JPH10299428A - アルミニウム合金製タペット及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な手段で、タペットの外周面の耐摩耗性
を向上させる。 【解決手段】 アルミニウム合金により形成されたタペ
ット本体２の外周面に、純アルミニウム又はニッケルよ
りなる接着被膜層４を介して、耐摩耗性を有する金属製
の被覆筒３を固着する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム合金
製のタペット及びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】内燃機関における直動型の動弁機構に用
いられるタペットは、動弁系を軽量化する目的から、従
来の鉄製に代わり、アルミニウム合金により形成される
傾向にある。アルミニウム合金製のタペットは、鉄製の
ものに比して、機械的強度や耐摩耗性が劣るが、特に、
シリンダヘッドに案内されて摺動するタペットの外周面
には、高い耐摩耗性が要求される。そのため、従来のア
ルミニウム合金製のタペットにおいては、その外周面
に、鉄系の溶射被膜を形成したり、Ｎｉ系のメッキによ
る表面処理を施すなどして、外周面の耐摩耗性を高めて
いる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上述した前者の溶射被
膜を形成するには、タペット外周面を粗面とする下地処
理や溶射後の仕上加工等が不可欠であるため、工数が増
加してコスト高となる。

【０００４】また、後者のＮｉメッキによる表面処理に
おいても、面倒な前処理工程や長時間のメッキ工程を要
するため、製造コストの上昇は避けられない。このよう
な問題点を解決するために、本願発明者らは、タペット
の外周面に、薄肉鋼板製の被覆筒を嵌合して、外周面の
耐摩耗性を向上させることを考えた。

【０００５】しかし、単にタペットの外周面に被覆筒を
嵌合したのみでは、タペット本体に対し、大きな結合強
度が得られず、長期間使用時の信頼性に欠けるという問
題がある。その原因を調べた結果、タペットの素材であ
る一般的なアルミニウム合金の組成中には、１０％前後
のＳｉが含まれており、このＳｉが鋼板との結合力を弱
めることが判った

【０００６】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
ので、溶射やメッキ等の手段によることなく、金属製の
被覆筒をタペット本体の外周面に容易かつ強固に結合す
ることにより、その耐摩耗性を向上させるとともに、製
造コストを大幅に低減しうるようにした、アルミニウム
合金製タペット及びその製造方法を提供することを目的
としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明のアルミニウム合
金製のタペットによると、上記課題は、アルミニウム合
金により形成されたタペット本体の外周面に、純アルミ
ニウム又はニッケルよりなる接着被膜層を介して、耐摩
耗性を有する金属製の被覆筒を固着することにより解決
される。また、本発明のタペットの製造方法によると、
上記課題は、次のようにして解決される。 （１）プレス装置における上下の型の間に、製造しよう
とするタペットと補形をなす成形室を形成し、かつこの
成形室内に、内周面に純アルミニウム又はニッケルより
なる接着被膜層を有する金属製の被覆筒を嵌挿し、この
被覆筒の内側に、アルミニウム合金よりなる素材を挿入
したのち、素材をプレスにより塑性変形させてタペット
本体を成形すると同時に、その外周面に前記被覆筒を固
着する。

【０００８】（２）上記(１)項において、被膜筒を、帯
状の金属板を円筒形に丸めたものとする。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面に基づいて説明する。

【００１０】図１は、本発明のタペット(１)を示すもの
で、上面が頂壁(2a)により閉塞された円筒形をなすタペ
ット本体(２)は、アルミニウム合金（例えばＡｌ−Ｓｉ
系）により形成され、その外周面には、図２に拡大して
示すように、耐摩耗性を有する薄肉（例えば０.１mm程
度）鋼板製の被覆筒(３)が、その内周面に固着した純ア
ルミニウム又はニッケルよりなる接着被膜層(４)を介し
て、一体的に結合されている。

【００１１】上記接着被膜層(４)の被覆筒(３)への固着
は、純アルミニウムの際は、熱間圧延、肉盛、溶射等に
より、またニッケルの際には、メッキ等により容易に行
いうる。接着被膜層(４)の厚さは、被覆筒(３)がタペッ
ト本体(２)と直に接触しない最小限の厚さが好ましく、
純アルミニウムとした際は５〜４０μｍ、ニッケルメッ
キとした際には１〜４μｍの範囲とするのがよい。

【００１２】タペット本体(２)の上面に形成された円皿
状の凹部(2b)内には、エンジンに組付ける際、金属製の
シム(５)が嵌入される。

【００１３】上記のような接着被膜層(４)を介在させる
と、被覆筒(３)をタペット本体(２)の外周面に強く圧接
させた際に、互いに強固に結合される。

【００１４】すなわち、前述したように、金属板とＳｉ
を含有しているアルミニウム合金との結合力は小さい
が、金属板と純アルミニウム及びニッケル、アルミニウ
ム合金と純アルミニウム及びニッケルの結合力は大きい
ため、このような純アルミニウム又はニッケルよりなる
接着被膜層(４)が、鋼板製の被覆筒(３)とアルミニウム
合金製のタペット本体(２)とを結合する強力なバインダ
となる。

【００１５】次に、上記タペット(１)の製造要領を、図
３及び図４を参照して説明する。まずプレス装置につい
て簡単に説明すると、(６)は、中心に円形の型孔(6a)を
有するダイ、(７)は、ダイ(６)の型孔(6a)下部に昇降可
能に嵌合された下型、(８)は、型孔(6a)の上部へ出入す
る上型（パンチ）である。型孔(6a)の内径は、製造しよ
うとするタペット(１)の外径とほぼ等しくしてある。

【００１６】下型(７)の上部の小径部外周面と型孔(6a)
の内面との間には、タペット(１)の筒部と補形をなす環
状の有底孔(９)が、また下型(７)の上面中央には、タペ
ット(１)の頂壁(2a)の下面中央の膨出部(2c)と補形をな
す凹部(10)が、それぞれ形成されている。上型(８)の下
端には、タペット(１)の上面の凹部(2b)と補形をなす小
径部(8a)が突設されている。

【００１７】このような型孔(6a)内に、まず上述したよ
うな、内周面に純アルミニウム又はニッケルよりなる接
着被膜層(４)を予め固着した被覆筒(３)を、有底孔(９)
の底面(9a)に当接するまで挿入する。なお、被覆筒(３)
の外径は、型孔(6a)の内径、すなわち製造しようとする
タペット(１)の外径とほぼ等径をなし、また同じく上下
の寸法も、タペット(１)の上下寸法とほぼ等寸としてあ
る。

【００１８】ついで、アルミニウム合金よりなる厚肉円
板状の素材(11)を、被覆筒(３)内に挿入するとともに、
下型(７)の上面に載置する。

【００１９】ついで、図４に示すように、上型(８)を予
め定めた位置まで下降させて、素材(11)を冷間により鍛
造する。すると素材(11)は、下型(７)と上型(８)との間
の密閉された成形室内において塑性変形させられ、かつ
同時に、被覆筒(３)の内面の接着被膜層(４)に強く圧着
する。

【００２０】その結果、接着被覆層(４)は、成形された
後のタペット本体(2')の外周面に強固に結合されること
により、この接着被膜筒(４)を介して、被覆筒(３)がタ
ペット本体(2')の外周面に一体的に結合され、図１に示
すのと同様のタペット(1')が得られる。

【００２１】本発明は、上記実施例に限定されるもので
はない。上記実施例では、予め円筒形に形成された被覆
筒(３)を用いているが、例えば図５に示すように、内面
側となる一方の面に上記と同様の接着被膜層(４)を形成
した帯状の薄肉鋼板(12)を、円筒形に丸めて被覆筒(13)
とし、これを型孔(6a)内に挿入してタペット(1')を製造
するようにしてもよい。

【００２２】この際、鋼板(12)の両端を傾斜面(12a)と
し、円筒形に丸めた際に両傾斜面(12a)が重なり合うよ
うにするのがよい。このような平板帯状の鋼板(12)を用
いると、引き抜き加工や溶接等により円筒形の被覆筒
(３)を形成する必要がないので、工数が削減され、かつ
純アルミニウムを圧延等により容易に固着することがで
きる。

【００２３】

【発明の効果】本発明によれば、タペット本体がＳｉを
含むアルミニウム合金により形成されていても、その外
周面に、金属製の被覆筒を容易かつ強固に結合しうるの
で、タペットの外周面の耐摩耗性は大幅に向上し、かつ
製造コストの低減も図れる。

【００２４】請求項２の方法によると、被覆筒が強固に
結合されたタペットを容易に製造しうる。

【００２５】請求項３のようにすると、被覆筒を予め円
筒形に形成するよりも安価に製造しうる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のタペットの中央縦断正面図である。

【図２】図１のＡ部の拡大図である。

【図３】本発明の方法におけるタペットの成形前の状態
を示す縦断面図である。

【図４】同じく、成形後の状態を示す縦断面図である。

【図５】被覆筒を帯状鋼板により形成する際の他の実施
例を示す斜視図である。

【符号の説明】

(１)(1')タペット (２)(2')タペット本体 (2a)頂壁 (2b)凹部 (2c)膨出部 (３)被覆筒 (４)接着被膜層 (５)シム (６)ダイ (6a)型孔 (７)下型 (８)上型 (９)有底孔 (9a)底面 (10)凹部 (11)素材 (12)鋼板 (12a)傾斜面 (13)被覆筒

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルミニウム合金により形成されたタペ
   ット本体の外周面に、純アルミニウム又はニッケルより
   なる接着被膜層を介して、耐摩耗性を有する金属製の被
   覆筒を固着したことを特徴とするアルミニウム合金製タ
   ペット。
2. 【請求項２】 プレス装置における上下の型の間に、製
   造しようとするタペットと補形をなす成形室を形成し、
   かつこの成形室内に、内周面に純アルミニウム又はニッ
   ケルよりなる接着被膜層を有する金属製の被覆筒を嵌挿
   し、この被覆筒の内側に、アルミニウム合金よりなる素
   材を挿入したのち、素材をプレスにより塑性変形させて
   タペット本体を成形すると同時に、その外周面に前記被
   覆筒を固着することを特徴とするアルミニウム合金製タ
   ペットの製造方法。
3. 【請求項３】 被覆筒が、帯状の金属板を円筒形に丸め
   たものである請求項２記載のアルミニウム合金製タペッ
   トの製造方法。