JP3696028B2 - フィルム封止構造を有する電池及びその製造方法 - Google Patents

フィルム封止構造を有する電池及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン2次電池等のフィルム封止構造を有する電池及びその製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リチウムイオン2次電池等は、電池ケース内に正極、負極、電解液等を封入した構造となっている。この電解液は、酸化防止、液漏れ防止等のために完全密閉する必要がある。この密閉の方法としては、従来より正極、負極、電解液等を樹脂フィルムで覆い、フィルムの開放部を熱溶着する方法が採用されていた。たとえば、特開平11−40198号公報にも、フィルムの熱溶着による封止構造の例が開示されている。
【0003】
図5には、従来のリチウムイオン2次電池の内部構造である積層電極の例が示される。積層電極には、少なくとも正極10、負極14、電解質を含んだセパレータ18が含まれる。図5において、正極10には外部に電流を取り出すための正極タブ12が接続されている。この正極タブとしては、たとえばアルミニウム箔等が使用される。また、負極14にも同様の目的で負極タブ16が接続されている。この負極タブとしては、たとえばステンレス箔等が使用される。これら正極10及び負極14の間に介在されたセパレータ18は、たとえば不織布にゲル物質を含浸させたものである。
【0004】
図5に示されたリチウムイオン2次電池の積層電極は、図6に示されるようなラミネートフィルム20により覆われ、その内部に封入される。ラミネートフィルム20は、たとえば図6に示されるように、中央にアルミニウム層22があり、その両側をポリエチレン層24で挟まれた構造となっている。このようなラミネートフィルム20で図5に示された積層電極を封入するには、まず2枚のラミネートフィルム20で積層電極を挟み、開放された端部を熱溶着することによって封止していた。
【0005】
図7には、上記のようにしてラミネートフィルム20で図5に示された積層電極を封入したフィルム封止構造の例が示される。また、図8には、図7のVIII−VIII断面図が示される。
【0006】
図8に示されるように、正極10、負極14、セパレータ18からなる積層電極は、ラミネートフィルム20によって挟まれ、ラミネートフィルムの端部が図の上下方向から金型26で押され、同時に加熱されることによって熱溶着されてフィルム封止部30が形成される。これにより、図7に示されたフィルム封止構造が完成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の電池のフィルム封止構造では、図7のIX-IX断面図である図9に示されるように、フィルム封止構造から外に突出している正極タブ12及び負極タブ16の両側面付近において、ラミネートフィルム20の熱溶着が不十分となり、フィルム封止部30に隙間が生じやすくなる。このため、この隙間から電解液の漏れが発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルム封止部におけるフィルムの接着力が強く、かつ外に突出した正、負極タブ周りからの電解液の漏れを防止できるフィルム封止構造を有する電池及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、正極、負極、電解質がフィルム内に封入されたフィルム封止構造を有する電池であって、正極及び負極の一部がフィルム封止構造から外に突出しており、このフィルムの封止部のうち少なくとも正極及び負極の突出部とフィルムとが接する部分にフィルム材が流れ込み溜められたフィルム材溜め部を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記フィルム封止構造を有する電池において、フィルム材溜め部はフィルムの封止部全てに設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、フィルム封止構造を有する電池の製造方法であって、正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルムで覆う工程と、フィルムの開放部を熱溶着することにより、正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルム内に封入する工程と、を有し、封入工程の際、少なくとも正極及び負極の突出部とフィルムとが接する部分に設けられたフィルム材溜め部に溶融されたフィルムが流れ込み溜められることを特徴とする。
【0012】
また、フィルム封止構造を有する電池の製造方法であって、正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルムで覆う工程と、フィルムを上型と下型との間に配し、少なくとも上型及び下型の一方を加熱することによりフィルムの開放部を熱溶着し、正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルム内に封入する工程と、を有し、少なくとも上型及び下型の一方のフィルム封止部の、少なくとも正極及び負極の突出部とフィルムとが接する部分にフィルム材溜め部に対応した凹部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記フィルム封止構造を有する電池の製造方法において、フィルム材溜め部に対応した凹部は、少なくとも上型及び下型の一方のフィルム封止部全てに設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、上記フィルム封止構造を有する電池の製造方法において、フィルム材溜め部に対応した凹部は、上型及び下型の両方のフィルム封止部全てに設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、上記フィルム封止構造を有する電池の製造方法において、封入工程の際、フィルムを振動させる工程を有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0017】
図1には、図5に示された積層電極がラミネートフィルム20内に封入された本発明に係るフィルム封止構造を有する電池の一実施形態が示される。この積層電極には、前述したように、少なくとも正極10、負極14、電解質を含んだセパレータ18が含まれる。また、図1のII-II断面が図2に示され、III−III断面図が図3に示される。図1から図3において、前述した図7から図9に示された従来例と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0018】
本実施形態で特徴的な点は、図2に示されるように、積層電極をラミネートフィルム20で覆い、そのフィルム封止部30に、ラミネートフィルム20の原料であるポリエチレン(PE)が溜られるフィルム材溜め部28が設けられている点である。フィルム封止部30を形成するには、積層電極を2枚のラミネートフィルム20で挟み込んで覆い、これを図2及び図3に示されるように、上型と下型からなる金型26の間に配し、図2に示された加圧方向に加圧しながら少なくとも上型及び下型の一方を加熱することによりラミネートフィルム20の端部の開放部を熱溶着する。この際、上記フィルム材溜め部28に、溶融されたラミネートフィルム20の材料であるポリエチレンが流れ込み、フィルム材溜め部28にポリエチレンが溜まる。なお、ラミネートフィルム20の熱溶着は、100〜140℃程度の温度で行う。以上により、積層電極がラミネートフィルム20内に封入される。
【0019】
本実施形態に係るフィルム封止構造を有する電池では、図1に示されるように、正極10及び負極14の一部が正極タブ12及び負極タブ16としてフィルム封止構造の外に突出している。上述したフィルム材溜め部28は、フィルム封止構造の周囲が熱溶着されることによって形成されたフィルム封止部30のうち、少なくとも上記正極タブ12及び負極タブ16の突出部とラミネートフィルム20とが接する部分に形成される。上述のとおり、このフィルム材溜め部28には、ラミネートフィルム20が金型26の上型、下型によって加圧されながら熱溶着される際にラミネートフィルム20の材料であるポリエチレンが流れ込むので、正極タブ12及び負極タブ16との密着性が向上できる。このため、図3に示されるように、正極タブ12及び負極タブ16の側面側に隙間が生じることを防止できる。これにより、フィルム封止構造内から外部に電解液が漏れる等の不具合をなくすことができる。
【0020】
なお、上述したフィルム材溜め部28は、フィルム封止部30の全ての部分すなわちフィルム封止構造の周囲全てに設けられてもよい。これにより、フィルム封止部30の接着性を向上できる。
【0021】
以上に述べたフィルム材溜め部28は、少なくとも重ね合わされるラミネートフィルム20の一方に設けられている。また、ラミネートフィルムを熱溶着する際にラミネートフィルム20のフィルム封止部30を加圧する金型26のうち上型及び下型の少なくとも一方すなわちフィルム材溜め部28が形成されたラミネートフィルム20を押す側にラミネートフィルム20のフィルム材溜め部28に対応した凹部が形成されている。なお、フィルム封止部30において、重ね合わされるラミネートフィルム20の両方にフィルム材溜め部28を形成することも好適である。この場合には、金型26の上型及び下型の両方にフィルム材溜め部28に対応した凹部が形成されることになる。
【0022】
図4(a)〜(e)には、上述したラミネートフィルム20の加圧熱溶着に使用される金型26の例が示される。図4(a)は、金型26のうち上型のみに断面三角形状のフィルム材溜め部に対応した凹部が2個形成された例である。図4(b)は、図4(a)と同じ形のフィルム材溜め部に対応した凹部が金型26の上型及び下型の両方に形成された例である。図4(c)は金型26の上型のみに断面矩形状のフィルム材溜め部に対応した凹部が2個形成された例である。図4(d)は、図4(c)と同じ形状のフィルム材溜め部に対応した凹部が上型及び下型の両方に形成された例である。さらに、図4(e)は、金型26の上型に断面半円形状のフィルム材溜め部に対応した凹部が2個形成された例である。このような曲線形状の断面とすることにより、加圧溶着時にラミネートフィルム20に傷がつきにくくすることができる。また、図示はしないが、断面半円形状のフィルム材溜め部に対応した凹部は、他の例のように、上型及び下型の両方に形成してもよい。このように、金型26のフィルム材溜め部に対応した凹部は、金型26の上型及び下型の少なくとも一方に設けられていることになる。なお、フィルム材溜め部に対応した凹部の形状は上記に限られるものではない。例えば、半楕円等の断面形状でもよい。
【0023】
フィルム封止部30を形成する際に、金型26を振動させ、ラミネートフィルム20を振動溶着させるのも好適である。これにより、溶融したポリエチレンがより流れやすくなり、フィルム材溜め部28にたまりやすくなる。この場合の振動周波数としては16kHz以下とするのが好適である。
【0024】
以上のようにして形成した本発明にかかるフィルム封止構造とフィルム材溜め部28を有さない従来のフィルム封止構造とを比較するために、両方のフィルム封止構造に60kgの荷重をかけ、電解液の漏れ発生の有無を確認した。この結果、従来品は、正、負極タブ12、16の周辺から電解液の漏れが発生したが、本発明品からは漏れが発生しなかった。
【0025】
また、本発明にかかるフィルム封止構造では、フィルム封止部30の端末部に生じるバリを低減することもできる。これにより、フィルム封止構造の外観及び寸法精度を向上させることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ラミネートフィルムの端部にラミネートフィルムの材料であるポリエチレンが流れ込むフィルム材溜め部を形成することにより、ラミネートフィルムと正極、負極タブ等の密着性を向上でき、正極、負極タブの側面の隙間をなくすことができる。
【0027】
また、このフィルム材溜め部にポリエチレンが流れ込み溜まる構成とすることにより、フィルム封止部におけるラミネートフィルムの接着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフィルム封止構造を有する電池の一実施形態の平面図である。
【図2】 図1におけるII-II断面図である。
【図3】 図1におけるIII-III断面図である。
【図4】 図2及び図3に使用される金型の例を示す図である。
【図5】 リチウムイオン2次電池の内部構造である積層電極を示す図である。
【図6】 図5に示された積層電極を封入するためのラミネートフィルムの構成例を示す図である。
【図7】 従来におけるフィルム封止構造を有する電池の平面図である。
【図8】 図7におけるVIII-VIII断面図である。
【図9】 図7におけるIX-IX断面図である。
【符号の説明】
10 正極、12 正極タブ、14 負極、16 負極タブ、18 セパレータ、20 ラミネートフィルム、22 アルミニウム層、24 ポリエチレン層、26 金型、28 フィルム材溜め部、30 フィルム封止部。

Claims (7)

  1. 正極、負極、電解質がフィルム内に封入されたフィルム封止構造を有する電池であって、前記正極及び負極の一部が前記フィルム封止構造から外に突出しており、前記フィルムの封止部のうち少なくとも前記正極及び負極の突出部と前記フィルムとが接する部分にフィルム材が流れ込み溜められたフィルム材溜め部を有することを特徴とするフィルム封止構造を有する電池。
  2. 請求項1記載のフィルム封止構造を有する電池において、前記フィルム材溜め部は前記フィルムの封止部全てに設けられていることを特徴とするフィルム封止構造を有する電池。
  3. 正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルムで覆う工程と、
    前記フィルムの開放部を熱溶着することにより前記正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質を前記フィルム内に封入する工程と、を有し、
    前記封入工程の際、少なくとも前記正極及び負極の突出部と前記フィルムとが接する部分に設けられたフィルム材溜め部に溶融されたフィルムが流れ込み溜められることを特徴とするフィルム封止構造を有する電池の製造方法。
  4. 正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質をフィルムで覆う工程と、
    前記フィルムを上型と下型との間に配し、少なくとも上型及び下型の一方を加熱することにより前記フィルムの開放部を熱溶着し、前記正極及び負極の一部を外に突出させた状態で少なくとも正極、負極、電解質を前記フィルム内に封入する工程と、を有し、
    少なくとも前記上型及び下型の一方のフィルム封止部の、少なくとも前記正極及び負極の突出部と前記フィルムとが接する部分にフィルム材溜め部に対応した凹部が設けられていることを特徴とするフィルム封止構造を有する電池の製造方法。
  5. 請求項4記載のフィルム封止構造を有する電池の製造方法において、前記フィルム材溜め部に対応した凹部は、少なくとも前記上型及び下型の一方のフィルム封止部全てに設けられていることを特徴とするフィルム封止構造を有する電池の製造方法。
  6. 請求項4記載のフィルム封止構造を有する電池の製造方法において、前記フィルム材溜め部に対応した凹部は、前記上型及び下型の両方のフィルム封止部全てに設けられていることを特徴とするフィルム封止構造を有する電池の製造方法。
  7. 請求項3から請求項6のいずれか一項記載のフィルム封止構造を有する電池の製造方法において、前記封入工程の際、前記フィルムを振動させる工程を有することを特徴とするフィルム封止構造を有する電池の製造方法。
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