JP2009293664A - 車両用サスペンション装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液圧式のショックアブソーバを備えた車両用サスペンション装置の実用性を向上させる。
【解決手段】ショックアブソーバ20のハウジング30の内筒72の内周面に、ピストン32がばね上部14とばね下部12との接近離間動作に伴って摺動する範囲のうちの特定の範囲に位置する場合に2つの作動液室76,78を連通させてピストン32の摺動に伴う2つの作動液室76,78間の作動液の流通を許容する連通溝100を形成する。また、エアスプリング22とそのエアスプリング22に対してエアを流入・流出させるための流体流入・流出装置62とを含んで構成される中立位置変動防止装置によって、積載重量の変動によるピストン32の中立位置の変動を防止可能に構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、液圧式のショックアブソーバを備えた車両用サスペンション装置に関する。
車両用サスペンション装置は、互いに背反する関係にある乗り心地と操縦性・安定性(以下、「操安性」という場合がある)との両者の調和を図ることが必要とされる。例えば、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力が大きいほど、ばね下部からばね上部への振動の伝達率が高くなり、乗り心地が悪くなる。しかし、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力を小さくしてしまうと、車体の姿勢変化を抑制できず操安性が悪くなってしまう。
車両用サスペンション装置は、一般的に、(A)ばね上部とばね下部との一方に連結されて作動液を収容するハウジングと、(B)そのハウジング内を2つの作動液室に区画するとともにそのハウジング内を摺動可能なピストンと、(C)一端部がピストンに連結され、他端部がハウジングから延び出してばね上部とばね下部との他方に連結されるピストンロッドと、(D)ピストンに設けられ、そのピストンの摺動に伴う2つの作動液室間の作動液の流通を、その流通に対して抵抗を付与する状態で許容する作動液流通許容機構とを有し、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させるような構造の液圧式のショックアブソーバを備えることが多い。そして、特許文献1に記載のショックアブソーバは、ハウジングとピストンとの相対位置によってショックアブソーバが発生させる減衰力の特性が変化するような構造とされ、特許文献2に記載のショックアブソーバは、ハウジングとピストンとの相対速度によってショックアブソーバが発生させる減衰力の特性が変化するような構造とされている。このように、下記特許文献に記載されているサスペンション装置は、ショックアブソーバが発生させる減衰力の特性が変化する構造により、ピストンの動作に対する抵抗力、つまり、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力を変化させ、互いに背反する関係にある乗り心地と操縦性・安定性との両者の調和を図るようにされている。
特開2006−329266号公報 特開平8−303520号公報
上述した特許文献に記載の技術は、ほんの一例に過ぎないが、車両用サスペンション装置において、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力が変化する構造についての改善を行うことによって、互いに背反する関係にある乗り心地と操縦性・安定性との両者の調和を図り、実用性の向上が期待できる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用サスペンション装置を提供することを課題とする。
本発明の車両用サスペンション装置は、ショックアブソーバのハウジングの内周面に、ピストンがばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って摺動する範囲のうちの特定の範囲に位置する場合に2つの作動液室を連通させてピストンの摺動に伴う2つの作動液室間の作動液の流通を許容する連通溝が形成されたことを特徴とする。
本発明の車両用サスペンション装置は、特定の範囲におけるピストンの動作に対する抵抗力を小さくして、特定の範囲におけるピストンの動作を円滑なものとすることが可能である。そのことにより、例えば、ピストンが動作し始める際にそのピストンの動作をある程度吸収すること等ができ、本発明のサスペンション装置によれば、乗り心地を向上させることが可能である。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項2に(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、それぞれ相当する。
(1)ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
(A)ばね上部とばね下部との一方に連結されて作動液を収容するハウジングと、(B)そのハウジング内を2つの作動液室に区画するとともにそのハウジング内を摺動可能なピストンと、(C)一端部が前記ピストンに連結され、他端部が前記ハウジングから延び出してばね上部とばね下部との他方に連結されるピストンロッドと、(D)前記ピストンに設けられ、そのピストンの摺動に伴う前記2つの作動液室間の作動液の流通を、その流通に対して抵抗を付与する状態で許容する作動液流通許容機構とを有し、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させる液圧式のショックアブソーバと
を備えた車両用サスペンション装置であって、
前記ハウジングが、
それの内周面に形成され、前記ピストンがばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って摺動する範囲のうちの特定の範囲に位置する場合に前記2つの作動液室を連通させて前記ピストンの摺動に伴う前記2つの作動液室間の作動液の流通を許容する連通溝を有することを特徴とする車両用サスペンション装置。
ハウジングとピストンとの摺動摩擦,ショックアブソーバが発生させる減衰力等により、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力が大きいほど、ばね下部からばね上部への振動の伝達率が高くなる。ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する抵抗力が大きいと、例えば、比較的周波数の高いばね下部の振動や、路面の凸所や凹所を車輪が通過する際のばね下部の動作は、サスペンションスプリングによって、ほとんど吸収されることなくばね上部に伝達されてしまうことになる。本項に記載の態様は、特定の範囲をピストンが摺動する場合に、そのピストンの動作に対する抵抗力を小さくして、そのピストンの動作を円滑なものとすることが可能である。具体的には、ピストンが特定の範囲に位置している状態から動作し始める場合の抵抗力や、ピストンが上記特定の範囲内で動作するような振動に対する抵抗力を小さくすることが可能である。つまり、特定の範囲を適切に設定することにより、例えば、路面の凸所や凹所を車輪が通過する際のばね下部の比較的勢いのよい動作を吸収することや、荒れた路面を走行する場合に生じる比較的周波数が高く振幅の小さい振動を効果的に減衰することが可能であり、本項の態様によれば、乗り心地の向上を図ることが可能である。ちなみに、本項の態様では、例えば、ピストンがハウジングの連通溝が形成された範囲を摺動する場合に、ハウジングに形成された連通溝を作動液が流れることによって、連通溝が形成されていない範囲を摺動する場合に比較して、減衰力を小さくすることができる。
本項に記載の「特定の範囲」は、操安性と乗り心地との両者を考慮して、適切な範囲に設定されることが望ましい。例えば、操安性を向上させるためには、急な加減速,急操舵等による車体の姿勢変化を抑える必要がある。その場合の動作は変位が比較的大きくなることを考慮すれば、ピストンがばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って摺動する範囲(以下、「摺動範囲」という場合がある)のうち端部側に位置する場合には、ピストンの動作に対する抵抗力を大きくする必要がある。そのためには、ピストンの摺動範囲のうち端部側の範囲は、特定の範囲から除かれるように設定されることが望ましい。また、その操安性に加え、上述したピストンの動作し始める場合の抵抗力を小さくするという観点からすれば、ピストンの厚みに比較的小さなマージンを加えた幅に設定されることが望ましい。さらに、比較的周波数の高い振動を減衰させて乗り心地を向上させるという観点からすれば、その振動によってピストンが摺動する範囲が、特定の範囲内となるように設定されることが望ましい。そして、それらのこと等を考慮して、特定の範囲が望ましい範囲となるように、1つあるいは2つ以上の「連通溝」をハウジングに形成すればよい。
(2)ばね上部とばね下部との間の距離であるばね上ばね下間距離が中立距離にある場合における前記ピストンの前記ハウジングに対する位置を、中立位置と定義した場合において、
前記特定の範囲が、それの中央が前記中立位置と一致するように設定された(1)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項に記載の「中立距離」とは、水平かつ平坦な路面に停車している状態で、静的な車体の荷重以外には外部からの入力がない場合におけるばね上ばね下間距離であり、その中立距離に対応するピストンのハウジングに対する位置が「中立位置」である。本項の態様は、その中立位置と特定の範囲の中央が一致するように設定されていることから、ピストンの中立位置付近からの勢いのよい動作、例えば、路面の凸所や凹所を車輪が通過する際のばね下部の動作をある程度吸収することが可能であり、また、特定の範囲の幅より小さな振幅の振動を効果的に減衰することが可能である。
(3)前記特定の範囲が、ばね下共振振動の振幅の2倍以上の幅とされた(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、比較的周波数が高く振幅の小さなばね下共振振動が、効果的に減衰されるため、乗り心地を向上させることが可能である。なお、本項の態様において、上述した操安性をも考慮すれば、特定の範囲の幅は、ばね下共振振動の振幅の2倍の幅から大きくし過ぎないことが望ましい。
(4)前記連通溝が、前記ハウジングの軸線方向に延びるように形成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
(5)前記ハウジングが、
それの内周面の周方向において複数に等分された位置に形成され、それぞれが前記連通溝である複数の連通溝を有する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
上記2つの項に記載の態様は、連通溝について具体化した態様である。ピストンが特定の範囲において摺動する場合の抵抗力を小さくしたいという観点から、ピストンは特定の範囲において円滑に摺動することが望ましい。前者の態様によれば、ピストンの摺動する方向に作動液が流通し、後者の態様によれば、ピストンの外周を等分した位置を作動液が流通することから、上記2つの項の態様は、ピストンの特定の範囲における円滑な摺動を担保することができる。なお、前者の態様においては、連通溝の長さと特定の範囲の幅とが、概ね一致すると考えることができ、特定の範囲の設定が容易である。
(6)ばね上部とばね下部との間の距離であるばね上ばね下間距離が中立距離にある場合における前記ピストンの前記ハウジングに対する位置を、中立位置と定義した場合において、
当該車両用サスペンション装置が、積載重量の変動による前記中立位置の変動を防止する中立位置変動防止装置を備えた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
本項に記載のサスペンション装置は、いわゆるオートレベリングが可能に構成されているため、例えば、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等によって、積載重量が変動しても、ピストンを中立位置に維持することができる。本項の態様は、先に述べた、特定の範囲の中央と中立位置とを一致させる態様に有効な態様であり、積載重量が変動しても、常に、特定の範囲の中央と中立位置とを一致させることが可能である。
(7)前記サスペンションスプリングが、
流体の圧力によってばね上部とばね下部とを相互に弾性的に支持するとともに、その流体が流入・流出させられることによって前記ばね上ばね下間距離を変更可能な構造とされた流体式サスペンションスプリングであり、
前記中立位置変動防止装置が、
前記流体式サスペンションスプリングと、その流体式サスペンションスプリングに対して流体を制御可能に流入・流出させる流体流入・流出装置とを含んで構成された(6)項に記載の車両用サスペンション装置。
(8)前記ショックアブソーバが、前記ハウジング内の作動液の量を変更可能な構造とされ、
前記中立位置変動防止装置が、前記ハウジングに対して作動液を制御可能に流入・流出させる作動液流入・流出装置を含んで構成された(6)項に記載の車両用サスペンション装置。
上記2つの項に記載の態様は、中立位置変動防止装置を具体化した態様であり、中立位置変動防止装置として、いわゆる車高調整装置を採用した態様である。上記2つの項の態様は、例えば、センサによりばね上ばね下間距離を監視し、そのばね上ばね下間距離が設定された距離に対して変化した場合に、流体式サスペンションスプリングに対する流体の流入・流出,ハウジングに対する作動液の流入・流出が制御される態様とすることができる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
<第1実施例>
図1に、請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンション装置10を示す。このサスペンション装置10は、独立懸架式のものであり、前後左右の車輪の各々に対応して、車輪を保持してばね下部の一部分を構成するサスペンションロアアーム12と、車体に設けられてばね上部の一部分を構成するマウント部14との間に、それらを連結するようにして配設された4つのスプリング・アブソーバAssy16を有している。図1には、それら4つのスプリング・アブソーバAssy16のうちの1つものの正面断面図を示している。スプリング・アブソーバAssy16は、液圧式のショックアブソーバ20と、それと並列的に設けられたサスペンションスプリングとしてのエアスプリング22とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されており、それらが一体化されたものとなっている。
ショックアブソーバ20は、作動液を収容するハウジング30と、そのハウジング30に液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン32と、そのピストン32に下端部が連結されて上端部がハウジング30の上部から延び出すピストンロッド34とを含んで構成されている。そして、ハウジング30が、ロアアーム12に連結され、ピストンロッド34が、マウント部14に連結される。ちなみに、ピストンロッド34は、ハウジング30の上部に設けられた蓋部36を貫通しており、シール38を介してその蓋部36と摺接している。
エアスプリング22は、マウント部14に固定されたチャンバシェル50と、ショックアブソーバ20のハウジング30に固定されたエアピストン筒52と、それらを接続するダイヤフラム54とを含んで構成されている。チャンバシェル50は、それの蓋部56が、防振ゴムを有するスプリングサポート58を介してショックアブソーバ30のピストンロッド34を保持した状態で、蓋部56の上面側においてマウント部14の下面側に固定されている。ダイヤフラム54は、一端部がチャンバシェル50の下端部に固定され、他端部がエアピストン筒52の上端部に固定されており、それらチャンバシェル50とエアピストン筒52とダイヤフラム54とによって圧力室60が区画形成されている。その圧力室60には、流体としての圧縮エアが封入されている。このような構造から、エアスプリング22の圧縮エアの圧力によって、ロアアーム12とマウント部14、つまり、ばね上部とばね下部とを相互に弾性的に支持しているのである。
本サスペンション装置10は、スプリング・アブソーバAssy16が有するエアスプリング22に対して流体としてのエア(空気)を流入・流出させるための流体流入・流出装置、詳しく言えば、エアスプリング22の圧力室60に接続されて、その圧力室60にエアを供給し、圧力室60からエアを排出するエア給排装置62を備えている。本サスペンション装置10は、そのエア給排装置62によって、エアスプリング22の圧力室60内のエア量を調整することが可能とされており、エア量の調整によって、各エアスプリング22のばね長を変更し、ロアアーム12とマウント部14との間の距離(ばね上部とばね下部との間の距離であるため、以下、「ばね上ばね下間距離」という場合がある)を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、圧力室60のエア量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、エア量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。
ショックアブソーバ20について、図2をも参照しつつ説明する。ショックアブソーバ20のハウジング30は、外筒70と内筒72とを含んで構成され、それらの間にバッファ室74が形成されている。ピストン32は、その内筒72の内側に嵌合されており、内筒72の内部を、上室76と下室78とに区画している。そのピストン32には、上室76と下室78とを接続する接続通路80,82が、同心状に複数個ずつ設けられている(図2には、2つずつが図示されている)。ピストン32の下面には、弾性材製の円形をなす弁板84が配設されており、その弁板84によって、ピストン32の内周側の接続通路80が塞がれ、上室76と下室78との液圧差により弁板84が撓められると上室76から下室78への作動液の流れが許容されるようになっている。また、ピストン32の上面には、弾性材製の円形をなす2枚の弁板86,88が配設されており、その弁板86,88によって、それらに設けられた開口部によりピストン32の内周側の接続通路80が常時塞がれずに、ピストン32の外周側の接続通路82が塞がれ、上室76と下室78との液圧差により弁板86が撓められると下室78から上室76への作動液の流れが許容されるようになっている。さらに、下室76とバッファ室74との間には、ピストン32と同様の接続通路,弁板が設けられたベースバルブ体90が設けられている。
また、ハウジング30の内筒72は、それの内周面に、軸線方向に延びる複数の連通溝100を有している。その連通溝100は、ピストン32がハウジング30の連通溝100が形成された範囲に位置する場合に、上室76と下室78とを連通させて、それらの間の作動液の流通を許容するものである。図1は、本サスペンション装置10を搭載した車両が、水平かつ平坦な路面に停車している状態で、静的な車体の荷重以外には外部からの入力がない場合を示しており、その場合において、ピストン32は、ハウジング30に対して図に示すような中立位置に位置している。そして、連通溝100は、それの軸線方向の真ん中と、中立位置に位置しているピストン32の位置とが一致するように、ハウジング30に形成されている。
ハウジング30の内筒72には、12条の連通溝100が、図3の断面図(図2におけるA−A断面)に示すように、それの内周面の周方向において等配された位置に形成されている。また、連通溝100は、軸線方向の長さが、ばね下共振振動の振幅の2倍を僅かに超えるように形成されている。さらに、連通溝100は、作動液の流通を良好なものとするために、軸線方向の断面形状が、図2に示すように、半径Rの円弧状に形成されている。
なお、本サスペンション装置10を搭載した車両において、乗員数の変化,荷物の積載量の変化等によって積載重量が変動した場合、ばね上ばね下間距離が変動する、つまり、ピストン32の中立位置が変動することになる。本サスペンション装置10では、積載荷重が変動した場合であっても、車両に設けられたハイトセンサ110により検出されたばね上ばね下間距離が設定された距離となるように、サスペンション電子制御ユニット112(ECU)によりエア給排装置62が制御されて、圧力室60のエア量が調整される。つまり、本サスペンション装置10は、積載重量の変動による中立位置の変動を防止する中立位置変動防止装置を備えるものとなっている。ちなみに、その中立位置変動防止装置は、エアスプリング22とエア給排装置62とを含んで構成されている。
以上のような構造により、例えば、ロアアーム12とマウント部14とが離間し、ピストン32がハウジング30に対して上方に移動させられる場合には、上室76の液圧が高くなる。そのため、上室76の作動液の一部が、接続通路80を通って下室78へ流れるとともに、バッファ室74の作動液の一部がベースバルブ体90の接続通路を通って下室78へ流入することになる。逆に、ロアアーム12とマウント部14とが接近し、ピストン32がハウジング30に対して下方に移動させられる場合には、下室78の液圧が高くなる。そのため、下室78の作動液の一部が、接続通路82を通って上室76へ流れるとともに、ベースバルブ体90の接続通路を通ってバッファ室74へ流出することになる。そして、それらの場合の作動液の流通に対して抵抗力が付与され、ピストン32とハウジング30との相対移動に対して抵抗力が付与されるのである。つまり、ショックアブソーバ20は、ばね上部とばね下部と接近離間動作に対して減衰力を発生させる構造とされている。
また、ピストン32がハウジング30の連通溝100が形成された範囲を摺動する場合において、ロアアーム12とマウント部14との離間時には、上室76の作動液の一部が、連通溝100を通って下室78へ流れ、ロアアーム12とマウント部14との接近時には、下室78の作動液の一部が、連通溝100を通って上室76へ流れることになる。つまり、ピストン32がハウジング30の連通溝100が形成された範囲を摺動する場合には、ピストン32がハウジング30の連通溝100が形成されていない範囲を摺動する場合に比較して、減衰力が小さくなり、特定の範囲におけるピストン32の動作に対する抵抗力が小さくされるのである。したがって、ピストン32がある速度で移動する場合において、ピストン32のハウジング30に対する変位と減衰力との関係は、図4に示すようなものとなる。
以上のように、本サスペンション装置10は、ハウジング30が前述した連通溝100を有しており、その連通溝100が形成された範囲を摺動する際にそのピストン32の動作に対する抵抗力が小さくされるため、路面の凸所や凹所を車輪が通過する際のばね下部の比較的勢いのよい動作を、ある程度吸収することが可能である。また、比較的周波数が高く振幅の小さな振動を効果的に減衰させることが可能である。したがって、本サスペンション装置10によれば、乗り心地を向上させることが可能である。
また、本サスペンション装置10は、前述の中立位置変動防止装置を備えているため、積載重量が変動しても、常にピストン32を連通溝100の真ん中に位置させることができる。そのため、本サスペンション装置10では、連通溝100の長さを、積載重量の変動を考慮して長くする必要がなく、連通溝100が形成されていない範囲が大きく設定されている。つまり、連通溝100が形成されていない範囲の大きな減衰力を利用して、急な加減速,急操舵等による比較的大きな変位となる車体の姿勢変化を抑えることができ、乗り心地と操安性との調和が図られたものとなっている。
<第2実施例>
図5に、第2実施例の車両用サスペンション装置150を示す。なお、本実施例のサスペンション装置150の説明においては、第1実施例の装置と同じ機能の構成要素については、同じ符号を用いて対応するものであることを示し、それらの説明は省略するあるいは簡略に行うものとする。
本実施例のサスペンション装置150は、第1実施例と同様に、前後左右の車輪の各々に対応して、4つのスプリング・アブソーバAssy152を有している。ただし、第1実施例におけるサスペンションスプリングは、中立位置変動防止装置の一構成要素であるエアスプリングであったが、本実施例のサスペンションスプリングは、圧縮コイルスプリング160である。また、本実施例におけるショックアブソーバ162は、第1実施例のものとほぼ同様の構造のものであるが、ピストンロッド164には、軸線方向に延びる貫通孔166が設けられている。また、第1実施例におけるハウジングは、ツインチューブ式のものであったが、本実施例におけるハウジング168は、単一の筒状のものである。なお、そのハウジング168は、それの内周面に、第1実施例と同様の連通溝100を有している。
ショックアブソーバ162の上部には、アキュムレータ170が設けられている。アキュムレータ170は、ハウジング172とそのハウジング172を2つの容積変化室に区画する弾性体174とを含んで構成され、上側の容積変化室176に封入された気体の力を利用して、ばねとしての機能を有するものである。そのアキュムレータ170の下側の容積変化室178は、ピストンロッド164の貫通孔166を介して、ショックアブソーバ162のハウジング168の下室78と接続され、作動液が充填されている。つまり、アキュムレータ170は、上側の容積変化室176に封入された気体の力を利用して、ショックアブソーバ162のハウジング168とピストン32との相対動作に対して、つまり、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対して弾性力を付与することが可能とされているのである。
アキュムレータ170の下側の容積変化室178には、作動液を流入・流出させるための作動液流入・流出装置190が接続されている。本サスペンション装置150は、その作動液流入・流出装置190によって、ショックアブソーバ162のハウジング168内の作動液量を調整することが可能とされており、作動液量の調整によって、ショックアブソーバ162のハウジング168内の液圧を変更し、ばね上ばね下間距離を変化させることが可能とされている。具体的に言えば、ハウジング168内の作動液量を増加させてばね上ばね下間距離を増大させ、作動液量を減少させてばね上ばね下間距離を減少させることが可能とされている。ちなみに、作動液流入・流出装置190とアキュムレータ170とは、通常、制御弁192によって遮断されているが、ハウジング168に作動液を供給、あるいは、ハウジング168から作動液を排出させる際には、その制御弁192が、開かれるようになっている。
本サスペンション装置150では、積載荷重が変動した場合であっても、車両に設けられたハイトセンサ110により検出されたばね上ばね下間距離が設定された距離となるように、ECU112により作動液流入・流出装置190が制御されて、ハウジング168の作動液量が調整される。つまり、本サスペンション装置10は、アキュムレータ170,作動液流入・流出装置190,制御弁192等を含んで構成される中立位置変動防止装置によって、積載重量の変動による中立位置の変動が防止される。したがって、第1実施例と同様に、積載重量が変動しても、常にピストン32を連通溝100の真ん中に位置させることが可能である。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンション装置を模式的に示す図であり、そのサスペンション装置が備えるスプリング・アブソーバAssyの正面断面図を示す図である。 図1に示すショックアブソーバを拡大して示す正面断面図である。 図2に示すピストンの中立位置における断面図(図2におけるA−A断面)である。 図1に示すショックアブソーバにおけるピストンのハウジングに対する変位と減衰力との関係を示す図である。 請求可能発明の第2実施例である車両用サスペンション装置を模式的に示す図であり、そのサスペンション装置が備えるスプリング・アブソーバAssyの正面断面図を示す図である。
符号の説明
10:車両用サスペンション装置 12:ロアアーム(ばね下部) 14:マウント部(ばね上部) 16:スプリング・アブソーバAssy 20:エアスプリング(サスペンションスプリング) 22:ショックアブソーバ 30:ハウジング 32:ピストン 34:ピストンロッド 62:エア給排装置(流体流入・流出装置) 70:外筒 72:内筒 74:バッファ室 76:上室 78:下室 80,82:接続通路 84〜88:弁板 90:ベースバルブ体 100:連通溝 110:ハイトセンサ 112:サスペンション電子制御ユニット 150:車両用サスペンション装置 152:スプリング・アブソーバAssy 160:圧縮コイルスプリング(サスペンションスプリング) 162:ショックアブソーバ 164:ピストンロッド 168:ハウジング 170:アキュムレータ 190:作動液流入・流出装置 192:制御弁

Claims (4)

  1. ばね上部とばね下部とを弾性的に連結するサスペンションスプリングと、
    (A)ばね上部とばね下部との一方に連結されて作動液を収容するハウジングと、(B)そのハウジング内を2つの作動液室に区画するとともにそのハウジング内を摺動可能なピストンと、(C)一端部が前記ピストンに連結され、他端部が前記ハウジングから延び出してばね上部とばね下部との他方に連結されるピストンロッドと、(D)前記ピストンに設けられ、そのピストンの摺動に伴う前記2つの作動液室間の作動液の流通を、その流通に対して抵抗を付与する状態で許容する作動液流通許容機構とを有し、ばね上部とばね下部との接近離間動作に対する減衰力を発生させる液圧式のショックアブソーバと
    を備えた車両用サスペンション装置であって、
    前記ハウジングが、
    それの内周面に形成され、前記ピストンがばね上部とばね下部との接近離間動作に伴って摺動する範囲のうちの特定の範囲に位置する場合に前記2つの作動液室を連通させて前記ピストンの摺動に伴う前記2つの作動液室間の作動液の流通を許容する連通溝を有することを特徴とする車両用サスペンション装置。
  2. ばね上部とばね下部との間の距離であるばね上ばね下間距離が中立距離にある場合における前記ピストンの前記ハウジングに対する位置を、中立位置と定義した場合において、
    前記特定の範囲が、それの中央が前記中立位置と一致するように設定された請求項1に記載の車両用サスペンション装置。
  3. 当該車両用サスペンション装置が、積載重量の変動による前記ピストンの中立位置の変動を防止する中立位置変動防止装置を備えた請求項2に記載の車両用サスペンション装置。
  4. 前記特定の範囲が、ばね下共振振動の振幅の2倍以上の幅とされた請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンション装置。
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