JP3696863B2 - 表面を焼成した容器入り食品の連続的製造手段及び容器入り食品の連続的表面焼成装置 - Google Patents
表面を焼成した容器入り食品の連続的製造手段及び容器入り食品の連続的表面焼成装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面を焼成して焼き色を付した容器入り食品を連続的に製造する手段、及び容器入り食品の表面を連続的に焼成する装置に関する。
本発明において、被覆物は、グラニュ−糖、粉糖、水飴、黒砂糖、白砂糖、フォンダン等の糖類(以下、砂糖と記載する。)の少なくとも1種類を含有するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に食品の分野においては、容器に充填された形態で販売されるものが数多く流通しているが、特に、冷菓、プリン、ゼリ−等砂糖を含有する食品は、喫食する際に便利であることから容器に充填された形態で販売されることが多い。
このような容器に充填された形態で販売される食品(以下、容器入り食品と記載する。)は、近年、多種多用の製品が開発されており、最近は表面を加熱して焦がすことにより、表面に焼き色を付して独特の風味を付与した製品が散見されるようになった。このように表面を焼成した容器入り食品(以下、容器入り焼成食品と記載することがある。)の実例としては、焼きプリンを例示することができる。焼プリンの製造工程では、容器にプリンベ−スを充填し、これをオ−ブンで加熱して凝固させるとともに表面を焼成し、消費者にアピ−ルする焼き色とともに独特の風味を付与する操作が行われる。
【0003】
一般に容器入り焼成食品においては、特に砂糖を含有する場合は、表面を焼成すると砂糖が焦げてカラメル化するが、このカラメル化した砂糖によって香ばしい風味と潤沢な焼き色が得られるのである。
食品の表面を焼成する公知の方法としては、例えば、公知文献(特許文献1参照)に開示された方法(以下、従来法と記載する。)がある。この従来法はアイスクリ−ムに関するものであり、アイスクリ−ムの表面に、卵白及び砂糖を加えた材料によって被膜を形成し、この被膜に火炎を噴射し、被膜の表面を焼成し、焼き色を付与する方法である。
【0004】
しかしながら、前記従来法は、容器入り食品に対しては、十分なものとはいえなかった。即ち、火炎を噴射するため、食品と共に容器にも火炎が噴射され、容器が加熱されて変形する問題が生じていた。また、火炎による焼成では加熱の程度が均一にならず、食品の表面に焼きムラが発生し、美観を損ねる問題もあった。 また、特に容器入り食品が冷菓である場合には、火炎により冷菓が溶融する問題があり、冷菓を溶融せずに表面だけを焼成する条件を見つけることが困難であった。
更に、総合的に見て、一般に食品を焼成する場合には、所望の焼き色を得るためには熟練した技能を要するとされており、工業的に大量生産することは行われておらず、一個一個手作業で行うのが実情であった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭48−82067号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、容器入り焼成食品について鋭意検討を重ねた結果、食品の表面に高温の焼成部材を接触させる方法を見い出し、特に、その焼成部材を特定の温度範囲に維持することにより、従来は困難とされていた容器入り焼成食品を工業的に大量生産できることを見い出し、更に、本発明者らは前記の点について、応用技術を研究した結果、容器入り冷菓を所定の条件で焼成することにより、極めて好ましい焼き色を有する容器入り冷菓を工業的に大量生産できることを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、容器入り焼成食品を製造する手段において、容器を変形させることなく、均一の焼き色を付すことができ、しかも工業的に大量生産可能な連続的製造手段を提供すること、である。
また、本発明の他の目的は、表面を焼成した容器入り冷菓を製造する手段であって、容器を変形させることなく均一の焼き色を付すことができ、しかも冷菓を溶融させることなく工業的に大量生産できる連続的製造手段を提供すること、である。
更に、本発明の他の目的は、容器入り食品の表面を連続的に焼成する装置であって、容器を変形させることなく、均一の焼き色を付すことができ、工業的に大量生産することができる連続的表面焼成装置を提供すること、である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明は、容器入り食品の表面を連続的に焼成する装置であって、容器入り食品を連続的に搬送する搬送手段、加熱手段を有し所定の温度範囲に加熱される焼成部材、容器入り食品の表面に該焼成部材を所定の圧力で接触させて解離させる接触解離手段、該接触解離手段と焼成部材との間に介在し焼成部材と容器入り食品との接触圧力を緩和させる弾性体、並びに、搬送手段及び接触解離手段を制御して容器入り食品を連続的に搬送しながら焼成する制御手段を備えたことを特徴とする容器入り食品の連続的表面焼成装置、である。
【0009】
本発明の製造手段は、表面を焼成した容器入り食品を連続的に製造する方法であって、予め調製した食品原材料を連続的に供給される容器に連続的に充填し、絶対温度773K以上の温度範囲に加熱された焼成部材を連続的に該食品原材料の表面に接触させてその表面を連続的に焼成し、表面を焼成した容器入り食品を連続的に搬出することを特徴とする表面を焼成した容器入り食品の連続的製造手段、である。
【0010】
また、本発明の製造手段は、表面を焼成した容器入り冷菓を連続的に製造する方法であって、予め調製した容器入り冷菓の上面に、別途調製した被覆物を連続的に充填し、次の数式1及び数式2
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】
[ただし、上式において、tは焼成部材の接触時間(秒)、pは焼成部材の接触圧力(kPa)、Tは焼成部材が接触する面の表面温度(絶対温度K)を表す]の範囲で該被覆物の表面に加熱された焼成部材を接触させてその表面を連続的に焼成し、表面を焼成した容器入り冷菓を連続的に搬出することを特徴とする表面を焼成した容器入り冷菓の連続的製造手段、である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について詳細に説明する。
本発明において容器とは、食品を充填できるものであればいかなるものでも良く、深絞り容器、カップ、トレ−、ケ−キ台等が例示できるが、容器としては、深絞り容器、カップ、フォ−ムシ−ル等の深型の形状の容器が好適であり、これらの深型の容器は、前記従来法のように火炎を噴射して食品を焼成する方法では、使用することが極めて困難であった。
【0015】
まず、本発明の第一の態様である容器入り食品の連続的製造手段について説明する。
本発明の第一の態様においては、まず、予め調製した食品原材料を連続的に供給される容器に連続的に充填する。容器を連続的に供給する操作は、コンベア−等の搬送手段により行われるが、表面を焼成した後の食品を連続的に搬出する搬送手段と共通のものでも良く、またこれとは別個な搬送手段であっても良い。このような搬送手段によって容器が移動する態様は、断続的な移動が好ましいが、連続的な移動であっても良く、公知の食品の製造ラインをそのまま転用することができる。
【0016】
本発明では、このような容器に食品原材料を連続的に充填する。本発明において食品原材料は、必ずしも原料を指すものではなく、半製品、最終製品であってもよい。また、この場合の充填の範囲には、充填した後に必要とする工程を全て含むものとする。例えば、食品が冷菓であれば、冷菓ミックスを容器に充填した後、常法により冷却硬化して容器入りの冷菓にする。また、食品がゼリ−であれば、ゼリ−ベ−スを容器に充填し、常法により冷却凝固させて容器入りのゼリ−とする。要するに、食品原材料を充填するとは、食品を焼成する前に必要な処理を完了することを包含しているのである。
【0017】
充填する食品原材料は、単層状のものでもよいが、二層以上の多層状のものであっても良い。例えば、色の異なる二種類のゼリ−を容器内に二層状に積層した形態であってもよい。この場合は、容器への充填は少なくとも2回行うことになる。また、充填する食品原材料は、食品の上に別途被覆物を載置した形態であってもよい。この場合は、食品を充填して常法のとおりに製造した後に、更に被覆物を載置する工程が必要であるが、これらの工程も、前記食品原材料を充填する範囲に包含される。尚、被覆物については後に詳しく説明する。
【0018】
次いで、充填した食品原材料の表面に焼成部材を連続的に接触させる。焼成部材を接触させる方法は、いかなるものでもよいが、例えば、後記実施例のように、焼成部材を移動させて食品原材料に接触させる態様の他、逆に、容器入り食品を移動させて焼成部材に接触させる態様、双方を移動させて接触させる態様が例示できる。
【0019】
焼成部材は、食品原材料の表面を焼成できる温度に加熱されている。焼成部材の形状としては、食品原材料の表面に接触する面(以下、接触面と記載することがある。)が、完成した食品の表面の形状と合致していることが望ましい。また、接触面が食品に接触することを考慮すれば、焼成部材の材質、特に接触面の材質は衛生面に配慮したものが望ましく、このような材質としては、ステンレス、セラミック、金、アルミニウム等が例示できるが、ステンレスが望ましい。
【0020】
尚、本発明においては、焼成部材の温度条件は極めて重要な意義を持つが、焼成部材の温度について記載した場合には、その温度は、特に断りがない限り、焼成部材の接触面における表面温度を指すものである。
本発明において、焼成部材は、絶対温度773K以上の温度に加熱されている。焼成部材の温度は、本発明の目的である工業的な大量生産に不可欠な要素であり、本発明者らは、この絶対温度773Kという数値に臨界的意義を見い出したことにより、当業者の間では不可能とされていた工業的な大量生産を可能にしたのである。
【0021】
一般に、焼成可能な温度は経験則により決められ、このような温度の部材を食品に接触させた場合は、食品は焦げ付き、その焦げた部分が食品の表面から剥離してしまうことが知られている。本発明においても、焼成部材の接触面に焦げが付くと、焦げが剥離して食品の中に混入する等の事故が発生し、連続的な焼成操作が困難になることは当然予想されるところである。
また、このような焦げが剥離して食品の中に混入する等の事故を防ぐために、食品に接触しない赤外線ヒ−タ−等により輻射伝熱焼成することも考えられるが、この場合は好ましい焼き色を得るためには数十秒必要であり、そのため容器の変形が避けられず、耐熱容器を用いない限り実現は困難である。
結局、焼成部材の焦げ付きは、一旦完全に炭化させて剥離するか、擦り落とすしかなく、このために従来は工業的な大量生産が困難であった。
【0022】
本発明者らは、焼成部材を絶対温度773K以上の高温にすることによりこの問題を解決した。即ち、絶対温度773K以上の高温であれば、焼成部材の接触面に食品の焦げが付着することがないことを発見した。
このように本発明においては、焼成部材の温度を絶対温度773K以上の温度範囲に保持することにより、焼成部材の焦げ付きがなく、安定した状態で、容器入り焼成食品を連続生産できるようになったのである。尚、以上の温度の臨界的意義については、後記の試験例により詳細に説明する。
尚、焼成部材の温度が極端に高い場合は、焼成部材自身が劣化し易くなり、焼成部材を配設した機器にも悪影響を与え、保守点検回数の増加、ランニングコストの増加等の要因になる。従って、焼成部材の材質にもよるが、焼成部材の温度は、少なくとも絶対温度923K以下に保持することが必要である。即ち、工業的な温度条件としては、絶対温度773K以上923K以下が望ましい。
表面を焼成した後、容器入り焼成食品を連続的に搬出する。搬出した後の容器入り焼成食品は、容器開口部の被蓋、容器の梱包等の後続する工程に移送される。
【0023】
本発明の第二の態様は、表面に焼き色を有する容器入り冷菓の製造手段である。本発明においては、冷菓の範囲には特に制約はなく、いかなるものでもよい。
本発明では、まず、常法により容器入り冷菓を調製する。具体的には、容器を連続的に搬入し、その容器に冷菓ミックスを充填し、常法により凍結硬化し、容器入り冷菓を得る。
次いで、容器入り冷菓の上面に、別途調製した被覆物を連続的に充填する。被覆物とは、少なくとも砂糖を含有する食材からなり、冷菓の上に載置できるものであり、その範囲には、砂糖そのものも包含される。即ち、冷菓の上にグラニュ−糖を直接振り掛けた場合には、そのグラニュ−糖が被覆物である。
また、被覆物の状態は、充填時にはいかなる状態でも良いが、焼成する段階では、焼成部材に付着しない状態、例えば、固体状、粉状、粒状、粘土状、泡状等の状態であることが望ましい。このような被覆物としては、メレンゲ、ホイップクリ−ム、卵ソ−ス等を例示できる。
【0024】
調製した被覆物を容器入り冷菓の上面に連続的に充填するが、この場合の充填は、冷菓の上に被覆物を載置する操作であり、必ずしも充填機により行うことに限定されない。尚、被覆物は複数の種類であっても良い。
本発明では、このように被覆物が充填された冷菓の表面、即ち被覆物の表面を焼成する。焼成は、加熱された焼成部材を接触させることにより行うが、接触させる条件は、焼成部材の被覆物に接触する面の表面温度T(以下、接触温度と記載する。)、接触圧力p、及び接触時間tの三つのパラメ−タ−で表現される。
尚、以下の記載においては、接触圧力pと接触時間tとの積ptを接触条件と記載し、この接触条件ptと接触温度Tとを総称して焼成条件と記載する。
【0025】
本発明において、焼成条件は、前記数1及び数2の双方を満たす範囲となるが、この焼成条件を図3により説明する。図3は本発明の容器入り冷菓の製造手段における焼成条件を示し、横軸及び縦軸は、それぞれ接触温度及び接触条件を示す。
まず、前記数2について説明すると、後記試験例に記載したように、接触温度が773K未満である場合は焼成部材の接触面に焦げが付着する。従って、焼成条件は、図3のab線よりも右側の範囲となる。また、接触温度が873K越えた場合は、温度が高すぎて冷菓が溶融し、連続的に製造することが不可能となるので、焼成条件は、図3のcd線よりも左側の範囲となる。
【0026】
次に前記数1について説明すると、一般に接触圧力が大きいほど、また接触時間が長いほど、焼成の度合いが強くなり、換言すれば接触条件の値が大きいほど、被覆物の表面の焼き色は濃くなるのである。本発明の焼成条件では、接触条件(pt)の値が、接触温度Tに対して8.77×105 e-0.0181TkPa・s未満の値である場合は、熱量が不足して被覆物の表面に十分な焼き色を付すことはできない。また、ptの値が、接触温度に対して3.36×103 e-0.0081TkPa・sを越えると、焼き色が濃くなり過ぎて好ましくなく、また熱量の増大によって冷菓の溶融も激しくなる。従って、ptの値は、接触温度に対して8.77×105 e-0.0181T以上、かつ3.36×103 e-0.0081T以下の範囲であることが必要である。図3において、線acはpt=3.36×103 e-0.0081Tの式であり、線bdはpt=8.77×105 e-0.0181Tの式である。従って、本発明の焼成条件は、線acよりも下側の範囲であり、線bdよりも上側の範囲であり、図3における点abcdに囲まれた範囲となる。
【0027】
次に、より望ましい焼成条件の範囲について説明する。図3における点abcdに囲まれた範囲においても、接触温度が高い場合、又は接触条件(pt)の値が大きい場合は、熱量が多すぎて焼成中に冷菓が若干溶融することがある。このような溶融は、焼成を行った後に再度硬化すれば修復可能であるため、製造不能になる程のものではない。しかしながら、焼成においては可及的に冷菓が溶融しないことが望ましい。
そして本発明では、接触温度が823Kを越えない範囲であれば、焼成中に冷菓が溶解することがなく、また、ptの値が接触温度に対して、3.57×104 e-0.0113Tを越えない範囲であれば、焼成中に冷菓が溶融することがなく、また焼き色が特に優れたものとなる。
【0028】
図3を用いて説明すると、線fgはT=823の式であり、線efはpt=3.57×104 e-0.0113Tの式である。従って、線fgの左側の範囲であり、かつ線efの下側の範囲Bであれば、焼成中に冷菓が溶融することがなく、焼き色の優れた冷菓を得ることができる。即ち、焼成条件のより望ましい範囲は、図3において点ebgfで囲まれた範囲(即ち、Bのエリア)であり、以下の数式3及び数式4を満たす範囲である。
【0029】
【数3】
【0030】
【数4】
【0031】
[ただし、上式において、tは焼成部材の接触時間(秒)、pは焼成部材の接触圧力(kPa)、Tは焼成部材が接触する面の表面温度(絶対温度K)を表す]以上の条件にて、被覆物の表面を焼成した後、連続的に搬出すれば、表面を焼成した容器入り冷菓を連続的に得ることができる。
尚、以上の焼成条件については、後記の試験例により詳細に説明する。
【0032】
本発明の第三の態様は、容器入り食品の連続的表面焼成装置である。本発明の装置の発明については、その実施の態様を図1によって説明する。図1は本発明の装置の一実施態様を示す図である。図1において、表面焼成装置1は、搬送手段2、表面焼成手段10、及び制御手段20を備えている。
図1では、搬送手段2としてベルトコンベア−を例示している。搬送手段2(即ち、ベルトコンベア−)のベルト2a上には容器入り食品D1〜D3が各々等間隔で載置されている。そして搬送手段2には駆動装置(図示せず)が備えられており、容器入り食品D1〜D3を矢印Xの方向に搬送する。
【0033】
表面焼成手段10は、接触解離手段11、弾性体12、焼成部材13によって構成されており、固定フレ−ム(図示せず)により搬送手段2上に固定配置されている。
焼成部材13には加熱手段14が埋設されており、加熱手段14は電線14aによって温度制御型スライダック(図示せず)に結線され、所定の温度に保持される。
接触解離手段11は、焼成部材13を上下に変位させて、容器入り食品Dの表面に所定の圧力で接触させて解離させる機能を有する。図1においては、接触解離手段11として公知のエアシリンダ−を例示しており、エアチュ−ブ11aが接続されている。エアチュ−ブ11aはソレノイド15に接続されており、ソレノイド15には空気源(図示せず)より空気が供給されている。
【0034】
弾性体12は、接触解離手段11と焼成部材13との間に介在して配置され、焼成部材13の接触圧力を緩和する部材である。焼成作業中に焼成部材13の温度が低下することは望ましくなく、焼成部材13は熱容量が大きいものが望ましい。しかしながら、焼成部材13の熱容量を増加させるためには、焼成部材13のサイズを大きいものにするしかないが、この場合は、焼成部材13の重量が重くなり、容器入り食品D2に接触させた際に、容器入り食品D2に重量がかかり、表面形状が変化してしまうとともに、熱がかかりすぎて焼き色が濃くなる危険がある。しかしながら、焼成部材13を弾性体12によって懸垂し、弾性力によって焼成部材13の重量を相殺すれば、容器入り食品D2に接触させた際に適度に上方に弾性的に変位することになり、接触圧力を緩和することができる。弾性体12としては、スプリング、ゴム部材等、いかなるものでもよいが、弾性力を調節できるエアシリンダ−が最も望ましい。図1においては、弾性体12として公知の調圧式エアシリンダ−を例示している。調圧式エアシリンダ−は、圧力の調整により弾性力を随時変更できる弾性体である。
制御手段20は前記搬送手段2の駆動装置及びソレノイド15に電気的に結線されている。制御手段20としては、公知のコントロ−ラ−を使用することができる。また、種々の他の工程を制御する統合されたコンピュ−タ−システムの一部に、制御手段20の機能を組み込んでもよい。
【0035】
次に、図1で示した装置の作用を説明する。図1において、搬送手段2のベルト2aの上には容器入り食品D1、D2、及びD3が載置されている。搬送手段2が、搬送動作を一回行うたびに容器入り食品が左隣の食品の位置に搬送される。例えば、図中の容器入り食品D1は、次の搬送動作によりD2の位置に搬送され、同時に容器入り食品D2はD3の位置に搬送される。搬送手段2は、このような搬送動作を反復することにより容器入り食品を断続的に搬送するのである。
【0036】
以上のように搬送される容器入り食品D1、D2、及びD3は、図1で示した装置の前工程で、充填等の操作により調整されており、また図1で示した装置の後工程では、蓋づけ等の工程が行われるが、図1の装置の前後の工程については図示及び詳細な説明は省略する。なお、図1における搬送手段2は、これら前後の工程における搬送手段と兼用のものであってもよい。
搬送手段2によって容器入り食品がD2の位置に来たとき、制御手段20は、ソレノイド15を作動させる。ソレノイド15は接触解離手段11を下方向に伸ばす。これにより焼成部材13が下方に移動し、接触面13aが容器入り食品D2の表面に接触する。
【0037】
焼成部材13は加熱手段14により予め所定の温度範囲に加熱されており、食品D2の表面が焼成される。本発明では弾性体12によって接触部材13が微妙なバランスで懸垂されているため、接触部材13に対して上向に若干の抵抗がかかっただけで、接触部材13の下向きの力は減殺される。従って、重量が重い接触部材13を使用したとしても、接触圧力を軽くすることができるのである。また、図1のように弾性体12として調圧式エアシリンダ−を使用した場合は、接触圧力を自由に調節できる利点がある。
結局、接触面13aと容器入り食品D2との接触圧力は、弾性体12の弾性力の大小、接触解離手段11の位置の高低、接触解離手段11の伸縮長さ等によって設定する。
【0038】
制御手段20はタイマ−機能を有しており、焼成部材13が容器入り食品D2の表面に所定の時間接触した後、ソレノイド15の作動を解き、エア−シリンダ−13を図1中の上方向に縮退させる。これにより焼成部材13が上方に移動し、接触面13aが容器入り食品D2の表面から解離する。
次いで、搬送手段2は次の搬送動作を行い、表面に焼き色を付した容器入り食品D2をD3の位置に搬送し、新たな食品D1をD2の位置に搬送する。このようにして、容器入り食品の表面を連続的に焼成することができる。
【0039】
以上の本発明の第三の態様の装置は、容器入りの食品であれば、例えば、冷菓、プリン、ゼリ−等、いかなるものにも適用できるが、容器に食品が多層状に充填されたもの、例えば、最も上層に被覆物を載置した食品には特に好適である。また、焼成部材13の形状を、容器の形状にフィットする形状にすれば、食品の全表面に均等に焼き色を付すことができて好ましいが、一部のみに焼き色を付す形状であっても良く、また特殊な形に焼き印を付す形状であっても良い。更に、本発明の装置は、弾性体12によって接触圧力を緩和できるため、焼き色を付すべき食品又は被覆物が軟らかいものである場合には好適である。
また、図1に示した装置では、接触部材13を上下方向に変位させて、容器入り食品D2に接触させていたが、逆に容器入り食品D2の位置を変位させる態様であっても良く、または双方を変位させる態様であっても良い。しかしながら、図1に示したように、接触部材13を変位させる態様が最も構造が簡便となり好ましい。
更に、図1に示した装置では、搬送手段2は容器入り食品D1〜D3を断続的に搬送しているが、これは、とぎれなく一定速度で搬送するものでも良い。その場合は、焼成部材13が容器入り食品D1〜D3の移動速度に併せて移動する態様であることが必要である。
【0040】
なお、以上説明した本発明において「焼成」の範囲は、食品又は被覆物の表面の色が変化して焼き色がついた状態を意味しているが、色の変化が生じない程度、例えば、表面の状態が加熱によって硬化した程度である場合も焼成の範囲に包含されるものとする。
また、本発明は、容器入り冷菓の他に、容器入りの他の食品、例えば、プリン、ヨ−グルト、ゼリ−、ム−ス、チ−ズ、ケ−キ等のデザ−ト類にも好適に利用でき、この場合は、被覆物を載置してもしなくても良い。一般に食品は、少なくとも砂糖を含有するものが好適である。
【0041】
次に、本発明の製造手段に関する焼成条件について、試験例を示して説明する。
試験例1
この試験は、接触温度の高低が、焼成部材への焦げの付着状態又は冷菓の溶融状態にどのように影響するかを調べるために行った。
1)試料の調製
(a)冷菓
乳脂肪8.0%、無脂乳固形分7.0%、オ−バ−ラン60%のアイスクリ−ムを、180ccの紙カップに100g充填し、常法により凍結硬化して基準となる冷菓を調製した。
(b)被覆物
固形のグラニュ−糖を用意し、前記(a)の容器入り冷菓の上に振り掛け、薄い層状にした。
【0042】
2)試験方法
後記実施例1に記載した装置(図2参照)を使用して、前記1)で調製した冷菓の表面を焼成した。
以下、装置の各要素については図2の符号を対照し、試験方法を説明する。
(a)装置
(接触圧力)
焼成部材130の重量が、直接食品に掛からないように、調圧エア−シリンダ−120を調整すると共に、ボルト115及び115aで案内棒117及び117aの長さを調整し、接触圧力pを所望の値に調整した。
(接触時間)
エア−シリンダ−110の作動及び停止を制御するプログラマブルコントロ−ラ−(図示せず)に接触時間tを入力して設定した。
(接触温度)
カ−トリッジヒ−タ−140に通電し、焼成部材130を加熱した。接触面133aに表面温度計(安立計器株式会社製、S−321K−01)を接触させて表面温度を測定し、同時にカ−トリッジヒ−タ−140に結線されたスライダック(図示せず)を調節して、接触面133aの温度を所望の温度に設定した。
【0043】
(b)試験条件
接触圧力は、2kPa及び4kPaの二種類の値とし、この値に対応して、焼成時間を0.5s及び1.0sの二種類で行った。従って、接触条件ptは、1.0kPa・s、2.0kPa・s、2.0kPa・s、及び4.0kPa・s、の四種類の値で試行した。
温度条件は、絶対温度で673Kから923Kまで(即ち400℃から650℃まで)、10℃間隔で温度を上昇させ、各温度条件につき上記4種類のpt値で焼成試験を行い、接触面133aの状態及び冷菓の状態を各々肉眼で観察した。
【0044】
3)試験結果
この試験の結果は表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、接触面133aの絶対温度が773K(即ち500℃)未満である場合は、接触面133aに焦げが付着し、この温度範囲では連続的に焼成を行うことはできないことが認められた。この結果から、工業的な大量生産に必要な接触温度の範囲は、絶対温度773K以上であることが判明した。
また、表1から明らかなとおり、接触面133aの温度が873K(即ち600℃)を越えると冷菓の溶融が激しくなり、焼成を行うことができないことも認められた。但し、833〜873K(即ち560〜600℃)の範囲では、冷菓は若干溶融するが、再度冷凍庫にて凍結すれば復元する程度であった。
この結果、容器入り食品が冷菓である場合は、冷菓の溶融を考慮する必要があるため、接触温度の範囲は前記数式2又は数式4を満たす必要があり、また前記数式6を満たす範囲では冷菓の溶融が全くなく、より望ましいことが判明した。尚、他の接触条件で、また他の装置を使用して同様に試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0045】
【表1】
【0046】
試験例2
この試験は、接触条件ptと、冷菓の焼き色及び冷菓の溶融状態との関係を調べるために行った。
1)試料の調製
前記試験例1と同様の試料を調製した。
2)試験方法
(a)装置
前記試験例1と同一の装置を用いた。
(b)試験方法
接触圧力を0.5〜6.0kPaの範囲で、また、焼成時間を0.2〜1.5sの範囲で適宜変更し、接触条件ptの値を、0.1、0.3、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0及び7.0の10種類の値とした。
【0047】
温度条件は、接触面133aに焦げが付着しない条件である773Kから873Kの範囲(即ち500℃から600℃の範囲)で、20℃間隔で温度を上昇させ、各温度条件につき前記10種類のpt値で焼成し、冷菓の表面の焼き色を肉眼で観察した。食欲を喚起するという点を評価項目として、冷菓の焼き色を、濃い、良好、及び薄いの3段階で評価した。また、更に、良好な焼き色のものの中で、特に良好な焼き色であり、かつ焼成後の冷菓の溶融が全くないものを最良と評価した。
【0048】
3)試験結果
この結果は表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、接触条件ptの値が大きいほど、また接触温度Tが高いほど、焼き色は濃くなり、逆に接触条件ptの値が小さいほど、また接触温度Tが低いほど、焼き色は薄くなる傾向が認められた。また、表2において「濃い」と評価された条件では、全て冷菓の溶解が認められた。
この試験の結果から、容器入り食品が冷菓である場合には、良好な焼き色を得る焼成条件は、前記数式1又は数式3を満たす範囲であることが確認された。また、特に最良の焼き色を得ることができる条件は前記数式5を満たす範囲であることが確認され、同時に冷菓の溶融がない温度条件が前記数式6を満たす範囲であることが再確認され、総じて、より望ましい条件は前記数式5及び数式6を満たす範囲であることが確認された。尚、接触圧力p及び接触時間tの値を種々変化させて同様に試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0049】
【表2】
【0050】
試験例3
この試験は、試料が弾性を有する場合について、弾性が焼成条件にどのような影響を及ぼすかを確認するためにプリンを試料として行った。
1)試料の調製
(a)プリン
市販の鶏卵をボウルに割卵して溶きほぐし、市販の牛乳(森永乳業社製)を混合して均一に攪拌し、プリン原料を調製した。このプリン原料は、牛乳50部(重量。以下特に断りのない限り同じ。)と鶏卵50部、牛乳67部と鶏卵33部、及び牛乳75部と鶏卵25部の三種類を調製した。三種類のプリン原料を100ccの樹脂カップに80gずつ充填し、家庭用蒸し器により90℃で20分間の条件で蒸しあげ、三種類の容器入りプリンを製造した。牛乳50部と鶏卵50部のものを試料1、牛乳67部と鶏卵33部のものを試料2、牛乳75部と鶏卵25部のものを試料3とした。
試料1、2、及び3の容器入りプリンの弾性を確認するために、市販のクリープメーター(株式会社山電製。RE−33005)を使用し、No.6プランジャー(接触面直径8mm)を各試料の上から押しつけ、試料が破断した圧力(以下、破断強度と記載する。)を測定した。その結果、試料1の破断強度は192kPa、試料2の破断強度は100kPa、試料3の破断強度は57kPaであった。
(b)被覆物
容器入りプリンの表面に各々グラニュー糖6gを振り掛けて薄い層状を形成した。
【0051】
2)試験方法
(a)装置
前記試験例1及び2と同一の装置を使用した。
(b)試験条件
接触圧力pを、0.04kPa以上、破断強度以下の範囲とし、また接触時間を、0.3秒以上、15秒以下の範囲として、ptの値を適宜設定し、また温度条件を試験例1と同様に、673Kから923Kまで(即ち400℃から650℃まで)、10K間隔で温度を設定して、前記試験例1及び2と同様の焼成試験を行い、接触面133aの状態及び試料の状態を各々肉眼で観察した。
【0052】
3)試験結果
a)接触温度T
この試験の結果、接触温度Tの範囲については、前記試験例1と同様の結果が得られた。即ち、接触温度Tが773K未満であれば接触面133aに焦げが付着し、873Kを超えると焼き色が濃くなりすぎる傾向にあった。
従って、冷菓以外の容器入り食品、特に弾性を有する容器入り食品であっても、接触温度Tは773K以上が必要であり、焼き色が良好である望ましい範囲は873K以下であることが確認された。
b)接触条件pt
接触条件ptの下限値については、いずれの試料もptの値が2.05×10e-0.0051T未満である場合には、接触温度Tの高低に関わらず(ただし、873K以下の範囲に限る。)焼き色が薄くなりすぎることが判明した。
接触条件ptの上限値については、前記試験例2とは異なり、試料の破断強度が影響する傾向にあった。即ち、試料1については、ptの値が1.31×104 e-0.0092Tを超えた場合に、焼き色が濃くなりすぎ、また被覆物のみならずプリン本体まで焦げる結果となった。また試料2については、ptの値が0.98×104 e-0.0092Tを超えた場合に同様の結果となり、試料3については、ptの値が0.70×104 e-0.0092Tを超えた場合に同様の結果となった。
尚、試料の破断強度を種々変更して同様の試験を反復したが、破断強度が16.33kPa未満である場合には、試料が軟らかすぎるため焼成部材130を接触させても十分な加熱ができなかった。
この結果、本発明は冷菓以外の容器入り食品に対して問題なく適用できることが判明した。
また、特に弾性を有する試料、例えばプリンにおいて、接触温度は次の数式5、
【0053】
【数5】
【0054】
〔だたし、上式において、Tは焼成部材が接触する面の表面温度(絶対温度K)を表す〕の範囲が望ましいことが判明した。
また、弾性を有する試料、例えばプリンにおいて、接触条件は次の数式6、
【0055】
【数6】
【0056】
〔ただし、上式において、tは焼成部材の接触時間(秒)、pは焼成部材の接触圧力(kPa)、Tは焼成部材が接触する面の表面温度(絶対温度K)を表し、Kは係数であってK=(1nf−2.65)/2.00×10-4)、ここにfは破断強度(kPa)であり、f≧16.33〕の範囲が望ましいことが判明した。
【0057】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
図2は本発明の表面焼成装置の一実施例を示す一部断面図である。図2において、表面焼成装置本体100は、前記図1に示した表面焼成手段10に相当する装置である。前記図1に示した他の機器については、図2においては図示及び説明を省略する。
図2において、表面焼成装置本体100は床101に設置される。表面焼成装置本体100の架台102は、ボルトナット103及び104により傾きを調節することができる。なお、架台102にはボルトナットは合計4本設置されているが、図2ではボルトナット103及び104のみを図示して他は省略している。
架台102の棚部102aには容器入り食品Dが載置されるが、棚部102aの上面には搬送手段であるベルトコンベア−(図示せず)のベルト102bが通っており、容器入り食品Dはベルト102bの上に載置される。図2において、ベルト102bは紙面の奥側から手前側の方向に通っており、容器入り食品Dは、紙面の奥側から手前側の方向に搬送され、表面焼成装置本体100の位置に止められることになる。
【0058】
フレ−ム105がボルトナット106により架台102に固定されているが、ボルトナット106が貫通する孔は、架台102では上下方向に縦長の形状の孔であるため、フレ−ム105の高さ位置を自由に調節して固定することができる。
フレ−ム105には、エア−シリンダ−110(CDM2QF20−50F)がボルト111により固定されている。エアシリンダ−110のロッド112は下方向に伸縮自在に突出しており、末端がボルト112aにより上部板113に固定されている。
上部板113からは下方向に向けて2本のア−ム114及び114aがボルト止めされており、2本のア−ム114及び114aの下方末端には中間板116が各々ボルト止めされている。
【0059】
中間板116には下方向に向けて2本の案内棒117及び117aが各々ボルト115及び115aにより固定されている。なお、案内棒117及び117aの下方末端は、下部板118には固定されておらず、下部板118に尖設された孔に貫入されているだけであるが、その部分の詳細は図示を省略している。結局、下部板118は、案内棒117及び117aによって左右方向に変位することができず、案内棒117及び117aに沿って上下方向にのみ変位することができる。
中間板116には、調圧式エア−シリンダ−120(CDJ2QB16−15)が配設されている。調圧式エア−シリンダ−120のロッド121は下方向に突出しており、フロ−ティングジョイント122(JA15−5−080)を介して下部板118にボルト止めされている。従って、下部板118より下側の部材の荷重は、全て調圧式エア−シリンダ−120のロッド121にかかっている。尚、案内棒117及び117aには、各々コイルバネ123及び123aが巻装されている。
【0060】
下部板118には焼成部材130が固定されている。焼成部材130は、上部部材131、中間部材132、及び接触部材133を備えており、これらの三つの部材はボルトナット134によって一体的に固着されている。三つの部材を固着するボルトナットは、図2のボルトナット134以外にも存在するが、図2中では図示を省略している。尚、図2においては、Aの部分は断面図として示している。
前記調圧式エア−シリンダ−120は、ロッド121を上向に縮退する方向に引っ張るシリンダ−である。即ち、調圧式エア−シリンダ−120は、下部板118及び焼成部材130を上方向に引っ張り、かつコイルバネ123及び123aの下方向への反発に抗して均衡状態を維持している。従って、調圧式エア−シリンダ−120は、下部板118及び焼成部材130の全重量と、コイルバネ123及び123aの弾力との合成力に釣り合った状態で、下部板118及び焼成部材130を引っ張り、懸吊していることになる。
【0061】
焼成部材130においては、中間部材132と接触部材133との間に、三本のカ−トリッジヒ−タ−140(200V、750ワット型)が挟着されている。カ−トリッジヒ−タ−140の導線は温度調節型スライダックに結線されているが図示は省略している。
尚、以上の装置において、エア−シリンダ−110の作動及び停止、並びに作動時間は、図示しないプログラマブルコントロ−ラ−によって、ベルトコンベア−のベルト102bと同期して自動的に制御される。従って、焼成部材130の接触時間は、プログラマブルコントロ−ラ−に入力して自在に設定することができる。
【0062】
次に、図2の装置の作用を説明する。ベルトコンベア−のベルト102bに載置された容器入り食品Dが、ベルト102bにより搬送されて表面焼成装置本体100の位置に停止すると、エア−シリンダ−110が作動し、ロッド112が下方向に伸長する。このため、上部板113、中間板116、下部板118、及び焼成部材130が下方向に変位する。
尚、焼成部材130は、予めカ−トリッジヒ−タ−140によって所定の温度に加熱されている。
【0063】
接触部材133の接触面133aが容器入り食品Dの上表面に適度に接触した段階で、エアシリンダ−110のロッド111が限界まで伸長して停止する。この際、接触による抵抗によって接触面133aが上方向の微小な力を受ける。焼成部材130は調圧式エア−シリンダ−120によって引っ張られた状態で懸吊されているため、その微小な力により焼成部材130が若干上方向に変位し、ここで再度、力が均衡して停止する。従って、調圧式エア−シリンダ−120の引張力の大小により、接触面133aの接触抵抗を増減できることになる。換言すれば、接触圧力は、フレ−ム105の高さ位置、及び調圧式エア−シリンダ−120の引張力の設定によって所望の値に調節することができるのである。
【0064】
かくして、カ−トリッジヒ−タ−140により加熱された接触面133aによって、容器入り食品Dの上表面が加熱されて焼成される。
所定の時間焼成した後は、エアシリンダ−110の作動が停止し、ロッド112が上方向に縮退し、上部板113、中間板116、下部板118、及び焼成部材130は上方向に変位して元の位置に復帰する。
次いで、ベルトコンベア−のベルト102aにより、焼成が終了した容器入り食品Dが紙面の手前側に搬送され、紙面の奥側より、新たな容器入り食品Dが搬送され、表面焼成装置本体100の位置に停止する。
【0065】
図2の装置においては、焼成部材130には、上部部材131、中間部材132、及び接触部材133を一体化させて熱容量を増大させている。従って、焼成操作の途中で接触部材133の温度が低下することがない。また、上方向に引っ張る調圧式エア−シリンダ−120と併用して、下方向に押し下げるコイルバネ123及び123aを使用しているため、熱容量が大きく重量が重い焼成部材130を使用していても、接触面133aの接触の状態は極めてデリケ−トである。
また、図2では、表面焼成装置本体100を1台だけ図示しているが、これは紙面の横方向に複数台を並べて設置し、処理量を増やすことも可能である。
【0066】
参考例1
次に、本発明の製造手段の一例について説明する。
まず、卵黄とグラニュ−糖を1:1で混合し、攪拌して被覆物を得た。
次に、乳脂肪8.0%、無脂乳固形分70%、オ−バ−ラン60%のアイスクリ−ムを、180ccの紙カップに100g充填し、常法により凍結硬化した冷菓(前記試験例1に使用したものと同一)に対して、前記被覆物を6gづつ充填し、冷菓を得た。
次に、前記実施例1に記載した表面焼成装置本体を使用し、接触温度を793K(即ち520℃)、接触圧力を4kPa、接触時間1sで焼成を行った結果、良好な焼き色を有し、潤沢な芳香を有する冷菓を得た。
【0067】
次いで、複数の冷菓を順次連続的に表面焼成装置本体に搬入し、同一の条件で連続的に焼成を行い、約5分間の運転を行ったところ、良好な焼き色を有する50個の冷菓を得た。
得られた各冷菓の焼き色を、色彩色差計(ミノルタカメラ株式会社製。CR−200)で測定した結果、L、a、bの値は、全て60±5、16±5、50±5の範囲であり、本発明の製造手段によれば、均一な焼き色の容器入り冷菓を安定して連続的に得られることが確認された。
【0068】
参考例2
前記参考例1と同一の冷菓を、同一の方法で連続的に5分間焼成した。但し、個々の冷菓で焼成条件を変更し、接触温度及び接触圧力を共通にして接触時間を0.5〜1.5sの範囲で種々変更して焼成し、30個の冷菓を得た。
得られた冷菓の焼き色を肉眼で観察したところ、焼き色が濃すぎるもの、薄すぎるもの、良好なものが混在していた。この中で、焼き色が良好なもののみを選別し、参考例1と同一の方法により色彩色差計で焼き色を測定した結果、L、a、bの値は、各々60±5、16±5、50±5の範囲であった。
従って、本発明の製造方法では、焼成条件によって焼き色の濃淡を自由にコントロ−ルできることが確認され、また、良好な焼き色の範囲は、色彩色差計の値で、L、a、bが各々60±5、16±5、50±5の範囲であることが確認された。
【0069】
参考例3
牛乳60部、全卵10部、卵黄12部、及びグラニュー糖18部を混合攪拌し、100ccの樹脂カップに80gづつ充填し、家庭用蒸し器を使用して90℃で20分間蒸しあげる操作を反復し、カップ入りプリン20個を得た。そのカップ入りプリンの表面に各々グラニュー糖6gを振り掛けて薄い層状を形成した。前記実施例1に記載した表面焼成装置本体を使用し、接触温度を823K(即ち550℃)、接触圧力を1kPa、接触時間3秒の条件で、各カップ入りプリンを連続的に焼成したところ、均一で良好な焼き色を有する20個のプリンを得た。
【0070】
【発明の効果】
本発明は、容器入り食品に対して、焼成部材を所定の焼成条件で接触させることによりその表面を焼成し、表面に焼き色を付した容器入り食品を連続的に製造する手段及び装置であり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。
(1)本発明の製造手段及び装置によれば、容器を変形させることなく、容器入り食品に対して均一の焼き色を付すことが可能である。
(2)本発明の製造手段及び装置によれば、工業的な大量生産が可能である。
(3)本発明の製造手段及び装置を冷菓に適用した場合は、冷菓を溶融させることなく安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の実施の一態様を示す図である。
【図2】本発明の装置の一実施例を示す一部断面図である。
【図3】本発明の容器入り冷菓の製造手段における焼成条件を示した図である。
【符号の説明】
1 表面焼成装置
2 搬送手段
10 表面焼成手段
11 接触解離手段
12 弾性体
13 焼成部材
14 加熱手段
15 ソレノイド
20 制御手段
100 表面焼成装置本体
110 エア−シリンダ−
120 調圧式エア−シリンダ−
130 焼成部材
140 カ−トリッジヒ−タ−
Claims (1)
- 容器入り食品の表面を連続的に焼成する装置であって、容器入り食品を連続的に搬送する搬送手段、加熱手段を有し所定の温度範囲に加熱される焼成部材、容器入り食品の表面に該焼成部材を所定の圧力で接触させて解離させる接触解離手段、該接触解離手段と焼成部材との間に介在し焼成部材と容器入り食品との接触圧力を緩和させる弾性体、並びに、搬送手段及び接触解離手段を制御して容器入り食品を連続的に搬送しながら焼成する制御手段を備えたことを特徴とする容器入り食品の連続的表面焼成装置。
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