JP3698260B2 - フラットシールド電線のシールド処理構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットシールド電線のシールド被覆部材と接地線とを接続するフラットシールド電線のシールド処理構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、フラットシールド電線のシールド処理構造として、フラットシールド電線のシールド被覆部材を一対の樹脂部材を利用して接地線の導電線に超音波ホーンを用いて電気的に接続するものを提案した。以下、このシールド処理構造を、図6〜図10を用いて説明する。
【0003】
図6に示すように、フラットシールド電線100は、芯線101がそれぞれ絶縁内皮102で覆われ、並列に配置された2本のシールド芯線103と、この2本のシールド芯線103の外周を覆い、かつ、2本のシールド芯線103の並設方向の外側に接地線用接触部104aを有する導電体のシールド被覆部材104と、接地線用接触部104aの内部に配置されたドレーン線105と、シールド被覆部材104のさらに外周を被う絶縁外皮106とから構成されている。
【0004】
導電性のシールド被覆部材104は内層に導電性金属箔107が配置され、外層に絶縁性の箔補強シート108が配置された2層構造を有し、箔補強シート108は導電性金属箔107をシート状に製造するのに必要不可欠なものである。
【0005】
一対の樹脂部材110,111は、互いの接合面110a,111aにフラットシールド電線100のドレーン線105の箇所の外形断面形状に対応する凹部110b,111bがそれぞれ形成されている。
【0006】
また、超音波ホーン115は、下側支持台115aと、この真上に配置された超音波ホーン本体115bとから構成されている。
【0007】
次に、シールド処理手順を説明する。
【0008】
図7及び図8に示すように、下方の樹脂部材111を超音波ホーン115の下側支持台115aに設置し、その上からフラットシールド電線100を載置し、その上に接地線113の一端側を載置し、更にその上から上方の樹脂部材110を被せる。このようにして一対の樹脂部材110,111の凹部110b,111b内にフラットシールド電線100のドレーン線105の外側箇所を配置し、かつ、このフラットシールド電線100と上方の樹脂部材110との間に接地線113の一端側を介在させて超音波加振セット状態とする。
【0009】
この超音波加振セット状態で一対の樹脂部材110,111間に圧縮力を作用させつつ超音波ホーン115で加振すると、フラットシールド電線100の絶縁外皮106及び箔補強シート108と接地線113の絶縁外皮113bが振動エネルギーによる発熱によって溶融飛散され、接地線113の導電線113aとフラットシールド電線100のシールド被覆部材104の導電性金属箔107及びドレーン線105とが電気的に接触される。
【0010】
また、一対の樹脂部材110,111の接合面110a,111aの各接触部分や、一対の樹脂部材110,111の凹部110b,111bの内周面とフラットシールド電線100の絶縁外皮106との接触部分や、接地線113の絶縁樹脂113bと一対の樹脂部材110,111との接触部分が振動エネルギーによる発熱によって溶融し、この溶融された部分が超音波加振終了後に固化されることによって、一対の樹脂部材110,111とフラットシールド電線100及び接地線113がそれぞれ互いに固定される(図9及び図10参照)。
【0011】
このシールド処理構造によれば、フラットシールド電線100や接地線113の絶縁外皮106,113bの皮剥きを行う必要がなく、下方の樹脂部材111、フラットシールド電線100、接地線113、上方の樹脂部材110の順に組み付けて超音波加振を行えば良いので、工程数が少なく、かつ、複雑な手作業もなく、そのため自動化も可能なものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来のシールド処理構造では、シールド芯線103の外側位置に平行にドレーン線105を設ける必要があるため、フラットシールド電線100の部品点数が多くなると共に、重量のかさむものになるという問題があった。
【0013】
また、超音波溶着の際に、フラットシールド電線100側では絶縁外皮106の他に箔補強シート108が溶融飛散されなければ、接地線113の導電線113aとフラットシールド電線100の導電性金属箔107との接触面が得られないため、電気的な接触が不安定であるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、部品点数の削減及び軽量化を図ることができると共に、接地線の導電線との間で安定した電気的な接触状態を得ることができるフラットシールド電線のシールド処理構造を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、芯線がそれぞれ絶縁内皮で覆われ、並列に配置された複数のシールド芯線と、この複数のシールド芯線の外周を覆い、内層に絶縁性の箔補強シートが配置され、外層に導電性金属箔が配置されたシールド被覆部材と、このシールド被覆部材のさらに外周を被う絶縁外皮とを有するフラットシールド電線と、互いの接合面同士を突き合わせた状態で前記フラットシールド電線の前記少なくとも1箇所の前記シールド芯線の外側箇所に接触する一対の樹脂部材と、接地線とを備え、前記一対の樹脂部材間に前記フラットシールド電線を挟み、かつ、前記フラットシールド電線と前記一対の樹脂部材のうちの一方の樹脂部材との間に前記接地線の一端側を介在させ、この状態で前記一対の樹脂部材間に圧縮力を作用させつつ超音波加振し、少なくとも前記絶縁外皮を溶融飛散させて前記接地線の導電線と前記シールド被覆部材の前記導電性金属箔との接触部分を形成したことを特徴とする。
【0016】
このフラットシールド電線のシールド処理構造では、一対の樹脂部材の間にフラットシールド電線を配置し、かつ、このフラットシールド電線と一方の樹脂部材との間に接地線の一端側を配置し、このように配置した一対の樹脂部材間を超音波加振すると、振動エネルギーによる内部発熱によって例えば双方の絶縁外皮が溶融飛散されて接地線の導電線と導電性金属箔とが接触され、これにより、ドレーン線を用いることなくシールド処理構造が形成され、また、超音波溶着の際に、フラットシールド電線側では絶縁外皮のみが溶融飛散されれば、接地線の導電線とフラットシールド電線の導電性金属箔との接触面が得られる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載のフラットシールド電線のシールド処理構造であって、前記箔補強シートはポリエステルシートであることを特徴とする。
【0018】
このフラットシールド電線のシールド処理構造では、請求項1の発明の作用に加え、フラットシールド電線の適度な柔軟性を確保しつつ導電性金属箔が強固に補強される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示し、図1はフラットシールド電線の断面図、図2は超音波加振に際して各部材の配置関係を示す斜視図、図3は超音波加振に際して各部材の配置関係を示す断面図、図4はシールド処理構造が形成されたフラットシールド電線の斜視図、図5は図4中A−A線に沿う断面図である。
【0021】
本発明の一実施形態のシールド処理構造は、フラットシールド電線1のシールド被覆部材6を一対の樹脂部材10,11を利用して接地線13の導電線13aに超音波ホーン15を用いて電気的に接続するようにしたものである。
【0022】
図1に示すように、フラットシールド電線1は、芯線2がそれぞれ絶縁内皮3で覆われ、並列に配置された3本のシールド芯線4と、この3本のシールド芯線4の外周を被う導電性のシールド被覆部材6と、このシールド被覆部材6のさらに外周を被う絶縁外皮7とから構成されている。
【0023】
シールド被覆部材6は内層に絶縁性の箔補強シート8が配置され、外層に導電性金属箔9が配置された2層構造を有し、箔補強シート8は導電性金属箔9をシート状に製造するのに必要不可欠なものである。箔補強シート8は例えばポリエステルシートにて形成されている。導電性金属箔9はアルミニューム箔や銅箔等にて形成される。また、絶縁内皮3及び絶縁外皮7は合成樹脂製の絶縁体にて形成され、芯線2は導電性金属箔8と同様に導電体にて形成されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、一対の樹脂部材10,11はそれぞれ同一形状の合成樹脂製のブロックであり、互いの接合面10a,11aにフラットシールド電線1のシールド芯線4の外側箇所の外形断面形状にほぼ対応する凹部10b,11bがそれぞれ形成されている。この各凹部10b,11bはシールド芯線4の外側箇所の外形半径を半径とするほぼ半円弧状の溝になっている。
【0025】
また、樹脂部材10,11の物性としては、絶縁外皮7等より溶融しにくく、アクリル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)系樹脂、PC(ポリカーボネート)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)系樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)系樹脂等であり、一般に絶縁外皮7等で使用される塩化ビニル等に比較して硬質である。導電性及び導電安全性の点からは、上記に掲げた全ての樹脂に実用性が求められ、外観性及び絶縁性を含めて判断した場合には、特にPEI(ポリエーテルイミド)系樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)系樹脂が適する。
【0026】
図3に示すように、接地線13は、導電線13aと、この導電線13aの外周を覆う絶縁外皮13bとから構成されている。また、図2,図3に示すように、超音波ホーン15は、下方に配置される樹脂部材11を位置決めできる下側支持台15aと、この下側支持台15aの真上に配置され、下方に押圧力を作用させながら超音波振動を印加できる超音波ホーン本体15bとから構成されている。
【0027】
次に、シールド処理手順を説明する。
【0028】
図2及び図3に示すように、下方の樹脂部材11を超音波ホーン15の下側支持台15aに設置し、その上からフラットシールド電線1の端部付近を載置し、その上に接地線13の一端側を載置し、更にその上から上方の樹脂部材10を被せる。このようにして一対の樹脂部材10,11の凹部10b,11b内にフラットシールド電線1の一部を配置し、かつ、このフラットシールド電線1の上方位置と上方の樹脂部材11との間に接地線13の一端側を介在させる。
【0029】
次に、超音波ホーン本体15bを降下させて一対の樹脂部材10,11間に圧縮力を作用させつつ超音波ホーン15で加振すると、フラットシールド電線1の絶縁外皮7と接地線13の絶縁外皮13bが振動エネルギーの内部発熱によって溶融飛散され、図5に示すように、接地線13の導電線13aとフラットシールド電線1の導電性金属箔9とが電気的に接触される。
【0030】
また、図5に示すように、一対の樹脂部材10,11の接合面10a,11aの各接触部分や、一対の樹脂部材10,11の凹部10b,11bの内周面とフラットシールド電線1の絶縁外皮7との接触部分や、接地線13の絶縁外皮13bと一対の樹脂部材10,11との接触部分が振動エネルギーの内部発熱によって溶融し、この溶融された部分が超音波加振終了後に固化されることによって一対の樹脂部材10,11とフラットシールド電線1及び接地線13がそれぞれ互いに固定される。
【0031】
このフラットシールド電線1のシールド処理構造では、一対の樹脂部材10,11の間にフラットシールド電線1を配置し、かつ、このフラットシールド電線1の上面位置と上方の樹脂部材10との間に接地線13の一端側を配置し、このように配置した一対の樹脂部材10,11間を超音波加振すると、振動エネルギーによる内部発熱によって絶縁外皮13b,7が溶融飛散されて接地線13の導電線13aと導電性金属箔9とが接触される。これにより、従来例のように、ドレーン線を用いることなくシールド処理構造を形成することができる。このため、部品点数の削減及び軽量化を図ることができる。また、超音波溶着の際に、フラットシールド電線1側では絶縁外皮7のみを溶融飛散させれば、接地線13の導電線13aとフラットシールド電線1の導電性金属箔9との接触面を得ることができるため、安定した電気的な接触状態を得ることができる。
【0032】
また、従来例のフラットシールド電線と比較した場合、同じ体積で1本多いシールド芯線4を有するフラットシールド電線1を形成することができる。即ち、従来のフラットシールド電線100は、2本のシールド芯線104及び1本のドレーン線105を有する構造であるが、本実施形態のフラットシールド電線1は同じ体積であるにも係わらず3本のシールド芯線4を有する構造となる。
【0033】
さらに、箔補強シート8をポリエステルシートにて形成したので、フラットシールド電線1の適度な柔軟性を確保しつつ導電性金属箔9を強固に補強することができる。このため、フラットシールド電線1と接地線13との接続信頼性を高めつつフラットシールド電線1の配索レイアウトを容易にすることができる。
【0034】
また、接地線13の導電線13aとして錫メッキ電線等の低融点金属メッキ線を用いれば、振動エネルギーによって低融点金属メッキ線が一部溶融して導電性金属箔9と接触するため、フラットシールド電線1の導電性金属箔9と接地線13の導電線13aとの接触箇所の信頼性が向上する。
【0035】
さらに、接地線13を樹脂部材10とフラットシールド電線1との間に配置する際に、絶縁外皮13bを剥ぎ取らない状態で配置したが、絶縁外皮13bを剥ぎ取ったものを配置するようにしても良い。
【0036】
また、一対の樹脂部材10,11は、1箇所のシールド芯線4の外側箇所にのみ接触し、他の2箇所のシールド芯線4の外側箇所に接触せずに超音波加振によりその部分の絶縁外皮7が溶融することがないので、超音波加振によって3本全てのシールド芯線4の外側箇所の絶縁外皮7が破れたり切れたりすることがないため、電線強度の低減を防止することができる。
【0037】
さらに、一対の樹脂部材10,11によって1箇所のシールド芯線4の外側箇所のみを挟持することからシールド芯線4の本数にかかわらずに同一の樹脂部材10,11を使用することができるため、樹脂部材10,11の共有化が可能である。また、この一対の樹脂部材10,11は3本のシールド芯線4の外側箇所の全体を挟持する大きな形状に形成しても良い。
【0038】
尚、前記実施形態によれば、フラットシールド電線1は、3本のシールド芯線4を有するものについて説明したが、2本でも4本以上のシールド芯線4を有するものでも同様に本発明が適用できることは勿論である。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、一対の樹脂部材の間にフラットシールド電線を配置し、かつ、このフラットシールド電線と一方の樹脂部材との間に接地線の一端側を配置し、このように配置した一対の樹脂部材間を超音波加振すると、振動エネルギーによる内部発熱によって双方の絶縁外皮を溶融飛散させて接地線の導電線と導電性金属箔とを接触させることにより、ドレーン線を用いることなくシールド処理構造を形成することができる。このため、部品点数の削減及び軽量化を図ることができる。また、超音波溶着の際に、フラットシールド電線側では絶縁外皮のみを溶融飛散させれば、接地線の導電線とフラットシールド電線の導電性金属箔との接触面を得ることができるため、接地線の導電線との間で安定した電気的な接触状態を得ることができる。
【0040】
請求項2の発明によれば、箔補強シートをポリエステルシートとしたので、フラットシールド電線の適度な柔軟性を確保しつつ導電性金属箔を強固に補強することができる。従って、フラットシールド電線と接地線との接続信頼性を高めつつフラットシールド電線の配索レイアウトを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示し、フラットシールド電線の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、超音波加振に際して各部材の配置関係を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、超音波加振に際して各部材の配置関係を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、シールド処理構造が形成されたフラットシールド電線の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、図4中A−A線に沿う断面図である。
【図6】従来例を示し、フラットシールド電線の断面図である。
【図7】従来例を示し、超音波加振に際して各部材の配置関係を示す斜視図である。
【図8】従来例を示し、超音波加振に際して各部材の配置関係を示す断面図である。
【図9】従来例を示し、シールド処理構造が形成されたフラットシールド電線の斜視図である。
【図10】従来例を示し、図9中B−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 フラットシールド電線
2 芯線
3 絶縁内皮
4 シールド芯線
6 シールド被覆部材
7 絶縁外皮
8 箔補強シート
9 導電性金属箔
10,11 樹脂部材
13 接地線
13a 導電線
13b 絶縁外皮
15 超音波ホーン
Claims (2)
- 芯線がそれぞれ絶縁内皮で覆われ、並列に配置された複数のシールド芯線と、この複数のシールド芯線の外周を覆い、内層に絶縁性の箔補強シートが配置され、外層に導電性金属箔が配置されたシールド被覆部材と、このシールド被覆部材のさらに外周を被う絶縁外皮とを有するフラットシールド電線と、互いの接合面同士を突き合わせた状態で前記フラットシールド電線の少なくとも1箇所の前記シールド芯線の外側箇所に接触する一対の樹脂部材と、接地線とを備え、
前記一対の樹脂部材間に前記フラットシールド電線を挟み、かつ、前記フラットシールド電線と前記一対の樹脂部材のうちの一方の樹脂部材との間に前記接地線の一端側を介在させ、この状態で前記一対の樹脂部材間に圧縮力を作用させつつ超音波加振し、少なくとも前記絶縁外皮を溶融飛散させて前記接地線の導電線と前記シールド被覆部材の前記導電性金属箔との接触部分を形成したことを特徴とするフラットシールド電線のシールド処理構造。 - 請求項1記載のフラットシールド電線のシールド処理構造であって、
前記箔補強シートはポリエステルシートであることを特徴とするフラットシールド電線のシールド処理構造。
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