JP3687596B2 - 車両前部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両前部構造に関し、より詳細にはフロントサイドメンバと、サブフレームとがマウントブラケットを介して連結された車両前部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な車両は、図12に示すように、車両前方向に延びるフロントサイドメンバ1及びサブフレーム2を車両前部に備えている。
【0003】
フロントサイドメンバ1は、車両同士の正面衝突等により車両前方から衝撃を受けた場合に圧縮変形することによってフロントサイドメンバ1の前端面3に加えられる荷重(以下、衝撃荷重と記載する。)を吸収する圧縮変形部4と、圧縮変形部4の変形終了後に屈曲変形を行うことによって圧縮変形部4で吸収できなかった残りの荷重(以下、衝突荷重と記載する。)を吸収する屈曲変形部6とを有している。
【0004】
フロントサイドメンバ1の後方には、ダッシュパネル7が位置しており、フロントサイドメンバ1の後部は、ダッシュパネル7の形状に応じて車両正面側の壁面から底面に向けて緩やかに傾斜している。
【0005】
サブフレーム2の前端部には、マウントブラケット9の一端が連結されており、このマウントブラケット9の他端は、フロントサイドメンバ1の屈曲変形部6の前部に連結されている。
【0006】
また、サブフレーム2の後端部には、リアマウントブラケット10の一端が連結されており、マウントブラケット10の他端は、フロントサイドメンバ1の後部に連結されている。
【0007】
このようにして、フロントサイドメンバ1とサブフレーム2とは、マウントブラケット9及びリアマウントブラケット10を介して上下に連結されている。
【0008】
次にこの従来の車両前部構造の作用について説明する。
【0009】
上述したような車両前部構造を備えた車両に対して車両前方から衝撃が加えられた場合には、図13に示すように、まず圧縮変形部4が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。
【0010】
圧縮変形部4の圧縮変形によって衝撃荷重を吸収しきれない場合には、圧縮変形部4に対してさらに衝突荷重Fが加えられ、屈曲変形部6に対して荷重f1(以下、伝達荷重と記載する。)が伝達される。屈曲変形部6は、この伝達荷重f1によってわずかに変形し、フロントサイドメンバ1の前部がわずかに車両後方に押し下げられる。
【0011】
フロントサイドメンバ1の前部が車両後方に押し下げられてフロントサイドメンバ1とマウントブラケット9との連結部12が車両後方に移動すると、サブフレーム2に車両前方向きの反力rf2が発生する。反力rf2は、マウントブラケット9を介してフロントサイドメンバ1に伝わり、フロントサイドメンバ1とマウントブラケット9との連結部12に曲げモーメントm2を発生させる。屈曲変形部6はこの曲げモーメントm2の作用により下方に向けて屈曲し(折れ曲がり)やすくなる。
【0012】
一方、フロントサイドメンバ1の後部は、ダッシュパネル7の形状に応じてダッシュパネル7の車両正面側の壁面から底面に向けて緩やかに傾斜し、フロントサイドメンバ1がダッシュパネル7を下方から支持する構造となっているので、フロントサイドメンバ1の後部に車両前方向きの反力rf1が発生する。反力rf1によって、フロントサイドメンバ1のダッシュパネル7近傍には、曲げモーメントm1が発生し、屈曲変形部6の後部が上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0013】
このため、車両前方から衝撃を受けた場合に、フロントサイドメンバ1の屈曲変形部6は、マウントブラケット9との連結部12の後方で下方に向けて屈曲し、ダッシュパネル7の前方で上方に向けて折れ曲がった2段階の屈曲変形(以下、2段階屈曲変形と記載する。)を生じやすくなる。
【0014】
このようにして、一般的な車両の車両前部構造は、フロントサイドメンバ1の屈曲変形部6が、サブフレーム2と協働してバランス良く折れ曲がることによって2段階屈曲変形を行い、衝突荷重を効率的に吸収することが可能となっている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両のサイズ、サスペンションの形式、エンジンのマウント構造等の影響からサブフレーム2の前後長が極めて短く形成された車両に上述したような車両前部構造を用いると、車両前方から衝撃を受けたときに、図14に示すように2段階屈曲変形の上方に向けて折れ曲がった屈曲部14がより屈曲変形部6の後部、つまりダッシュパネル7寄りの部分に生ずることとなるので、屈曲変形部6の屈曲変形時にダッシュパネル7が変形してしまうおそれがあるという問題が生じていた。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、衝撃を車両前方より受けた場合であっても、ダッシュパネルを変形させることなく、衝撃を効果的に吸収することが可能な車両前部構造を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の車両前部構造では、車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ及びサブフレームと、前記フロントサイドメンバの後方に設けられるダッシュパネルと、前記フロントサイドメンバ及び前記サブフレームに連結されるマウントブラケットとを備え、前記フロントサイドメンバは、前記マウントブラケットの一端側が連結されるメンバ側連結部と、該メンバ側連結部の前方に位置して車両前方からの衝撃を圧縮変形することにより吸収する圧縮変形部と、前記メンバ側連結部の後方に位置して前記圧縮変形部の圧縮変形後に屈曲変形することにより前記衝撃を吸収する屈曲変形部とを有し、前記サブフレームは、前記マウントブラケットの他端側が連結されるフレーム側連結部と、該フレーム側連結部の後方に位置するフレーム本体部と、前記フレーム本体部から延設されて前記フレーム側連結部の前方に位置する延設部とを有し、前記延設部は、その前端部の車両前後方向における位置が前記圧縮変形部の圧縮変形後の前端位置と揃うように形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成された請求項1に記載の車両前部構造では、車両が車両前方から衝撃を受けた場合に、まず前記圧縮変形部が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。その後、前記圧縮変形部が完全に圧縮変形し終わり前記屈曲変形部に衝撃荷重が伝達されるときには、前記サブフレームの前端面が前記圧縮変形部の前端面と車両前後方向において揃うので、前記圧縮変形部により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバの前端面とサブフレームの前端面とに同時に加えられる。
【0019】
この衝突荷重は、前記フロントサイドメンバの屈曲変形部と前記サブフレームのフレーム本体部とに分散されて伝達荷重として伝達される。このため、屈曲変形部は、フレーム本体部と協働してバランス良く屈曲変形することによって伝達荷重を効率よく良く吸収することができ、メンバ側連結部とフレーム側連結部との相対的な位置関係を一定に保つことが可能となる。
【0020】
このため、メンバ側連結部及びフレーム側連結部に対してサブフレームの反力による曲げモーメントが生じることを抑制することが可能となり、屈曲変形部の前部が下方に向かって折れ曲がることを防止することができる。
【0021】
従って、メンバ側連結部及びフレーム側連結部に曲げモーメントが生じることがないので、フロントサイドメンバに加わる衝突荷重もサブフレームに加わる衝突荷重も荷重値が大きく変動することなく一定の強さを保つこととなる。
【0022】
また、フロントサイドメンバの後部においては、伝達荷重に対する反力がダッシュパネル近傍に車両前方に向けて発生するため、例えば、屈曲変形部の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントを生じさせるように設定することにより、前記屈曲変形部の後部が上方に向けて一カ所だけ折れ曲がるように構成できる。
【0023】
このように、屈曲変形部は上方に向かって一カ所だけ折れ曲がらせることにより、従来のような屈曲変形部の2段階屈曲変形等を防止することが可能となる。従って、屈曲変形部において所望の箇所に安定した屈曲変形を行わせることができ、前記ダッシュパネルの変形を防止することが可能となる。
【0024】
また、請求項2に記載の車両前部構造では、前記延設部が、前記フレーム本体部に比べて変形し難い請求項1に記載の車両前部構造であることを特徴とする。
【0025】
このように構成された請求項2に記載の車両前部構造では、請求項1に記載された作用効果に加えて、前記延設部が前記フレーム本体部に比べて変形しにくいので、前記サブフレームは前記フレーム側連結部より車両後方側で屈曲変形を起こし、前記フレーム側連結部を車両後方へ移動させる。
【0026】
このため、前記フレーム側連結部が前記メンバ側連結部に比べてわずかに車両後方に移動し、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と、前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散される。前記マウントブラケットへの伝達荷重は、前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されることによって前記メンバ側連結部に曲げモーメントを発生させる。従って、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用により上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0027】
そして、請求項3に記載の車両前部構造では、前記屈曲変形部及び前記フレーム本体部にリアマウントブラケットが連結され、前記サブフレームは、前記衝撃が加わった際に前記リアマウントブラケットの変形によって車両後方に移動する請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造であることを特徴とする。
【0028】
このようにして構成された請求項3に記載の車両前部構造では、請求項1又は請求項2に記載の作用効果に加えて、前記リアマウントブラケットが衝突荷重により車両後方にわずかに変形し、前記サブフレームを車両後方へ押し下げる。このため、前記フレーム側連結部が前記メンバ側連結部に比べてわずかに車両後方に移動し、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散される。
【0029】
前記マウントブラケットに加えられた伝達荷重は、前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されることによって前記メンバ側連結部に曲げモーメントを発生させる。このため、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用によって更に上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0030】
更に、請求項4に記載の車両前部構造では、前記延設部は車両前方下方向に傾斜している請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両前部構造であることを特徴とする。
【0031】
このように構成された請求項4に記載の車両前部構造では、請求項1〜請求項3に記載の作用効果に加えて、前記延設部が車両前方下方向に傾斜しているので、前記サブフレームの前記フレーム側連結部がわずかに車両下方に押し下げられるようにして車両後方に移動する。前記フレーム側連結部の車両後方への移動によって、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散され、前記フレーム連結部が車両下方に押し下げられることによって、前記フレーム連結部に伝達荷重による曲げモーメントが発生する。
【0032】
曲げモーメントは前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されて屈曲変形部の前部に曲げモーメントを生じさせる。このため、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0033】
また、請求項5に記載の車両前部構造は、前記延設部の前端面が、該前端面の下辺部が上辺部よりも車両前方に突出するように傾斜している請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両前部構造であることを特徴とする。
【0034】
このように請求項5に記載された車両前部構造においては、請求項1〜請求項4に記載の作用効果に加えて、前記延設部の前端面が傾斜しているので、前記サブフレームの前記フレーム側連結部が、車両下方に押し下げられるようにしてわずかに車両後方に移動する。前記フレーム側連結部の車両後方への移動によって、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重へと分散され、前記フレーム連結部が車両下方に押し下げられることによって、前記フレーム連結部に伝達荷重による曲げモーメントが発生する。
【0035】
曲げモーメントは前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されて屈曲変形部の前部に曲げモーメントを生じさせる。このため、屈曲変形部は、曲げモーメントと伝達荷重との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る車両前部構造を説明する。
【0037】
【実施例1】
図1〜図3は、実施例1に係る車両前部構造を備えた車両を示した側面図であり、この車両前部構造は、主としてフロントサイドメンバ20と、サブフレーム21と、フロントサイドメンバ20とサブフレーム21に連結されるマウントブラケット28及びリアマウントブラケット42とによって構成されている。
【0038】
フロントサイドメンバ20は車両前後方向に延びるようにして前輪26近傍に設けられており、サブフレーム21は、フロントサイドメンバ20と同様に車両前後方向に延びるようにしてフロントサイドメンバ20の下方に設けられている。
【0039】
フロントサイドメンバ20は、マウントブラケット28が連結されるメンバ側連結部29と、メンバ側連結部29の前方に位置する圧縮変形部30と、メンバ側連結部29の後方に位置する屈曲変形部31とを有している。
【0040】
メンバ側連結部29には、マウントブラケット28の一端が締結部材33によって連結されている。
【0041】
圧縮変形部30は、フロントサイドメンバ20の前端部に位置しており、車両前方方向から衝撃が入力された際に蛇腹状に圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する構造となっている。
【0042】
屈曲変形部31は、圧縮変形部30が圧縮変形し終わった後に屈曲することによって、圧縮変形部30の圧縮変形だけでは吸収できなかった衝撃荷重を吸収する構造となっている。
【0043】
フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31後方には、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュパネル34が位置しており、フロントサイドメンバ20は、ダッシュパネル34に沿ってダッシュパネル34の車両正面側壁面から底面へと緩やかに傾斜してダッシュパネル34を下方から支持するようにして車室底面へと延設されている。
【0044】
サブフレーム21は、マウントブラケット28が連結されるフレーム側連結部35と、フレーム側連結部35の後方に位置するフレーム本体部37と、フレーム本体部37から延設されてフレーム側連結部35の前方に位置する延設部38とを有している。
【0045】
フレーム側連結部35には、マウントブラケット28の他端が締結部材40によって連結されている。
【0046】
フレーム本体部37の後端部には締結部材41によって連結されたリアマウントブラケット42が設けられており、リアマウントブラケット42の他端は締結部材43によってフロントサイドメンバ20の後部に連結されている。
【0047】
延設部38は、図2に示すように、マウントブラケット28の下端部39から距離Lだけ車両前方に延設されており、圧縮変形部30の前端面45は、延設部38の前端面44よりも距離S1だけ前方に位置している。
【0048】
ここで距離Lとは、図3(a)に示すように、圧縮変形部30が車両前面から衝撃を受けて完全に圧縮変形したときの圧縮変形部30の前端面45と、延設部38の前端面44とが車両前後方向において揃う位置を、マウントブラケット28の下端部からの距離で示したものである。
【0049】
次に、上述した車両前部構造を備えた車両に対して、車両前面から衝撃を加えた場合にフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21に生じる形状の変化を説明する。
【0050】
なお、図3(a)に示された実線部は、圧縮変形部30が完全に変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形する前のフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21の状態を示したものであり、破線部は、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形を開始しているときのフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21の変形状態を示したものである。
【0051】
実施例1に係る車両が車両前方から衝撃を受けた場合には、まず圧縮変形部30が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。このとき、圧縮変形部30の前端面45は、サブフレーム21の前端面44よりも距離S1だけ車両前方に突出しており、衝撃荷重がサブフレーム21の前端面44等に伝達されることがないので、圧縮変形部30は理想的な蛇腹変形過程を経て圧縮変形することが可能となる。
【0052】
その後、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わり屈曲変形部31に衝撃荷重が伝達されるときには、サブフレーム21の前端面44が圧縮変形部30の前端面45と車両前後方向において揃うので、圧縮変形部30により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバ20の前端面45に対して衝突荷重F1、サブフレーム21の前端面44に対して衝突荷重F2として同時に加えられる。
【0053】
この衝突荷重F1は、フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31に対して伝達荷重f1として伝達され、衝突荷重F2は、サブフレーム21のフレーム本体部37に対して伝達荷重f2として伝達される。
【0054】
屈曲変形部31は、フレーム本体部37と協働してバランス良く屈曲することによって伝達荷重f1,f2を効率良く吸収することができ、メンバ側連結部29とフレーム側連結部35との相対的な位置関係を一定に保つことが可能となる。
【0055】
このため、メンバ側連結部29及びフレーム側連結部35に対してサブフレーム21の反力による曲げモーメントが生じることを抑制することが可能となり、屈曲変形部31の前部が下方に向かって折れ曲がることを防止することができる。
【0056】
図3(b)は、横軸に圧縮変形部30の前端面45からの距離Sを示し、縦軸に実施例1に係る車両構造を備えた車両が吸収する荷重Fの強さを示した図である。
【0057】
距離Sが0〜S1までのときは圧縮変形部30が圧縮変形することにより衝撃荷重を吸収するので、一定の強さF0の荷重を吸収する。距離SがS1を過ぎたところ、つまり圧縮変形部30が完全に圧縮変形したフロントサイドメンバ20の前端面45とサブフレーム21の前端面44とが前後方向で揃ったところから、屈曲変形部31がフレーム本体部37と協働して荷重を吸収する。
【0058】
このとき、メンバ側連結部29及びフレーム側連結部35に曲げモーメントが生じることがないので、フロントサイドメンバ20に加わる衝突荷重F1もサブフレーム21に加わる衝突荷重F2も距離SがS1のときの荷重値から大きく変動することなく一定の強さを保つこととなる。
【0059】
また、フロントサイドメンバ20の後部においては、伝達荷重f1に対する反力rf1がダッシュパネル34近傍に車両前方に向けて発生するため、屈曲変形部31の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントm1が生じ、屈曲変形部31の後部が上方に向けて折れ曲がる。
【0060】
このように、屈曲変形部31は上方に向かって一カ所だけ屈曲し、フレーム本体部37は下方に向かって折れ曲がるので、屈曲変形部31の2段階屈曲変形を防止することが可能となる。従って、屈曲変形部31において所望の箇所に安定した屈曲変形を行わせることができ、ダッシュパネル34の変形、ひいてはキャビンの変形を防止することが可能となる。
【0061】
【実施例2】
図4、図5は、実施例2に係る車両前部構造を備えた車両を示した側面図である。
【0062】
実施例2に係る車両前部構造は、延設部50がフレーム本体部37に比べて変形し難い素材又は肉厚を厚くする等変形しにくい形状により構成されていることを特徴とするものであり、この点において実施例1に係る車両前部構造と相違する。
【0063】
なお、図4及び図5において実施例1と同一の部分については同一の符号を付すものとし、同一部分のうち実施例1〜実施例4において既に説明を行っている部分の説明は省略する。また、実施例1の図3(a)と同様に、図5(a)に示された実線部は、圧縮変形部30が完全に変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形する前のフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21aの状態を示したものであり、破線部は、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形を開始しているときのフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21aの変形状態を示したものである。
【0064】
上述したように、延設部50はフレーム本体部31に比べて圧縮強度が高く変形しにくい構造又は素材を用いて形成されている。
【0065】
実施例2に係る車両が、車両前方から衝撃を受けた場合には、まず圧縮変形部30が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。このとき、圧縮変形部30の前端面44は、実施例1と同様にサブフレーム21aの前端面44よりも距離S1だけ車両前方に突出しており、衝撃荷重がサブフレーム21aの前端面44等に伝達されることがないので、圧縮変形部30は理想的な蛇腹変形過程を経て圧縮変形することが可能となる。
【0066】
その後、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わり屈曲変形部31に衝撃荷重が伝達されたときには、サブフレーム21aの前端面44が圧縮変形部30の前端面45と車両前後方向において揃うので、圧縮変形部30により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバ20の前端面45に対して衝突荷重F1、サブフレーム21aの前端面44に対して衝突荷重F2として同時に加えられる。この衝突荷重F1は、フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31に対して伝達荷重f1として伝達される。
【0067】
このとき、延設部50はフレーム本体部37に比べて変形しにくいので、サブフレーム21aは、フレーム側連結部35より車両後方側で屈曲変形を起こし、フレーム側連結部35を車両後方へ移動させる。このため、フレーム側連結部35がメンバ側連結部29に比べてわずかに車両後方に移動し、サブフレーム21に加えられる衝突荷重F2がフレーム本体部37への伝達荷重f2と、マウントブラケット28への伝達荷重f3とに分散される。
【0068】
伝達荷重f3は、マウントブラケット28を介してフロントサイドメンバ20に伝達されることによってメンバ側連結部29に曲げモーメントm2を発生させる。このため、屈曲変形部31は、曲げモーメントm2と伝達荷重f1との作用により実施例1で説明した場合に比べてより一層上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0069】
図5(b)は、図3(b)と同様に、横軸に圧縮変形部30の前端面45からの距離Sを示し、縦軸に実施例2に係る車両構造を備えた車両が吸収する荷重Fの強さを示した図である。
【0070】
距離Sが0〜S1までのときは圧縮変形部30が圧縮変形することにより衝撃荷重を吸収するので、一定の強さF0の荷重を吸収する。距離SがS1を過ぎたところ、つまり圧縮変形部30が完全に圧縮変形したフロントサイドメンバ20の前端面45とサブフレーム21aの前端面44とが前後方向で揃ったところから、屈曲変形部31がフレーム本体部37と協働して荷重を吸収する。
【0071】
このとき、距離S1においてサブフレーム21aには伝達荷重f2と伝達荷重f3とが加えられるので衝突荷重F2が一時的に増加し、衝突荷重F2の増加に対応して、衝突荷重F2が一時的に減少する。その後、伝達荷重f3がマウントブラケット28を介してメンバ側連結部29に曲げモーメントm2を生じさせることによりフロントサイドメンバ20の衝突荷重F1を増加させると共にサブフレーム21の衝突荷重F2を減少させる。
【0072】
また、フロントサイドメンバ20の後部においては、実施例1と同様に、伝達荷重f1に対する反力rf1が、ダッシュパネル34の近傍に車両前方に向けて生じるため、屈曲変形部31の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントm1が生じ、屈曲変形部31の後部が上方に向けて折れ曲がる。
【0073】
このように、屈曲変形部31及びフレーム本体部37が上方に向かって一カ所だけ折れ曲がるので、屈曲変形部31の2段階屈曲変形を防止することが可能となる。このため、屈曲変形部31において所望の箇所に安定した屈曲変形を行うことができ、屈曲変形部31の2段階屈曲変形に伴うダッシュパネル34の変形、ひいてはキャビンの変形を防止することが可能となる。
【0074】
【実施例3】
図6、図7は、実施例3に係る車両前部構造を備えた車両を示した側面図である。
【0075】
実施例3に係る車両前部構造では、延設部52がリアマウントブラケット42に比べて変形しにくく、車両前方から衝撃を受けた場合に、サブフレーム21bが変形を開始するよりも早くリアマウントブラケット42がわずかに変形してサブフレーム21bを後方へと移動させることを特徴とするものであり、この点で実施例1及び実施例2に係る車両前部構造と相違する。
【0076】
なお、図6,図7において実施例1又は実施例2と同一の部分については同一の符号を付すものとし、同一部分のうち実施例1〜実施例2において既に説明を行っている部分の説明は省略する。また、図7(a)に示された実線部は、圧縮変形部30が完全に変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形する前のフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21の状態を示したものであり、破線部は、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形を開始しているときのフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21bの変形状態を示したものである。
【0077】
上述したように、延設部52はリアマウントブラケット42に比べて肉厚を厚くする等圧縮強度が高く変形しにくい構造又は素材を用いて形成されおり、リアマウントブラケット42は、サブフレーム21bが変形を開始する前にわずかに変形してサブフレーム21bを車両後方へと移動させる。
【0078】
実施例3に係る車両が、車両前方から衝撃を受けた場合には、まず圧縮変形部30が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。このとき、圧縮変形部30の前端面45は、実施例1及び実施例2と同様にサブフレーム21bの前端面44よりも距離S1だけ車両前方に突出しており、衝撃荷重がサブフレーム21bの前端面44等に伝達されることがないので、圧縮変形部30は理想的な蛇腹変形過程を経て圧縮変形することが可能となる。
【0079】
その後、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わり屈曲変形部31に衝撃荷重が伝達されたときには、サブフレーム21bの前端面44が圧縮変形部30の前端面45と車両前後方向において揃うので、圧縮変形部30により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバ20の前端面45に対して衝突荷重F1、サブフレーム21bの前端面44に対して衝突荷重F2として同時に加えられる。この衝突荷重F1は、フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31に対して伝達荷重f1として伝達される。
【0080】
このとき、リアマウントブラケット42は延設部52に比べて変形しやすいので、リアマウントブラケット42が衝突荷重F2により車両後方にわずかに変形し、サブフレーム21bを車両後方へ押し下げる。このため、フレーム側連結部35がメンバ側連結部29に比べてわずかに車両後方に移動し、サブフレーム21bに加えられる衝突荷重F2がフレーム本体部37への伝達荷重f2と、マウントブラケット29への伝達荷重f3とに分散される。
【0081】
伝達荷重f3は、マウントブラケット29を介してフロントサイドメンバ20に伝達されることによってメンバ側連結部29に曲げモーメントm2を発生させる。このため、実施例2と同様に、屈曲変形部31は曲げモーメントm2と伝達荷重f1との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0082】
図7(b)は、図3(b)、図5(b)と同様に、横軸に圧縮変形部30の前端面45からの距離Sを示し、縦軸に実施例3に係る車両構造を備えた車両が吸収する荷重Fの強さを示した図である。
【0083】
距離Sが0〜S1までのときは圧縮変形部30が圧縮変形することにより衝撃荷重を吸収するので、一定の強さF0の荷重を吸収する。距離SがS1を過ぎたところ、つまり圧縮変形部30が完全に圧縮変形したフロントサイドメンバ20の前端面45とサブフレーム21bの前端面44とが前後方向で揃ったところから、屈曲変形部31がフレーム本体部37と協働して荷重を吸収する。
【0084】
このとき、距離S1においてサブフレーム21bには伝達荷重f2と伝達荷重f3とが加えられるので、衝突荷重F2が一時的に増加し、衝突荷重F2の増加に対応して衝突荷重F1が一時的に減少する。その後、伝達荷重f3がマウントブラケット20を介してメンバ側連結部29に曲げモーメントm2を生じさせることによりフロントサイドメンバ20の衝突荷重F1を増加させると共にサブフレーム21bの衝突荷重F2を減少させる。
【0085】
また、フロントサイドメンバ20の後部においては、実施例1、実施例2と同様に、伝達荷重f1に対する反力rf1がダッシュパネル34近傍に車両前方に向けて生じるため、屈曲変形部31の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントm1が生じ、屈曲変形部31の後部が上方に向けて折れ曲がる。
【0086】
このように、実施例3に係る車両前部構造においても、屈曲変形部31及びフレーム本体部37が上方に向かって一カ所だけ折れ曲がるので、屈曲変形部31の2段階屈曲変形を防止することが可能となる。このため、屈曲変形部31において所望の箇所に安定した屈曲変形を行うことができ、屈曲変形部31の2段階屈曲変形に伴うダッシュパネル34の変形、ひいてはキャビンの変形を防止することが可能となる。
【0087】
【実施例4】
図8、図9は実施例4に係る車両前部構造を備えた車両を示した側面図である。
【0088】
実施例4に係る車両前部構造では、延設部54が車両前方下方向に傾斜していることを特徴とするものであり、この点において実施例1〜実施例3に係る車両前部構造と相違する。
【0089】
なお、図8、図9において実施例1〜実施例3と同一の部分については同一の符号を付すものとし、同一部分のうち実施例1〜実施例3において既に説明を行っている部分の説明は省略する。また、図9(a)に示された実線部は、図3(a)、図5(a)、図7(a)と同様に、圧縮変形部30が完全に変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形する前のフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21cの状態を示したものであり、破線部は、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形を開始しているときのフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21cの変形状態を示したものである。
【0090】
上述したように、延設部54は、車両前方下方向に傾斜しており、延設部54の前端部55は、サブフレーム21cのフレーム本体部37に比べて下方に位置している。また、延設部54の前端面55は車両正面方向を臨むように直立に形成されている。
【0091】
この前端面55からマウントブラケット28の下端部39までの水平距離は実施例1と同様に距離Lだけ確保されており、延設部54は、圧縮変形部30が車両前面から衝撃を受けて完全に圧縮変形したときの圧縮変形部30の前端面45と、延設部54の前端面55とが車両前後方向において揃うように形成されている。
【0092】
実施例4に係る車両が、車両前方から衝撃を受けた場合には、まず圧縮変形部30が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。このとき、圧縮変形部30の前端面45は、実施例1〜実施例3と同様にサブフレーム21cの前端面55よりも距離S1だけ車両前方に突出しており、衝撃荷重がサブフレーム21cの前端面55等に伝達されることがないので、圧縮変形部30は理想的な蛇腹変形過程を経て圧縮変形することが可能となる。
【0093】
その後、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わり屈曲変形部31に衝撃荷重が伝達されたときには、サブフレーム21cの前端面55が圧縮変形部30の前端面45と車両前後方向において揃うので、圧縮変形部30により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバ20の前端面45に対して衝突荷重F1、サブフレーム21cの前端面55に対して衝突荷重F2として同時に加えられる。この衝突荷重F1は、フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31に対して伝達荷重f1として伝達される。
【0094】
このとき、延設部54は車両前方下方向に傾斜しているので、サブフレーム21のフレーム側連結部35がわずかに車両下方に押し下げられるようにして車両後方に移動する。フレーム側連結部35の車両後方への移動によって、サブフレーム21cに加えられる衝突荷重F2がフレーム本体部37への伝達荷重f2と、マウントブラケット28への伝達荷重f3とに分散され、フレーム連結部35が車両下方に押し下げられることによって、フレーム連結部35に伝達荷重f3による曲げモーメントm0が発生する。
【0095】
曲げモーメントm0はマウントブラケット28を介してフロントサイドメンバ20に伝達されて屈曲変形部31の前部に曲げモーメントm2を生じさせる。このため、実施例2、3と同様に、屈曲変形部31は曲げモーメントm2と伝達荷重f1との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0096】
図9(b)は、図3(b)、図5(b)、図7(b)と同様に、横軸に圧縮変形部30の前端面45からの距離Sを示し、縦軸に実施例4に係る車両構造を備えた車両が吸収する荷重Fの強さを示した図である。
【0097】
距離Sが0〜S1までのときは圧縮変形部30が圧縮変形することにより衝撃荷重を吸収するので、一定の強さF0の荷重を吸収する。距離SがS1を過ぎたところ、つまり圧縮変形部30が完全に圧縮変形したフロントサイドメンバ20の前端面45とサブフレーム21cの前端面55とが前後方向で揃ったところから、屈曲変形部31がフレーム本体部37と協働して荷重を吸収する。
【0098】
このとき、距離S1においてサブフレーム21cには伝達荷重f2と伝達荷重f3とが加えられるので衝突荷重F2が一時的に増加し、衝突荷重F2が一時的に増加に対応して衝突荷重F1が一時的に減少する。その後、伝達荷重f3がマウントブラケット28を介して屈曲変形部31の前部に曲げモーメントm2を生じさせることによりフロントサイドメンバ20の衝突荷重F1を増加させると共にサブフレーム21cの衝突荷重F2を減少させる。
【0099】
また、フロントサイドメンバ20の後部においては、実施例1〜実施例3と同様に、伝達荷重f1に対する反力rf1がダッシュパネル34近傍に車両前方に向けて生じるため、屈曲変形部31の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントm1が生じ、屈曲変形部31の後部が上方に向けて折れ曲がる。
【0100】
このように、実施例4に係る車両前部構造においても、屈曲変形部31及びフレーム本体部37が上方に向かって一カ所だけ折れ曲がるので、屈曲変形部31の2段階屈曲変形を防止することが可能となる。このため、屈曲変形部31において所望の箇所に安定した屈曲変形を行うことができ、屈曲変形部31の2段階屈曲変形に伴うダッシュパネル34の変形、ひいてはキャビンの変形を防止することが可能となる。
【0101】
【実施例5】
図10、図11は実施例5に係る車両前部構造を備えた車両を示した側面図である。
【0102】
実施例5に係る車両前部構造は、延設部56の前端面57の下辺部58が、上辺部59よりも車両前方に突出するように傾斜していることを特徴とするものであり、この点で実施例1〜実施例4に係る車両前部構造と相違する。
【0103】
なお、図10、図11において実施例1〜実施例4と同一の部分については同一の符号を付すものとし、同一部分のうち実施例1〜実施例4において既に説明を行っている部分の説明は省略する。 また、図3、図5、図7、図9と同様に、図11(a)に示された実線部は、圧縮変形部30が完全に変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形する前のフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21dの状態を示したものであり、破線部は、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わった後であって屈曲変形部31及びフレーム本体部37が変形を開始しているときのフロントサイドメンバ20及びサブフレーム21dの変形状態を示したものである。
【0104】
延設部56は、車両前方方向に水平に延設されており、その前端面57は延設部56の下辺部58が上辺部59よりも車両前方に突出するように傾斜している。この前端面57の前端辺、つまり前端面57の下辺部58からマウントブラケット56の下端部39までの水平距離は、実施例1と同様に距離Lだけ確保されており、延設部56は、圧縮変形部30が車両前面から衝撃を受けて完全に圧縮変形したときの圧縮変形部30の前端面45と、延設部56の下辺部58とが車両前後方向において揃うように形成されている。
【0105】
実施例5に係る車両が、車両前方から衝撃を受けた場合には、まず圧縮変形部30が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。このとき、圧縮変形部30の前端面45は、実施例1〜実施例4と同様にサブフレーム21dの下辺部58よりも距離S1だけ車両前方に突出しており、衝撃荷重がサブフレーム21dの前端面57等に伝達されることがないので、圧縮変形部30は理想的な蛇腹変形過程を経て圧縮変形することが可能となる。
【0106】
その後、圧縮変形部30が完全に圧縮変形し終わり屈曲変形部31に衝撃荷重が伝達されたときには、サブフレーム21dの下辺部58が圧縮変形部30の前端面45と車両前後方向において揃うので、圧縮変形部30により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバ20の前端面45に対して衝突荷重F1、サブフレーム21dの下辺部58に対して衝突荷重F2として同時に加えられる。この衝突荷重F1は、フロントサイドメンバ20の屈曲変形部31に対して伝達荷重f1として伝達される。
【0107】
サブフレーム21dのフレーム側連結部35は、延設部56の前端面57が傾斜しているので、車両下方に押し下げられるようにしてわずかに車両後方に移動する。フレーム側連結部35の車両後方への移動によって、サブフレーム21dに加えられる衝突荷重F2がフレーム本体部37への伝達荷重f2と、マウントブラケット28への伝達荷重f3へと分散され、フレーム連結部35が車両下方に押し下げられることによって、フレーム連結部35に伝達荷重f3による曲げモーメントm0が発生する。
【0108】
曲げモーメントm0はマウントブラケット28を介してフロントサイドメンバ20に伝達されて屈曲変形部31の前部に曲げモーメントm2を生じさせる。このため、屈曲変形部31は、実施例2〜4と同様に、曲げモーメントm2と伝達荷重f1との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0109】
図11(b)は、図3(b)等と同様に、横軸に圧縮変形部30の前端面45からの距離Sを示し、縦軸に実施例5に係る車両構造を備えた車両が吸収する荷重Fの強さを示した図である。
【0110】
距離Sが0〜S1までのときは、圧縮変形部30が圧縮変形することにより衝撃荷重を吸収するので、一定の強さF0の荷重を吸収する。距離SがS1を過ぎたところ、つまり圧縮変形部30が完全に圧縮変形したフロントサイドメンバ20の前端面45とサブフレーム21dの下辺部58とが前後方向で揃ったところから、屈曲変形部31がフレーム本体部37と協働して荷重を吸収する。
【0111】
このとき、距離S1においてサブフレーム21dには伝達荷重f2と伝達荷重f3とが加えられるので衝突荷重F2が一時的に増加するとともに衝突荷重F2の草加に対応して衝突荷重F1が一時的に減少し、伝達荷重f3によってフレーム連結部に曲げモーメントm0が発生する。曲げモーメントm0は、マウントブラケット28を介してフロントサイドメンバ20に伝達されて屈曲変形部31の前部に曲げモーメントm2を生じさせるので、フロントサイドメンバ20の衝突荷重F1を増加させると共にサブフレーム21dの衝突荷重F2を減少させる。
【0112】
また、フロントサイドメンバ20の後部においては、実施例1〜実施例4と同様に、伝達荷重f1に対する反力rf1がダッシュパネル34近傍に車両前方に向けて生じるため、屈曲変形部31の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントm1が生じ、屈曲変形部31の後部が上方に向けて折れ曲がる。
【0113】
このように、実施例5に係る車両前部構造においても、屈曲変形部31及びフレーム本体部37が上方に向かって一カ所だけ折れ曲がるので、屈曲変形部31の2段階屈曲変形を防止することが可能となる。このため、屈曲変形部31において所望の箇所に安定した屈曲変形を行うことができ、屈曲変形部31の2段階屈曲変形に伴うダッシュパネル34の変形、ひいてはキャビンの変形を防止することが可能となる。
【0114】
以上、図面を用いて本発明に係る車両前部構造を説明したが、具体的な構造はこの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で設計の変更等があってもよい。例えば、実施例1〜実施例5に示したマウントブラケットはフロントサイドメンバに対して締結部材によって連結されていたが、マウントブラケットとフロントサイドメンバとが一体に形成されている場合であってもよい。
【0115】
また、フロントサイドメンバの圧縮変形部に左右に位置するフロントサイドメンバを連結するバンパレインフォースやバンパステイを備えた車両の場合には、バンパレインフォース及びバンパステイはフロントサイドバンパの圧縮変形部に含まれるものとし、実施例1〜実施例5に示した距離Lはバンパレインフォース、バンパステイ及び圧縮変形部が圧縮変形し終わる位置を意味する。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した車両前部構造では、車両が車両前方から衝撃を受けた場合に、まず前記圧縮変形部が圧縮変形することによって衝撃荷重を吸収する。その後、前記圧縮変形部が完全に圧縮変形し終わり前記屈曲変形部に衝撃荷重が伝達されるときには、前記サブフレームの前端面が前記圧縮変形部の前端面と車両前後方向において揃うので、前記圧縮変形部により吸収しきれなかった衝撃荷重が、フロントサイドメンバの前端面とサブフレームの前端面とに同時に加えられる。
【0117】
この衝突荷重は、前記フロントサイドメンバの屈曲変形部と前記サブフレームのフレーム本体部とに分散されて伝達荷重として伝達される。このため、屈曲変形部は、フレーム本体部と協働してバランス良く屈曲変形することによって伝達荷重を効率よく良く吸収することができ、メンバ側連結部とフレーム側連結部との相対的な位置関係を一定に保つことが可能となる。
【0118】
このため、メンバ側連結部及びフレーム側連結部に対してサブフレームの反力による曲げモーメントが生じることを抑制することが可能となり、屈曲変形部の前部が下方に向かって折れ曲がることを防止することができる。
【0119】
従って、メンバ側連結部及びフレーム側連結部に曲げモーメントが生じることがないので、フロントサイドメンバに加わる衝突荷重もサブフレームに加わる衝突荷重も荷重値が大きく変動することなく一定の強さを保つこととなる。
【0120】
また、フロントサイドメンバの後部においては、伝達荷重に対する反力がダッシュパネル近傍に車両前方に向けて発生するため、例えば、屈曲変形部の後部に車両下方から上方に向けて曲げモーメントを生じさせるように設定することにより、前記屈曲変形部の後部が上方に向けて一カ所だけ折れ曲がるように構成できる。
【0121】
このように、屈曲変形部は上方に向かって一カ所だけ折れ曲がらせることにより、従来のような屈曲変形部の2段階屈曲変形等を防止することが可能となる。従って、屈曲変形部において所望の箇所に安定した屈曲変形を行わせることができ、前記ダッシュパネルの変形を防止することが可能となる。
【0122】
また、請求項2に記載の車両前部構造では、請求項1に記載された作用効果に加えて、前記延設部が前記フレーム本体部に比べて変形しにくいので、前記サブフレームは前記フレーム側連結部より車両後方側で屈曲変形を起こし、前記フレーム側連結部を車両後方へ移動させる。
【0123】
このため、前記フレーム側連結部が前記メンバ側連結部に比べてわずかに車両後方に移動し、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と、前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散される。前記マウントブラケットへの伝達荷重は、前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されることによって前記メンバ側連結部に曲げモーメントを発生させる。従って、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用により上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0124】
更に、請求項3に記載された車両前部構造では、請求項1又は請求項2に記載の作用効果に加えて、前記リアマウントブラケットが衝突荷重により車両後方にわずかに変形し、前記サブフレームを車両後方へ押し下げる。このため、前記フレーム側連結部が前記メンバ側連結部に比べてわずかに車両後方に移動し、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散される。
【0125】
前記マウントブラケットに加えられた伝達荷重は、前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されることによって前記メンバ側連結部に曲げモーメントを発生させる。このため、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用によって更に上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0126】
また、請求項4に記載された車両前部構造では、請求項1〜請求項3に記載の作用効果に加えて、前記延設部が車両前方下方向に傾斜しているので、前記サブフレームの前記フレーム側連結部がわずかに車両下方に押し下げられるようにして車両後方に移動する。前記フレーム側連結部の車両後方への移動によって、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重とに分散され、前記フレーム連結部が車両下方に押し下げられることによって、前記フレーム連結部に伝達荷重による曲げモーメントが発生する。
【0127】
曲げモーメントは前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されて屈曲変形部の前部に曲げモーメントを生じさせる。このため、前記屈曲変形部は曲げモーメントと伝達荷重との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【0128】
また、請求項5に記載された車両前部構造では、請求項1〜請求項4に記載の作用効果に加えて、前記延設部の前端面が傾斜しているので、前記サブフレームの前記フレーム側連結部が、車両下方に押し下げられるようにしてわずかに車両後方に移動する。前記フレーム側連結部の車両後方への移動によって、前記サブフレームに加えられる衝突荷重が前記フレーム本体部への伝達荷重と前記マウントブラケットへの伝達荷重へと分散され、前記フレーム連結部が車両下方に押し下げられることによって、前記フレーム連結部に伝達荷重による曲げモーメントが発生する。
【0129】
曲げモーメントは前記マウントブラケットを介して前記フロントサイドメンバに伝達されて屈曲変形部の前部に曲げモーメントを生じさせる。このため、屈曲変形部は、曲げモーメントと伝達荷重との作用によって上方に向けて屈曲しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1係る車両前部構造であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1係る車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態の実施例1に係る車両前部構造の変形状態を、車両側方から見た模式図であり、(b)は実施例1に係る車両前部構造が吸収する荷重変化図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例2係る車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図5】(a)は本発明の実施の形態の実施例2に係る車両前部構造の変形状態を、車両側方から見た模式図であり、(b)は実施例2に係る車両前部構造が吸収する荷重変化図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例3係る車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図7】(a)は本発明の実施の形態の実施例3に係る車両前部構造の変形状態を、車両側方から見た模式図であり、(b)は実施例3に係る車両前部構造が吸収する荷重変化図である。
【図8】本発明の実施の形態の実施例4係る車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図9】(a)は本発明の実施の形態の実施例4に係る車両前部構造の変形状態を、車両側方から見た模式図であり、(b)は実施例4に係る車両前部構造が吸収する荷重変化図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例5係る車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図11】(a)は本発明の実施の形態の実施例5に係る車両前部構造の変形状態を、車両側方から見た模式図であり、(b)は実施例5に係る車両前部構造が吸収する荷重変化図である。
【図12】従来の車両前部構造の概略であって、車両前部を側方から見た模式図である。
【図13】車両前部の前後長が長い従来の車両前部構造の変形状態を、車両前部を側方から見た模式図である。
【図14】車両前部の前後長が短い従来の車両前部構造の変形状態を、車両前部を側方から見た模式図である。
【符号の説明】
1、20 フロントサイドメンバ
2、21、21a、21b、21c、21d サブフレーム
4、30 圧縮変形部
6、31 屈曲変形部
7、34 ダッシュパネル
9、28 マウントブラケット
12、29 メンバ側連結部
35 フレーム側連結部
37 フレーム本体部
38、50、52、54、56 延設部
42 リアマウントブラケット
Claims (5)
- 車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ及びサブフレームと、前記フロントサイドメンバの後方に設けられるダッシュパネルと、前記フロントサイドメンバ及び前記サブフレームに連結されるマウントブラケットとを備え、
前記フロントサイドメンバは、前記マウントブラケットの一端側が連結されるメンバ側連結部と、該メンバ側連結部の前方に位置して車両前方からの衝撃を圧縮変形することにより吸収する圧縮変形部と、前記メンバ側連結部の後方に位置して前記圧縮変形部の圧縮変形後に屈曲変形することにより前記衝撃を吸収する屈曲変形部とを有し、
前記サブフレームは、前記マウントブラケットの他端側が連結されるフレーム側連結部と、該フレーム側連結部の後方に位置するフレーム本体部と、前記フレーム本体部から延設されて前記フレーム側連結部の前方に位置する延設部とを有し、
前記延設部は、その前端部の車両前後方向における位置が前記圧縮変形部の圧縮変形後の前端位置と揃うように形成されていることを特徴とする車両前部構造。 - 前記延設部は、前記フレーム本体部に比べて変形し難いことを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
- 前記屈曲変形部及び前記フレーム本体部にリアマウントブラケットが連結され、
前記サブフレームは、前記衝撃が加わった際に前記リアマウントブラケットの変形によって車両後方に移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。 - 前記延設部は車両前方下方向に傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両前部構造。
- 前記延設部の前端面は、該前端面の下辺部が上辺部よりも車両前方に突出するように傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両前部構造。
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