JP3691900B2 - 糖質の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖蛋白質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖に含まれる3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを酵素のガラクトース転移反応により製造する方法に関する。なお、本発明の方法により製造される3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−デオキシ−2−D−ガラクトピラノースは、ガングリオシド系列の物質の糖鎖合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースは、糖蛋白質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖に含まれており、例えば、糖蛋白質ではO−グリコシル型の糖鎖、糖脂質では脊椎動物由来の中性糖脂質(グロボ系列、ガングリ系列、ラクト系列)やガングリオシドの糖鎖に含まれている。そして、このO−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを糖鎖に含む糖蛋白質や糖脂質等の複合糖質は、様々な生理機能を有していることが知られている(神奈木玲児ら, 複合糖質, メジカルビュー社発行, 1994)。
【0003】
また、このO−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを酵素のガラクトース転移反応により調製する方法が知られている(Carbohydrate Research, vol.244, pp.315-323, 1993; Carbohydrate Research, vol.259, pp.103-115, 1994)。すなわち、乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとを原料とし、バチルス・サーキュランス (Bacillus circulans)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae) 、ペニシリウム・ムルチコラー(Penicillium multicolor) 、あるいは、大腸菌(Escherichia coli) 起源のβ−ガラクトシダーゼのガラクトース転移反応によりO−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを調製している。しかし、一般に工業用酵素として使用されているこれら起源のβ−ガラクトシダーゼのガラクトース転移反応により得られるO−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースは、6−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノース及び4−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースであり、目的とする3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを得ることはできない。また、ブタ顎下腺起源のβ−ガラクトシダーゼやウシ精巣起源のβ−ガラクトシダーゼのガラクトース転移反応により、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを得ることができることが報告されている(Carbohydrate Research, vol.188, pp.9-17, 1989; Carbohydrate Research, vol.186, pp.217-223, 1989) 。しかし、これら起源のβ−ガラクトシダーゼは非常に高価であり、工業的な使用は不可能である。
【0004】
一方、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシド結合を加水分解する酵素であり、セロビオースやサリシンからグルコースを遊離させる酵素である。そして、このアーモンド起源のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性及びβ−ガラクトシダーゼ活性の両酵素活性を同一酵素分子内の同一作用部位に併せ持つ酵素であることが知られている(Archeves of Biochemistry and Biophysics, vol.187, pp.102-107, 1978)。そして、乳糖や乳糖含有物に作用させてガラクトオリゴ糖を得る方法 (特公平5- 47198号公報) 、ラクチュロースに作用させて得た新規オリゴ糖 (特開平3- 38593号公報) 、キチンオリゴ糖と乳糖の混合物に作用させてN−アセチルグルコサミン結合オリゴ糖を得る方法 (特開平5-230093号公報) 等に使用されている。しかし、ガラクトースにN−アセチルガラクトサミンを転移させるという報告は知られていない。なお、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼは安価であり、工業的な使用が可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、酵素のガラクトース転移反応により、糖蛋白質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖に含まれる3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを効率的に製造することができる方法を求め鋭意研究を進めてきたところ、乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンと原料とし、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼを使用することにより、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを効率的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとを原料とし、酵素にガラクトース転移反応を行わせることにより3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを製造するに際して、酵素としてアーモンド起源のβ−グルコシダーゼを使用することを特徴とする3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースの製造法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとを原料とし、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼのガラクトース転移反応により、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを製造する。
【0007】
なお、原料として使用する乳糖については特に限定はなく、市販されているものを使用すれば良い。また、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドについても特に限定はなく、2−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、3−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド、4−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド等として市販されているものを使用すれば良い。
【0008】
また、酵素として使用するアーモンド起源のβ−グルコシダーゼについては特に限定はなく、粗酵素を使用することもできるが、スイートアーモンド起源のβ−グルコシダーゼ等、市販されているものを使用すれば良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとを溶解した溶液にアーモンド起源のβ−グルコシダーゼを添加し、ガラクトース転移反応を行わせことにより3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを生成させた後、分離、回収して3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを製造する。
【0010】
乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとの量比は 1:0.2〜5 の範囲とすることが好ましく、基質全体の濃度を10〜60%とすることが好ましい。そして、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼを 0.5〜50U/mlとなるよう反応溶液に添加し、pH 3.5〜7.0 、5〜60℃で2〜80時間反応させる。特に、反応時間は3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースの収量に大きく影響を及ぼすので、予め最適の反応条件を実験的に確認しておくことが好ましい。なお、酵素反応の停止は、例えば、反応溶液を90℃で3分間加熱することにより行えば良い。
【0011】
このようにして生成した3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースについては、必要に応じて、活性炭クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の処理手段を組み合わせることにより精製することができる。
【0012】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
乳糖2gとN−アセチルガラクトサミン4gを0.1M酢酸緩衝液(pH5.0) 20mlに溶解し、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼ(シグマ社製) 200単位を添加して40℃で70時間反応させた後、 100℃で3分間加熱して反応を停止させた。この反応液を水で平衡化した活性炭カラム(2.0×30cm) に通液して反応生成物を吸着させた後、カラムに対して5倍量の水で洗浄し、0〜10%のエタノールを使用したグラジェント法により溶出した。そして、この溶出画分を高速液体クロマトグラフィーで分離精製し、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノース 300mgを得た。なお、図1に示した通り、核磁気共鳴装置(1H-NMR)による測定で、高速液体クロマトグラフィーで得られた物質が3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースであることを確認した。
【0013】
【実施例2】
4−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド1.5gとN−アセチルガラクトサミン3gを0.1M酢酸緩衝液(pH5.0) 10mlに溶解し、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼ(シグマ社製) 110単位を添加して40℃で50時間反応させた後、 100℃で3分間加熱して反応を停止させた。そして、反応液中に含まれる3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースの生成量を高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノース 200mgが生成していることが判った。
【0014】
【発明の効果】
従来、高価なブタ顎下腺やウシ精巣起源のβ−ガラクトシダーゼを使用しないと得ることができなかったGalβ−(1→3)GalNAcを、アーモンド起源のβ−グルコシダーゼを使用することにより得ることができるようになった。したがって、このGalβ−(1→3)GalNAcを複合糖質の糖鎖合成中間体として使用し、工業的に種々の複合糖質を合成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で生成した物質の核磁気共鳴装置(1H-NMR)による測定結果を示す。
Claims (1)
- 乳糖又はニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシドとN−アセチルガラクトサミンとを原料とし、酵素にガラクトース転移反応を行わせることにより3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースを製造するに際して、酵素としてアーモンド起源のβ−グルコシダーゼを使用することを特徴とする3−O−β−D−ガラクトピラノシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−ガラクトピラノースの製造法。
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JP07463396A JP3691900B2 (ja) | 1996-03-28 | 1996-03-28 | 糖質の製造法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP07463396A JP3691900B2 (ja) | 1996-03-28 | 1996-03-28 | 糖質の製造法 |
Publications (2)
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---|---|
JPH09262092A JPH09262092A (ja) | 1997-10-07 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP07463396A Expired - Fee Related JP3691900B2 (ja) | 1996-03-28 | 1996-03-28 | 糖質の製造法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3691900B2 (ja) |
-
1996
- 1996-03-28 JP JP07463396A patent/JP3691900B2/ja not_active Expired - Fee Related
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