JP3694198B2 - パターンの位置合わせ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テープキャリア等に形成されたパターンを検査するパターン検査方法に係り、特にマスタパターンと被測定パターンの位置合わせを行う位置合わせ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、IC、LSIの多ピン化要求に適した実装技術として、TAB(Tape Automated Bonding)法が知られている。TAB法は、ポリイミド製のテープキャリア(TABテープ)上に形成された銅箔パターンをICチップの電極に接合して外部リードとするものである。銅箔パターンは、テープキャリアに銅箔を接着剤で貼り付け、これをエッチングすることによって形成される。
【0003】
このようなテープキャリアでは、パターン形成後に顕微鏡を用いて人間により目視でパターンの検査が行われる。しかしながら、微細なパターンを目視で検査するには、熟練を要すると共に、目を酷使するという問題点があった。そこで、目視検査に代わるものとして、テープキャリア等に形成されたパターンをTVカメラで撮像して自動的に検査する技術が提案されている(例えば、特開平6−273132号公報、特開平7−110863号公報)。
【0004】
図16、図17は特開平6−273132号公報に記載された断線を検出する従来の検査方法を説明するための図である。良品と判定された被測定パターンを撮像することによって作成されたマスタパターンは、パターンエッジを示す直線の集合として登録される。また、被測定パターンは、パターンを撮像した濃淡画像から抽出したパターンエッジを示すエッジデータ(エッジ座標)の集合として入力される。そして、抽出した被測定パターンのエッジデータn1、n2、n3・・・とマスタパターンの直線との対応付けを行う。この対応付けを行うために、図16に示すように、マスタパターンの連続する直線A1とA2、A2とA3・・・・がつくる角をそれぞれ2等分する2等分線A2’、A3’・・・・を求める。
【0005】
この2等分線A2’、A3’・・・・によってマスタパターンの直線A1、A2、A3・・・・の周囲は、各直線にそれぞれ所属する領域に分割される。これにより、各領域内に存在する被測定パターンのエッジデータn1、n2、n3・・・・は、その領域が属するマスタパターンの直線A1、A2、A3・・・・とそれぞれ対応付けられたことになる。例えば図16において、エッジデータn1〜n3は、直線A1と対応付けられ、データn4〜n6は、直線A2と対応付けられる。次に、被測定パターンのエッジデータとマスタパターンとを比較し、被測定パターンが断線しているかどうかを検査する。この検査は、図17に示すように、被測定パターンの連結したエッジデータn1〜n9を追跡することによりパターンエッジを追跡するラベリング処理によって実現される。このとき、被測定パターンの先端に生じた断線により、この断線部でエッジデータが連結しないため、マスタパターンの直線A3〜A5に対応するエッジデータが存在しない。こうして、被測定パターンの断線を検出することができる。
【0006】
図18は特開平6−273132号公報に記載された短絡を検出する従来の検査方法を説明するための図である。この検査方法では、まずマスタパターンと被測定パターンを所定の大きさに切り出した検査領域20において、被測定パターンの連結したエッジデータを追跡する。これにより、被測定パターンの各エッジデータは、n1〜n18と順次ラベリングされる。しかし、パターンエッジを示す対向する2直線からなるマスタパターンMaと同じく対向する2直線からなるマスタパターンMbには、エッジデータn8、n17は登録されていない。こうして、被測定パターンの短絡を検出することができる。
【0007】
図19は特開平7−110863号公報に記載された欠損あるいは突起を検出する従来の検査方法を説明するための図である。この検査方法では、まず中心線Lに垂直な垂線を引いて、この垂線がマスタパターンのエッジを示す直線A1、A2と交わる交点間の長さをマスタパターンの幅W0として予め求めておく。次に、実際の検査では、被測定パターンのエッジデータnからマスタパターンの中心線Lに対して垂線を下ろすことにより、対向するエッジデータ間の距離を求める。この距離が被測定パターンの幅Wであり、これをマスタパターンの幅W0と比較することにより、被測定パターンの欠損あるいは突起を検出することができる。
【0008】
しかし、このような検査方法を用いるパターン検査装置では、被測定パターンの全体にわたってマスタパターンとの比較による詳細な検査をソフトウェアで行うため、パターン検査に時間がかかるという問題点があった。そこで、短時間で検査が可能なパターン検査装置が提案されている(例えば、特開平10−141930号公報)。特開平10−141930号公報に記載されたパターン検査装置では、ハードウェアによって被測定パターンの欠陥候補を検出し、検出した欠陥候補を含む所定の小領域だけソフトウェアによって検査するので、被測定パターンの欠陥を従来よりも高速に検査することができる。
【0009】
以上のような検査方法を用いるパターン検査装置では、カメラで取り込んだ被測定パターンとマスタパターンを比較するために、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせが必要である。そして、この位置合わせは、マスタパターンに予め設けられた位置決めマークと、これに対応する被測定パターンの位置決めマークの位置を一致させることで行っていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような位置合わせ方法では、銅箔パターンが形成されたテープキャリア等を検査ワークとする場合に、正常な検査ができないことがあるという問題点があった。このような問題点が発生する理由を図20を用いて説明する。テープキャリアは、ポリイミド製の薄いフィルムであり、可撓性を有している。このため、カメラで撮像するテープキャリアには、局所的な歪みが存在し、この歪みは、被測定パターンのマスタパターンとの位置ずれの原因となる。図20に示すように、テープキャリア上に形成されたパターンの中央付近には、位置決めマークとなり得るような独立したパターンが存在しない。したがって、従来の位置合わせ方法では、テープキャリアの周辺部に配設された独立したパターンを位置決めマークとしている。しかし、このような位置合わせ方法では、周辺部以外で発生している、テープキャリアの局所的な歪みに起因する位置ずれを補正することができない。このため、この被測定パターンのマスタパターンとの位置ずれは、前述の検査において欠陥として検出されることになる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、局所的な歪みが発生しやすく、かつ位置決めマークとなり得るような独立したパターンが存在しないテープキャリア等の検査ワークであっても、局所的な位置合わせをして、検査ワークの局所的な歪みを吸収することができる位置合わせ方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のパターンの位置合わせ方法は、被測定パターンとマスタパターンの全領域について互いの第1の位置決めマークの位置を合わせることによりマスタパターンと被測定パターンの全体の位置合わせを行った後に、マスタパターン中に複数の分割領域を設定し、パターンと直交する少なくとも4本の仮想のラインを第2の位置決めマークとして設定することを分割領域毎に行い、マスタパターンの分割領域に対応する被測定パターンの分割領域を抽出して、前記第2の位置決めマークに対応する位置を中心とする所定の範囲についてマスタパターンとの相関値を算出し、最も相関値が高いピーク位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なし、被測定パターンとマスタパターンの互いの第2の位置決めマークの位置を合わせることにより、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを分割領域毎に行うようにしたものである。従来の位置合わせ方法では、検査ワークに局所的な歪みが存在する場合、全体としてはマスタパターンとの位置合わせができていたとしても、局所的にはマスタパターンとのずれが発生しているため、このずれが欠陥候補として検出されることがある。この場合、検査ワークの局所的な歪みが許容範囲内であったとしても、二次検査が行われるため、検査時間がかかってしまうという問題がある。これに対し、本発明では、検査ワークの局所的な歪みが許容範囲内であれば、分割領域ごとの位置合わせによって検査ワークの局所的な歪みを吸収し、マスタパターンの分割領域と被測定パターンの分割領域の微妙な位置ずれを補正することができる。
【0012】
また、本発明のパターンの位置合わせ方法の1構成例は、前記所定の範囲内においてマスタパターンの第2の位置決めマークと平行な各ライン毎に前記ピーク位置を求めた後、このピーク位置とマスタパターンの第2の位置決めマークとのずれ量を求め、このずれ量が最大のラインと最小のラインを除いた残りのラインより前記ピーク位置の平均値を求め、この平均位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なすようにしたものである。
また、本発明のパターンの位置合わせ方法の1構成例は、マスタパターンの分割領域とこれに対応する被測定パターンの分割領域において各々の第2の位置決めマークの座標より被測定パターンとマスタパターンの間の座標変換式を決定し、マスタパターンの分割領域を座標変換式によって変換することにより、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを分割領域毎に行うようにしたものである。
そして、本発明のパターンの位置合わせ方法の1構成例は、前記座標変換式に被測定パターンの第2の位置決めマークの座標を入力した結果とマスタパターンの対応位置決めマークの座標との偏差をマークごとに求め、この偏差が所定のしきい値より大きい第2の位置決めマークを被測定パターンとマスタパターンの双方から除外して座標変換式を再び求めることを全ての偏差が所定のしきい値以下となるまで繰り返すことにより、前記座標変換式を決定するようにしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す位置合わせ方法を用いるパターン検査方法のフローチャート図、図2はこの検査方法で用いるパターン検査装置のブロック図である。図2において、パターン検査装置は、銅箔パターンが形成されたテープキャリア1を送り出す供給側のスプロケット2と、テープキャリア1を巻き取る巻き取り側のスプロケット3と、テープキャリア1を撮像するラインセンサカメラ4と、被測定パターンの欠陥候補を検出する一次検査を行い、欠陥候補の位置を示すアドレス情報を出力する第1の画像処理装置5と、このアドレス情報により欠陥候補を含む所定の領域について、被測定パターンとマスタパターンの誤差を求め、被測定パターンの二次検査を行う第2の画像処理装置6と、装置全体を制御するホストコンピュータ7と、検査結果を表示するための表示装置8とを備えている。
【0014】
最初に、検査の前に予め作成しておくマスタパターンについて説明する。ホストコンピュータ7は、CAD(Computer Aided Design )システムによって作成され例えば磁気ディスクに書き込まれたテープキャリアの設計値データ(以下、CADデータとする)を図示しない磁気ディスク装置によって読み出し(図1ステップ101)、読み出したCADデータからパターンのエッジデータを抽出する。エッジデータは、パターンエッジを示す画素「1」の集合である。そして、ホストコンピュータ7は、パターンエッジを示す画素「1」で囲まれた領域を「1」で塗りつぶし、この画素「1」で塗りつぶされたパターン(パターン以外の背景は「0」)を検査の基準となる第1のマスタパターンとする(ステップ102)。
【0015】
このように本実施の形態では、正確なマスタパターンを作成するために、テープキャリア1の製造上のマスタとなったCADデータを用いる。
次に、パターン検査装置のオペレータは、IC1個分の全体の位置合わせを行うための第1の位置決めマークを第1のマスタパターンMにおいて3箇所以上指定する(ステップ103)。
【0016】
図3はIC1個分の第1のマスタパターンMを示す図であり、Tmは第1の位置決めマークを示す。オペレータは、表示装置8の画面に表示された図3のような映像上において、他のパターンから独立したパターンを第1の位置決めマークTmとして指定する。ホストコンピュータ7は、指定された第1の位置決めマークTmの位置を記憶する。
【0017】
次に、オペレータは、図4(a)のようにIC1個分の第1のマスタパターンM中に複数の分割領域Emを設定し、図4(b)のように分割領域Em毎に第2の位置決めマークFm(Fm1〜Fm4)を4箇所以上指定する(ステップ104)。すなわち、オペレータは、表示装置8の画面に表示された図4(b)のような映像上において、パターンと直交する仮想のラインを位置決めマークFmとして設定する。したがって、図4(b)の例では、垂直方向(Y方向)のパターンに対して水平方向(X方向)に位置決めマークFmが設定される。
【0018】
ホストコンピュータ7は、設定された各分割領域Emの位置と大きさを記憶すると共に、第2の位置決めマークFmに関する情報として、位置決めマークFmの方向、長さ及び中心座標と、位置決めマークFm上のマスタパターンMの濃淡データ(「0」又は「1」のデータ列)とを記憶する。なお、各分割領域Emの大きさは一定でなくてもよい。
【0019】
次に、ホストコンピュータ7は、第1のマスタパターンから欠損、ピンホール又は断線検出用の第2のマスタパターンと、突起、飛び散り又は短絡検出用の第3のマスタパターンとを以下のように作成する(ステップ105)。図5は第2、第3のマスタパターンの作成方法を説明するための図であり、第1のマスタパターンの一部を示している。なお、図5では、説明を簡単にするために、パターンエッジを意味する直線のみで第1のマスタパターンを表し、パターンエッジを意味する直線とその内側を意味する斜線で第2、第3のマスタパターンを表しているが、実際の第1〜第3のマスタパターンは、パターンエッジとその内側が画素「1」で塗りつぶされたものである。
【0020】
まず、図5(a)に示すように、第1のマスタパターンをその中心線と直角の方向に収縮させて、第2のマスタパターンM1を作成する。これは、第1のマスタパターンの両エッジを示す対向する直線A1とA4(中心線はL1)の間隔、及びA2とA3(中心線はL2)の間隔を狭くして第1のマスタパターンを細らせることにより作成することができる。
【0021】
この第2のマスタパターンM1による欠陥検出の精度は、第1のマスタパターンをどれだけ収縮させるかによって決まる。例えば、第1のマスタパターンの幅の1/5を超える欠損が存在するときに欠陥と認識したい場合は、第2のマスタパターンM1の幅を第1のマスタパターンの幅の3/5となるように縮小すればよい。検出精度は、画素単位や実際の寸法で決めてもよいことは言うまでもない。こうして、欠損、ピンホール又は断線検出用の第2のマスタパターンM1が作成される。
【0022】
続いて、図5(b)に示すように、第1のマスタパターンをその中心線と直角の方向に膨張させて、第3のマスタパターンM2を作成する。これは、第1のマスタパターンの両エッジを示す対向する直線A5とA8(中心線はL3)、A6とA7(中心線はL4)、A9とA12(中心線はL5)及びA10とA11(中心線はL6)の間隔をそれぞれ広くして第1のマスタパターンを太らせることにより作成することができる。ただし、実際に第3のマスタパターンM2になるのは、膨張処理した結果を論理反転した領域、すなわち直線A5〜A8からなる第1のマスタパターンMaと、直線A9〜A12からなる第1のマスタパターンMbとをそれぞれ膨張処理して生じた2つのパターンに挟まれた領域である。
【0023】
この第3のマスタパターンM2による欠陥検出の精度は、第1のマスタパターンをどれだけ膨張させるかによって決まる。例えば、第1のマスタパターンの幅の1/5を超える欠損が存在するときに欠陥と認識したい場合は、第3のマスタパターンM2の幅を第1のマスタパターンの幅の7/5となるように拡大すればよい。また、画素単位や実際の寸法で検出精度を決めてもよいことは第2のマスタパターンと同様である。こうして、突起、飛び散り又は短絡検出用の第3のマスタパターンM2が作成される。
【0024】
次に、被測定パターンの検査について説明する。供給側のリール(不図示)に巻かれているテープキャリア1は、供給側のスプロケット2と巻き取り側のスプロケット3により巻き取り側に向かって搬送され、巻き取りリール(不図示)へ巻き取られる。ラインセンサカメラ4は、搬送途中のテープキャリア1を撮像する。第1の画像処理装置5は、カメラ4から出力された濃淡画像をディジタル化して、図示しない内部の画像メモリにいったん記憶する(ステップ106)。カメラ4は、X方向に画素が配列されたラインセンサなので、図示しない搬送機構によりカメラ4をY方向に移動させることにより、2次元の画像データが画像メモリに記憶される。
【0025】
続いて、画像処理装置5は、画像メモリに記憶された被測定パターンの濃淡画像を2値化する(ステップ107)。被測定パターンの濃淡画像データには、銅箔パターンとそれ以外の背景(ベースフィルム等の基材)とが含まれているが、銅箔パターンと背景には濃度差があるので、銅箔パターンの濃度値と背景の濃度値の間の値をしきい値として設定すれば、銅箔パターンは「1」に変換され、背景は「0」に変換される。こうして、パターンエッジとその内側が画素「1」で塗りつぶされた被測定パターンを得ることができる。
【0026】
次いで、画像処理装置5は、2値化処理したIC1個分の被測定パターンとIC1個分のマスタパターンの全体の位置合わせを行う(ステップ108)。図6はこの位置合わせ方法を説明するための図である。画像処理装置5には、前述のように第1の位置決めマークTmが設定されたIC1個分の第1のマスタパターンM(図6(a))と位置決めマークTmの位置情報とがホストコンピュータ7より送られる。画像処理装置5は、画像メモリに記憶したIC1個分の被測定パターンPにおいて、第1の位置決めマークTmに対応する領域を探索することで、図6(b)のように位置決めマークTmに対応する第1の位置決めマークTpを検出する。
【0027】
そして、画像処理装置5は、被測定パターンPとマスタパターンMの各々について、X方向に並んだ2つの位置決めマーク間の距離DXp、DXmを求める。なお、マーク間距離は、2つの位置決めマークの重心間の距離である。続いて、画像処理装置5は、求めたマーク間距離から拡大/縮小率(DXp/DXm)を算出し、この拡大/縮小率によりマスタパターンのマーク間距離が被測定パターンのマーク間距離と一致するように、マスタパターンMを全方向に拡大又は縮小する。
【0028】
次いで、画像処理装置5は、拡大/縮小補正したマスタパターンM’と被測定パターンPのそれぞれについて、Y方向に並んだ2つの位置決めマーク間の距離DYm、DYpを図6(c)、図6(d)のように求める。そして、被測定パターンのマーク間距離がマスタパターンのマーク間距離と一致するように、ラインセンサカメラ4とテープキャリア1の相対速度を調整して、テープキャリア1を再度撮像する。Y方向の画像分解能は、ラインセンサカメラ4の画素の大きさと上記相対速度によって決定される。したがって、ラインセンサカメラ4の移動速度を変えることにより、Y方向の画像分解能を調整し、マーク間距離を一致させることができる。
【0029】
次に、画像処理装置5は、こうして撮像して得られた被測定パターンP’の位置決めマーク位置と拡大/縮小補正したマスタパターンM’の位置決めマーク位置により、図6(e)のようにパターンP’、M’の角度ずれθを求め、この角度ずれがなくなるようにマスタパターンM’を回転させる。最後に、画像処理装置5は、互いのマーク位置が一致するように、マスタパターンM’と被測定パターンP’の位置を合わせる。
【0030】
このように本実施の形態では、ラインセンサカメラ4の画素数によって決定されるX方向の画像分解能に対して、カメラ4の取り込み速度を変えてY方向の画像分解能を調整することにより、縦(Y)、横(X)の比率を1:1にすることができる。したがって、良品ではあっても規格に対して許容できる範囲内の伸びが存在する被測定パターンをマスタパターンに一致させることができ、形成時のパターン位置のばらつきに対して自動的にパターンの位置補正を行うことができる。
【0031】
次に、画像処理装置5は、被測定パターンとマスタパターンの分割領域ごとの位置合わせを行う(ステップ109)。図7はこの分割領域ごとの位置合わせ方法を示すフローチャート図、図8はこの位置合わせ方法を説明するための図である。ステップ109の位置合わせ処理において、画像処理装置5は、図8(a)に示すIC1個分の第1のマスタパターンMから1つの分割領域Emを切り出すと共に、この分割領域Emに対応する分割領域Epを図8(b)に示すIC1個分の被測定パターンPから切り出す(図7ステップ201)。
【0032】
続いて、画像処理装置5は、分割領域Emに設定された第2の位置決めマークFm(Fm1〜Fm4)に対応する、分割領域Ep中の第2の位置決めマークを探索する(ステップ202)。図9はこの探索方法を示すフローチャート図、図10は分割領域Epにおける第2の位置決めマークの探索範囲を示す図である。被測定パターンの分割領域Epにおいて第2の位置決めマークの探索範囲は、図10に示すように、位置決めマークFmと平行な方向については、位置決めマークFmに対応する座標位置±8画素の範囲であり、位置決めマークFmと直角の方向については、位置決めマークFmに対応する座標位置±2ラインの計5ラインの範囲である。
【0033】
ステップ202の探索処理において、画像処理装置5は、位置決めマークFmと直角の方向について探索位置座標ysの開始値を設定する(図9ステップ301)。このときの開始値は、図10に示した探索範囲中の最小値なので、位置決めマークFmに対応する座標位置−2となる。
【0034】
さらに、画像処理装置5は、位置決めマークFmと平行な方向について探索位置座標xsの開始値を設定する(ステップ302)。このときの開始値は、位置決めマークFmに対応する座標位置(マークFmの中心座標)−8となる。次に、画像処理装置5は、位置決めマークFm上のマスタパターンの濃淡データと前記探索位置における被測定パターンの濃淡データとの正規化相関値COR(xs)を次式によって算出する(ステップ303)。
【0035】
【数1】
【0036】
式(1)において、masterlengthは位置決めマークFmの長さ、master(i)は位置決めマークFm上のマスタパターンの濃淡データ(iは1,2,3,・・・・masterlength)、gray(i+xs)はマークFmと直角方向の座標が探索位置座標ysで、マークFmと平行方向の座標がi+xsの点における被測定パターンの濃淡データである。
【0037】
ステップ301,302により、現在の探索位置座標xs,ysは、共に開始値である。相関値COR(xs)を算出した後、画像処理装置5は、位置決めマークFmと平行方向の探索位置座標xsが終了値に達したか否かを判定する(ステップ304)。このときの終了値は、図10に示した探索範囲中の最大値なので、位置決めマークFmに対応する座標位置(マークFmの中心座標)+8となる。
【0038】
画像処理装置5は、探索位置座標xsが終了値に達していない場合、探索位置座標xsを1増やし(ステップ305)、再び相関値COR(xs)を算出する(ステップ303)。このような相関値COR(xs)の算出が探索位置座標xsの終了値に達するまで繰り返される。探索位置座標xsが終了値に達した後、画像処理装置5は、算出した相関値COR(xs)のうち最大の相関値COR(xsm)と、xsm±1画素の相関値COR(xsm−1),COR(xsm+1)とから、相関値COR(xs)が極大値をとる位置(以下、ピーク位置と呼ぶ)を画素以下の精度で算出する(ステップ306)。
【0039】
図11は相関値COR(xs)のピーク位置の算出方法を説明するための図である。本実施の形態では、相関値COR(xsm),COR(xsm−1),COR(xsm+1)が2次式にのっているものとする。これにより、次式が成立する。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
【数4】
【0043】
式(2)、式(3)、式(4)より、係数a,b,cは次式のように求めることができる。
【0044】
【数5】
【0045】
【数6】
【0046】
【数7】
【0047】
一方、ax2 +bx+cをxで微分した傾きが0になる点がピーク位置なので、次式が成立する。
【0048】
【数8】
【0049】
式(5)〜式(8)より、ピーク位置のX座標xは次式のように求めることができる。
【0050】
【数9】
【0051】
こうして、式(9)により、ピーク位置のX座標xを画素以下の精度で求めることができる。次に、画像処理装置5は、位置決めマークFmの中心座標とピーク位置のX座標xとのずれ量、すなわちマークFmの中心座標からピーク位置のX座標xを引いた、マークFmと平行方向のずれ量の絶対値が6画素以上であるか否かを判定する(ステップ307)。さらに、画像処理装置5は、相関値COR(xs)の極大値(ピーク位置xにおける相関値)が0.5以下であるか否かを判定する(ステップ308)。
【0052】
画像処理装置5は、位置決めマークFmと平行方向のずれ量の絶対値が6画素以上である場合、若しくは相関値COR(xs)の極大値が0.5以下である場合、探索位置座標ysの現在の探索ラインを、第2の位置決めマークを検出することができなかったラインとする(ステップ309)。検出することができなかったラインとするのは、ずれ量の絶対値が6画素以上の場合、位置決めマークFmに対応していない別の位置を探索している可能性が高く、相関値COR(xs)の極大値が0.5以下の場合、位置決めマークFmとの相関性が不十分なことが理由である。
【0053】
次に、画像処理装置5は、探索位置座標ysが終了値に達したか否かを判定する(ステップ310)。このときの終了値は、図10に示した探索範囲中の最大値なので、位置決めマークFmに対応する座標位置+2となる。画像処理装置5は、探索位置座標ysが終了値に達していない場合、探索位置座標ysを1増やし(ステップ311)、ステップ302〜309の処理を再び行う。このようなピーク位置の算出が探索位置座標ysの終了値に達するまで繰り返される。
【0054】
探索位置座標ysが終了値に達した後、画像処理装置5は、第2の位置決めマークFmに対応する、分割領域Ep中の第2の位置決めマークFpの座標を算出する(ステップ312)。この位置決めマークFpのマークFmと直角方向の座標については、マークFmの中心座標をそのまま用いる。また、画像処理装置5は、前記探索範囲のうち前記ずれ量が最大のラインと最小のラインを除いた、マークFmと平行方向の3ラインよりピーク位置のX座標xの平均値を求め、この平均値を位置決めマークFpのマークFmと平行方向の座標とする。このような座標の算出方法により、後述する座標変換式による位置補正は、マークFmと平行な方向についてのみ行われる。なお、ステップ309の処理により未検出のラインが存在する場合には、3ライン分の平均値を求めることができないので、位置決めマークFpを検出することができなかったと判断する。
【0055】
以上のようなステップ202(301〜312)の処理が分割領域Emに設定された全ての第2の位置決めマークFm(Fm1〜Fm4)に対して行われる。なお、本実施の形態では、X軸と平行な位置決めマークFmについてのみ説明しているが、位置決めマークFmがY軸と平行な場合についても同様である。ただし、マークFmがY軸と平行な場合は、ステップ202に関する前述の説明において、探索位置座標xsとysが入れ替わり、ピーク位置の座標xがyとなり、xsmがysmとなる。
【0056】
こうして、図8(c)に示すようにマスタパターンMの分割領域Emにおいて予め設定された位置決めマークFm(Fm1〜Fm4)に対して、これらに対応する位置決めマークFp(Fp1〜Fp4)を被測定パターンPの対応分割領域Epにおいて図8(d)のように求めることができる。
【0057】
次に、画像処理装置5は、位置決めマークFm1〜Fm4の座標とこれに対応する位置決めマークFp1〜Fp4の座標により、被測定パターンとマスタパターンの間の次式のような座標変換式を最小2乗法によって求める(図7ステップ203)。
Xm=αXp+βYp+γ
Ym=δXp+εYp+ζ ・・・(10)
【0058】
式(10)において、Xm,YmはマスタパターンのX,Y座標、Xp,Ypは被測定パターンのX,Y座標、α,β,γ,δ,ε,ζは定数である。
次に、画像処理装置5は、位置決めマークFp1〜Fp4のうちの任意の位置決めマーク、例えばマークFp1の座標をXp,Ypとして式(10)の座標変換式に代入し、座標Xm,Ymを算出する。そして、座標変換式に代入した位置決めマークFp1に対応する位置決めマークFm1の座標と算出した座標Xm,Ymとの偏差をX,Y座標ごとに求める。このような偏差の計算を位置決めマーク毎に行う(ステップ204)。
【0059】
続いて、画像処理装置5は、算出した各偏差が所定のしきい値より大きいか否かを判定し(ステップ205)、全ての偏差が所定のしきい値以下の場合、被測定パターンの分割領域Epの歪みが許容範囲内で、かつ導出した座標変換式が適正であると判断し、この座標変換式を用いて分割領域Em内のマスタパターンの座標変換を行う(ステップ206)。
【0060】
また、画像処理装置5は、全ての偏差が所定のしきい値より大きい場合、被測定パターンの分割領域Epの歪みが許容範囲外であり、検査対象のテープキャリア1が不良であると判断する(ステップ207)。一方、画像処理装置5は、しきい値以下の偏差としきい値より大きい偏差が混在する場合、偏差がしきい値より大となる位置決めマーク、例えばマークFp4とこれに対応する位置決めマークFm4を除外した上で(ステップ208)、残りの位置決めマークFm1〜Fm3,Fp1〜Fp3の座標により、式(10)の座標変換式を再び求める(ステップ203)。
【0061】
以上のようなステップ203〜205,207,208の処理を各偏差が所定のしきい値以下となるまで繰り返す。こうして、式(10)の座標変換式を決定し、ステップ206のマスタパターンの変換を行うことができる。式(10)のような座標変換式を用いることは、いわゆるアフィン変換(affine transformation )を行うことを意味し、これにより分割領域Emと分割領域Epの位置ずれを補正することができる。なお、第2、第3のマスタパターンは第1のマスタパターンから作成されたものなので、第1〜第3のマスタパターンと被測定パターンとの位置合わせは第1のマスタパターンを用いて1回行えばよい。
【0062】
また、式(10)の座標変換式を求めるには、マスタパターン及び被測定パターン共に最低3点ずつの第2の位置決めマークが必要である。しかし、3点ずつでは座標変換式の精度が悪くなるため、最低4点ずつの第2の位置決めマークを指定して、偏差がしきい値より大となる第2の位置決めマークを座標変換式の導出から除外するようにしている。したがって、マスタパターン及び被測定パターン共に第2の位置決めマークが3点ずつとなっても、各偏差がしきい値以下とならない場合には、第2の位置決めマークを2点ずつにして座標変換式を求めることはできないので、この場合も検査対象のテープキャリア1が不良であると判断する。
【0063】
ステップ109の位置合わせ処理が終了した後、画像処理装置5は、被測定パターンの分割領域とこれに対応する第2、第3のマスタパターン及び後述する第4、第5のマスタパターンの各分割領域とを比較して、被測定パターンの一次検査を行う(ステップ110〜113)。ステップ110〜113の検査は、画像処理装置5のハードウェアによって同時に実施される。
【0064】
まず、第2のマスタパターンM1との比較による検査(ステップ110)について説明する。図12はこの検査方法を説明するための図である。なお、図12の例では、梨地で示すパターンNPを除いた部分が被測定パターンPである。画像処理装置5は、図12に示すように、被測定パターンPの分割領域Epと第2のマスタパターンM1の上記座標変換式によって位置補正がなされた対応分割領域Emとを比較する。ただし、実際に比較するのは、被測定パターンPを論理反転したパターンNPと第2のマスタパターンM1である。
【0065】
パターンNPと第2のマスタパターンM1との論理積をとると、この論理積の結果は、被測定パターンPに欠損や断線があるか否かによって異なる。例えば、被測定パターンPがその値として「1」を有し、同様にマスタパターンM1が「1」を有するとき、被測定パターンPに欠損や断線がない場合は、パターンNPとマスタパターンM1が重なることがないので、この論理積の結果は「0」となる。
【0066】
これに対して、図12のように被測定パターンPに欠損Cがあると、この部分でパターンNPとマスタパターンM1が重なるので、論理積の結果が「1」となる。これは、被測定パターンにピンホールHや断線がある場合も同様である。こうして、被測定パターンの欠損、ピンホールあるいは断線を検出することができる。そして、画像処理装置5は、論理積の結果が「1」となって欠陥候補と認識した位置(図12では、C,Hの位置)を記憶する。
【0067】
次に、第3のマスタパターンM2との比較による検査(ステップ111)について説明する。図13はこの検査方法を説明するための図である。画像処理装置5は、図13に示すように、被測定パターンPの分割領域Epと第3のマスタパターンM2の上記座標変換式によって位置補正がなされた対応分割領域Emとを比較する。上記と同様に、被測定パターンPa、Pbと第3のマスタパターンM2の論理積をとると、この論理積の結果は、被測定パターンPa、Pbに突起や短絡があるか否かによって異なる。つまり、被測定パターンPa、Pbに突起や短絡がない場合は、論理積の結果は「0」となる。
【0068】
これに対し、図13のように被測定パターンPaに突起Kがあると、この部分で被測定パターンPaとマスタパターンM2が重なるので、論理積の結果が「1」となる。同様に、被測定パターンPa、Pb間に短絡Sが存在すると、論理積の結果が「1」となる。これは、被測定パターンに飛び散りが存在する場合も同様である。こうして、被測定パターンの突起、飛び散りあるいは短絡を検出することができる。そして、画像処理装置5は、論理積の結果が「1」となって欠陥候補と認識した位置(図13では、K,Sの位置)を記憶する。
【0069】
次に、第4のマスタパターンとの比較による検査(ステップ112)について説明する。図14はこの検査方法を説明するための図である。図14(a)に示す被測定パターンPにおいて、第2のマスタパターンM1に対応する領域と第3のマスタパターンM2に対応する領域との間に飛び散りFが存在するとき、上記の検査では飛び散りFを検出できない。第4のマスタパターンは、このような飛び散りFを検出するためのものである。
【0070】
画像処理装置5は、第2のマスタパターンM1をその中心線Lと直角の方向に膨張させる(図14(b))。このとき、画像処理装置5は、マスタパターンM1を所定の画素分膨張させる。続いて、画像処理装置5は、マスタパターンM1を膨張させた結果と被測定パターンPとの論理積をとる。この場合、膨張処理後のマスタパターンM1と対応する領域(図14(b)においてパターンM1と重なっている領域)の被測定パターンPの画素が全て「1」なので、膨張処理後のマスタパターンM1と対応する領域における論理積の結果が全て「1」となる。したがって、この論理積の結果は、膨張処理後のマスタパターンM1と同一であり、これを第4のマスタパターンM3とする(図14(c))。
【0071】
続いて、画像処理装置5は、第4のマスタパターンM3をその中心線Lと直角の方向に膨張させる(図14(d))。このとき、画像処理装置5は、マスタパターンM3を所定の画素分膨張させる。そして、画像処理装置5は、マスタパターンM3を膨張させた結果と被測定パターンPとの論理積をとる。この場合、膨張処理後のマスタパターンM3と対応する領域(図14(d)においてマスタパターンM3と重なっている領域)の被測定パターンPの画素が全て「1」なので、膨張処理後のマスタパターンM3と対応する領域における論理積の結果が全て「1」となる。したがって、この論理積の結果は、膨張処理後のマスタパターンM3と同一であり、これを新たな第4のマスタパターンM3とする(図14(e))。
【0072】
このような膨張処理と論理積処理が繰り返されると、第4のマスタパターンM3の大きさが被測定パターンPの大きさに近づき、ついには、図14(f)、図14(g)に示すように被測定パターンPと同一となる(ただし、被測定パターンPに飛び散りFが存在する場合は、完全な同一とはならない)。そして、これ以降に同様の処理が繰り返されても、第4のマスタパターンM3が被測定パターンPより大きくなることはない。
【0073】
その理由は、被測定パターンPのエッジより外側の画素が「0」のため、図14(g)のマスタパターンM3を膨張させて被測定パターンPと論理積をとっても、被測定パターンPのエッジより外側の論理積の結果が「1」になることはないからである。なお、被測定パターンPには飛び散りFが存在するが、飛び散りFは被測定パターンPとつながっていないので、第4のマスタパターンM3に飛び散りFによる画素「1」が現れることはない。
【0074】
次いで、画像処理装置5は、最終的な第4のマスタパターンM3と被測定パターンPとの排他的論理和をとる。この排他的論理和の結果は、被測定パターンPに飛び散りがあるか否かによって異なる。被測定パターンPに飛び散りがない場合は、被測定パターンPとマスタパターンM3が同一なので、排他的論理和の結果が全て「0」となる。
【0075】
これに対し、被測定パターンPに飛び散りが存在する場合は、被測定パターンPとマスタパターンM3に相違があり、排他的論理和の結果が「1」となる画素が存在することになる。こうして、第2、第3のマスタパターンM1,M2と対応しない領域に存在する飛び散りを検出することができる。そして、画像処理装置5は排他的論理和の結果が「1」となって欠陥と認識した位置(図14ではFの位置)を記憶する。
【0076】
次に、第5のマスタパターンとの比較による検査(ステップ113)について説明する。図15はこの検査方法を説明するための図である。図15(a)に示す被測定パターンPにおいて、第2のマスタパターンM1に対応する領域と第3のマスタパターンM2に対応する領域との間にピンホールHが存在するとき、上記の検査ではピンホールHを検出できない。第5のマスタパターンは、このようなピンホールHを検出するためのものである。
【0077】
まず、画像処理装置5は、第3のマスタパターンM2を論理反転させる。これにより、画素「1」が「0」となり画素「0」が「1」となるので、マスタパターンM2を論理反転させた結果は、パターンエッジとその内側が画素「1」で塗りつぶされた図15(b)のようなパターンM4となる。
【0078】
続いて、画像処理装置5は、パターンM4をその中心線Lと直角の方向に収縮させる(図15(c))。このとき、画像処理装置5は、パターンM4を所定の画素分収縮させる。そして、画像処理装置5は、パターンM4を収縮させた結果と被測定パターンPとの論理和をとる。この論理和の結果は、収縮処理後のパターンM4と同一であり、これを第5のマスタパターンM5とする(図15(d))。
【0079】
次に、画像処理装置5は、この第5のマスタパターンM5をその中心線Lと直角の方向に収縮させる(図15(e))。このとき、画像処理装置5は、マスタパターンM5を所定の画素分収縮させる。そして、画像処理装置5は、マスタパターンM5を収縮させた結果と被測定パターンPとの論理和をとる。この論理和の結果は、収縮処理後のマスタパターンM5と同一であり、これを新たな第5のマスタパターンM5とする(図15(f))。
【0080】
このような収縮処理及び論理和処理が繰り返されると、第5のマスタパターンM5の大きさが被測定パターンPの大きさに近づき、ついには、図15(g)に示すように被測定パターンPと同一となる(ただし、被測定パターンPにピンホールHが存在する場合は、完全な同一とはならない)。そして、これ以降に同様の処理が繰り返されても、第5のマスタパターンM5が被測定パターンPより小さくなることはない。
【0081】
その理由は、被測定パターンPが画素「1」で塗りつぶされているため、図15(g)のマスタパターンM5を収縮させて被測定パターンPと論理和をとっても、被測定パターンPのエッジより内側の論理和の結果が「0」になることはないからである。なお、被測定パターンPにはピンホールHが存在するが、ピンホールHは被測定パターンPのエッジとつながっていないので、第5のマスタパターンM5にピンホールHによる画素「0」が現れることはない。
【0082】
次いで、画像処理装置5は、最終的な第5のマスタパターンM5と被測定パターンPの排他的論理和をとる。この排他的論理和の結果は、被測定パターンPにピンホールHがあるか否かによって異なる。被測定パターンPにピンホールがない場合は、被測定パターンPとマスタパターンM5が同一なので、排他的論理和の結果が全て「0」となる。
【0083】
これに対し、被測定パターンPにピンホールHが存在する場合は、被測定パターンPとマスタパターンM5に相違があり、排他的論理和の結果が「1」となる画素が存在することになる。こうして、第2、第3のマスタパターンM1,M2と対応しない領域に存在するピンホールHを検出することができる。そして、画像処理装置5は、排他的論理和の結果が「1」となって欠陥と認識した位置(図15ではHの位置)を記憶する。
【0084】
以上のような一次検査を行った後、画像処理装置5は、記憶した欠陥候補の位置をアドレス情報として出力する。
第2の画像処理装置6は、第1の画像処理装置5によって欠陥候補が検出された場合(ステップ114においてYES)、上記アドレス情報が示す位置の欠陥候補を中心とする、分割領域より小さい所定の大きさの領域について、被測定パターンと第1のマスタパターンとを比較して誤差を求めることにより、被測定パターンの二次検査を行う(ステップ115)。この検査の方法は、前述した図16〜図19の従来の方法と同様である。
【0085】
以上のようなステップ109〜115の処理を未検査の分割領域がなくなるまで(ステップ116)、分割領域ごとに行う。なお、第2の位置決めマークFmは、マスタパターンの全ての分割領域に設定しなくてもよい。例えば、第1の位置決めマークTmに近い周辺部では、マスタパターンと被測定パターンの位置ずれが小さいので、分割領域ごとの位置合わせを省略してもよい。すなわち、画像処理装置5は、第2の位置決めマークFmが設定されていないマスタパターンの分割領域Emに対応する、被測定パターンの分割領域Epについては分割領域ごとの位置合わせを省略する。
【0086】
第2〜第5のマスタパターンの各々と被測定パターンとの比較検査は、ハードウェアで実現でき、検出した欠陥候補を含む所定の領域だけ、処理時間のかかる被測定パターンと第1のマスタパターンの比較によって検査するので、被測定パターンを従来よりも高速に検査することができる。
【0087】
また、テープキャリア1に局所的な歪みが存在する場合、従来のパターン検査方法では、局所的なマスタパターンとのずれが発生し、このずれが欠陥候補として検出されるため、テープキャリア1の局所的な歪みが許容範囲内であったとしても、二次検査を実施することになり、検査時間が低下してしまう。これに対して本実施の形態では、テープキャリア1の局所的な歪みが許容範囲内(つまり、前記偏差がしきい値以下)であれば、座標変換式による分割領域ごとの位置合わせによってテープキャリア1の局所的な歪みを吸収するので、この歪みが欠陥候補として検出されることがなくなる。
【0088】
なお、図8(a)、図8(b)では各分割領域の重なりが存在しないが、実際の各分割領域は左右上下が他の分割領域と重なるように設定される。これにより、各分割領域の境界の部分の歪みが許容範囲内か否かを隣り合う複数の分割領域の偏差によって判断することができ、各分割領域のつながり具合を検査することができる。また、本実施の形態では、1つの分割領域の検査が終了した後に、次の分割領域の検査を行っているが、複数の分割領域を並行して検査すれば、更に高速な検査ができることは言うまでもない。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、マスタパターンと被測定パターンの全体の位置合わせを行った後に、マスタパターン中に複数の分割領域を設定し、パターンと直交する少なくとも4本の仮想のラインを第2の位置決めマークとして設定することを分割領域毎に行い、マスタパターンの分割領域に対応する被測定パターンの分割領域を抽出して、第2の位置決めマークに対応する位置を中心とする所定の範囲についてマスタパターンとの相関値を算出し、最も相関値が高いピーク位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なし、被測定パターンとマスタパターンの互いの第2の位置決めマークの位置を合わせることにより、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを分割領域毎に行うことができる。その結果、局所的な歪みが発生しやすく、かつ位置決めマークとなり得るような独立したパターンが存在しないテープキャリア等の検査ワークであっても、局所的な位置合わせをして、検査ワークの局所的な歪みを吸収し、マスタパターンの分割領域と被測定パターンの分割領域の微妙な位置ずれを補正することができるので、正常な検査を行うことができる。また、検査ワークの局所的な歪みが許容範囲内であれば、この歪みが欠陥候補として検出されることがなくなり、歪みに起因する二次検査が実施されることがなくなるので、検査時間を短縮することができる。
【0090】
また、マスタパターンの第2の位置決めマークと平行な各ライン毎にピーク位置を求めた後、ピーク位置とマスタパターンの第2の位置決めマークとのずれ量を求め、ずれ量が最大のラインと最小のラインを除いた残りのラインよりピーク位置の平均値を求め、この平均位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なすことにより、被測定パターンの第2の位置決めマークの位置を高い精度で求めることができる。
【0091】
また、マスタパターンの分割領域とこれに対応する被測定パターンの分割領域において各々の第2の位置決めマークの座標より被測定パターンとマスタパターンの間の座標変換式を決定し、マスタパターンの分割領域を座標変換式によって変換することにより、マスタパターンと被測定パターンとの分割領域毎の位置合わせを実現することができる。
【0092】
また、座標変換式に被測定パターンの第2の位置決めマークの座標を入力した結果とマスタパターンの対応位置決めマークの座標との偏差をマークごとに求め、この偏差が所定のしきい値より大きい第2の位置決めマークを被測定パターンとマスタパターンの双方から除外して座標変換式を再び求めることを全ての偏差が所定のしきい値以下となるまで繰り返して、座標変換式を決定することにより、座標変換式の精度を上げることができ、高精度な位置あわせを行うことができる。また、全ての偏差が所定のしきい値より大きい場合は、被測定パターンの分割領域の歪みが許容範囲外であり、検査ワークが不良であると判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す位置合わせ方法を用いるパターン検査方法のフローチャート図である。
【図2】 パターン検査装置のブロック図である。
【図3】 IC1個分の第1のマスタパターン及び第1の位置決めマークを示す図である。
【図4】 第1のマスタパターンの分割領域及び分割領域毎の第2の位置決めマークを示す図である。
【図5】 第2、第3のマスタパターンの作成方法を説明するための図である。
【図6】 被測定パターンとマスタパターンの全体の位置合わせ方法を説明するための図である。
【図7】 被測定パターンとマスタパターンの分割領域ごとの位置合わせ方法を示すフローチャート図である。
【図8】 被測定パターンとマスタパターンの分割領域ごとの位置合わせ方法を説明するための図である。
【図9】 第2の位置決めマークの探索方法を示すフローチャート図である。
【図10】 被測定パターンにおける第2の位置決めマークの探索範囲を示す図である。
【図11】 相関値のピーク位置の算出方法を説明するための図である。
【図12】 第2のマスタパターンとの比較による検査方法を説明するための図である。
【図13】 第3のマスタパターンとの比較による検査方法を説明するための図である。
【図14】 第4のマスタパターンとの比較による検査方法を説明するための図である。
【図15】 第5のマスタパターンとの比較による検査方法を説明するための図である。
【図16】 断線を検出する従来の検査方法を説明するための図である。
【図17】 断線を検出する従来の検査方法を説明するための図である。
【図18】 短絡を検出する従来の検査方法を説明するための図である。
【図19】 欠損あるいは突起を検出する従来の検査方法を説明するための図である。
【図20】 従来の位置合わせ方法における問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1…テープキャリア、2、3…スプロケット、4…ラインセンサカメラ、5…第1の画像処理装置、6…第2の画像処理装置、7…ホストコンピュータ、8…表示装置。
Claims (4)
- 基準となるマスタパターンの画像とカメラで撮像した被測定パターンの画像とを比較することにより被測定パターンを検査するパターン検査方法において、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
被測定パターンとマスタパターンの全領域について互いの第1の位置決めマークの位置を合わせることによりマスタパターンと被測定パターンの全体の位置合わせを行った後に、
マスタパターン中に複数の分割領域を設定し、パターンと直交する少なくとも4本の仮想のラインを第2の位置決めマークとして設定することを分割領域毎に行い、
マスタパターンの分割領域に対応する被測定パターンの分割領域を抽出して、前記第2の位置決めマークに対応する位置を中心とする所定の範囲についてマスタパターンとの相関値を算出し、最も相関値が高いピーク位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なし、被測定パターンとマスタパターンの互いの第2の位置決めマークの位置を合わせることにより、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを分割領域毎に行うことを特徴とするパターンの位置合わせ方法。 - 請求項1記載のパターンの位置合わせ方法において、
前記所定の範囲内においてマスタパターンの第2の位置決めマークと平行な各ライン毎に前記ピーク位置を求めた後、このピーク位置とマスタパターンの第2の位置決めマークとのずれ量を求め、このずれ量が最大のラインと最小のラインを除いた残りのラインより前記ピーク位置の平均値を求め、この平均位置を被測定パターンの第2の位置決めマークと見なすことを特徴とするパターンの位置合わせ方法。 - 請求項1記載のパターンの位置合わせ方法において、
マスタパターンの分割領域とこれに対応する被測定パターンの分割領域において各々の第2の位置決めマークの座標より被測定パターンとマスタパターンの間の座標変換式を決定し、マスタパターンの分割領域を座標変換式によって変換することにより、マスタパターンと被測定パターンの位置合わせを分割領域毎に行うことを特徴とするパターンの位置合わせ方法。 - 請求項3記載のパターンの位置合わせ方法において、
前記座標変換式に被測定パターンの第2の位置決めマークの座標を入力した結果とマスタパターンの対応位置決めマークの座標との偏差をマークごとに求め、この偏差が所定のしきい値より大きい第2の位置決めマークを被測定パターンとマスタパターンの双方から除外して座標変換式を再び求めることを全ての偏差が所定のしきい値以下となるまで繰り返すことにより、前記座標変換式を決定することを特徴とするパターンの位置合わせ方法。
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