JP3696662B2 - サスペンション装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の懸架系を構成するサスペンション装置の改良に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
車両の懸架系を構成するサスペンション装置については、従来から種々の提案があるが、例えば、特開平2−95919号公報には、車両のバネ上とバネ下との間に配在される流体圧シリンダにそれぞれの流路を介して連結される第一アキュムレータ及び第二アキュムレータを有すると共に、第一アキュムレータに連通する流路中に配在される第一減衰バルブ及び第二アキュムレータに連通する流路中に配在される第二減衰バルブを有し、第一アキュムレータが第二アキュムレータより低バネ定数に設定され、第一減衰バルブが第二減衰バルブより高減衰定数に設定される構成のサスペンション装置が提案されている。
【0003】
それ故、該従来例にあっては、流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときには、流体圧シリンダからの流体が各アキュムレータの内圧を等しくするように流れることから、より多くの流体が低バネ定数の第一アキュムレータの方に流れるようになり、従って、高減衰定数に設定されている第一減衰バルブにおける流量が多くなり、高減衰力が得られることになる。
【0004】
また、該従来例にあっては、流体圧シリンダにおける振動周波数が高周波数領域になるときには、流体圧シリンダからの流体の流出量が減るから、各アキュムレータのバネ定数の比に拘りなく流体が流出することになり、従って、流体圧シリンダからの流体が低減衰定数の第二減衰バルブの方を流れることになって、低減衰力が得られることになる。
【0005】
その結果、上記の従来例によれば、流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときには高減衰力が得られ、この低周波数領域を過ぎて高周波数領域になると低減衰力が得られることになり、それまでの高減衰力を高周波数領域時に低減衰力にするハイカット特性が発現されることになる。
【0006】
その結果、バネ上共振点とバネ下共振点との間の中間周波数領域での減衰力が下がることになり、車両における乗り心地が向上されることになる。
【0007】
しかしながら、車両における操縦安定性を向上させるためには、車両におけるバネ上共振点付近における制振をするに加えて、バネ下共振点付近における制振も必要であり、従って、この観点からすれば、上記従来のサスペンション装置では、バネ上共振点付近の制振は可能になるが、バネ下共振点付近における制振が不可能になり、特に、車両におけるバネ下側のバタツキを抑制できない不都合がある。
【0008】
それに対して、例えば、特開昭63−255112号公報には、上記した流体圧シリンダにおけるシリンダ圧力を流体圧源に連通する制御弁を介しての流体圧の給排で直接制御し得るように構成する一方で、流体圧シリンダとアキュムレータとを連通する流路中に、上記したハイカット特性の減衰バルブに加えて、ローカット特性の減衰バルブを併せて、即ち、直列に配在させる構成のサスペンション装置が提案されている。
【0009】
即ち、上記のローカット特性とは、流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときには低減衰力であるが、この低周波数領域を過ぎて高周波数領域になると高減衰力になる特性であって、このローカット特性を具有する減衰バルブが上記したハイカット特性の減衰バルブと併せて配在されることで、バネ上共振点付近において高減衰力が得られると共に、バネ下共振点付近においても高減衰力が得られることになる。
【0010】
因に、この従来例において、バネ上共振点付近からバネ下共振点付近に至る迄の間は、発生減衰力が低くなる。
【0011】
その結果、この後者の従来提案によれば、上記したバネ上共振点付近における制振に加えてバネ下共振点付近における制振も可能になり、従って、車両におけるバネ下側のバタツキをも抑制できることになり、車両における乗り心地の改善と操縦安定性の向上を同時に達成できることになる。
【0012】
因に、この従来例においては、流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域に至る迄は、制御弁でシリンダ圧力が制御される。
【0013】
しかしながら、この従来例にあっては、ローカットバルブとハイカットバルブとが流体圧シリンダとアキュムレータとを連結する流路中に直列状態に配在されてなるとするので、所謂応答遅れの危惧がある上に、配在の形態によっては互いに影響されることがあり、従って、設定通りの減衰特性を得られなくなる危惧がある。
【0014】
また、この従来例にあっては、流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域に至る迄は、制御弁によってシリンダ圧力を制御する構成であるから、制御弁の配在が必須になるのは勿論、流体圧源や関連機器の装備をも必須になり、サスペンション装置全体を複雑化,大型化し易くし、車載性を低下させる上に、コストの上昇化を招来し易くなる等の不利もある。
【0015】
そして、上記したいずれの従来例にあっても、流体圧シリンダの長大化や構造の複雑化を招来しない上では、流路中に減衰バルブを配在するのが有効だが、反面、それによって減衰バルブが流路を構成する配管の影響を受け易くなるから、該減衰バルブの減衰特性を設定するのが容易でなくなる不利もある。
【0016】
この発明は、前記した事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所望のバネ上及びバネ下の制振を可能にし、乗り心地を改善すると共に操縦安定性を向上させ、車両における懸架系を構成するに最適となるとともに、ローコストなサスペンション装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、この発明の構成を、上端が車両のバネ上側に連結されると共に下端が車両のバネ下側に連結される流体圧シリンダと、該流体圧シリンダにそれぞれの流路を介して連結される第一アキュムレータ及び第二アキュムレータと、第一アキュムレータに連通する流路中に配在される第一減衰バルブと、第二アキュムレータに連通する流路中に配在される第二減衰バルブと、を有してなり、第一アキュムレータが第二アキュムレータより低バネ定数に設定されると共に、第一減衰バルブが第二減衰バルブより高減衰定数に設定されるサスペンション装置において、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域以降に高減衰力を発生するローカットバルブに設定されてなり、あるいは、第二減衰バルブが上記ローカットバルブに設定されるに加えて第一減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域を過ぎた以降に低減衰力を発生するハイカットバルブに設定されてなるとともに、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときに発生される一次遅れの流体圧によってスプールを摺動させると共に、該スプールの摺動でメインバルブを迂回するバイパス路を開放して発生減衰力を低減衰力にする。
【0018】
また、上記した目的を達成するために、この発明の構成を、上端が車両のバネ上側に連結されると共に下端が車両のバネ下側に連結される流体圧シリンダと、該流体圧シリンダにそれぞれの流路を介して連結される第一アキュムレータ及び第二アキュムレータと、第一アキュムレータに連通する流路中に配在される第一減衰バルブと、第二アキュムレータに連通する流路中に配在される第二減衰バルブと、を有してなり、第一アキュムレータが第二アキュムレータより低バネ定数に設定されると共に、第一減衰バルブが第二減衰バルブより高減衰定数に設定されるサスペンション装置において、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域以降に高減衰力を発生するローカットバルブに設定されてなり、あるいは、第二減衰バルブが上記ローカットバルブに設定されるに加えて第一減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域を過ぎた以降に低減衰力を発生するハイカットバルブに設定されてなるとともに、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときに発生される一次遅れの流体圧によってシャフトを移動させると共に、該シャフトの移動でメインバルブを形成するリーフバルブおける初期荷重を低下させて、あるいは、リーフバルブとバルブシートとの間を開放傾向にして発生減衰力を低減衰力にする。
【0019】
さらに、第一減衰バルブ及び第二減衰バルブがそれぞれが繋がる第一アキュムレータあるいは第二アキュムレータを形成する各ロアーケース内に収装されてなるとする。
【0021】
【発明の実施の態様】
以下、図示した実施の態様に基づいて、この発明を説明するが、この発明のサスペンション装置は、図1に示すように、基本的には、上端が車両のバネ上側に連結されると共に下端が車両のバネ下側に連結される流体圧シリンダ1と、該流体圧シリンダ1にそれぞれの流路2,3を介して連結される第一アキュムレータ5及び第二アキュムレータ6と、第一アキュムレータ5に連通する流路2中に配在される第一減衰バルブ7と、第二アキュムレータ6に連通する流路3中に配在される第二減衰バルブ8と、を有してなり、第一アキュムレータ5が第二アキュムレータ6より低バネ定数に設定されると共に、第一減衰バルブ7が第二減衰バルブ8より高減衰定数に設定される構成とされ、流体圧シリンダ1における圧側室4が上記各流路2,3に連通されるとしている。
【0022】
以上の構成から、該サスペンション装置にあっては、流体圧シリンダ1における振動周波数が低周波数領域にあるときには高減衰力が得られ、振動周波数が低周波数領域を過ぎて高周波数領域になると低減衰力が得られることになり、それまでの高減衰力を高周波数領域時に低減衰力にするハイカット特性が発現される上に、ローカットバルブを配在することで、バネ下共振点付近で高減衰力状態にすることが可能になる。
【0023】
その結果、バネ上共振点付近及びバネ下共振点付近で高減衰力状態にし、その間を低減衰力状態にすることが可能になる。
【0024】
また、上記の構成において、ローカットバルブに加えてハイカットバルブを併設する場合には、該ハイカットバルブでバネ下共振点付近を過ぎてから低減衰力状態にすることが可能になり、その結果、バネ上共振点付近及びバネ下共振点付近でのみ高減衰力状態にし、それ以外のところでは低減衰力状態に維持することが可能になる。
【0025】
また、該サスペンション装置にあっては、流体圧シリンダ1とバネ定数が大小異なり並列配置される各アキュムレータ5,6とを連結する各流路2,3中に減衰定数が大小異なる減衰バルブのいずれかを配在させるから、各減衰バルブが独立され、互いに影響されなくなり、各減衰バルブにおいて設定通りの減衰特性の発現を可能にする。
【0026】
ところで、この発明においては、第一減衰バルブ7及び第二減衰バルブ8は、周波数感応特性を有するように設定され、該各減衰バルブ7,8を有する流路2,3がそれぞれ繋がるアキュムレータ5,6を形成する各ロアケース内に着脱可能に収装されてなるとしている。
【0027】
これによって、流体圧シリンダ1とアキュムレータ5,6とを連結する流路2,3を形成するための配管による影響を受けなくなり、各減衰バルブ7,8において設定通りの減衰特性の発現を可能にすることになる。
【0028】
少し説明すると、図2は、例えば、アキュムレータ5に減衰バルブを収装した状態を一部破断して示すものであるが、同図において、11は、アキュムレータ5の本体を構成する球状のシェルである。
【0029】
このシェル11の内部は、ブラダ(ゴム膜)12によってガス室13および液体室14の二室に隔成され、該ブラダ12は、リング状の保持部材15によってその周縁がシェル11の内面に密着保持されている。
【0030】
また、16は、上記シェル11の開口部に一端部が密嵌された筒状のロアケースであり、このロアケース16の内周には後述の減衰バルブ20を保持するリング状の凸条17が突設されている。
【0031】
さらに、18は、上記ロアケース16の他端内周に一端部がねじ込まれた筒状のポートキャップで、該ポートキャップ18の他端部は、上記流体圧シリンダ1の圧側室4に連通する流路2端に連結可能となっている。
【0032】
尚、上記ポートキャップ18の一端部にはインロー部19が設けられ、ポートキャップ18をロアケース16内にねじ込むことによって、このインロー部19と上記凸条17との間に減衰バルブ20外周に設けられたスカート部21を挟圧保持する。
【0033】
22は、上記インロー部19の外周とロアケース16の内周とをシールして、流体が外部へ洩れ出すのを防止するOリングである。
【0034】
尚、上記減衰バルブ20は、アキュムレータ5の液体室14側を圧側の減衰力を発生するように、一方、ポートキャップ18側を伸側の減衰力を発生するように、上記ロアケース16内に設置されて、圧側,伸側を分離している。
【0035】
一方、以上のように形成されたアキュムレータのロアーケース16内に着脱可能に収装される減衰バルブは、以下のように構成されている。
【0036】
即ち、図3は、前記した第二減衰バルブ8とされる、即ち、ローカット特性の減衰バルブの一実施の態様を示すものであるが、この図3において、31は、合成樹脂の成形品や板金などからなるベースバルブのカバーで、これには内外に貫通する窓などが設けられ、さらには、キャップ47,スリーブ35,メインバルブとしてのリーフバルブ37,サポート38,バルブストッパ39とベースバルブケース32を挟み込んでアキュムレータに組み付け後にばらけないように工夫してある。
【0037】
ベースバルブケース32は、軸対称に設けられた2つのメインポート33を有して、中央部の対称位置に2つの開口34を有するスリーブ35の外周にOリング36の介在下に取り付けられている。
【0038】
また、ベースバルブケース32の両端(上下端)にそれぞれ配在されているリーフバルブ37は、メインポート33の各一端を開閉可能に閉塞している。
【0039】
尚、上記スリーブ35の各開口34は、各メインポート33にベースバルブケース32の内周で連通している。
【0040】
一方、上記スリーブ35内には、上下部の各外周に環状溝40を有するスプール41が摺動自在に微小クリアランスを介して設けられており、このスプール41の両端と、このスプール41の両端を覆うように上記スリーブ35の両端に嵌挿されたキャップ47との間には、一次遅れの圧力室43がそれぞれ形成されている。
【0041】
また、上記キャップ47は、適宜の径に開穿された制御オリフィス44を有しており、該制御オリフィス44を介して一次遅れの圧力室43とカバー31の外部の上流側との連通を可能にしている。
【0042】
また、スプール41の両端は、上記各キャップ47との間に介装されたスプリング45によって支承されている。
【0043】
以上のように形成されたこの実施の態様に係る第二減衰バルブ8としてのローカット特性の減衰バルブ20は、次のように作動するが、該減衰バルブ20は、圧側および伸側の仕様、即ち、減衰力伸圧比によって、リーフバルブ37の板厚,枚数等は異なるが、部品の構成が全く同一で対象配置とされ、かつ、動作も同一であるため、以下にはその一方について説明する。
【0044】
先ず、路面振動の入力で流体圧シリンダ1における振動周波数が低周波数領域に有るときには、流体の移動速度が遅いことから、制御オリフィス44の抵抗が小さく、従って、この制御オリフィス44を通して一次遅れの圧力室43内には一次遅れの流体圧が蓄圧される。
【0045】
この蓄圧で、スプール41がスリーブ35内をその蓄圧側とは反対方向に移動することになり、このとき、スリーブ25に形成の開口34にスプール41に形成の環状溝40が連通し、メインバルブたるリーフバルブ37を迂回するバイパス路が形成されることになる。
【0046】
このため、ベースバルブケース32の一方からメインポート33に流入する流体は、他方のメインポート33から流出してリーフバルブ37を通過しない流れとなり、このため、該減衰バルブ20は、低い減衰力の発生状態となる。
【0047】
一方、上記振動周波数が高周波数領域になると、流体の移動速度が速くなるために、制御オリフィス44の抵抗が大きくなり、従って、一次遅れの圧力室43への蓄圧が行われなくなる。
【0048】
このため、スプール41は、移動することなく図示する状態のままにおかれ、スリーブ35の開口34とスプール41の環状溝40との連通が遮断されて上記したバイパス路が遮断される。
【0049】
従って、ベースバルブケース32の一方からメインポート33に流入する流体は、流出側のリーフバルブ37を押し開いてのみ、ベースバルブケース32の他方へ流出し、このため、該減衰バルブ20は、高い減衰力の発生状態となる。
【0050】
その結果、該減衰バルブ20にあっては、流体圧シリンダ1における振動周波数が低周波数領域にあるときには低い減衰力のままであり、上記振動周波数が高周波数領域になると高い減衰力を発生することになり、ローカット特性の減衰力発生状態を呈することになる。
【0051】
図4は、同じくローカット特性の減衰バルブの他の実施の態様を示すもので、同図において、51は、ベースバルブのカバーで、これには内外に貫通する窓などが設けられ、さらには、ディスク63,キャップ67,バルブストッパ60とベースバルブケース52を挟み込んでアキュムレータに組み付け後にばらけないように工夫してある。
【0052】
また、54は、このベースバルブケース52に設けられて、各一のメインポート53の開口部を覆うメインバルブたるリーフバルブ55を支持するバルブシートである。
【0053】
さらに、56は、ベースバルブケース52の中心にこれを貫通するように設けられたシャフト、57は、このシャフト56の外周に設けられた筒状のガイドで、このガイド57をインロー部として上記リーフバルブ55およびこれの内周部を支持するサポート58が嵌挿されている。
【0054】
尚、シャフト56の外周とガイド57の内周とのクリアランスは、極めて小さく設定されている。
【0055】
また、上記ガイド57の外周とこれに嵌挿されているベースバルブケース52とは、このベースバルブケース52の内周に形成の溝に介装のOリング59によりシールされている。
【0056】
上記ベースバルブケース52の両側面には上記リーフバルブ55の変位を規制するフランジ60aを持ったリング状のバルブストッパ60が配置されており、このバルブストッパ60にはそれぞれ各一のメインポート53に連通するポート61が設けられている。
【0057】
62は、シャフト56のインロー部端に内周部が嵌挿保持されたサブリーフバルブ、63は、ディスクで、これがサブリーフバルブ62の外周部を、一次遅れの圧力室64を形成する空間を介して支持するバルブシート65を有する。
【0058】
66は、上記ディスク62の中心部に穿設され大きさが最適なサイズに設定された制御オリフィスで、これが一次遅れの圧力室64の内外に貫通している。
【0059】
尚、67は、カバー51とバルブストッパ60との間に一端が保持されながら他端が上記ディスク63を保持するキャップであり、該キャップ67には、カバー51に設けられた窓(図示せず)に対応する位置に通油孔(図示せず)が設けられている。
【0060】
以上のように形成されたこの実施の態様のローカット特性の減衰バルブは、以下のように作動する。
【0061】
流体圧シリンダ1における振動周波数が低周波数領域にあるときには、制御オリフィス66を介して一次遅れの流体圧が一次遅れの圧力室64に蓄圧され、この蓄圧でシャフト56が反対方向に移動し、該シャフト56の移動で反対側のリーフバルブ55が対応するバルブシート54から離れる傾向におかれて初期荷重が低下される傾向になり、従って、該リーフバルブ55による発生減衰力が低いものになる。
【0062】
これに対し、上記振動周波数が高周波領域になるときには、上記の一次遅れの流体圧が一次遅れの圧力室64に蓄圧されず、従って、シャフト56が移動せずして、他方のリーフバルブ55が対向するバルブシート54に当初の設定通りの初期荷重で隣接することになる。
【0063】
このため、上記メインポート53を流れる流体は、該他方のリーフバルブ55を強制的に押し開くような流れとなり、このとき、所定の高減衰力の発生状態になる。
【0064】
従って、この実施の態様に係る減衰バルブ20にあっても、前記した図3に示す実施の態様の場合と同様に、低周波数領域で低減衰力の発生状態になり、高周波数領域で高減衰力の発生状態となるローカット特性を示すことになる。
【0065】
図5は、同じくローカット特性の減衰バルブのさらに他の実施の態様を示すものであって、同図において、71は、ベースバルブケースで、各一つのメインポート72が配置されている。
【0066】
また、このベースバルブケース71の中心部にはシャフト73が貫通するように設けられ、このシャフト73の外周には筒状のガイド74を介して上記ベースバルブケース71が嵌挿されている。
【0067】
尚、シャフト73の外周とガイド74の内周とのクリアランスは、極めて小さく設定されている。
【0068】
また、75は、これらのベースバルブケース71とガイド74との間に介装されたOリングである。
【0069】
さらに、上記シャフト73をインロー部にして、バルブストッパ76,サポート77,メインバルブとしてのリーフバルブ78およびリーフスプリング79が上記ガイド74の端面により挟み込むように固定されており、このうちリーフバルブ78は、ベースバルブケース71に設けられたバルブシート80に外周側端が隣接している。
【0070】
また、上記ベースバルブケース71において、リーフバルブ78により被われたメインポート72の出口部には、上記ガイド74をインロー部として、通油のための透孔や切欠を持ったリーフスプリング79により支持されたノンリタンバルブ81が当接され、このノンリタンバルブ81には、上記出口部の対応部位に大きさが最適に設定された制御オリフィス82が穿設されている。
【0071】
そして、上記ノンリタンバルブ81と上記リーフバルブ78との間に形成された空間が圧力室83とされており、該圧力室83は、上記制御オリフィス82を介して内外が連通されている。
【0072】
それ故、この実施の態様にあっては、低周波入力時には、流体の移動速度が遅くなるために制御オリフィス82における抵抗が小さくなり、従って、圧力室83内の流体の多くが下室側に排出されることになり、圧力室83の流体量変化でシャフト73が反対側に移動することになって、反対側のリーフバルブ78の支持がなくなる。
【0073】
その結果、メインポート72が開放され、流体がリーフバルブ78を通らない流れとなって、その際の発生減衰力を低いものにする、即ち、ローカット特性の低い減衰力の発生状態になる。
【0074】
それに対して、高周波入力時には、流体の移動速度が速くなるために制御オリフィス82における抵抗が大きくなり、従って、圧力室83内の流体が下室側に排出されなくなり、圧力室83の流体量変化がなくなる。
【0075】
その結果、シャフト73が反対側に移動せず、反対側のリーフバルブ78がシートに支持されたままになり、このリーフバルブ78を流体が通ることになって、その際の発生減衰力を高いものになる。
【0076】
図6は、前記した第一減衰バルブ7とされる、即ち、ハイカット特性の減衰バルブの一実施の態様を示すものであるが、この実施の態様では、ベースバルブケース91の中心部に筒状のガイド92を介してシャフト93が貫通するように設けられ、上記ガイド92およびベースバルブケース91との間にはシール用のOリング94が介装されている。
【0077】
ここで、シャフト93の外周とガイド92の内周とのクリアランスは極めて小さく設定されている。
【0078】
また、ベースバルブケース91は、筒状のカバー95内に収納されて、このベースバルブケース91には両端に貫通する一対のメインポート96が設けられている。
【0079】
また、上記シャフト93をインロー部として小径のサポート97,リーフスプリング98がそれぞれ内径部でガイド92の端面により挟み込まれるように支持固定され、ベースバルブケース91のバルブシート99でメインバルブとしてのリーフバルブ100を外周支持している。
【0080】
また、このリーフバルブ100の内周部が、上記サポート97の上面に支持されている。
【0081】
101は、上記カバー95により支持され、かつ上記リーフバルブ100の外側に設けられたディスクで、このディスク101の内面に突設した突条部102と上記バルブシート99との間に、上記リーフバルブ100の外周部を挟持している。
【0082】
103は、上記ガイド92の外周に介装され、かつ、上記リーフスプリング98とベースバルブケース91との間に配在されて一方のメインポート96端を塞ぐように介装されたノンリタンスプリングであり、このノンリタンスプリング103にはメインポート96の一端に臨むように開口する制御オリフィス104が設けられている。
【0083】
また、上記ノンリタンスプリング103とリーフバルブ100との間には、上記制御オリフィス104によって内外が連通される空間たる圧力室105が形成されている。
【0084】
それ故、この実施の態様に係る減衰バルブにあっては、低周波入力時には、流体の移動速度が遅くなるために制御オリフィス104の抵抗が小さくなり、従って、圧力室105内の流体の多くが下室側に排出されることになり、圧力室105の流体量変化でシャフト93が反対側に移動することになって、反対側のリーフバルブ100がサポート97に押さえ付けられるようになる。
【0085】
その結果、リーフバルブ100における初期荷重が大きくなり、流体がリーフバルブ100部分を通りにくくなって、高い減衰力が発生される状態になる。
【0086】
それに対して、高周波入力時には、流体の移動速度が速くなるために制御オリフィス104における抵抗が大きくなり、従って、圧力室105内の流体が下室側に排出されなくなり、圧力室105の流体量変化がなくなる。
【0087】
その結果、シャフト93が反対側に移動せず、反対側のリーフバルブ100における初期荷重が当初の小さいままになり、このリーフバルブ100を流体が通ることになって、低い減衰力の発生状態、即ち、ハイカット特性の低い減衰力の発生状態になる。
【0088】
このことは、例えば、図7中に実線で示すように、バネ上共振点付近及びバネ下共振点付近で高い減衰力の発生状態にしながら、その間では、低い減衰力の発生状態にし、さらには、バネ下共振点付近を過ぎた後も低い減衰力の発生状態にすることが可能になる。
【0089】
そして、この場合に、各減衰バルブが各流路2,3に独立に配在されながら、図3,図4,図5に示すローカットバルブが利用されるとき、従来技術の場合に比較して、図7中に破線で表示される部分を実線で示すように、バネ上共振点付近とバネ下共振点付近との間の減衰力を一層低下傾向にすることが可能になり、車両の乗り心地の改善と操縦安定性の向上に好ましい減衰力の発生状態を実現できる。
【0090】
また、図6に示すハイカットバルブを利用するとき、従来技術の場合に比較して、図7中にバネ下共振点を過ぎる実線で表示される部分を二点鎖線で示すように、バネ下共振点を過ぎてからの減衰力の一層の低下が可能になり、好ましい減衰力の発生状態を実現できることになる。
【0091】
さらに、図6に示すハイカットバルブのベースとなる減衰力を上げ、減衰力の変化する折れ点周波数を適切に設定するだけで、従来技術の場合に比較して、図7中にバネ上共振点付近の実線で表示される部分を二点鎖線で示すように、バネ上共振点付近の減衰力を上げることが可能になり、他の周波数領域(バネ上バネ下間,バネ下以降)の特性を変えることなく、バネ上共振をさらに抑制する減衰力の発生状態に設定できる。
【0092】
また、減衰力を減衰バルブの選定のみにて、具体的には、ポートキャップ18のロアケース16に対する着脱によって、減衰バルブの収装及び交換を実現可能にし、かつ、この減衰バルブに所定の周波数特性を持たせることで、流体の管路抵抗変化や流体温度変化による影響、即ち、周波数特性変化による影響を極力小さく抑えることができる。
【0093】
さらに、従来例に比較して、減衰バルブとアキュムレータとの間の管路を省くことができ、つまり、管路形成の必要がなくなり、従って、減衰バルブがアキュムレータの応答を直接受けて、応答ロスを極めて小さく抑えることができる。
【0094】
また、上記管路の省略により、流体の負圧や液柱分離の発生がなくなり、アキュムレータがスムースに作動し、これの寿命が延ばすことができるほか、コストの低減を図ることができる。
【0095】
【発明の効果】
以上のように、この発明は、車両の各輪部に配在される流体圧シリンダと、該流体圧シリンダの圧側室に連結され、並列配置されてバネ定数の異なる二つのアキュムレータにそれぞれ互いに減衰定数が異なる減衰バルブを組み合わせることによって、システム自体に周波数特性を持たせるだけでなく、少なくとも一方が周波数感応特性を持つ各一の減衰バルブと、これらの各減衰バルブに接続されたばね定数が異なる各一のアキュムレータとを備え、これらの各一のアキュムレータの流体室側に連設されたロアケース内に、上記減衰バルブを着脱自在に設置するように構成したので、特定のばね定数を持つ各一のアキュムレータ内に所望の周波数感応機構を持った減衰バルブを装着するだけで、バネ上,バネ下,バネ上バネ下間及びバネ下以降の周波数の各領域で車輛における振動特性を最適にし、流体の液体温度や管路形状による管路抵抗の影響を受けにくく、高感度のハイカット特性およびローカット特性を持つサスペンション装置をローコストに得られるという効果がある。また、バネ上共振点付近とバネ下共振点付近との間の減衰力を一層低下傾向にすることが可能になり、車両の乗り心地の改善と操縦安定性の向上に好ましい減衰力の発生状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の態様によるサスペンション装置の基本構成を示す油圧回路図である。
【図2】この発明におけるアキュムレータの詳細を一部切断して示す正面図である。
【図3】ローカット特性の減衰バルブの一実施の態様を示す断面図である。
【図4】ローカット特性の減衰バルブの他の実施の態様を示す断面図である。
【図5】ローカット特性の減衰バルブのさらに他の実施の態様を示す断面図である。
【図6】ハイカット特性の減衰バルブの一実施の態様を示す断面図である。
【図7】この発明に係るサスペンション装置によって発現される振動周波数に対する減衰力の発生状態を示す線図である。
【符号の説明】
1 流体圧シリンダ
2,3 流路
5 第一アキュムレータ
6 第二アキュムレータ
7 第一減衰バルブ
8 第二減衰バルブ
16 ロアケース
37,55,78 メインバルブたるリーフバルブ
41 スプール
54,64,80 バルブシート
56,73 シャフト
Claims (3)
- 上端が車両のバネ上側に連結されると共に下端が車両のバネ下側に連結される流体圧シリンダと、該流体圧シリンダにそれぞれの流路を介して連結される第一アキュムレータ及び第二アキュムレータと、第一アキュムレータに連通する流路中に配在される第一減衰バルブと、第二アキュムレータに連通する流路中に配在される第二減衰バルブと、を有してなり、第一アキュムレータが第二アキュムレータより低バネ定数に設定されると共に、第一減衰バルブが第二減衰バルブより高減衰定数に設定されるサスペンション装置において、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域以降に高減衰力を発生するローカットバルブに設定されてなり、あるいは、第二減衰バルブが上記ローカットバルブに設定されるに加えて第一減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域を過ぎた以降に低減衰力を発生するハイカットバルブに設定されてなるとともに、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときに発生される一次遅れの流体圧によってスプールを摺動させると共に、該スプールの摺動でメインバルブを迂回するバイパス路を開放して発生減衰力を低減衰力にすることを特徴とするサスペンション装置
- 上端が車両のバネ上側に連結されると共に下端が車両のバネ下側に連結される流体圧シリンダと、該流体圧シリンダにそれぞれの流路を介して連結される第一アキュムレータ及び第二アキュムレータと、第一アキュムレータに連通する流路中に配在される第一減衰バルブと、第二アキュムレータに連通する流路中に配在される第二減衰バルブと、を有してなり、第一アキュムレータが第二アキュムレータより低バネ定数に設定されると共に、第一減衰バルブが第二減衰バルブより高減衰定数に設定されるサスペンション装置において、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域以降に高減衰力を発生するローカットバルブに設定されてなり、あるいは、第二減衰バルブが上記ローカットバルブに設定されるに加えて第一減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数がバネ下共振点領域を過ぎた以降に低減衰力を発生するハイカットバルブに設定されてなるとともに、第二減衰バルブが流体圧シリンダにおける振動周波数が低周波数領域にあるときに発生される一次遅れの流体圧によってシャフトを移動させると共に、該シャフトの移動でメインバルブを形成するリーフバルブおける初期荷重を低下させて、あるいは、リーフバルブとバルブシートとの間を開放傾向にして発生減衰力を低減衰力にすることを特徴とするサスペンション装置
- 第一減衰バルブ及び第二減衰バルブがそれぞれが繋がる第一アキュムレータあるいは第二アキュムレータを形成する各ロアーケース内に収装されてなることを特徴とする請求項1または2のサスペンション装置
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- 1995-08-07 JP JP22109195A patent/JP3696662B2/ja not_active Expired - Fee Related
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