JP3695525B2 - 定着装置の温度制御方法及びこれを用いた定着装置、画像形成装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ及びその他の装置に用いられる電子写真方式の画像形成装置に係わり、特に熱を用いた定着装置とその温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、最も一般的な電子写真画像を記録材上へ定着する方法として、電力を供給する事によりヒーターが発熱し、この熱を利用して定着を行う熱定着装置が幅広く用いられる。この熱定着装置においては、ヒーターに電力を供給し所要の温度に達するまで昇温させて定着可能状態を得、前記定着可能状態を保持しつつ定着装置へ記録材を搬送・通過させるという構成が主である。そのために、ヒーターを加熱する場合の制御としてはヒーターへの供給電力を制御することが行われる。ヒーターへの供給電力の制御方法としては、例えば、サーミスタ等の温度検出手段によりヒーターの温度を検出し、あらかじめ設定された設定温度との差に応じて、
1)交流波の半サイクル中の導通角を変化させて給電を制御する位相制御方法、
2)検出温度が所定の目標温度よりも低ければヒーターへの通電をONし、高ければOFFするといういわゆるON/OFF制御方法、
3)ヒーターへの通電を交流のゼロクロスに同期してパルス幅を変化させ、交流出力を制御するパルス幅制御方法、などがある。
【0003】
これらのうち最も一般的に用いられているON/OFF制御方法の場合、ONしたあとのオーバーシュートとOFFしたあとのアンダーシュートによる温度リップルが発生し、安定して良好な定着状態が得難いという欠点があった。そして、これを低減するために比較的大きな熱容量を有するヒーターを用いると、良好な定着状態が得られる温度にヒーターが昇温するいわゆるウォームアップ時間が長くなってしまう。これを防止するために、画像形成装置の休止時にもヒーターを高温に保つ必要があるなど、省電力化の妨げとなるなどの欠点を有していた。
【0004】
ウォームアップ時間の短縮は定着装置においては大変に重要である。そして、素早く良好な定着状態を得られるような装置構成にするためには、熱容量の小さいヒーターを有する定着装置や電力量の大きいヒーターを有する定着装置を使用することが必須である。しかし、温度リップルが発生し易くなるなど、ウォームアップ時間の短縮のためには温度リップル低減が問題であった。
【0005】
更に、ウォームアップ時間の短縮のために小熱容量、大電力量のヒーターを有する定着装置を用いたON/OFF制御やパルス幅制御では上述した以外に次のような欠点があった。すなわち、ヒーターONからOFFになる時、あるいはその逆のOFFからONになる時には、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一の電源ライン上に接続された他の電気機器、特に照明機器等に電源電圧の変動によるチラツキが生じるというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
温度リップルを小さくし、きめの細かい適切な制御を行うために特公平2−4909号には、ある特定のパルスの出力パターンを複数個記憶しておき、検出温度と目標温度の差によってパターンの一つを選択出力することで温度制御する方法が記載されている。ところがパターン選択による出力の場合、これを記憶しておくための大きなメモリが必要になり、アルゴリズムが複雑になる。また、ウォームアップ時間の短縮のために小熱容量、大電力量を用いた定着装置を用いることになると更にきめ細かい制御が必要であり、少ない特定の選択パターンでは対応しきれないという問題があった。更に、本従来例によると15msec毎に温度検出をして出力パターンを選定しなくてはならずCPUの負担が大きくなり、甚だしくは専用のCPUが必要であった。一方では、CPUの負担を小さくしようとすると検出時間を長くしなければならず、温度リップルが増えるという問題があった。これらの問題に対処するために更に多くの選択パターンが必要になり、従って、大容量のメモリが必要となってしまう。また、温度検出手段においては検出遅れが必ず発生するが、これに対して温度検出サイクルを短くしても効果はなく、温度変動率等から遅れ量を補正するPID制御を用いる必要がある。しかし本従来例は、目標温度と検出温度の差でのみ通電パターンを決定することから、PID等の高度な制御と組み合わせることができないという欠点がある。
【0007】
また、選択した出力パターンによっては、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上の他の電気機器、特に蛍光灯、白熱灯などの照明機器やディスプレイ等のチラツキが気になるという欠点があった。更に小熱容量、大電力の加熱手段を有する定着装置と組み合わせた場合、チラツキは大きくなる一方であり一層好ましくない。
【0008】
これに対し、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一の電源ライン上の他の電気機器のチラツキを防止する対策として、特公昭63−48349号が挙げられる。本従来例においては、複写機の露光ランプが点灯している時には位相制御手段を作動させている例があるが、位相制御ではノイズが発生するという欠点を有しており好ましくない。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。
【0010】
本発明の第1の目的は、熱容量が比較的小さいか、または電力量が比較的大きな加熱手段を有する定着装置またはこれを備えた画像形成装置において、大容量のメモリを必要としないにもかかわらず、画像形成装置のCPU(中央制御ユニット)に対しての加熱手段の温度制御の負担が少なく、PID等高度な温度制御手段を用いたきめ細かな温度制御が可能な定着装置の温度制御方法を実現することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一の電源ライン上の他の電気機器、特に照明機器(蛍光灯、白熱灯等)やディスプレイ等に人の目に不快なチラツキを発生させない定着装置の温度制御方法を実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の定着装置の温度制御方法は、記録材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出温度に基づいて供給電力量を求め、求めた供給電力量を供給することにより前記加熱手段の温度を制御する温度制御手段とを備えた定着装置の温度制御方法において、
前記温度制御手段における温度制御周期は第1周期とそれより周期の長い第2周期とから構成されており、前記第2周期内は前記加熱手段への電力供給が許可される第1期間と前記加熱手段への電力供給が許可されない第2期間とを合わせて前記供給電力量になるように前記第1期間と前記第2期間が設定され、前記第1期間内では前記第1周期で前記加熱手段へ電力供給され、かつ、前記第1周期において前記加熱手段へ電力供給される電力供給パターンは、前記加熱手段へ供給される交流波の半サイクルを1単位として、少なくとも1単位の通電と、少なくとも1単位の非通電とからなり、かつ、前記第2周期で前記温度検出手段による温度のサプリング検出が行われそれに基づいて前記供給電力量が決められ、前記第1周期は商用AC電源の周波数によって決められ、
前記加熱手段に供給する電力Pを、目標温度をT* 、ゲインをG、オフセット電力をPC として、
P=G・(T* −TC )+PC (1)
に従って供給電力量を決定することを特徴とする方法である。ここでTC は検出温度の補正値であり、
TC =TS +k・τ・ΔTS /Δt (2)
で求められる。TS は前記温度検出手段の検出温度、kは補正率、τは前記温度検出手段の時定数、Δtは検出温度TS の所定のサンプリング時間、ΔTS はΔt間で生じるTS の変化量、ΔTS /Δtは前記温度検出手段の検出温度の変化率である。
【0015】
これらの場合、電力供給パターンとしては、1単位の通電と3ないし8単位の非通電とからなることが好ましい。
【0016】
また、1単位の通電と4ないし6単位の非通電とからなることがより好ましい。
【0018】
本発明は、このような定着装置の温度制御方法を用いる定着装置、及び、その定着装置を備えた画像形成装置を含むものである。
【0019】
【作用】
本発明による温度制御方法は、加熱手段に対する供給電力量を決定するための電力量決定周期を設定し、その周期内で適切に加熱手段に電力を供給する方法である。この温度制御方法は、
1)極端には短くない電力量決定周期(第2周期)を設定してCPUの負担を軽減し、
2)電力量決定周期毎に加熱手段への供給電力量を逐次計算することにより所要メモリ量を削減し、
3)電力量決定周期を電力供給可能な期間(第1期間)とそうでない期間(第2期間)とにわけることができ、かつ、電力量決定周期よりも短い周期(第1周期)を電力供給の基本単位とすることにより、きめ細かな温度制御が可能となり、
4)温度検出手段の検出遅れを補償することにより、高精度で安定した温度制御を行うことができるものである。
【0021】
さらに上記に加えて、
5)第1周期内での電力供給パターンを工夫することにより、本発明の定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された電気機器の電圧変動を抑制するものである。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の定着装置の温度制御方法を、画像形成装置の一種であるプリンタ装置に適用した一実施例を図面に従って説明する。まず、定着装置およびその制御装置全体の概要について説明する。
【0024】
図1は本発明の定着装置の構成を示す断面図である。回転可能に支持された加熱ローラー1の内部にハロゲンランプヒーター3が設けられ所定の電力が印加されることによって加熱ローラー1が熱せられる。加熱ローラー1の表面にはサーミスタを内蔵する温度センサ4が押圧されており、温度センサ4の検出温度によりハロゲンランプヒーター3への通電電力が制御される。回転可能に支持された加圧ローラー2は、金属製の軸6の周囲にシリコンゴム等の弾性層が設けられており、図示しない軸両端部に荷重印加されることによって加熱ローラー1に圧接されてニップ部を形成している。このニップ部を未定着トナー像が形成された記録材5が通過することによって定着が行われる。
【0025】
本発明の定着装置またはこれを備えた画像形成装置に適用することができる記録材としてはシート状のものであれば特に制限はなく、紙、ハガキ、封筒、フィルム、薄板等が好ましく用いられる。
【0026】
図2は本発明の一実施例の加熱ローラー1の温度変動を示す図である。縦軸に加熱ローラー1の温度T、横軸に経過時間tをとる。加熱ローラー1の経過時間による温度変動をTs にて示す。まず、プリンタ装置外から送出された画像情報の入力と共に加熱ローラー1に対して加熱を開始する。そして、加熱ローラー1の温度Ts が目標温度T* に到達した直後にハロゲンランプヒーター3への電力を遮断する。しかし、加熱ローラー1の温度はオーバーシュート状態にあり、しばらく温度上昇する。その後、加熱ローラー1の温度Ts は、目標温度T* 近辺まで下がり、所定の温度検出のサンプリング時間ごとに電力が印加され始め、加熱ローラー1の温度を安定化させ、所定の温度範囲内に安定した後、記録材5の通紙を開始する。
【0027】
図3は加熱ローラー1の温度を制御するための制御装置の構成を示すブロック図である。温度センサ4から出力されたアナログ電圧信号は、アンプ9を経てA/Dコンバータ10に入力される。A/Dコンバータ10により256レベルのディジタル信号に変換された信号は、I/O11に入力される。そして、所定のサンプリング時間、即ち本発明の第2周期ごとに、温度制御プログラムを実行するCPU13に入力される。この第2周期については後ほど詳しく説明する。温度制御プログラムはROM12に内蔵されており必要に応じてCPU13に呼び出され実行される。CPU13は、温度制御プログラムを実行することにより検出された温度から以下の数式(1)に従ってハロゲンランプヒーター3に供給する電力量を決定する。そして、後述する方法に従ってハロゲンランプヒーター3に対して間欠的に通電を行う。
【0028】
CPU13で発生された制御信号はハロゲンランプヒーター3を点滅させるスイッチであるSSR7へ送られる。SSR7へは、ゼロスイッチング回路8からも交流ゼロクロスに同期した信号が送られる。SSR7は、ゼロスイッチング回路8からの信号を受けたときにCPU13からの制御信号があればオンし、制御信号がなければオフする。このようにして、CPU13からの制御信号により交流波の半サイクルを1単位としてSSR7はオンオフされ、それに従いヒーター通電がなされる。交流波の半サイクル単位でオンオフするためには、ゼロスイッチング回路8からの信号でCPU13に割り込みをかけ、この割り込み信号に基づいてCPU13から制御信号を出力するように構成してもよい。
【0029】
本実施例における温度制御プログラムは、ハロゲンランプヒーター3に供給する電力Pを、目標温度をT* 、ゲインをG、オフセット電力をPC として、
P=G・(T* −TC )+PC (1)
に従って供給電力量を決定している。ここでTC は検出温度の補正値であり、温度センサ4の検出遅れの式
TC =TS +k・τ・ΔTS /Δt (2)
で求められたものである。TS は温度センサ4の検出温度、kは補正率、τは温度センサ4の時定数、Δtは検出温度TS の所定のサンプリング時間、ΔTS はΔt間で生じるTS の変化量、ΔTS /Δtは温度検出手段の検出温度の変化率である。このように本発明では、第2周期である所定のサンプリング時間毎に温度制御プログラムを実行するため、温度センサ4の時間遅れを予想して、それを補正する温度制御、即ち予測制御という高度な温度制御手法を組み込むことができる。
【0030】
上式(1)、(2)の計算において、温度センサ4の検出温度TS 等は前述したようにA/D変換されたディジタル値であって、CPU13内部では整数演算を行うことにより供給電力Pを決めている。
【0031】
次に、決定された供給電力Pに基づいたハロゲンランプヒーター3への電力供給方法について説明する。まず第1の温度制御方法は、加熱手段に対する供給電力量を決定するための電力量決定周期を設定し、その周期内で適切に加熱手段に電力を供給する方法である。そして特にここでは、第1周期、第2周期、第1期間、第2期間等の用語、及びこれらの周期、期間が電力供給にどのように利用されているかについて詳しく説明する。
【0032】
図4は、本発明の温度制御方法における電力供給方法の一例を示す図である。縦軸はハロゲンランプヒーター3への供給電圧、横軸は時間tである。まず第2周期Δt2 ごとに、加熱ローラー1に接触する温度センサ4の検出温度TS をサンプリングし、それに基づいてCPU13が供給電力量(以下、デューティーと呼ぶ)を決定する(なお、決定方法は上述の通りである)。すなわち第2周期Δt2 を1つの温度制御単位としてフィードバック制御がなされるわけである。第2周期Δt2 は、電力供給が許可される第1期間Δt3 と電力供給が許可されない第2期間Δt4 に分けられている。第1期間Δt3 においては、第2周期Δt2 より周期の短い第1周期Δt1 (本例では交流波である商用AC電源の半サイクルの周期)を単位とした通電が行われる。
【0033】
温度を高精度に制御するためには、第2周期Δt2 を3秒程度以下すなわち1/3Hz程度以上の周波数に設定してフィードバック制御を行い、頻繁にデューティー(供給電力量)を変化させることが望ましい。一方、第2周期Δt2 を短くしすぎると、1つの第2周期Δt2 のなかに入る交流半波の波数が少なくなってデューティー(供給電力量)のレベルを細分化できなくなるために、0.2秒程度以上すなわち5Hz以下にすることが望ましい。
【0034】
また、第1周期Δt1 は、第2周期Δt2 に比べて短いほど電力供給量のレベルを細分化できる。従って、より高精度な温度制御を行うことができる。通常、第2周期Δt2 に対して第1周期Δt1 が1/5以下であることが望ましい。さらに、第2周期Δt2 に対して第1周期Δt1 が1/50以下であると一層精度の高い温度制御を行うことができる。なお、第1周期Δt1 は理論的には極限まで短くすることが可能である。しかしながら、実際の制御回路素子(例えばハロゲンランプヒーター3)の応答速度などのハードウエア条件によっておのずと限界がある。また、第1周期Δt1 を短くし過ぎると実際の温度制御の高精度化にはあまり寄与しなくなってくる。通常、有効となる第1周期Δt1 の下限値は第2周期Δt2 に対して1/5000程度である。
【0035】
上述した第1周期Δt1 の望ましい範囲のなかでも、第1周期Δt1 としては本実施例で用いたように、ハロゲンランプヒーター3に供給される交流波の半サイクルに比例した周期をとることがより望ましい。これは、交流波の半サイクルと同期したゼロクロス信号を比較的容易に得ることができるためである。そして、ハロゲンランプヒーター3に供給する電力量の1単位を形成するための基準信号としてこのゼロクロス信号を用いることにより、制御装置の回路的な負担、及び制御プログラムやCPUの処理に関わる負担を大きく低減することができる。なお、この時の第1周期Δt1 の具体的な値は、使用する商用AC電源の周波数によって異なる。商用AC電源の周波数が50Hzの場合は、例えば、1/100、1/50、3/100、1/25、1/20、3/50、7/100秒(周波数で表すと100、50、約33、25、20、約17、約14Hz)などである。
【0036】
このような通電制御を行うことによって、所定の制御サイクルすなわち第2周期Δt2 毎に頻繁に供給電力量を変化させることができ、PID制御等の高度な制御と組み合わせることできめ細かな安定した温度制御を行うことができる。しかも温度検出とデューティーの計算は第2周期Δt2 に1回で済みCPUへの負担が少ない。そのため、同時に画像形成装置内の他の部分の制御等を行うことができ、温度制御用に専用のCPUを用意しなくても画像形成装置本体のCPUで兼用できるという利点がある。
【0037】
そして、本発明者らが上述したような制御方法に基づいて定着装置の温度制御を行ったところ、温度は極めて高精度に安定に保たれることが確認された。
【0038】
さて一方、本発明の定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に照明装置が接続されている場合には、照明装置にチラツキが発生することもあることがわかった。そして、このチラツキが従来のON/OFF制御に比べてより不快に感じられる場合があることがわかった。
【0039】
図5は、上述の電力供給方法における、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された蛍光灯の光量変動を示す図である。縦軸は定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された蛍光灯の光量、横軸は時間tである。また、Δt1 、Δt2 、Δt3 、Δt4 はそれぞれ図4に示す第1周期、第2周期、第1期間、第2期間に相当する時間である。
【0040】
図5から明かなように、蛍光灯の光量は定着装置の加熱手段への通電により影響を受けて変動を生じてしまう。この光量変動201が人の目にチラツキとして感じられ、不快感を与える場合があるわけである。光量変動201には、図5中イに示される、第2周期Δt2 毎の変動と、図5中ロに示される、第1周期Δt1 毎の変動がある。
【0041】
本発明では、図4を用いて説明した電力供給方法に加えて、人の目が上述のようにして発生するちらつきに対してどのような感じ方をするかということに着目して、ちらつき感を防止する電力供給方法を実現している。以下その詳細について説明する。
【0042】
まず、人の目に感じるチラツキ感について光量変動と変動周波数との関係を調べてみると、図6のような特性が有ることがわかった。図6は、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された照明機器のチラツキ感の、光量変動周波数と光量変動量の依存性を示す図である。縦軸は光量変動量(%)、横軸は光量変動周波数(Hz)である。図6中の領域(A)はチラツキ感が全くわからない領域、領域(B)はチラツキ感がわずかにわかる程度の領域、領域(C)はチラツキ感はわかるが不快ではない領域である。なお、これら(A)、(B)、(C)以外の領域はチラツキ感を感じ不快である領域である。実験で使用した電源周波数は60Hzであったが、50Hzで調べても同様の結果となった。また、ハロゲンランプヒーター3としては定格電力が300Wから700W程度のものを用いた。
【0043】
さて、図6によれば、上述した第2周期Δt2 毎のサイクルの周波数範囲(1/3〜5Hz程度)においては、チラツキ感が光量変動量に大きく依存していることがわかる。一方この周波数範囲以下(1/3Hz程度以下)であればチラツキを感じることがあっても、その頻度が低いためそれほど不快とは感じない。従来のON/OFF制御はこの周波数範囲にある。
【0044】
そこでこの第2周期Δt2 毎の照明機器の光量変動量を低減するために、第2周期Δt2 毎の通電期間Δt3 内の通電を間欠的に行うことを試みた。すなわち、後で図9を用いて詳述するような、第1周期Δt1 の通電を少なくとも1単位の通電と少なくとも1単位の非通電とからなる電力供給パターンとした。このような電力供給方法を用い、非通電の単位数すなわち間欠間隔を変化させて、蛍光灯等の照明機器の光量変動量の特性を調べてみた。すると、図7に示されるように、間欠通電の間欠間隔と、第2周期Δt2 毎の光量変動量とは相関があることがわかった。図7は間欠間隔に対する第2周期Δt2 毎の光量変動量をプロットしたものである。間欠通電しない場合に比べ間欠通電する事により光量変動量が大幅に減少しており、また、間欠間隔が長くなるほど光量変動量が減少している。このことと、不快感が光量変動量の減少により小さくなることとをあわせて考えると、第2周期Δt2 毎の光量変動によるチラツキの不快感の除去に間欠通電が著しい効果を有していることがわかる。
【0045】
図6の人の目の特性をさらに詳細に調べると、上述の第2周期Δt2 毎のサイクルの周波数範囲(1/3〜5Hz程度)では、光量変動量が約2%程度以下であればチラツキが感じられず、光量変動量が約3%以下であればチラツキはわずかに感じられる程度であり、5%以下であればチラツキは感じられるが不快ではないことがわかった。これを図7の間欠間隔と光量変動量の関係と照らし合わせてみると、間欠間隔が1以上が不快とは感じない実用上問題のない領域、3以上がチラツキわずかに感じられる程度の望ましい領域、4以上がチラツキが全く感じられないさらに望ましい領域であることがわかる。
【0046】
ところが、上述のように第2周期Δt2 毎のちらつきをさらに減らしていこうとして間欠通電間隔を広げていくと、今度は逆に間欠通電が原因のちらつき、すなわち第1周期Δt1 毎の光量変動によるちらつきが発生する場合がある。以下それが発生しない条件について説明する。まず、間欠通電をしない場合の第1周期Δt1 は商用AC電源の交流周波数(例えば50Hz)の倍、例えば100Hzである。従って、図6のグラフより第1周期Δt1 毎の光量変動が存在してもひとの目に感じない周波数領域であることがわかる。ところが、間欠通電を行わないときに100Hzであった第1周期Δt1 のサイクルが、間欠通電を行うことによって、例えば間欠通電間隔が半波10単位であれば約9Hzになり、すでに人の目に感じられる領域になってしまう。
【0047】
図8はどこまで通電間隔を広げられるかを示す図であって、図6の一部を詳細に拡大したものに、図7の光量変動量を重ね合わせたものである。なお、図8は商用AC電源の周波数が50Hzの場合である。図8からわかるように光量変動周波数が約11Hz以上すなわち間欠間隔が8単位以下であればチラツキがわずかに感じられる程度である。また、光量変動周波数が約14Hz以上すなわち間欠間隔が6単位以下ではチラツキが感じられない。
【0048】
このように、交流波の半サイクル1つを1単位とした電力供給をある間隔を以て行うことによりチラツキによる不快感を防止することができる。そして、望ましくは間欠間隔が3単位以上8単位以下でチラツキ感をほとんど感じない温度制御領域となる。更に望ましくは、間欠間隔が4単位以上6単位以下で、チラツキ感のない更に良好な温度制御領域となる。
【0049】
図9にこのような条件を満たす間欠通電の例を示す。図9中に示された電力供給パターンは、第1周期Δt1 が5つの単位で構成され、5単位のうち1単位を通電し、残り4単位を非通電とする例で、これをパターンAとする。通電単位と次の通電単位との間にある非通電単位の数を間欠間隔とすると、パターンAの間欠間隔は4である。第1期間Δt3 内にては、パターンAが第1周期Δt1 で繰り返されて通電が行われる。パターンAの繰り返し回数は、デューティーと、商用AC周波数と、第2周期Δt2 と、第1周期のパターンAの構成から決定される。一方、第2期間Δt4 では、電力供給が許可されないが、この期間内では第1周期Δt1 が5つの単位で構成され、5単位のうち何れもが非通電である。このパターンをパターンBとする。第2期間Δt4 内ではパターンBが所定回数繰り返される。このような動作が第2周期Δt2 毎に繰り返される。なお、温度センサ4の検出温度のサンプリングおよびそれに基づいたデューティーの計算は第2周期Δt2 の最初毎に行われる。
【0050】
次に、上述のような間欠通電を行うための通電制御方法の具体的手法に付いて実験例を用いて詳細に説明する。
【0051】
[実験例1]
本実験例に於ける定着装置の構成は、表1に示すとおりである。
【0052】
【表1】
図10は、本発明の実験例1の電力供給の説明図である。縦軸には電圧、横軸には時間をとる。例えば、デューティー10%、パターンA、第2周期は1秒、商用AC電源60Hzの場合について考える。第2周期Δt2 =1秒は60×2=120単位で構成され、デューティー10%であるから第2周期Δt2 内で合計12単位の通電が必要である。第1周期のパターンAは、5単位中1単位の通電であるからパターンAを12回繰り返すこととなり、従って第1期間Δt3 は12×5=60単位である。第2期間Δt4 は、第2周期Δt2 である120単位よりΔt3 を引いた60単位であり、パターンBを12回繰り返すこととなる。
【0053】
次に、図10で示したパターンの出力の場合の制御を行うための制御信号について、図11及び図12を用いて説明する。図11は、実験例2の温度制御方法の全体のフローチャートの図である。本実験例では商用AC電源60Hzでの使用であり、第2周期Δt2 は交流波の半サイクルを1単位として120単位からなる。
【0054】
まずSTEP1で、第2周期Δt2 全体のカウント値nの初期値を設定する。第2周期Δt2 の120単位の最初の1単位に対して、カウンタのカウント値nを119にセットする。STEP2では、1/120秒に1回だけの以下の処理を行わせるために、1/120秒のタイマーが立ち上がっているか確認する。立ち上がっていればSTEP3へ進み、もし立ち上がっていなければ、即ち1/120秒経過していなければSTEP2を繰り返し、タイマーの立ち上がりを待つ。STEP3では1秒間120回の最初の1回であるかを判断する。STEP3の判定がYとなり最初の1回であると、デューティーを決定し通電パターンを割り当てるためのルーチン▲1▼に入る。
【0055】
図12(a)は、図11のルーチン▲1▼の説明図である。STEP▲1▼−1では前述した方法を用い、CPUに入力された検出温度データに基づいて供給すべき電力量であるデューティーを計算する。実験例1では算出されたデューティーが図9に対応する10%なので、STEP▲1▼−2の判定はYとなる。このようにSTEP▲1▼−2ではデューティーが何%になっているかを判断し、各デューティーに応じた通電パターンとなるように分岐する。この時、デューティーが20%以上の場合は、20%以上の通電パターンを割り当て、ルーチン▲2▼に入るが、ルーチン▲2▼については後述の実験例4にて説明する。次に、STEP▲1▼−3では10%のデューティー、即ち12個の通電単位の通電すべきタイミングを割り当てる命令をする。換言すれば、第1周期Δt1 でのパターンAを設定する。
【0056】
図12(b)は、図12(a)のSTEP▲1▼−3に記載したcount0からcount4と交流波の半サイクルとの対応を表した図である。縦軸に定着装置のハロゲンランプヒーターへの供給電圧をとり、横軸に時間tをとる。第1周期Δt1 は5つの単位よりなっているが、第1番目の単位101をcount0、第2番目の単位102をcount1、第3番目の単位103をcount2、第4番目の単位104をcount3、第5番目の単位105をcount4と割り当てる。そしてcount1からcount4までを0と設定し、count0のカウント値には、120×デューティー(duty)の計算値を設定する。この120とは第2周期Δt2 =1秒中に存在する単位数を示し、dutyは10%であるので、120×duty=120×0.1=12となる。ここで、AC電源周波数d(Hz)と第2周期Δt2 の時間とデューティーが変わった場合はcount0には、d×2×Δt2 ×dutyの計算値が入る。この時、計算値が整数でなければ小数点以下1位を四捨五入する。また、以上のルーチン▲1▼は1秒に1回実行される。
【0057】
次に図11のSTEP4からSTEP7まででは、現在の1単位について、通電、非通電の判断がなされる。STEP4−1からSTEP4−4とSTEP5において、カウンタのカウント値nが第1周期Δt1 中の5単位のうち何番目かが判別され、これに対応したcount0からcount4のいずれを参照するか決定する。STEP5では、参照された値が0である時は、ハロゲンランプヒーター3に通電せずSTEP8へ進み、0でないことが判別されるとSTEP6にてヒーター3に通電する。更にSTEP7へ進み、参照されたカウント値を1つ減らす。
【0058】
STEP7までの処理を終えると、STEP8でカウンタのカウント値nが0でない、すなわち第2周期の最後の1単位でないことを確認するとSTEP9で現在のカウンタのカウント値nより1を減らし、STEP2へ戻る。また、STEP8においてn=0すなわち第2周期の最後であると判別すると、カウンタをn=119へ戻し、STEP2へ戻る。このような一連の処理を行うと、図10に示した電力供給のパターンが実現する。
【0059】
このような処理フローに基づいて通電制御を行うことによって、温度検出とdutyの計算は第2周期Δt2 (1秒)に1回で済み、しかもその計算量は少なく、その間はプログラム一つで手続き的に電力供給のパターンを決めることができるため大容量のメモリを必要とせず、繰り返しのみの制御で種々のデューティで通紙でき、こまかな温度制御ができると共に、CPUへの負担が少なくなる。
【0060】
本実施例のように、ウオームアップ時間を短縮するような小熱容量・大電力の加熱手段を有する定着装置では、ウォームアップ動作終了後のオーバーシュートを経過した後は出力デューティーは極めて小さい。実際には、デューティーとしては10から20%程度の値が最も多いため、図12の▲2▼のルーチンを実行する例はほとんどない。このルーチンを実行する例としては、後述する実験例4のように特に厚い紙、特に厚い封筒等の特殊な記録材を使用する場合である。
【0061】
上述した実験例1では、間欠間隔の望ましい範囲の一つである間欠間隔が4単位の制御方法を示しており、その時のチラツキ感を観測した。図13は、実験例1の構成を有する定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された蛍光灯の光量変動202とその通電パターンを説明する図である。図13(a)は、第2周期Δt2 での光量変動を示しており、図13(b)は第1周期Δt1 での光量変動を示している。それぞれ縦軸は光量、横軸tは時間である。図13(a)において光量は202の如く変動し、長周期の変動、即ち、第2周期Δt2 での光量変動量の最大値ΔE2は1.6%であった。これは、図6の領域(A)に該当する。また、図13(b)において、短周期の変動、即ち第1周期Δt1 での光量変動量の最大ΔE1は0.6%であった。この場合の光量変動周波数は24Hz(商用AC電源周波数50Hzの場合で換算すると20Hzに相当)と高く、これは図8の領域(A)に該当する。
【0062】
このように本発明の定着装置の温度制御方法を行うと、同一電源ライン上の蛍光灯のチラツキを生じる事なく、かつ良好な定着状態を得ることができる。また、通電開始の時のハロゲンランプヒーターへの突入電流が減少するため、ハロゲンランプヒーターの耐用時間が長くなるという利点もある。
【0063】
また、蛍光灯のチラツキが気にならず最適である領域のうち、より大きいデューティが必要な場合には間欠間隔を短くするとよい。これは定着装置の構成としてより大きい電力を必要とする場合である。例えば、通紙速度が表1に示す速度より速い場合、ハロゲンランプヒーター3が表1に示す電力より小さい場合、或いは特に厚い記録材を通紙する場合などである。また逆に、より小さいデューティで良い場合には間欠間隔を長くすることが効果的である。例えば、通紙速度が表1に示す速度より遅い場合、或いはハロゲンランプヒーター3が表1に示す電力より大きい場合等、定着手段の構成として小さい所要電力で十分な場合である。
【0064】
[実験例2]
次に、第2の実験例を記述する。実験例1で用いた350Wのハロゲンランプヒーターを大電力量のハロゲンランプヒーターに変更し、低デューティーで実験例1と同様の温度制御を行ったものである。主要部の構成は以下に示す表2の通りである(表1と同一条件のもののうち主要以外のものについては特に再掲はしていない)。
【0065】
【表2】
ハロゲンランプ定格電力 500W
制御サイクル(第2周期) 1秒
第1周期 5単位
第1期間内のパターン A(1単位通電、4単位非通電、間欠間隔4)
第2期間内のパターン B(5単位非通電)
デューティー 5%
図14は、本発明の第2の実験例の構成で温度制御を行ったときの定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された蛍光灯の光量変動203とその時の通電パターンを説明する図である。図14(a)は、第2周期Δt2 での光量変動を示しており、同図(b)は第1周期Δt1 での光量変動を示している。それぞれ縦軸は光量、横軸tは時間である。第2周期Δt2 での光量変動量の最大ΔE12は2.5%であった。これは、図6の領域(B)に該当する。また、第1周期Δt1 での光量変動量の最大ΔE11は0.6%であった。この場合、光量変動周波数は24Hz(商用AC電源周波数50Hzの場合で換算すると20Hzに相当)と高く、図8の領域(A)に該当する。
【0066】
電力量が大きいハロゲンランプヒーターであってもチラツキ感は図8に示す(B)領域であった。また、この時ウォームアップに要する時間は実験例1より約2.5秒短縮された。さらに、記録材の通紙中も温度低下は少なく、供給電力は小さいデューティで良い。仮に大電力にしてオーバーシュートが大であったり温度リップルが大きくなってしまっても、PID制御等の高度な制御との組み合わせが可能であるので制御定数を変えるなどの対策により、適切な制御ができるようになる。
【0067】
[実験例3]
更に、実験例3として、上述した実験例2よりも間欠間隔を長く設定した制御方法を行った。構成は、以下に示す表3に示す通りである。
【0068】
【表3】
ハロゲンランプ定格電力 500W
制御サイクル(第2周期) 1秒
第1周期 6単位
第1期間内のパターン C(1単位通電、5単位非通電、間欠間隔5)
第2期間内のパターン D(6単位非通電)
デューティー 5%
図15は、第3の実験例の構成で温度制御を行ったときの定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一電源ライン上に接続された蛍光灯の光量変動204を示す図である。図15(a)は、第2周期Δt2 での光量変動と第2周期内での通電パターンを示しており、同図(b)は第1周期Δt1 での光量変動と第1周期内での通電パターンを示している。それぞれ縦軸は光量、横軸tは時間である。第2周期Δt2 での光量変動量の最大ΔE22は2.0%であった。これは図6の領域(A)に該当する。また、第1周期Δt1 での光量変動量の最大ΔE21は0.8%であった。この場合は、光量変動周波数は20Hz(商用AC電源周波数50Hzの場合で換算すると約17Hzに相当)であり、図8の領域(A)に該当する。このように大電力量のハロゲンランプヒーターで、間欠間隔5単位の制御方法でもチラツキ感はなく良好であった。
【0081】
なお、チラツキ感を表す照明機器の例として蛍光灯を取り上げたが、もちろんこれに限られるわけでなく、例えば放電灯、白熱灯等の照明機器、あるいはテレビ、プロジェクター等のディスプレイ機器を用いた場合においても同様の効果を有する。
【0082】
また、本発明の温度制御方法は、上述の実施例で説明したようなハロゲンランプをヒーターとした熱ローラー方式の定着装置に限られるものではない。これ以外にも例えば、ヒーターとしては通電によって加熱する抵抗体、キセノンランプなどが好ましく用いられる。また定着装置としては、ベルト定着装置、非接触加熱方式など様々な方式のものにも適用可能である。
【0083】
さらに、定着装置を備えることができる画像形成装置として、本実施例のようなプリンタ装置以外にも、例えば複写機、ファクシミリ等にも適用することができる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の定着装置の温度制御方法によれば以下のような効果を有する。
【0085】
すなわち、請求項1〜5記載の発明によれば、熱容量が比較的小さいか、または電力量が比較的大きな加熱手段を有する定着装置またはこれを備えた画像形成装置において、大容量のメモリを必要としないにもかかわらず、画像形成装置のCPU(中央制御ユニット)に対しての加熱手段の温度制御の負担が少なく、PID等高度な温度制御手段を用いることができる。これにより、電源電圧変動(リップル)の少ない、きめ細かで、高精度の温度制御が可能である。そして、特定の電力供給パターンで電力供給を行うことにより、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一の電源ライン上の他の電気機器、特に照明機器(蛍光灯、白熱灯等)やディスプレイ等に人の目に不快に発生するチラツキを抑制することできる。特に、請求項1記載の発明においては一層精度の高い温度制御ができる。また、請求項2〜3記載の発明においては予測制御という高度な温度制御手法を組み込むことができる。また、請求項4記載の発明においてはチラツキの抑制の効果が大きく、さらに、請求項5記載の発明においてはよりいっそうチラツキを抑えることができる。
【0086】
また、請求項6ないし7記載の発明によれば、優れた温度制御性能を有する定着装置またはこれを備えた画像形成装置を実現することができる。さらに、定着装置のヒーターに対する突入電流を抑制することができるため、より耐久性に優れた定着装置またはこれを備えた画像形成装置を実現することができる。
【0087】
なお、加熱手段への電力供給周期を規定せずに、特定の間欠電力供給パターンで電力供給を行うことにより、定着装置またはこれを備えた画像形成装置と同一の電源ライン上の他の電気機器、特に照明機器(蛍光灯、白熱灯等)やディスプレイ等に人の目に不快に発生するチラツキを完全に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着装置の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の温度制御方法を適用するヒーターの温度変動の様子を示す図。
【図3】本発明の定着装置の温度制御装置の一実施例を示すブロック図。
【図4】本発明の温度制御方法の第1期間、第2期間、第1周期及び第2周期を説明するための図。
【図5】本発明と同一の電源ラインに接続された電気機器の光量変動を説明するための図。
【図6】チラツキ感に対する光量変動周波数と光量変動量の関係を示す図。
【図7】通電の間欠間隔と光量変動量の関係を示すの図。
【図8】チラツキ感に対する間欠間隔(光量変動周波数)と光量変動量の関係を示す詳細図。
【図9】本発明の温度制御方法の間欠通電による電力供給方法の一例を説明する図。
【図10】本発明の実験例1の電力供給方法を示す図。
【図11】本発明の実験例1〜4の温度制御方法のフローチャート。
【図12】(a)は本発明の実験例1〜4の温度制御方法のフローチャート(図11)の続きのフローチャート、(b)は(a)の結果を説明するための図。
【図13】本発明の実験例1による光量変動の図。このうち(a)は第2周期に対応する光量変動を示す図、(b)は第1周期に対応する光量変動を示す図。
【図14】本発明の実験例2による光量変動の図。このうち(a)は第2周期に対応する光量変動を示す図、(b)は第1周期に対応する光量変動を示す図。
【図15】本発明の実験例3による光量変動の図。このうち(a)は第2周期に対応する光量変動を示す図、(b)は第1周期に対応する光量変動を示す図。
【符号の説明】
1 加熱ローラー
2 加圧ローラー
3 ハロゲンランプヒーター
4 温度センサ
5 記録材
6 金属製の軸
7 SSR(ソリッドステートリレー)
8 ゼロスイッチング回路
9 アンプ
10 A/D変換器
11 I/O
12 ROM
13 CPU
101 count0に相当する単位
102 count1に相当する単位
103 count2に相当する単位
104 count3に相当する単位
105 count4に相当する単位
201 光量変動
202 本発明の第1の実験例の光量変動
203 本発明の第2の実験例の光量変動
204 本発明の第3の実験例の光量変動
Claims (5)
- 記録材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出温度に基づいて供給電力量を求め、求めた供給電力量を供給することにより前記加熱手段の温度を制御する温度制御手段とを備えた定着装置の温度制御方法において、
前記温度制御手段における温度制御周期は第1周期とそれより周期の長い第2周期とから構成されており、前記第2周期内は前記加熱手段への電力供給が許可される第1期間と前記加熱手段への電力供給が許可されない第2期間とを合わせて前記供給電力量になるように前記第1期間と前記第2期間が設定され、前記第1期間内では前記第1周期で前記加熱手段へ電力供給され、かつ、前記第1周期において前記加熱手段へ電力供給される電力供給パターンは、前記加熱手段へ供給される交流波の半サイクルを1単位として、少なくとも1単位の通電と、少なくとも1単位の非通電とからなり、かつ、前記第2周期で前記温度検出手段による温度のサプリング検出が行われそれに基づいて前記供給電力量が決められ、前記第1周期は商用AC電源の周波数によって決められ、
前記加熱手段に供給する電力Pを、目標温度をT * 、ゲインをG、オフセット電力をP C として、
P=G・(T * −T C )+P C (1)
に従って供給電力量を決定することを特徴とする定着装置の温度制御方法。ここでT C は検出温度の補正値であり、
T C =T S +k・τ・ΔT S /Δt (2)
で求められる。T S は前記温度検出手段の検出温度、kは補正率、τは前記温度検出手段の時定数、Δtは検出温度T S の所定のサンプリング時間、ΔT S はΔt間で生じるT S の変化量、ΔT S /Δtは前記温度検出手段の検出温度の変化率である。 - 前記電力供給パターンは、1単位の通電と3ないし8単位の非通電とからなることを特徴とする請求項1記載の定着装置の温度制御方法。
- 前記電力供給パターンは、1単位の通電と4ないし6単位の非通電とからなることを特徴とする請求項1記載の定着装置の温度制御方法。
- 請求項1〜3の何れか1項記載の定着装置の温度制御方法を用いることを特徴とする定着装置。
- 請求項4記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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