JP3692279B2 - 灰溶融炉の排ガス処理方法およびそのシステム - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、灰溶融炉の排ガス処理方法および処理システムに関し、さらに詳しくは、下水汚泥、都市ごみ、産業廃棄物などの焼却灰及び事業用火力発電プラント等の燃焼炉(焼却炉)から排出される焼却灰を、溶融炉を用いて処理する排ガス処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、下水汚泥、都市ごみ及び産業廃棄物などの焼却灰(粉体無機物)は、その資源化、減容化及び無害化を図るために、焼却炉で焼却後に、溶融炉によって溶融され、スラグや排ガス等として排出されている。このような溶融炉を使用して炉本体内で焼却灰を溶融するには、ごみ焼却炉から排出された焼却灰を乾式灰出装置より磁選器、焼却灰サイロ及び灰供給コンベヤ等の前処理系を経て、灰供給ホッパーから炉本体内に投入し、投入された焼却灰を溶融する。この際、焼却炉から排出される焼却灰(主灰)には、同様に焼却炉から排出される飛灰を、飛灰サイロや計量器を経て混合し、灰供給コンベアから供給する。
【0003】
溶融炉内で発生した溶融スラグや溶融メタルは、出滓口から出滓樋を通って乾式出滓装置に排出され、スラグコンベヤを介してスラグ排出系に導かれ、種々の利用に供される。炉本体には、例えば主電極等が配設され、炉本体の上部には窒素ガス発生装置から窒素ガスが送給されるようになっている。
ごみ焼却炉はバグフィルタを介して煙突に連通され、一方、溶融炉本体内で発生した排ガスは出滓口を経て、バグフィルタ、湿式洗煙塔および煙突等からなる排ガス処理系に導かれようになっている。
【0004】
ところで、通常、灰溶融炉の排ガス中には、高濃度のダスト、塩化水素、硫黄酸化物や、一酸化炭素、窒素酸化物、ダイオキシン類等の有害な有機塩素化合物などが多く存在している。そして、溶融炉排ガスの処理方法としては、特開平9−33027号には、溶融炉において焼却炉の焼却灰と飛灰を共に処理する焼却溶融設備、特開平9−276651号には、塩化水素等の有害物を排ガス中から低コストで除去する焼却灰溶融炉の排ガス処理装置が開示されている。
しかしながら、これら従来の排ガス処理装置では、ダスト除去もしくはそれに加えての酸性ガス、窒素酸化物の対策のみであり、上記のような多くの有害物質を総合的に処理できる排ガス処理は未だ提案されていない。そして、従来の溶融炉側の排ガス処理では、洗煙排水の処理が難しいという問題や、特にダイオキシン類の有害物質が放出されてしまうという大きな問題があった。
一方、灰溶融炉の排ガス処理システムにおいては、通常の処理を行った際には上記のような洗煙排水等が排出されてしまうが、処理システムの簡素化や環境面からも無排水化が望まれている。特に、酸性ガスを含む排ガスのガス量が多いような場合には、無排水処理の要望が大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、灰溶融炉を含む排ガス処理システムについて、環境問題等を十分に踏まえた、より安全で確実なシステムを構築するとともに、システム全体とした場合には、無排水化が達成できる排ガス処理方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、ダスト除去のための集塵装置(バグフィルタ、電気集塵器等)、酸性ガス除去のための第2集塵装置、一酸化炭素、ダイオキシン分解のための燃焼室、窒素酸化物分解のための触媒装置(反応塔や触媒担持バグ)を総合的に組み合わせ、溶融炉からの排ガスを処理する方法によって、上記問題点が解決されることを見い出した。
本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、焼却炉で燃焼させた排ガスを、ボイラおよび減温塔を介して集塵装置に至らせる際に、該集塵装置の前段にて消石灰を噴霧してから、該集塵装置にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、該飛灰を、焼却炉から直接排出される焼却灰(主灰)と混合した後、溶融炉に投入する処理方法であって、該溶融炉からの排ガスが燃焼室、減温塔、除塵装置を順次経て、消石灰を噴霧してから第2集塵装置を介した後、前記焼却排ガスと混合して脱硝触媒により処理されることを特徴とする灰溶融炉の排ガス処理方法、並びに、排ガス処理システムを提供するものである。
また、本発明は、焼却炉で燃焼させた排ガスを、ボイラおよび減温塔を介して集塵装置に至らせ、該集塵装置にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、該飛灰を、焼却炉から直接排出される焼却灰(主灰)と混合した後、溶融炉に投入する処理方法であって、該溶融炉からの排ガスが燃焼室、減温塔、除塵装置を順次経た後、前記焼却排ガスと混合され、消石灰を噴霧してから第2集塵装置を介した後、脱硝触媒により処理されることを特徴とする灰溶融炉の排ガス処理方法、並びに、排ガス処理システムを提供するものである。
さらに、本発明は、焼却炉で燃焼させた排ガスを、ボイラおよび減温塔を介して、消石灰を噴霧してから集塵装置に至らせ、該集塵装置にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、該飛灰を、焼却炉から直接排出される焼却灰(主灰)と混合した後、溶融炉に投入する処理方法であって、該溶融炉からの排ガスが燃焼室、減温塔、除塵装置を順次経た後、前記集塵装置の前段に返送されて消石灰を噴霧後に該集塵装置を経てから、前記焼却排ガスとして脱硝触媒により処理されることを特徴とする灰溶融炉の排ガス処理方法、並びに、排ガス処理システムを提供するものである。
【0007】
本発明の処理方法によれば、溶融炉の後段の効果的な位置に燃焼室を設けること等により、ダイオキシン類の排出を有効に防止することができる。
また燃焼室の効果として、溶融炉内を還元雰囲気にしておくことができ、これによって、炉内は低酸素ガス雰囲気となり重金属を揮発させ排ガスとして排出し易くなる。この場合、溶融炉から排出されるガスについては、一酸化炭素濃度が高くなってしまうが、後段の燃焼室によって一酸化炭素濃度を低く抑制することができる。
さらに本発明を用いれば、処理システムとした場合の全体を、実質的に無排水化できるので、環境的に有利であると同時に、排水処理に必要とされるランニングコストを抑制することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
実施の形態(その1)
図1は、本発明に係る排ガス処理方法を実施するのに好適な処理システムの一例を示す図である。
本実施の形態では、焼却炉1で燃焼させた排ガスを、廃熱ボイラ3および冷却用の減温塔4に導く。同じく焼却炉1から排出される主灰については、そのまま溶融炉2に供給される。
上記減温塔4で冷却された排ガスは、集塵装置であるバグフィルタ5に投入されるが、その直前にて、消石灰が噴霧・供給される。この際、活性炭をさらに加えることもできる。このような消石灰が噴霧された排ガスは、バグフィルタ5にて焼却排ガスと飛灰とに分離される。ここで、集塵装置としては、バグフィルタの他、電気集塵器、サイクロンなどを用いることができる。そして、分離された飛灰成分については、焼却炉1から直接排出される主灰と混合した後、溶融炉2に投入される。
【0009】
溶融炉2では、焼却炉1の焼却によって生じた主灰、および集塵装置で回収された塵などの飛灰を混合して、通常は灰供給ホッパから投入する。ホッパの下部にはスクリューが設けられていて、そこから灰投入口を経て溶融炉内に供給され、炉内は窒素雰囲気になっている。炉内には、主灰と飛灰とが溶けた溶融スラグ層があり、供給された灰もその上に堆積する。溶融スラグの温度は、通常約1600℃程度である。溶けた灰であるスラグは、出滓口から排出される。
溶融炉として具体的には、プラズマアーク式、アーク式、電気抵抗式、高周波式等の電気式溶融炉、および、バーナ式、コークスベッド式等の燃料式溶融炉などが挙げられる。溶融炉は、通常、有底円筒状に形成された炉本体を有しており、該炉本体下部側面には、溶融されたスラグ及び排ガスを抜き出す出滓口が設けられている。また、一般に溶融炉内は内壁を定型耐火物であるレンガ等で囲っており、その外側に水冷ジャケットを設けて、冷却している。
【0010】
溶融炉2からの排出される排ガスは、先ず燃焼室6を通ってから、減温塔7に送られる。燃焼室6には、燃焼空気ファンより空気が送給され、通常は高温のエアーを導入する方式が用いられるが、燃焼用バーナが設けられていても良い。この燃焼室の作用によって、溶融炉2から生じる排ガスのうち、一酸化炭素COや、ダイオキシン類等の物質は燃焼分解される。そして減温塔7では、排ガスをさらに後流に送って処理できるように冷却が行われる。減温塔7(冷却塔)としては、冷却空気の吹き込みによる空冷式、冷却水の噴霧による水冷式などの装置を用いることができる。
【0011】
減温塔7を経た排ガスは、除塵装置であるバグフィルタ8に導かれるが、その直前で活性炭が添加されても良い。バグフィルタ8ではダストが除塵されて、排ガスと溶融飛灰とに分離され、溶融飛灰は接続されている溶融飛灰処理装置等に送られる。除塵装置としては、バグフィルタの他、除塵用サイクロン等を用いることができる。
【0012】
本実施の形態では、バグフィルタ8を経た排ガスは、消石灰を添加された後に第2集塵装置である反応バグフィルタ9に供給される。排ガス中の酸性ガスはこの反応バグフィルタ9で除去され、清浄な排ガスと反応飛灰とになる。ここで排出される反応飛灰は、飛灰処理装置等に適宜送られ、排出される。なお、消石灰とともに活性炭を添加しても良い。
この第2集塵装置で浄化された排ガスは、前記バグフィルタ5から排出される焼却排ガスと混合する。混合された排ガスは、脱硝触媒10により脱硝処理を行ってから系外に放出される。
このように本実施の形態によれば、溶融炉2から生じる排ガス中から、有害物であるCOやダイオキシン類を極めて効果的なタイミングで燃焼分解させられるので、排ガスをより安全なものとして放出することが可能となる。
【0013】
実施の形態(その2)
図2は、本発明に係る排ガス処理方法を実施するのに好適な他の処理システムの一例を示す図である。
本実施の形態では、上記実施の形態(その1)と同様に、焼却炉1で燃焼させた排ガスを、ボイラ3および減温塔4を介して集塵装置(バグフィルタ5等)に至らせる。この際に、バグフィルタ5の前段にて消石灰もしくは活性炭を噴霧することができる。そして、バグフィルタ5にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、この飛灰を、焼却炉1から直接排出される主灰と混合して、溶融炉2に投入する。溶融炉2からの排ガスは燃焼室6、減温塔7、除塵装置(バグフィルタ8等)を順次経る。これら装置での作用は実施の形態(その1)と同じである。
【0014】
本実施の形態では、除塵装置であるバグフィルタ8からの排ガスについて、集塵装置(バグフィルタ5)から排出される焼却排ガスと混合した後、消石灰を加え、さらに必要に応じて活性炭も添加する。そして、この混合ガスを第2集塵装置である反応バグフィルタ9に送る。この反応バグフィルタ9にて、酸性ガスは除去され、清浄な排ガスとなり、一方、反応飛灰が排出される。この浄化された排ガスは、窒素酸化物を分解するための脱硝触媒10により処理される。脱硝触媒を有する触媒装置としては、反応塔や触媒担持バグ等を用いることができる。本実施の形態によれば、消石灰を噴霧する工程が第2集塵器の前段のみでも足りるので、噴霧工程を簡略化した処理が可能である。
【0015】
実施の形態(その3)
図3は、本発明に係る排ガス処理方法を実施するのに好適な他の処理システムの例を示す図である。
図3の形態においては、焼却炉1で燃焼させた排ガスを、ボイラ3および減温塔4を介して、消石灰を噴霧してから集塵装置(反応バグフィルタ12等)に至らせる。この反応バグフィルタ12にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、飛灰については、焼却炉1から直接排出される主灰と混合した後、溶融炉2に投入する。溶融炉2からの排ガスが燃焼室6、減温塔7、除塵装置であるバグフィルタ8に順次送られ、溶融飛灰と排ガスとに分けられる。バグフィルタ8の直前では消石灰もしくは活性炭を加えることもできる。その後、この溶融炉2を経た排ガスは、反応バグフィルタ12の前段に返送され、焼却炉1から排出されてきた排ガスと混合されて、消石灰を噴霧される。必要に応じて活性炭も加えられた混合排ガスは、上記反応バグフィルタ12を経てから、焼却排ガスとして脱硝触媒10により処理される。この構成によって、排ガス処理を実施する際に通常発生する排水をなくし、システムとした場合の無排水化が可能になる。
【0016】
なお、本発明の実施の形態においては、系内に水銀等の有害物質が残留する可能性があるため、例えば溶融炉2の前段においては、これら有害物質を系外に排出する手段(活性炭噴霧等)を実施することが効果的である。
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び変更を加え得るものである。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融炉後段に燃焼室を設けること等の効果的な各装置の配置により、ダイオキシン類の排出を有効に防止することができる。また、溶融炉内を還元雰囲気にしておくことができ、これによって、低酸素ガス雰囲気となり重金属を外に排出し易くなる。この場合、溶融炉から排出されるガスについては、一酸化炭素濃度が高くなってしまうが、後段の燃焼室によって一酸化炭素濃度を低く抑制することができる。さらに本発明を用いれば、排ガス処理システム全体として実質的な無排水化が達成できるので、排水処理設備が不要になり、環境的にも優れ、処理に伴うランニングコストを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排ガス処理方法を実施するシステムの一例を示した図である。
【図2】本発明に係る処理方法を実施する他のシステムの一例を示した図である。
【図3】本発明に係る処理方法を実施する他のシステムの一例を示した図である。
【符号の説明】
1 焼却炉
2 溶融炉
3 廃熱ボイラ
4 減温塔
5 集塵装置(バグフィルタ)
6 燃焼室
7 減温塔
8 除塵装置(バグフィルタ)
9 第2集塵装置(反応バグフィルタ)
10 脱硝触媒
12 第2集塵装置(反応バグフィルタ)

Claims (4)

  1. 焼却炉で燃焼させた排ガスを、ボイラおよび減温塔を介して、消石灰を噴霧してから集塵装置に至らせ、該集塵装置にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、該飛灰を、焼却炉から直接排出される焼却灰と混合した後、溶融炉に投入する処理方法であって、
    該溶融炉からの排ガスが燃焼室、減温塔、除塵装置を順次経た後、前記集塵装置の前段に返送されて消石灰を噴霧後に該集塵装置を経てから、前記焼却排ガスとして脱硝触媒により処理され、
    前記除塵装置の直前で活性炭を加えることを特徴とする、灰溶融炉の排ガス処理方法。
  2. 前記集塵装置の直前で活性炭をさらに加えることを特徴とする、請求項1に記載の灰溶融炉の排ガス処理方法。
  3. 焼却炉で燃焼させた排ガスを、ボイラおよび減温塔を介して集塵装置に至らせ、該集塵装置の前段にて消石灰を噴霧する手段を有するとともに、該集塵装置にて焼却排ガスと飛灰とに分離し、該飛灰を、焼却炉から直接排出される焼却灰と混合して溶融炉に投入する処理システムであって、
    該溶融炉からの排ガスが燃焼室、減温塔、除塵装置を順次経るように配置され、該除塵装置からの排ガスが前記集塵装置前段の消石灰を噴霧する手段の前に返送されて混合されるとともに、該集塵装置を経た焼却排ガスが脱硝触媒装置に送られ、
    前記除塵装置の直前に、活性炭噴霧手段を備えることを特徴とする、灰溶融炉の排ガス処理システム。
  4. 前記集塵装置の直前に活性炭噴霧手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の灰溶融炉の排ガス処理システム。
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