JP3693542B2 - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信などの電子機器に用いられ、特に高周波回路等に好適に用いられる電子部品の製造方法及び無線端末装置に関するものである。特に、絶縁性の基台上に導電膜又は抵抗膜を設けた電子部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来のインダクタンス素子を示す側面図である。図10において、1は四角柱状または、円柱状の基台、2は基台1の上に形成された導電膜、3は導電膜2に設けられた溝、4は導電膜2の上に積層された保護材である。
【0003】
この様な電子部品は、溝3の間隔などを調整することによって、所定の特性に調整する。
【0004】
先行例としては、特開平7−307201号公報,特開平7−297033号公報,特開平5−129133号公報,特開平1−238003号公報,実開昭57−117636号公報,特開平5−299250号公報等がある。
【0005】
また、インダクタンス素子のQ値などを向上させるために、インダクタンス素子の両端面に端子電極等を設けない構成を有するものが提案されている。
【0006】
この様な構造では、前述の通り、インダクタンス素子で発生した磁束効率の障害となるインダクタンス素子端部の導電性端子の厚さをできるだけ薄くするか0とすることによって、Q値を向上できると共に、インダクタンス素子の端面に端子電極を設けていないので、インダクタンス素子の端部方向に突出する半田などの接合材の長さを短くすることができ、高密度の実装にも適している。
【0007】
例えば、特開平11−238633号公報の様に、端面に絶縁塗料を設けるフィレットレス型のインダクタが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の構成では、基台に導電膜を形成した後に、基台端面上の導電膜の上に絶縁塗料を形成した後に、溝等を導電膜に施して、コイル部を形成し、更にその後に絶縁塗料をコイル部を覆うように形成し、そのコイル部を覆う絶縁塗料と基台の端面上に設けられた絶縁塗料との間に設けられた隙間に電極を形成する方法であるので、絶縁塗料を基台の端面上及びコイル部を覆う絶縁塗料を別々に設ける工程が必要となり、工数が多くかかり、生産性が悪いという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高精度で生産性の良い電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、(4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した。
【0011】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、(1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、(4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法としたことによって、端面上の保護材と溝を形成した部分の保護材を一つの工程で作製できるので、生産性が向上する。また、この構成によって、保護材を精度良く取り除くことで、非常に精度の良い端子部を形成できるので、確実に素子の実装性を向上させることができ、しかもQ値等の劣化を防止することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、(1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記基台の両端面側の側面上に被覆部材を形成し、(4)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、その後に前記被覆部材を取り除くことで前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法としたことによって、端面上の保護材と溝を形成した部分の保護材を一つの工程で作製できるので、生産性が向上する。また、この構成によって、保護材を精度良く取り除くことで、非常に精度の良い端子部を形成できるので、確実に素子の実装性を向上させることができ、しかもQ値等の劣化を防止することができる。更に、保護材を除去しない構成であるので、保護材除去の際に、他の部材にダメージを加えることはないので、特性の劣化を生じない。
【0013】
請求項3記載の発明は、(1)柱状の基台の端面の全部または一部を除く、前記基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記基台のほぼ全面に保護材を形成し、(4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出させた導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法にて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法とする事によって、端面上の保護材と溝を形成した部分の保護材を一つの工程で作製できるので、生産性が向上する。また、この構成によって、保護材を精度良く取り除くことで、非常に精度の良い端子部を形成できるので、確実に素子の実装性を向上させることができ、しかもQ値等の劣化を防止することができる。また、基台の端面上に導電膜が存在しない部分を設けることができるので、Q値の劣化を更に防止できる。
【0014】
請求項4記載の発明は、(1)柱状の基台の端面の全部または一部を除く、前記基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記基台の両端面側の側面上に被覆部材を形成し、(4)前記基台のほぼ全面に保護材を形成し、その後に前記被覆部材を取り除くことで前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法とする事によって、端面上の保護材と溝を形成した部分の保護材を一つの工程で作製できるので、生産性が向上する。また、この構成によって、保護材を精度良く取り除くことで、非常に精度の良い端子部を形成できるので、確実に素子の実装性を向上させることができ、しかもQ値等の劣化を防止することができる。更に、保護材を除去しない構成であるので、保護材除去の際に、他の部材にダメージを加えることはないので、特性の劣化を生じない。また、基台の端面上に導電膜が存在しない部分を設けることができるので、Q値の劣化を更に防止できる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記導電膜に変えて基台上に抵抗膜を設けた事を特徴とする請求項1〜4いずれか1記載の電子部品の製造方法とする事によって、抵抗器でも確実にフィレットレス構造を容易に生産することができる。
【0017】
以下、本発明における電子部品及び無線端末装置の実施の形態についてインダクタンス素子を例に挙げて具体的に説明する。
【0018】
図1,図2はそれぞれ本発明の一実施の形態におけるインダクタンス素子を示す側面図及び底面図である。
【0019】
図1において、11は絶縁材料などをプレス加工,押し出し法等を施して構成されている基台、12は基台11の上に設けられている導電膜で、導電膜12は、メッキ法やスパッタリング法等の蒸着法等によって基台11上に形成される。
【0020】
13は基台11及び導電膜12に設けられた溝で、溝13は、レーザ光線等を導電膜12に照射することによって形成したり、導電膜12に砥石等を当てて機械的に形成されたり、レジストなどを用いた選択的エッチングによって形成されている。
【0021】
14は保護材で、保護材14は基台11側面上に設けられた導電膜12上及び基台11端面上の導電膜12上にそれぞれ設けられている。
【0022】
15,16はそれぞれ基台11の少なくとも側面上にそれぞれ取り付けられた端子部である。
【0023】
また、インダクタンス素子の長さL1,幅L2,高さL3は以下の通りとなっていることが好ましい。
【0024】
L1=0.2〜2.0mm(好ましくは0.3〜0.8mm)
L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4mm)
L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4mm)
(なお、L1,L2,L3のそれぞれの寸法誤差は0.02mm以下が好ましい。)
L1が0.2mm以下であると、必要とするインダクタンスを得ることができない。また、L1が2.0mmを超えてしまうと、素子自体が大きくなってしまい、電子回路等が形成された基板など(以下回路基板等と略す)回路基板等の小型化ができず、ひいてはその回路基板等を搭載した電子機器等の小型化を行うことができない。また、L2,L3それぞれが0.1mm以下であると、素子自体の機械的強度が弱くなりすぎてしまい、実装装置などで、回路基板等に実装する場合に、素子折れ等が発生することがある。また、L2,L3が1.0mm以上となると、素子が大きくなりすぎて、回路基板等の小型化、ひいては装置の小型化を行うことができない。
【0025】
以上の様に構成されたインダクタンス素子について、以下各部の詳細な説明をする。
【0026】
まず、基台11の形状について説明する。
【0027】
基台11は角柱状もしくは円柱状とすることが好ましく、図1,2に示す様に基台11を角柱状とすることによって、実装性を向上させることができ、素子の転がり等を防止できる等の効果を有する。また、基台11を角柱状とする中でも特に四角柱状とすることが非常に実装性や、素子の回路基板上での位置決めを容易にする。なお、更に好ましくは底面が正方形の直方体とすることが更に実装性等を向上させることができる。更に、基台11を角柱状とすることによって構造が非常に簡単になるので、生産性がよく、しかもコスト面が非常に有利になる。
【0028】
また、基台11の形状を円柱状とすることによって、後述するように基台11上に導電膜12を形成し、その導電膜12にレーザ加工等によって溝を形成する場合、その溝の深さなどを精度よく形成することができ、特性のばらつきを抑えることができる。なお、図示していないが、基台11の中央部に段差部を全周に渡って設け、この段差部の中に、導電膜12と溝13を設けてコイル部を設けてもよい。
【0029】
次に基台11の面取りについて図3を用いて説明する。
【0030】
図3は基台11を示す斜視図である。
【0031】
基台11の角部11b,11cには面取りが施されており、その面取りした角部11b,11cのそれぞれの曲率半径R1及び角部11aの曲率半径R2は以下の通りに形成されることが好ましい。
【0032】
0.03<R1<0.15(mm)
0.01<R2(mm)
R1が0.03mm以下であると、角部11b,11cが尖った形状となっているので、ちょっとした衝撃などによって角部11b,11cに欠けなどが生じることがあり、その欠けによって、特性の劣化等が発生したりする。また、R1が0.15mm以上であると、角部11b,11cが丸くなりすぎて、マンハッタン現象を起こしやすくなり、不具合が生じる。更にR2が0.01mm以下であると、角部11aにバリなどが発生しやすく、素子の特性を大きく左右する導電膜12の厚みが角部11fと平坦な部分で大きく異なることがあり、素子特性のばらつきが大きくなる。
【0033】
上記の諸特性を得る材料としては、アルミナを主成分とするセラミック材料が挙げられる。また、アルミナ材料の具体的な材料としては、Al23が92重量%以上,SiO2が6重量%以下,MgOが1.5重量%以下,Fe23が0.1%以下,Na2Oが0.3重量%以下等が挙げられる。
【0034】
更に、基台11の構成材料として、フェライト等の磁性材料で構成してもよい。基台11をフェライト等の磁性材料で構成すると、高いインダクタンスを有する素子を形成することができる。
【0035】
次に導電膜12について説明する。
【0036】
以下具体的に導電膜12について説明する。
【0037】
導電膜12の構成材料としては、銅,銀,金,ニッケルなどの導電材料が挙げられる。この銅,銀,金,ニッケル等の材料には、耐候性等を向上させために所定の元素を添加してもよい。また、導電材料と非金属材料等の合金を用いてもよい。構成材料としてコスト面や耐食性の面及び作り易さの面から銅及びその合金がよく用いられる。導電膜12の材料として、銅等を用いる場合には、まず、基台11上に無電解メッキによって下地膜を形成し、その下地膜の上に電解メッキにて所定の銅膜を形成して導電膜12が形成される。更に、合金等で導電膜12を形成する場合には、スパッタリング法や蒸着法で構成することが好ましい。
【0038】
更に、本実施の形態の様に、導電膜12を例えば銅などで構成し、その膜厚を厚くして自己発熱を抑える場合、導電膜12に形成される溝13の幅K1と溝13と溝13の間の導電膜12の幅K2は以下の関係を有する事が好ましい。
【0039】
20μm>K1>15μm
200μm>K2>100μm
特に前述の様に長さL1,幅L2,高さL3を、
L1=0.2〜2.0mm(好ましくは0.3〜0.8mm)
L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4mm)
L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4mm)
(なお、L1,L2,L3のそれぞれの寸法誤差は0.02mm以下が好ましい。)
としたインダクタンス素子とした場合、上述のK1,K2は上述の範囲とすることによって、電気抵抗を小さくすることができ、しかも導電膜12に形成される溝13を精度良く形成することができ、更に導電膜12の膜厚を厚くした場合に確実に溝13を形成することができる。
【0040】
導電膜12は単層で構成してもよいが、多層構造としてもよい。すなわち、構成材料の異なる導電膜12を複数積層して構成しても良い。例えば、基台11の上に先ず銅膜を形成し、その上に耐候性の良い金属膜(ニッケル等)を積層する事によって、やや耐候性に問題がある銅の腐食を防止することができる。
【0041】
導電膜12の形成方法としては、メッキ法(電解メッキ法や無電解メッキ法など),スパッタリング法,蒸着法等が挙げられる。この形成方法の中でも、量産性がよく、しかも膜厚のばらつきが小さなメッキ法がよく用いられる。
【0042】
次に保護材14について説明する。
【0043】
保護材14としては、耐候性に優れた有機材料、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性を示す材料や電着膜が用いられる。また、保護材14としては、溝13の状況等が観測できるような透明度を有する事が好ましい。
【0044】
特に保護材14を電着膜で構成することによって、非常に薄くて絶縁性を確保でき、しかも耐熱性も向上させることができる。すなわち、エポキシ樹脂やレジストなどを塗布する方法であると、保護材14の部分が大きく盛り上がり、回路基板等に実装する場合、素子の端子部と回路基板の配線の間に隙間が生じることがあり、十分な電気的接合を行うことができないことがあるが、電着膜で保護材14を形成することによって、薄くしかも均一な保護材14を形成できるので、素子を回路基板などに実装したときに、端子部と配線との間の隙間が非常に小さくなり、配線と基板の端子間の電気的接合は十分に行うことができる。
【0045】
また、レジストなどを塗布する方法であると、一つ一つの素子にそれぞれテープなどを用いて塗布しなければならないので、工程が多くなり生産性が向上せず、製造コストも低減することはできないが、本実施の形態の様に、電着膜で保護材14を作製することによって、一度にたくさんの素子に保護材14を設けることができるので、生産性が向上しコストも低減させることができる。
【0046】
保護材14の具体的構成材料としては、アクリル系樹脂,エポキシ系樹脂,フッ素系樹脂,ウレタン系樹脂,ポリイミド系樹脂などの樹脂材料の少なくとも1つで構成された電着樹脂膜によって構成されている。また、保護材14を電着膜で構成する場合、カチオン系,アニオン系のどちらかを選択する場合には、導電膜12の構成材料、電着膜の構成材料、インダクタンス素子の使用用途などを考慮して決定することが好ましい。保護材14は異なる材料で構成された電着膜を積層して構成しても良いし、同一材料を積層しても良く、更には、複数の電着膜を溝部13の上に並列して設けてもよい。
【0047】
保護材14を電着膜で構成する場合、保護材14の厚さが数十ミクロンで20V以上の耐圧を有することが好ましく、しかも半田の融点である183℃で、燃焼したり、蒸発しない特性を有するものが好ましい。なお、183℃で保護材14が軟化する程度のものは不具合は生じない。
【0048】
また、特殊用途などに用いられるインダクタンス素子には、導電膜12と保護材14の密着強度を持たせることが重要になってくる場合がある。この場合には、導電膜12の表面を化学的エッチングすることによって粗面化し、その粗面化した表面に電着膜で構成した保護材14を設けることが好ましい。
【0049】
また、導電膜12を銅を含む材料で構成した場合、電着膜である保護材14は不均一な膜厚で形成されることがあるので、この場合には、導電膜12の上にNi等の金属膜を形成し、その金属膜の上に保護材14を形成しても良い。
【0050】
なお、保護材14の厚みとしては5〜45μm程度の厚みとすることが好ましい。
【0051】
以下、本実施の形態の特徴部分について説明する。
【0052】
保護材14は基台11の端面上に設けられた導電膜12上と基台11の側面上に設けられた導電膜12上にそれぞれ設けられている。
【0053】
特に保護材14を端部に設けることによって、基台11端面上に設けられた導電膜12の保護を行うことになり、導電膜12の耐候性や他の材料等よる浸食などを防止することができる。また、保護材14を基台11端面上に設けられた導電膜12上に形成する事によって、端子部15,16が基台11端面上に存在しないかあるいは所定の面積のみ存在することになるので、基台11端面上に形成される導電材料の厚みを薄くすることができるのでQ値などを向上させることが得きると共に、半田などの接合材が基台端面から大きく突出しないので、高密度実装にも適している。
【0054】
図1,2に示す実施の形態1の場合、基台11の端面上に設けられた保護材14は基台11の側面までは延在しておらず、しかも端子部15,16は、基台11の側面のみに形成されている。この様な構成であれば、基台11の端面に存在する導電性材料の厚みは、導電膜12の厚みのみとなり、磁束のながれを阻害する物体が僅かであるので、Q値の低下を防止でき、しかも回路基板などに実装した際に、基台11の端面には端子部15,16が存在しないので、基台11の端面方向に向かって、半田などの接合材が突出することはないので、高密度実装を容易に行うことができる。また、基台11の端面に設けられた導電膜12上に保護材14が設けられているので、容易に端子部15,16が基台11端面上に設けられた導電膜12上に形成されるのを防止できるので、生産性などが向上する。
【0055】
図4,5に示す本発明の参考例の形態と、図1,2に示す実施の形態1の相違点は、端子部15,16を基台11の端面上の導電膜12の上まで延在させた点である。
【0056】
図4,5に示す参考例の形態では、基台11の端面上の導電膜12上にも端子部15,16を設けたことによって、回路基板などとの接合の際に、半田等の接合材との接触面積を広くする事ができるので、接合性を向上させることができる。なお、この参考例の場合、基台11の端面上に多少端子部15,16が存在することになり、図1,2に示す実施の形態よりはQ値の劣化を防止する効果は低減するが、やはり、保護材14が基台11端面上の導電膜12に保護材14が設けられている分、導電膜12の保護を行うことができ、特性の劣化等を防止できる。なお、参考例の場合、基台11端面の面積の50%以下(好ましくは30%以下)となるように端子部15,16の基台11端面上における形成面積を特定する事で、Q値の劣化を防止できる。なお、上記接合性を向上させるためには、基台11端面の面積の2%以上好ましくは5%以上端子部15,16の形成面積を確保する事が望ましい。
【0057】
図6,7に示す実施の形態では、基台11の端面上に設けた導電膜12上に形成した保護材14を更に、基台11側面上の導電膜12上まで延在させた例である。この様な構成であれば、確実に端子部15,16が基台11端面上の導電膜12の上に存在しないように構成できるので、Q値の向上などを確実に行うことができる。
【0058】
なお、本実施の形態1,2の場合、端子部15,16の最表面と基台11側面に設けられた保護材14の最表面をほぼ同じ高さとしたが、回路基板などとの接合性を向上させる場合には、少なくとも、基台11側面上に設けられた保護材14の最表面よりも端子部15,16の最表面が外方へ突出するように、端子部15,16の形成厚さを厚くするなどして構成することが望ましい。
【0059】
また、上述の様に、端子部15,16を保護材14よりも突出させる構成であると、端子部15,16の形成条件などが厳しくしないと端子部15,16それぞれの突出高さが異なり、素子が傾いて実装させる事等が考えられる場合には、実施の形態1,2の様に、端子部15,16の最表面と保護材14の最表面をほぼ同じにするか、あるいは、多少端子部15,16の最表面を保護材14の最表面よりもやや窪ませる事が好ましく、この場合には接合強度等に多少問題が生じる可能性はあるが、これらは、実装の際の諸条件を調整することによって、容易に解決できる。
【0060】
また、本実施の形態1,2では、端子部15,16はそれぞれ基台11の側面全周に渡って環状に設けたが(実施の形態1,の場合には四角柱状の基台11の例を示しているので、基台11の4側面の全て)、少なくとも一部に(実施の形態1,の場合には、例えば基台11の1側面上のみに設ける等)設けることで、素子を実装する際に方向性が生じて多少実装特性が劣化するものの、高密度実装を行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態1,2においては、基台11の端面上に導電膜12を介して保護材14を設けたが、基台11の端面上に導電膜12を設けずに、基台11の端面上に直接保護材14を設けても良い。この様な構成によって、基台11端面上に導電性部材が存在しないので、Q値などの特性を確実に向上させることができる。
【0062】
更に、本実施の形態1,2では、基台11の両端の端面にそれぞれ保護材14を設けたが、少なくとも一方設けることで、少なくとも基台11の一方の端面に形成された導電膜12や基台11等の特性劣化等を防止できる。更にこの構成によれば、素子の所定の方向を基台11の一方の端面に設けられた保護材14を目印にすることによって、決める事ができるので、実装の時などに都合がよい。
【0063】
また、本実施の形態1,2では、端子部15,16を形成する導電膜12の部分は、他の部分とほぼ同じ厚さとしたが、端子部15,16を形成する導電膜12の部分を他の部分よりも薄くし、端子部15,16を厚く形成することによって、端子部15,16の膜特性を良好にすることができ、電気的特性などを向上させることができる。
【0064】
更に、実施の形態1,2では、基台11の側面上の保護材14と基台11の端面上の保護材14は完全に分離して設けられていたが、各保護材を一体に形成しても良い。例えば素子全体に保護材14を形成し、少なくとも基台11の側面上に保護材14が存在しない開口を設け、その開口に端子部15,16を形成しても良く、この構成によって、開口の形状を適宜決定することによって、端子部15,16の形状を任意に設計することができ、使用環境や回路基板の状態などによって、好ましい端子部15,16形状とすることができる。
【0065】
端子部15,16の構成としては、例えば、下記の様な構成が考えられる。
【0066】
(1)導電膜12と同じ材料で端子部15,16を構成し、端子部15,16は塗布やメッキ法等によって形成される。
【0067】
(2)導電膜12と異なる材料で端子部15,16を構成し、端子部15,16は塗布やメッキ法などで構成する。
【0068】
(3)導電膜12上に耐食性を有する耐食膜を形成し、その耐食膜を端子部15,16とし、メッキ法などの薄膜形性技術で端子部15,16を形成する。
【0069】
(4)導電膜12上に接合性を有する接合膜を形成し、その接合膜を端子部15,16とし、メッキ法などの薄膜形性技術で端子部15,16を形成する。
【0070】
(5)導電膜12上に耐食性を有する耐食膜と接合性を有する接合膜を順に積層して形成し、その積層体を端子部15,16とし、メッキ法などの薄膜形性技術で端子部15,16を形成する。
【0071】
(6)保護材14間に露出した導電膜12自体を端子部15,16とする。
【0072】
耐食膜としては例えば、Ti,Ni,W,Cr等の腐食しにくい金属膜や、それら金属材料の合金膜(Ni−Cr等)等の耐食膜を膜厚0.5〜3μmの膜厚で構成することが良い。特に、Ni単体か若しくはNi合金を用いることが、特性面やコスト面等で優れている。
【0073】
更に、接合膜としては半田や鉛フリーの接合材(Sn単体もしくはSnにAg,Cu,Zn,Bi,Inの少なくとも一つを含ませた鉛フリー半田等)で構成された接合膜を5〜10μmの膜厚で形成しても良い。
【0074】
以上の様に構成されたインダクタンス素子について、以下その製造方法について説明する。
【0075】
まず、アルミナ等の絶縁材料をプレス成形や押し出し法によって、例えば数素子から数十素子分の基台11を作製し次にその基台11全体にメッキ法やスパッタリング法などによって導電膜12をほぼ全面に形成するか、或いは、基台11の端面の全面を除いて或いは基台11の端面の一部を除いて導電膜12を形成する。ここで、導電膜12を基台11のほぼ全面に形成するという意味合いは、基台11上の全面に導電膜12を形成したつもりであるが、製造工程の不具合などによって、導電膜12の欠陥等が生じ、一部導電膜12が形成されていない部分が存在する場合でも、本実施の形態の含まれると言うことである。
【0076】
次に導電膜12を形成した基台11にスパイラル状の溝13を所定間隔で一つ或いは複数個設け、そのスパイラル状の溝13を挟むように基台11を切断し、基台11に導電膜12と溝13を形成した半完成の素子を作製する。
【0077】
溝13はレーザ加工や切削加工によって作製される。レーザ加工は、非常に生産性が良いので、以下レーザ加工について説明する。まず、基台11を回転装置に取り付け、基台11を回転させ、そして基台11にレーザを照射して導電膜12及び基台11の双方を取り除き、スパイラル状の溝13を形成する。
【0078】
このときのレーザは、YAGレーザ,エキシマレーザ,炭酸ガスレーザなどを用いることができ、レーザ光をレンズなどで絞り込むことによって、基台11に照射する。
【0079】
更に、溝13の深さ等は、レーザのパワーを調整し、溝13の幅等は、レーザ光を絞り込む際のレンズを交換することによって行える。また、導電膜12の構成材料等によって、レーザの吸収率が異なるので、レーザの種類(レーザの波長)は、導電膜12の構成材料によって、適宜選択することが好ましい。なお、砥石などを用いて溝13を形成しても良い。
【0080】
溝13を形成した後に、電着法やディップ法などを用いて、保護材14を形成する。この保護材14を形成する方法を以下に説明する。
【0081】
(方法1)
基台11の全面に導電膜12を形成し、溝13を形成した後に、少なくとも導電膜12全体に保護材14を形成し、端子部15,16を形成しようとする部分に、切削や高エネルギービーム等を照射して、導電膜12をむき出しにする。むき出しになった導電膜自体を端子部15,16とするか、或いは導電膜12がむき出しになった部分に塗布やメッキ法などを用いて端子部15.16を形成する。また、基台11の端面の全面を除いて或いは基台11の端面の一部を除いて導電膜12を形成した場合には、基台11の端面の少なくとも一部はむき出しになるので、この場合には、保護材14は基台11上に直接形成される。
【0082】
(方法2)
他の方法として、溝13を形成した後に、保護材14を形成してはいけない導電膜12上にレジストなどを塗布し、その後に電着法などで保護材14を形成し、保護材14を形成した後に、レジストを取り除いて、導電膜12をむき出しにし、むき出しになった導電膜12自体を端子部15,16とするか、或いは導電膜12がむき出しになった部分に塗布やメッキ法などを用いて端子部15.16を形成する。また、基台11の端面の全面を除いて或いは基台11の端面の一部を除いて導電膜12を形成した場合には、基台11の端面の少なくとも一部はむき出しになるので、この場合には、保護材14は基台11上に直接形成される。
【0083】
なお、本実施の形態は、インダクタンス素子について説明したが、絶縁材料によって構成された基台11の上に導電膜12を形成する電子部品でも同様な効果を得ることができる。
【0084】
また、導電膜12を抵抗膜とすることによって、小型のチップ抵抗器を作製することができ、導電膜12にスパイラル状の溝13を設けるのではなく、環状の溝等を設けることによって、導電膜12を少なくとも2分する事によって、チップコンデンサとしても使用することができる。
【0085】
図8及び図9はそれぞれ本発明の参考例の形態における無線端末装置を示す斜視図及びブロック図である。図8及び図9において、29は音声を音声信号に変換するマイク、30は音声信号を音声に変換するスピーカー、31はダイヤルボタン等から構成される操作部、32は着信等を表示する表示部、33はアンテナ、34はマイク29からの音声信号を復調して送信信号に変換する送信部で、送信部34で作製された送信信号は、アンテナ33を通して外部に放出される。35はアンテナ33で受信した受信信号を音声信号に変換する受信部で、受信部35で作成された音声信号はスピーカー30にて音声に変換される。36は送信部34,受信部35,操作部31,表示部32を制御する制御部である。
【0086】
以下その動作の一例について説明する。
【0087】
先ず、着信があった場合には、受信部35から制御部36に着信信号を送出し、制御部36は、その着信信号に基づいて、表示部32に所定のキャラクタ等を表示させ、更に操作部31から着信を受ける旨のボタン等が押されると、信号が制御部36に送出されて、制御部36は、着信モードに各部を設定する。即ちアンテナ33で受信した信号は、受信部35で音声信号に変換され、音声信号はスピーカー30から音声として出力されると共に、マイク29から入力された音声は、音声信号に変換され、送信部34を介し、アンテナ33を通して外部に送出される。
【0088】
次に、発信する場合について説明する。
【0089】
まず、発信する場合には、操作部31から発信する旨の信号が、制御部36に入力される。続いて電話番号やメールアドレス等に相当する信号が操作部31から制御部36に送られてくると、制御部36は送信部34を介して、電話番号に対応する信号をアンテナ33から送出する。その送出信号によって、相手方との通信が確立されたら、その旨の信号がアンテナ33を介し受信部35を通して制御部36に送られると、制御部36は発信モードに各部を設定する。即ちアンテナ33で受信した信号は、受信部35で音声信号に変換され、音声信号はスピーカー30から音声として出力されると共に、マイク29から入力された音声は、音声信号に変換され、送信部34を介し、アンテナ33を通して外部に送出される。
【0090】
なお、本参考例の形態では、音声を送信受信した例を示したが、音声に限らず、文字データ等の音声以外のデータの送信もしくは受信の少なくとも一方を行う装置についても同様な効果を得ることができる。
【0091】
上記で説明した電子部品の製造方法によって製造された電子部品は、発信回路,フィルタ回路,アンテナ部及び各段とのマッチング回路周辺部等の高いQを必要とする箇所の少なくとも一つに用いられ、その数は、一つの無線端末装置に数個〜40個程度用いられている。上述の様な電子部品を用いることによって、精度良く端子部を形成できるので、Q値劣化を防止でき、装置の特性劣化を防止でき、しかも高密度実装を行えるので、装置内部の回路基板などを小型化できる。
【0092】
【発明の効果】
本発明は、(1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、(2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、(3)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、(4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、(5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事によって、端面上の保護材と溝を形成した部分の保護材を一つの工程で作製できるので、生産性が向上する。また、この構成によって、保護材を精度良く取り除くことで、非常に精度の良い端子部を形成できるので、確実に素子の実装性を向上させることができ、しかもQ値等の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態におけるインダクタンス素子を示す側面図
【図2】 本発明の一実施の形態におけるインダクタンス素子を示す底面図
【図3】 基台を示す斜視図
【図4】 本発明の参考例の形態におけるインダクタンス素子を示す側面図
【図5】 本発明の参考例の形態におけるインダクタンス素子を示す底面図
【図6】 本発明の一実施の形態におけるインダクタンス素子を示す側面図
【図7】 本発明の一実施の形態におけるインダクタンス素子を示す底面図
【図8】 本発明の参考例の形態における無線端末装置を示す斜視図
【図9】 本発明の参考例の形態における無線端末装置を示すブロック図
【図10】 従来のインダクタンス素子を示す側面図
【符号の説明】
11 基台
12 導電膜
13 溝
14 保護材
15,16 端子部
30 スピーカー
31 操作部
32 表示部
33 アンテナ
34 送信部
35 受信部
36 制御部

Claims (5)

  1. (1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、
    (2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、
    (3)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、
    (4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、
    (5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法。
  2. (1)柱状の基台のほぼ全面に導電膜を形成し、
    (2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、
    (3)前記基台の両端面側の側面上に被覆部材を形成し、
    (4)前記導電膜のほぼ全面に保護材を形成し、その後に前記被覆部材を取り除くことで前記導電膜の一部を露出させ、
    (5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法。
  3. (1)柱状の基台の端面の全部または一部を除く、前記基台のほぼ全面に導電膜を形成し、
    (2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、
    (3)前記基台のほぼ全面に保護材を形成し、
    (4)前記基台の両端面側の側面上に形成された保護材を除去して前記導電膜の一部を露出させ、
    (5)前記露出させた導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法にて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法。
  4. (1)柱状の基台の端面の全部または一部を除く、前記基台のほぼ全
    面に導電膜を形成し、
    (2)前記基台の側面上の前記導電膜にスパイラル状に溝を形成し、
    (3)前記基台の両端面側の側面上に被覆部材を形成し、
    (4)前記基台のほぼ全面に保護材を形成し、その後に前記被覆部材を取り除くことで前記導電膜の一部を露出させ、
    (5)前記露出した導電膜の一部の上に塗布又はメッキ法を用いて端子部を形成した事を特徴とする電子部品の製造方法。
  5. 前記導電膜に変えて基台上に抵抗膜を設けた事を特徴とする請求項1〜4いずれか1記載の電子部品の製造方法。
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