JP3690017B2 - 点火時期制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の点火時期時期制御方法に関し、特に各気筒毎にノッキングを検出して点火時期の遅角量を制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ノッキング現象を解消する基本的な方法としては、全気筒の点火時期を一律に遅らせる方法と、各気筒別にノッキングを検出しノッキングの発生した気筒に関して独立に点火時期を遅らせる方法とがあった(例えば、特開昭59ー25081号公報)。具体的に内燃機関たる4気筒エンジンについて各気筒を#A、#B、#C、#Dとし、それら両方法の一例を図4、図5に示すタイミングチャートを参照して説明すると、前者の方法とは、図4(A)に示すように、例えば気筒#Aにノッキングが発生し、このノッキング信号aを検出した場合、気筒#Aにおける次の点火時期を、基準点火信号bにより定まる気筒#Aの基準点火時期より設定量(例えばR°)遅角し、他の気筒#B〜#Dもそれぞれの点火時期を同様にR°遅角するものである。そして、この遅角によってはノッキングが解消されず、さらにノッキングを継続して検出した場合、さらにR°の遅角を加算し、気筒#A〜#Dそれぞれのその次の点火時期を、それぞれの基準点火時期より2R°遅角する。後者の方法とは、図5(A)に示すように、例えば気筒#Aにのみノッキングが発生した場合、他の気筒#B〜#Dのノッキング発生状況に関わらず、気筒#Aの点火時期を、前の点火時期の遅角量にR°加算して遅角し、他の気筒#B〜#Dの点火時期になんら影響を及ぼさないものである。すなわちこの場合であれば他の気筒#B〜#Dの点火時期は遅角されない。なお、図4、図5中、信号cは点火信号を示すもので、この矩形波の立ち上がりにおいて点火されるものとする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前者の方法によれば、例えば、全ての気筒#A〜#Dでノッキングが検出されるような過大なノッキングが発生した図4(B)に示すような場合、各気筒#A〜#Dにおけるそれぞれ次の点火時期の遅角量は、気筒総数分すなわち4R°加算されたものとなるため、速やかに遅角量が増大され、ノッキング低減に時間を要しないという利点がある。しかし、例えば図4(A)に示したように気筒#Aのみでノッキングが発生するといった、一部の気筒のみでノッキングが発生した場合には、ノッキングの発生していない気筒の点火時期をも遅らせるため、これらの気筒に関しては適切な点火時期とはならず、燃費悪化や出力低下などといったエンジンの無駄な性能低下を招く問題があった。
【0004】
またこれとは逆に、後者の方法によれば、例えば図5(A)に示したように気筒#Aのみでノッキングが発生するといった、一部の気筒でのみノッキングが発生した場合、ノッキングの発生していない気筒では点火時期の遅角は行われないため、燃費の悪化や出力の低下などのエンジンの性能低下を招かない。しかしながら、例えば、全ての気筒#A〜#Dでノッキングが検出されるような過大なノッキングが発生した場合、図5(B)示すように、各気筒#A〜#Dにおけるそれぞれ次の点火時期の遅角量は、1つの気筒にのみノッキングが発生した場合の遅角量と同じくR°しか加算されない。その結果、遅角量が前者の方法のように速やかに増大せず、ノッキング低減に時間がかかるという不具合を生じた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述の両方法の互いの利点を生かして上記の問題点を一挙に解決するために、本発明は、各気筒別に独立に点火時期を制御して内燃機関の性能低下を招かないようにするとともに、ノッキングの大きさに応じて点火時期の遅角量を増大させノッキング低減を速やかに行うようにしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は内燃機関の各気筒の点火時期をそれぞれ独立して制御し、ノッキングを検出した際に、各気筒毎の点火時期を遅角させる点火時期制御方法に関するものであって、各気筒毎にノッキングを検出し、制御対象となる気筒にノッキングが発生した場合、当該気筒の次回の点火時期までにノッキングを検出した他の気筒数が多いほど遅角量を多くして決定し、この遅角量に基づいて該気筒の点火時期を遅角制御することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、ノッキングの発生した気筒のみの点火時期を独立して遅角制御しつつも、その遅角量はノッキングの発生した気筒数に応じたものとなるため、燃費の悪化や出力の低下などといった内燃機関の性能低下を招かないようにできるうえ、過大ノッキング発生時においてもノッキング低減に要する時間を短くできる。
【0008】
【実施例】
以下本発明の一実施例を図1から図3を参照して説明する。
図1は、概略的に示した内燃機関たるエンジン1の構成図であり、本発明を適用したものである。このエンジン1は自動車用の4気筒のもので、図示しないアクセルペダルに連動して開閉するスロットルバルブ101、サージタンク102、および吸気管103等を備えた吸気系104と、この吸気系104の末端近傍に配設され燃料噴射を各気筒#1〜#4毎に独立して行えるようにした燃料噴射弁105と、シリンダブロック106、シリンダヘッド107等により構成されスパークプラグ108による点火で混合気を燃焼させる燃焼室109と、図示しないマフラに至るまでの排気系110とから概略構成されている。もちろん、この他に各種の部材やセンサ等も構成要素となっているが本説明においては省略する。
【0009】
本発明にかかる部分を特に説明すると、シリンダブロック106には各気筒#1〜#4毎にノックセンサ2をそれぞれ取り付けており、各気筒#1〜#4毎に独立してノッキングの検出を行えるようにしている。これらノックセンサ2はノッキングを検出できるものであればどのようなものでもよいが、本実施例においてはノッキングの振動を検出し電気信号として出力する方式のものを用いている。また、スパークプラグ108は各気筒#1〜#4毎に設けられ、それぞれ独立してイグニションコイル部9による電気信号で駆動できるようにしたものである。そして、各ノックセンサ2からの出力信号たるノックセンサ信号a1と、各気筒#1〜#4にそれぞれ対応する図示しないカムに設けた各カムポジションセンサ3からのカムポジション信号b1を電子制御装置4に入力し、処理判別させて、各気筒#1〜#4毎に独立して点火すべく、点火信号cを各気筒#1〜#4に対応させてそれぞれ出力するようにしている。
【0010】
この電気制御装置4は、中央演算処理装置5、記憶装置6、入力インターフェース7および出力インターフェース8等を備えるようにした、いわゆるマイコン装置として一般に知られているもので、入力インターフェース7にノックセンサ信号a1とカムポジション信号b1が入力されると、波形整形等を行って、従来例で述べたノッキング信号aあるいは各気筒#1〜#4の点火基準信号b等を作り出し、これら各信号a,bに基づいて、中央演算処理装置5および記憶装置6等によって、各気筒#1〜#4毎の点火時期を設定し、出力インターフェース8から各気筒#1〜#4にそれぞれ対応した点火信号cを独立して出力するものである。なお、点火の順序は気筒#1、気筒#3、気筒#4、気筒#2としている。
【0011】
このような構成での本実施例による点火時期制御について以下に説明する。
まず気筒#1に対する点火時期制御を説明すると、この制御は、気筒#1にノッキングが発生した場合、気筒#1の次回の点火時期までにノッキングを検出した総気筒数に比例した遅角量を加算し、この遅角量に基づいて次回の点火時期を遅角制御するものである。そして、これと同様の制御を、他の気筒#2〜#4においても、それぞれ独立に行い、全ての気筒#1〜#4に対する点火時期制御を行うようにしている。
【0012】
具体的には、この制御は電気制御装置4に記憶されたプログラムに基づいて行われるもので、このプログラムについて気筒#1に対応する部分を代表例にして図2に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップN1において、気筒#1にノッキングが発生しているかどうかをノッキング信号aの有無に基づいて判定する。
【0013】
ノッキングが検出された場合、ステップN2に進み、気筒#3にノッキングが発生しているかどうかを判定する。ノッキングが検出されればステップN3においてカウンタ値Kを1増加し、ノッキングが検出されない場合はカウンタ値KをそのままにしてステップN4に進む。なお、このカウンタ値KはステップN3以前においては常に0すなわちクリアされている。そして、ステップN4では、気筒#4にノッキングが発生しているかどうかを判定する。ノッキングが検出されればステップN5においてカウンタ値Kを1増加し、ノッキングが検出されない場合はカウンタ値KをそのままにしてステップN6に進む。ステップN6では、気筒#2にノッキングが発生しているかどうかを判定する。ノッキングが検出されればステップN7においてカウンタ値Kを1増加し、ノッキングが検出されない場合はカウンタ値KをそのままにしてステップN8に進む。このようにステップN2からステップN7によって他の気筒#2〜#4のうち、ノッキングの発生している気筒数をカウンタ値Kとして記憶する。
【0014】
そして続くステップN8ではこのカウンタ値Kに基づいて遅角量をR・(K+1)と設定する。このK+1とは気筒1自身も含めたノッキングの発生している総気筒数を表わすこととなるため、前述したようにノッキングを検出した総気筒数に比例した遅角量をこのステップN8で設定したことになる。その後、ステップN9においてこのカウンタ値Kをクリアする。
【0015】
一方、ステップN1において、気筒#1にノッキングが検出されなかった場合は、ステップN10において他の制御に基づいて点火時期制御量が設定され、ステップN9に進みカウンタ値Kがクリアされる。なお、このステップN10における点火時期制御量の設定方法自体は当該分野でよく知られたものを広く採用することができるので、ここでは詳述しない。
【0016】
これと同様のプログラムに基づいて他の気筒#2〜#4についてもそれぞれ遅角量が設定されると、最終的に図示しない点火信号出力ステップにおいて、点火信号cが各気筒#1〜#4毎に出力される。そして、元に戻って再びその次の点火時期をそれぞれ設定すべく、このプログラムは繰り返される。また、設定された遅角量は次回の遅角量に加算すべき量であり、この加算は例えばハードウェア的に行われるようにしてソフトウェアで特に操作しなくてもよいようにしている。
【0017】
したがって、本実施例によれば、ノッキングの発生した気筒数に比例する量の遅角を、ノッキングの発生した気筒に対してのみ行うことになる。例えば、従来例と同様、気筒#1にのみノッキングが生じた際には、図3(A)に示すように、気筒#1の点火時期だけをR°加算して遅角し、ノッキングの発生していない気筒#2〜#4では点火時期の遅角は行わない。また、全気筒#1〜#4にノッキングが発生した場合、図3(B)に示すように、各気筒#1〜#4におけるそれぞれ次の点火時期の遅角量は、気筒の総数分すなわち4R°加算されたものとなる。なお、従来例同様、図3において、点火は点火信号cを示す矩形波の立ち上がりにおいて行われるものとする。
【0018】
つまり、ノッキングの大きさをノッキングの発生した気筒数と擬制し、この気筒数に比例した遅角量に基づいてノッキングの発生した気筒にのみ独立して点火時期制御を行うため、エンジン1の燃費悪化や性能低下等を招かないうえ、過大ノッキングが発生した場合でもノッキング低減に要する時間を短くできる。
なお、本発明は以上示した実施例のみに限定されるものではない。例えば、カウンタ値に基づく遅角量の設定は実施例に示したものとは限らず、カウンタ値と遅角量との関係をマップで記憶しておくなど非線型なものとするなどしても構わない。フローチャートも図2に示したものに限定されず、対象となる気筒にノッキングが発生した場合、この気筒の次回の点火時期までにノッキングを検出した他の気筒数を計数し、これに基づいて遅角量を設定する機能を有するものならばよい。もちろん、4気筒以外の気筒数のエンジンに関しても本発明を適用可能なのは言うまでもない。
【0019】
その他、各部の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したような形態で実施され以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、本発明は、内燃機関の各気筒の点火時期をそれぞれ独立して制御し、ノッキングを検出した際に、各気筒毎の点火時期を遅延させる点火時期制御方法であって、各気筒毎にノッキングを検出し、制御対象となる気筒にノッキングが発生した場合、当該気筒の次回の点火時期までにノッキングを検出した気筒数に応じて遅角量を決定し、この遅角量に基づいて点火時期を遅延制御することを特徴とするものであるため、内燃機関の性能低下を招かないという各気筒別の独立点火時期制御による利点を生かしつつ、ノッキングの大きさに応じて点火時期の遅角量を増大させノッキング低減を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略図。
【図2】同実施例におけるプログラムのフロ−チャート。
【図3】同実施例における点火時期を示すタイミングチャート。
【図4】従来例における点火時期を示すタイミングチャート。
【図5】他の従来例における点火時期を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
100・・・内燃機関(エンジン)
#1〜#4・・・気筒

Claims (1)

  1. 内燃機関の各気筒の点火時期をそれぞれ独立して制御し、ノッキングを検出した際に、各気筒毎の点火時期を遅角させる点火時期制御方法であって、
    各気筒毎にノッキングを検出し、
    制御対象となる気筒にノッキングが発生した場合、当該気筒の次回の点火時期までにノッキングを検出した他の気筒数が多いほど遅角量を多くして決定し、
    この遅角量に基づいて該気筒の点火時期を遅角制御することを特徴とする点火時期制御方法。
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