JP3697689B2 - 受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、受圧板と、その受圧板を使用した斜面安定化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グラウンドアンカー(以下、アンカーという)の抑止力によって斜面の安定化を図る斜面安定化工法が従来から実施されている。アンカーは、地盤に緊張力を導入し、地盤を締め付けたり引き止めたりすることによって地盤を安定させる方法であるため、アンカーの緊張力を斜面に伝達するための受圧板が必要になる。受圧板には、法枠のように連続したタイプのものやアンカー毎に設置する独立タイプのものがある。また、製造方法によって、現場打ちタイプとプレキャストタイプに区別できる。
【0003】
さらに独立タイプの受圧板は、プレキャストタイプでは十字型、正方形型、現場打ちタイプでは十字型、正方形型、I型のものが従来から使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の斜面安定化工法にあっては、次のような問題点がある。
<イ>十字型や正方形型の受圧板は、地山に凹凸がある場合はひび割れが発生しやすい。また、二方向性の梁となるため、交差部にひび割れが発生しやすい。
<ロ>十字型や正方形型の受圧板は、斜面に設置したときに造形的な特性から人工的な印象や複雑な印象を与える。
<ハ>独立タイプの受圧板の間に植生基盤を配置する場合は、受圧板間の連結又は金網や鉄筋等の植生基盤の支持材が別途必要になる。
<ニ>I型の受圧板を独立して使用する場合、地震時に横方向の力が作用すると安定性を失うおそれがある。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、ひび割れの発生しにくい構造の受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法を提供することを目的とする。
また、シンプルな形状で景観に優れた受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法を提供することを目的とする。
さらに、設置後の安定性が高い受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法を提供することを目的とする。特に、地震時など横方向の外力が作用した場合でも安定性が維持できる受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の受圧板は、法面への設置面がほぼ長方形であり、アンカー孔を貫通した受圧板を、対向する2枚の壁体と、該壁体間に配置する本体部とで構成し、本体部は、アンカー貫通孔の周辺を最大断面厚とし、端部方向に向かって断面厚が減少する形状に形成した、斜面安定化工法に使用する受圧板を特徴とするものである。
【0007】
また本発明の受圧板は、法面への設置面がほぼ長方形であり、アンカー孔を貫通した受圧板を、対向する2枚の壁体と、該壁体間に配置する本体部とで構成し、本体部は、アンカー貫通孔の周辺を最大断面厚とし、端部方向に向かって断面厚が減少する形状に形成し、さらに受圧板には、法面に設置した受圧板間を連結する連結材を配置する、連結材挿通部を形成した、斜面安定化工法に使用する受圧板を特徴とするものである。
【0008】
また本発明の斜面安定化工法は、アンカーと受圧板を使用した斜面安定化工法において、前記記載の受圧板を使用し、受圧板をその長手方向が斜面方向とほぼ一致するように斜面上に設置し、斜面方向と略直交する方向に間隔をおいて並べた受圧板間を、受圧板に形成した連結材挿通部を介して、その長手方向の端部付近で連結材により連結する斜面安定化工法を特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
<1>受圧板の全体の構成。
I型受圧板1は、接地面が長方形になる受圧板である。例えばI型受圧板1には四角柱状のコンクリート構造物が使用できる。I型受圧板1はそのほぼ中央部に、受圧板の上面から下面に貫通するアンカー貫通孔13を有する。
【0011】
<2>受圧板の形状。
図2にI型受圧板1aの実施例の斜視図を示す。I型受圧板1aは、対向する2枚の壁体11と、該壁体11間に配置する本体部12で構成する。本体部12はアンカー貫通孔13の周辺を最大断面厚とし、端部方向に向かって断面厚が減少する構成とする。
このような構成とすることでI型受圧板1aの重量を大幅に軽減することができる。
また、2枚の壁体11が受圧板の剛性を高めるとともに、受圧板の外観を直線を基調とした規律あるものにする。さらに壁体11間に植生基盤を配置することで、斜面のほぼ全面を緑化することも可能である。
【0012】
<3>受圧板の他の実施例。
受圧板1の他の実施例として、受圧板のほぼ中央部にI型と略直交する方向に突起部17を設けたI型受圧板1dが使用できる(図5参照)。
突起部17を設けることにより設置時又は緊張時の受圧板の安定性を向上させることができる。突起部17も受圧板の他の部分と同様に鉄筋コンクリート等で形成し、アンカー3の緊張力を支持する面として使用することもできるが、受圧板の安定性を高めることだけを目的とする場合は、ひび割れが発生しない鋼板等の板材で突起部を形成してもよい(図示せず)。
【0013】
<4>受圧板の材料。
受圧板1は、鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリート、高強度コンクリート等を材料にして製造する。I型受圧板1は、斜面上で現場打ちコンクリートにより構築することもできるが、予め工場などで製作しておくほうが好ましい。プレキャスト製にした場合に施工上、最も問題になるのがその重量であるが、重量に関する問題は上述したような軽量化が可能な構造を採用したり、高強度コンクリートを使用して部材厚を薄くしたりすることで対処が可能となる。
【0014】
<5>繊維補強コンクリートで製造する場合。
高強度コンクリートとして繊維補強セメント系混合材料等を使用してI型受圧板1を製作してもよい。
繊維補強セメント系混合材料としては、例えば、セメントと珪石の粉末、シリカフューム、珪砂、高性能減水剤に水を単位水量(出来上がりコンクリート容積1m3当たり)として180kg程度(水/セメントの比率が20〜22%程度)を加えた高強度セメント系マトリックスに、直径が0.1〜0.3mmで、長さが8〜12mm、引張り降伏応力度が2500〜2800N/mm2の超高強度鋼繊維を容積で2%程度混入して得られる圧縮強度200〜220MPa、曲げ強度40〜45MPa、付着強度15〜90MPa、透気係数2.5×10-18m2、弾性係数55GPaの特性を持つ繊維補強セメント系混合材料が使用できる。
【0015】
<6>連結材。
連結材2は、I型受圧板1間を斜面方向と直交する方向に連結する連結材料である。
連結材2は、斜面上に設置したI型受圧板1の上部及び下部に配置する。連結材2には、防食処理を施したケーブル、鉄筋、PC鋼棒が使用できる。また、鋼管、ストランド入りグラウトパイプ、H型鋼材など剛性の高い材料を使用することもできる。
ここで、ストランド入りグラウトパイプとはストランドを挿入した筒状の袋体にグラウトを注入して構築する棒材である。また、H型鋼材等のように鋼材を使用する場合は、その表面にモルタルを吹き付けたり、塗料を塗布したりして防食処理を施すのが好ましい。
【0016】
<7>連結の効果。
I型受圧板1間を連結材2で連結することで、I型受圧板1の設置後の安定性を高めることができる。
特に、本発明では上部及び下部の2箇所を連結しているため、I型受圧板1と連結材2から構成される枠の剛性も高まり、地震時など不規則に作用する横方向の荷重などにも耐えることができる。
【0017】
<8>連結装置。
受圧板1と連結材2の連結は、I型受圧板1に外力が作用した場合でもずれが生じないようにおこなう。
例えば、I型受圧板1aの側部に連結材挿通部の一種として、挿通孔14を設け(図2参照)、横方向に並んだ複数のI型受圧板1aの各挿通孔14にグラウト注入前のストランド入りグラウトパイプを挿入する。この状態でストランド入りグラウトパイプにグラウトを注入すると、挿通孔14内のストランド入りグラウトパイプが膨張し、I型受圧板1aに固定される。
【0018】
<9>他の連結手段。
なお、他の連結材2を使用する場合は、連結材2と挿通孔14の隙間にセメント系固化材などの充填材を充填し、連結材2をI型受圧板1aに固定することができる。
また、I型受圧板1bの長手方向の端部付近に、連結材挿通部の一種として、連結材2の配置方向にI型受圧板1bを横断する挿通溝15を設け、その溝に連結材2を設置することもできる(図3参照)。
この場合の連結材2の固定方法としては、ストランド入りグラウトパイプを膨張させて固定する方法の他に、挿通溝15の内部に公知の把持具を設置して連結材2をI型受圧板1bに固定する方法も採用できる。
なお、I型受圧板1の側面にリング状の金具などを取り付けて連結装置とすることもできる。
【0019】
<10>他の連結手段。
また、斜面方向に並べて設置したI型受圧板1cの上端と下端を連結具16で連結する場合は、その連結具に連結材2を取り付けてもよい(図4参照)。この場合は連結材2が上下のI型受圧板1cで兼用となるため、連結材2の本数を減らすことができる。
【0020】
<11>施工方法。
以下図面を参照しながら本発明の施工方法について説明する。
【0021】
<12>アンカーの打設。
掘削した斜面の所定の位置にアンカー3を打設する。アンカー3の打設間隔、打設本数は設計により任意に決定できる。本発明においてアンカー3は、斜面方向のラインとそれに直交する方向のラインが整列するように打設するのが好ましい。
【0022】
<13>I型受圧板の設置。
斜面上にI型受圧板1を設置する。
I型受圧板1は、クレーン等で吊り上げて所定の位置に設置する。I型受圧板1を設置するときに、打設したアンカー3の頭部をアンカー貫通孔13に挿入する。
I型受圧板1は、長手方向が斜面方向(上下方向)とほぼ一致するように設置するのが好ましい。I型受圧板1を設置した後に、アンカー3を緊張し、受圧板に定着する。なお、アンカー3の緊張・定着は、後述する連結材2の取り付け作業後でもよい。
【0023】
<14>連結作業。
設置したI型受圧板1間を連結材2で連結する。連結材2を挿通孔14に貫通させる場合は、複数のI型受圧板1を一度に連結することができる。連結材2を配置した後は、連結材2を支持材として連結材2内に植生土のう等の植生基盤を配置することもできる。この結果、斜面の景観はより一層向上する。
【0024】
【発明の効果】
本発明の受圧板とその受圧板を使用した斜面安定化工法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>I型受圧板を使用する。I型受圧板一方向性の梁であるためひび割れが発生しにくい。
<ロ>I型受圧板を使用するため縦のラインのみが山肌に現れ、複雑な印象が払拭される。このため、施工後の斜面の景観がよい。
<ハ>I型受圧板の両端部付近を横方向に設置した他のI型受圧板と連結する。このため、横方向の外力が作用した場合でも受圧板の安定性が維持できる。
<ニ>I型受圧板間に連結材を配置する。このため、連結材を支持材として植生基盤を設置することができる。
<ホ>2枚の壁体でI型受圧板を構成した場合、大幅な軽量化が図れる。また、直線を基本とした2枚の壁体が規律ある外観を造り出すため景観もよくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の斜面安定化工法の実施例の説明図。
【図2】I型受圧板の実施例の斜視図。
【図3】挿通溝を設けたI型受圧板の実施例の斜視図。
【図4】I型受圧板を上下方向に連結した場合の実施例の斜視図。
【図5】突起部を有するI型受圧板の実施例の斜視図。
【符号の説明】
1・・・I型受圧板
11・・壁体
12・・本体部
13・・アンカー貫通孔
17・・突起部
2・・・連結材
3・・・アンカー
Claims (3)
- 法面への設置面がほぼ長方形であり、アンカー孔を貫通した受圧板を、
対向する2枚の壁体と、
該壁体間に配置する本体部とで構成し、
本体部は、
アンカー貫通孔の周辺を最大断面厚とし、端部方向に向かって断面厚が減少する形状に形成した、
斜面安定化工法に使用する受圧板。 - 法面への設置面がほぼ長方形であり、アンカー孔を貫通した受圧板を、
対向する2枚の壁体と、
該壁体間に配置する本体部とで構成し、
本体部は、
アンカー貫通孔の周辺を最大断面厚とし、端部方向に向かって断面厚が減少する形状に形成し、
さらに受圧板には、法面に設置した受圧板間を連結する連結材を配置する、連結材挿通部を形成した、
斜面安定化工法に使用する受圧板。 - アンカーと受圧板を使用した斜面安定化工法において、
請求項2記載の受圧板を使用し、
受圧板をその長手方向が斜面方向とほぼ一致するように斜面上に設置し、
斜面方向と略直交する方向に間隔をおいて並べた受圧板間を、
受圧板に形成した連結材挿通部を介して、
その長手方向の端部付近で連結材により連結することを特徴とする、
斜面安定化工法。
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