まず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法によって製造される蓄電モジュールを含む蓄電装置の構成を説明する。図1は、蓄電モジュールを含む蓄電装置の概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対して拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。以下では、蓄電モジュール4が積層する方向を単に「積層方向D(Z軸方向)」とする。また、積層方向Dに交差もしくは直交する方向を水平方向とする。水平方向は、例えば互いに直交するX軸方向とY軸方向とを有する。本実施形態では、「積層方向Dから見る」は、平面視に相当する。
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4つ)の導電構造体5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て略矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、蓄電モジュール4としてニッケル水素二次電池を例示する。
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電構造体5を介して電気的に接続されている。すなわち、隣り合う蓄電モジュール4の間には、導電構造体5が設けられている。図1では、導電構造体5は、積層方向Dの両端に位置する蓄電モジュール4の外側にも配置されている。積層方向Dの一端(本実施形態では上端)に位置する導電構造体5には、負極端子6が接続されている。積層方向Dの他端(本実施形態では下端)に位置する導電構造体5には、正極端子7が接続されている。負極端子6及び正極端子7のそれぞれは、例えばX軸方向に延在している。このような負極端子6及び正極端子7を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施できる。
なお、蓄電装置1においては、積層方向Dの一端及び他端に蓄電モジュール4が配置されてもよい。すなわち、蓄電装置1における蓄電モジュール4と導電構造体5との積層体の最外層(スタック最外層)は、蓄電モジュール4であってもよい。この場合、スタック最外層を構成する蓄電モジュール4には、負極端子6もしくは正極端子7が接続される。
導電構造体5は、蓄電装置1における放熱板としても機能し得る。導電構造体5は、例えば蓄電モジュール4において発生した熱を放出し得る。導電構造体5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えばY軸方向に沿って延在している。これらの流路5aを空気等の冷媒が通過することによって、蓄電モジュール4にて発生した熱を効率的に外部に放出できる。図1の例では、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。しかし、放熱性の向上の観点から、平面視にて、導電構造体5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じでもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
拘束部材3は、蓄電モジュール4を積層方向Dに拘束する部材であり、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とを有する。このため、モジュール積層体2には、導電構造体5を介して拘束部材3の拘束力が印加される。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4及び導電構造体5の面積よりも一回り大きい面積を有する金属板であり、略矩形状を呈する。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電構造体5との間が絶縁されている。なお、蓄電装置1における積層方向Dの一端及び他端に蓄電モジュール4が配置される場合、蓄電モジュール4とエンドプレート8との間が、フィルムFによって絶縁される。
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電構造体5は、エンドプレート8によって挟持され、且つ、モジュール積層体2としてユニット化される。また、ユニット化されたモジュール積層体2に対しては、積層方向Dに沿った拘束力が付加される。
次に、図2を参照しながら、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11、積層方向Dにおいて電極積層体11の外側に位置する導電板40、及び、電極積層体11と導電板40とを一体化する封止体12を備える。また、図示はしないが、蓄電モジュール4内には電解液が収容されている(詳細は後述)。
まず、蓄電モジュール4の電極積層体11の構成について説明する。電極積層体11は、積層方向Dに沿って交互に積層されるバイポーラ電極14及びセパレータ13を含む積層体Sと、積層方向Dにおいて積層体Sの一端に位置する負極終端電極18と、積層方向Dにおいて積層体Sの他端に位置する正極終端電極19とを有している。すなわち、積層方向Dにおける積層体Sの外側には、一対の終端電極が位置する。図2において、積層体Sは、破線で示された領域内に位置するバイポーラ電極14及びセパレータ13を含む。
積層体Sに含まれるバイポーラ電極14及びセパレータ13は、積層方向Dに沿って互いに積層されており、例えば平面視にて矩形状を呈している。セパレータ13は、隣り合うバイポーラ電極14の間に配置されている。バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む集電体15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。
集電体15は、水平方向に延在する板形状を呈する導電体であり、可撓性を示す。このため水平方向は、集電体15の延在方向とも言える。集電体15は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304等が挙げられる。集電体15の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。なお、集電体15がニッケル箔である場合、当該ニッケル箔にメッキ処理が施されてもよい。
バイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。正極16は、集電体15の一方面15aに正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質は、例えば、水酸化ニッケルである。水酸化ニッケルには、コバルト酸化物等が被覆されてもよい。
バイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。負極17は、集電体15の他方面15bに負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質は、例えば水素吸蔵合金である。なお、集電体15の周縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
負極終端電極18は、集電体15と、集電体15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18に含まれる集電体15の他方面15bは、電極積層体11における積層方向Dの内側(中央側)を向く面である。負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外表面を構成する面であり、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電構造体5と電気的に接続されている。負極終端電極18の集電体15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の正極16と対向している。
正極終端電極19は、積層方向Dの他端に配置されており、集電体15と、集電体15の他方面15bに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aは、電極積層体11における積層方向Dの内側を向く面である。正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bは、積層方向Dにおける電極積層体11の他方の外表面を構成する面であり、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電構造体5と電気的に接続されている。正極終端電極19の集電体15の他方面15bに設けられた正極16は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の負極17と対向している。
セパレータ13は、正極16と負極17とを隔離するための部材であり、正極16と負極17との間に配置される。セパレータ13は、例えばシート形状を呈する。セパレータ13は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ13は、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。セパレータ13は、シート形状に限られず、袋状でもよい。
次に、積層方向Dにおいて電極積層体11の外側に位置する導電板40の構成について説明する。導電板40は、電極積層体11の劣化抑制のために設けられる板状部材であり、導電性及び可撓性を示す。導電板40は、ニッケル、もしくはニッケルメッキされたステンレスよりなる。本実施形態では、導電板40は、集電体15と同様に、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。導電板40の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。
導電板40の一方面40a及び他方面40bには、いずれも正極活物質及び負極活物質が塗工されていない。このため、一方面40a及び他方面40bの全面は、未塗工領域となっている。一方面40aは、積層方向Dにおいて導電構造体5に対向する面である。他方面40bは、積層方向Dにおいて一方面40aの反対側に位置し、電極積層体11に対向する面である。本実施形態では、導電板40は、積層方向Dにおいて負極終端電極18の外側に位置する。このため、他方面40bは負極終端電極18に対向する。また、導電板40は、負極終端電極18と封止体12との隙間を通る電解液の流出抑制機能も奏し得る。
導電板40は、導電構造体5に接触する中央部41と、平面視において中央部41を囲む周縁部42とを有する。導電構造体5を介して電極積層体11に付与される拘束部材3の拘束力によって、導電板40の中央部41は、電極積層体11の中心に向かって窪み、負極終端電極18に押し付けられている。これにより、中央部41が負極終端電極18に接触する接触部となり、導電板40は、蓄電モジュール4における負極端子として機能し得る。一方、周縁部42は、負極終端電極18に対して離間する部分である。周縁部42の一部42aは、封止体12及び厚さ調整部材30に保持される部分であり、積層方向Dにおいて中央部41よりも電極積層体11の外側に位置する。周縁部42の他部42bは、上記一部42aと中央部41とをつなぐ部分であり、水平方向において封止体12よりも導電板40の中心側に位置している。
次に、封止体12の構成について説明する。封止体12は、電極積層体11を取り囲むように構成される樹脂部材である。封止体12は、集電体15の周縁部15cと、導電板40の周縁部42の一部42aとを包囲するように設けられる。封止体12は、例えば絶縁性の加熱溶融材料によって形成されており、全体として矩形筒形状を呈する。絶縁性の加熱溶融材料は、例えば、耐アルカリ性を示す熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂は、例えば、PP、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等である。封止体12は、集電体15及び導電板40に結合された複数の第1封止部21と、第1封止部21の周囲に配置された第2封止部22とを有する。
第1封止部21は、バイポーラ電極14、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40のそれぞれの縁部に結合する樹脂部材である。具体的には、第1封止部21は、バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19に含まれる集電体15の周縁部15cと、導電板40の周縁部42とのそれぞれに結合する。第1封止部21は、例えば超音波処理又は熱処理を経て、集電体15もしくは導電板40に溶着される。第1封止部21は、対応する周縁部15cもしくは周縁部42の全周にわたって連続的に設けられる。このため、第1封止部21は、積層方向Dから見て矩形枠形状を呈する。第1封止部21は、例えば積層方向Dに沿った所定の厚さを有する樹脂フィルムである。第1封止部21は、樹脂シートを打ち抜き加工することによって形成されてもよいし、金型を用いた射出成形によって形成されてもよい。第1封止部21の厚さは、例えば50μm以上300μm以下である。本実施形態では、積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、液密及び気密に溶着されている。
図3(a)は、第1封止部が結合されたバイポーラ電極の概略断面図であり、図3(b)は、第1封止部が結合された負極終端電極を示す概略断面図であり、図3(c)は、第1封止部が結合された正極終端電極を示す概略断面図であり、図3(d)は、第1封止部が結合された導電板を示す概略断面図である。図3(a)~(d)に示されるように、第1封止部21は、互いに異なる形状を呈する封止部21A~21Cを有する。具体的には、第1封止部21は、バイポーラ電極14及び正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aに溶着される封止部21Aと、負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15a、及び正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bに溶着される封止部21Bと、導電板40の一方面40aに溶着される封止部21Cとを有する。封止部21B,21Cと異なり、封止部21Aの一部が折りたたまれることによって、封止部21Aは2層構造を示す。本実施形態では、バイポーラ電極14には封止部21Aが溶着され、負極終端電極18には封止部21Bが溶着され、正極終端電極19には封止部21A,21Bが溶着され、導電板40には封止部21Cが溶着される。
図4は、図2の要部拡大図である。図2、図3(d)及び図4に示されるように、導電板40に結合される封止部21Cに含まれ、積層方向Dにおいて外側を向く外表面51は、互いに連続する第1面52及び第2面53を有する。第1面52は積層方向Dから見て封止部21Cの外周側(以降、単に「外周側」とする)に位置する面であり、第2面53は積層方向Dから見て封止部21Cの内周側(以降、単に「内周側」とする)に位置する面である。第1面52と第2面53との接触点は、積層方向Dにおいて導電板40に重なっているが、これに限られない。例えば、当該接触点は、水平方向において導電板40よりも外側に位置してもよい。この場合、第1面52は、積層方向Dにおいて導電板40とは重ならない。
第1面52は、外周側に向かうほど電極積層体11に近づくように形成される。本実施形態では、第1面52は、封止部21Cの外周側に向かうほど電極積層体11に近づく傾斜面である。このため、積層方向Dにおける第1面52から電極積層体11までの第1間隔G1は、封止部21Cの外周側に向かうほど連続して狭くなる。換言すると、第1間隔G1は、水平方向において第1面52と第2面53との接触点から離れるほど狭くなる。一方、第2面53は、第1面52と第2面53との接触点から水平方向に沿って延在するように形成される。このため、積層方向Dにおける第2面53から電極積層体11までの第2間隔G2は、略一定である。本実施形態では、第1間隔G1は、積層方向Dに沿った第1面52から負極終端電極18の集電体15の一方面15aまでの間隔に相当し、第2間隔G2は、積層方向Dに沿った第2面53から負極終端電極18の集電体15の一方面15aまでの間隔に相当する。また、本実施形態では、第1間隔G1は、第2間隔G2よりも狭くなっている。
以下では、積層方向Dにおいて集電体15もしくは導電板40と第1封止部21とが結合(溶着)する領域を、結合領域Kとする。集電体15及び導電板40のそれぞれにおいて、少なくとも結合領域Kに含まれる表面は、粗面化されている。本実施形態では、バイポーラ電極14及び負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aにおける全体と、正極終端電極19に含まれる集電体15の全体と、導電板40の一方面40aの全体とのそれぞれが、粗面化されている。表面の粗面化は、表面粗さの拡大に相当する。粗面化は、例えば、電解メッキによる複数の突起の形成により実現される。例えば、集電体15の一方面15aに複数の突起が形成された場合、当該一方面15aと第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が複数の突起間に入り込む。これにより、アンカー効果が発揮されるので、集電体15と第1封止部21との間の結合強度を向上できる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。この場合、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となるので、アンカー効果が良好に発揮される。
第2封止部22は、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成する部材であり、各第1封止部21の外表面を覆っている。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。加えて、第2封止部22は、積層方向Dにおいて電極積層体11を越え、導電板40に結合する第1封止部21まで延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の筒形状(環形状)を呈している。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。これにより、第2封止部22は、各第1封止部21を結合している。
第2封止部22は、導電板40に結合される封止部21Cの外表面51の少なくとも一部を覆うオーバーハング部61と、正極終端電極19に結合される封止部21Bの外表面の少なくとも一部を覆うオーバーハング部62とを有する。オーバーハング部61,62は、封止体12における角部を構成する部分である。オーバーハング部61,62は、積層方向Dにおいて互いに対向しており、電極積層体11及び導電板40に対して積層方向Dに沿った拘束力を印加する。
オーバーハング部61は、積層方向Dにおける第2封止部22の一端から内周側に張り出しており、外表面51における第1面52の全体を覆っている。本実施形態では、外表面51の第2面53は、オーバーハング部61から露出している。オーバーハング部61は、積層方向Dにおいて外側を向く外表面61aと、積層方向Dにおいて外表面61aの反対側に位置する内表面61bとを有する。外表面61aは水平方向に沿って延在しており、内表面61bは封止部21Cの外表面51に沿って延在している。このため、積層方向Dに沿ったオーバーハング部61の寸法は、内周側に向かうほど狭くなる。換言すると、オーバーハング部61において、積層方向Dに沿った根元の厚さは、積層方向Dに沿った先端の厚さよりも大きい。オーバーハング部62は、積層方向Dにおける第2封止部22の他端から内周側に張り出す部分である。本実施形態では、積層方向Dにおけるオーバーハング部62の寸法は、略一定である。
第1封止部21及び第2封止部22は、電極積層体11内に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、電極積層体11と封止体12とによって内部空間Vが形成される。より具体的には、互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成される。この内部空間Vには、例えば水溶液系の電解液(具体例としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、もしくはこれらの混合液等のアルカリ性電解液)が収容されている。この電解液は、第1封止部21に設けられる連通孔(不図示)を介して、内部空間Vに収容される。当該連通孔は、電解液の注入後に例えば圧力調整弁等によって塞がれる。なお、「内部空間の体積」と言う場合は、セパレータ13の空隙を含む体積を意味する。
次に、図5~7を参照しながら、本実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法について説明する。図5、図6及び図7(a),(b)は、蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
まず、バイポーラ電極14、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40に対して第1封止部21を成形する。この工程では、最初に、バイポーラ電極14、負極終端電極18、正極終端電極19、及び導電板40を準備する。続いて、バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19に含まれる集電体15の一方面15aと、導電板40の一方面40aとに、第1封止部21を溶着する。具体的には、バイポーラ電極14及び正極終端電極19のそれぞれに対して、封止部21Aを結合する。さらに、負極終端電極18に含まれる集電体15の一方面15aと、正極終端電極19に含まれる集電体15の他方面15bとのそれぞれに対して、封止部21Bを溶着する。また、導電板40の一方面40aに対して、封止部21Cを溶着する。
次に、電極積層体11を形成する(第1工程)。第1工程では、まず、バイポーラ電極14及びセパレータ13を積層方向Dに沿って交互に積層することによって、積層体Sを形成する。続いて、積層方向Dにおける積層体Sの外側(積層方向Dにおける積層体Sの一端)に負極終端電極18を配置すると共に、積層方向Dにおける積層体Sの他端に正極終端電極19を配置する。これにより、バイポーラ電極14、セパレータ13、負極終端電極18、及び正極終端電極19を有する電極積層体11を形成する。
次に、図5に示されるように、第1封止部21が結合された導電板40を、電極積層体11に重ねる(第2工程)。第2工程では、導電板40に結合された第1封止部21(封止部21C)を、負極終端電極18に結合する第1封止部21上(封止部21B上)に配置する。なお、第2工程では、屈曲された導電板40を電極積層体11に重ねているが、これに限られない。例えば、第2工程では、屈曲されていない導電板を電極積層体11に重ねてもよい。
次に、図6に示されるように、電極積層体11に含まれる各第1封止部21と、導電板40に結合される第1封止部21(以降、単に「別の第1封止部21」と記載する)とを仮溶着する(第3工程)。第3工程では、まず、一対の押圧治具31,32を用いて、積層方向Dに沿って電極積層体11及び導電板40を挟持する。押圧治具31,32のそれぞれは、例えば矩形板形状を呈する部材である。ここで、押圧治具31,32の縁は、平面視にて、第1封止部21の外縁よりも内側であって、第1封止部21の内縁よりも外側に位置する。このため、平面視にて、押圧治具31,32のそれぞれは、対応する第1封止部21の一部を覆う。換言すると、平面視にて、第1封止部21の他部は、押圧治具31,32から露出している。本実施形態では、押圧治具31,32の縁は、平面視にて、集電体15の周縁部15cよりも外側に位置する。
続いて第3工程では、水平方向に沿って、加熱治具33によって各第1封止部21を押圧すると共に加熱する。まず、加熱治具33は、押圧治具31,32に突き当たるまで、水平方向に沿って各第1封止部21を押圧する。このとき、加熱治具33によって第1封止部21が加熱される。これにより、各第1封止部21が変形し、積層方向Dにおいて互いに隣り合う第1封止部21同士の隙間(図5を参照)が埋められる。加えて、加熱された第1封止部21の表面が溶融することによって、互いに隣り合う第1封止部21同士が仮溶着される。このような第3工程を実施することによって、電極積層体11に含まれるバイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19と、導電板40とを互いに仮固定できる。なお、加熱治具33は、第1封止部21を押圧及び加熱するための治具であり、例えば略角筒形状を呈する。図示しないが、加熱治具33は、2つ以上の部品に分解可能である。
次に、仮溶着された各第1封止部21を結合する第2封止部22を形成する(第4工程)。第4工程では、図7(a),(b)に示されるように、例えば金型70を用いて、各第1封止部21の外周面に対して加熱溶融材料である樹脂を射出成形する。続いて、金型70内に充填された樹脂を硬化することによって、第2封止部22を形成する。これにより、図2に示されるように、第1封止部21及び第2封止部22を有する封止体12を形成する。そして図示はしないが、第4工程後、各内部空間V内に電解液を注入する。以上の工程を経て、蓄電モジュール4が製造される。
ここで、金型70は、別の第1封止部21における内周部分を覆うカバー部71と、第2封止部22を構成する樹脂が通過するゲート72とを有する。別の第1封止部21における内周部分は、例えば、第4工程にて形成される外表面51の第2面53を有する部分である。一方、カバー部71から露出する別の第1封止部21における外周部分は、例えば、第4工程にて形成される外表面51の第1面52を有する部分である。ゲート72は、上記樹脂を金型70内に導入させるための開口であり、カバー部71よりも水平方向において外側に位置している。本実施形態では、ゲート72は、積層方向Dにおいて別の第1封止部21の外周部分に重なっている。このため、ゲート72を介して金型70内に樹脂を射出するとき、加熱溶融された樹脂の少なくとも一部は、別の第1封止部21における外周部分に衝突する。これにより、当該外周部分が溶融して流動することによって、当該外周部分が薄化する。一方、別の第1封止部21における内周部分は、カバー部71に覆われるので、上記樹脂が衝突しない。したがって、本実施形態では、第4工程において、別の第1封止部21における外周部分が薄化されることによって、第1面52及び第2面53が形成される。加えて、金型70内に樹脂が充填されることによって、積層方向Dに沿った根元の厚さが積層方向Dに沿った先端の厚さよりも大きいオーバーハング部61が形成される。
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によって製造された蓄電モジュール4に含まれる導電板40は、積層方向Dにおいて負極終端電極18の外側に位置する。このため、導電板40に結合する別の第1封止部21は、封止体12における角部に位置する。ここで本実施形態では、第4工程にて第2封止部22を形成する際、別の第1封止部21における外周部分を薄化することによって、第1間隔G1が第2間隔G2よりも狭くなる。これにより、第1封止部21が削られた部分に第2封止部22が設けられる。よって、別の第1封止部21における第1面52上に位置し、第2封止部22において封止体12の角部を構成するオーバーハング部61の根元を、厚く形成できる。したがって本実施形態によれば、蓄電モジュール4の耐圧強度の向上を図ることができる。
本実施形態では、第1間隔G1は、外周側に向かうほど連続して狭くなっている。このため、封止体12の角部の一部に対する蓄電モジュール4の内圧集中が抑制される。
本実施形態では、第4工程においてゲート72が設けられた金型70を用いて、第2封止部22を射出成形にて形成する。加えて、金型70は、別の第1封止部21における内周部分を覆い、ゲート72は、積層方向Dにおいて別の第1封止部21における外周部分に重なっている。このため、金型70内に射出される樹脂が、別の第1封止部21における外周部分に良好に衝突する。これにより、第2封止部22の形成と、別の第1封止部21における外周部分の薄化とを良好且つ同時に実施できる。したがって、蓄電モジュール4の製造方法を簡略化できる。
以下では、図8及び図9を参照しながら、上記実施形態の各変形例について説明する。以下の各変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
図8は、第1変形例に係る蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。図8に示されるように、第1変形例では、第3工程にて押圧治具31Aが用いられる。押圧治具31Aは、上記実施形態にて用いられる押圧治具31と異なり、積層方向Dにおいて第1封止部21の外周部分を向く凸部81を有する。凸部81は、平面視にて矩形枠形状を呈する。平面視にて、凸部81の外縁は押圧治具31Aの縁と揃っており、凸部81の内縁は第1封止部21の内縁よりも外側に位置する。第1変形例では、凸部81の内縁は、積層方向Dにおいて導電板40に重なっているが、これに限られない。積層方向Dに沿った凸部81の突出量は、水平方向においてその外縁に近づくほど大きくなる。第1変形例では、凸部81の頂面は連続した傾斜面になっているが、これに限られない。
第1変形例では、第3工程にて押圧治具31Aが用いられることによって、導電板40に結合する第1封止部21に対して、押圧治具31Aの凸部81が押し当てられる。これにより、当該第1封止部21の外周部分が変形する。加えて、加熱治具33によって第1封止部21が加熱されることによって、上記外周部分が凸部81の形状に沿うように変形する。
上述した第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて第3工程にて、導電板40に結合する第1封止部21の外周部分に凸部81を押し当てることによって、当該外周部分を確実に薄化できる。
図9は、第2変形例に係る蓄電モジュールに用いられる導電板の形成工程を示す図である。図9に示されるように、第2変形例では、予め外周部分が薄化された第1封止部21が結合される導電板40を用いる。第2変形例では、外周部分の薄化は、導電板40の一方面40aに封止部21Cを熱溶着するときに形成される。具体例としては、まず、導電板40の一方面40a上に第1封止部21(封止部21C)を配置する。続いて、導電板40の他方面40b側を加熱することによって、第1封止部21が導電板40に熱溶着する。このとき、第1封止部21を加熱変形させることによって、第1封止部21の外周部分を薄化する。これにより、外表面51に第1面52及び第2面53が形成される。
第2変形例では、導電板40の縁を加熱する。ここで、構成材料の観点から、導電板40の熱伝導率は、第1封止部21の熱伝導率よりも顕著に高い。このため、第1封止部21では、水平方向において導電板40の縁よりも内側ほど、熱が逃げやすい傾向にある。一方、第1封止部21において導電板40から離れた領域ほど、熱が逃げにくい傾向にある。よって、第1封止部21において導電板40から離れた領域ほど高温になる傾向にある。したがって第2変形例では、導電板40の一方面40aに第1封止部21を熱溶着するとき、第1封止部21の外周部分のみを良好に薄化できる。
第2変形例に係る導電板40を用いた場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、導電板40に結合される第1封止部21の外周部分を確実に薄化できるので、蓄電モジュールの耐圧強度を良好に向上可能である。さらには、第2変形例によれば、第1封止部21の導電板40への熱溶着と、第1封止部21における外周部分の薄化とを同時に実施できる。これにより、蓄電モジュールの製造方法を簡略化できる。
本発明に係る蓄電モジュール及びその製造方法は、上記実施形態及び上記変形例に限定されず、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び上記変形例は、適宜組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態と上記第1変形例とは、組み合わされてもよい。この場合、導電板に結合する第1封止部の外周部分がより確実に薄化される。また、上記第1変形例及び上記第2変形例のいずれかが実施される場合、第4工程にて金型内に射出される樹脂は、導電板に結合する第1封止部に衝突しなくてもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、各集電体における一方面が粗面化されているが、これに限られない。例えば、当該一方面のうち結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。また、導電板の一方面のうち、結合領域に含まれる箇所のみが粗面化されてもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、集電体及び導電板のそれぞれは、平面視にて略矩形状を呈するが、これに限られない。集電体及び導電板のそれぞれは、平面視にて多角形状でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。同様に、エンドプレートと、セパレータとのそれぞれは、平面視にて略矩形状を呈さなくてもよいし、封止体(具体的には、第1封止部及び第2封止部)もまた平面視にて略矩形枠形状を呈さなくてもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、導電板に結合する第1封止部の外表面に含まれる第1面は、連続した傾斜面であるが、これに限られない。例えば、当該第1面は多段階に傾斜する面でもよいし、第1面には段差が設けられてもよい。すなわち、第1面と電極積層体との第1間隔は、水平方向に沿って外周側に向かうほど不連続に狭くなってもよい。また、上記外表面に含まれる第2面は、水平方向に沿って延在しているが、これに限られない。例えば、第2面は、連続した傾斜面でもよい。この場合、第2面の傾斜角は、第1面の傾斜角と同一でもよいし、異なってもよい。すなわち、第1面と第2面とは、連続する一つの平面を構成してもよいし、互いに異なる平面であってもよい。なお、第2面は多段階に傾斜する面でもよいし、第2面には段差が設けられてもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、導電板は負極終端電極に隣接しているが、これに限られない。導電板は、正極終端電極に隣接してもよい。また、負極終端電極と正極終端電極との両方に隣接してもよいし、正極終端電極に結合する第1封止部の外周部分は、薄化されてもよい。これらの場合、積層方向における両方のオーバーハング部の根元を厚くできるので、蓄電モジュールのさらなる耐圧強度の向上を図ることができる。
上記実施形態及び上記変形例では、積層方向において負極終端電極側に位置するオーバーハング部は、導電板に結合する第1封止部の外表面における第1面の全体を覆っているが、これに限られない。当該オーバーハング部は、第1面の一部のみを覆ってもよいし、第1面の全体に加えて第2面の少なくとも一部を覆ってもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、第3工程において用いられる押圧治具と加熱治具とは、互いに異なる治具であるが、これに限られない。例えば、押圧治具は、加熱治具の一部でもよい。また、上記第1変形例では、押圧治具に凸部が設けられているが、これに限られない。例えば、押圧治具の代わりに加熱治具に凸部が設けられてもよいし、押圧治具と加熱治具との両方に凸部が設けられてもよい。