JP3694035B2 - 移動体通信端末 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動体通信又は移動体衛星通信において、利用者が無線通信を行うために使用する移動体通信端末に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、移動体通信においては、移動体通信端末は無線通信により基地局と通信を行い、移動体衛星通信においては、衛星を介して基地局と通信を行っている。この無線通信では、通信する内容に応じて各種の通信モードを設定しており、例えば通信を待受けている状態での待受けモード、回線交換型通信モード、パケット通信モード等がある。
【0003】
第6図は、移動体通信端末で行われる各種の通信モードを示している。これらの通信モードに対応して各種のデジタル信号についての複雑な演算処理を伴う信号処理を高速で行う必要があるが、そのような処理を行う手段としては、通常、DSP(Digital Signal Proccessor、デジタル信号処理プロセッサ)が用いられている。
【0004】
第7図は、通信サービスの各種モードにおいて移動体通信端末のDSPを動作させるために必要とされるDSPのクロック周波数を示している。各通信モードにおけるDSPで処理するデータ量や演算処理の内容が異なるため、各通信モードにおいて必要とされるDSPのクロック周波数はそれぞれ異なる値となる。第7図のa値に示すように、一般的には待受けモードにおけるDSPクロック周波数の必要値が最も低い。第7図には、この待受けモードの他、高速データ通信モード及び音声通信モードにおけるDSPクロック周波数の必要値b及びcを、説明の便宜上、a値、b値、c値の順にクロック値が高くなるように示している。そして、従来の移動体通信端末においては、DSPクロック周波数を通信サービスが対象とする全てのモードに対応する最大のクロック周波数をc値に固定していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の移動体通信端末においては、DSPクロックを通信サービスが対象とする全てのモードに対応する最大のクロック周波数に固定しているので、DSPの消費電力は通信サービスのモードに関係なく一定となり、かつ値として大きい。一方、各通信モードにおいて必要なDSPクロック周波数は、例えば第7図に示したように待受けモード時には最小値aでよく、高速データ通信モードや音声通信モードなどの各モードにおいて部分的に高い値(b値、c値)のクロックが設定されればよい。このクロック周波数の値により、DSP内部の消費電力は増減するので、DSPの消費電力のうち第7図に示す網掛を施した部分に相当する電力が無駄に消費されていることになる。したがって、待受けモードの時間が他の通信モードの時間に比して十分に長いことを考慮すると、電力がDSPで浪費される割合、すなわちDSP消費電力の浪費率は、
(DSP消費電力の浪費率)=(1−a/c)×100(%)
となり、この値は相当大きなものとなる。
【0006】
本発明は、各種通信モードにより無線通信を行う移動体通信端末において、DSPの消費電力を低減することができる移動体通信端末を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る移動体通信端末は、通信モードに応じて通信信号の信号処理を行うDSPと、このDSPに通信モードを指令するCPUと、上記DSPへクロック信号を供給するクロック生成器とを備えた移動体通信端末において、上記通信モードに応じた上記DSPからの周波数変更要求に基づいて上記クロック生成器は上記DSPへ供給するクロック信号の周波数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0008】
また、上記クロック生成器は、位相同期ループを備え、この位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0009】
また、通信モードに応じて通信信号の信号処理を行うDSPと、このDSPに通信モードを指令するCPUと、上記DSPへクロック信号を供給するクロック生成器とを備えた移動体通信端末において、上記DSPは位相同期ループを備え、この位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更して、上記クロック生成器からのクロック信号の周波数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0010】
また、上記DSPは、上記CPUから供給される信号処理のフレーム信号のタイミングに基づいて、上記位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができ、さらにクロック信号の周波数の設定変更において通信信号のデータの一部を欠落することがない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明をより詳細に説明するために、添付の図面に従ってこれを説明する。第1図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のブロック図である。第1図において、1は本発明の移動体通信端末であり、2は低速データ通信モード、高速データ通信モード、パケット通信モード等のデータ通信を行う際に使用するデータ端末である。3は基地局や衛星局と無線通信を行うためのアンテナ、4は送受信機である。5はマイクロホン、6はスピーカであり、7は音声信号をコード化し、及びデコードする音声コーデックである。8aはデータ端末2と移動体通信端末1を接続するための接続端子であり、8bはデータ端末2側の接続端子である。9はデータ端末2と移動体通信端末1との間で通信データ及び制御信号を送受するためのデータ通信インタフェースである。10は各種通信モードに応じてデジタル信号処理を行うDSPである。DSP10は主に位相変復調、振幅変復調、位相・振幅変復調等を行う機能を有しており、さらに音声コーデック7の機能を内蔵していてもよい。11はDSP10へ通信信号のフレーム信号を出力するとともに、通信モードを指令する制御器(以下「CPU」と呼ぶ)である。CPU11は、さらにデータ通信インタフェース9から制御信号を受け取って、DSP10の動作タイミングや信号処理内容を設定している。なお、第1図には図示していないが、移動体通信端末1のキーI/Fからのキー操作による音声通信の開始や終了等も、CPU11において制御されている。12はDSP10が必要とする周波数の異なる複数のクロック信号を生成するクロック生成器であり、第1図は位相同期ループ(第1図中にPLLと示した)13を有する場合を示している。また、第2図は、移動体通信端末1におけるCPU11の制御アルゴリズムを示している。
【0012】
次に第1図に示す移動体通信端末1の動作について、第2図のアルゴリズムに従って説明する。第2図のステップS1で移動体通信端末1の電源が投入された後、移動体通信端末1と基地局又は衛星局との間で初期の位置登録を行うための送受信を行い、位置登録が終了するとS2でDSP10へ供給されるクロック周波数が待受けモードに必要な最小のクロック周波数に設定され、S3で移動体通信端末1は待受け状態となる。その後、S4において、CPU11は利用者のキー操作、基地局又は衛星局からの着呼要求、データ端末2からのデータ通信要求等を監視している。このCPU11は監視した状況に合わせて移動体通信端末1の通信モードを設定し、DSP10へはその通信モードによる通信信号の信号処理を指令する。CPU11は、音声通信モードへの移行にあたり、移動体通信端末1の利用者のキー操作による発呼要求、あるいはアンテナ3及び送受信機4にて受信した基地局又は衛星局からの着呼要求に対する利用者の応答があるかどうかを監視している。これらの要求や応答があれば、CPU11はDSP10に対して音声通信モードであることを指令し、S5でDSP10へ供給されるクロック周波数が音声通信モードに必要な最小のクロック周波数に設定され、CPU11はこの音声通信の送受信信号の信号処理に必要なフレーム信号をDSP10へ送出して、S6の通信モードへ移行する。またCPU11は、データ通信モードやパケット通信モードへの移行にあたり、接続端子8a及び8bにより接続したデータ端末2からの制御信号による送信要求、あるいはアンテナ3及び送受信機4にて受信した基地局又は衛星局からのデータ通信やパケット通信要求に対する利用者の応答又はデータ端末2の応答があるかどうかを監視している。これらの要求や応答があれば、CPU11はDSP10に対してデータ通信モード又はパケット通信モードであることを指令し、S5でDSP10へ供給されるクロック周波数がデータ通信モードやパケット通信モードそれぞれに必要な最小のクロック周波数に設定され、CPU11はこれらのデータ通信又はパケット通信の送受信信号の信号処理に必要なフレーム信号をDSP10に送出して、S6の通信モードへ移行する。通信開始後、S7でCPU11は利用者のキー操作による終話要求、基地局又は衛星局からの終話要求、データ端末2からの終話要求を監視し、これらがあったときに、通信を終了し、S2へ移行する。
【0013】
第2図のアルゴリズム中のS2及びS5において、DSP10への供給クロックを各種通信モードに応じて、その通信モードにおける信号処理に必要な最小のクロック周波数の設定を変更する。第3図はここで設定する信号処理に必要な最小のクロック周波数に関する線図である。第3図に示すようにDSP10に供給されるクロック信号の周波数は、待受けモードにおいて最小値を設定し、音声通信モードや高速データ通信モードでは部分的にそれぞれ極大値を設定する。実際に設定されるクロックは、待受け時のクロック信号を基準クロックとし、各通信モードで必要な周波数のクロック信号より高めに設定される。クロック周波数の変更において通常使用する位相同期ループの逓倍数が数段階であるために必要とされるクロック周波数と実際に設定されるクロック周波数とは必ずしも一致しない。この場合、各モードのクロック周波数は本来必要な値より幾分周波数が高くなるように分周数を設定することになる。例えば音声通信モード時に必要とされるクロック周波数cに対して、実際に設定されるクロック周波数c’はcよりも高めに設定する。待受けモードにおいては、従来技術ではDSP10へクロック周波数としてc値を供給していたが、本発明ではDSP10へ供給されるクロック周波数はaの値を設定するので、消費電力が小さくなる。また、待受けモードの時間が他の通信モードの時間に比べて十分長いことを考慮すると、DSPで浪費される消費電力はほとんど無視できる程に小さくなり、従来の移動体通信端末において浪費されていたDSPの消費電力を大幅に削減することができる。
【0014】
DSP10へ供給されるクロック周波数の設定の変更は、DSP10からクロック生成器12への指示により行う。DSP10は、CPU11から通信モード指令を受け取っており、この指令をもとにクロック生成器12へクロック信号の周波数の変更を指示する。CPU11からの基本コマンドであるモード指令に基づき、その後は周辺回路であるDSP10が独立してクロック周波数の設定変更やその他信号処理設定等の詳細な制御を行うので、CPU11の機能やCPU11とDSP10の間のI/Fを複雑にしない。なお、CPU11からDSP10への信号には、上記のモード指令の他、フレーム信号がある。移動体通信端末1における各種通信モードでは、通信される信号をフレーム単位で扱っている。第4図に示すように通信信号の各フレームは、例えば同期信号部とデータ部により構成されており、CPU11からのフレーム信号のタイミングによりDSP10は通信信号の信号処理を行う。このフレーム信号の開始位置、終了位置において、クロック周波数の設定変更を行えば、例えば最終フレーム途中でクロック周波数が設定変更されて通信データの一部が欠落するようなことがなくなる。
【0015】
クロック生成器12におけるクロック周波数の設定変更には、もちろん複数の異なる水晶発振器を配置してこれらを切替えてもよいが、通常は特定の周波数で発振する水晶発振器からのクロックを位相同期して分周する位相同期ループを用いる。位相同期ループ13内の分周器に設定する分周数を設定変更することにより、クロック生成器12からDSP10へのクロック周波数を変更することができる。
【0016】
なお、DSP10はクロック生成器12を内蔵していてもよい。
【0017】
次に本発明の他の実施の形態に係る移動体通信端末について、第5図を用いて説明する。第5図において、位相同期ループ13はDSP10の内部に組み込まれている。位相同期ループ13へのDSP10からのクロック周波数設定変更の指示はDSP内部において完結する。第5図には位相同期ループ13に対して、外部からクロック生成器12がクロックを供給する構成となっているが、このクロック生成器12もDSP10内部に配置してもよい。
【0018】
このようにDSP10内部にクロック周波数の設定変更に関する機能を取り込んだ場合、外部からの制御が不能となるので、製作上DSP単体での試験等において、クロック周波数を強制変更できなくなる不便さが生じるので、適宜DSP10内部の位相同期ループ13の分周数を変更するための入力端子をDSP10に設けてもよい。この入力端子をCPU11と接続し、CPU11からの強制的な分周数の設定変更が可能となるようにしてもよい。
【0019】
なお、CPU11からDSP10への信号には、上記のモード指令の他、フレーム信号がある。移動体通信端末1における各種通信モードでは、通信される信号をフレーム単位で扱っている、第4図に示すように通信信号の各フレームは、例えば同期信号部とデータ部により構成されており、CPU11からのフレーム信号のタイミングによりDSP10は通信信号の信号処理を行う。このフレーム信号の開始位置、終了位置において、クロック周波数の設定変更を行えば、例えば最終フレーム途中でクロック周波数が設定変更されて通信データの一部が欠落するようなことがなくなる。
【0020】
産業上の利用可能性
以上のように、本発明にかかる移動体通信端末は、DSPに供給されるクロック信号の周波数を各種通信モードにおいて必要な最小のクロック周波数に設定し消費電力を低減できる移動体通信端末として、地上における移動体通信や、衛星を利用した移動体衛星通信において用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【第1図】第1図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のブロック図である。
【第2図】第2図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末の制御アルゴリズムである。
【第3図】第3図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のDSPの各種通信モードに必要なクロック周波数と設定するクロック周波数との関係を示す線図である。
【第4図】第4図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末の通信信号のフレームとCPUからDSPへ入力されるフレーム信号とを示す模式図である。
【第5図】第5図は本発明の実施の形態2に係る移動体通信端末のブロック図である。
【第6図】第6図は従来及びこの発明の利用分野における各種通信モードの分類の一例を示す系統図である。
【第7図】第7図は従来の移動体通信端末のDSPの各種通信モードに必要なクロック周波数と設定するクロック周波数との関係を示す線図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動体通信又は移動体衛星通信において、利用者が無線通信を行うために使用する移動体通信端末に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、移動体通信においては、移動体通信端末は無線通信により基地局と通信を行い、移動体衛星通信においては、衛星を介して基地局と通信を行っている。この無線通信では、通信する内容に応じて各種の通信モードを設定しており、例えば通信を待受けている状態での待受けモード、回線交換型通信モード、パケット通信モード等がある。
【0003】
第6図は、移動体通信端末で行われる各種の通信モードを示している。これらの通信モードに対応して各種のデジタル信号についての複雑な演算処理を伴う信号処理を高速で行う必要があるが、そのような処理を行う手段としては、通常、DSP(Digital Signal Proccessor、デジタル信号処理プロセッサ)が用いられている。
【0004】
第7図は、通信サービスの各種モードにおいて移動体通信端末のDSPを動作させるために必要とされるDSPのクロック周波数を示している。各通信モードにおけるDSPで処理するデータ量や演算処理の内容が異なるため、各通信モードにおいて必要とされるDSPのクロック周波数はそれぞれ異なる値となる。第7図のa値に示すように、一般的には待受けモードにおけるDSPクロック周波数の必要値が最も低い。第7図には、この待受けモードの他、高速データ通信モード及び音声通信モードにおけるDSPクロック周波数の必要値b及びcを、説明の便宜上、a値、b値、c値の順にクロック値が高くなるように示している。そして、従来の移動体通信端末においては、DSPクロック周波数を通信サービスが対象とする全てのモードに対応する最大のクロック周波数をc値に固定していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の移動体通信端末においては、DSPクロックを通信サービスが対象とする全てのモードに対応する最大のクロック周波数に固定しているので、DSPの消費電力は通信サービスのモードに関係なく一定となり、かつ値として大きい。一方、各通信モードにおいて必要なDSPクロック周波数は、例えば第7図に示したように待受けモード時には最小値aでよく、高速データ通信モードや音声通信モードなどの各モードにおいて部分的に高い値(b値、c値)のクロックが設定されればよい。このクロック周波数の値により、DSP内部の消費電力は増減するので、DSPの消費電力のうち第7図に示す網掛を施した部分に相当する電力が無駄に消費されていることになる。したがって、待受けモードの時間が他の通信モードの時間に比して十分に長いことを考慮すると、電力がDSPで浪費される割合、すなわちDSP消費電力の浪費率は、
(DSP消費電力の浪費率)=(1−a/c)×100(%)
となり、この値は相当大きなものとなる。
【0006】
本発明は、各種通信モードにより無線通信を行う移動体通信端末において、DSPの消費電力を低減することができる移動体通信端末を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る移動体通信端末は、通信モードに応じて通信信号の信号処理を行うDSPと、このDSPに通信モードを指令するCPUと、上記DSPへクロック信号を供給するクロック生成器とを備えた移動体通信端末において、上記通信モードに応じた上記DSPからの周波数変更要求に基づいて上記クロック生成器は上記DSPへ供給するクロック信号の周波数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0008】
また、上記クロック生成器は、位相同期ループを備え、この位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0009】
また、通信モードに応じて通信信号の信号処理を行うDSPと、このDSPに通信モードを指令するCPUと、上記DSPへクロック信号を供給するクロック生成器とを備えた移動体通信端末において、上記DSPは位相同期ループを備え、この位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更して、上記クロック生成器からのクロック信号の周波数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができる。
【0010】
また、上記DSPは、上記CPUから供給される信号処理のフレーム信号のタイミングに基づいて、上記位相同期ループの分周器に設定する分周数を変更する。このことによって、クロック生成器からDSPに供給するクロック信号の周波数を各種通信モードで必要なクロック周波数に設定することができ、DSPにおける消費電力を低減化することができ、さらにクロック信号の周波数の設定変更において通信信号のデータの一部を欠落することがない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明をより詳細に説明するために、添付の図面に従ってこれを説明する。第1図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のブロック図である。第1図において、1は本発明の移動体通信端末であり、2は低速データ通信モード、高速データ通信モード、パケット通信モード等のデータ通信を行う際に使用するデータ端末である。3は基地局や衛星局と無線通信を行うためのアンテナ、4は送受信機である。5はマイクロホン、6はスピーカであり、7は音声信号をコード化し、及びデコードする音声コーデックである。8aはデータ端末2と移動体通信端末1を接続するための接続端子であり、8bはデータ端末2側の接続端子である。9はデータ端末2と移動体通信端末1との間で通信データ及び制御信号を送受するためのデータ通信インタフェースである。10は各種通信モードに応じてデジタル信号処理を行うDSPである。DSP10は主に位相変復調、振幅変復調、位相・振幅変復調等を行う機能を有しており、さらに音声コーデック7の機能を内蔵していてもよい。11はDSP10へ通信信号のフレーム信号を出力するとともに、通信モードを指令する制御器(以下「CPU」と呼ぶ)である。CPU11は、さらにデータ通信インタフェース9から制御信号を受け取って、DSP10の動作タイミングや信号処理内容を設定している。なお、第1図には図示していないが、移動体通信端末1のキーI/Fからのキー操作による音声通信の開始や終了等も、CPU11において制御されている。12はDSP10が必要とする周波数の異なる複数のクロック信号を生成するクロック生成器であり、第1図は位相同期ループ(第1図中にPLLと示した)13を有する場合を示している。また、第2図は、移動体通信端末1におけるCPU11の制御アルゴリズムを示している。
【0012】
次に第1図に示す移動体通信端末1の動作について、第2図のアルゴリズムに従って説明する。第2図のステップS1で移動体通信端末1の電源が投入された後、移動体通信端末1と基地局又は衛星局との間で初期の位置登録を行うための送受信を行い、位置登録が終了するとS2でDSP10へ供給されるクロック周波数が待受けモードに必要な最小のクロック周波数に設定され、S3で移動体通信端末1は待受け状態となる。その後、S4において、CPU11は利用者のキー操作、基地局又は衛星局からの着呼要求、データ端末2からのデータ通信要求等を監視している。このCPU11は監視した状況に合わせて移動体通信端末1の通信モードを設定し、DSP10へはその通信モードによる通信信号の信号処理を指令する。CPU11は、音声通信モードへの移行にあたり、移動体通信端末1の利用者のキー操作による発呼要求、あるいはアンテナ3及び送受信機4にて受信した基地局又は衛星局からの着呼要求に対する利用者の応答があるかどうかを監視している。これらの要求や応答があれば、CPU11はDSP10に対して音声通信モードであることを指令し、S5でDSP10へ供給されるクロック周波数が音声通信モードに必要な最小のクロック周波数に設定され、CPU11はこの音声通信の送受信信号の信号処理に必要なフレーム信号をDSP10へ送出して、S6の通信モードへ移行する。またCPU11は、データ通信モードやパケット通信モードへの移行にあたり、接続端子8a及び8bにより接続したデータ端末2からの制御信号による送信要求、あるいはアンテナ3及び送受信機4にて受信した基地局又は衛星局からのデータ通信やパケット通信要求に対する利用者の応答又はデータ端末2の応答があるかどうかを監視している。これらの要求や応答があれば、CPU11はDSP10に対してデータ通信モード又はパケット通信モードであることを指令し、S5でDSP10へ供給されるクロック周波数がデータ通信モードやパケット通信モードそれぞれに必要な最小のクロック周波数に設定され、CPU11はこれらのデータ通信又はパケット通信の送受信信号の信号処理に必要なフレーム信号をDSP10に送出して、S6の通信モードへ移行する。通信開始後、S7でCPU11は利用者のキー操作による終話要求、基地局又は衛星局からの終話要求、データ端末2からの終話要求を監視し、これらがあったときに、通信を終了し、S2へ移行する。
【0013】
第2図のアルゴリズム中のS2及びS5において、DSP10への供給クロックを各種通信モードに応じて、その通信モードにおける信号処理に必要な最小のクロック周波数の設定を変更する。第3図はここで設定する信号処理に必要な最小のクロック周波数に関する線図である。第3図に示すようにDSP10に供給されるクロック信号の周波数は、待受けモードにおいて最小値を設定し、音声通信モードや高速データ通信モードでは部分的にそれぞれ極大値を設定する。実際に設定されるクロックは、待受け時のクロック信号を基準クロックとし、各通信モードで必要な周波数のクロック信号より高めに設定される。クロック周波数の変更において通常使用する位相同期ループの逓倍数が数段階であるために必要とされるクロック周波数と実際に設定されるクロック周波数とは必ずしも一致しない。この場合、各モードのクロック周波数は本来必要な値より幾分周波数が高くなるように分周数を設定することになる。例えば音声通信モード時に必要とされるクロック周波数cに対して、実際に設定されるクロック周波数c’はcよりも高めに設定する。待受けモードにおいては、従来技術ではDSP10へクロック周波数としてc値を供給していたが、本発明ではDSP10へ供給されるクロック周波数はaの値を設定するので、消費電力が小さくなる。また、待受けモードの時間が他の通信モードの時間に比べて十分長いことを考慮すると、DSPで浪費される消費電力はほとんど無視できる程に小さくなり、従来の移動体通信端末において浪費されていたDSPの消費電力を大幅に削減することができる。
【0014】
DSP10へ供給されるクロック周波数の設定の変更は、DSP10からクロック生成器12への指示により行う。DSP10は、CPU11から通信モード指令を受け取っており、この指令をもとにクロック生成器12へクロック信号の周波数の変更を指示する。CPU11からの基本コマンドであるモード指令に基づき、その後は周辺回路であるDSP10が独立してクロック周波数の設定変更やその他信号処理設定等の詳細な制御を行うので、CPU11の機能やCPU11とDSP10の間のI/Fを複雑にしない。なお、CPU11からDSP10への信号には、上記のモード指令の他、フレーム信号がある。移動体通信端末1における各種通信モードでは、通信される信号をフレーム単位で扱っている。第4図に示すように通信信号の各フレームは、例えば同期信号部とデータ部により構成されており、CPU11からのフレーム信号のタイミングによりDSP10は通信信号の信号処理を行う。このフレーム信号の開始位置、終了位置において、クロック周波数の設定変更を行えば、例えば最終フレーム途中でクロック周波数が設定変更されて通信データの一部が欠落するようなことがなくなる。
【0015】
クロック生成器12におけるクロック周波数の設定変更には、もちろん複数の異なる水晶発振器を配置してこれらを切替えてもよいが、通常は特定の周波数で発振する水晶発振器からのクロックを位相同期して分周する位相同期ループを用いる。位相同期ループ13内の分周器に設定する分周数を設定変更することにより、クロック生成器12からDSP10へのクロック周波数を変更することができる。
【0016】
なお、DSP10はクロック生成器12を内蔵していてもよい。
【0017】
次に本発明の他の実施の形態に係る移動体通信端末について、第5図を用いて説明する。第5図において、位相同期ループ13はDSP10の内部に組み込まれている。位相同期ループ13へのDSP10からのクロック周波数設定変更の指示はDSP内部において完結する。第5図には位相同期ループ13に対して、外部からクロック生成器12がクロックを供給する構成となっているが、このクロック生成器12もDSP10内部に配置してもよい。
【0018】
このようにDSP10内部にクロック周波数の設定変更に関する機能を取り込んだ場合、外部からの制御が不能となるので、製作上DSP単体での試験等において、クロック周波数を強制変更できなくなる不便さが生じるので、適宜DSP10内部の位相同期ループ13の分周数を変更するための入力端子をDSP10に設けてもよい。この入力端子をCPU11と接続し、CPU11からの強制的な分周数の設定変更が可能となるようにしてもよい。
【0019】
なお、CPU11からDSP10への信号には、上記のモード指令の他、フレーム信号がある。移動体通信端末1における各種通信モードでは、通信される信号をフレーム単位で扱っている、第4図に示すように通信信号の各フレームは、例えば同期信号部とデータ部により構成されており、CPU11からのフレーム信号のタイミングによりDSP10は通信信号の信号処理を行う。このフレーム信号の開始位置、終了位置において、クロック周波数の設定変更を行えば、例えば最終フレーム途中でクロック周波数が設定変更されて通信データの一部が欠落するようなことがなくなる。
【0020】
産業上の利用可能性
以上のように、本発明にかかる移動体通信端末は、DSPに供給されるクロック信号の周波数を各種通信モードにおいて必要な最小のクロック周波数に設定し消費電力を低減できる移動体通信端末として、地上における移動体通信や、衛星を利用した移動体衛星通信において用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【第1図】第1図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のブロック図である。
【第2図】第2図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末の制御アルゴリズムである。
【第3図】第3図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末のDSPの各種通信モードに必要なクロック周波数と設定するクロック周波数との関係を示す線図である。
【第4図】第4図は本発明の実施の形態1に係る移動体通信端末の通信信号のフレームとCPUからDSPへ入力されるフレーム信号とを示す模式図である。
【第5図】第5図は本発明の実施の形態2に係る移動体通信端末のブロック図である。
【第6図】第6図は従来及びこの発明の利用分野における各種通信モードの分類の一例を示す系統図である。
【第7図】第7図は従来の移動体通信端末のDSPの各種通信モードに必要なクロック周波数と設定するクロック周波数との関係を示す線図である。
Claims (3)
- 複数の通信モードの中から通信モードを設定するとともに、信号処理のためのフレーム信号を供給するCPUと、このCPUが設定した通信モードに従い、通信信号を上記フレーム信号に基づいて信号処理するDSPと、このDSPにクロック信号を供給し、上記CPUにより設定した通信モードに応じた周波数のクロック信号への変更を上記フレーム信号のタイミングにおいて行うクロック生成器とを備え、上記DSPは、上記クロック生成器に対して、上記CPUにより設定した通信モードに応じた周波数のクロック信号への変更を指示することを特徴とする移動体通信端末。
- 上記複数の通信モードは、少なくとも待受けモードと、音声通信モードと、データ通信モードを含み、上記クロック生成器は、待受けモード設定時に、音声通信モード及びデータ通信モード設定時に供給するクロック信号よりも低い周波数のクロック信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末。
- 複数の通信モードの中から通信モードを設定するとともに、信号処理のためのフレーム信号を供給するCPUと、このCPUが設定した通信モードに従い、通信信号を上記フレーム信号に基づいて信号処理するDSPと、このDSPにクロック信号を供給するクロック生成器とを備え、上記DSPは位相同期ループを具備し、この位相同期ループに設定する分周数を変更することによって、上記フレーム信号のタイミングにおいて、上記クロック生成器から供給されるクロック信号の周波数を、上記CPUにより設定した通信モードに応じたクロック信号の周波数に変更することを特徴とする移動体通信端末。
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