JP3689016B2 - 制振材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は制振材、特にその制振効果の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来制振材は振動を制御する目的で広く採用されており、モーター等の振動制御に用いられている。例えばカセットテープラベル、ハンディカメラ、コンピューターのハードディスクおよびファン周りCD、MD等のノイズ制御に用いられている。
従来の制振材としては、アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、精密機器においては極微細なノイズも嫌うため、高い制振効果が要望されており、前記従来の制振材では未だ制振効果が不充分であった。
本発明は、上記課題に鑑み為されたものであり、その目的は振動を抑制する能力に優れた制振材を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、軟凝集させた板状粉体を含むフィルム状樹脂に優れた制振効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる制振材は、軟凝集させた板状粉体を含む樹脂からなることを特徴とする。ここで、該板状粉体はアルミナ処理された雲母チタンからなることを特徴とする。
【0005】
また本発明にかかる制振材において、軟凝集体は板状粉体の体積平均粒子径を100%とするとき、その凝集粒子の体積平均粒子径が102%〜200%にある板状粉体を含む樹脂からなることを特徴とする。
【0006】
また、本発明にかかる制振材においては、板状粉体は雲母チタンにアルミナを1〜10重量部で表面処理したものであることが好適である。
また、本発明にかかる制振材においては、板状粉体が焼成処理されていることが好適である。
【0007】
また、本発明にかかる制振材においては、フィルム層または粘着層の少なくとも一層からなることが好適である。
また、本発明にかかる制振材においては、粘着層がブチルアクリレート共重合体から選ばれることが好適である。
また、本発明にかかる制振材においては、前記フィルム層の厚さが50μm〜300μmであることが好適である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する。本発明にかかる制振材は、軟凝集させた板状粉体を含むフィルム層または粘着層の少なくとも一層からなることを特徴とする。また本制振材がフィルム層と粘着層からなる場合は粘着層に板状粉体を含まなくてもよい。
【0009】
本発明に用いられる板状粉体は例えば鱗片状雲母の表面に二酸化チタンを物理化学的に結合して形成した雲母チタンであり、さらにアルミナにより表面処理をしたものが好適に用いられる。
軟凝集させる手段としては、上記板状粉体を約150〜900℃で1時間〜10時間焼成処理することが挙げられる。
【0010】
雲母チタンにおける雲母への二酸化チタンの被覆方法としては、とくに限定はないが例えば四塩化チタンの加水分解法、硫酸チタニルの加水分解法、テトラアルコキシチタンの加水分解法等の方法で被覆することができる。
板状粉体として用いる雲母チタンには特に制限はないが、通常雲母チタンの組成は雲母:二酸化チタンの重量比で80:20〜20:80である。
【0011】
また、雲母チタンは表面に低次酸化チタン層を有していてもよい。そして雲母チタンの表面にチタン以外の金属、例えばリチウム、ニッケル、コバルト、鉄等を含むチタン系複合酸化物層を有していてもよい。
板状粉体の粒径は球形換算で5〜100μmが好適であり、10〜60μmがより好適である。5〜100μmの粒径を外れると優れた制振効果が得られないことがある。
【0012】
フィルム層、粘着層の材質については、本発明の効果を損なわない限り通常当業者が用い得る樹脂を使用することができるが、以下のものを用いるのが制振効果上より好適である。
【0013】
フィルム層
本発明においては、フィルム層を構成する樹脂として例えば、ポリプロピレン(以下「PP」とする)、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」とする)等の通常当業者が用い得る樹脂を使用できるが、とくにPP樹脂は制振効果が高く好ましい。
フィルムの厚さは50〜300μmが好適であり、より好ましくは100μm〜300μmである。フィルム層が50μmより薄いと制振効果を十分に発揮することができないことがあるので好ましくない。また300μmを超えてもそれ程の効果は期待できないことがあり、また用途によっては厚くできないこともあり経済的にも好ましくない。
【0014】
粘着層
本発明の制振材に使用する粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、経済性の面からゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0015】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下SISと略す)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(以下SBSと略す)、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(以下SBRと略す)、ニトリル共重合体(以下NRと略す)、ニトリル−ブタジエン共重合体(以下NBRと略す)等を用いることができ、添加物として粘着付与剤、軟化剤、タッキファイヤー、老化防止剤を必要に応じて用いてもよい。
【0016】
粘着付与剤としては、例えばロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂等が挙げられる。
軟化剤としては、例えば流動パラフィン、ポリブテン、鉱油、ラノリン、ポリイソプレン、ポリアクリレート、ヘキサメチルテトラコサン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
【0017】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基を有する重合性単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体から形成される共重合体からなり、この共重合体が特定の架橋剤により形成された架橋構造を有しているものを用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素原子数が1〜12のアルキル基を有する化合物が好ましい。本発明で好適に使用されるアルキル基の炭素数が1から12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。
【0018】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独であるいは組み合わせて用いることができる。上記のような(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に用いられる官能基を有する重合性単量体は、後述する多官能化合物と反応性を有する官能基と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なエチレン性二重結合とを有する化合物である。この重合性単量体の有する官能基の例としては、カルボキシル基、アミド基、水酸基を有する基を挙げることができる。
【0019】
官能基としてカルボキシル基を有する重合性単量体としては、具体的には、α、β−不飽和カルボン酸を挙げることができ、この不飽和カルボン酸は、通常は1〜2個程度のカルボキシル基を含有している。このα、β−不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。アミド基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。水酸基を有する官能基としてはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0020】
アクリル系粘着剤を形成するアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを60〜99.9重量%、好ましくは70〜99.5重量%、官能基を有する重合性単量体を0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、そして他の単量体を0〜39.9重量%、好ましくは0〜29.5重量%の量で配合して共重合させることにより製造される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60重量%に満たないと、得られるアクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が高くなり、低温での柔軟性が低下する。また、官能基を有する重合性単量体が0.1重量%に満たないと、ポリマーの凝集力が極端に低下して粘着性が悪くなり、また官能基を有する重合性単量体が15重量%を超えると、得られるアクリル系共重合体の粘着性が低下する。また他の単量体の量が39.9重量%を超えることは相対的に(メタ)アクリル酸アルキルエステルあるいは官能基を有する重合性単量体の量が減少することを意味し、得られるアクリル系共重合体に所期の物性が発現しない。
【0021】
前記粘着剤のなかで、とくにSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、NR(ニトリルゴム)、ブチルアクリレートの共重合体から選ばれる粘着剤が好適であるが、この中でもブチルアクリレート共重合体が最も制振効果に優れている。
【0022】
さらに、前記粘着剤には、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、滑り剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤などを配合することができる。
【0023】
このようにして配合された上記混合物は、塗布加工されるが、通常は剥離紙や剥離剤処理したシート上に、ダイコーター(Tダイ)、ナイフコーター、ロールナイフコーター、リバースコーター等の薄層塗布装置を用いて塗布される。塗布厚は、乾燥後の厚さで通常は5μm〜100μm程度である。
【0024】
板状粉体の表面処理
本発明では板状粉体アルミナ等の凝集作用をもたらすことができる物質により表面処理を行うことが挙げられる。アルミナで表面処理をする場合、板状粉末に対して1〜10重量部が好適である。1重量部より少ないと表面処理した効果が得られないことがあり、逆に10重量部より多くても制振効果が落ちることがある。
なお、こうして得られた板状粉体は最終的に約150〜900℃で1時間〜10時間焼成処理が施されていることが好ましく、600〜800℃で1時間〜10時間焼成処理が施されていることがより好ましい。
【0025】
軟凝集の度合い
本発明でいう板状粉体の軟凝集の程度は、板状粉体の粒子径を100%としたとき、その凝集粒子の粒径は好ましくは102%〜200%、より好ましくは105%〜130%である。凝集粒子の粒径が102%より小さいと板状粉体同士の摩擦が少ないので制振効果を充分に発揮することができない。また、200%より大きくても板状粉体の凝集が強すぎるため充分な制振効果を得られない。
【0026】
使用形態及び用途
本発明にかかる制振材は、樹脂100重量部に0.1〜50重量部の雲母チタンからなる板状粉体が存在していることが好ましく、より好ましくは5重量部〜40重量部である。ただし制振材がフィルム層と粘着層からなる場合は、フィルム層中に板状粉体が存在すれば、粘着層に板状粉体が存在しなくてもよい。なお、本制振材はフイルム状の形態を用いず接着剤の形態でも用いることができる。
【0027】
本発明にかかる制振材は、モーター等の振動を効率良く抑制するのに用いることができる。例えばカセットテープラベル、ハンディカメラ、コンピューターのハードディスクおよびファン周りCD、MD等のノイズ制御に用いることができる。
【0028】
【実施例】
本発明の実施例について記載する。なお、本発明はこれら実施例により何等制限されるものではない。実施例に先だって、制振効果の測定方法、板状粉体のアルミナ処理方法及び粘着剤の調製と塗布方法について示す。
【0029】
<制振効果の測定方法>
JIS G 0602 制振鋼板の振動減衰特性試験方法の中央支持法に従い、加振方法は「電磁加振」を用い、試験片は各サンプル(板状粉体を練り込んだフィルム状樹脂)に粘着剤を乾燥後の厚さが20μmになるように塗布しPET250μmに圧着させ、サンプルサイズ25mm×100mmとして測定した。なお、損失係数は前記規格の「半値幅法」により求めた。
【0030】
<板状粉体のアルミナ処理>
雲母チタン100重量部を水1000重量部に分散させ、次いで適量の硫酸アルミニウムとこれと当量以上の尿素を溶解させ、撹拌しながら加熱、沸騰させて4時間反応させた。反応終了後ろ過、水洗し100℃/10時間乾燥させた後、250℃で3時間焼成した。
【0031】
<粘着剤の調製とサンプルの作製>
1.アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート共重合体)の調製
還流器および攪拌機が設置されたフラスコ内に、アクリル酸ブチル95重量部、アクリル酸5重量部、酢酸エチル100重量部及び、過酸化ベンゾイル0.02重量部を添加し、均一に撹拌後、窒素気流下、撹拌を続けながら還流温度で6時間反応させ重合物を調製した。
【0032】
2.ラミネート
前記1.で調製したアクリル酸エステル共重合体に架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン(株)社製)を1重量部添加し撹拌後、片面シリコーン処理したPET250μm上に、乾燥後の厚みが20μmになるようロールナイフコーターで塗布し、100℃2分間乾燥させサンプル基材(板状粉体を練り込んだフィルム状樹脂)と貼り合わせ制振材サンプルを作成した。
以下とくに記載がない限り上記粘着剤を用いたが、その他の粘着剤について下記に示す。
【0033】
NR(ニトリルゴム)
1.で調製したアクリル酸エステル共重合体をニトリルゴム(商品名PV−2、リンテック(株)社製)に変更した以外は同様の操作を行った。
SBS スチレン-ブタジエン-スチレン 共重合体)+ SIS スチレン-イソプレン-スチレンブロック 共重合体)
1.で調製したアクリル酸エステル共重合体をスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体とスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の混合物(商品名PG−2、リンテック(株)社製)に変更した以外は同様の操作を行った。
【0034】
SBS スチレン-ブタジエン-スチレン 共重合体)
1.で調製したアクリル酸エステル共重合体をスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(商品名SH、リンテック(株)社製)に変更した以外は同様の操作を行った。
【0035】
本発明と従来技術との比較
本発明者らは従来の制振材と本発明のものとを比較すべく、試験を行った。
<制振材の作成>
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に板状粉体(商品名インフィニットカラーGBG−02:(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母(二酸化チタン:雲母の重量比=57:43)、(株)資生堂製))に対して1重量部アルミナ処理した粒径10〜60μmのもの35重量部を混入成形して厚さ250μmのフィルム状制振材を得た。
【0036】
(比較例1)
厚さ250μmのポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルムにアルミニウム金属を蒸着させてフィルム状制振材を得た。
【0037】
(比較例2)
厚さ250μmのポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルムを用いた。
次に前記実施例1のフィルム状制振材に一定の振動を与えた際の振動減衰挙動を図1に示す。同様に比較例1のフィルム状制振材の振動減衰挙動を図2に、比較例2のフィルム状樹脂の振動減衰挙動を図3に示す。図1〜図3よりわかるように、本発明にかかる板状粉体を添加し、その粉体が軟凝集状態にあるフィルム状制振材は何も添加していない比較例2のフィルム状樹脂と比較して著しい制振効果を示した。また、本発明にかかる実施例1のフィルム状制振材は従来のアルミニウムを蒸着したフィルム状制振材と比較しても振動の減衰する時間が短く、優れた制振効果を示すことがわかる。
【0038】
板状粉末の粒径
つぎに本発明者らは板状粉体の粒子径の検討のため実施例2〜9を下記のように作成した。粒子径の異なる板状粉体を含むフィルム状制振材の制振効果を前記同様の方法で測定し、損失係数は「半値幅法」を用いて算出した。なお、板状粉体(商品名インフィニットカラー・GBG−02:1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製)に対して1重量部アルミナ処理済みのものを用いた。樹脂はPET樹脂を用いて、厚さ250μmのフィルム状制振材を得た。
【0039】
板状粉体の含有量をPET100重量部に対し0.125重量部とし、測定温度を23℃としたときの制振効果を、表1及び図4に示す。なお、損失係数ηが大きいほど制振効果が高いことを示している。
【表1】
Figure 0003689016
【0040】
図4より、板状粉体の粒径は、損失係数が高い傾向のある球状換算で10〜60μmのものが好適であることがわかる。
次に同じ制振材を40℃にしたときの制振効果を次の表及び図5に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0003689016
【0042】
次に前記板状粉体の含有量を0.250重量部とし、測定温度を23℃としたときの制振効果を、次の表及び図6に示す。
【表3】
Figure 0003689016
【0043】
次に同じ制振材を40℃にしたときの制振効果を次の表及び図7に示す。
【表4】
Figure 0003689016
【0044】
次に前記板状粉体の含有量を0.5重量部とし、測定温度を23℃としたときの制振効果を、表5及び図8に示す。
【表5】
Figure 0003689016
【0045】
次に同じ制振材を40℃にしたときの制振効果を表6及び図9に示す。
【表6】
Figure 0003689016
【0046】
上記図4〜9及び表1〜6の結果より、本発明にかかる制振材は約40〜約1000Hzの低高周波数帯において、優れた制振効果を示すことがわかる。また、とくに板状粉体の粒径は10〜60μmのものが優れており、その温度範囲も幅広く適用できることがわかる。また、板状粉体添加量は多い程温度上昇による制振性能の低下が少ない傾向にあることがわかる。
【0047】
粘着剤の種類と制振効果
つぎに本発明者らは粘着剤の検討のため、実施例10〜14を下記のように作成した。異なる粘着剤を塗布した制振材の制振効果を前記同様の方法で測定した。なお、フィルム状制振材は、板状粉体は(商品名インフィニットカラー・GBG−02(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製))の1重量部アルミナ処理済みのものをPP樹脂に5重量部混入し厚さ250μmに成形したものを使用した。
【0048】
粘着剤はSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)+SIS(スチレン−イソプレン−スチレン共重合体)、NR(ニトリルゴム)、SBS(20μm)、SBS(50μm)、ブチルアクリレート共重合体の5種について、厚さ250μmの剥離フィルムの剥離面に20μmの厚さに塗布し試験を行った。なお、SBS(50μm)は2.5倍の50μmの厚さに塗布した。
【0049】
測定温度を23℃としたときの制振効果を、表7及び図10に示す。
【表7】
Figure 0003689016
【0050】
測定温度を40℃としたときの制振効果を、表8及び図11に示す。
【表8】
Figure 0003689016
【0051】
測定温度を60℃としたときの制振効果を、表9及び図12に示す。
【表9】
Figure 0003689016
【0052】
上記図10〜12及び表7〜9の結果より、ブチルアクリレート共重合体>NR・SBS(50μm)・SBS+SIS>SBS(20μm)の順に制振効果があることがわかる。また、温度別に見ると、
23℃:ブチルアクリレート共重合体>SBS+SIS>NR>SBS(50μm)
40℃:ブチルアクリレート共重合体>NR>SBS+SIS>SBS(50μm)
60℃:ブチルアクリレート共重合体>NR>SBS(50μm)>SBS+SIS
となる傾向があることがわかる。とくに、ブチルアクリレート共重合体は全ての温度で最高の制振効果を示し、60℃で測定限界を超えるほど高い制振効果を示した。
また、全般的に測定温度が高い程制振効果は減少する傾向にあることがわかる。
【0053】
アルミナ表面処理
つぎに本発明者らは板状粉体の表面処理の検討のため実施例15〜27を下記のように作成した。アルミナ表面処理量の異なる板状粉体を含むフィルム状制振材の制振効果を前記同様の方法で測定した。板状粉体の含有量は5重量部とし測定温度は40℃とした。
板状粉体に商品名Ir103(二酸化チタン:雲母=30:70の雲母チタン、メルク社製)を用い、厚さ250μmのPP樹脂のフィルムとしたときの制振効果を、表10及び図13に示す。
【0054】
【表10】
Figure 0003689016
【0055】
つぎに板状粉体に商品名Ir235(二酸化チタン:雲母=57:43の雲母チタン、メルク社製)を用い、厚さ250μmのPP樹脂のフィルムとしたときの制振効果を、表11及び図14に示す。
【0056】
【表11】
Figure 0003689016
【0057】
上記図13、14及び表10、11の結果より、商品名Ir103(二酸化チタン:雲母=30:70)と商品名Ir235(二酸化チタン:雲母=57:43)でそれ程差がないことから、二酸化チタンと雲母の比の差によっては制振効果はそれ程大きく変わらないことがわかる。またアルミナの板状粉体への表面処理は約1〜10重量部であれば制振効果を得られることがわかる。
【0058】
板状粉体に商品名インフィニットカラー・GBG−02(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製)を用い、フィルム状樹脂を層厚100μmのPPとしたときの制振効果を、表12及び図15に示す。
【0059】
【表12】
Figure 0003689016
【0060】
つぎに板状粉体に商品名インフィニットカラー・GBG−02(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製)を用い、フィルム状樹脂を層厚250μmのPPとし、粘着剤をブチルアクリレート共重合体にしたときの制振効果を、表13及び図16に示す。
【0061】
【表13】
Figure 0003689016
【0062】
上記図15、16及び表12、13の結果より、本発明において板状粉体のアルミナ表面処理は約1〜10重量部が好適であることがわかる。
また、制振効果はフィルム状樹脂膜厚が厚い程高い関係にあった。また、同じ膜厚でフィルム状樹脂材質を変えた場合、PP樹脂の方が板状粉体を多量に配合可能であり、制振効果は、PET樹脂よりPP樹脂のほうが優れていた。
【0063】
板状粉体の粒度
つぎに板状粉体の軟凝集の度合いについて、レーザー拡散式粒度分布測定装置LEEDS&NORTHRUP社製MICROTRAC II により測定を行った。板状粉体は商品名インフィニットカラー・GBG−02(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製)を用いた。
【0064】
まず、アルミナ処理をしない板状粉体の粒度分布を次の表14に示す。
【表14】
Figure 0003689016
【0065】
次に、2重量部アルミナ処理をした板状粉体の粒度分布を次の表15に示す。
【表15】
Figure 0003689016
【0066】
次に、4重量部アルミナ処理をした板状粉体の粒度分布を次の表16に示す。
【表16】
Figure 0003689016
【0067】
次に、8重量部アルミナ処理をした板状粉体の粒度分布を次の表17に示す。
【表17】
Figure 0003689016
【0068】
上記表14〜17の結果より、アルミナの処理量が増加するにつれ粒度分布が若干大粒径側にシフトしている。したがって、アルミナの処理量が増加するにしたがって板状粉体の体積平均粒径が上がり凝集性が高まっていることがわかる。
【0069】
次に本発明者らは、制振材における板状粉体の軟凝集の好適な範囲について、より詳細に検討した。各板状粉体の種類と平均粒径、粒子凝集率(凝集処理後の平均粒子径/凝集処理前の平均粒子径×100と定義)及びその板状粉体を用いた制振材の制振効果の有無を表18に示す。
<測定方法>
板状粉体である商品名インフィニットカラー・GBG−02(1.5重量部の金属チタンによって還元した二酸化チタン被覆雲母、(株)資生堂製)にアルミナ処理を0〜10重量部行い、処理後250℃で3時間焼成を行った。平均粒径はレーザー拡散式粒度分布測定装置LEEDS&NORTHRUP社製MICROTRACIIにより測定を行い、制振効果については、各粉体5重量部とし、測定温度40℃にて、前記同様の方法で制振材の制振効果を測定した。
【0070】
【表18】
Figure 0003689016
【0071】
上記表18より、本発明の制振材における板状粉体の軟凝集の度合いはより好ましくは板状粉体の平均粒子径を100%とするとき、その凝集粒子の平均粒子径が105%〜130%の範囲にあることがわかる。
【0072】
板状粉体の軟凝集と制振効果の関係について、以下のように説明できる。
軟凝集粉体の粒子径が板状粉体の粒子径の102%〜200%にあるときは、図17のAで示される。すなわち、樹脂1中に板状粉体2は軟凝集の状態にある(矢印は振動を示す)。このため、振動が伝わると、板状粉体2aは板状粉体2a’と摩擦がおき、振動エネルギーが熱エネルギーに変換される。このようにして本発明の制振材は振動を吸収すると考えられる。
また、凝集粉体の粒子径が板状粉体の粒子径の102%未満にあるときは図17のBで示される。すなわち、樹脂1中の板状粉体2は凝集度合いが低すぎるため、振動が伝わっても板状粉体2bと板状粉体2b’の間に摩擦を生じることが少ない。このため、制振効果が得られないと考えられる。
また、凝集粉体の粒子径が板状粉体の粒子径の200%を超えるときは図17のCで示される。すなわち、樹脂1中の板状粉体2は強い凝集状態にある。このため、板状粉体2cと板状粉体c’の間が強く結合しているので、振動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換できないと考えられる。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる制振材によれば、軟凝集させた板状粉体を含む樹脂からなるので、高い制振効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるフィルム状制振材の振動減衰挙動を示した図である。
【図2】比較例1の従来型フィルム状制振材の振動減衰挙動を示した図である。
【図3】比較例2のフィルム状ポリエチレンテレフタレート樹脂の振動減衰挙動を示した図である。
【図4】本発明にかかる制振材(板状粉体0.125重量部含有)の23℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図5】本発明にかかる制振材(板状粉体0.125重量部含有)の40℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図6】本発明にかかる制振材(板状粉体0.250重量部含有)の23℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図7】本発明にかかる制振材(板状粉体0.250重量部含有)の40℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図8】本発明にかかる制振材(板状粉体0.5重量部含有)の23℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図9】本発明にかかる制振材(板状粉体0.5重量部含有)の40℃における板状粉体の粒子径による制振効果の変化を示す図である。
【図10】本発明にかかる制振材の23℃における粘着剤の種類による制振効果の変化を示す図である。
【図11】本発明にかかる制振材の40℃における粘着剤の種類による制振効果の変化を示す図である。
【図12】本発明にかかる制振材の60℃における粘着剤の種類による制振効果の変化を示す図である。
【図13】本発明にかかる制振材(板状粉体として雲母:二酸化チタン=30:70の雲母チタン5重量部含有、フィルム=PP樹脂250μm)のアルミナ処理量による制振効果の変化を示す図である。
【図14】本発明にかかる制振材(板状粉体として雲母:二酸化チタン=57:43の雲母チタン5重量部含有、フィルム=PP樹脂250μm)のアルミナ処理量による制振効果の変化を示す図である。
【図15】本発明にかかる制振材(板状粉体として1.5重量部の金属チタンによって還元した雲母チタン5重量部含有、フィルム=PP樹脂100μm)のアルミナ処理量による制振効果の変化を示す図である。
【図16】本発明にかかる制振材(板状粉体として1.5重量部の金属チタンによって還元した雲母チタン5重量部含有、フィルム=PP樹脂250μm、粘着剤=ブチルアクリレート共重合体)のアルミナ処理量による制振効果の変化を示す図である。
【図17】本発明の制振材の制振機構の説明図である。
【符号の説明】
1 樹脂
2 板状粉体

Claims (7)

  1. 軟凝集させた板状粉体を含む樹脂からなる制振材であって、該板状粉体はアルミナ処理された雲母チタンであることを特徴とする制振材。
  2. 請求項1記載の制振材において、軟凝集粉体は、板状粉体の体積平均粒子径を100%とするとき、その凝集粒子の体積平均粒子径が102%〜200%にある板状粉体を含む樹脂からなることを特徴とする制振材。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の制振材において、板状粉体が雲母チタンにアルミナを1〜10重量部で表面処理したものであることを特徴とする制振材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の制振材において、板状粉体が焼成処理されていることを特徴とする制振材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の制振材において、フィルム層または粘着層の少なくとも一層からなることを特徴とする制振材。
  6. 請求項に記載の制振材において、粘着層がブチルアクリレートの共重合体から選ばれることを特徴とする制振材。
  7. 請求項5に記載の制振材において、フィルム層の厚さが50μm〜300μmであることを特徴とする制振材。
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