JP3689185B2 - 樹脂組成物およびその製造法、用途 - Google Patents

樹脂組成物およびその製造法、用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融成形時のロングラン性並びに耐熱性(リグラインド時の繰り返しの熱履歴に対する物性保持性)の改善されたポリオレフィン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を主とする樹脂組成物およびその製造法、用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエチレン、ポリプロピレンを始めとするポリオレフィン系樹脂とEVOHとの混合物を溶融成形して各種の成形物が得られているが、該技術の目的は、▲1▼各々単独では得られない物性を得ること、▲2▼ポリオレフィン系樹脂とEVOHとの積層構造物の製造時に発生する製品のクズや端部、あるいは不良品の回収による再利用(スクラップリターン或いはリグラインド)の2つに大別される。工業的な規模での実施に限るなら▲2▼の場合の方が産業上の有用性は顕著である。
しかしながら、上記の如き樹脂混合物を用いて溶融成形等によってフィルム、シートの成形物を製造しようとする場合、該組成物が成形時にゲル化を起したり、又焼けと呼ばれる熱着色樹脂や炭化した樹脂が押出機内に付着して長期間にわたって連続して溶融成形が行えない、いわゆるロングラン性が劣るという問題点がある。又、該溶融時のゲル化物が成形物中にしばしば混入するため例えばフィルム成形においてはフィッシュアイの発生をはじめとする成形物の欠陥の大きな原因となり、製品の品質低下を免れない。
【0003】
かかる問題は、前述した如くポリオレフィン系樹脂とEVOHとの積層構造物の製造時の廃品の再利用に当って特に重大な意味を有する。
即ち、最近では包装用のフィルム、シート、容器、ビン等の用途においてポリオレフィン系樹脂やEVOHがそれぞれ単独で用いられることは少なく、より多機能性の包装材が市場から要求されていることからポリオレフィン系樹脂とEVOHを必要に応じて接着性樹脂層を介在させて2層、3層あるいは4層以上の積層構造物として用いることが多く、かかる積層構造物を製造する際には通常多量の該構造物のクズや端部、更には不良品の発生を伴うため、業界ではこれらをリサイクル使用する必要があるためである。
【0004】
勿論、かかるロングラン性はEVOH又はポリオレフィン系樹脂を単独で使用する場合でも問題となることはあるが、両者が共存する時に顕著に起る特有の現象であり、実際の溶融成形作業においては上記ゲル化物が極めて頻繁にスクリーンメッシュに詰まったり、あるいは樹脂溶融物がスクリューに付着するためにそのたびごとに押出機を解体してスクリーンメッシュあるいはスクリューを清掃しなければならないという非常に面倒な作業を強いられているのである。
【0005】
上記欠点を改善する試みとして特開昭60−199040号公報には、ポリオレフィン系樹脂とEVOHの混合物中に周期律表I族、II族およびIII族から選ばれる少なくともひとつの元素を含む塩あるいは酸化物を共存させることが示されている。同公報の実施例等の記載によれば、まずEVOHに上記の塩又は酸化物を予め配合し、充分混練した後でポリオレフィン系樹脂を配合して溶融成形することが推奨されているが、上記方法では必ずしも満足する成果は得難く、ロングラン性の改善効果はせいぜい48時間程度の連続溶融成形が可能になるに過ぎず、工業的規模での溶融成形に当っては更に長期間にわたって連続運転が出来ればそれだけ有利であることは言うまでもない。
そこで、本出願人は上記の問題点を解決すべく、特定のポリオレフィン系樹脂に予めハイドロタルサイト系化合物を特定量溶融配合した後、EVOHを溶融配合する成形物の製造方法(特開昭62−179530号公報)を提案した。
また、一方ではEVOHの熱安定性や機械的性質の向上を目的として、EVOHをホウ素化合物で処理すること(特公昭49−20615号公報)も提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、特開昭62−179530号公報開示の方法では、ロングラン成形性については十分改良されるものの、上記のスクラップリターン時における度重なる熱履歴による樹脂組成物の性能変化(異物発生、強度低下等)については十分に考慮はされておらず、また、特公昭49−20615号公報開示の処理方法はEVOH単体のみの場合であり、ポリオレフィン系樹脂とEVOHのブレンド物の性能変化に関する考慮はないものであり、熱履歴の影響を受けることが少ない樹脂組成物が望まれているのである。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記の事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン系樹脂(A)、EVOH(B)、ハイドロタルサイト系化合物(C)、炭素数8以上の高級脂肪酸(D)及びホウ素化合物(E)からなり、ホウ素化合物(E)の配合量がEVOH(B)100重量部に対してホウ素換算で0.001〜0.5重量部である樹脂組成物が、スクラップリターン時における度重なる熱履歴の影響を受けることが少なく、良好な物性を維持できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
更に、上記樹脂組成物を製造するに当たり、予めEVOH(B)とホウ素化合物(E)を混合した組成物(I)及び予めハイドロタルサイト系化合物(C)と炭素数8以上の高級脂肪酸(D)を混合した組成物(II)を作製した後、(A)、(I)及び(II)を溶融混合することにより本発明の目的とする良好な樹脂組成物を得ることができ、また本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂(a)層、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリオレフィン系樹脂(a)層等の構成を有する積層体にも有用であることも見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂(A)は、特に限定されないが、チーグラー型触媒を用いて製造されたものであって触媒に起因する塩素が1〜300ppm、好ましくは3〜150ppm含有されているポリオレフィン系樹脂を用いることにより、本発明の効果をより顕著に得ることが可能となる。
かかるポリオレフィン系樹脂(A)としては、高密度、中密度、低密度の各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等の単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンを主体として1−ブテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20程度のα−オレフィンとの共重合体、更にエチレン又はプロピレン等のオレフィンの含量が90モル%以上である比較的ポリオレフィンに近い組成を有するオレフィン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等、あるいは上記ポリオレフィン系樹脂の単独又は共重合体を不飽和カルボン酸等でグラフト変性したもの等が1種又は2種以上任意に使用可能である。これらのうちでは特に210℃,2160gにおけるメルトインデックス(MI)が0.1〜15g/10分のポリエチレン系樹脂又は0.2〜12g/10分のポリプロピレン系樹脂の使用においてゲル化の問題が発生しやすく、又本発明の効果も優れている。
【0010】
本発明に用いられるEVOH(B)としてはエチレン含量20〜80モル%、好ましくは25〜70モル%、酢酸ビニル部分のケン化度90モル%以上、好ましくは95モル%以上の組成を有するものがあげられる。エチレン含量20モル%未満では熱安定性が悪く、溶融成形性が低下し、エチレン含量が80モル%を越える時は酸素遮断性が低下するので実用性に乏しい。又、酢酸ビニル部分のケン化度が90モル%未満では熱安定性が不良であり、又酸素遮断性、耐油性、耐水性等の物性に劣るので実用性に乏しい。上記EVOHはエチレンと酢酸ビニル (あるいはそれをケン化したビニルアルコール) のほかに不飽和カルボン酸又はそのエステル又は塩、不飽和スルホン酸又はその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、プロピレン、ブテン、α−オクテン、α−オクタデセンなどのα−オレフィン、酢酸ビニル以外のビニルエステルなどの第3成分を10モル%程度以下の少量含んでいてもよい。
【0011】
また、上記のポリオレフィン系樹脂(A)とEVOH(B)に配合されるハイドロタルサイト系化合物(C)とは、一般式、MxAly(OH)2x+3y-2z(E)z・aH2O(式中MはMg,Ca又はZn、EはCO3又はHPO4、x, y,zは正数、aは0又は正数)で示される化合物で、具体的には、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O,Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O,Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O,Mg8Al2(OH)20CO3・5H2O,Mg10Al2(OH)22(CO3)2・4H2O,Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O,Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O,Zn6Al6(OH)16CO3・4H2Oなどが挙げられる。又、以上に限らず例えば、Mg2Al(OH)9・3H2O中のOHの一部がCO3又はHPO4に置換された如き化学式の明確に示されないものや更には結晶水の除去されたもの(a=0)であっても同等の効果が期待できる。特にこれらのうちMがMgで、EがCO3である化合物が最も顕著な効果を示す。
【0012】
更に、ハイドロタルサイト系化合物(C)として、下記一般式で示されるハイドロタルサイト系固溶体を用いることも可能である。
[〔(M1 2+y1(M2 2+y21-xx 3+(OH)2n- x/n・mH2O]
(式中M1 2+はMg,Ca,Sr及びBaから選ばれる金属の少なくとも1種、
2 2+はZn,Cd,Pb,Snから選ばれる金属、Mx 3+は3価金属、
n- x/nはn価のアニオン、x,y1,y2,mはそれぞれ0<x≦0.5、
0.5<y1<1、y1+y2=1、0≦m<2で示される正数)
上記の一般式において、M1 2+としてはMg,Caが好ましく、M2 2+としてはZn,Cdが好ましく、更にMx 3+としてはAl,Bi,In,Sb,B,Ga,Ti等が例示できるがAlが実用的である。また、An-としては、CO3 2-,OH-,HCO3 -,サリチル酸イオン,クエン酸イオン,酒石酸イオン,NO3 -,I-、(OOC−COO)2-、ClO4-,CH3COO-,CO3 2-,(OOCHC=CHCOO)2-,〔Fe(CN)64-が挙げられ、CO3 2-やOH-が有用である。
【0013】
かかるハイドロタルサイト系固溶体の具体的実例としては、
[Mg0.75 Zn0.250.67 Al0.33(OH)2(CO30.165・0.45H2O、
[Mg0.79 Zn0.210.7 Al0.3(OH)2(CO30.15
[Mg1/7 Ca3/7 Zn3/70.7 Al0.3(OH)2(OOCHC=CHCOO)0.15・0.41H2O、
[Mg6/7 Cd1/70.7 Al0.3(OH)2(CH3COO)0.3・0.34H2O、
[Mg5/7 Pd2/70.7 Al0.30(OH)2(CO30.15・0.52H2O、
[Mg0.74 Zn0.260.68 Al0.32(OH)2(CO30.16
[Mg0.56 Zn0.440.68 Al0.32(OH)2(CO30.16・0.2H2O、
[Mg0.81 Zn0.190.74 Al0.26(OH)2(CO30.13
[Mg0.75 Zn0.250.8 Al0.20(OH)2(CO30.10・0.16H2O、
[Mg0.71 Zn0.290.7 Al0.30(OH)2(NO30.30
[Mg0.71 Zn0.290.7 Al0.30(OH)2(OOCHC=CHCOO)0.15
[Mg0.14 Ca0.57 Zn0.280.7 Al0.30(OH)2.3・0.25H2O等が挙げられ、[Mg0.75 Zn0.250.67 Al0.33(OH)2(CO30.165・0.45H2O、[Mg0.79 Zn0.210.7 Al0.3(OH)2(CO30.15、[Mg6/7 Cd1/70.7 Al0.3(OH)2(CH3COO)0.3・0.34H2O、[Mg5/7 Pd2/70.7 Al0.30(OH)2(CO30.15・0.52H2Oが好適に使用される。
【0014】
かかるハイドロタルサイト系化合物(C)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(A)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)の合計量(A+B)100重量部に対して0.00001〜10重量部が好ましく、更には0.0001〜1重量部が好ましい。かかる配合量が0.00001重量部未満では、添加効果に乏しく、逆に10重量部を越えると、成形物の物性、特に透明性、表面平滑性、柔軟性、耐衝撃性等が著しく低下して好ましくない。
本発明においては、上記(A)〜(C)からなる樹脂組成物に、更に炭素数8以上の高級脂肪酸(D)及びホウ素化合物(E)を配合することを特徴とするもので、かかる炭素数8以上の高級脂肪酸(D)としては、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、カプリン酸、ベヘニン酸、リノール酸等の高級脂肪酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩の他、亜鉛金属塩等も使用される。かかる中でもステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸またはその金属塩が効果の点で特に顕著である。
【0015】
かかる炭素数8以上の高級脂肪酸(D)の配合量は、ハイドロタルサイト系化合物(C)100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、更には0.5〜8重量部が好ましい。かかる配合量が0.1重量部未満では、耐熱性(リグラインド時の繰り返しの熱履歴に対する物性保持性)が不十分となり、逆に10重量部を越えると、成形物の機械的強度が低下して好ましくない。
また、ホウ素化合物(E)としては、▲1▼ホウ酸,ホウ砂及びこれらの誘導体、▲2▼トリフロロホロンなどのハロゲン化ホウ素類あるいはこれらのアミン配位化合物又はエーテル配位化合物、▲3▼トリメチルホウ素,トリフェニルホウ素などのトリアルキル,トリアリールホウ素類あるいはこれらのアミン配位化合物又はエーテル配位化合物、▲4▼アルキル,アリールボランあるいはアルキル,アリールボランなどのボロンハイドリッド類の有機置換化合物,又はこれらのハロゲン化物、▲5▼水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられ、具体的にはホウ酸やホウ砂が好適に用いられる。
【0016】
かかるホウ素化合物(E)の配合量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)100重量部に対してホウ素換算で0.001〜0.5重量部(10〜5000ppm)とすることが必要で、更には0.02〜0.3重量部(200〜3000ppm)が好ましい。かかる配合量が0.001重量部(10ppm)未満では、耐熱性(リグラインド時の繰り返しの熱履歴に対する物性保持性)が不十分となり、逆に0.5重量部(5000ppm)を越えると、成形物の表面荒れや偏肉等の問題が生じて成形性が不良となる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、上記の如き(A)〜(E)を配合してなるもので、その配合方法は特に限定されないが、本発明の効果を顕著に得るためには、予めEVOH(B)とホウ素化合物(E)を混合した組成物(I)と予めハイドロタルサイト系化合物(C)と炭素数8以上の高級脂肪酸(D)を混合した組成物(II)を作製した後、(A)、(I)及び(II)を溶融混合して本発明の樹脂組成物を得る方法が好ましく、更には(A)及び(II)を予め溶融混合した後、(I)を溶融混合する方法が好ましい。
【0018】
かかる混合手段としては任意の態様が挙げられる。例えば、EVOH(B)とホウ素化合物(E)の混合においては、ホウ素化合物(E)を溶媒(例えば水)に溶解して溶液とした後、該溶液をEVOH(B)に含浸させる方法やEVOH(B)とホウ素化合物(E)を直接溶融ブレンド或いはドライブレンドする方法等が挙げられ、好適には前者の含浸させる方法により組成物(I)を得る方法が採用され得る。
一方、同様にしてハイドロタルサイト系化合物(C)と炭素数8以上の高級脂肪酸(D)をヘンシェルミキサーやタンブラー等で混合した組成物(II)を得た後、該組成物(II)とポリオレフィン系樹脂(A)のペレットや粉末を溶融混合し、更に該組成物(I)を溶融混合する方法、更には該組成物(I)からなる層と該組成物(II)とポリオレフィン系樹脂(A)の混合物からなる層の2層以上のラミネート構造物を再度溶融混合する方法等が挙げられる。後者の方法においては、通常は上記ラミネート構造物の製造時に発生するクズ、端部、不良品等の破砕品(いわゆるリグラインド)を溶融混合する方法等が挙げられる。
【0019】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、各種の溶融成形物に利用される。かかる溶融成形物の製造において、溶融成形時の温度条件としては約160〜280℃とするのが望ましい。成形に際しては必要に応じガラス繊維、炭素繊維などの補強材、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、パラフィン、エチレンビスアマイド系、エポキシ系等の滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、発泡剤などの公知の添加剤を適当配合することもある。また、ポリオレフィン系樹脂(A)やEVOH(B)には予めポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル系樹脂等の改質用の熱可塑性樹脂を適当量配合しておくことも可能である。
【0020】
溶融成形法としては射出成形法、圧縮成形法、押出成形法など任意の成形法が採用できる。このうち押出成形法としてはT−ダイ法、中空成形法、パイプ押出法、線状押出法、異型ダイ押出法、インフレーション法、メルトスパン法などがあげられる。本発明の方法によって得られる成形物の形状は任意であり、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物などのみならず、これと他の樹脂との積層体も重要で、積層する場合の相手側樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(a)、EVOH(b)、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等がよく使用される。勿論、上記以外の通常の熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンであっても何等差支えない。かかるポリオレフィン系樹脂(a)及びEVOH(b)は、上記のポリオレフィン系樹脂(A)及びEVOH(B)と同様のものを用いることができる。
【0021】
具体的な積層体の層構成としては、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂(a)層、ポリオレフィン系樹脂(a)層/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリオレフィン系樹脂(a)層や更には本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層、本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/EVOH(b)層、本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/ポリオレフィン系樹脂(a)層、本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVOH(b)層/接着性樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリオレフィン系樹脂(a)層等が挙げられる。
【0022】
かかる接着性樹脂層に用いられる接着性樹脂としては、公知の接着剤を用いることができ、例えば不飽和カルボン酸又はその無水物で変性された密度0.86〜0.95g/cm3のエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく、上記のポリオレフィン系樹脂(Aまたはa)と同様の樹脂を不飽和カルボン酸又はその無水物で共重合又はグラフト変性することにより得ることができ、勿論変性には、未変性のエチレン−α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸又はその無水物のブレンドも含まれる。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、なかでも無水マレイン酸が好適に用いられる。
このときのエチレン−α−オレフィン共重合体に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物量は、0.001〜10重量%が好ましく、更に好ましくは、0.01〜5重量%である。該変性物中の含有量が少ないと接着力が低下し、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなり好ましくない。かかる接着性樹脂を隣接する層に混ぜることも可能である。
【0023】
本発明の積層体は、シートやフィルム状だけでなく、上記の共押出成形法、共射出成形法、共押出インフレ成形法やブロー成形法等により、パイプ・チューブ状やタンク・ボトル等の容器などに成形することができ、更には該積層構造体を100〜150℃程度に再度加熱して、ブロー延伸法等により延伸することも可能である。
また、本発明の積層体の各層には、成形加工性、物性等の向上のために酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、無機・有機充填剤等を本発明の効果を阻害しない範囲で添加することもできる。
【0024】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断わりのない限り、重量基準を意味する。
以下の樹脂や化合物を用意した。
[ポリオレフィン系樹脂(Aまたはa)]
A1;ポリプロピレン
(MI=0.8g/10分、密度0.90g/cm3、塩素含有量110ppm)
A2;高密度ポリエチレン
(MI=6.0g/10分、密度0.952g/cm3、塩素含有量15ppm)
A3;線状低密度ポリエチレン
(MI=1.0g/10分、密度0.923g/cm3、塩素含有量30ppm)
尚、上記のMIは、230℃(A1)又は190℃(A2,A3),2160g荷重時におけるメルトフローインデックスを表す。
【0025】
[EVOH(Bまたはb)]
B1;エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6モル%、MI=12g/10分
B2;エチレン含有量38モル%、ケン化度99.5モル%、MI=20g/10分
B3;エチレン含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MI=8.0g/10分
尚、上記のMIは、210℃,2160g荷重時におけるメルトフローインデックスを表す。
【0026】
[ハイドロタルサイト系化合物(C)]
C1;Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2
C2;Ca6Al2(OH)16CO3・4H2
C3;[Mg0.75 Zn0.250.67 Al0.33(OH)2(CO30.165・0.45H2
[炭素数8以上の高級脂肪酸(D)]
D1;ステアリン酸
D2;オレイン酸
【0027】
[ホウ素化合物(E)]
E1;ホウ酸
[接着性樹脂]
F1;変性ポリオレフィン系樹脂(商品名:アドマーQF500、三井石油化学工業(株)製)
【0028】
実施例1
ホウ素化合物(E1)の1%水溶液をEVOH(B1)100部に含浸させて、ホウ素換算で300ppmのホウ素化合物(E1)を含有する樹脂組成物(I)を得た。一方、ハイドロタルサイト系化合物(C1)100部と炭素数8以上の高級脂肪酸(D1)2部(ハイドロタルサイト系化合物に対して20000ppm)をタンブラーにより混合して組成物(II)を得た。
次いで、ポリオレフィン系樹脂(A1)100部と上記の組成物(II)0.1部を二軸押出機にて溶融混合した後、更に樹脂組成物(I)5部を溶融混合して本発明の樹脂組成物(III)を得た。
【0029】
かかる樹脂組成物(III)を用いて、下記の成形条件にてフィルム成形を行って、フィッシュアイの発生状況及びフィルム強度について評価を行った。
Figure 0003689185
尚、熱履歴により性能低下の有無も調べるために、成形後のフィルムを粉砕して再び同条件でフィルム成形を行う操作を10回繰り返して、評価を行った。
【0030】
また、フィッシュアイの発生状況については、100cm2当たりに発生する直径が0.2mm以上のものの個数を調べて、以下の通り評価した。
◎; 0〜 5個/100cm2
○; 6〜 10個/100cm2
△;11〜 50個/100cm2
×;51〜200個/100cm2
××;201個以上/100cm2
更に、フィルム強度については、JIS K 6758及び6760に準じて、破断時のフィルム強度を測定した。
【0031】
実施例2〜6、比較例1〜2
実施例1に準じて、表1及び2に示される配合により樹脂組成物(III)を作製して、同様に評価を行った。
実施例1〜6及び比較例1〜2の評価結果を表3に示す。
【表1】
Figure 0003689185
注)混合量は、重量部を表し、(E)成分の()内の値は(B)成分に対する
ホウ素換算の含有量(ppm)を表す。
【0032】
【表2】
Figure 0003689185
注)混合量は、重量部を表す。
【0033】
【表3】
Figure 0003689185
【0034】
実施例7
実施例1で得られた組成物(I)〜 II を用いて、ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層/ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層/接着性樹脂(F1)層/組成物(I)層/接着性樹脂(F1)層/ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層/ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層(厚み=100μm/400μm/50μm/100μm/50μm/400μm/500μm)の構成を有する積層体を4種7層フィードブロックダイを用いて下記条件で製造した。
【0035】
Figure 0003689185
【0036】
上記で得られた積層体を1〜5mm角程度に粉砕した物80重量部と上記のポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物20重量部をドライブレンドしたもの(樹脂組成物(III))を上記▲2▼の層として再び同条件で積層体ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層/樹脂組成物(III)層/接着性樹脂(F1)層/組成物(I)層/接着性樹脂(F1)層/樹脂組成物(III)層/ポリオレフィン系樹脂(A1)と組成物(II)のブレンド物(ブレンド重量比は100/0.1)層/、厚みは100μm/400μm/50μm/100μm/50μm/400μm/500μm)を製造した。これを1回目としてかかる操作を10回繰り返し(スクラップリターン)して、1回目、5回目及び10回目で得られた積層体を用いて、下記の条件にて真空圧空成形機でカップを成形した。尚、1回目の積層体の樹脂組成物(III)層中のEVOH含有量は約6%で、5回目及び10回目のEVOH含有量は約10%であった。
【0037】
成形条件
ヒーター温度 上下450℃
積層体表面温度 160℃
カップ形状 口部;9×9cm,底部;8×8cm,深さ;6.5cm
得られたカップの外観及び耐衝撃性を下記の要領で評価した。
(外観)
得られたカップの外観を目視観察して、以下の基準で評価した。
◎ −−− 表面平滑性良好でスジ・異物なし
○ −−− 若干スジあり、異物なし
△ −−− 全体的にスジ多い、異物なし
× −−− 全体的にスジ多く、若干異物あり
×× −−− 全体的にスジ・異物多い
【0038】
(耐衝撃性)
得られたカップにエチレングリコールを充填して、ふた材としてPP/LLDPE(厚み=60μm/120μm)フィルムでヒートシールして密封した後、0℃で2mの高さよりカップの底部からコンクリート面に落下させて、カップの破損状況を目視観察して、以下の基準で評価した。
◎ −−− 変化なし
○ −−− 若干白化あり、内容物の漏れなし
△ −−− 小さなクラック発生、内容物の漏れなし
× −−− クラック発生、若干内容物の漏れあり
×× −−− カップ破壊
【0039】
実施例8
実施例7において、組成物(I)をB1が100部とE2が0.29部の混合物とした以外は同様に行って、同様に評価をした。
実施例9
実施例7において、積層体の構成を▲1▼/▲2▼/▲3▼/▲4▼/▲3▼/▲1▼=100μm/400μm/50μm/100μm/50μm/500μmとした以外は同様に行って、同様に評価をした。
【0040】
比較例3
実施例7において、組成物(II)として比較例1の組成物(II)を用いた以外は同様に行って、同様に評価をした。
比較例4
実施例7において、組成物(I)として比較例2の組成物(I)を用いた以外は同様に行って、同様に評価をした。
実施例7〜9、比較例3〜4の評価結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
Figure 0003689185
注)上記回数は、スクラップリターンの回数を表す。
【0042】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、上記の如き(A)〜(E)成分を配合しているため、ロングラン成形性に優れ、スクラップリターン時における度重なる熱履歴による影響も受けにくく、各種積層体として利用することができ、包装フィルム、容器、ビン・ボトル、食品トレイ、シート、各種機器部品等に有用である。

Claims (11)

  1. ポリオレフィン系樹脂(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)、ハイドロタルサイト系化合物(C)、炭素数8以上の高級脂肪酸(D)及びホウ素化合物(E)からなり、ホウ素化合物(E)の配合量がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)100重量部に対してホウ素換算で0.001〜0.5重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. ポリオレフィン系樹脂(A)が1〜300ppmの塩素を含量することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. ハイドロタルサイト系化合物(C)が下記一般式で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
    MxAly(OH)2x+3y−2z(E)z・aH
    (式中MはMg,Ca又はZn、EはCO又はHPO、x,y,zは正数、aは0又は正数)
  4. ハイドロタルサイト系化合物(C)が下記一般式で示されるハイドロタルサイト系固溶体であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
    [〔(M 2+y1(M 2+y21−x 3+(OH)n− x/n・mHO]
    (式中M 2+はMg,Ca,Sr及びBaから選ばれる金属の少なくとも1種、
    2+はZn,Cd,Pb,Snから選ばれる金属、M 3+は3価金属、
    n− x/nはn価のアニオン、x,y1,y2,mはそれぞれ0<x≦0.5、
    0.5<y1<1、y1+y2=1、0≦m<2で示される正数)
  5. ハイドロタルサイト系化合物(C)の配合量がポリオレフィン系樹脂(A)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)の合計量(A+B)100重量部に対して0.00001〜10重量部で、炭素数8以上の高級脂肪酸(D)の配合量がハイドロタルサイト系化合物(C)100重量部に対して0.1〜10重量部で、ホウ素化合物(E)の配合量がエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)100重量部に対してホウ素換算で0.001〜0.5重量部であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を製造するに当たり、予めエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)とホウ素化合物(E)を混合した組成物(I)及び予めハイドロタルサイト系化合物(C)と炭素数8以上の高級脂肪酸(D)を混合した組成物(II)を作製した後、(A)、(I)及び(II)を溶融混合することを特徴とする樹脂組成物の製造法。
  7. (A)及び(II)を予め溶融混合した後、更に(I)を溶融混合することを特徴とする請求項6記載の樹脂組成物の製造法。
  8. 請求項1〜5いずれか記載の樹脂組成物を少なくとも一層とする積層体。
  9. ポリオレフィン系樹脂(a)層/樹脂組成物層/接着剤層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b)層の構成を有する請求項8記載の積層体。
  10. ポリオレフィン系樹脂(a)層/樹脂組成物層/接着剤層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b)層/接着剤層/ポリオレフィン系樹脂(a)層の構成を有する請求項8記載の積層体。
  11. ポリオレフィン系樹脂(a)層/樹脂組成物層/接着剤層/エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b)層/接着剤層/樹脂組成物層/ポリオレフィン系樹脂(a)層の構成を有する請求項8記載の積層体。
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