JP3697349B2 - 回転電機および回転電機の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸を軸受に対して抜止めする抜止部材を備えた回転電機および回転電機の製造方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えば回転電機には、回転軸を一対の軸受メタルによって回転可能に支持し、回転軸の端部に抜止用のEリングを装着した構成のものがある。しかしながら、この構成の場合、Eリングを押し拡げて回転軸の外周面に装着する面倒な作業を行う必要がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転軸の抜止作業を簡単に行うことができる回転電機および回転電機の製造方法を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の回転電機は、段部を有する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する一対の軸受と、前記回転軸の段部が挿入される挿入部を有する弾性変形可能な抜止部材と、前記抜止部材を前記回転軸の軸方向に対して位置規制する規制部材と、ステータコアの内周面に軸方向両側から圧入され前記一対の軸受を保持する一対のブラケットとを備え、前記回転軸には前記ステータコアの内部に位置して前記段部が設けられ、前記抜止部材は前記ステータコアの内部に収納され、前記一対のブラケットは前記抜止部材を軸方向両側から挟持することに基いて前記回転軸の軸方向に対して位置規制する規制部材に相当するものであるところに特徴を有している。
上記手段によれば、回転軸を軸受に挿入する際に抜止部材が回転軸により押圧されて弾性変形し、回転軸の段部が抜止部材の挿入部内に挿入される。このため、Eリングを押し拡げて回転軸に装着する面倒な作業を行う必要がなくなるので、回転軸の軸受に対する抜止作業性が向上する。また、ステータコアの内周面に軸方向両側から一対のブラケットを圧入すると、一対の軸受がステータコアに調芯状態で組付けられるので、軸受の組付作業性が向上する。また、ステータコアの内部に抜止部材を圧入・固定する必要がなくなるので、抜止部材のステータコアに対する組付作業性が向上する。
【0005】
請求項2記載の回転電機は、少なくとも一方の軸受がスプリングによって支持されているところに特徴を有している。
上記手段によれば、一方の軸受から抜止部材の挿入部を通して他方の軸受に回転軸を挿入するにあたって、回転軸の挿入方向が挿入部の内周面により案内されるので、回転軸の他方の軸受に対する挿入作業性が向上する。しかも、他方の軸受をスプリングによって支持すれば、回転軸の軸芯と他方の軸受の軸芯とがずれていても、スプリングが変形して他方の軸受がずれ動くので、回転軸の他方の軸受に対する挿入作業性が一層向上する。
【0008】
請求項3記載の回転電機は、少なくとも一方のブラケットに圧接する突部が抜止部材に設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、一方のブラケットを抜止部材の全域に接触させる場合に比べ、一方のブラケットと抜止部材との接触状態が安定するので、抜止部材が両ブラケットによって確実に挟持・固定される。
【0009】
請求項4記載の回転電機は、ステータコアが鋼板を軸方向へ積層することから構成され、軸方向両側に位置する各鋼板のばりが相手側へ指向しているところに特徴を有している。
上記手段によれば、例えばステータコアの内周面にブラケットを圧入するにあたって、ブラケットがばりに引掛かることが防止されるので、ブラケットの圧入作業性が向上する。
【0010】
請求項5記載の回転電機は、ステータコアの内周面に突部が設けられているところに特徴を有している。
上記手段によれば、例えばステータコアの内周面にブラケットを圧入するにあたって、突部がブラケットの外周面に食込むので、ブラケットがステータコアから抜難くなる。
【0011】
請求項6記載の回転電機は、抜止部材のうち挿入部の周縁部にテーパー部が設けられ、このテーパー部が回転軸の挿入開始端部から反対端部へ向かうに従って縮径する傾斜状をなしているところに特徴を有している。
上記手段によれば、回転軸がテーパー部によって挿入部内に案内されるので、回転軸の挿入部に対する挿入作業性が向上する。
【0012】
請求項7記載の回転電機の製造方法は、段部を有する回転軸と、一対のブラケットに保持された一対の軸受と、挿入部を有する弾性変形可能な抜止部材とを用い、ステータコアの内周面に軸方向一端部から一方のブラケットを圧入し、ステータコアの内周部に軸方向他端部から抜止部材を挿入し、ステータコアの内周面に軸方向他端部から他方のブラケットを圧入して両ブラケット間で抜止部材を挟持し、一方のブラケットの軸受あるいは他方のブラケットの軸受から抜止部材の挿入部を通して残りのブラケットの軸受に回転軸を挿入すると共に抜止部材の挿入部内に回転軸の段部を挿入するところに特徴を有している。
上記手段によれば、一方のブラケットの軸受あるいは他方のブラケットの軸受から残りのブラケットの軸受に回転軸を挿入するにあたって、抜止部材が回転軸により押圧され、弾性変形する。すると、回転軸の段部が抜止部材の挿入部内に挿入されるので、Eリングを押し拡げて回転軸に装着する面倒な作業を行うことなく回転軸が軸受に対して抜止めされる。しかも、回転軸の挿入方向が挿入部の内周面により案内されるので、回転軸の残りブラケットの軸受に対する挿入作業性が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図4に基づいて説明する。尚、本実施例は、冷蔵庫のファンを回転駆動するアウタロータ形のDCブラシレスモータに本発明を適用したものである。まず、図1において、合成樹脂製のベース1には合成樹脂製のケーシング2が固定されており、ケーシング2には円形状の凹部2a,複数の爪部2b(1個のみ図示する),円環状の凹部2cが形成され、円形状の凹部2aの底板には貫通孔2dが形成されている。
【0014】
ケーシング2には、規制部材および固定部材に相当する金属製のブラケット3が装着されている。このブラケット3は、図2に示すように、シャフト収納部3aとメタル収納部3bとから構成されたものであり、シャフト収納部3aは貫通孔3cを有する円筒状をなし、図1に示すように、ケーシング2の貫通孔2d内に嵌合されている。また、メタル収納部3bは、図2に示すように、円皿状をなしており、図1に示すように、ケーシング2の円形状の凹部2a内に嵌合されている。
【0015】
ブラケット3のメタル収納部3bの内周面には、図2に示すように、金属製のカバー4が嵌合されており、メタル収納部3bの開口部はカバー4により覆われている。このカバー4には突状のスプリング装着部4aが一体形成されており、スプリング装着部4aにはクッション5が貼付されている。
【0016】
スプリング装着部4aの外周面には圧縮コイルスプリング6の右端部が嵌合されており、スプリング6の左端部には合成樹脂製のメタル押え7が装着されている。また、カバー4内には軸受メタル8が収納されており、メタル押え7はスプリング6のばね力により軸受メタル8に係合し、軸受メタル8をブラケット3の内面に押付けている。
【0017】
ブラケット3には、メタル収納部3bの底面に位置して円環状のフェルト9が配設されている。また、カバー4の内周面には円筒状のフェルト10が配設されており、フェルト9および10には潤滑油が含浸されている。尚、符号11はブラケット3,カバー4,クッション5,スプリング6,メタル押え7,軸受メタル8,フェルト9および10から構成された第1の軸受組立を示している。
【0018】
ブラケット3には、図1に示すように、ステータコア12が装着されている。このステータコア12は、図3の(b)に示すように、複数枚の鋼板12aを軸方向へ積層してなるものであり、軸方向の一方側に位置する鋼板12aは、図3の(c)に示すように、打抜き時に生じたばり12bが他方側へ指向するように配設され、軸方向の他方側に位置する鋼板12aは、図3の(d)に示すように、打抜き時に生じたばり12bが一方側へ指向するように配設されている。
【0019】
ステータコア12の内周面には、図3の(a)に示すように、3個の突部12cが形成されている。これら突部12cは120°の等ピッチで配置されたものであり、3個の突部12cの内周面には、図1に示すように、ブラケット3のシャフト収納部3aが圧入されている。尚、図3の(a)の符号12dはステータコア12のティースを示している。
【0020】
ステータコア12には、図1に示すように、第1の絶縁層13が形成されており、各ティース12dの表面は、外周面を除いて絶縁層13により覆われている。この絶縁層13は、ステータコア12を成形型(図示せず)内に収納して溶融樹脂を注入することに伴い形成されたものであり、各ティース12dには絶縁層13の上からコイル14が巻装されている。また、絶縁層13には合成樹脂製の端板15が組付けられている。この端板15の内部には複数の導電板16が埋設されており、各導電板16にはコイル14の端末線が電気的に接続されている。
【0021】
端板15にはコネクタ部15aが一体形成されている。このコネクタ部15aは一面が開口する箱状をなすものであり、各導電板16はコネクタ部15a内に突出している。また、コネクタ部15aには対のコネクタ(図示せず)が嵌合されており、各導電板16は対のコネクタの端子(図示せず)に電気的に接続されている。これら各端子は直流電源に接続されたものであり、各コイル14には、端子から導電板16を通して直流電源が与えられる。
【0022】
ステータコア12には第2の絶縁層17が設けられており、絶縁層17の右端面はケーシング2に押当てられている。この絶縁層17は、第1の絶縁層13に複数のコイル14および端板15を組付けて導電板16にコイル14の端末線を接続した後、ステータコア12を成形型(図示せず)内に収納して溶融樹脂を注入することに伴い形成されたものであり、複数のコイル14および端板15は第2の絶縁層17により覆われている。
【0023】
第2の絶縁層17の左端部には円形状の段部17aが形成されている。また、第2の絶縁層17の右端部には円環状の突部17bおよび複数の爪部17c(1個のみ図示する)が一体形成されており、突部17bはケーシング2の円環状の凹部2c内に嵌合され、各爪部17cはケーシング2の爪部2bに係合されている。尚、符号18はステータコア12,第1の絶縁層13,複数のコイル14,端板15,複数の導電板16,第2の絶縁層17から構成されたステータ組立を示している。
【0024】
ステータコア12の3個の突部12cの内周面には、軸方向中央部に位置して合成樹脂製のカラー19が挿入されている。このカラー19は抜止部材に相当するものであり、カラー19の右側面はブラケット3のシャフト収納部3aに押付けられている。
【0025】
カラー19には、図4の(a)に示すように、挿入部19aが形成されている。この挿入部19aは円形孔状をなすものであり、挿入部19aの周縁部には、図4の(b)に示すように、左方から右方へ向かうに従って縮径するテーパー部19bが形成されている。また、カラー19には、図4の(a)に示すように、3個の突部19cが120°の等ピッチで一体形成されている。これら各突部19cは、図4の(b)に示すように、左方へ突出するものであり、台形板状をなしている。
【0026】
ステータコア12の3個の突部12cの内周面には、図1に示すように、ブラケット20のシャフト収納部20aが圧入されている。このブラケット20はシャフト収納部20aとメタル収納部20bとを有するものであり、シャフト収納部20aは貫通孔20cを有する円筒状をなし、カラー19の各突部19cは、ブラケット3のシャフト収納部3aとブラケット20のシャフト収納部20aとの間で挟持・固定されている。また、メタル収納部20bは円皿状をなすものであり、第2の絶縁層17の段部17a内に嵌合されている。尚、ブラケット20は規制部材および固定部材に相当するものであり、金属から形成されている。
【0027】
ブラケット20のメタル収納部20bの内周面には金属製のカバー21が嵌合されており、メタル収納部20bの開口部はカバー21により覆われている。このカバー21には円筒状のスプリング装着部21aが一体形成されており、スプリング装着部21aの外周面には圧縮コイルスプリング22の左端部が嵌合され、スプリング22の右端部には合成樹脂製のメタル押え23が装着されている。また、カバー21内には軸受メタル24が収納されており、メタル押え23はスプリング22のばね力により軸受メタル24に係合し、軸受メタル24をブラケット20の内面に押付けている。
【0028】
ブラケット20には、メタル収納部20bの底面に位置して円環状のフェルト25が配設されている。また、カバー21の内周面には円筒状のフェルト26が配設されており、フェルト25および26には潤滑油が含浸されている。尚、符号27はブラケット20,カバー21,スプリング22,メタル押え23,軸受メタル24,フェルト25および26から構成された第2の軸受組立を示している。
【0029】
第1の軸受組立11の軸受メタル8内および第2の軸受組立27の軸受メタル24内には回転軸28の右端部および左端部が挿入されている。この回転軸28の直径寸法Rはカラー19のテーパー部19bの最大直径寸法Ra(図4のb参照)より大きく設定されており、回転軸28の右端は第1の軸受組立11のクッション5に押付けられ、回転軸28の左端部は第2の軸受組立27のカバー21から突出している。
【0030】
回転軸28の軸方向中央部には断面円形状の径小部28aが形成されている。この径小部28aは段部に相当するものであり、図4の(b)に示すように、径小部28aの直径寸法はカラー19のテーパー部19bの最小直径寸法Rb(=挿入部19aの直径寸法Rb)に略等しく設定され、径小部28aは挿入部19a内に挿入されている。また、回転軸28の右端部には、図1に示すように、面取部28bが形成されており、回転軸28の右端部は円形状に丸められている。
【0031】
回転軸28の左端部にはロータヨーク29が固定されている。このロータヨーク29は左側面が閉塞された円筒状をなすものであり、ロータヨーク29の内周面には複数の永久磁石30が固定され、各永久磁石30はステータ12の外周面に所定間隔を存して対向している。
【0032】
ロータヨーク29の表面は樹脂層31により覆われている。この樹脂層31は、ロータヨーク29に複数の永久磁石30を磁力で固定した後、ロータヨーク29を成形型(図示せず)内に収納して溶融樹脂を注入することに伴い形成されたものであり、樹脂層31の外周面には複数の羽根板32が一体形成され、コイル14に電源が与えられると、複数の羽根板32がロータヨーク29と一体的に回転する。尚、符号33は回転軸28,ロータヨーク29,複数の永久磁石30,樹脂層31,複数の羽根板32から構成されたロータ組立を示している。
【0033】
次に上記モータの組立手順について説明する。モータを組立てるにあたっては、第1の軸受組立11,ステータ組立18,第2の軸受組立27,ロータ組立33を予め製造しておく。そして、ケーシング2の貫通孔2d内および円形状の凹部2a内に右方からブラケット3を押込み、第1の軸受組立11をケーシング2に組付ける。この後、ステータコア12の3個の突部12cの内周面に右方からブラケット3のシャフト収納部3aを圧入し、第1の軸受組立11をステータ組立18に組付ける。
【0034】
第1の軸受組立11をステータ組立18に組付けたら、ステータコア12の3個の突部12cの内周面に左方からカラー19を挿入する。この後、ステータコア12の3個の突部12cの内周面に左方からブラケット20のシャフト収納部20aを圧入し、第2の軸受組立27をステータ組立18に組付ける。
【0035】
第2の軸受組立27をステータ組立18に組付けたら、回転軸28の右端部をカバー21のスプリング装着部21a内から左方の軸受メタル24内,右方の軸受メタル8内に挿入し、ロータ組立33を第1の軸受組立11および第2の軸受組立27に組付ける。このとき、回転軸28の右端の面取部28bがカラー19のテーパー部19bを押圧し、カラー19が弾性変形する。そして、面取部28bがカラー19を通過し、径小部28aがカラー19の挿入部19a内に挿入される。
【0036】
上記実施例によれば、カラー19の挿入部19a内に回転軸28の径小部28aを挿入すると共に、カラー19をブラケット3および20により軸方向に対して位置規制した。このため、回転軸28が軸方向へずれ動くとカラー19によって係止されるので、軸受メタル8および24から回転軸28が抜けることが防止される。しかも、回転軸28を軸受メタル8および24に挿入する際に回転軸28の径小部28aがカラー19の挿入部19a内に挿入されるので、Eリングを押し拡げて回転軸28に装着する面倒な作業を行う必要がなくなり、回転軸28の抜止作業性が向上する。
【0037】
また、カラー19をブラケット3および20により挟持・固定したので、カラー19が運転時に振動し、異音(ビビリ音)が生じることが防止される。しかも、回転軸28をカラー19の挿入部19a内に挿入する際にカラー19のずれ動きが防止されるので、回転軸28のカラー19に対する挿入作業性が向上する。これと共に、カラー19がブラケット3および20により支えられるので、回転軸28がカラー19と共に抜けることが防止される。さらに、ステータコア12の内周面にカラー19を圧入・固定する必要がなくなるので、カラー19のステータコア12に対する組付作業性が向上する。
【0038】
また、カラー19に突部19cを設け、左方のブラケット20を突部19cに押付けた。このため、左方のブラケット20をカラー19の左側面全域に接触させる場合に比べ、左方のブラケット20とカラー19との接触状態が安定するので、カラー19が両ブラケット3および20によって確実に挟持・固定される。
【0039】
また、回転軸28の径小部28aおよびカラー19を軸受メタル8および24間に設け、右方の軸受メタル8をスプリング6によって支持した(いわゆる調芯軸受)。このため、左方の軸受メタル24からカラー19の挿入部19aを通して右方の軸受メタル8に回転軸28を挿入するにあたって、回転軸28の挿入方向が挿入部19aの内周面により案内されるので、回転軸28の右方の軸受メタル8に対する挿入作業性が向上する。しかも、回転軸28の軸芯と右方の軸受メタル8の軸芯とがずれていても、軸受メタル8がずれ動くので、回転軸28の軸受メタル8に対する挿入作業性が一層向上する。さらに、右方の軸受メタル8に加えて左方の軸受メタル24をスプリング22によって支持したので、回転軸28を左方の軸受メタル24からカラー19を通して右方の軸受メタル8に一層挿入し易くなる。
【0040】
また、軸受メタル8および24をブラケット3および20により保持した。このため、ステータコア12の内周面に軸方向両側からブラケット3および20を圧入するだけで、軸受メタル8および24がステータコア12に調芯状態で組付けられるので、軸受メタル8および24の組付作業性が向上する。
【0041】
また、ステータコア12の軸方向両側に位置する各鋼板12aをばり12bが相手側へ指向するように積層した。このため、ステータコア12の内周面にブラケット3および20を圧入するにあたって、ブラケット3および20がばり12bに引掛かることが防止されるので、ブラケット3および20の圧入作業性が向上する。
【0042】
また、ステータコア12の内周面に突部12cを設けた。このため、ブラケット3および20をステータコア12に圧入する際に、ブラケット3および20が突部12cに押圧されて弾性変形し、突部12cがブラケット3および20の外周面に食込むので、ブラケット3および20がステータコア12から抜け難くなる。
【0043】
また、ステータコア12の内周面に複数の突部12cを等ピッチで設けた。このため、複数の突部12cによるブラケット3および20の押圧位置に対称性ができ、ブラケット3および20がバランス良く弾性変形するので、ブラケット3および20のステータコア12に対する圧入作業性が向上する。しかも、ブラケット3と突部12cとの係合量,ブラケット20と突部12cとの係合量が増えるので、ブラケット3および20がステータコア12から一層抜け難くなる。
【0044】
また、カラー19にテーパー部19bを形成した。このため、回転軸28がテーパー部19bによって挿入部19a内に案内されるので、回転軸28の挿入部19aに対する挿入作業性が向上する。
また、回転軸28の挿入開始端部に面取部28bを形成した。このため、回転軸28の右端部が軸受メタル24,カラー19,軸受メタル8に引掛かることが防止されるので、回転軸28の軸受メタル24,カラー19,軸受メタル8に対する挿入作業性が向上する。
【0045】
また、ブラケット3内にフェルト9および10を収納し、ブラケット20内にフェルト25および26を収納した。このため、フェルト9および10から滲み出す潤滑油によって軸受メタル8が潤滑され、フェルト25および26から滲み出す潤滑油によって軸受メタル24が潤滑されるので、回転軸28の回転抵抗が潤滑油不足で過大に上昇し、モータが異常昇温したり、ロックしてしまうことが防止される。
【0046】
尚、上記第1実施例においては、ステータコア12の内周部にカラー19を挿入し、ブラケット3および20により挟持・固定したが、これに限定されるものではなく、例えばステータコア12の内周面にカラー19を圧入・固定した上で、ブラケット3および20により挟持・固定しても良い。
【0047】
また、上記第1実施例においては、カラー19に左方へ突出する突部19cを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば右方へ突出する突部を設け、この突部を右方のブラケット3に押付けても良い。あるいは、左右両方向へ突出する突部を設け、この突部を左方のブラケット20および右方のブラケット3に押付けても良い。
【0048】
次に本発明の第2実施例を図5および図6に基づいて説明する。第1の軸受組立11のカバー4には、図6に示すように、凹部4bが形成されている。この凹部4bは円形状をなすものであり、凹部4bの底板部には円形状の凹部4cが形成され、凹部4cの内面にはクッション5が貼付されている。
【0049】
径大な凹部4bには抜止部材に相当する合成樹脂製のカラー34が収納されている。このカラー34は円形状をなすものであり、カラー34の外周部には鍔部34aが一体形成されている。この鍔部34aの内周面にはスプリング6が嵌合されており、カラー34はスプリング6のばね力によって凹部4bの内底面に押付けられ、スプリング6および凹部4bによって軸方向に対して位置規制されている。尚、スプリング6およびカバー4は規制部材に相当するものである。
【0050】
カラー34の中央部には円形孔状の挿入部34bが形成されており、挿入部34bの周縁部には、左方から右方へ向うに従って縮径するテーパー部34cが形成されている。また、回転軸28の右端部には、図5に示すように、径小部28aが形成されており、カラー34の挿入部34b内には径小部28aが挿入されている。尚、カラー34のテーパー部34cの最大直径寸法は回転軸28の直径寸法Rより小さく設定され、テーパー部34cの最小直径寸法(=挿入部34bの直径寸法)は径小部28aの直径寸法に略等しく設定されている。
【0051】
次に上記モータの組立手順を図5に基づいて説明する。ケーシング2に第1の軸受組立11を組付けた後、ステータコア12の3個の突部12cの内周面に軸方向両側からブラケット3および20を圧入し、ステータ組立18に第1の軸受組立11および第2の軸受組立27を組付ける。
【0052】
ステータ組立18に第1の軸受組立11および第2の軸受組立27を組付けたら、回転軸28の右端の面取部28bをカバー21のスプリング装着部21a内から左方の軸受メタル24内,右方の軸受メタル8内に挿入し、ロータ組立33を第1の軸受組立11および第2の軸受組立27に組付ける。このとき、回転軸28の面取部28bがカラー34のテーパー部34cを押圧し、カラー34が弾性変形する。そして、面取部28bがカラー34を通過し、径小部28aがカラー34の挿入部34b内に挿入される。
【0053】
上記実施例によれば、ブラケット3内にカラー34を組込んだ。このため、ステータコア12の内周部にカラー34を挿着する必要がなくなるので、モータの組立作業性が向上する。
【0054】
尚、上記第1および第2実施例においては、左方の軸受メタル24をスプリング22によって保持したが、これに限定されるものではなく、例えばブラケット20の内面に固定しても良い。
【0055】
また、上記第1および第2実施例においては、回転軸28に断面円形状の径小部28aを形成したが、これに限定されるものではなく、例えば断面多角形状の段部あるいは断面略D字状の段部を形成しても良い。この場合、カラー19の挿入部19aおよびカラー34の挿入部34bの内面形状を段部の断面形状に合わせると良い。
【0056】
また、上記第1および第2実施例においては、カラー19および34を円環状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、カラー19および34に内周面および外周面間を貫通するスリットを形成しても良い。この場合、回転軸28の面取部28bによってカラー19および34を押圧する際に、カラー19および34がスリットから容易に拡がるので、回転軸28の径小部28aが小さな操作力で挿入部19a内および34b内に挿入される。
【0057】
また、上記第1および第2実施例においては、カラー19および34を合成樹脂により形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ばね鋼等の金属やゴムにより形成しても良い。特に、カラー19および34を金属により形成する場合には、カラー19および34に上述のスリットを形成し、カラー19および34を弾性変形し易くすることが好ましい。
【0058】
また、上記第1および第2実施例においては、本発明をアウタロータ形のDCブラシレスモータに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばインナロータ形のDCブラシレスモータあるいはコンデンサ誘導モータ等に適用しても良い。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の回転電機および回転電機の製造方法は次の効果を奏する。
請求項1記載の手段によれば、抜止部材を回転軸の軸方向に対して位置規制した上で、回転軸の段部を抜止部材の挿入部内に挿入した。このため、Eリングを押し拡げて回転軸に装着する面倒な作業を行う必要がなくなるので、回転軸の軸受に対する抜止作業性が向上する。また、一対の軸受を一対のブラケットによって支持した。このため、一対のブラケットをステータコアの内周面に圧入するだけで、一対の軸受がステータコアに調芯状態で組付けられるので、軸受の組付作業性が向上する。また、抜止部材をステータコアの内部に収納し、一対のブラケットによって軸方向両側から挟持した。このため、ステータコアの内部に抜止部材を圧入する必要がなくなるので、抜止部材のステータコアに対する組付作業性が向上する。
【0060】
請求項2記載の手段によれば、少なくとも一方の軸受をスプリングによって支持した。このため、回転軸の挿入方向が挿入部の内周面により案内されるので、回転軸の軸受に対する挿入作業性が向上する。しかも、回転軸の軸芯と軸受の軸芯とがずれていても、スプリングが変形して軸受がずれ動くので、回転軸の軸受に対する挿入作業性が一層向上する。
【0061】
請求項3記載の手段によれば、少なくとも一方のブラケットに圧接する突部を抜止部材に設けた。このため、一方のブラケットと抜止部材との接触状態が安定するので、抜止部材が両ブラケットによって確実に挟持・固定される。
【0062】
請求項4記載の手段によれば、軸方向両側に位置する各鋼板をばりが相手側へ指向するように積層した。このため、ステータコアの内周面にブラケットを圧入するにあたって、ブラケットがばりに引掛かることが防止されるので、ブラケットの圧入作業性が向上する。
請求項5記載の手段によれば、ステータコアの内周面に突部を設けた。このため、ステータコアの内周面にブラケットを圧入するにあたって、突部がブラケットの外周面に食込むので、ブラケットがステータコアから抜け難くなる。
【0063】
請求項6記載の手段によれば、抜止部材にテーパー孔状の挿入部を形成したので、回転軸の挿入部に対する挿入作業性が向上する。
請求項7記載の手段によれば、ステータコアの内周面に軸方両側からブラケットを圧入し、両ブラケット間で抜止部材を挟持した後、一方のブラケットの軸受あるいは他方のブラケットの軸受から抜止部材の挿入部を通して残りのブラケットの軸受に回転軸を挿入した。このため、回転軸の挿入方向が挿入部の内周面により案内されるので、回転軸の軸受に対する挿入作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す図(全体構成を示す断面図)
【図2】第1の軸受組立を示す断面図
【図3】(a)は矢印X1 方向視図、(b)はX2 −X2 線に沿う断面図、(c)はX3 部の鋼板を拡大して示す図、(d)はX4 部の鋼板を拡大して示す図
【図4】(a)は矢印X5 方向視図、(b)はX6 −X6 線に沿う断面図
【図5】本発明の第2実施例を示す図1相当図
【図6】第1の軸受組立の要部を拡大して示す断面図
【符号の説明】
3はブラケット(規制部材,固定部材)、4はカバー(規制部材)、6は圧縮コイルスプリング(スプリング,規制部材)、8は軸受メタル(軸受)、12はステータコア、12aは鋼板、12bはばり、12cは突部、19はカラー(抜止部材)、19aは挿入部、19bはテーパー部、19cは突部、20はブラケット(規制部材,固定部材)、22は圧縮コイルスプリング(スプリング)、24は軸受メタル(軸受)、28は回転軸、28aは径小部(段部)、34はカラー(抜止部材)、34bは挿入部、34cはテーパー部を示す。
Claims (7)
- 段部を有する回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する一対の軸受と、
前記回転軸の段部が挿入される挿入部を有する弾性変形可能な抜止部材と、
前記抜止部材を前記回転軸の軸方向に対して位置規制する規制部材と、
ステータコアの内周面に軸方向両側から圧入され、前記一対の軸受を保持する一対のブラケットとを備え、
前記回転軸には、前記ステータコアの内部に位置して前記段部が設けられ、
前記抜止部材は、前記ステータコアの内部に収納され、
前記一対のブラケットは、前記抜止部材を軸方向両側から挟持することに基いて前記回転軸の軸方向に対して位置規制する規制部材に相当するものであることを特徴とする回転電機。 - 前記一対の軸受のうち少なくとも一方の軸受は、スプリングによって支持されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
- 前記抜止部材には、少なくとも一方のブラケットに圧接する突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
- 前記ステータコアは、鋼板を軸方向へ積層することから構成され、
軸方向両側に位置する各鋼板のばりは、相手側へ指向していることを特徴とする請求項1記載の回転電機。 - 前記ステータコアの内周面には、突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
- 前記抜止部材には、前記挿入部の周縁部に位置してテーパー部が設けられ、
前記テーパー部は、前記回転軸の挿入開始端部から反対端部へ向かうに従って縮径する傾斜状をなしていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。 - 段部を有する回転軸と、一対のブラケットに保持された一対の軸受と、挿入部を有する弾性変形可能な抜止部材とを用い、
ステータコアの内周面に軸方向一端部から一方のブラケットを圧入し、
ステータコアの内周部に軸方向他端部から抜止部材を挿入し、
ステータコアの内周面に軸方向他端部から他方のブラケットを圧入して両ブラケット間で抜止部材を挟持し、
一方のブラケットの軸受あるいは他方のブラケットの軸受から抜止部材の挿入部を通して残りのブラケットの軸受に回転軸を挿入すると共に、抜止部材の挿入部内に回転軸の段部を挿入する
ことを特徴とする回転電機の製造方法。
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