JP3686759B2 - 送信系切替システム及び切替方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、通信および放送送信設備の切替方式に関し、特に無瞬断で現用系と予備系の切替を行う切替方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冗長(現用/予備)構成が形成されているディジタル無線送受信設備では、現用系に不具合が生じた場合、無瞬断、無符号誤りにて自動的に予備系に切り替えられている。
【0003】
例えば、特公平3−15864号公報には、入力信号を現用及び予備回線用に二分するハイブリッド回路と、ハイブリッド回路から供給された信号に無線回線監視信号及びフレーム同期信号を挿入する送信信号処理回路と、予備系のみに設置され、現用系に不具合が生じたときに、現用系から予備系に切り替えて送信信号処理回路から供給された信号を送信する送信切替回路と、送信信号処理回路から供給された信号を変調して受信設備に送信する送信機と、を備える送信設備と、送信されてきた信号を受信して復調する受信機と、予備系のみに設置され、現用系にタイミング信号を分配する分配回路と、現用系にのみ設置され、タイミング信号に従って現用と予備用の読出経路を切り替える同期切替回路と、供給された信号から無線回線監視信号を取り除く受信信号処理回路と、を備える受信設備と、から構成されるディジタル無線回線の切替装置が記載されている。
【0004】
また、特公昭59−41335号公報には、入力信号を現用及び予備回線用に分岐する送信分岐盤と、供給された信号に回線監視用信号を挿入する送信符号変換装置と、送信符号変換装置から供給される信号に、ビット同期信号及びフレーム同期信号を供給するマスタークロックパルス発生器及びフレームパルス発生器と、を備える送信設備と、送信されて来た信号を受信し、回線監視用信号の検出及びフレーム同期信号の除去を行う受信符号変換装置と、受信符号変換装置から供給される信号に、信号経路長の物理的な違いによって生じる固定的な絶対遅延時間差と、基準クロック発生器から供給される基準クロックに従って位相差とを、補正する固定遅延時間調整回路及び位相調整回路と、を備える受信設備と、から構成されるディジタル無線回線の切替装置が記載されている。
【0005】
また、予備回線と受信設備とが不要であり、且つ、冗長構成で、現用系に不具合が生じたときに予備系に自動切替可能な送信設備を使用した方法がある。例えば、導波管切替器を使用する方法として、図5(A)に、入力信号を分岐する分配器21と、供給された信号を増幅し、また故障したときに警報信号を出力する増幅器22及び23と、供給される警報信号に応じて導波管切替制御信号を生成する切替制御器24と、供給された信号を導波管切替制御信号に従って切り替えて出力する導波管切替器25と、供給された信号を吸収する終端器27と、から構成される切替装置を示す。
【0006】
例えば、導波管切替器25が増幅器22から供給される信号を外部出力中に、増幅器22に不具合が生じたとする。この場合、増幅器22が、切替制御器24に異常を通知する警報信号を送信し、この警報信号の受信に応答して切替制御器24が導波管切替器25に導波管切替制御信号を供給し、導波管切替器25が増幅器23から供給された信号を外部出力する。
【0007】
この切替装置を使用中に、増幅器22に不具合が生じた場合の出力信号の信号レベルの変化を、図5(B)に示す。図示するように、導波管切替器25が増幅器22から増幅器23に切り替えている間は出力信号に信号断が生じてしまう。
【0008】
また、この信号断を無くすため、導波管切替器25を使用せずに、導波管合成器を使用する方式として、図6(A)に、入力信号を分岐する分配器31と、分配器31に接続され、供給された信号を増幅する増幅器32と、分配器31に接続され、分配器31が分岐した信号の位相差を調整する位相器35を介して信号が供給され、供給された信号を増幅する増幅器33と、増幅器32及び33に接続され、供給された2つの信号から位相合成を行う導波管合成器34と、導波管合成器34に接続され、供給された信号を吸収する終端器37と、から構成される切替装置を示す。
【0009】
この導波管合成器を用いた切替装置を使用中に、増幅器32に不具合が生じた場合の出力信号の信号レベルの変化を、図6(B)に示す。図示するように、増幅器33から供給された信号を導波管合成器34で2分配するため、位相合成時の1/4即ち25%の信号が出力されることになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特公平3−15864と特公昭59−41335に開示された送受信設備は、送信設備に対向した受信設備、及び受信設備に現用及び予備用の2ルート以上を必要としているため装置自体が複雑になり、且つ、複数の周波数を占有してしまう。
【0011】
また、図5(A)に示す切替装置を使用して切り替えると、図5(B)に示すように、信号断が生じてしまう。この信号断によって、ディジタル通信ではデータの欠落が生じ、スクランブル放送及びディジタル放送では画像の乱れが生じてしまう。
【0012】
また、図6(A)に示す導波管合成器を用いた切替装置を使用中に一方の増幅器、例えば増幅器32に不具合が生じた場合、図6(B)に示すように、導波管合成器34が増幅器33から供給された信号を分配し、分配した一方の信号を出力するため、出力レベルが25%(位相合成時の1/4)に減少してしまう、即ち出力レベルが6dB低下してしまうという問題があった。
【0013】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、現用系から予備系に切り替えた時に信号断が生じない、また、出力信号の出力レベルが低下しない送信系切替システム及び方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点にかかる送信系切替システムは、
入力信号を第1と第2の経路に分配する分配器と、
前記分配器が前記第1の経路に分配した信号を増幅する第1の回路と、
前記分配器が前記第2の経路に分配した信号の位相を調整すると共に増幅する第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路の出力信号が共に入力したときに、入力した信号を合成して出力し、前記第1の回路と前記第2の回路の何れか一方の出力信号のみが入力したときに、入力した信号を分配して出力する第1の合成器と、
前記第1の合成器が分配した一方の信号の位相を調整する位相器と、
前記第1の合成器が合成して出力した信号を分配し、一方の信号をこのシステムの出力とし、また、前記位相器が位相を調整した信号と前記第1の合成器が分配した他方の信号を合成してこのシステムの出力とする第2の合成器と、
から構成されることを特徴とする。
【0015】
このような方法とすることにより、この構成の切替装置が信号を出力しているときに、例えば、第1の回路が故障して出力信号を遮断したとき、第1の合成器が分配した信号が同位相同一振幅となるように調整して合成し、出力する。従って、信号断が生じることのない、また、信号レベルが低下することのない、切替方式を実現することができる。
【0016】
前記第2の回路は、前記第1の合成器に入力される2つの信号の位相が実質的に同一となるように、入力信号の位相を調整し、前記位相器は、前記第2の合成器に入力される2つの信号の位相が実質的に同一となるように、入力信号の位相を調整する、ようにしてもよい。
【0017】
前記第2の回路は、前記分配器が分配した信号を増幅してから位相を調整する手段と、前記分配器が分配した信号の位相を調整してから増幅する手段と、のいずれか一方を備える、ようにしてもよい。
【0018】
前記第1及び第2の合成器は、2つの入力端子と2つの出力端子とを備え、前記2つの入力端子から信号が入力したときに、該入力信号を合成して前記2つの出力端子のうち何れか一方の出力端子から出力する手段と、前記2つの入力端子の何れか一方から信号が入力したときに、該入力信号を分配して前記2つの出力端子から出力する手段と、を備えるようにしてもよい。
【0019】
前記第2の合成器は、前記第2の合成器に供給された信号を分配し、分配した一方の信号を出力信号として出力し、分配した他方の信号を終端器に供給して吸収させる手段と、前記第2の合成器に供給された信号を合成し、合成した信号を出力信号として出力する手段と、を備えるようにしてもよい。
【0020】
前記第1と第2の回路は、故障時に、該回路が増幅した信号の出力を停止すると共に故障を通知する警報信号を出力する手段を備え、さらに、前記第1と第2の回路が出力した前記警報信号を受信し、前記位相器に位相の調整を指示する制御信号を送信する位相器制御盤を備え、前記位相器が、前記位相器制御盤から供給された前記制御信号に従って前記第1の合成器から供給される信号の位相を調整する、ようにしてもよい。
【0021】
前記位相器は、前記第2の合成器の出力信号の電力が最大になるように、位相を調整する、ようにしてもよい。
【0022】
前記位相器は、前記第1の回路が出力した信号のみによる、前記第1の合成器の出力信号の位相値と、前記第2の回路が出力した信号のみによる、前記第1の回路の出力信号の位相値との平均値の位相となるように、入力信号の位相を調整する、ようにしてもよい。
【0023】
このような方法とすることにより、この構成の切替装置が信号を出力しているときに、例えば、第1の増幅器が故障して出力信号を遮断したときに、この切替装置の出力信号の信号レベルが一瞬低下するが、位相器が位相を調整するため、第1の増幅器が故障する前の信号レベルに復帰する。
【0024】
上記目的を達成するため、この発明の第2の観点にかかる切替方法は、
入力信号を分配する分配ステップと、
前記分配ステップが分配した一の信号を増幅する第1の増幅ステップと、
前記第1の増幅ステップの出力信号と、同位相となるように、前記分配ステップが分配した他の信号の位相を調整すると共に、増幅する第2の増幅ステップと、
前記第1の増幅ステップが増幅した信号と前記第2の増幅ステップが増幅した信号が入力したときに入力した信号を合成し、前記第1の増幅ステップが増幅した信号と前記第2の増幅ステップが増幅した信号の何れか一方のみが入力したときに信号を分配するステップと、を備える第1の合成ステップと、
前記第1の合成ステップが合成した信号を分配して、その一方を出力し、前記第1の合成ステップが分配した信号を合成して出力するステップと、を備える第2の合成ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態にかかる切替装置について説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の切替装置は、図1(A)に示すように、分配器1と、増幅器2と3と、導波管合成器4と6と、位相器5と8と、終端器7と、から構成される。
【0027】
分配器1は、入力端が信号入力端に接続され、第1と第2の出力端を有し、入力信号(電磁波)を第1の出力端と第2の出力端を介して第1の系と第2の系にほぼ均等に分配する。
増幅器2は、入力端が分配器1に接続され、分配器1から供給された信号を増幅して出力する。増幅器2に故障等の不具合が発生したときは、増幅器2内で出力信号を遮断する。
【0028】
位相器5は、入力端が分配器1に接続され、増幅器2と増幅器3の出力信号の位相が同相となるように、供給された信号の位相を調整する。
増幅器3は、入力端が位相器5に接続され、位相器5から供給された信号を増幅して出力する。増幅器3も、故障などの不具合が発生したときは、増幅器3内で出力信号を遮断する。
【0029】
導波管合成器4は、入力端が増幅器2と増幅器3に接続され、増幅器2と増幅器3から供給された信号を合成又は分配する。増幅器2と3から同一振幅且つ同一位相の信号が供給された場合、導波管合成器6に接続されている出力端に合成した信号を出力する。また、増幅器2又は3に不具合が生じた場合、正常な増幅器3又は2から信号が供給された場合、導波管合成器6と位相器8に接続されている出力端に信号を実質的に均等に分配して出力する。
【0030】
位相器8は、入力端が導波管合成器4に接続され、導波管合成器6に入力する2つの信号が同位相になるように、導波管合成器4が分配した一方の信号の位相を調整する。
【0031】
導波管合成器6は、入力端が導波管合成器4と位相器8に接続され、供給された信号を合成又は分配する。導波管合成器4と位相器8とから位相が同一の信号が供給された場合、1つの出力端に合成した信号を出力する。導波管合成器4のみから信号が供給された場合、2つの出力端に信号を実質的に均等に分配して出力する。
終端器7は、入力端が導波管合成器6に接続され、導波管合成器6から供給された信号を吸収する。
【0032】
導波管合成器4及び6は、図2に示すように、2つの入力端arm1,2と、2つの出力端arm3,4とを備え、表1に示すような分配及び合成の特性を有す。
【0033】
【表1】
【0034】
上記表1において、「正常」、「異常」、「合成」及び「分配」は、それぞれ次のようなことを意味する。
正常:増幅器から信号が出力される状態。
異常:増幅器から信号が出力されない状態。
合成:2つの入力port(arm1,arm2)に同一位相、同一振幅の信号が入力し、1つの出力port(arm3)から合成した信号を出力する状態。
分配:1つの入力port(arm1又はarm2)に信号が入力し、2つの出力port(arm3,arm4)から2分配した信号を出力する状態。
【0035】
具体的に説明すると、導波管合成器4と6は、例えば、入力端arm1のみから信号が供給されたときに、供給された信号を出力端arm3とarm4に均等に分配して出力する。この場合、arm2には信号を出力しない。また、入力端arm2のみから信号が供給されたときには、供給された信号を出力端arm3とarm4に均等に分配して出力する。この場合、arm1には信号を出力しない。
【0036】
また導波管合成器4と6は、例えば、入力端arm1とarm2から同一位相、且つ同一振幅の信号が供給されたときに、供給された信号を出力端arm3に合成して出力する。この場合、arm4には信号を出力しない。また、入力端arm1とarm2から逆位相、且つ同一振幅の信号が供給されたときには、供給された信号を出力端arm4に合成して出力する。この場合、arm3には信号を出力しない。
【0037】
次に、上記構成を有する切替装置の動作について図3を参照して説明する。
図3(A)に示すように、この切替装置に入力した信号、即ち、入力信号は、分配器1に供給されて、ほぼ均等に2分配されて、増幅器2と位相器5に供給される。
【0038】
増幅器2は、入力信号S1を増幅し、増幅信号S2を導波管合成器4に供給する。例えば、分配器1への入力信号をsinωtとし、増幅器2の増幅率をBとすると、増幅器2の出力信号S2は(B/2)・sin(ωt+θ1)で表される。
【0039】
位相器5は、増幅器2及び3から導波管合成器4に供給される信号S2,S4が同位相となるように、入力信号S3の位相を調整し、増幅器3は、増幅率Bで入力信号を増幅して、増幅信号S4を導波管合成器4に供給する。従って、増幅器3の出力信号S4も、ほぼ(B/2)・sin(ωt+θ1)で表される。
【0040】
導波管合成器4は、供給される信号S2,S4が同一振幅同一位相であるため、導波管合成器4のarm3から信号S2又はS4の2倍に相当する合成信号S5を出力し、arm4から0レベルの信号S6を出力する。
【0041】
ここで、例えば、上述のように、入力信号S2、S4が共に(B/2)・sin(ωt+θ1)で表されるとすると、arm3が出力する合成された信号S5はほぼB・sin(ωt+θ2)で、arm4が出力する信号S6はほぼ0で表される。
信号S6の信号レベルがほぼ0のため、位相器8の出力信号S7の信号レベルもほぼ0となる。
【0042】
導波管合成器6は、導波管合成器4から供給された信号S5を2分配し、分配した一方の信号S8をarm3からこの送信系切替システムの出力信号として出力し、分配した他方の信号S9をarm4から終端器7に供給して吸収させる。
【0043】
上述の例のように、導波管合成器4の出力する信号S5がB・sin(ωt+θ2)で表され、導波管合成器6の出力する信号(出力信号)S8は、(B/2)・sin(ωt+θ3) で表され、増幅器2及び3の出力信号S2,S4の信号レベルと同一となる。
【0044】
ここで、例えば、増幅器2(又は第1の系)が故障等により出力信号を遮断したとする。この場合、図3(B)に示すように、導波管合成器4には増幅器3が増幅した信号S4のみが供給される。
【0045】
導波管合成器4は、供給された信号S4を均等に分配し、分配した信号をarm3とarm4から信号S5とS6として出力する。
ここで、上述の例と同様に、導波管合成器4に供給される信号S4が、(B/2)・sin(ωt+θ1)で表されるとすると、導波管合成器4が分配出力する信号S5及びS6は次のように表される。
【0046】
S5:(1/2)・(B/2)・sin(ωt+θ2)
S6:(1/2)・(B/2)・sin(ωt+θ2−θx)
【0047】
位相器8は、導波管合成器6の入力信号S5とS7の位相が実質的に同一となるように、arm4が出力した信号S6の位相を調整して(調整値θx)、導波管合成器6に信号S7を供給する。ここで、信号S7はS5と同様に(1/2)・(B/2)・sin(ωt+θ2)で表される。
信号S5とS7が同一振幅同一位相に調整されているため、導波管合成器6のarm3は、信号S5又はS7の2倍に相当する信号S8を出力し、arm4は、0レベルの信号S9を出力する。
【0048】
従って、上述の例では、この送信系切替システムの出力信号S8は、(B/2)・sin(ωt+θ3)で表されることになる。増幅器3又は位相器5が故障して、第2の系が遮断した場合にも同様の動作となる。
【0049】
このように、この実施の形態の送信回路によれば、増幅器2及び3が正常に動作しているときの出力信号S8のレベルと、増幅器2(又は3)が故障等により出力信号を遮断したときの出力信号S8のレベルとはほぼ等しい。従って、無瞬断で、且つ、レベルが低下することなく、送信経路(合成送信系と1系統送信)を切り替えることができる。
【0050】
増幅器2及び3が正常に動作しているときと、増幅器2が正常に動作することができなくなったときとの、出力信号S8の信号レベルを図1(B)に示す。図示するように、増幅器2及び3が正常に作動しているときから、増幅器2が信号を出力しなくなったときに、信号断を生じることなく、また、信号レベルが低下するという問題が生じることもないことがわかる。
【0051】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、使用する導波管合成器が、arm1のみから信号が供給された際にarm3とarm4に分配される信号の位相差と、arm2のみから信号が供給された際にarm3とarm4に分配される信号の位相差とが、同一であることを前提としている。しかし、導波管合成器がこのような特性を必ず有しているとは限らない。そこで、以下このような特性を有していない導波管合成器を使用した切替方式を説明する。
【0052】
この実施の形態の切替装置の構成は、図4(A)に示すように、分配器11と、増幅器12と13と、導波管合成器14と16と、位相器15と18と、終端器17と、位相器制御盤19と、から構成される。
【0053】
分配器11と、導波管合成器14と16と、位相器15と、終端器17とは、図1(A)を参照して説明した、分配器1と、導波管合成器4と6と、位相器5と、終端器7と、実質的に同一の構成及び機能を備える。
【0054】
増幅器12及び13は、供給された信号を増幅して出力する機能と増幅器12及び13に不具合が発生したときは、該当する増幅器内で出力信号を遮断すると共に異常を通知する警報信号を出力する機能とを備える。
【0055】
位相器18は、位相量可変型の位相器であり、その位相調整量(シフト量)は、通常状態では、導波管合成器14のarm1のみから信号が入力したときにarm3とarm4が出力する信号の位相差と、arm2のみから信号が入力したときにarm3とarm4が出力する信号の位相差との中間値(ここでは、θrefとする)に設定されている。
【0056】
位相器18は、位相器制御盤19から、増幅器12(又はその系)が故障した旨の通知を受信すると、入力信号の位相シフト量を、さらに+θ(=θref+θadd)して、導波管合成器16のarm1とarm2に入力する信号を実質的に同相とする。位相器18は、位相器制御盤19から増幅器13(又はその系)が故障した旨の通知を受信すると、入力信号の位相シフト量を、さらに−θ(=θref−θadd)して、導波管合成器16のarm1とarm2に入力する信号を実質的に同相とする。追加のシフト量θは、片系増幅時の出力レベルが最大となる位相器の位相量(又は、制御電圧)を予め記憶させておくことにより、容易に決定される。
【0057】
位相器制御盤(制御部)19は、増幅器12又は13が出力した警報信号に応答し、何れの系が故障したかを示す位相量制御信号を出力する。
【0058】
上記構成を有する切替装置の動作について説明する。
増幅器12と13が正常に信号を出力しているときは(第1の系統と第2の系統が正常なとき)、第1の実施の形態で図3(A)を参照して説明した方法と同様に導波管合成器16から出力信号を出力する。このとき、導波管合成器14のarm4から出力された信号は0レベルであり、位相器18の位相シフト量はほとんど問題とならない。
【0059】
例えば、増幅器12が故障等により出力信号を遮断したときに、増幅器12は、位相器制御盤19に警報信号を出力する。位相器制御盤19は、増幅器12が出力した警報信号に応答して位相器18に、増幅器12が故障したことを示す位相量制御信号を送信する。
また、導波管合成器14は、増幅器13が増幅した信号のみを受信し、受信した信号を均等に2分配してarm3とarm4から出力する。
【0060】
位相器18は、位相器制御盤19から供給される位相量制御信号に従って、導波管合成器14のarm4から供給される信号の位相を調整し、導波管合成器16に供給する。位相量制御信号の出力当初は、位相器18の位相シフト量はθrefであり、導波管合成器16のarm1とarm2に供給させる信号S11とS12の位相は一致しないため、出力信号S13のレベルは一瞬低下する。しかし、時間の経過に伴って、位相器18が位相シフト量をθref+θaddまで変化させるため、導波管合成器16のarm1とarm2に入力する信号の位相は同一になり、第1の実施の形態で説明したように、この送信系回路の出力信号の信号レベルは、故障前のレベルに復帰する。
【0061】
一方、増幅器13が故障等により出力信号を遮断したときに、増幅器13は、位相器制御盤19に警報信号を出力する。位相器制御盤19は、増幅器13が出力した警報信号に応答して位相器18に、増幅器13が故障したことを示す位相量制御信号を送信する。
また、導波管合成器14は、増幅器12が増幅した信号のみを受信し、受信した信号を均等に2分配してarm3とarm4から出力する。
【0062】
位相器18は、位相器制御盤19から供給される位相量制御信号に従って、導波管合成器14のarm4から供給される信号の位相を調整する。位相器18の位相シフト量は、当初は、θrefであり、導波管合成器16のarm1とarm2に供給される信号の位相は完全には一致しないため、出力信号S13のレベルは一瞬低下する。しかし、時間の経過に伴って、位相器18が位相シフト量をθref−θaddまで変化させるため、導波管合成器16のarm1とarm2に入力する信号の位相は同一になる。このため、第1の実施の形態で説明したように、この送信系回路の出力信号の信号レベルは、故障前のレベルに復帰する。
【0063】
この切替装置の増幅器12及び13が正常に作動しているときと、増幅器12又は13が正常に動作することができなくなったときとの、出力信号S13の信号レベルの関係を図3(B)に示す。図示するように、増幅器12及び13が正常に作動しているときから、増幅器13が信号を出力しなくなったときに、一時的に出力レベルが低下する。この一時的な低下は、導波管合成器14の特性に依存するが、導波管合成器14がarm2のみから入力した信号を2分配して、arm3及び4に出力するため、出力レベルが50%(入力信号の1/2)以上低下することはあり得ない。
【0064】
また、位相器18が位相を調整することにより、増幅器12が正常に作動しているときの出力電力となるように復旧することができる。この増幅器12の出力電力の復旧時間は、位相器18の制御時間である。
【0065】
さらに、位相器18の位相シフト量がθrefに設定されているので、増幅器12と13の何れが故障した場合場合でも、出力信号の信号レベルの低下を抑え、且つ、復旧までの時間を短くすることができる。
【0066】
なお、増幅器の点検・保守等により、増幅器12及び13の何れか一方のみで運用するときには、位相器18の位相値を設定した後に増幅器12又は13の出力を遮断とするようにすれば、出力レベルの低下を防ぐことができる。
【0067】
以上説明したように、この実施の形態による切替装置は、一方の増幅器が故障時に、一時的に出力レベルが低下が低下するが、短時間、且つ、自動的に復旧させることができる。また、合成送信から片系送信に切り替えるときに、送信レベルの低下は発生しない。
【0068】
また、対向通信設備だけでなく多元接続を行う衛星通信・衛星放送設備及び地上の通信並びに放送設備にも使用でき、同期の確立が不要なため、データ信号だけでなくあらゆる信号の通信・放送に使用可能となる。
【0069】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能であり、回路構成などは、上述の処理を実行するための機能を備えていれば、回路構成などは任意に変更可能である。
【0070】
例えば、図1の示す切替装置において、分配器1が分配した信号を、位相器5が位相を調整し、増幅器3が増幅するとしたが、増幅器3が増幅した後に位相器5が位相を調整するような構成としてもよい。
【0071】
また、分配器1が、入力信号を増幅器2及び位相器5に2分配するとしたが、増幅器2が増幅した信号と増幅器3が増幅した信号とが同相・同一レベルとなるように位相器5が調整可能であれば、分配する比率は1/2に限らずに任意である。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の切替方式は、現用から予備用に切り替え時に信号断を生じることなく、また出力レベルが低下しない。また、予備回線及び対向した送受信設備が不要であり、複数の周波数を必要としない。さらに、対向通信設備だけでなく多元接続を行う衛星通信・衛星放送設備及び地上の放送設備にも使用でき、同期の確立が不要なため、データ信号だけでなくあらゆる信号の通信・放送に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る切替装置の構成を示す図であり、(B)は、(A)に示す切替装置が出力する信号のレベルを示す図である。
【図2】導波管合成器の構成を示す図である。
【図3】(A)は、図1に示す切替装置の増幅器2及び3が正常に動作しているときの信号の流れを示す図であり、(B)は、図1に示す切替装置の増幅器2が出力信号を遮断したときの信号の流れを示す図である。
【図4】(A)は、本発明の第2の実施の形態に係る切替装置の構成を示す図であり、(B)は、(A)に示す切替装置が出力する信号のレベルを示す図である。
【図5】(A)は、従来の導波管切替器を使用した切替装置の構成を示す図であり、(B)は、(A)に示す切替装置が出力する信号のレベルを示す図である。
【図6】(A)は、従来の導波管合成器を使用した切替装置の構成を示す図であり、(B)は、(A)に示す切替装置が出力する信号のレベルを示す図である。
【符号の説明】
1,11,21,31 分配器
2,3,12,13,22,23,32,33 増幅器
4,6,14,16,34 導波管合成器
5,8,15,18,35 位相器
7,17,27,37 終端器
19 位相器制御盤
24 切替制御器
25 導波管切替器
Claims (9)
- 入力信号を第1と第2の経路に分配する分配器と、
前記分配器が前記第1の経路に分配した信号を増幅する第1の回路と、
前記分配器が前記第2の経路に分配した信号の位相を調整すると共に増幅する第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路の出力信号が共に入力したときに、入力した信号を合成して出力し、前記第1の回路と前記第2の回路の何れか一方の出力信号のみが入力したときに、入力した信号を分配して出力する第1の合成器と、
前記第1の合成器が分配した一方の信号の位相を調整する位相器と、
前記第1の合成器が合成して出力した信号を分配し、一方の信号をこのシステムの出力とし、また、前記位相器が位相を調整した信号と前記第1の合成器が分配した他方の信号を合成してこのシステムの出力とする第2の合成器と、
から構成されることを特徴とする送信系切替システム。 - 前記第2の回路は、前記第1の合成器に入力される2つの信号の位相が実質的に同一となるように、入力信号の位相を調整し、
前記位相器は、前記第2の合成器に入力される2つの信号の位相が実質的に同一となるように、入力信号の位相を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の送信系切替システム。 - 前記第2の回路は、前記分配器が分配した信号を増幅してから位相を調整する手段と、前記分配器が分配した信号の位相を調整してから増幅する手段と、のいずれか一方を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送信系切替システム。
- 前記第1及び第2の合成器は、
2つの入力端子と2つの出力端子とを備え、
前記2つの入力端子から信号が入力したときに、該入力信号を合成して前記2つの出力端子のうち何れか一方の出力端子から出力する手段と、
前記2つの入力端子の何れか一方から信号が入力したときに、該入力信号を分配して前記2つの出力端子から出力する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の送信系切替システム。 - 前記第2の合成器は、
前記第2の合成器に供給された信号を分配し、分配した一方の信号を出力信号として出力し、分配した他方の信号を終端器に供給して吸収させる手段と、
前記第2の合成器に供給された信号を合成し、合成した信号を出力信号として出力する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の送信系切替システム。 - 前記第1と第2の回路は、故障時に、該回路が増幅した信号の出力を停止すると共に故障を通知する警報信号を出力する手段を備え、
さらに、前記第1と第2の回路が出力した前記警報信号を受信し、前記位相器に位相の調整を指示する制御信号を送信する位相器制御盤を備え、
前記位相器が、前記位相器制御盤から供給された前記制御信号に従って前記第1の合成器から供給される信号の位相を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の送信系切替システム。 - 前記位相器は、前記第2の合成器の出力信号の電力が最大になるように、位相を調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の送信系切替システム。
- 前記位相器は、
前記第1の回路が出力した信号のみによる、前記第1の合成器の出力信号の位相値と、前記第2の回路が出力した信号のみによる、前記第1の回路の出力信号の位相値との平均値の位相となるように、入力信号の位相を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の送信系切替システム。 - 入力信号を分配する分配ステップと、
前記分配ステップが分配した一の信号を増幅する第1の増幅ステップと、
前記第1の増幅ステップの出力信号と、同位相となるように、前記分配ステップが分配した他の信号の位相を調整すると共に、増幅する第2の増幅ステップと、
前記第1の増幅ステップが増幅した信号と前記第2の増幅ステップが増幅した信号が入力したときに入力した信号を合成し、前記第1の増幅ステップが増幅した信号と前記第2の増幅ステップが増幅した信号の何れか一方のみが入力したときに信号を分配するステップと、を備える第1の合成ステップと、
前記第1の合成ステップが合成した信号を分配して、その一方を出力し、前記第1の合成ステップが分配した信号を合成して出力するステップと、を備える第2の合成ステップと、
を備えることを特徴とする切替方法。
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