JP3693082B2 - エンジンバルブ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも傘部がアルミニウム合金により形成されたエンジンバルブ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に用いられる吸、排気バルブは、通常、マルテンサイト又はオーステナイト系の耐熱鋼により形成されている。
また、最近では、比較的熱負荷の小さい吸気バルブを、アルミニウム合金により形成する試みもなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
耐熱鋼製のエンジンバルブは、機械的強度が高く、耐久性、信頼性に優れている反面、慣性質量が大きく、かつ熱伝導性も悪いという問題がある。
【0004】
一方、アルミニウム合金製の吸気バルブは、軽量であるため、動弁系の慣性質量を低減して、エンジン性能を向上させうるとともに、熱伝導性にも優れ、シリンダヘッドへの放熱性が高いという利点がある。
しかし、機械的強度が小さいため、特に、弁フェース部の耐摩耗性の点で問題があり、耐久性や信頼性に欠ける。
【0005】
この問題を解決するために、弁フェース部に硬質金属製の当て板を固着することも考えられるが、異なる材質同士の結合は難しい。
すなわち、構造材料として用いられる通常のアルミニウム合金の組成中には、10%前後のSiが含まれているため、単なる圧着による結合手段では、金属製の当て板との大きな結合強度は得られない。
【0006】
そのため、溶接やろう付け等の結合手段が用いられるが、融点の大きく異なる材料同士の結合は難しく、結合強度にばらつきが生じ、またコスト高となるなどの問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、材質の異なるアルミニウム合金と金属製の当て板とを、容易かつ強固に固着することにより、弁フェース部の耐摩耗性を高めうるようにしたエンジンバルブ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のエンジンバルブは、軸部の一端に傘部が連設され、かつ少なくとも傘部がアルミニウム合金により形成されたエンジンバルブにおいて、前記傘部に形成された弁フェース部に、一方の面に純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を予め固着した硬質金属製の当て板を、接着被膜層を前記弁フェース部に圧着することにより、該接着被膜層をバインダとして固着したことを特徴としている。
【0009】
また、同じく本発明のエンジンバルブの製造方法は、プレス装置における上下の型の間に、製造しようとするエンジンバルブの傘部と補形をなす成形室を形成し、この成形室内に、前記傘部の弁フェース部とほぼ同形のリング板状をなし、かつ一方の面に純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を予め固着した硬質金属製の当て板と、アルミニウム合金よりなる素材とを、接着被膜層が素材側を向くようにして挿入したのち、前記素材をプレスにより塑性変形させて、傘部を成形するとともに、その弁フェース部に前記当て板の接着被膜層を圧着することにより、前記接着被膜層をバインダとして当て板を弁フェース部に固着することを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のエンジンバルブ、例えば吸気バルブの一実施例を示すもので、軸部(1)の下端に傘部(2)が連設された弁体(3)は、アルミニウム合金(例えばAI−Si系)により形成されている。
【0011】
傘部(2)に形成されたテーパ状の弁フェース部(4)には、図2に拡大して示すように、リング板状をなす硬質金属製の薄肉(例えば1.0mm前後)の当て板(5)が、その下面に固着した純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層(6)を介して、一体的に固着されている。
【0012】
上記接着被膜層(6)の当て板(5)への固着は、接着被膜層(6)が純アルミニウムの際には、冷間又は熱間圧延(当て板成形前の平板状にて行う)か溶射等により、またニッケルの際には、メッキ等により行うことができ、かつそれらの厚さは、当て板(5)が弁体(3)と直に接触しない最小限の厚さ、すなわち、それぞれ5〜40μm、1〜4μmの範囲とするのが好ましい。
【0013】
このような接着被膜層(6)を介在させると、弁体(3)と当て板(5)とを強く圧接させた際、互いに強固に固着される。
これは、前述したように、金属材料とSiを含有しているアルミニウム合金との結合力は小さいが、金属材料と純アルミニウム及びニッケル、アルミニウム合金と純アルミニウム及びニッケルの結合力は大きいため、このような純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層(6)が強力なバインダ的役割を果たして、アルミニウム合金製の弁体(3)、すなわち弁フェース部(4)と金属製の当て板(5)との結合力を高めるためである。
【0014】
本願の発明者らは、上記結合強度を検査するために、当て板(5)の弁体(3)に対する剥離強度試験を行った。
その結果、接着被膜層(6)を介在させずに、単に当て板(5)を弁体(3)に圧接して固着したときの剥離開始時の荷重が6〜12kgfであったのに対し、接着被膜層(6)を介して固着した本発明のものの剥離荷重は、20kgf以上にまで高まっていることを確認している。
【0015】
次に、上記吸気バルブの製造要領を、図3及び図4を参照して説明する。
まず、図3に示すように、プレス装置におけるダイ(下型)(7)に形成された、製造しようとする吸気バルブと補形をなす成形室(7a)(上下は倒立している)内に、上述したような、純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層(6)を予め固着した金属製のテーパ状の当て板(5)を、接着被膜層(6)側を上として載置する。なお、当て板(5)は、平板状の鋼板をプレス等により打抜いて成形する。
【0016】
ついで、当て板(5)の上方の成形室(7a)内に、アルミニウム合金よりなる円柱状の素材(8)を挿入する。
【0017】
ついで、図4に示すように、パンチ(上型)(9)を、型孔(7a)内に向かって予め定めた位置まで下降させ、素材(8)を冷間(又は温間)により鍛造する。すると素材(8)は、成形室(7a)内において塑性変形させられ、図1に示すのと同様、軸部(1')(軸端部は図示略)と傘部(2')とからなる弁体(3')が成形される。
【0018】
これと同時に、素材(8)が当て板(5)の接着被膜層(6)と強く圧着することにより、成形後における弁体(3')の弁フェース部(4')に強固に固着され、かつこの接着被膜層(6)を強力なバインダとして、弁体(3')と当て板(5)とは一体的に結合される。
【0019】
これにより、図1と同様の吸気バルブが得られる。なお、成形後において、JISに規定されているT6熱処理、軸部(1')外周面への耐摩耗表面処理、各部の仕上加工等を施すこともある。
【0020】
上記の要領で吸気バルブを製造すると、弁体(3)の成形と同時に当て板(5)を一体的に固着しうる利点があるが、この方法の外に、弁体(3)をプレスや鋳型等により別途成形したのち、その弁フェース部(4)に当て板(5)を圧着して結合する方法もある。
【0021】
本発明は、上述のように、弁体(3)全体をアルミニウム合金により形成したもの以外に、軸部(1)の中間部より上方を通常の耐熱鋼とし、かつ傘部(2)を含む軸部(1)の下方を上述のようなアルミニウム合金製とした軸溶接型のエンジンバルブにも適用しうる。
【0022】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、材質の異なるアルミニウム合金よりなる傘部の弁フェース部と、硬質金属製の当て板とを、当て板に予め固着した純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を強力なバインダとして、容易かつ強固に固着して、弁フェース部の耐摩耗性を高めることができる。
【0023】
請求項2記載のエンジンバルブの製造方法によると、硬質金属製の当て板を、それに予め固着した純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を強力なバインダとして、傘部のプレス成形と同時に、その弁フェース部に容易に固着しうるので、製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエンジンバルブの一部切欠正面図である。
【図2】同じく、図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の方法におけるエンジンバルブ成形前の状態を示す縦断面図である。
【図4】同じく、成形後の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
(1)(1')軸部
(2)(2')傘部
(3)(3')弁体
(4)(4')弁フェース部
(5)当て板
(6)接着被膜層
(7)ダイ
(7a)成形室
(8)素材
(9)パンチ
Claims (2)
- 軸部の一端に傘部が連設され、かつ少なくとも傘部がアルミニウム合金により形成されたエンジンバルブにおいて、前記傘部に形成された弁フェース部に、一方の面に純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を予め固着した硬質金属製の当て板を、接着被膜層を前記弁フェース部に圧着することにより、該接着被膜層をバインダとして固着したことを特徴とするエンジンバルブ。
- プレス装置における上下の型の間に、製造しようとするエンジンバルブの傘部と補形をなす成形室を形成し、この成形室内に、前記傘部の弁フェース部とほぼ同形のリング板状をなし、かつ一方の面に純アルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を予め固着した硬質金属製の当て板と、アルミニウム合金よりなる素材とを、接着被膜層が素材側を向くようにして挿入したのち、前記素材をプレスにより塑性変形させて、傘部を成形するとともに、その弁フェース部に前記当て板の接着被膜層を圧着することにより、前記接着被膜層をバインダとして当て板を弁フェース部に固着することを特徴とするエンジンバルブの製造方法。
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JP15329197A JP3693082B2 (ja) | 1997-06-11 | 1997-06-11 | エンジンバルブ及びその製造方法 |
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JPH10339119A JPH10339119A (ja) | 1998-12-22 |
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ID=15559274
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JP15329197A Expired - Lifetime JP3693082B2 (ja) | 1997-06-11 | 1997-06-11 | エンジンバルブ及びその製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3693082B2 (ja) |
-
1997
- 1997-06-11 JP JP15329197A patent/JP3693082B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH10339119A (ja) | 1998-12-22 |
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