JP3691089B2 - フッ化処理用アルミニウム合金 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、表面にフッ化不働態膜を形成して耐食性を著しく向上させることによって半導体製造プロセスなどで用いられる装置、部品類の材料として使用することを可能とするフッ化処理用アルミニウム合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセスで用いられている装置、部品類は、そのプロセスで使用される腐食性の強いHFガス等に晒されるため、優れた耐食性が必要とされており、その構成材料には耐食性に優れたステンレス鋼が使用されている。
ところが最近では、移動作業の便宜などから上記装置、部品類の軽量化の要望が強く、構成材料として軽量のアルミニウム合金材が着目されている。アルミニウム合金は一般には、表面に形成される緻密な酸化皮膜によって良好な耐食性を有しているが、HFガス等のように腐食性の強いものに対しては良好な耐食性を示さず、著しい腐食を受けてしまう。したがって、耐食性の問題からアルミニウム合金をそのまま上記装置類の材料として使用することはできない。このため、アルミニウム合金材表面にフッ化不働態膜を形成して耐食性を向上させる方法が提案されており(特開平4−66657号等)、実際に、上記用途の部品類の一部には、JIS A5052アルミニウム合金材にフッ化処理を施して表面にフッ化不働態膜を形成した材料が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際に使用されているフッ化処理材でも耐食性は十分とは言えず、さらに耐食性を向上させることが要望されている。
本発明者らは、この要望に応えるべく鋭意研究したところ、従来のアルミニウム合金材表面に形成されたフッ化不働態膜は、厚さ、質ともに不均一であり、その結果として十分な耐食性が得られていないのではないかと考えた。そして、さらに研究を進めたところ、アルミニウム合金の組織がフッ化不働態膜の健全性に影響を与えており、特に金属間化合物(晶析出物)が不均一(質)なフッ化不働態膜を形成する原因となっていることを見出し、本発明をするに至ったものである。
【0004】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、金属間化合物の形成を極力抑える(量、大きさの低減)ことによって、均一なフッ化不働態膜の形成を可能とし、その結果として優れた耐食性を得ることができるフッ化処理用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、第1の発明のフッ化処理用アルミニウム合金は、Mg:2.0〜4.5wt%、Ti:0.003〜0.015wt%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるとともに、該不可避不純物中のSi、Feを個々に0.04wt%以下、Cu、Mn、Cr、Znを個々に0.02wt%以下に規制したことを特徴とする。
また、第2の発明のフッ化処理用アルミニウム合金は、Mg:2.0〜4.5wt%、Ti:0.003〜0.015wt%、B:0.001〜0.005wt%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるとともに、該不可避不純物中のSi、Feを個々に0.04wt%以下、Cu、Mn、Cr、Znを個々に0.02wt%以下に規制したことを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明によれば、組織中の金属間化合物の量、大きさともに低減され、フッ化処理時に合金表面に均一なフッ化不働態膜が形成されて、耐食性が著しく向上し、HFガス、HClガス等の腐食性ガスや超純水に対しても優れた耐食性を発揮する。また、強度、切削性等の機械加工性も良好で、従来材(例えばJIS A5052材)と同等以上であり、各種装置、部品類の材料として使用することが可能となる。
次に、本発明の成分を限定した理由を以下に説明する。
【0007】
Mg:2.0〜4.5wt%
Mgは、強度を確保するとともに、一部はフッ素と反応してフッ化不働態膜を形成する。ただし、その含有量が2.0wt%未満では、強度が不足し、また切削性が不良となる。一方、4.5wt%を越えると、鋳造や圧延が困難になり、また金属間化合物を形成してフッ化不働態膜の健全性を損なうので、含有量を2.0〜4.5wt%に限定した。
【0008】
Ti:0.003〜0.015wt%
Tiは、結晶粒を微細化して、鋳造時の割れを防止し、また熱間加工性、切削性を向上させ、さらには、フッ化処理後の強度を確保する。Tiは、鋳造時に単独で添加することも可能であるが、Al−Ti−B母合金として添加することもできる(例えば、Al−5%Ti−1%B合金)。上記作用を十分に得るためには、Tiは、0.003wt%以上含有させることが必要であり、一方、0.015wt%を越えると、粗大な金属間化合物TiB2を形成してフッ化不働態膜の健全性を損なうので、含有量を0.003〜0.015wt%に限定した。
【0009】
B:0.001〜0.005wt%
Bは、Tiと同様に結晶粒を微細化させて、鋳造時の割れ防止、熱間加工性・切削性の向上、フッ化処理後の強度確保の作用を果たすので必要に応じて含有させる。したがって、本発明としてはBを含有させないものも含まれる。
上記作用を十分に得るためには、0.001wt%以上の含有が必要であり、0.005wt%を越えると粗大な金属間化合物を形成するので、含有量は0.001〜0.005wt%に限定した。
【0010】
(不可避不純物中)
Si、Fe:個々に0.04wt%以下
Cu、Mn、Cr、Zn:個々に0.02wt%以下
これら元素は、製造上不可避的に含有されるが、それぞれ許容値を越えると粗大な金属間化合物を形成してフッ化不働態膜の健全性を損なうので、原材料の厳選などによって上記範囲内に規制する。なお、より望ましくは、これらの総量を0.14wt%以下に規制するのが望ましく、さらには、不純物全体の総量を0.20wt%以下に規制するのが望ましい。
【0011】
上記した合金は、常法により、溶解、鋳造等の工程を経て製造することができる。但し、本発明の目的をより達成するために、製造過程で、鋳造時の溶湯ろ過や鋳塊の均質化処理を行うのが望ましい。
具体的には、溶湯をセラミック製フィルター(カートリッジフィルター)でろ過して粗大な金属間化合物を除去する。また、均質化処理は、520〜540℃で4〜8時間で行い、凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、および凝固によって生じた過飽和固溶元素を均一微細に析出させる。
【0012】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。
原材料として厳選された純度99.992%の純Al地金と純度99.95%の純Mg地金とを常法により溶解し、さらに鋳造時に溶湯をろ過して表1に示す組成の発明材合金を溶製した。また、通常原材料を同じく常法により溶解して表2に示す組成の比較材合金を溶製した。
得られた各合金鋳塊には、530℃で6時間の均質化処理を施し、その後、熱間圧延を経て冷間圧延により3mmの板を作製した。次いで酸により脱脂した後、フッ化処理として一旦真空引きしたチャンバーに高純度フッ素ガスを導入し、350℃で、6時間処理した。
得られたフッ化処理材を試験材として、組織中の金属間化合物の形成状況を、顕微鏡観察による粒径分布で調査するとともに、試験材の機械的特性(引張強さ、研削性)を試験した。さらに試験材の表面に形成されたフッ化不働態膜の平均膜厚をESCAによる深さ分析によって測定し、この不働態膜の耐食性および耐久性について評価した。これらの試験結果は表2に示した。
【0013】
表2から明らかなように、発明材は、金属間化合物の量が少ないだけでなく、その粒径も小さく、明らかに金属間化合物の形成が抑制されている。これに対し、比較材の多くは、金属間化合物の量が多く、また粗大なものも多く形成されている。さらに、発明材は、表面に厚くて均一なフッ化不働態膜が形成されており、耐食性、耐久性ともに優れている。
発明材は、上記耐食性、耐久性に加えて強度、切削性にも優れており、あらゆる評価項目で良好な結果が得られた。これに対し、比較材は、いずれかの項目で劣っており、とくに耐食性の点ではいずれの比較材も劣っていた。さらに、発明材について、400℃⇔室温の熱サイクル試験を行ったがクラック等の発生はなく、耐熱性に優れていることも確認された。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明のフッ化処理用アルミニウム合金は、Mg:2.0〜4.5wt%、Ti:0.003〜0.015wt%、必要に応じてB:0.001〜0.005wt%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるとともに、該不可避不純物中のSi、Feを個々に0.04wt%以下、Cu、Mn、Cr、Znを個々に0.02wt%以下に規制したので、フッ化処理時に表面に、厚さ、質ともに均一なフッ化不働態膜が十分な厚さで形成され、HFガス、HClガス等の腐食性ガスや超純水に対しても優れた耐食性を発揮し、特に水素還元雰囲気で極めて安定な特性を示す。さらに、H2、Ar、O2、CF4(NF3)プラズマ等に対しも極めて優れた耐久性を示し、耐熱性にも優れている。したがってハロゲン系腐食ガスを使用する半導体製造装置のチャンバー、配管、ガス貯蔵装置やこれらの周辺装置への使用が可能になり、これら装置類の軽量化が達成される。
また、本発明のアルミニウム合金の適用は、半導体製造装置に限定されるものではなく、その他の強い腐食性環境で使用される装置の材料として使用することも可能である。
Claims (2)
- Mg:2.0〜4.5wt%、Ti:0.003〜0.015wt%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるとともに、該不可避不純物中のSi、Feを個々に0.04wt%以下、Cu、Mn、Cr、Znを個々に0.02wt%以下に規制したことを特徴とするフッ化処理用アルミニウム合金。
- Mg:2.0〜4.5wt%、Ti:0.003〜0.015wt%、B:0.001〜0.005wt%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなるとともに、該不可避不純物中のSi、Feを個々に0.04wt%以下、Cu、Mn、Cr、Znを個々に0.02wt%以下に規制したことを特徴とするフッ化処理用アルミニウム合金。
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