズ12a〜12nに均等に分流することにより、一部のヒューズのみが不正に溶断しなくなるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係る電力変換装置は、リアクトルの中心線を含む同一平面上に複数のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続したものである。
【0012】
又、この発明の請求項2に係る電力変換装置は、リアクトルの中心線から等距離の位置に複数個のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続したものである。
【0013】
更に、この発明の請求項3に係る電力変換装置は、リアクトルの中心線に対し平行にかつリアクトルと隣り合う位置に複数のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施形態による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。図において、1は自己消弧型スイッチング素子、2a〜2nは自己消弧型スイッチング素子1に対しn個並列に接続されたヒューズであり、回路条件で決まる通電電流最大値がヒューズ2a〜2nのうちの1個の定格容量を超える場合、当該ヒューズは溶断されるようになっている。3は複数のヒューズ2a〜2nを並列に接続するための支持導体であり、この支持導体3と自己消弧型スイッチング素子1とは直列に接続されている。4は自己消弧型スイッチング素子1が破壊に至るようなストレスを与えないように電流上昇率を抑制するため、自己消弧型スイッチング素子1に対して直列に接続されたリアクトル、5はリアクトル4により発生する磁束である。
【0015】
ここにおいて、各ヒューズ2a〜2nはリアクトル4の中心線Oを含む同一平面上に配置して、それぞれを支持導体3によって並列に接続し、更に支持導体3とリアクトル4とを直列に接続するものである。
【0016】
次に動作について説明する。図1において、自己消弧型スイッチング素子1が異常動作をしたとき、短絡電流が流れてヒューズ2a〜2nが溶断し、装置の事故の拡大を防止する。
【0017】
そして、自己消弧型スイッチング素子1がオン、あるいはオフすることにより、リアクトル4に流れる負荷電流が変化し、それに伴いリアクトル4から発生する磁束5も変化する。
【0018】
しかし本発明においては、上記に示したように、リアクトル4の中心線Oを含む同一平面上に各ヒューズ2a〜2nを並列に接続する支持導体3が構成されているので、磁束5は支持導体3あるいは各ヒューズ2a〜2nに誘導起電力を発生させる方向(X軸方向)に鎖交しない。従って各ヒューズ2a〜2nには誘導電流は流れず、リアクトル4に流れる負荷電流は各ヒューズ2a〜2nに均等に分流するので、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断するようなことがない。更にヒューズ寸法が小さいうちはこのような構造でもアンバランスは改善することができ、コストアップすることなく各ヒューズ間の温度差を小さくすることのできる、自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を得ることができる。
【0019】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図であり、ヒューズ4個を使用した場合を示している。図において、1は自己消弧型スイッチング素子、2a〜2dはヒューズ、3は複数のヒューズ2a〜2dを並列接続した支持導体、4はリアクトルである。
【0020】
本発明によれば、リアクトル4の中心線Oと各ヒューズ2a〜2dまでの距離が等しくなるように、各ヒューズ2a〜2dを等間隔に配置して並列接続しており、更に導体3の中心とリアクトル4を中心線上Oで接続する。
【0021】
次に動作について説明する。
【0022】
図2の自己消弧型スイッチング素子1がオン、あるいはオフすることにより、リアクトル4に流れる負荷電流が変化し、それに伴いリアクトル4から発生する磁束5も変化する。
【0023】
図2で示すように磁束5は、中心線Oからある角度で各ヒューズ2a〜2dに等しく鎖交するので、各ヒューズ2a〜2dに発生する誘導起電力は同じ大きさで、同じ向きとなるためお互いに打ち消し合う。従って各ヒューズ2a〜2dには誘導電流は流れず、リアクトル4に流れる負荷電流は各ヒューズ2a〜2dに均等に分流するので、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断するようなことがない。
【0024】
このことを図3の自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す回路図で説明する。図において、Lはリアクトル4のインダクタンス、ILはリアクトル4を流れる電流、Ia,Ib,Ic,Idはそれぞれヒューズ2a,2b,2c,2dを流れる電流である。
【0025】
図2に示すように、ヒューズ2a,2b,2c,2dは中心線Oから等しい距離に配置されているので、磁束5が各ヒューズに鎖交しても、ヒューズ2a,2b,2c,2dに発生する誘導起電力は同じ大きさでありかつ同じ向きとなるので、誘導起電力により発生する電流Iはお互いに打ち消し合い、Ia=Ib=Ic=Id=IL/4となり、リアクトル4に流れる負荷電流ILは各ヒューズに均等に分流するのである。
【0026】
尚、上記においては、ヒューズが4個の場合を示したが、2個以上の複数個のヒューズを中心線Oに対してそれぞれ等距離に(理想的には点対称に)配置すれば、誘導起電力により発生する電流はお互いに打ち消されることとなる。
【0027】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図であり、ヒューズ4個を使用した場合を示している。図において、1は自己消弧型スイッチング素子、2a〜2dはヒューズ、3は複数のヒューズ2a〜2dを並列接続した支持導体、4はリアクトルである。
【0028】
図に示すように、各ヒューズ2a〜2dをリアクトル4の中心線Oに対し平行にかつリアクトル4と隣り合うように各々を配置し、支持導体3で並列接続する。
【0029】
そして、支持導体3の中心とリアクトル4の中心線Oで接続する。
【0030】
次に動作について説明する。
【0031】
自己消弧型スイッチング素子1がオン、あるいはオフすることにより、リアクトル4に流れる負荷電流が変化し、それに伴いリアクトル4から発生する磁束5も変化する。
【0032】
図4で示すように、磁束5は、各ヒューズ2a〜2dに誘導起電力を発生させる方向に鎖交しない。従って、各ヒューズ2a〜2dに誘導電流は流れず、リアクトル4に流れる負荷電流は各ヒューズ2a〜2dに均等に分流するので、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断するようなことがない。
【0033】
尚、図4においては、リアクトル4の中心線Oから4個のヒューズ2a〜2dまでの距離が等しくなるように各ヒューズを配置した場合を示したが、磁束5は各ヒューズに誘導起電力を発生させる方向に鎖交しないので、距離を等しく配置する必要はない。ただし万全を期すため、各ヒューズをリアクトル4の中心線から等しい距離に配置すれば有効であることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項1に係る電力変換装置によれば、リアクトルの中心線を含む同一平面上に複数のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続することにより、各ヒューズがリアクトルから発生する磁束の影響を受けないように構成されているので、各ヒューズに誘導電流が流れず、リアクトルに流れる負荷電流は均等に各ヒューズに分流し、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断するようなことがない。更にヒューズ寸法が小さいうちはこのような構造でもアンバランスは改善することができ、コストアップすることなく各ヒューズ間の温度差を小さくすることのできる、自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を得ることができる。
【0035】
又、この発明の請求項2に係る電力変換装置によれば、リアクトルの中心線から等距離の位置に複数個のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続し、リアクトルから発生する磁束の影響が各ヒューズに均等に及ぶようにしたので、各ヒューズに生じる誘導起電力の向きと大きさが等しくなり誘導電流は打ち消し合う。従って、リアクトルに流れる負荷電流は各ヒューズに均等に分流するため、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断することがなくなる効果がある。
【0036】
更に、この発明の請求項3に係る電力変換装置によれば、リアクトルの中心線に対し平行にかつリアクトルと隣り合う位置に複数のヒューズを配置し、これらヒューズを並列に接続した支持導体とリアクトルとスイッチング素子とを直列に接続し、リアクトルによる磁束が各ヒューズに誘導起電力を発生させる方向に鎖交しないようにしたので、リアクトルに流れる負荷電流は各ヒューズに均等に分流し、各ヒューズには温度差が生じず、電流が多く流れる特定のヒューズが不正に溶断することがなくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態2による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。
【図3】 この発明の実施の形態2による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置の動作を説明するための回路図である。
【図4】 この発明の実施の形態3による自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。
【図5】 この発明の従来の自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置を示す斜視図である。
【図6】 従来の自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置の動作を説明するための回路図である。
【図7】 従来の自己消弧型スイッチング素子を利用した電力変換装置の動作を説明するための回路図、図6を側面からみた図である。
【符号の説明】
1 スイッチング素子、2a〜2n ヒューズ、4 リアクトル。

Claims (3)

  1. 複数のヒューズを並列に接続した回路と、スイッチング素子と、リアクトルとを直列に接続した回路を有する電力変換装置において、上記リアクトルの中心線を含む同一平面上に上記複数のヒューズを配置したことを特徴とする電力変換装置。
  2. 複数のヒューズを並列に接続した回路と、スイッチング素子と、リアクトルとを直列に接続した回路を有する電力変換装置において、上記リアクトルの中心線から等距離の位置に上記複数のヒューズを配置したことを特徴とする電力変換装置。
  3. 複数のヒューズを並列に接続した回路と、スイッチング素子と、リアクトルとを直列に接続した回路を有する電力変換装置において、上記各ヒューズを上記リアクトルの中心線に対し平行にかつ上記リアクトルと隣り合う位置に配置したことを特徴とする電力変換装置。
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