JP3689018B2 - 多孔体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分離膜や電池セパレータ等に使用される多孔体の製造方法、更に詳しくは、平均細孔径が1μm以下である多孔体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
成形物に連通孔を有する多孔体は様々な用途に用いられており、医療用、工業用の濾過、分離等に用いられる分離膜や、電池セパレータ、電解コンデンサー用セパレータ等のセパレータに使用されている。特に、ポリオレフィン多孔体は有機溶剤やアルカリ性または酸性の溶液に対する耐性を有することから、これら用途に広く使用されている。
【0003】
従来、多孔体の製法として基材となる樹脂に被抽出物や無機質充填材等を混合し、成形後、それらの物質を抽出する方法(以下「混合抽出法」という)が均質な多孔体が形成され易く、かつ、製造時に特殊な装置が不要であることから多くの検討がなされてきている。
【0004】
特許第2835365号には、特定の無機微粉体とSP値8.4〜10.4の有機液状体と特定のポリオレフィン樹脂を混合して溶融成形し、有機液状体及び無機微粉体を抽出する方法が開示されている。しかし、この手法では有機液状体を有機溶媒にて抽出した後に、無機微粉末をアルカリ性溶媒にて抽出するという二つの工程からなり、製造工程が複雑であった。
【0005】
また、特開昭57−100142号公報には、ポリオレフィン樹脂、ポリアルキレンオキサイド、微粉体及び水に不溶な微粉体とからなる混合物を溶融押出して膜状に成形し、該膜状物からポリアルキレンオキサイド及び微粉体を抽出する方法が開示されている。また、特開平10−296062号公報には、ポリオレフィン樹脂、水溶性高分子化合物、水溶性微粉末及び分散剤を配合してなる混合物を管状に成形し、水溶性高分子化合物と水溶性微粉末を抽出する方法が開示されている。これらの方法は、抽出工程が一回で済むというメリットはあるものの、抽出液に水溶性物質が二成分以上含まれ、この水溶性物質を再利用する際に分離することが必要となることから、各成分を分離するのに製造工程が複雑になるとともに、平均細孔径の小さい多孔体が得られ難いなどの問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、複雑な製造工程を伴わずに、しかも、混合抽出法における抽出物の分離が容易に行え、被抽出物の再利用が容易に行えるとともに、微細な細孔径を有する多孔体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、驚くべきことに特定の水溶性粉末を熱可塑性樹脂に添加して得られた熱可塑性樹脂組成物を、溶融混練し成形物とし、該成形物から温水により水溶性粉末を抽出するという単純化された工程により前記目的を達成することが可能であるということを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂Aに、水溶性粉末Bを添加して得られる熱可塑性樹脂組成物を、溶融混練して成形物とし、該成形物から水溶性粉末を抽出し、平均細孔径が1μm以下である多孔体を得ることを特徴とする多孔体の製造方法からなり、その水溶性粉末Bは全体の40〜90重量%になるように添加し、融点X℃の熱可塑性樹脂Aに、X℃より高い融点Y℃を有する水溶性粉末Bを全体の40〜90重量%になるように添加し、得られた熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂Aの融点X℃より低い融点を有する水溶性化合物を実質的に含まないものであり、X℃以上かつ水溶性粉末Bの融点Y℃未満の温度で溶融混練するものである。
【0009】
本発明の好ましい態様は、水溶性粉末Bの平均粒径が1〜500μmである上記多孔体の製造方法である。
本発明の別の好ましい態様は、水溶性粉末Bがペンタエリスリトールである上記多孔体の製造方法である。
【0010】
本発明の別の好ましい態様は、熱可塑性樹脂Aが、ポリプロピレンである上記多孔体の製造方法である。
本発明の別の好ましい態様は、熱可塑性樹脂Aが、融点150℃未満のエチレン−プロピレンランダム共重合体若しくはエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体である上記多孔体の製造方法である。
【0011】
本発明の更に好ましい態様は、溶融混練する工程が複数工程あり、その内に二軸押出機による溶融混練の工程を少なくとも一つ有する上記多孔体の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本発明の熱可塑性樹脂とは、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0013】
中でも、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂に代表されるポリオレフィン樹脂が加工性や経済性の観点から好適に用いられる。
【0014】
前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレン以外の単量体との二元以上のランダムまたはブロック共重合体及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。なお、本発明において主成分とは最も多い成分をいう。前記エチレン以外の単量体としては、特に限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数3〜12のα−オレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、一酸化炭素等が例示できる。これらは1種でも2種以上の併用でもよい。
【0015】
本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン以外の単量体との二元以上のランダムまたはブロック共重合体及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。前記プロピレン以外の単量体としては、特に限定されないが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数2〜12のα−オレフィン等が例示できる。これらは1種でも2種以上の併用でもよい。
【0016】
ポリプロピレン樹脂は、オレフィン樹脂の中でも耐熱性が高く、煮沸等の高温環境下でも耐えうることから分離膜やセパレータとして好適に用いられるが、本発明の多孔体の製造方法においても、煮沸状態の温水抽出にも耐えることからポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0017】
また、ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独重合体で162℃の融点ピークを有するが、エチレンとの2元系ランダム共重合体や、エチレン、ブテンとの3元系ランダム共重合体とすることにより、160℃から120℃程度までの範囲の融点を有する樹脂を得ることができる。後述の水溶性粉末をペンタエリスリトールとする場合に、これらのランダム共重合体を使用することにより加工条件幅を広くすることができることから、特に、好適に用いられる。
【0018】
本発明に用いられる水溶性粉末としては、水性溶媒、特に温水で溶解しうる粉末であって、該水溶性粉末の融点Y℃は、熱可塑性樹脂Aの融点X℃より高いことが必要である。具体的には、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、チオ尿素、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。また、水溶性粉末の平均粒径は、1〜500μmの範囲が好適に用いられる。1μm未満では、加工成形時の作業性が劣り、500μmを越えるものについては、水溶性粉末を抽出した多孔体の細孔径の微細化に多くの混練工程を必要とすることとなり、ともに好ましくない。
【0019】
これらの水溶性粉末においてペンタエリスリトールは、不活性であり加工時の安定性に優れ、抽出後に多孔体に残存した場合でも安定であることから好適に用いられる。ペンタエリスリトールの融点は260℃であるが、工業用として入手されるペンタエリスリトールは、不純物としてジペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトール等の縮合体を含むことから、190℃前後にも融点ピークを有する。従って、本発明の水溶性粉末としてペンタエリスリトールを使用する際には、加工温度は、190℃未満、更に好ましくは、180℃以下である。更に、この様なペンタエリスリトール及びその縮合体の一部がエステル化された化合物であっても、その融点が好ましい範囲に入るものであれば使用することができる。本発明で言うペンタエリスリトールとはこの様な化合物を含有する場合も包含するものである。以上詳述したように本発明の水溶性粉末が複数の化合物からなる混合物である場合には、その内の最低の融点を有する化合物の融点がY℃になる。
【0020】
水溶性粉末の添加量は、全体の40〜90重量%になるように添加される。40重量%未満では、溶出時間が掛かりすぎ、90重量%を越えると機械的強度や成形性が悪くなり所期の形状保持が不可能となり、ともに好ましくない。
【0021】
前記ポリオレフィン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される酸化防止剤、ヒンダードアミン系耐候剤、紫外線吸収剤、防曇剤や帯電防止剤等の界面活性剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、抗菌剤、防黴剤、顔料等を必要に応じて配合することができる。
【0022】
また、軟化温度を低下させたり柔軟性を向上させるためにシングルサイト触媒や公知のマルチサイト触媒で重合されたエチレン−ジエン弾性共重合体、エチレン−プロピレン弾性共重合体、スチレン−ブタジエン弾性共重合体等の弾性共重合体を添加しても構わない。
【0023】
本発明における多孔体の製造方法では、熱可塑性樹脂の融点X℃より低い融点を有する水溶性化合物は実質的に含まないことが必要である。X℃より低い融点を有する水溶性化合物は、溶融混練時に練り低下を及ぼし、水溶性粉末の混練による微粉化を阻害し、多孔体の細孔径を大きくすることとなり、また、抽出後に水溶性粉末を再利用する際に、水溶性化合物との分離工程が必要となるなど製造工程が複雑になり好ましくない。なお、実質的に含まないとは、前記微粉化を阻害したり、抽出後に分離工程が必要となるレベルの添加率は含まないことを指す。
【0024】
次に、本発明の多孔体の製造方法について述べる。上述した熱可塑性樹脂Aに水溶性粉末Bが全体の40〜90重量%になるように加え溶融混練し、シート、フィルム、パイプ等の成形物とする。溶融混練の手法は、公知の単軸押出機、二軸押出機やミキシングロール等が用いられるが、本発明の多孔体の製造方法では、多孔体の細孔径の微細化の観点から、溶融混練の工程が二つ以上含むことが望ましく、ポリオレフィン系樹脂と水溶性粉末を溶融混練後にペレット化し、該ペレットを更に押出機にて溶融混練し成形する手法や、ポリオレフィン系樹脂と水溶性粉末を溶融混練し、溶融状態のまま別種押出機により溶融混練するタンデム成形の手法が好ましい。また、これらの溶融混練の工程には、練りの強い二軸押出機を用いる工程が一つ以上含まれることが望ましい。このように溶融混練工程を二つ以上とし、二軸押出機による溶融混練工程を少なくとも一つ以上含む場合には、多孔体の細孔径の微細化が図れるだけでなく、製造時間に対して律速となっている抽出工程における水溶性粉末の抽出時間の短縮にもつながり生産性の向上が図れることとなる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂と水溶性粉末を溶融混練後にペレット化する場合、公知の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサーや混練ロール等を用い、ポリオレフィン系樹脂の融点以上であって水溶性微粉末の融点未満の加工温度にて溶融混練し、0.5〜3mmの細孔を有するノズルから押出後切断してペレット化したり、該溶融混練物を0.5〜5mm厚さのシート状に押出して冷却した後に角切りによりペレット化する。
【0026】
このようにして得られたペレットを、単軸押出機や二軸押出機、射出成形機等を用い、ポリオレフィン系樹脂の融点以上であって水溶性微粉末の融点未満の加工温度にて溶融混練し、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品や射出成形品とする。
【0027】
また、タンデム法の場合には、公知の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサーや混練ロール等を用い、ポリオレフィン系樹脂の融点以上であって水溶性微粉末の融点未満の加工温度にて溶融混練したのち、該溶融混練物を単軸押出機や二軸押出機に投入し、ポリオレフィン系樹脂の融点以上であって水溶性微粉末の融点未満の加工温度にて溶融混練し、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品とする。
【0028】
なお、溶融混練の押出工程では、スクリュー先端に50〜300メッシュの金網を入れて、微粉化された水溶性粉末の凝集物を取り除いても構わない。
【0029】
得られた成形物は、抽出液として水性溶媒を用いて水溶性粉末を抽出するが、水溶性溶媒としては水の他に水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が用いられ、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。なお、抽出後の水溶性微粉末を回収、再利用しやすくするためには有機溶媒を使用しない温水による抽出法が望ましい。
【0030】
こうして得られた多孔体は、真空成形や圧空成形などの熱成形や延伸加工等を施しても構わないし、また、スルホン化処理やコロナ処理等を施して表面改質を行っても構わない。
【0031】
本発明の多孔体の製造方法においては、抽出液に含まれる水溶性成分が単成分のため分離工程が不要であり、抽出液から水溶性粉体成分を回収する方法としては、公知の濃縮・晶析技術が用いられる。中でも分離膜による濃縮やスプレードライヤ方式による晶析技術が好適に用いられる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における測定方法及び評価法は、下記方法により実施した。
【0033】
(1) 気孔率:次式より算出した。
気孔率=空孔容積÷膜全容積×100
空孔容積=含水重量−絶乾重量
(2) 平均細孔径および最大細孔径:
ASTM F316−86およびASTM E128に基づいて、Perm−Porometer(PORUS MATERIALS INC.製)にて測定した。
(3) 平均粒径:
水溶性粉末の平均粒径は、ベックマン・コールター(株)製レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS100Qを用いて測定した。
(4) 抽出時間:
80℃温水にそれぞれ0.5、1、2、4時間浸漬し、水溶性粉末規定量(70重量%)の90%が抽出された時間を抽出時間とした。
(5) メルトフローレート:
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件にて測定した。
(6) 融点:
DSC測定装置(セイコー電子製SSC−5000)を用い、温度範囲40℃〜300℃、昇温速度20℃/分の条件にて測定し、吸熱ピークが頂上になる位置の温度を、融点とした。
【0034】
実施例1〜2
融点162℃、メルトフローレート(230℃、21.18N)=4.0g/10分、密度=0.90g/cm3のポリプロピレンパウダー(チッソ(株)製、プロピレン単独重合体)に、フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社製、商品名「Irganox 1010」)を0.1重量%、191℃と262℃に融点ピークを有する平均粒径210μmのペンタエリスリトールを70重量%配合し、45mmφ二軸押出機(池貝鉄工(株)製、装置名:PCM45)にて加工温度180℃にて溶融混練し、Tダイより膜状に押出し、一対の冷却ロールにより冷却し厚さ2mmのシートを成形した。
得られたシートを角切りペレターザー(朋来鉄工(株)製)を用い、2mm角のペレット状とし、更に、50mmφ単軸押出機(ナカタニ(株)製)にて加工温度170℃(実施例1)及び180℃(実施例2)にて溶融混練し、Tダイより膜状に押出し、一対の冷却ロールにより冷却し、厚さ0.3mmのシートを得た。次に、該シートを80℃の温水に浸漬し多孔体とした。得られた成形物の表面状態は、成形温度170℃にて肌荒れが認められたものの、成形温度180℃では良好であった。
【0035】
実施例3〜4
ポリプロピレン樹脂を融点146℃、メルトフローレート(230℃、21.18N)=8.0g/10分、密度=0.90g/cm3のポリプロピレンパウダー(チッソ(株)製、プロピレン−エチレンランダム共重合体)とし、成形加工温度を160、170℃とする以外は実施例1と同様に実施した。得られた成形物の表面状態は、成形温度160℃にて若干肌荒れが認められたものの、成形温度170℃では良好であった。
【0036】
実施例5〜6
ポリプロピレン樹脂を融点130℃、メルトフローレート(230℃、21.18N)=5.0g/10分、密度=0.90g/cm3のポリプロピレンパウダー(チッソ(株)製、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体)とし、成形加工温度を150、160℃とする以外は実施例1と同様に実施した。得られた成形物の表面状態は、成形温度150℃にて若干肌荒れが認められたものの、成形温度160℃では良好であった。
【0037】
比較例1〜2
成形時の加工温度を200、240℃とする以外は実施例2と同様に実施した。加工温度が共にY℃を越えるため、加工温度200℃の場合、得られた多孔体の平均細孔径が6.1μmと大になり、また、加工温度240℃では、ペンタエリスリトールの一部が溶融しマトリックスポリマーであるポリプロピレンと相分離を起こし、シート成形は不可能であった。
【0038】
実施例7
二軸押出機を用いる代わりに単軸押出機(ナカタニ(株)製、装置名:NVC50)を用いてペレット化を実施する以外は実施例2と同様に実施した。
【0039】
実施例8
実施例2のポリプロピレンパウダー、フェノール系酸化防止剤およびペンタエリスリトールからなる配合物を直接50mmφ単軸押出機(ナカタニ(株)製)に投入し、加工温度を180℃にて溶融混練し膜状に押出し、一対の冷却ロールにより冷却し、厚さ0.3mmのシートを得た。次に、該シートを80℃の温水に浸漬し多孔体とした。
【0040】
比較例3
実施例2のポリプロピレンパウダー、フェノール系酸化防止剤およびペンタエリスリトールからなる配合物を直接50mmφ単軸押出機(ナカタニ(株)製)に投入し、加工温度を200℃にて溶融混練し膜状に押出し、一対の冷却ロールにより冷却し、厚さ0.3mmのシートを得た。次に、該シートを80℃の温水に浸漬し多孔体とした。溶融混練温度がY℃を超えるものであったため得られた多孔体の平均細孔径は20μmと大であった。
【0041】
比較例4〜5
実施例2のポリプロピレンパウダー、フェノール系酸化防止剤0.1重量%、ペンタエリスリトール70重量%に加え、融点60℃、分子量35000のポリエチレングリコールを5.10重量%添加する以外は実施例2と同様に実施した。融点がX℃未満の樹脂を含むため得られた多孔体の平均細孔径は15.21μmと大であった。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明の多孔体の製造方法は、特定の水溶性粉末を含み、使用する熱可塑性樹脂の融点よりも低い融点を有する水溶性化合物を実質的に含まない熱可塑性樹脂組成物を水溶性粉末の融点よりも低く、かつ、熱可塑性樹脂の融点以上の加工温度で溶融混練し、所定の形状に成形したのち、水溶性粉末を抽出し、平均細孔径が1μm以下である多孔体を得ることを特徴とする。この製造方法により、多孔体の細孔径を微細化できるだけでなく、水溶性粉末を抽出後に再利用する際にも特別の分離装置を必要とせず、生産工程の簡略化も可能となり、分離膜やセパレータ等の用途に安価に多孔体を提供することが可能となった。
Claims (5)
- 融点X℃の熱可塑性樹脂Aに、X℃より高い融点Y℃を有し、平均粒径が1〜500μmである水溶性粉末Bを全体の40〜90重量%になるように添加し、X℃より低い融点を有する水溶性化合物を実質的に含まない熱可塑性樹脂組成物を、X℃以上かつY℃未満の温度で溶融混練して成形物とし、該成形物から水溶性粉末を抽出し、平均細孔径が1μm以下である多孔体を得ることを特徴とする多孔体の製造方法。
- 水溶性粉末Bがペンタエリスリトールである請求項1に記載の多孔体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂Aが、ポリプロピレンである請求項1〜2のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂Aが、融点150℃未満のエチレン−プロピレンランダム共重合体若しくはエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
- 溶融混練する工程が複数工程あり、その内に二軸押出機による溶融混練の工程を少なくとも一つ有する請求項1〜4のいずれかに記載の多孔体の製造方法。
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