JP3694849B2 - 高圧噴射攪拌工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤改良工法に係り、より詳しくは地盤中にグラウト(地盤改良剤)を高圧噴射させて改良柱を造成する高圧噴射攪拌工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高圧噴射攪拌工法は、注入ロッドを地盤中に回転下降または上昇させながら、その先端部の周面に設けた噴射ノズルから高圧のグラウトを単独で、または圧縮空気または超高圧水と一緒に噴射させ、高圧噴流体のもつエネルギーを利用して地盤を切削しかつ攪拌混合する工法で、大径の改良柱を効率よく造成できるところから、近年、その利用が拡大しつつある(例えば、特公昭56−44206号公報、特公昭58−27364号公報等)。また、この高圧噴射攪拌工法としては、前記注入ロッドを芯材管を伴って地盤中に回転下降させて改良柱を造成すると共に、この改良柱内に前記芯材管を残して、改良柱を補強するようにした芯材補強の工法もある(例えば、特開平3−208986号公報)。
【0003】
ところで、対象地盤によっては、地表から計画改良域までの途中に硬質層が存在する場合があり、この場合、上記注入ロッドを単に回転下降させるだけでは、計画改良域まで注入ロッドを円滑に貫入させることはできない。そこで従来、このような硬質層が存在する地盤を対象にする場合は、例えば、特開平10−88564号公報に記載されるように、注入ロッドの先端に削孔ビットを設けて、注入ロッドの回転下降に応じて該削孔ビットにより地盤を機械的に削孔するか(その公報第 4頁第 6欄第29〜38行)、あるいは特開平9−71929号公報に記載のように、注入ロッドによる地盤改良に先行して、専用の削孔機により事前に削孔を行うか(その公報第 4頁第 5欄第24〜37行)していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように注入ロッドの先端に設けた削孔ビットにより削孔する対策によれば、単純な回転方式となっているため、例えば転石や岩盤等を含む硬質層を含む場合にその削孔が困難となり、特に大深度域(例えば、地表より50m以上)の地盤改良を行うような場合には、その削孔に長時間を要するばかりか、削孔ビットの摩耗も激しくなってその交換を頻繁に行わなければならず、施工能率の面で不満が残るという問題があった。また、専用の削孔機により事前に削孔を行う対策によれば、別途、削孔工程を必要とするため、施工期間の延長が避けられず、施工コストも嵩むという問題があった。
【0005】
ところで、削孔を高能率に行う方法としては、従来よりダウンザホールハンマーの利用が知られている。このダウンザホールハンマーは、一般には空気圧によりハンマー部を作動させて先端の削孔ビットに衝撃力を加えるようになっているが、最近では、前記した空気圧に代えて水圧を用いることにより、さらに一段と削孔能力を高めたダウンザホールハンマーも開発され、既にワッサラなる商品名で市販されている(サンドビック社)。
【0006】
本発明者等は、この水圧駆動のダウンザホールハンマーに着目し、これを上記した注入ロッドの先端に設けるようにすれば、その駆動に必要な水圧も簡単に確保できることから、上記した硬質地盤に対しても効率良く削孔を行うことができ、高深度域の地盤改良にも有効に対処できるようになる、と確信するに至った。
【0007】
本発明は、上記した考察に基いてなされたもので、その目的とするところは、水圧駆動のダウンザホールハンマーを有効利用することにより削孔能率を高め、もって高深度域の地盤改良にも効果的に対処できる高圧噴射攪拌工法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明は、内部に第1および第2の流路を有するロッド本体の先端に、周面に二重ノズルを設けた注入ヘッドと、設定圧を超える流体圧が作用した時に閉弁する差圧弁を内蔵するバルブボデーと、水圧によりハンマー部を作動させて先端の削孔ビットに衝撃荷重を加えるダウンザホールハンマーとを連設して成る注入ロッドを用意し、始めに前記第1の流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域上限に到達したら、前記第1の流路に供給する低圧水を前記設定圧より十分高い超高圧水に切替えて前記差圧弁を閉弁させると同時に、前記第2の流路に圧縮空気を供給して、前記二重ノズルから水と空気との混合流体を高圧噴射させて地盤を切削攪拌し、注入ヘッドが計画改良域下限に到達したら、前記第1の流路に供給する超高圧水を高圧のグラウトに切替えると共に、前記第2の流路に供給する空気を調整して、前記二重ノズルからグラウトと空気との混合流体またはグラウトのみを高圧噴射させながら、注入ロッドを回転上昇させて計画改良域に改良柱を造成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記水圧駆動のダウンザホールハンマーの作動圧は、通常10〜18 MPa(約 100〜180kg/cm2 )の範囲となっているので、本発明では、始めに第1の流路に供給する低圧水もこの圧力範囲とし、したがって上記設定圧としてはこの上限18MPa を超える値、例えば20 MPa(200kg/cm2 )程度に設定する。また、上記超高圧水としては35〜45 MPa(約 350〜450kg/cm2 )の圧力を有するものとするのが望ましい。
【0010】
この第1の発明においては、バルブボデー内の差圧弁が閉弁する設定圧を水圧駆動のダウンザホールハンマーの作動圧より高めに設定しておくことで、始めに第1の流路に前記設定圧以下の低圧水を供給すると、この低圧水は差圧弁を通過してダウンザホールハンマーに供給され、該ダウンザホールハンマーが作動して高能率に削孔が行われる。そして、注入ヘッドが計画改良域上限まで到達した段階で、この低圧水を前記設定圧より十分高い超高圧水に切替えると、前記差圧弁が閉弁して水と圧縮空気との混合流体が二重ノズルから噴射され、地盤が高能率に切削攪拌され、以降、前記超高圧水に代えてグラウトを噴射させることで、該グラウトは効率良く地盤内に注入される。
【0011】
また、第2の発明は、上記第1の発明から超高圧水と圧縮空気との噴射による地盤の切削攪拌工程を省略したもので、この場合は、上記注入ロッドのロッド本体に設ける流路は1つでも良く、また、その注入ヘッドに設ける噴射ノズルは単一ノズルでも良い。そして、本第2の発明では、始めに、前記流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域上限に到達したら、前記流路に供給する低圧水を前記設定圧より高圧のグラウトに切替えて前記差圧弁を閉弁させ、前記噴射ノズルからグラウトを高圧噴射させて計画改良域に改良柱を造成するようにしており、この場合は、注入ロッドの下降行程のみで改良柱を造成でき、施工能率は向上する。
【0012】
さらに、第3の発明は、芯材補強の高圧噴射攪拌工法に適用したもので、この場合も、上記第2の発明で用いたものと同じ注入ロッドを用意し、この注入ロッドを逆止弁付きの芯材管に挿入して、始めに、前記流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを前記芯材管より先行して地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域の上限に到達したら、前記流路に供給する低圧水を前記設定圧より高圧のグラウトに切替えて前記差圧弁を閉弁させ、前記噴射ノズルからグラウトを高圧噴射させて計画改良域に改良柱を造成し、しかる後、前記芯材管から注入ロッドを引抜き、代わりに注入機を芯材管内に挿入して、芯材管に設けた逆止弁を開いて該芯材管の周りにグラウトを2次注入するようにし、これにより、芯材補強の強固な改良柱が造成される。
【0013】
上記第2および第3の発明の実施に際しては、噴射ノズルからグラウトを高圧噴射させる際、圧縮空気を一緒に噴射させるようにしても良く、この場合は、圧縮空気との併合により地盤へのグラウトの注入距離が延び、より大径の改良柱を造成できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
図1乃至図5は、本発明の第1の実施の形態を示したものである。本第1の実施の形態の実施に際しては、図2乃至図5に示すように、外管1および内管2からなる二重管構造のロッド本体3の先端に、周面に二重ノズル4を備えた注入ヘッド5と、差圧弁6を内蔵するバルブボデー7と、先端に削孔ビット8を設けた水圧駆動のダウンザホールハンマー9とを連設して成る注入ロッド10を用意し、この注入ロッド10を、図示を略す施工機械の回転および昇降ユニットに支持させると共に、その上端部に、図示を略すスイベルを用いて施工プラント内の高圧ポンプと空気圧縮機とを配管接続する。ロッド本体3は、その内管2内の第1の流路aが高圧の水またはグラウトの供給路として、その外管1と内管2との間の環状の第2の流路bが圧縮空気の供給路としてそれぞれ用いられるようになっており、したがってここでは、前記施工プラント内の高圧ポンプが第1の流路aに、空気圧縮機が第2の流路bにそれぞれ接続されることになる。なお、前記施工プラント内の高圧ポンプは、10〜18MPa 程度の低圧水から35〜45MPa 程度の超高圧水までを得る機能に加え、35〜45MPa 程度の高圧グラウトを得る機能を有しており、ロッド本体3の第1の流路aには、これら低圧水、超高圧水および高圧グラウトの何れかが選択的に供給されるようになる。
【0016】
ここで、二重ノズル4を備えた注入ヘッド5は、図3に良く示されるように、外筒11と内筒12とを備えた二重構造となっており、その内筒12内の通路cは、上記ロッド本体3内の第1の流路aを二重ノズル4の心部側の噴射孔に連絡する連絡路として、その外筒11と内筒12との間の環状通路dはロッド本体3内の第2の流路bを二重ノズル4の外側の噴射孔に連絡する連絡路としてそれぞれ供されるようになっている。
【0017】
また、差圧弁6を内蔵するバルブボデー7は、前記注入ヘッド5の外筒11の下端部に螺合連結された本体13を備えている。本体13内には前記注入ヘッド5の内筒12内の通路cに連通する段付き孔14が形成されており、前記差圧弁6は、この本体13内の上部側に前記段付き孔14を閉鎖するように配置されている。差圧弁6は、常時は開弁状態を維持し、ロッド本体3内の第1の流路aに供給される流体(水またはグラウト)の圧力が設定圧(一例として、20MPa )を超えた時に閉弁する機構となっている。したがって、ロッド本体3内の第1の流路aにこの設定圧より低い流体(低圧水)が供給されている場合は、前記差圧弁6は開弁状態を維持し、その低圧水は、本体13内の段付き孔14を通じてダウンザホールハンマ9へ送られ、一方、第1の流路aに前記設定圧を超える超高圧水または高圧グラウトが供給されると、差圧弁6は閉弁して、前記した超高圧水または高圧グラウトは二重ノズル4側へ送られるようになる。
【0018】
一方、ダウンザホールハンマー9は、上記バルブボデー7の本体13に螺合連結された連結部材15と、連結部材15に螺合連結され、前記削孔ビット8を下端部に有するシリンダ16と、シリンダ16内に配設されたハンマー部17とから概略構成されている。より詳しくは、連結部材15は、その上端部に設けた円錐台形状のねじ突起15aをバルブボデー7の本体13に設けたテーパ形状のねじ穴13aに螺合させることにより該本体13に連結されている。また、連結部材15とシリンダ16とは、連結部材15の下端部に設けたおねじ部15bにシリンダ16の上端部に設けためねじ部16aに螺合させることにより連結されている。連結部材15には軸孔18が形成されており、上記差圧弁6を通過した低圧水は、この軸孔18を通じて前記シリンダ16内のハンマー部17へ供給される。ハンマー部17は、前記低水圧を蓄積、解放することによりピストン(図示略)を上下運動させる機能を有しており、そのピストンが削孔ビット8の軸部20を叩くことで、該削孔ビット8には衝撃力が加えられるようになっている。なお、このダウンザホールハンマー9の連結部材15およびシリンダ16と、上記バルブボデー7の本体13とロッド本体3の外筒1とは、ほぼ同じ外径を有しており、したがって、注入ロッド10は、その全長にわたってほぼ同じ太さを有するものとなっている。
【0019】
削孔ビット8は、図4および5に良く示されるように、上記シリンダ16に嵌合固定されたガイド管21と、このガイド管21内にわずか軸方向に移動可能に嵌合されたリング状のアウタビット22と、このアウタビット22内に相互に歯部23、24を噛み合せて結合されたインナビット25とから成っており、そのインナビット25の後端から上記ハンマー部17の衝撃力を受ける軸部20が延ばされている。アウタビット22は、多数のチップ26を設けたその先端部が、ガイド管21の外径とほぼ同径の大径部22aとされており、この大径部22aはガイド管21からはみ出して配置されている。また、インナビット25は、多数のチップ26を設けたその先端部がアウタビット22から下方へわずか突出する状態に位置決めされている。一方、アウタビット22の内面とインナビット25の外面には、それぞれの周方向に3等配して(120度間隔で)、各歯部23、24を切欠く形態の3つの縦溝27、28が形成されており(図5)、インナビット25は、その縦溝28の間に残された歯部24をアウタビット22の縦溝27に整合させることにより、アウタビット22からの離脱が許容されるようになっている。
【0020】
なお、このようなダウンザホールハンマー9は、サンドビック社から“ワッサラ”の商品名で市販されており、ここでは、その“ワッサラ”をそのまま用いるようにしている。
【0021】
以下、上記構造の注入ロッド10を用いて行う施工手順を図1および図2に基いて説明する。
施工に際しては、前記したように注入ロッド10を図示を略す施工機械の回転および昇降ユニットに支持させると共に、その上端部に施工プラント内の高圧ポンプと空気圧縮機とを接続する。そして、この準備完了後、高圧ポンプ11の設定圧を調整して、ロッド本体3内の第1の流路aに10〜18MPa の低圧水を供給し、図4▲1▼に示すように、注入ロッド10を地盤30中に回転下降させる。この時、前記低圧水の圧力がバルブボデー7内の差圧弁6の設定圧(20MPa 程度)より小さくなっているので、差圧弁6は開弁状態を維持し、したがって該低圧水の大部分は、注入ヘッド5からバルブボデー7を経てダウンザホールハンマー9に圧送される。これにより、ダウンザホールハンマー9内のハンマー部17が作動し、該ハンマー部17から削孔ビット8のロッド20に衝撃力が加えられ、削孔ビット8は、前記衝撃力に応じた衝撃を地盤30に作用させながら、注入ロッド10の回転下降に従って該地盤30を高能率に削孔する。
【0022】
ここで、削孔ビット8を構成するアウタビット22は注入ロッド10よりも大径となっているので、上記削孔により形成された孔31は、注入ロッド10を円滑に貫入させるに足る十分な口径を有するものとなる。また、本実施の形態では、ロッド本体3内の第1の流路aに供給された低圧水の一部が二重ノズル4へ圧送されて、そこから注入ロッド10の周りにかなりの圧力で噴射されるので、前記孔31は削孔ビット8による削孔径よりもさらに拡大するものとなる。また、ダウンザホールハンマー9のハンマー部17で消費された低圧水は、アウタビット22とインナビット25の縦溝27、28を通じて削孔ビット8の前方へ放出されるので、この放出水によって削孔ビット8が強制冷却され、その摩耗も低減される。
【0023】
上記した削孔による孔31の形成が進み、図1▲2▼に示すように注入ヘッド5が計画改良域の上限Aまで到達したら、高圧ポンプ11の設定圧を調整して、前記第1の流路aに供給する低圧水を、35〜45MPa 程度の超高圧水に切替え、これと同時に空気圧縮機からロッド本体3内の第2の流路bに圧縮空気を供給する。第1の流路aへの超高圧水の供給により、バルブボデー7の差圧弁6が閉弁し、注入ヘッド5の二重ノズル4からは空気を伴った超高圧水(混合流体)が放射方向へ噴射され、噴射エネルギーの大きい混合流体により地盤30内が強力に切削攪拌(プレカッティング)される。この結果、地盤30内には大径の切削攪拌層32が形成され、この切削攪拌層32は、注入ロッド5の回転下降に応じて次第に下方へ拡大する。なお、この時発生した切削スライムの一部は、前記した削孔の孔31を通じて地上のスライムピット33(図2)へ排出され、さらに図示を略す排泥手段により排泥池へと送泥される。
【0024】
そして、上記した切削攪拌による切削攪拌層32の形成が、図1▲3▼に示すように、計画改良域の下限Bまで到達したら、施工プラント内の高圧ポンプをグラウト源に切替えて、ロッド本体3内の第1の流路aに35〜45MPa 程度の高圧のグラウトを供給し、ロッド本体3内の第2の流路bへの圧縮空気の供給を継続しながら、同図▲4▼に示すように注入ロッド10を回転上昇させる。これにより、注入ヘッド5の二重ノズル4からは空気を伴った高圧グラウト(混合流体)が放射方向へ噴射され、グラウトが切削攪拌層32内に注入されて、グラウト注入層34が形成される。この時、グラウト注入層34上の切削攪拌層32内の余剰スライムは、グラウトの圧力とエアリフト効果により孔31を通じてスライムピット33へ排出されるが、この段階では水の噴射は停止されているので、グラウトの誘導排出は著しく抑制され、余剰スライム中のグラウト量は最小限に抑えられる。
【0025】
上記した空気を伴った高圧グラウトの噴射は、注入ドロッド10の回転上昇に応じて次第に上方へ拡大し、速硬性のグラウトを使用した場合は、図1▲4▼に示すように、注入ヘッド5が計画改良域上限Aまで達する前段階からグラウト注入層34が部分的に固化し、硬質の改良柱35の成長が始まる。このようにして、計画改良域の上限Aまでのグラウトの注入を終えたら、ロッド本体3へのグラウトおよび圧縮空気の供給を停止し、施工機械の回転および昇降ユニットを大きく上動させて、同図▲5▼に示すように注入ロッド10を地盤30から引抜き、これにて、計画改良域への1つの改良柱35の造成は完了する。
本第1の実施の形態においては特に、もともとプレカッティングによる切削攪拌層32の形成に必要としていた高圧水をダウンザホールハンマー9の駆動源として共用するので、きわめて効率の良い施工となり、経済的な利益も大きいものとなる。
【0026】
なお、地盤性状によっては、上記第1の実施の形態におけるプレカッティング工程を省略することもできる。この場合は、ダウンザホールハンマー9を利用して計画改良域の上限Aまで削孔した後、ロッド本体3内の第1の流路aに供給する低圧水を、35〜45MPa 程度の高圧のグラウトに切替えると同時に、空気圧縮機からロッド本体3内の第2の流路bに圧縮空気を供給し、注入ヘッド5の二重ノズル4から空気を伴った高圧グラウト(混合流体)を放射方向へ噴射させながら、注入ロッド10を回転下降させて、グラウト注入層を形成し、計画改良域の下限Bに注入ヘッド5が到達した段階で、グラウトおよび圧縮空気の噴射を停止して、注入ロッド10を地盤30から引抜くようにする。このようにすることで、注入ロッド10の下降行程のみで改良柱を造成できるので、施工能率は向上する。
【0027】
図6および図7は、本発明の第2の実施の形態を示したものである。本第2の実施の形態は、芯材補強の高圧グラウト工法に適用したもので、ここでは、上記第1の実施の形態で用いたものと、実質的に同じ注入ロッド10を用意すると共に、管壁に円周方向および軸方向に配列して複数の逆止弁40を設けた芯材管41を用意する(図7)。なお、注入ロッド10の先端のダウンザホールハンマー9としては、芯材管41の外径よりも大径の削孔ビット8を有するものを選択する。
【0028】
そして、芯材管41に注入ロッド10を挿入して、その先端側の二重ノズル4とダウンザホールハンマー9とが芯材管41から突出するように両者を位置決めし、始めに、ロッド本体3内の第1の流路aに10〜18MPa の低圧水を供給し、図6▲1▼に示すように、注入ロッド10と芯材管41とを相互に逆方向に回転させながら下降させる。この時、第1の実施の形態と同様に、低圧水の圧力がバルブボデー7内の差圧弁6の設定圧(20MPa 程度)より小さくなっているので、差圧弁6は開弁状態を維持し、したがって該低圧水の大部分は、注入ヘッド5からバルブボデー7を経てダウンザホールハンマー9に圧送される。これにより、ダウンザホールハンマー9が作動して削孔ビット8に衝撃力が加えられ、削孔ビット8は、前記衝撃力に応じた衝撃を地盤30に作用させながら、注入ロッド10の回転下降に従って該地盤30を高能率に削孔する。このダウンザホールハンマー9による削孔径は、前記大径の削孔ビット8の選択により芯材管41の外径より大きくなっているので、この削孔の進行に応じて該孔42内に芯材管41が円滑に貫入する。
【0029】
そして、ダウンザホールハンマー9による削孔が計画改良域の上限Aまで到達したら、ロッド本体3内の第1の流路aに供給する低圧水を、35〜45MPa 程度の高圧のグラウトに切替えると同時に、空気圧縮機からロッド本体3内の第2の流路bに圧縮空気を供給する。すると、図6▲2▼に示すように、注入ヘッド5の二重ノズル4から空気を伴った高圧グラウト(混合流体)が放射方向へ噴射して、グラウト注入層43が形成され、このグラウト注入層43は注入ロッド10の回転下降に応じて下方へ拡大する。計画改良域の下限Bまでグラウト注入層43が形成されたら、注入ヘッド5(二重ノズル4)へのグラウトおよび圧縮空気の供給を停止する。
【0030】
次に、図6▲3▼に示すように、注入ロッド3を芯材管41から引抜き、芯材管41はそのまま地盤30内に残して、今度はその中に注入機44を挿入する。注入機44としては、例えば、特開平6−228940号公報に記載のものを使用することができる。このものは、拡縮可能な上下一対の膨出体(ゴム製)45と、この膨出体45を拡縮させる駆動手段(図示略)とを備えており、その一対の膨出体45を膨出変形させることにより芯材管41内の任意の位置に固定可能となる。注入機44には、地上から延ばした注入管46を通じてグラウトが圧送されるようになっており、このグラウトは、注入機44の一対の膨出体45の間に吐出した後、逆止弁40を開いて芯材管41の周りに噴出し、これにより、芯材管41の周りには芯材管41に密着する状態で小径のグラウト注入層(2次注入層)46が形成される。
【0031】
上記2次注入層46の形成は、芯材管41の下端部から開始し、所定のピッチで注入機44を引上げて、各引上げ位置で一対の膨出体45を膨出させてグラウトの注入を繰り返し、これにより2次注入層46は次第に上方へ拡張する。そして、先のグラウト注入層(1次注入層)43の全域にわたって2次注入層46の形成を終えたら、注入機44を芯材管41から引抜き、各注入層43、46の硬化を待つ。この結果、芯材管41の周りには、図6▲4▼に示すように1次注入層43が硬化した1次改良柱47と2次注入層46が硬化した2次改良柱48とが多重に形成され、芯材管41が強固な改良柱内に埋設されることになり、芯材補強の強固な改良柱が造成される。
【0032】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る高圧噴射攪拌工法によれば、水圧駆動のダウンザホールハンマーを利用して高能率に削孔を行うと共に、この削孔に引続いて高圧噴射を行うので、計画改良域までの到達範囲に硬質地盤が存在する場合はもとより、長距離削孔を必要とする大深度域の地盤改良にも効果的に対処でき、その適用範囲は著しく拡大する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の実施過程を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態における途中段階を拡大して示す模式図である。
【図3】第1の実施の形態で用いる注入ロッドの構造を示す断面図である。
【図4】ダウンザホールハンマーの削孔ビットの構造を示す断面図である。
【図5】ダウンザホールハンマーの削孔ビットの構造を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の実施過程を示す模式図である。
【図7】第2の実施の形態における注入ロッドと芯材管との組合せ状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 外管、 2 内管、 3 ロッド本体
4 二重ノズル、 5 注入ヘッド
6 差圧弁、 7 バルブボデー
8 削孔ビット、 9 ダウンザホールハンマー
10 注入ロッド 、 30 地盤
31,42 削孔による孔、 32 切削攪拌層
32 切削攪拌層、 34,43 グラウト注入層
35 改良柱、 47 1次改良柱、 48 2次改良柱
40 逆止弁、 41 芯材管、 44 注入機
46 2次グラウト注入層
Claims (5)
- 内部に第1および第2の流路を有するロッド本体の先端に、周面に二重ノズルを設けた注入ヘッドと、設定圧を超える流体圧が作用した時に閉弁する差圧弁を内蔵するバルブボデーと、水圧によりハンマー部を作動させて先端の削孔ビットに衝撃力を加えるダウンザホールハンマーとを連設して成る注入ロッドを用意し、始めに前記第1の流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域上限に到達したら、前記第1の流路に供給する低圧水を前記設定圧より十分高い超高圧水に切替えて前記差圧弁を閉弁させると同時に、前記第2の流路に圧縮空気を供給して、前記二重ノズルから水と空気との混合流体を高圧噴射させて地盤を切削攪拌し、注入ヘッドが計画改良域下限に到達したら、前記第1の流路に供給する超高圧水を高圧のグラウトに切替えると共に、前記第2の流路に供給する空気を調整して、前記二重ノズルからグラウトと空気との混合流体またはグラウトのみを高圧噴射させながら、注入ロッドを回転上昇させて計画改良域に改良柱を造成することを特徴とする高圧噴射攪拌工法。
- 低圧水が10〜18MPa の圧力を有し、超高圧水が35〜45MPa の圧力を有することを特徴とする請求項1に記載の高圧噴射攪拌工法。
- 内部に流路を有するロッド本体の先端に、周面に噴射ノズルを設けた注入ヘッドと、設定圧を超える流体圧が作用した時に閉弁する差圧弁を内蔵するバルブボデーと、水圧によりハンマー部を作動させて先端の削孔ビットに衝撃力を加えるダウンザホールハンマーとを連設して成る注入ロッドを用意し、始めに、前記流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域上限に到達したら、前記流路に供給する低圧水を前記設定圧より高圧のグラウトに切替えて前記差圧弁を閉弁させ、前記噴射ノズルからグラウトを高圧噴射させて計画改良域に改良柱を造成することを特徴とする高圧噴射攪拌工法。
- 内部に流路を有するロッド本体の先端に、周面に噴射ノズルを設けた注入ヘッドと、設定圧を超える流体圧が作用した時に閉弁する差圧弁を内蔵するバルブボデーと、水圧によりハンマー部を作動させて先端の削孔ビットに衝撃力を加えるダウンザホールハンマーとを連設して成る注入ロッドを用意し、この注入ロッドを逆止弁付きの芯材管に挿入して、始めに、前記流路に前記設定圧以下の低圧水を供給して、この低圧水により前記ダウンザホールハンマーを作動させながら、前記注入ロッドを前記芯材管より先行して地盤中に回転下降させて削孔を行い、前記注入ヘッドが計画改良域上限に到達したら、前記流路に供給する低圧水を前記設定圧より高圧のグラウトに切替えて前記差圧弁を閉弁させ、前記噴射ノズルからグラウトを高圧噴射させて計画改良域に改良柱を造成し、しかる後、前記芯材管から注入ロッドを引抜き、代わりに注入機を芯材管内に挿入して、芯材管に設けた逆止弁を開いて該芯材管の周りにグラウトを2次注入することを特徴とする高圧噴射攪拌工法。
- ロッド本体の内部に2つの流路を設けると共に、注入ヘッドの噴射ノズルを二重ノズルから構成し、噴射ノズルからグラウトを噴射させる際、圧縮空気を一緒に噴射させることを特徴とする請求項3または4に記載の高圧噴射攪拌工法。
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