JP3693398B2 - セラミックス磁性体材料およびこれを用いた高周波用回路部品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波回路部品用に使用される酸化物磁性体材料およびこれを用いて作製した高周波用回路部品である。
【0002】
【従来の技術】
近年、衛星通信や移動体通信の市場拡大に見られるように、情報・通信分野の高速・高密度化が進展し、使用周波数の高周波数化が進んでいる。このような高周波で使用される酸化物磁性体としては、ニッケル亜鉛系スピネルフェライト、ガーネット系フェライト、六方晶系フェライトがある。これらのうち、スピネルフェライトやガーネットフェライトは、電気抵抗率が高いために、高周波における渦電流損失損失の影響が小さく、100MHz程度までは使用可能であるが、等方的磁気特性を持つため、より高周波では自然共鳴現象を生じ、数百MHz〜GHz帯では透磁率が低下してしまい、使用不能であった。一方、六方晶系フェライトのみは、その磁気的異方性によって、GHz帯域まで使用できる可能性があるが、実際にはあまり使われていないのが現状である。
【0003】
次に、これらの磁性体を用いて、高周波用インダクタ素子やノイズフィルター素子を作製する場合、素子の小型化のためには、磁性体の内部に導体が埋め込まれた構造が望ましい。すなわち、磁性体中で導体がコイル状に巻かれた構造をとる事で、コイル巻き数が大きくなり、かつ磁路構成が閉磁路となって、インダクタンスやインピーダンスを大きくする事ができる。このため、磁性体粉末と導体粉末を有機バインダーや溶媒と混合してそれぞれスラリー状とし、印刷工法等によって交互に印刷積層し、これを一体焼成する事により、小型のチップインダクタ等が製造されている。
【0004】
この場合に用いる導体用材料としては、電気抵抗率が低く、かつ低コストである銀や銅を用いる事が望ましいが、これらの導体材料は、銀が約930℃、銅が約1000℃を越える高温では融けてしまうため、焼成温度が高い場合には、Pd等の高価でかつ比較的電気抵抗率の高い導体材料を用いる必要があり、素子性能やコスト面で不利である。このため低温で焼成可能な磁性体セラミックスが必要となるが、前記の各種フェライトのうち、NiZnCuスピネルフェライトは900℃以下で焼成可能であるため、積層チップインダクタ等には、このNiZnCuスピネルフェライトが用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したように、スピネルフェライトは、100MHzを越える高周波数では使用できない。一方、より高周波で使用可能な六方晶系フェライトは、焼成温度が1200℃以上必要であり、この場合低コスト低電気抵抗率の銀や銅では融けてしまうという問題点があった。また、省エネルギーの観点からも問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、数百MHz〜GHzといった高周波まで使用可能であり、かつ1000℃以下の低温で焼成可能な多結晶セラミックス磁性体材料、及びこれを用いた高周波回路部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、本発明の第1の材料は、主組成として、Z型、Y型、W型、X型、U型より選ばれた1種類以上の六方晶系フェライト Fe m+2+1.5n 相(Aはバリウム(Ba)またはバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)であり、Bはコバルト(Co)、mとnは自然数)、を主要相とし、副成分として金属酸化物Mを1.0≦M≦10重量%含む(ただしMはV、Biのうちの1種類以上)事を特徴とするセラミックス磁性体材料である。また本発明の第2の材料は、主組成として、Z型、Y型、W型、X型、U型より選ばれた1種類以上の六方晶系フェライトA Fe m+2+1.5n 相(Aはバリウム(Ba)またはバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)であり、Bはコバルト(Co)および銅(Cu)、mとnは自然数)、を主要相とし、前記Bに占めるCuの割合が1.0/2.0以下であり、副成分として金属酸化物M を1.0≦M ≦10重量%含む(ただしM はV 、Bi のうちの1種類以上)事を特徴とするセラミックス磁性体材料である。
【0008】
また本発明の高周波回路部品は、前記磁性体材料中に導体が埋め込まれた構造を有する事を特徴とする高周波回路部品である。この素子においては、磁性体材料中の導体としては、Agを主成分とする事が望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の材料は、セラミックス焼結体であるため、通常のセラミックス作製プロセスで製造する事ができる。この時に、本発明の材料では、組成にPbあるいはCuが置換されているために、従来材料よりも、より低温で焼結する。あるいはV25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOが添加されている事によって、やはり従来材よりも低温で焼結する。これらの置換固溶と添加は、同時に行うと、さらに低温焼結の効果が大きくなる。また主組成がコバルト(Co)を含み、いわゆるZ型六方晶系フェライトA32Fe2441相(Aはアルカリ土類金属およびPbより選ばれた1種類以上、BはCoであるか、あるいはCoとCu)であると、高周波特性がより向上する。
【0010】
焼成温度が低くなると、CuやAgといった安価で電気抵抗率の低い、低融点の電極材料を内蔵した形で、同時焼成し、電極一体型の閉磁路構成の素子をつくる事ができ、小型で高Qのインダクタ、あるいは小型で高周波の特定周波数でのインピーダンスが大きいノイズフィルター等の高周波用素子が得られる。
【0011】
以下、六方晶系フェライトの代表として、Coを含むZ型(A32Fe2441相)を中心として説明するが、本発明はこれに拘束される物ではなく、(実施例5)に示すように、他の構造の六方晶フェライト、すなわちM型(AFe1219相),U型(A42Fe3660相),W型(AB2Fe1627相),X型(A22Fe2846相),Y型(A22Fe1222相)の各型、あるいはこれらが混在した場合においても、全く同様に低温焼成を可能とするものである。
【0012】
参考例1)
出発原料として、純度99.5%以上のBaCO3,SrCO3,PbO,CoO,CuO,α−Fe23の粉末を用いた。これらの粉末を、(Ba+Sr+Pb):(Co+Cu):Feのモル比が3:2:24となり、Ba:Sr:PbとCo:Cuのモル比が(表1)の値となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、800℃で各2時間仮焼した後、再度ボールミルで粉砕した。この仮焼粉末を金型中で0.5t/cm2の圧力で一軸加圧成形した後、電気炉にて、50℃きざみの所定の各温度で3時間焼成した。得られた試料の相対密度を測定し、90%以上の相対密度が得られる最低焼成温度をもとめた結果を(表1)に示した。また、焼結体より外径20mm、内径12mm、厚さ5mmのトロイダル状試料を切り出し、100MHzと1GHzにおける透磁率を測定した。比較のため、市販のNiZn系スピネルフェライトについても、同じ条件で透磁率を測定した。また焼結体を粉砕し、X線回折により生成相を同定した。
【0013】
【表1】
Figure 0003693398
【0014】
(表1)より明らかなように、本発明の磁性体では、アルカリ土類金属をPbで置換するか、CoをCuで置換する事により、従来よりもより低温で緻密化可能であった。特にPbとCuを同時置換することにより、さらに低温で緻密化し条件によってはAgが融解しない900℃以下で焼成可能となった。X線回折によると、いずれの試料でも六方晶フェライトが主要相であった。また、比透磁率μ’は、100MHz,1GHzとも、いずれの試料でも5〜10程度であった。比較例のNiZnフェライトでは、100MHzでは60であったが、1GHzでは5未満となった。
【0015】
(実施例2)
参考例1と同様の方法で、Ba:Co:Feのモル比が3:2:24となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、800℃で各2時間仮焼した後、V25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOの各粉末を(表2)の重量部加え、再度ボールミルにて混合粉砕した。この粉末を成形後、50℃きざみの所定の各温度で3時間焼成した。得られた試料の相対密度を測定し、90%以上の相対密度が得られる最低焼成温度をもとめた。結果を(表2)に示した。また焼結体より外径20mm、内径12mm、厚さ5mmのトロイダル状試料を切り出し、100MHzにおける透磁率を測定した。また焼結体を粉砕し、X線回折により生成相を同定した。
【0016】
【表2】
Figure 0003693398
【0017】
(表2)より明らかなように、本発明の磁性体では、V25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOのいずれかを添加する事により、従来よりもより低温で緻密化可能であった。一方、X線回折によると、いずれの試料でも六方晶フェライトが主要相であったが、添加量20wt%では、第2相が多くなった。また比透磁率は、添加量10wt%までは5〜10程度であったが、20wt%では5未満となった。従って、添加量の上限は10重量%である。
【0018】
(実施例3)
参考例1と同様の方法で、Ba:Sr:Pb:Co:Feのモル比が1:1:1:2:24となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、800℃で各2時間仮焼した後、V25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOの各粉末を(表3)の重量部に加え、再度ボールミルにて混合粉砕した。この粉末を成形後、50℃きざみの所定の各温度で3時間焼成した。得られた試料の相対密度を測定し、90%以上の相対密度が得られる最低焼成温度をもとめた結果を(表3)に示した。また焼結体より外径20mm、内径12mm、厚さ5mmのトロイダル状試料を切り出し、100MHzにおける透磁率を測定した。また、焼結体を粉砕し、X線回折により生成相を同定した。
【0019】
【表3】
Figure 0003693398
【0020】
(表3)より明らかなように、本発明の磁性体では、V25,CuO,Bi23,MoO3のいずれかを添加する事により、従来よりもより低温で緻密化可能であり、条件によってはAgが融解しない900℃以下で焼成可能となった。一方PbOの添加は顕著な効果が認められなかった。これは、既に主要相としてPbOを含むためと考えられる。一方、X線回折によると、いずれの試料でも六方晶フェライトが主要相であったが、添加量20wt%では、第2相が多くなった。また比透磁率は、添加量10wt%までは5〜10程度であったが、20wt%では5未満となった。従って、添加量の上限は10重量%である。
【0021】
(実施例4)
参考例1と同様の方法で、Ba:Sr:Co:Cu:Feのモル比が1.5:1.5:1:1:24となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、800℃で各2時間仮焼した後、V25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOの各粉末を(表4)の重量部に加え、再度ボールミルにて混合粉砕した。この粉末を成形後、50℃きざみの所定の各温度で3時間焼成した。得られた試料の相対密度を測定し、90%以上の相対密度が得られる最低焼成温度をもとめた結果を(表4)に示した。また焼結体より外径20mm、内径12mm、厚さ5mmのトロイダル状試料を切り出し、100MHzにおける透磁率を測定した。また、焼結体を粉砕し、X線回折により生成相を同定した。
【0022】
【表4】
Figure 0003693398
【0023】
(表4)より明らかなように、本発明の磁性体では、V25,Bi23,MoO3,PbOのいずれかを添加する事により、従来よりもより低温で緻密化可能であり、条件によってはAgが融解しない900℃以下で焼成可能となった。一方、CuOの添加は顕著な効果が認められなかった。これは、既に主要相としてCuOを含むためと考えられる。一方、X線回折によると、いずれの試料でも六方晶フェライトが主要相であったが、添加量20wt%では、第2相が多くなった。また比透磁率は、添加量10wt%までは5〜10程度であったが、20wt%では5未満となった。従って、添加量の上限は10重量%である。
【0024】
(実施例5)
参考例1と同様の方法で、Ba:Pb:Feのモル比が(表5)の比率となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、700℃で各2時間仮焼した後、V25,CuO,Bi23,MoO3,WO3,PbOの各粉末を1.0wt%加えたものと、加えないものをつくり、それぞれ再度ボールミルにて混合粉砕した。これらの粉末を成形し、50℃きざみの所定の各温度で3時間焼成した。得られた試料の相対密度を測定し、90%以上の相対密度が得られる最低焼成温度をもとめた。また、焼結体を粉砕し、X線回折により生成相を同定した。結果を(表5)に示した。
【0025】
【表5】
Figure 0003693398
【0026】
(表5)より明らかなように、PbOかCuOを置換するか、V25,CuO,Bi23,MoO3,PbOのいずれかを添加する事により、従来よりもより低温で緻密化可能であった。またこれらを同時に行うことで、900℃以下での焼結も可能となった。X線回折によると、いずれの試料でも六方晶フェライトが主要相であった。
【0027】
(実施例6)
参考例1と同様の方法で、Ba:Sr:Co:Cu:Feのモル比が1.5:1.5:1.5:0.5:24となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、850℃で各2時間仮焼した後、V25粉末を1.0wt%加え、再度ボールミルにて混合粉砕した。この粉末を外径3mm、内径1mmに成形し、900℃で3時間焼成した。得られた焼結体の比透磁率を1MHzで測定したところ、約10であった。この試料の中央の穴に導体を通し、ビーズ型ノイズフィルターとした。比較のため、種々の透磁率の市販のNiZn系スピネルフェライトを用いて、同一形状のノイズフィルターを作製した。これらのフィルターについて、1GHzにおけるインピーダンスを測定した。結果を(表6)に示した。
【0028】
【表6】
Figure 0003693398
【0029】
(表6)より明らかなように、NiZn系スピネルフェライトよりも本発明の材料の方が、インピーダンスZが大きく、ノイズ吸収材料として優れている。
【0030】
また、インダクタンス素子として考えた場合、NiZn系では、どの試料においても、1GHzではインピーダンスの実部(すなわち透磁率の実部)は低下して、虚部以下となっている。インダクタとして使用限界周波数は、Q値が1以上、すなわち透磁率の実部が虚部よりも大きい周波数と考えられるので、このNiZn系材料のインダクタとしての使用限界周波数は、1GHz以下である事が明らかである。これに対して本発明の材料では、1GHzにおいても実部Xが虚部Rよりも大きく、すなわち1GHzにおいても透磁率の実部は低下しておらず、Q値は1よりも大きい。従って、1GHzを越えるより高周波まで使用可能である。
【0031】
(実施例7)
参考例1と同様の方法で、Ba:Sr:Co:Cu:Feのモル比が2:1:1.5:0.5:24となり、合計重量が300gとなるように配合し、ボールミルにて混合し、900℃で2時間仮焼した後、Bi23粉末を1.5wt%加え、再度ボールミルにて混合粉砕した。この仮焼粉末に有機バインダを混合し、ドクターブレード法により均一なグリーンシートを形成した。比較のためNiZnCu系スピネルフェライト粉末を用いて作製したグリーンシートも用意した。他方、Agにビビクルを混合してなる導伝ペーストを用意し、先のグリーンシート上にコイル状に印刷した。その上にさらに1枚のグリーンシートを重ねて、厚み方向に圧力を加えて圧着し、磁性体に電極がサンドイッチされたグリーンシート積層体を作製した。これを910℃で3hr焼成した。得られた焼結体の側面の内部導体の位置にAgペーストを塗布し、700℃で10分間焼き付ける事により外部電極を形成してインダクタンス素子とした。得られたインダクタのL値を1GHzで測定したところ、NiCuZn系スピネルフェライトを用いたものでは、約15nHであったのに対し、本発明のものでは約20nHと30%以上改善されていた。
【0032】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、低温で焼成可能な高周波用六方晶系フェライト焼結体である。また、これを用いた高周波回路部品である。本発明により、高周波用フェライトが容易に製造可能となり、また、900℃以下で焼成可能である場合には、AgやCuのような安価で低抵抗な電極材料や、あるいは誘電体材料等とも同時焼成が可能で、より高性能・小型の高周波回路部品が得られる。

Claims (4)

  1. 主組成として、Z型、Y型、W型、X型、U型より選ばれた1種類以上の六方晶系フェライト Fe m+2+1.5n 相(Aはバリウム(Ba)またはバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)であり、Bはコバルト(Co)、mとnは自然数)、を主要相とし、副成分として金属酸化物Mを1.0≦M≦10重量%含む(ただしMはV、Biのうちの1種類以上)事を特徴とするセラミックス磁性体材料。
  2. 主組成として、Z型、Y型、W型、X型、U型より選ばれた1種類以上の六方晶系フェライト Fe m+2+1.5n 相(Aはバリウム(Ba)またはバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)であり、Bはコバルト(Co)および銅(Cu)、mとnは自然数)、を主要相とし、前記Bに占めるCuの割合が1.0/2.0以下であり、副成分として金属酸化物Mを1.0≦M≦10重量%含む(ただしMはV、Biのうちの1種類以上)事を特徴とするセラミックス磁性体材料。
  3. 請求項1または2記載の磁性体材料を用い、前記磁性体材料中に導体が埋め込まれた構造を有する事を特徴とする高周波回路部品。
  4. 前記磁性体材料中の導体が、銀(Ag)を主成分とする事を特徴とする請求項記載の高周波回路部品。
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