JP3688231B2 - 手関節用装具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、手関節の損傷、特にTFCC損傷の痛みの軽減や治療のために手関節部位に装着され、手関節を固定する手関節用装具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の手関節用装具は一般的に、損傷や痛みのある関節部位を固定し、その関節部の動きを制限するものである。
【0003】
外傷により手関節を捻じったり、スポーツや仕事で手関節を過度に使用したりしたときに、手関節を損傷することが多い。手関節付近は図6の左手掌側よりみた概略解剖図に示すように、前腕骨Aは尺骨aと橈骨bとからなり、近位手根骨列Bを構成する舟状骨c、月状骨d、三角骨eと対向している。
【0004】
手関節は、掌屈、背屈、橈屈、尺屈あるいはこれらを総合した回旋運動を行う関節であり、手関節損傷の病態は、中央背側の月状骨dの無腐性壊死(キーンベック病)や尺側のTFCC損傷等がある。TFCCとは、近位手根骨列Bと尺骨aとの間の三角線維軟骨複合体C(三角繊維軟骨f、尺側側副靱帯g、メニスクス等を含む)を指すが、主にTFCC損傷としては、三角繊維軟骨fが線状に切れたりひびが入ったりして炎症が起こり、それに対向する尺骨aや三角骨eに触れたときに強い痛み等が起きることを云う。痛みにより運動制限がおこり、これが血行を阻害し、組織の修復を遅らせる。そしてこの組織修復の遅れが痛みの原因になると云う悪循環が生じて損傷を悪化させてしまう。
【0005】
そこで、こうした手関節損傷の痛みの軽減や治療等のために手関節を固定する手関節用装具が従来より提案されている。例えば実用新案登録第3062174号に記載されているものは、図7の右手背側説明図に示すような構成になっている。
【0006】
この手関節用装具は、関節部位を含む手部および前腕に巻き付けられる被覆体11と、装着時に被覆体11の上から当てがわれて固定される2本の抑え部材12と、抑え部材12を上から締め付けるバンド部材13と、小指を親指側に引っ張るような状態で、抑え部材12を介して被覆体11を締め付けるベルト状のストラップ部材14とを備えている。そしてこの締め付け力の調整の程度に応じて、手関節の可動範囲が制限できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記従来の手関節用装具は、手部および前腕全体を保護する被覆体11を巻き付け、その上から抑え部材12をバンド部材13で締め付けた状態で、ストラップ部材14により巻き付ける動作を必要とするので、装着が面倒であったり、バンド部材13が手関節部全周を圧迫するため血行を阻害するおそれがある上、手部および前腕全体を覆う被覆体11をさらにストラップ部材14で締め付ける構造のため、不快感や圧迫感を伴うので、それを装着したままの動作が困難になるという問題もある。さらに、部材が多くそれらがかさばり重量感があり、コストも高くなってしまう。
【0008】
また、締め付け状態により尺屈、橈屈等の手関節動作を選択して抑制することはできるものの、その締め付け調整は使用者には難しい上、手部および前腕全体が圧迫されているので、TFCC損傷の患部である三角線維軟骨複合体Cを保護するための三角骨eと尺骨aとの間隙、あるいはキーンベック病の患部である月状骨dを保護するための舟状骨cと橈骨bとの間隙を効率的に維持することができない。よって、それらの損傷や疾病の治療・治癒効果に限りがあると思われる。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構造で装着感が良く、装着も簡単で、特にTFCC損傷による痛みの軽減や治療を効率的に図ることができる手関節用装具を安価に提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の手関節用装具は上記目的を達成するため、手関節部位に装着され、手関節を固定する手関節用装具であって、保形性を損なわない程度の硬さと弾性を有し、手関節の尺側または橈側で、前腕骨と近位手根骨列との間に圧入されて両者の間隙を保持する圧迫パッドと、この圧迫パッドを内周面に取付けたバンドとから構成され、前記バンドは、手関節部に巻き付けるバンド本体と、このバンド本体を止着して圧迫パッドの圧入状態を維持する止着手段とを備え、前記圧迫パッドの形状は、側面視形状がバンドの長軸方向に沿って彎曲する円弧状の円弧体であって、前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される圧入面が、バンドに取付けられる基底面より前記長軸方向に直交する方向の幅が狭く、かつ前記前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される幅寸法に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の手関節用装具によれば、圧迫パッドを手関節の尺側または橈側に当てがい、尺骨、橈骨からなる前腕骨と、舟状骨、月状骨、三角骨からなる近位手根骨列との間に圧迫パッドを圧入した状態で、バンド本体を手関節部に巻き付けて止着手段により止着して前記圧入状態を維持することにより、圧迫パッドが手関節の病態に応じた所定の骨の間隙を保持できる。TFCC損傷であれば、圧迫パッドを尺側に当てがって尺骨と三角骨との間に圧入することによって、両者の間隙を保持することができ、手関節動作により損傷部分が対向する骨に触れて痛みが生じないようにする。そして前記間隙を確保することによって、炎症を静めて痛みを止め、痛みによる運動制限→血行の阻害→組織修復の遅延→痛みの原因と云った悪循環を絶つことで血行を良くし、自己治癒力を働かせて患部を再生させ、TFCC損傷の治療効果を発揮することができる。尚、キーンベック病であれば、圧迫パッドを橈側に当てがって橈骨と舟状骨との間に圧入して両者の間隙を保持するようにする。
【0012】
また上記手関節用装具は、保形性を損なわない程度の硬さと弾性を有する圧迫パッドを介してバンド本体が手関節部に巻き付けられるので、圧迫パッドの厚みによってバンド本体と手関節との間に形成される空間により血液流が確保され、従来例のバンド部材のように手関節部全周を圧迫することがないので血行を阻害するおそれがなく、被覆体をストラップ部材でさらに締め付けて手部および前腕全体を拘束していた従来例に比べ、格段にシンプルな構造になり、装着時に不快感や圧迫感を伴うこともないので装着感が良く、装着したままの調理やスポーツ等の動作を無理なく行うことができる。その上、圧迫パッドを当てがいベルト本体を巻き付ける簡単な動作で装着できるので、1人で容易に装着することができ、また構造簡単で部材が少ないのでコストもかからない。
【0013】
また前記圧迫パッドの形状を、側面視形状がバンドの長軸方向に沿って彎曲する円弧状の円弧体としているので、圧迫パッドが手関節の尺側または橈側に当てがわれて前記円弧体が手部から前腕の長軸に直交したときに、その円弧状の彎曲部分が手関節尺あるいは橈側部の彎曲面にフィットするので装着感が良くなる。また、円弧体の円弧長さが長いものであれば、円弧体端面が手関節部からやや浮いた状態になり、上述したベルト本体と手関節との間の空間を容易に確保でき、より一層、不快感や圧迫感が軽減される。さらに前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される圧入面を、バンドに取付けられる基底面より前記バンドの長軸方向に直交する方向の幅を狭く、かつ前記前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される幅寸法に形成しているので、前記圧入面が手関節側に突出して所望箇所を効果的に圧迫でき、前腕骨と近位手根骨列との間隙の効率的な保持を図ることができる。
【0014】
上記各発明における手関節用装具を、前腕骨のうちの尺骨と近位手根骨列のうちの三角骨との間に、圧迫パッドを圧入することにより、尺骨と近位手根骨列との間で発生するTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷を保護するためのTFCC損傷保護装具として用い、圧迫パッドを、平面視形状で、圧入面の少なくとも一方の側辺が円弧凹状に形成され、前記円弧体の側面が尺骨頭係合凹部をなすようにすれば、前記TFCC損傷の発生部位である近位手根骨列と尺骨の間隙を保持することができる上に、圧迫パッドの側面が形成する尺骨頭係合凹部が、手関節の尺側に飛び出している尺骨頭末梢側の円弧部分に引っ掛かり、バンド本体が手関節周囲を回転することによる位置ずれや中枢側へのずり上がりを防止することができる。また、平面視形状で、圧入面の両側辺を円弧凹状に形成する、つまり尺骨頭係合凹部を平面視して対称に、あるいは非対称に2つ形成すると、圧入面の幅(手関節側への突出部分)がさらに狭くなってより一層、前記圧迫が効率的になり、TFCC損傷保護装具としてより優れたものになる。
【0015】
上記各発明において、バンド本体は伸縮性素材からなり、その外周面に面ファスナーの繊維状雌部が形成される一方、圧迫パッドを所定位置に圧入した状態でバンド本体を手関節部に巻き付けたときに、前記繊維状雌部に対向して取着される面ファスナーのフック状雄部が内周面に形成され、前記繊維状雌部と前記フック状雄部によってバンドの止着手段を構成すれば、バンド本体の伸縮性により手関節への密着感とバンド本体巻き付け時の締め付け力が得られることにより、圧迫パッドを容易に圧迫固定でき、求められる圧迫パッドの圧迫力に応じてバンド本体の締め付け力を調整できるので好適であると共に、面ファスナーの採用により止着動作が簡単になり、長時間装着によりずれてきたとき等、巻き直し動作が容易になり、使用に便利である。
【0016】
また、前記止着手段を構成する前記フック状雄部を、前記巻き付けの際に内側に位置する始端を止着する仮止め部と、外側に位置する終端を止着する本止め部との2箇所に取付けることによれば、バンド本体を手関節周囲に巻き付け、仮止め部でいったんバンド本体を止着して仮止めした後、バンド本体の終端を強く引っ張ってから最終的に止着することによって、より強く締め付けることができ、その締め付け力の調整により圧迫パッドの圧迫状態も調整することができる。
【0017】
上記各発明において、圧迫パッドの基底面に面ファスナーを形成する一方、前記圧迫パッドを取付けるバンド本体の内周面にも面ファスナーが形成することによって、圧迫パッドをバンド本体に対して着脱自在に取付ければ、手関節の病態に応じた尺側または橈側の装着位置や手関節周囲径の違い等に応じて、円弧状の彎曲形状や大きさの異なる圧迫パッドに交換したり、あるいは使用者のバンド本体の巻き付け方向の得手等に応じて、圧迫パッドの上下取付け方向を変えることができると共に、上記のように尺骨頭係合凹部を非対称に形成した場合には、使用者の尺骨頭末梢端の個々の円弧形状に応じて、前記尺骨頭係合凹部の円弧角の角度を選択することも可能になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の手関節用装具に係る実施形態について図1〜図6を参照して具体的に説明する。尚、本実施形態は、手関節用装具をTFCC損傷保護装具として用いた例を示す。
【0019】
図1は本実施形態のTFCC損傷保護装具の全体斜視図であり、図2(a)はTFCC損傷保護装具の圧迫パッド部分の平面図、図2(b)は圧迫パッドの着脱状態を示す側面図である。このTFCC損傷保護装具は、図6に示すように手関節の尺側において、前腕骨Aのうちの尺骨aと近位手根骨列Bのうちの三角骨eとの間に圧入されて両者の間隙を保持する圧迫パッド1と、この圧迫パッド1を内周面に取付けたバンド2から主構成される。TFCC損傷は、既述したように、尺骨aと近位手根骨列Bとの間にある三角線維軟骨複合体C(特に三角繊維軟骨f)が損傷して炎症を起こしたものであるので、手関節の尺側において尺骨aと三角骨eとの間隙を保持できるTFCC損傷保護装具(図6では仮想線で示す。)を用いることにより、TFCC損傷によって生じる痛みを止めて血行を良くし、三角繊維軟骨fの自己治癒を働かせる効果が期待できる。
【0020】
圧迫パッド1は、保形性を損なわない程度の硬さ弾性を有する発泡ウレタンや発泡スチロール等の発泡樹脂からなり、図2(b)に示すように、側面視形状がバンド2の長軸方向に沿って彎曲する円弧状の円弧体に形成され、圧迫パッド1が手関節の尺側に当てがわれて前記円弧体が手部から前腕の長軸に直交したときに、その彎曲部分が手関節尺側部の彎曲面にフィットするようになっている。そして尺骨aと三角骨eとの間に圧入される圧入面1aが、バンド2に取付けられる基底面より幅を狭く形成することで、圧入面1aが手関節側に突出して前記間隙を効果的に圧迫でき、間隙の効率的な保持が図れるようになっている。
【0021】
また圧迫パッド1は、図2(a)に示すような平面視形状で、圧入面1aの両側辺が円弧凹状に形成され、圧迫パッド1をなす円弧体の両側面が尺骨頭係合凹部1bをなしている。本実施形態では、尺骨頭係合凹部1bを圧迫パッド1の両側に対称に2つ形成しているが、いずれか一方でもよい。2つ形成することでより狭い圧入面1aが形成され、必要箇所への圧迫を効率良く行うことができるので好適である。また非対称に形成すれば、巻き付け方向を変えるだけで、使用者の尺骨頭D(図4と図6)の末梢端の円弧形状等に応じて2種類の尺骨頭係合凹部1bの円弧角から選択することも可能になる。尚、圧迫パッド1を後述するように着脱自在とすることによって、上下取付け方向を変えることによっても円弧角の選択が可能になる。このような尺骨頭係合凹部1bを形成することにより、図4の左手への装着図に示すように、手関節の尺側に突出している尺骨頭D末梢側の円弧部D1 に尺骨頭係合凹部1bが引っ掛かり、バンド本体2aが手関節周りを回転することによる位置ずれや中枢側へのずり上がりを防止することができる。
【0022】
また、圧迫パッド1のバンド取付面である基底面には図2(b)に示すように、フック部を有する面ファスナー3c1 が形成される一方、圧迫パッド1を取付けるバンド本体2aの内周面にも前記フック部に係合するフック部を有する面ファスナー3c2 が形成されることによって、圧迫パッド1をバンド本体2aに対して着脱自在に取付けている。着脱自在にすることにより、手関節周囲径等に応じて、円弧状の彎曲形状や大きさの異なる圧迫パッド1に交換したり、あるいは使用者のバンド本体2aの巻き付け方向の得手等に応じて、圧迫パッド1の上下取付け方向を変えることができる。また、キーンベック病等、他の手関節障害に用いる手関節用装具とする場合には、圧迫パッド1の形状や大きさ等を変えることもできる。
【0023】
バンド2は、手関節部に巻き付けるバンド本体2aと、バンド本体2aを止着して圧迫パッド1の圧入状態を維持する止着手段(本実施形態では面ファスナー)を備えている。バンド本体2aは、ジャージやゴム等の伸縮性素材2a1 の外周面に、面ファスナーの繊維状雌部2a2 となるパイル生地等がラミネートされている。バンド本体2aの伸縮性により手関節への密着感とバンド本体2aの巻き付け時の締め付け力が得られることにより、圧迫パッド1を容易に圧迫固定でき、求められる圧迫パッド1の圧迫力に応じてバンド本体2aの締め付け力を調整できる。尚、バンド本体2aは伸縮性を有するものに限定されない。
【0024】
バンド本体2aの内周面には、繊維状雌部2a2 に対向して取着される面ファスナーのフック状雄部3b(後述する仮止め部3b1 と本止め部3b2 の総称)が2箇所取付けられている。これら面ファスナー(フック状雄部3bと繊維状雌部2a2 )が、バンド本体2aの巻き付け状態を維持する止着手段を構成しているが、止着手段は面ファスナーに限らず、ベルト本体2aを止着できるものであれば他の手段を採用することもできる。面ファスナーの採用により止着動作が簡単になり、長時間装着によりずれてきたとき等、巻き直し動作が容易になり、使用に便利である。
【0025】
フック状雄部3bは、図3に示すように、TFCC損傷保護装具を手関節部に巻き付けたときに内側に位置するバンド本体2aの始端を止着する仮止め部3b1 と、外側に位置する終端を止着する本止め部3b2 に分かれている。本止め部3b2 は、バンド本体2aの引っ張り動作が容易にできるように、その一部をバンド本体2aの終端より突出させている。このように仮止め部3b1 と本止め部3b2 とを設けることにより、バンド本体2aを手関節部周囲に巻き付けて仮止め部3b1 でいったんバンド本体2aを止着して仮止めした後、図3に示すように、バンド本体2aの終端を強く引っ張ってから最終的に止着することによって、より強く締め付けることができ、その締め付け力の調整により圧迫パッド1の圧迫状態も調整することができる。しかし、フック状雄部3bを本止め部3b2 の1箇所のみとすることも可能である。
【0026】
上記実施形態で示したTFCC損傷保護装具の装着方法を、図3〜図5に示す左手への装着状態説明図および図6の右手掌側よりみた解剖図を主に参照して、以下具体的に説明する。
【0027】
まず、TFCC損傷保護装具(仮想線で示す。)を図6に示すように、圧迫パッド1を手関節の尺側に当てがい、尺骨aと三角骨eとの間に圧迫パッド1の圧入面1aを圧入する。例えば、バンド2を伸ばした状態でテーブル等に圧迫パッド1が上向きになるようにTFCC損傷保護装具を載置し、その上に手関節の尺側を置いて位置決めすると良い。次に前記圧入状態で、バンド本体2aを手関節部に巻き付け、先に仮止め部3b1 をバンド本体2aの始端外周面の繊維状雌部2a2 に取着して仮止めする。そして図4に示すように、圧迫パッド1がずれないように右手の中指等でバンド2外周面を押さえた状態で、バンド本体2aの終端より突出している本止め部3b2 を右手の親指と人差し指で挟んで強く引っ張ってから、それをバンド本体2aの繊維状雌部2a2 に取着することによって、最終的に止着して圧迫パッド1の圧入状態を維持する。
【0028】
すると図4に示すように、左手の背側では圧迫パッド1の尺骨頭係合凹部1bが尺骨頭Dの末梢側円弧部D1 に引っ掛かり、バンド本体2aによって締め付けられた圧迫パッド1の圧入面1aにより所望の手関節を効率的に圧迫し、尺骨aと三角骨eとの間隙を保持し、手関節動作により三角繊維軟骨f等の損傷部分が、対向する尺骨aや三角骨e等に触れて痛みが生じないようにする。炎症が静まり痛みが止まると、痛みによる運動制限→血行の阻害→組織修復の遅延→痛みの原因と云った悪循環を絶つことで血行が良くなり、自己治癒力により患部を再生させ、TFCC損傷の治療効果を発揮することができる。また、図5に示すように、圧迫パッド1の両端面が、その厚み分だけ手関節部からやや浮いた状態になり、バンド本体2aと手関節との間に空間Sを形成する。つまりこの空間Sにより血液流が確保され血行が良くなり、従来の手関節用装具のように手部および前腕が拘束されていないこととも相まって、不快感や圧迫感を感じずに装着感が良くなる。
【0029】
本発明は上記実施形態に示すほか種々の態様に構成することができ、例えば、本実施形態ではTFCC損傷の治療に用いるTFCC損傷保護装具として用いたが、キーンベック病の治療に用いても良いのは勿論であり、その場合には、手関節の橈側において前腕骨Aのうちの橈骨bと近位手根骨列Bのうちの舟状骨cとの間隙に圧迫パッド1を圧入するようにし、その圧入面1aの突出形状等もそれに適したように適宜変更すると良い。
【0030】
【発明の効果】
本発明の手関節用装具によれば、圧迫パッドとそれを取付けたバンドとからなるシンプルな構造で、手部および前腕への拘束力が少ないにもかかわらず、効率的に所望の手関節を圧迫固定することができるので、装着感が良く、装着も1人で簡単に行うことができ、特に手関節の尺側に当てがわれて尺骨と三角骨との間隙を保持するTFCC損傷保護装具として用いることによって、TFCC損傷による痛みの軽減や治療を効率的に図ることができると共に、製品を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のTFCC損傷保護装具を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態において、(a)は圧迫パッド部分を示す平面図、(b)は圧迫パッドの着脱状態を示した側面図。
【図3】同実施形態におけるTFCC損傷保護装具の装着方法を示す左手掌側説明図。
【図4】同実施形態におけるTFCC損傷保護装具の装着後の状態を示す左手背側説明図。
【図5】同実施形態におけるTFCC損傷保護装具の装着後の状態を示す左手上面図。
【図6】左手掌側よりみた手関節付近の概略解剖図。
【図7】従来例の装着後の状態を示す右手背側説明図。
【符号の説明】
1 圧迫パッド
1a 圧入面
1b 尺骨頭係合凹部
2 バンド
2a バンド本体
2a1 伸縮性素材
2a2 繊維状雌部
3b フック状雄部
3b1 仮止め部
3b2 本止め部
3c1 、3c2 面ファスナー
A 前腕骨
B 近位手根骨列
a 尺骨
f 三角骨
C TFCC(三角繊維軟骨複合体)
Claims (4)
- 手関節部位に装着され、手関節を固定する手関節用装具であって、保形性を損なわない程度の硬さと弾性を有し、手関節の尺側または橈側で、前腕骨と近位手根骨列との間に圧入されて両者の間隙を保持する圧迫パッドと、この圧迫パッドを内周面に取付けたバンドとから構成され、前記バンドは、手関節部に巻き付けるバンド本体と、このバンド本体を止着して圧迫パッドの圧入状態を維持する止着手段とを備え、前記圧迫パッドの形状は、側面視形状がバンドの長軸方向に沿って彎曲する円弧状の円弧体であって、前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される圧入面が、バンドに取付けられる基底面より前記長軸方向に直交する方向の幅が狭く、かつ前記前腕骨と近位手根骨列との間に圧入される幅寸法に形成されていることを特徴とする手関節用装具。
- 手関節用装具は、前腕骨のうちの尺骨と近位手根骨列のうちの三角骨との間に、圧迫パッドを圧入して両者の間隙を保持することにより、尺骨と近位手根骨列との間で発生するTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷を保護するためのTFCC損傷保護装具として用いたものであり、圧迫パッドが、平面視形状で、圧入面の少なくとも一方の側辺が円弧凹状に形成され、前記円弧体の側面が尺骨頭係合凹部をなしている請求項1記載の手関節用装具。
- バンド本体は伸縮性素材からなり、その外周面に面ファスナーの繊維状雌部が形成される一方、圧迫パッドを所定位置に圧入した状態でバンド本体を手関節部に巻き付けたときに、前記繊維状雌部に対向して取着される面ファスナーのフック状雄部が内周面に形成され、前記繊維状雌部と前記フック状雄部によってバンドの止着手段を構成し、前記フック状雄部は、前記巻き付けの際に内側に位置する始端を止着する仮止め部と、外側に位置する終端を止着する本止め部との2箇所に取付けられている請求項1または2記載の手関節用装具。
- 圧迫パッドの基底面に面ファスナーが形成される一方、前記圧迫パッドを取付けるバンド本体の内周面にも面ファスナーが形成されることによって、圧迫パッドをバンド本体に対して着脱自在に取付けている請求項1、2または3記載の手関節用装具。
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