JP3694974B2 - 自動車用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷風と温風の風量割合をエアミックスドアにより調整して吹出空気温度を制御するエアミックス式の自動車用空調装置のうち、特に、加熱用熱交換器への温水流れを遮断する温水弁を持たないものにおいて、最大冷房能力を保証するための機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、温水(エンジン冷却水)を熱源として空気を加熱するヒータコア(加熱用熱交換器)を備えたエアミックス式の自動車用空調装置では、通常、最大冷房時には、ヒータコアへの温水流れを温水弁により遮断して、最大冷房能力を保証するようにしている。
【0003】
近年、自動車用空調装置のコスト低減のために、温水弁を廃止することが一部のもので実用化されている。この温水弁を廃止すると、最大冷房時にもヒータコアに温水が循環して、ヒータコア周囲の空気が加熱され、自然対流にて加熱空気が冷風中に混入して、最大冷房能力を低下させるという問題が生じる。
そこで、実開昭62−40013号公報では、ヒータコアの空気流路の前後にそれぞれエアミックスドアを配設して、上記した自然対流による加熱空気の冷風中への混入を抑制するものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報のものでは、通常のものに比して、エアミックスドアを1枚追加しているので、その分、コスト低減の効果が低下してしまう。
そこで、本発明は上記点に鑑み、温水流れを遮断する温水弁を持たないエアミックス式の自動車用空調装置において、エアミックスドアの追加なしで、最大冷房能力を保証できるようにすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下の技術的手段を採用する。請求項1〜4記載の発明では、加熱用熱交換器(22)の空気上流側に、この加熱用熱交換器(22)を通過する温風とこの加熱用熱交換器(22)をバイパスする冷風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整するエアミックスドア(24a、24b)を配置するエアミックス式の自動車用空調装置において、
吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)として、フット吹出空気通路(27)を開閉するフットドア(29c)を備え、このフットドア(29c)は一枚の板ドアにて構成されており、
フット吹出空気通路(27)は、加熱用熱交換器(22)を通過する主空気流路の両側に配置され、
吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)によりフェイス吹出空気通路(25)を開放するフェイス吹出モード時には、一枚のフットドア(29c)により両側のフット吹出空気通路(27)を閉成するとともに加熱用熱交換器(22)の空気下流側の温風通路を狭めるようにしたことを特徴としている。
【0006】
本発明による装置では、加熱用熱交換器(22)の温水回路に温水を遮断する温水弁が設けられていないので、最大冷房時にも加熱用熱交換器(22)に温水が常時、循環することになる。従って、加熱用熱交換器(22)内の温水にて加熱された空気が自然対流にて冷風の流れ中に混入しようとする。
しかし、最大冷房能力が設定されるフェイス吹出モード時には、加熱用熱交換器(22)の空気下流側の温風通路をフットドア(29c)により狭くしているので、加熱用熱交換器(22)にて加熱された空気が冷風の流れ中に混入しようとするのを良好に抑制できる。それ故、加熱用熱交換器(22)の温水回路に温水弁を設けなくても、最大冷房能力の低下を抑制し、最大冷房能力の保証を行うことができる。
【0007】
よって、既存の吹出モード切替ドアであるフットドア(29c)を利用して最大冷房能力の保証を行うことができ、従来技術のようにエアミックスドアを追加設置する必要がないので、性能の確保とコスト低減を同時に達成できる。
【0009】
請求項2記載の発明では、冷却用熱交換器(21)は、車室内インストルメントパネル部に略水平に配置され、前記送風機(15)の送風空気が下側から導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出するようになっており、
加熱用熱交換器(22)は、冷却用熱交換器(21)の上方において、略水平に配置され、冷却用熱交換器(21)を通過した送風空気を加熱するようになっており、
吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)は前記加熱用熱交換器(22)よりさらに上方に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、冷却用熱交換器(21)および加熱用熱交換器(22)をともに略水平方向に配置して、上下方向に重ねるレイアウトにしているため、上下方向の熱交換器部スペースを非常に小さくでき、その結果従来のセンタ置きユニットよりも高さ寸法を充分小さくすることができる。
しかも、上記のごとく上下方向の熱交換器部スペースを非常に小さくできるため、加熱用熱交換器(22)の上方に、空気の吹出方向を切り替える吹出モード切替部(23)を配置しても、空調装置全体としての上下方向寸法を小さく抑えることができる。
【0011】
さらに、略水平方向に配置した上記両熱交換器(21、22)の下方から送風空気を導入し、上方側へ送風空気を導出しているから、従来のセンタ置きユニットのように、熱交換器部の前後に送風ダクト部を設ける必要がなく、車両前後方向の寸法をも著しく短縮できる。
以上のことから、本発明装置は、車両への搭載が容易となり、その実用上の効果は大である。
【0012】
請求項3記載の発明では、冷却用熱交換器(21)および加熱用熱交換器(22)を収納するエアコンユニットケース(30)内において、送風空気の送風方向と平行に仕切り手段(20A〜20C)を配置して、エアコンユニットケース(30)内の送風路を第1の送風路(19a)と第2の送風路(19b)とに区分し、
送風機(15)により、内外気切替箱(11)から導入された内気および外気を区分して、外気を第1の送風路(19a)に送風し、内気を第2の送風路(19b)に送風し、 第1の送風路(19a)からの外気をデフロスタ吹出空気通路(28)に送風するとともに、第2の送風路(19b)からの内気をフット吹出空気通路(27)に送風することを特徴としている。
【0013】
従って、冬季の暖房時に、低湿度の温風をデフロスタ側へ吹出すとともに、フット吹出空気通路(27)へは内気の再循環による温度の高い温風を送り、乗員足元部を効果的に暖房できる。
従って、暖房時に、換気負荷低減による暖房能力向上と窓ガラス曇り止め効果の向上の両立を図ることがてきる。
【0014】
請求項4記載の発明では、加熱用熱交換器(22)の空気下流側に、第1の送風路(19a)と第2の送風路(19b)とを連通させる連通口(20E)を備え、
フットドア(29c)によりフット吹出空気通路(27)を閉じるときに、連通口(20E)をフットドア(29c)により開放することを特徴としている。
【0015】
これにより、フットドア(29c)に連通口(20E)の開閉機能を兼務させて構成の簡素化を図るとともに、フット吹出空気通路(27)を閉じる吹出モードでは、第1、第2の両送風路(19a、19b)の送風空気をすべてフェイス吹出空気通路(25)等へ送風できる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1〜図7は一実施形態を示すもので、空調装置の送風機ユニット1は図示しない車室内のインストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット(右ハンドル車では車両幅方向の左側にオフセット)して、助手席前方の部位に配置される。
【0017】
上記送風機ユニット1は、図1に示すように、その上方部に車室内空気と車室外空気とを切替導入する樹脂製の内外気切替箱11を有し、この内外気切替箱11には図3に示すように外気導入口12と第1、第2の内気導入口13a、13bが開口している。内外気切替箱11の内部にはこれら両導入口12、13a、13bを開閉する第1、第2の内外気切替ドア14a、14bが設置されている。ここで、第1の内外気切替ドア14aは円弧状の円周面を持つロータリ式ドアであり、第2の内外気切替ドア14bは、通常の板ドアから形成されている。
【0018】
内外気切替箱11の下方には、図1に示すように、送風機15が配置されており、この送風機15は樹脂製の遠心式多翼ファン(シロッコファン)15a、15b、ファン駆動用モータ16、および樹脂製のスクロールケーシング17から構成されている。
ここで、送風機15のファンは、モータ16側の外径の大きいファン15aと反モータ16側の外径の小さいファン15bとから構成されており、この両ファン15a、15bの回転軸は略水平方向に向くように配置され、このファン15aの回転により内外気切替箱11から第1空気吸入口18aを通して空気が吸入され、また、ファン15bの回転により内外気切替箱11から第2空気吸入口18bを通して空気が吸入されるようにしてある。
【0019】
そして、スクロールケーシング17内は、ファン15aの送風空気が流れる第1送風路19aと、ファン15bの送風空気が流れる第2送風路19bとに仕切られている。20はこの第1送風路19aと第2送風路19bとを仕切るための仕切り板である。
この仕切り板20は図2から理解されるように垂直方向に配置され、第1送風路19aと第2送風路19bは車両前後方向に区画され、そして車両左側から車両右側に向かって平行に延びている。従って、送風空気も各通路19a、19bをスクロールケーシング17の出口部から略水平方向に車室の左側から右側へ向かって平行に送風されるようになっている。
【0020】
なお、送風機ユニット1のケースは、内外気切替箱11部分と、スクロールケーシング17部分とに分割され、さらに、スクロールケーシング17部分は、図1の左右方向に2分割されており、このようなケース分割により、ドア14a、14b、ファン15a、15b等をケース内部へ組み込むようになっている。また、仕切り板20は、樹脂製のスクロールケーシング17の内壁面に一体に成形されている。
【0021】
一方、後述の空調用熱交換器を内蔵するエアコンユニット2は車室内のインストルメントパネルの略中央部に配置されるものであって、このエアコンユニット2において、冷凍サイクルのエバポレータ(冷却用熱交換器)21は図1に示すように略水平状態に設置して、その下側より前記送風機ユニット1からの送風空気が流入するようにしてある。
【0022】
そして、エバポレータ21の空気下流側(車室内上側)に略水平状態にしてヒータコア(加熱用熱交換器)22が設置してあり、このヒータコア22は、エンジン冷却水(温水)を熱源とするもので、エンジン冷却水回路に対してヒータコア22は温水弁を介することなく直接連結されている。ヒータコア22の車室内上方部(空気下流側)に吹出モード切替部23が配置してある。
【0023】
ここで、本例では、空調の温度制御方式として、冷温風の混合割合を調整するエアミックス方式を採用しており、図4に示すように、ヒータコア22の車室内下方部(空気上流側)側に配置したエアミックスドア24a、24bの開度によりヒータコア22を通過する温風とヒータコア22をバイパスする冷風の風量割合を調整して、車室内への吹出空気温度を制御する。また、エアミックスドア24a、24bとして、円弧状の円周面を持つロータリ式ドアを用いている。
【0024】
また、エアコンユニット2においても、その内部の送風路は仕切り板20A、20B、20Cにより、車両前後方向に第1送風路19aと第2送風路19bとに区画され、この両送風路19a、19bをそれぞれ独立に空気が流れる。
前記吹出モード切替部23は車室内への吹出モードを切り替えるためのもので、車室内の乗員頭部に向けて空気を吹き出すセンターフェイス(上方)吹出口(図示せず)に連通するセンターフェイス吹出空気通路25およびサイドフェイス吹出口(図示せず)に連通するサイドフェイス吹出空気通路26と、車室内の乗員足元に向けて空気を吹き出すフット(足元)吹出口27aに連通するフット吹出空気通路27と、窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出口(図示せず)に連通するデフロスタ吹出空気通路28とを有し、これらの複数の吹出空気通路25、27、28をドア手段により切替開閉するものである。
【0025】
本例では、この吹出モード切替用のドア手段として、図4〜図7に示すように、板状のドア29a、29b、29cを使用しているが、円弧状外周面を持つロータリドア、フィルム状ドア等も使用可能であることはもちろんである。
なお、図4〜図7において、ドア29aはフェイス用ドアで、ドア29bはデフロスタ用ドアであり、ドア29cはフット用ドアである。また、サイドフェイス吹出空気通路26は周知のように吹出モード切替部23内の空間に常時、連通しており、サイドフェイス吹出口に備えられた吹出グリルの操作にて、サイドフェイス吹出口からの吹出空気の断続および吹出方向の調整が可能になっている。
【0026】
本例では、板状の吹出モードドア29a、29b、29cの操作(回転)位置の選択により前記複数の吹出空気通路25、27、28を切替開閉して、周知のフェイス吹出モード、バイレベル吹出モード、フット吹出モード、フット・デフロスタ併用吹出モード、デフロスタ吹出モード等の複数の吹出モードを選択できるようにしてある。板状の吹出モードドア29a、29b、29cは、周知のリンク・レバー機構を介して、サーボモータのような電気的アクチュエータ、またはケーブルを用いた手動操作機構により連動作動する。
【0027】
なお、エアコンユニット2のケース30は、上下方向に4分割された樹脂製ケースから構成されている。すなわち、詳細な図示を省略するが、ケース30は、エバポレータ21を収納する下方側ケースと、ヒータコア22を収納する中間部ケースと、吹出モード切替部23を構成する、前後2つの上方部ケースとに4分割して、その内部に熱交換器、ドア等の機器を組み込むようになっている。そして、仕切り板20A、20B、20Cは、これらの樹脂製ケースの内壁面に一体成形されている。
【0028】
送風機ユニット1およびエアコンユニット2における分割ケースは、周知の弾力性を持った金属クリップ、あるいはねじ等を使用して、脱着可能に結合されている。
ところで、エバポレータ21は、その冷却作用により発生する凝縮水の排出性を良好にするため、水平面より若干傾斜して配置してある。すなわち、図1に示すように、エバポレータ21の下側に前記送風機15により送風される送風空気の送風前方側(図1の右方向)に向かって、エバポレータ21が下方へ傾斜するように配置されている。
【0029】
また、エバポレータ21はアルミニュウム等の熱伝導性、耐食性に優れた金属の薄板を図4の左右方向に積層してチューブ(図示せず)を構成する周知の積層型のものである。エバポレータ21のチューブは、断面形状が偏平な偏平チューブとして形成されており、そして、チューブは、その偏平な面である管壁面が空気の流れに対して略平行な向きとなるように多数積層されている。
【0030】
エバポレータ21の風上側、風下側に配される仕切板20A、20Bを、エバポレータ21の中央部位の1つのチューブの風上側、風下側の端部に沿うように配置して、仕切板20A、20Bと、この中央部位のチューブとを同一平面上に配置している。従って、仕切板20A、20Bの板面とエバポレータ21のチューブの管壁面とは一直線上に延びている。
【0031】
このようにして、エバポレータ21の風上側、風下側における通風方向と、エバポレータ21内の空気通路における通風方向とは一致している。
また、図4に示すように、ヒータコア22の風下側に配置される仕切板20Cはその上方部で斜め右上方側へ屈曲した形状となっており、この仕切板20Cの斜め屈曲面20Dには、第1通風路19aと第2通風路19bとを連通させる連通口20Eが設けてある。この連通口20Eはフット用ドア29cにより開閉される。
【0032】
そして、図4に示すように、センターフェイス吹出空気通路25、およびデフロスタ吹出空気通路28は第1通風路19a側に配置し、一方、フット吹出空気通路27は第2通風路19b側に配置してある。また、サイドフェイス吹出空気通路26は図4に示してないが、第1通風路19a側に配置してある。
図4、5は、フェイス吹出モードおよびデフロスタ吹出モード、換言すれば、フット吹出空気通路27を閉じる吹出モードにおけるドア操作位置を示す。図4、5のドア操作位置では、フット用ドア29cが実線位置に操作されることにより、フット吹出空気通路27の入口部27bが閉塞(図5参照)される。このフット吹出空気通路27の閉塞状態では、図4、5に示すように、フット用ドア29cがヒータコア22の風下側に僅少距離L(例えば、15mm程度)で近接した位置に操作されるようになっている。これにより、フット用ドア29cにてヒータコア22の風下側の温風通路を狭めるようにしてある。
【0033】
また、同時に、フット用ドア29cを実線位置に操作することにより、連通口20Eが開放されるため、第2送風路19bの空気aは連通口20Eを通ってフェイス吹出空気通路25、26およびデフロスタ吹出空気通路28側へ流れることが可能になる。
また、フット吹出空気通路27は、図5に示すように、ヒータコア22を通過する主空気流路の両側(車両左右方向の両側)に配置され、この両側の2個のフット吹出空気通路27を一枚の板ドアからなるフット用ドア29cにて開閉するようにしてある。
【0034】
一方、図6、7は、バイレベル吹出モード、フット吹出モード、フット・デフロスタ併用吹出モード、換言すれば、フット吹出空気通路27を開放する吹出モードにおけるドア操作位置を示す。図6、7のドア操作位置では、フット用ドア29cが実線位置に操作されることにより、フット吹出空気通路27の入口部27bが開放(図7参照)され、同時に連通口20Eが閉塞される。従って、第2送風路19bの空気cはフット吹出空気通路27に流入する。
【0035】
なお、バイレベルモードでは、フット用ドア29cを、連通口20Eの全閉位置でなく、一部、開く位置に操作してもよい。
また、第1送風路19a側において、ヒータコア22の風下側には僅少距離L(例えば、15mm程度)で近接した位置に壁部材31を配設し、この壁部材31によりヒータコア22の風下側を覆って、ヒータコア22の風下側の温風通路を狭めるようにしてある。この壁部材31はエアコンユニット2の樹脂製ケース30に一体成形されている。
【0036】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。
図2において内外気切替箱11から流入した空気は送風機ファン15a、15bによってスクロールケーシング17内を略水平方向に流れ、エバポレータ21の下部へ流入する。そして、送風空気はエバポレータ21で除湿・冷却された後、さらに上方へ流れ、ヒータコア22へ導入され、ここで加熱される。
【0037】
本例の場合には、空調温度制御手段として、エアミックスドア24a、24bを用いており、このエアミックスドア24a、24bの開度により、ヒータコア22を通過する空気とヒータコア22をバイパスする空気の風量割合を調節することによって所望の吹出空気温度を作りだす。
図4では、エアミックスドア24a、24bが最大冷房位置にあり、エバポレータ21で冷却された冷風の全量がヒータコア22をバイパスする。また、図6では、エアミックスドア24a、24bが最大暖房位置の少し手前側の位置に操作されて、送風空気の大半がヒータコア22を通過して温風となり、送風空気の一部がヒータコア22をバイパスする。
【0038】
そして、ヒータコア22で所望温度まで再加熱された空調空気は上ケース部の吹出モード切替部23の各ドア29a〜29cによって所定の吹出口へ分配される。
すなわち、フェイス吹出モードでは、図4においてフェイス用ドア29a、デフロスタ用ドア29b、およびフット用ドア29cがそれぞれ実線位置に操作され、センターフェイス吹出空気通路25が開放され、フット吹出空気通路27およびデフロスタ吹出空気通路28が閉塞され、かつ連通口20Eが開放される。
【0039】
従って、第1、第2送風路19a、19bを通過し、温度調整された空気はすべて、センターフェイス吹出空気通路25と、吹出モード切替部23の空間に常時連通しているサイドフェイス吹出空気通路26とを経由して、図示しないセンターフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口から車室内の乗員頭部に向けて吹き出される。
【0040】
ここで、最大冷房時には、エアミックスドア24a、24bが図4に示すようにヒータコア22の風上側を全閉する位置に操作されて、エバポレータ21で冷却された冷風の全量が矢印a、bのごとくヒータコア22をバイパスする。ここで、ヒータコア22の温水回路に温水を遮断する温水弁が設けられていないので、最大冷房時にもヒータコア22に温水が常時、循環することになる。従って、ヒータコア22内の温水にて加熱された空気が図4の破線矢印Yのごとく自然対流にて冷風の流れa、b中に混入しようとする。
【0041】
しかし、第1送風路19a側では、ヒータコア22の風下側が壁部材31により僅少距離Lにて覆われ、ヒータコア22の風下側の温風通路が狭くなっている。一方、第2送風路19b側では、フット用ドア29cが実線位置に操作されているので、ヒータコア22の風下側がフット用ドア29cにより僅少距離Lにて覆われ、ヒータコア22の風下側の温風通路がやはり狭くなっている。
【0042】
このため、ヒータコア22内の温水にて加熱された空気が図4の破線矢印Yのごとく冷風の流れa、b中に混入しようとするのを良好に抑制できる。それ故、ヒータコア22の温水回路に温水弁を設けなくても、最大冷房能力の低下を抑制し、最大冷房能力の保証を行うことができる。
また、デフロスタ吹出モードでは、図4において、フェイス用ドア29aとデフロスタ用ドア29bがそれぞれ2点鎖線位置に操作され、フット用ドア29cが実線位置に操作され、デフロスタ吹出空気通路28が開放されるとともに、連通口20Eが開放される。
【0043】
従って、第1、第2送風路19a、19bを通過し、温度調整された空気はすべて、デフロスタ吹出空気通路28を通り、デフロスタ吹出口(図示せず)から窓ガラスに向けて空気が吹き出され、窓ガラスの曇り止めを行う。
次に、バイレベル吹出モードにおいては、図6において、フェイス用ドア29a、デフロスタ用ドア29b、およびフット用ドア29cがそれぞれ実線位置に操作され、センターフェイス吹出空気通路25およびフット吹出空気通路27が開放され、デフロスタ吹出空気通路28が閉塞され、かつ連通口20Eが閉塞される。
【0044】
従って、第1送風路19aを通過し、温度調整された空気はセンターフェイス吹出空気通路25とサイドフェイス吹出空気通路26とを経由して、図示しないセンターフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口から車室内の乗員頭部に向けて吹き出される。また、第2送風路19bを通過し、温度調整された空気はフット吹出空気通路27を経由してフット吹出口27aから乗員足元に吹き出す。
【0045】
次に、フット吹出モードでは、図6において、フェイス用ドア29aが2点鎖線位置に操作されてセンターフェイス吹出空気通路25を閉塞する。また、デフロスタ用ドア29bが実線位置より僅少角度だけ開いた位置に操作されて、デフロスタ吹出空気通路28を僅少量開く。また、フット用ドア29cは実線位置に操作されて、フット吹出空気通路27を開放するとともに、連通口20Eを閉塞する。図6、7において、矢印cはヒータコア22を通過する温風の流れを示す。
【0046】
従って、第1送風路19aを通過し、温度調整された空気はデフロスタ吹出空気通路28とサイドフェイス吹出空気通路26とを経由して、図示しないデフロスタ吹出口およびサイドフェイス吹出口から窓ガラスに向けて吹き出される。また、第2送風路19bを通過し、温度調整された空気はフット吹出空気通路27を経由してフット吹出口27aから乗員足元に吹き出す。
【0047】
次に、フット・デフロスタ併用吹出モードでは、上記フット吹出モード時よりも、デフロスタ用ドア29bが2点鎖線位置の方向に操作されて、デフロスタ吹出空気通路28の開度を増大させ、デフロスタ吹出空気量を増大させる。他の点はフット吹出モードと同じである。
さらに、本実施形態おいては、冬期の暖房を必要とする季節において、外気と内気とを仕切ったまま、送風、熱交換して、デフロスタ側からは低湿度外気を加熱した温風を吹き出させ、一方、足元のフット吹出口27aからは内気を加熱した温風を吹き出させるという、内外気2層流機能を発揮するという特徴を持つ。
【0048】
以下、この内外気2層流ユニットとしての作用効果を説明すると、図3において、第1の内外気切替ドア14aを図示斜線位置に操作すると、このドア14aは第1内気導入口13aを閉塞し、外気導入口12を開放する。同様に、第2の内外気切替ドア14bを図示斜線位置に操作すると、このドア14bは第2内気導入口13bを開放する。
【0049】
従って、送風機15のファン15a、15bが回転すると、外気導入口12からの外気は第1空気吸入口18aを通して、第1送風路19aに吸入され、また、第2内気導入口13bからの内気は第2空気吸入口18bを通して、第2送風路19bに吸入される。つまり、第1送風路19aと第2送風路19bに、それぞれ外気と内気を区分して送風できる。
【0050】
さらに、エアコンユニット2内においても、仕切り板20A〜20Cにより、送風路が第1送風路19aと第2送風路19bに仕切られており、かつヒータコア22の風下側における、第1、第2送風路19a、19bの連通口20Eが、フットモード時およびフット・デフ併用モード時にはフット用ドア29cにより閉塞されているので、この両モード時には、第1送風路19aに流入した外気がエバポレータ21およびヒータコア22を通過した後に、デフロスタ吹出空気通路28およびサイドフェイス吹出空気通路26を通って、車両窓ガラスおよび乗員上半身近傍に向かって吹き出される。ここで、低湿度の外気をヒータコア22で加熱して温風とすることにより、車両窓ガラスの曇り止め効果を高めることができる。
【0051】
一方、第2送風路19bには内気が送風され、この内気をヒータコア22で加熱して温風とし、フット吹出空気通路27を経て、フット吹出口27aから乗員足元部へ吹き出している。従って、車室内の足元部暖房に際しては、外気導入による換気負荷が発生せず、従って、ヒータコア22に流入するエンジン冷却水温度が十分、上昇していない条件下(例えば、ディーゼルエンジン車のアイドル時等)においても、暖房効果を高めることができる。
【0052】
従って、車両窓ガラスの曇り止め効果の向上と、暖房効果の向上の両立を実現できる。
なお、上記説明は外気と内気を同時に導入する場合についてのみ述べたが、2つの内外気切替ドア14a、14bの操作位置を図3の実線位置と2点鎖線位置の間で選択することより、第1、第2送風路19a、19bの両方に外気を導入する全外気モード、および第1、第2送風路19a、19bの両方に内気を導入する全内気モードを選択できる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、エアミックスドア24a、24bとして、円弧状の円周面を持つロータリ式ドアを用いているが、これに限らず、通常の平板状の板ドア等を用いることはもちろん可能である。
【0053】
また、上記した実施形態では、温水弁を持たない自動車用空調装置において、吹出モード切替ドアのうち、特に、フット用ドア29cを用いて、ヒータコア22の風下側の温風通路を狭くして、最大冷房能力の保証を行うようにしているが、吹出空気通路および吹出モード切替ドアの配置を工夫することにより、他の吹出モード切替ドア、すなわち、フェイス用ドア29aあるいはデフロスタ用ドア29bを用いて最大冷房能力の保証を行うことができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、エアコンユニット2内に内気と外気を独立に送風して、暖房時における窓ガラスの曇り止め効果の向上と、暖房効果の向上の両立を図るようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、車室の運転席側および助手席側への吹出空気温度を独立に制御する、いわゆる左右独立温度制御方式の自動車用空調装置に適用することもできる。この場合は、内外気を2層に分離させる必要がないので、送風機ユニット1部における仕切り板20は不要となる。同様に、ファンをファン15a、15bに2分割する必要もない。
【0055】
また、バイレベルモードのように、上方側の吹出口(フェイス側吹出口)と下方側の吹出口(フット側吹出口)の両方から吹出空気を同時に吹き出すモードにおいて、上方側の吹出口と下方側の吹出口からの吹出空気温度を独立に制御する、いわゆる上下独立温度制御機能を持った自動車用空調装置に対して、本発明を適用してもよい。
【0056】
また、車室の前席側と後席側への吹出空気温度を独立に制御する、いわゆる前後独立温度制御方式の自動車用空調装置に本発明を適用してもよい。
このような左右、上下、または前後独立温度制御方式のものでは、仕切り板20A〜20Cにより、仕切られた第1、第2送風路19a、19bの空気温度を、エミックスドア24a、24bの独立制御により制御して、所定の吹出口を選定して車室内へ吹き出すようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1、2の装置における送風機ユニット部の断面図である。
【図4】図1、2の装置におけるエアコンユニット部の断面図である。
【図5】図4のX矢視による断面図である。
【図6】図4と同様の断面図で、図4と吹出モードが異なる状態を示す。
【図7】図6のX矢視による断面図である。
【符号の説明】
11…内外気切替箱、12…外気導入口、
13a、13b…第1、第2の内気導入口、
14a、14b…第1、第2の内外気切替ドア、15…送風機、
15a、15b…ファン、19a、19b…第1、第2の送風路、
20、20A、20B、20C…仕切り板、20E…連通口、
21…エバポレータ、22…ヒータコア、23…吹出モード切替部、
25…センタフェイス吹出空気通路、27…フット吹出空気通路、
28…デフロスタ吹出空気通路、
29a、29b、29c…吹出モード切替ドア。
Claims (4)
- 空調空気を送風する送風機(15)と、
この送風機(15)の送風空気を冷却する冷却用熱交換器(21)と、
この冷却用熱交換器(21)の空気下流側に配置され、前記送風空気を加熱する加熱用熱交換器(22)と、
この加熱用熱交換器(22)の空気上流側に配置され、この加熱用熱交換器(22)を通過する温風とこの加熱用熱交換器(22)をバイパスする冷風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整するエアミックスドア(24a、24b)と、
前記加熱用熱交換器(22)の空気下流側に配置され、前記エアミックスドア(24a、24b)により温度調整された空気を乗員頭部側へ導くフェイス吹出空気通路(25)と、
前記温度調整された空気を乗員足元部側へ導くフット吹出空気通路(27)と、
前記温度調整された空気を窓ガラス側へ導くデフロスタ吹出空気通路(28)と、
前記加熱用熱交換器(22)の空気下流側に配置され、前記複数の吹出空気通路(25、27、28)を開閉する吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)とを備え、
前記吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)として、前記フット吹出空気通路(27)を開閉するフットドア(29c)を備え、このフットドア(29c)は一枚の板ドアにて構成されており、
前記フット吹出空気通路(27)は、前記加熱用熱交換器(22)を通過する主空気流路の両側に配置され、
前記吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)により前記フェイス吹出空気通路(25)を開放するフェイス吹出モード時には、前記一枚のフットドア(29c)により前記両側のフット吹出空気通路(27)を閉成するとともに前記加熱用熱交換器(22)の空気下流側の温風通路を狭めるようにしたことを特徴とする自動車用空調装置。 - 前記冷却用熱交換器(21)は、車室内インストルメントパネル部に略水平に配置され、
前記送風機(15)の送風空気が下側から導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出するようになっており、
前記加熱用熱交換器(22)は、前記冷却用熱交換器(21)の上方において、略水平に配置され、前記冷却用熱交換器(21)を通過した送風空気を加熱するようになっており、
前記吹出モード切替ドア(29a、29b、29c)は前記加熱用熱交換器(22)よりさらに上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用空調装置。 - 前記冷却用熱交換器(21)および前記加熱用熱交換器(22)を収納するエアコンユニットケース(30)と、
このエアコンユニットケース(30)内において、前記送風空気の送風方向と平行に配置され、前記エアコンユニットケース(30)内の送風路を第1の送風路(19a)と第2の送風路(19b)とに区分する仕切り手段(20A〜20C)と、
内気および外気を切替導入するとともに、内気および外気を同時に導入可能に構成された内外気切替箱(11)とを備え、
前記送風機(15)は、前記内外気切替箱(11)から導入された内気および外気を区分して、外気を前記第1の送風路(19a)に送風し、内気を前記第2の送風路(19b)に送風し、
前記第1の送風路(19a)からの外気を前記デフロスタ吹出空気通路(28)に送風するとともに、前記第2の送風路(19b)からの内気を前記フット吹出空気通路(27)に送風することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用空調装置。 - 前記加熱用熱交換器(22)の空気下流側に、前記第1の送風路(19a)と前記第2の送風路(19b)とを連通させる連通口(20E)を備え、
前記フットドア(29c)により前記フット吹出空気通路(27)を閉じるときに、前記連通口(20E)を前記フットドア(29c)により開放することを特徴とする請求項3に記載の自動車用空調装置。
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