JP3694268B2 - 1種以上のカロテノイドを含む乾燥粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1種以上のカロテノイドを含む乾燥粉末、好ましくはキサントフィルを含む乾燥粉末、特にアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルからなる群より選択されるキサントフィルの乾燥粉末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カロテノイドに属する物質は、2つのグループ、すなわちカロテンおよびキサントフィル、に大別される。例えば、β-カロテンまたはリコペンなどの純粋なポリエン炭化水素であるカロテンは、ヒドロキシル、エポキシおよび/またはオキソ基などの酸素官能基をもつキサントフィルと区別される。後者のグループの典型的な例としては、とりわけ、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテインおよびゼアキサンチンが挙げられる。
【0003】
酸素を含むカロテノイドには、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルも含まれる。
【0004】
酸素含有カロテノイドは、天然に広く分布しており、とりわけ、トウモロコシ(ゼアキサンチン)、藍晴インゲン(ルテイン)、パプリカ(カプサンシン)、卵黄(ルテイン)、カニおよびサケ(アスタキサンチン)に含まれ、これらの食物にその特徴的な色を与えている。
【0005】
これらのポリエンは、合成することも天然源から単離することもでき、食品および動物飼料ならびに医薬品のための重要な着色剤に相当し、アスタキサンチンの場合には、サケにおいてプロビタミンA活性を示す活性物質でもある。
【0006】
カロテンおよびキサントフィルはいずれも水に不溶性であるが、油脂に対する溶解度も低いことが分かっている。このように溶解度が限られており、また、酸化に対する感受性も高いため、食品や飼料を着色する際に、合成から得られた比較的粗い粒子の製品を直接使用することは難しい。なぜなら、粗い結晶形態の物質を用いたのでは、乏しい着色しか得られないためである。キサントフィルの使用にとって不利なこうした結果は、水性媒体において特に顕著である。
【0007】
食品の直接着色における色収量(color yield)の改善は、活性物質が微細な形態で存在し、しかも適宜に、保護コロイドによって酸化から保護されている特別に製造した配合物を用いた場合にのみ達成することができる。さらに、これらの配合物を飼料中で使用すると、カロテノイドとキサントフィルの生物学的利用能が向上し、その結果間接的に、例えば卵黄または魚の色素形成において着色効果が改善される。
【0008】
色収量を改善するため、また、吸収性や生物学的利用能を向上させるため、様々な方法が記載されている。しかし、それらはすべて、活性物質の結晶サイズを小さくして、10μm未満の粒度範囲にすることを目的としている。
【0009】
非常に多くの方法があるが、とりわけ、Chimia 21, 329 (1967)、WO 91/06292およびWO 94/19411に記載された方法は、カロテノイドの粉砕にコロイドミルを利用し、そうして2〜10μmの粒度を達成している。
【0010】
また、乳化/噴霧乾燥を組み合わせた方法が多数存在しており、これらは、例えば、DE-A-12 11 911およびEP-A-0 410 236に記載されている。
【0011】
欧州特許EP-B-0 065 193に従うと、微細な粉末状のカロテノイド製品を製造するにあたって、カロテノイドを揮発性の水混和性有機溶媒中に高温で、必要に応じ加圧下で、溶解し、この溶液を保護コロイド水溶液と混合してカロテノイドを沈殿させ、その後噴霧乾燥している。
【0012】
微細な粉末状のカロテノイド製品を製造するための同様の方法が、EP-A-0 937 412に記載されており、この方法は水不混和性溶媒を用いるものである。
【0013】
しかしながら、EP-B-0 065 193に従って製造されたキサントフィル活性物質のナノ粒子分散液では、以下のような現象が頻繁に認められる。
【0014】
キサントフィル活性物質の水性分散液は、特に濃縮時に、コロイドとして不安定なことが多い。この過程で活性物質粒子が凝集する(一部は沈降し、一部はクリーミングする)と、分散液を乾燥粉末に変換することは、もはや不可能となる。
【0015】
加えて、カルボニル官能基を有するキサントフィルの場合は、保護コロイドとして使用したゼラチンが架橋を起こすこともあり、その結果、再分散し得ないゲルが生成し、こうした場合にも乾燥粉末への変換は不可能である。
【0016】
このように、上述した製造方法に伴う諸問題のため、着色効果および生物学的利用能に関してキサントフィル含有配合物に対する大きな必要条件が常に満たされるとは限らない。
【0017】
ゼラチンのもう一つの欠点は、その強力な粘着性にある。ゼラチン含有製品を使用する場合に、噴霧乾燥や流動床噴霧乾燥などの液体系に常用される乾燥方法を用いると、糸が形成されたり、ケークとなったりすることがある。
【0018】
さらに、ゼラチン含有製品は次第に消費者に受け入れられなくなる傾向がある。
【0019】
アラビアゴム、デンプン、デキストリン、ペクチンまたはトラガカントなどの、他の常用される保護コロイドでは、比較的低濃度の脂溶性物質しか包埋することができないことが多い。さらに、特にアラビアゴムは、これまで、収穫が少ないために十分な品質でいつでも利用できるとは限らなかった。
【0020】
同様に、ポリビニルピロリドンなどの合成コロイドまたはセルロース誘導体などの半合成ポリマーは、乳化能に限界があり、特に食品部門においては必ずしも受け入れられるとは限らない。
【0021】
DE-A-44 24 085には、部分的に分解したダイズタンパク質を、脂溶性活性物質のための保護コロイドとして使用することが記載されている。そこに開示されたダイズタンパク質は加水分解率が0.1〜5%のものである。これらの保護コロイドを用いて製造した配合物の色強度は必ずしも満足のゆくものではない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述した従来技術の欠点をもたない保護コロイドを用いて、カロテノイドを含む乾燥粉末、特に酸素含有カロテノイドの乾燥粉末を製造する方法を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、
a) 1種以上のカロテノイドを、ラクトースと保護コロイドとの混合物の水性分子またはコロイド溶液中に分散させ、そして
b) 形成された分散液から水および適宜に他に使用した溶媒を除去し、場合によりコーティング剤の存在下で、乾燥することにより、該分散液を乾燥粉末に変換する、
ことを含んでなり、その際、工程a)において、少なくとも1種のダイズタンパク質を保護コロイドとして使用することを特徴とする、1種以上のカロテノイドを含む乾燥粉末の製造方法により達成される、ことが見いだされた。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に従って用いられる保護コロイドは、1種以上の異なるダイズタンパク質である。これに関連して好適なダイズタンパク質は、加水分解率(DH)が0.1〜20%、好ましくは3〜12%、特に好ましくは6〜9%のものである。加水分解率「DH」は以下のように定義される:
DH=(分解されたペプチド結合の数)/(ペプチド結合の総数)×100%
【0025】
加水分解率は、C.F.Jacobsenら、「生化学分析方法」(Methods of Biochemical Analysis), Vol.IV, pp.171-210, Interscience Publishers Inc., New York 1957に記載されているような「pH-Stat法」により測定し得る。
部分的な分解は一般に酵素処理によって行われ、適切な酵素としては植物、微生物もしくは真菌由来のプロテアーゼ、または動物性プロテアーゼがある。植物プロテアーゼであるブロメラインを用いて部分的分解を実施することが好ましい。
【0026】
通常用いられるダイズタンパク質は、タンパク質含量が70〜90重量%で、残りの10〜30重量%が多かれ少なかれ特定されていない他の植物成分からなる、市販のダイズタンパク質分離物および濃縮物である。本発明で用いるのに好ましいダイズタンパク質は非遺伝子組換えダイズタンパク質である。
【0027】
ダイズタンパク質分離物を、水性媒体中で好ましくは50〜70℃、pH7〜9にて酵素と共にインキュベートする。適切なタンパク質と酵素の比率は、当業者であれば、実験室での簡単な試験により所望の加水分解率に関して個々に決定することができる。
【0028】
ダイズタンパク質加水分解産物の水溶液は、一般的には、タンパク質含量が6〜10重量%となるように調製される。
【0029】
本発明において使用する部分的に分解したダイズタンパク質の重量平均分子量は、15000〜250000、好ましくは25000〜220000、特に好ましくは50000〜200000、最も好ましくは120000〜180000の範囲である。
【0030】
また、本発明の方法では、種々の加水分解率の部分分解ダイズタンパク質の混合物、または部分分解ダイズタンパク質と非分解ダイズタンパク質との混合物を保護コロイドとして用いることも可能である。上記混合物に関して、それらの重量平均分子量もまた上記範囲内である。
【0031】
「分散」という用語は、好ましくは水性懸濁液または水性エマルジョンの調製を意味する。特に好ましくは、分散工程a)は、ラクトースと少なくとも1種のダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液中に分散させた、1種以上のカロテノイドの懸濁液を調製することを含み、その際、分散相がカロテノイド活性物質の少なくとも1種をナノ粒子として含むものである。
【0032】
上記方法の好ましい実施形態は、工程a)において調製した懸濁液を、乾燥粉末に変換する前にすり砕くことを含む。この場合、該活性物質(1種以上のカロテノイド)は、すり砕く以前には結晶形態で懸濁していることが好ましい。
【0033】
上記すり砕きは、それ自体公知の方法で、例えばボールミルを用いて実施することができる。使用するミルのタイプに応じて、フラウンホーファー回折D[4.3]で測定される粒子の平均粒径が0.1〜100μm、好ましくは0.2〜50μm、より好ましくは0.2〜20μm、最も好ましくは0.2〜5μm、特に0.2〜0.8μmとなるまですり砕く必要がある。D[4.3]という語は、体積加重平均直径を表す(Handbook for Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UK を参照されたい)。
【0034】
すり砕きおよびそのために使用する装置に関する詳細は、特に、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版, 1999年, Electronic Release, Size Reduction, 第3.6章: Wet Grinding、およびEP-A-0 498 824に記載されている。
【0035】
本発明方法の同様に好ましい変法では、工程a)の分散が、
a1) 1種以上のカロテノイドを水混和性有機溶媒中または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中に溶解するか、または
a2) 1種以上のカロテノイドを水不混和性有機溶媒中に溶解し、そして
a3) 工程a1)またはa2)で得られた溶液を、ラクトースと少なくとも1種のダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液と混合することによって、カロテノイドの疎水相をナノ分散相として調製する、
各工程を含むものである。
【0036】
使用する溶媒の性質に応じて、工程a3)におけるナノ分散相は、固体ナノ粒子(懸濁液)またはナノ液滴(エマルジョン)を含むことができる。
【0037】
工程a1)で使用する水混和性溶媒は、特に、炭素、水素および酸素のみを含有する水混和性で熱安定性の揮発性溶媒、例えばアルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびアセタールである。都合よく用いられる溶媒は、少なくとも10%水混和性であり、沸点が200℃より低く、かつ/または炭素数が10未満のものである。特に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール 1-メチルエーテル、1,2-プロパンジオール 1-n-プロピルエーテル、テトラヒドロフランまたはアセトンが好ましい。
【0038】
本発明において「水不混和性有機溶媒」とは、大気圧下で水への溶解度が10%より低い有機溶媒を意味する。使用可能な溶媒としては、特に、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルムおよび四塩化炭素)、カルボン酸エステル(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、エチルもしくはイソプロピル)、ならびにエーテル(例えば、メチル tert-ブチルエーテル)がある。好ましい水不混和性有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群より選択される化合物である。
【0039】
本発明は、酸素含有カロテノイド、好ましくは、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルからなる群より選択される化合物、の乾燥粉末の製造を含む。
【0040】
本発明の方法においては、特に好ましくは、
a) アスタキサンチンおよび/またはカンタキサンチンを、30℃以上の温度にて水混和性有機溶媒中または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中に溶解し、
b) 得られた溶液を、ラクトースと加水分解率0.1〜20%の部分分解ダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液と混合し、そして
c) 形成された分散液を乾燥粉末に変換する。
【0041】
本発明において特に好ましいものは、アスタキサンチンを含む乾燥粉末の製造方法である。
【0042】
上記乾燥粉末は、少なくとも1種のカロテノイドを水混和性有機溶媒中に30℃以上の温度、好ましくは50℃〜240℃、より好ましくは100℃〜200℃、さらに好ましくは140℃〜180℃の温度で、必要に応じて加圧下で、溶解するような方法で製造することが有利である。
【0043】
ある場合には所望の全トランス異性体の高い比率が高温にさらすことにより減少する可能性があるので、カロテノイドの溶解を可能なかぎり迅速に、例えば、秒単位(例:0.1〜10秒)で行い、特に1秒未満で行なうことが好適である。分子溶液の迅速な調製のためには、昇圧、例えば20〜80バール、好ましくは30〜60バールの圧力をかけることが有利である。
【0044】
続いて、上記のようにして得られた分子溶液に、ラクトースとダイズタンパク質との混合物の、必要に応じて冷却した水性分子またはコロイド溶液を、混合温度が約35℃〜80℃に設定されるようにして、直接添加する。
【0045】
この間に、溶媒成分は水相に移動し、カロテノイドの疎水相がナノ分散相として出現する。
【0046】
上記分散に関する方法および装置の詳細な説明については、EP-B-0 065 193を参照されたい。
【0047】
乾燥粉末に変換することは、適宜にコーティング剤の存在下にて、特に、噴霧乾燥、噴霧冷却、凍結乾燥または流動床乾燥により行なうことができる。適切なコーティング剤は、とりわけ、トウモロコシデンプン、シリカまたはリン酸三カルシウムである。
【0048】
最終生成物の機械的安定性を高めるために、場合によってはコロイドに、糖または糖アルコール(例えば、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、デキストリン、転化糖、ソルビトール、マンニトールまたはグリセロール)などの可塑剤を添加することが有利である。
【0049】
酸化的分解に対する活性物質の安定性を高めるために、α-トコフェロール、t-ブチルヒドロキシトルエン、t-ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸またはエトキシキンなどの安定剤を添加することが有利である。これらは、水相または溶媒相のいずれにも添加できるが、活性物質と一緒に溶媒相に溶解することが好ましい。
【0050】
また、ある場合には、この溶媒相中に、生理学的に許容される油(例えば、ゴマ油、コーン油、綿実油、ダイズ油、落花生油)、または中等度鎖長の植物性脂肪酸のエステルを、キサントフィルの重量に基づいて、0〜500重量%、好ましくは10〜300重量%、特に好ましくは20〜100重量%の濃度で溶解し、その後、水相との混合時に、活性物質および上記の添加剤とともに極めて微細な粒子として沈殿させることも有利である。
【0051】
保護コロイドおよびラクトースの、カロテノイドに対する比率は、一般的に、最終生成物が0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは5〜20重量%のカロテノイドと、10〜70重量%の保護コロイドと、10〜70重量%のラクトースと、適宜に少量の安定剤、を含有するように選択される(全ての%は粉末の乾燥重量に基づく)。
【0052】
本発明はまた、本明細書に記載した方法の1つにより得られるカロテノイドの乾燥粉末に関する。
【0053】
好ましくは、これらは、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルからなる群より選択される酸素含有カロテノイド、より好ましくはカンタキサンチンおよびアスタキサンチン、最も好ましくはアスタキサンチンを含む乾燥粉末である。
【0054】
本発明の乾燥粉末中の活性物質の含量は、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは8〜15重量%の範囲である。
【0055】
本発明の調製物中のアスタキサンチンおよび/またはカンタキサンチンの含量は5〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明の乾燥粉末は、特に、水性系中にそれを問題なく再分散させて、1μm未満の粒径範囲で活性物質の均一な微細分散液を形成し得る点に特徴がある。
【0057】
配合用賦形剤としてラクトースとダイズタンパク質の組合せを使用すると、これを用いて製造したカロテノイド配合物が、グルコースなどの糖に比べて、特に良好な色強度を示すとともに生物学的利用能も向上するという効果を有する。
【0058】
本発明の方法により得られる乾燥粉末は、例えばグルコースシロップを用いて製造した同等の配合物よりも高い見かけの密度を有する。驚いたことに、この高い見かけ密度は本発明の配合物のより大きな安定性にも貢献していることが見いだされた。
【0059】
さらに、酸素含有カロテノイドの、コロイドとして安定な非架橋性ナノ粒子状の分散液(その粘度挙動はニュートン流体にほぼ一致する)が得られることが判明した。このタイプの流体はその流れ抵抗によって区別される。流れ抵抗は、所定の温度での材料定数であるニュートンの方程式:τ=h・D(τ=剪断応力、D=剪断速度勾配、h = 動的粘度)によって定義される。ニュートン流体の流れ挙動をグラフで表すと、所定の温度においてほぼ直線を与える。特に、活性物質分散液の粘度は、40℃および60℃において、10-2秒-1〜10+2秒-1の剪断範囲で±50%を超えて変化することはない。
【0060】
このようなニュートン粘度挙動に近い粘度挙動の利点は、とりわけ、疑似塑性分散液の場合に比べて、特に濃縮後に、活性物質分散液をより簡単にポンプ輸送できる点にある。さらに、噴霧乾燥において、ほぼニュートン粘度挙動を示す活性物質分散液は、スプレーヘッドのパラメーターをより容易に最適化できるという利点と、このような分散液がスプレーヘッド内でそれほど臨界的な挙動を示さないという利点を有する。
【0061】
加水分解率が5%未満の好適な部分分解ダイズタンパク質とラクトースの混合物を使用すると、上述したように、色強度が改善され、さらに冷水への再分散性が向上したキサントフィル含有乾燥粉末を製造することが可能である。
【0062】
加水分解率が5%より大きい部分分解ダイズタンパク質は、驚くべきことに、本明細書に記載した水混和性溶媒とのより良好な適合性を示す。このことは、本発明の乾燥粉末を製造するためのより集約された手順、ひいては、より経済的な方法を可能にする。
【0063】
さらに、本発明の方法においては、キサントフィルのH凝集体の形成が回避されることが観察された。
【0064】
カロテノイド類の凝集は文献に開示されている現象であり、多数の刊行物に記載されている[P. Song, T.A. Moore, Photochemistry and Photobiology, 19, 435-441 (1974); A.V. Ruban, P. Horton, A.J. Young, J. Photochem. Photobiol. B: Biol., 21, 229-234 (1993); V.R. Salares, N.M. Young, P.R. Carey, H.J. Bernstein, Journal of Raman Spectroscopy, 6(6), 282-288 (1977)]。
【0065】
カロテノイド凝集体は、例えば、水混和性有機溶媒(例:イソプロパノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン)中のカロテノイドの溶液を水と混合すると生成される。
【0066】
従って、上記文献に記載されるように、水と有機溶媒の量の正確な比率を選択することにより、いわゆるHまたはJ凝集体を生成することが可能である。
【0067】
H凝集体では、ポリエン鎖がカードのパックのように積み重なっており(カードスタック凝集体)、UV/可視光スペクトルにおいて、モノマー形態の吸収に対して浅色シフトを示す新たなバンドが320〜400 nmの範囲に出現することにより特徴づけられる。これに対して、J凝集体はポリエンの線状の頭−尾結合(頭−尾凝集体)を示すか、または魚の骨のような配列(矢筈凝集体)をとる。双方の配列ともポリエンのUV吸収に深色シフトを引き起こす。
【0068】
マスに対する給餌試験から、キサントフィルのH凝集体、特にアスタキサンチンのH凝集体は、対応するJ凝集体よりも低い生物学的利用能を示すことが明らかとなり、このことは、本発明の方法で製造された乾燥粉末の更なる利点を提示する。
【0069】
上述した乾燥粉末は、特に食品および飼料の添加剤として、および医薬品の添加剤として適している。動物飼料分野におけるカロテノイド含有乾燥粉末の用途の典型的な分野は、例えば水産養殖における魚類着色ならびに家禽畜産における卵黄および若鶏皮膚の着色である。
【0070】
【実施例】
本発明方法の手順を以下の実施例で詳細に説明する。
実施例1
アスタキサンチン乾燥粉末の製造
48 gの結晶アスタキサンチン、1.6 gのアスコルビルパルミテート、および20 gのα-トコフェロールを、加熱型容器内で、350 gのイソプロパノール/水共沸混合物中に室温にて懸濁した。続いて、この活性物質懸濁液を90℃に加熱し、温度223℃および流速2.7 kg/hの更なるイソプロパノール/水共沸混合物と共に流速2.1 kg/hで連続的に混合したところ、アスタキサンチンは設定した混合温度165℃で55バールの加圧下にて溶解した。直ちに、この活性物質溶液を、蒸留水10540 g中の加水分解率7%の部分分解ダイズタンパク質91 gとラクトース182 gの溶液(1 M NaOHでpH9.5に調整した)からなる水相と、流速60 kg/hで混合した。
【0071】
混合時に形成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合溶媒中で粒径が132 nmであり、E1/1値1)が127であった。
続いて、活性物質懸濁液を薄膜エバポレーターで活性物質含量が約3.9%の濃度となるまで濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量が12.8重量%であり、見かけ密度が430 g/lであった。水に再分散させた乾燥粉末は、粒径が181 nmであり、E1/1値が126であった。
1) E1/1値は、1cmキュベット中の10重量%乾燥粉末の1%水性分散液の、最大吸収での吸光係数として定義される。
【0072】
比較例
ダイズタンパク質とグルコースシロップの組合せを用いたアスタキサンチン乾燥粉末
48 gの結晶アスタキサンチン、1.6 gのアスコルビルパルミテート、および20 gのα-トコフェロールを、加熱型容器内で、350 gのイソプロパノール/水共沸混合物中に室温にて懸濁した。続いて、この活性物質懸濁液を90℃に加熱し、温度223℃、流速2.7 kg/hの更なるイソプロパノール/水共沸混合物と共に流速2.1 kg/hで連続的に混合したところ、アスタキサンチンは設定した混合温度167℃で55バールの加圧下に溶解した。直ちに、この活性物質溶液を、蒸留水10540 g中の加水分解率7%の部分分解ダイズタンパク質91 gとグルコースシロップ182 gの溶液(1 M NaOHでpH9.5に調整した)からなる水相と、流速60 kg/hで混合した。
混合時に形成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合溶媒中で粒径が146 nmであり、E1/1値が125であった。
続いて、活性物質懸濁液を薄膜エバポレーターで活性物質含量が約3.6%の濃度になるまで濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量が12.5重量%であり、見かけ密度が400 g/lであった。水に再分散させた乾燥粉末は、粒径が347 nmで、E1/1値が101であった。
【0073】
実施例2
カンタキサンチン乾燥粉末
最初に、48 gの結晶カンタキサンチン、4 gのアスコルビルパルミテートおよび16 gのα-トコフェロールを、350 gのイソプロパノール/水共沸混合物中に室温で懸濁した。次に、この活性物質懸濁液を88℃に加熱し、流速4.8 kg/hの更なる加熱イソプロパノール/水共沸混合物と共に流速2.9 kg/hで連続的に混合したところ、カンタキサンチンは設定した混合温度175℃で55バールの加圧下に溶解した。その後、この活性物質溶液を、蒸留水7050 g中の加水分解率7%の部分分解ダイズタンパク質106 gとラクトース219 gの溶液(1 M NaOHでpH9.5に調整した)からなる水相と、流速52 kg/hで混合した。
混合時に形成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合溶媒中で粒径が134 nmであり、E1/1値が133であった。
続いて、この活性物質分散液を薄膜エバポレーターで活性物質含量が約4.2%の濃度となるまで濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、カンタキサンチン含量が12.4重量%であった。水に再分散させた乾燥粉末は、平均粒径が264 nmであり、E1/1値が121であった。
Claims (15)
- 1種以上のカロテノイドを含む乾燥粉末を製造する方法であって、
a) 1種以上のカロテノイドを、ラクトースと保護コロイドとの混合物の水性分子溶液または水性コロイド溶液中に分散させ、そして
b) 形成された分散液から水および適宜に他に使用した溶媒を除去し、場合によりコーティング剤の存在下で、乾燥することにより、該分散液を乾燥粉末に変換する、
ことを含んでなり、その際、工程a)において、少なくとも1種のダイズタンパク質を保護コロイドとして使用することを特徴とする、上記方法。 - 分散工程a)が、ラクトースと少なくとも1種のダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液中に分散させた1種以上のカロテノイドの懸濁液を調製することを含む、請求項1に記載の方法。
- 工程a)で調製した懸濁液を、乾燥粉末に変換する前にすり砕く、請求項2に記載の方法。
- 工程a)における分散が、
a1) 1種以上のカロテノイドを水混和性有機溶媒中または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中に溶解するか、または
a2) 1種以上のカロテノイドを水不混和性有機溶媒中に溶解し、そして
a3) 工程a1)またはa2)で得られた溶液を、ラクトースと少なくとも1種のダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液と混合することによって、カロテノイドの疎水相をナノ分散相として調製する、
各工程を含む、請求項1に記載の方法。 - 保護コロイドとして、少なくとも1種の、加水分解率0.1〜20%の部分分解ダイズタンパク質を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 用いるカロテノイドが酸素含有カロテノイドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 酸素含有カロテノイドがアスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルからなる群より選択される化合物である、請求項6に記載の方法。
- a) アスタキサンチンおよび/またはカンタキサンチンを、30℃以上の温度にて水混和性有機溶媒中または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中に溶解し、
b) 得られた溶液を、ラクトースと加水分解率0.1〜20%の部分分解ダイズタンパク質との混合物の水性分子またはコロイド溶液と混合し、
c) 形成された分散液を乾燥粉末に変換する、
請求項7に記載の方法。 - カロテノイドとしてアスタキサンチンを用いる、請求項8に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により得られるカロテノイド含有乾燥粉末。
- カロテノイドの含量が0.1〜30重量%である、請求項10に記載の乾燥粉末。
- アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびβ-アポ-8'-カロテン酸エチルからなる群より選択される酸素含有カロテノイドを含む、請求項10または11に記載の乾燥粉末。
- 5〜20重量%のアスタキサンチンを含む、請求項12に記載の乾燥粉末。
- 5〜20重量%のカンタキサンチンを含む、請求項12に記載の乾燥粉末。
- 食品、医薬品および/または動物飼料に添加する添加剤としての請求項10〜14のいずれか1項に記載のカロテノイド含有乾燥粉末の使用。
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