JP3686313B2 - 血管挿入用カニューレ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、心臓もしくは大動脈手術の際に血管内に挿入し、血液を体外循環回路に送り、或いは体外循環回路から血管に戻すとともに、必要に応じて挿入する血管カテーテル又はガイドワイヤを血管にスムーズに挿入するための補助として用いる血管挿入用カニューレに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のカニューレとして、実開平6−21648号公報に記載のものが知られている。このカニューレは長さ方向に貫通したメインルーメンを有し、後端開口部にコネクタを設けた本体チューブと、該本体チューブの後端部近傍に後端側に傾斜して設けられ、前記メインルーメンと連通したガイドワイヤを挿通するための枝管からなるカテーテルチューブであって、該枝管は本体チューブに対して5°〜20°の角度をなすとともに、その後端部近傍にクランプを付設したものである。
【0003】
しかしながら、前記従来のカニューレは、本体チューブの全体が同一径の太さのものからなっているため、挿入する血管を切開する長さが必然的に長くなってしまい、切開長を可及的に短くして傷を小さくすることの医学上の要請に応えられないという問題がある。また、本体チューブ及び枝管の全体が軟質樹脂からなっているため、ガイドワイヤだけの挿入ならまだそうでもないが、挿入抵抗が比較的大きい例えば血管カテーテルを挿入する場合には本体チューブ及び枝管が屈曲し易く、挿入しにくいという問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、前記のような従来の問題点を解決し、挿入する血管の切開長を可及的に短くすることができるとともに、挿入抵抗が比較的大きい血管カテーテル等を挿入する場合でも屈曲しにくくて力を入れ易い血管挿入用カニューレを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、図面に示すように、請求項1の発明は、血管に挿入して、血液を体外循環回路に送り、或いは体外循環回路から血管に戻すとともに、必要に応じて挿入する血管カテーテル又はガイドワイヤを血管にスムーズに挿入するための補助として用いるカニューレ1であって、軟質樹脂で成形され先端に向かって先細のテーパ状になっている挿入側のチューブ前部2と、硬質樹脂で成形され途中から後部側へ向け所定角度で傾斜して分岐した枝管4を有する連結用チューブ中間部3と、軟質樹脂で成形されているチューブ後部5とが、ほぼ直線状をなすように一体に連結されているとともに、枝管4の後端開口部とチューブ後部5の後端開口部にそれぞれ疎水性フィルター 10 , 11 が着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1において、枝管4の分岐角度が15°〜25°の範囲であることを特徴とする。請求項3の発明は、請求項1又は2において、枝管4にキャップ7付きの空気抜き管6が分岐して設けられていることを特徴とする。請求項4の発明は、請求項1ないし3において、後端開口部から疎水性フィルター10が取り外された枝管4に血管カテーテル16又はガイドワイヤ挿入固定用シールコネクタ15が着脱可能に取り付けられるようになっていることを特徴とする。
【0007】
請求項5の発明は、請求項4において、シールコネクタ15は、血管カテーテル16又はガイドワイヤを挿通可能な径の内孔17が形成されているとともに、周壁に鍵状の切り込み溝19が形成されて枝管4に嵌合される両端開口の中空筒状コネクタ本体20と、このコネクタ本体に螺合して取り付けられ、血管カテーテル又はガイドワイヤを挿通可能な径の内孔21が形成されているねじ部材23と、このねじ部材とコネクタ本体との間及びコネクタ本体と枝管との間に配置されるシール部材24,25とを具え、取付けに際して切り込み溝19が枝管4に設けた係止ピン8に係止するようになっていることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態の血管挿入用カニューレを図面を参照して説明する。図1は血管挿入用カニューレの長さ方向の一部を省略して示す全体の縦断正面図、図2はシールコネクタの斜視図、図3はシールコネクタが枝管の後部に取り付けられた状態の拡大縦断正面図、図4はシールコネクタを介して血管挿入用カニューレに血管カテーテルを取り付けた状態の、その長さ方向の一部を省略して示す全体の正面図である。
【0009】
1はカニューレで、軟質樹脂で成形され先端に向かって先細のテーパ状になっている挿入側のチューブ前部2と、硬質樹脂で成形され途中から後部側へ向け所定角度で傾斜して分岐した枝管4を一体に有する連結用チューブ中間部3と、軟質樹脂で成形されているチューブ後部5とを具え、これらがその隣接端部を嵌合したうえ接着剤等によりほぼ直線状をなすように一体に連結されている。
【0010】
チューブ前部2は全長L1が約20cmの、例えば軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、シリコーンゴム等の医療器具として適した材質の樹脂からなり、後端開口部の内外径がそれぞれ例えば8mm,12mmとなっているとともに、先端に行くに従って徐々に細く先端開口部の内外径がそれぞれ例えば6mm,7mmとなっており、先端面が斜めにカットされている。チューブ中間部3は全長L2が約15cmの、例えばポリカーボン、ポリサルフォン等の硬質の材料樹脂からなり、内外径が枝管4を含めそれぞれ例えば7mm,12mmとなっている。枝管4の分岐角度は15°〜25°、好ましくは18°〜22°の範囲となっている。枝管4には空気抜き管6が分岐して設けられ、該管にはキャップ7が取り付けられている。8は空気抜き管6より後方の枝管4の外面にそれぞれ反対側に位置するように設けられている1対の係止ピンである。チューブ後部5はチューブ前部2と同じ材質からなっており、全長L3が約20cm、内外径がそれぞれ例えば8mm,12mmとなっている。枝管4の後端開口部とチューブ後部5の後端開口部にはそれぞれ疎水性フィルター10,11が着脱可能に取り付けられている。
【0011】
図2で15は血管カテーテル又はガイドワイヤ挿入固定用シールコネクタで、図3にも詳示するように血管カテーテル16又は図示省略のガイドワイヤを挿通可能な径の内孔17が内向きフランジ部18の内側に形成されているとともに、相対向する周壁に鍵状の切り込み溝19が形成されて枝管4に嵌合される両端開口の中空筒状コネクタ本体20と、このコネクタ本体に螺合して取り付けられ、血管カテーテル16を挿通可能な径の内孔21が筒状部22の内側に形成されているねじ部材23と、このねじ部材とコネクタ本体20との間に配置され、血管カテーテル16と枝管4との間をシールするシール部材24,25とからなっており、その切り込み溝19を係止ピン8に係止させて着脱可能に取り付けられるようになっている。シール部材24は実施の形態ではゴムパッキンからなり、その中央部に明いた穴26は常態では血管カテーテル16の外径とほぼ等しいか、僅かに小となっていて、ねじ部材23による締め付けによりねじ部材の先端面と内向きフランジ部17の間で潰されて穴26側の縁部がさらに血管カテーテル16の外面に接するようになってシールする。シール部材25は実施の形態ではOリングからなっている。鍵状の切り込み溝19はこの実施の形態ではコネクタ本体20の軸方向に延びる軸方向溝部19aと、該溝部の奥からコネクタ本体20の径方向に延びる径方向溝部19bとからなる、L字状溝からなっている。
【0012】
血管カテーテル16は図4に示すような構成となっており、前後端が開口したメインルーメンを有するカテーテル本体31の先端部にバルーン32が設けられ、後端開口部にキャップ33が設けられているとともに、その近傍にバルーン32用のルアー34付き分岐管35が設けられている。36は別の分岐管で、その先端ルアー37には図示しない圧力センサが取り付けられている。この実施の形態では前記のようにシールコネクタ15で固定するものとして血管カテーテル16を示したが、これに限らずガイドワイヤでもよいことは勿論である。
【0013】
使用に際しては、まず血管(通常、大腿動脈)を剥離・露出した後に、小切開して、チューブ前部2から血管内に約5cm挿入する。このときカニューレ1内に血液が流れ込んでくるが、カニューレ1内の空気は疎水性フィルタ10,11を通過して外に逃げ、血液でカニューレ1が満たされるのを邪魔しないが、疎水性フィルタ10,11は血液を通さないので、満たされるタイミングを図ってクランプで止めるといった必要がなくなる。ついで、チューブ後部5を図示しないクランプなどによってクランプしてから、疎水性フィルタ11を取り外し、チューブ後部5の後端開口部に図示しない体外循環回路を接続する。
【0014】
次に、血管カテーテル16に付いているシールコネクタ15のねじ部材23が緩んでいることを確認し、さもなくばねじ部材23を緩め、血管カテーテル16のできるだけ先端に位置させてからねじ部材23を締める。このときねじ部材23が緩んでいてもシール部材24の穴26は常態では血管カテーテル16の外径とほぼ等しいか、僅かに小となっているため血管カテーテルとシール部材24との隙間から血液が漏れることなく、ねじ部材23を締めるとシール部材24は潰されて内側に押し出されるようになり(潰される力を逃がすように働く)、ことによって締め付け、血管カテーテル16が固定される。
【0015】
そして、枝管4に付いている疎水性フィルタ10を外し、シールコネクタ15の切り込み溝19に係止ピン8を沿わせながら血管カテーテル16を挿入し、係止ピン8が切り込み溝19の軸方向溝部19aの一番奥まで達したら右に回し、さらに径方向溝部19bの一番奥に至らしめて(図4参照)シールコネクタ15をロックした後、空気抜き管6のキャップ7を開け、カテーテル挿入に伴って巻き込んだ空気を抜き、再びキャップ7をする。しかる後、シールコネクタ15のねじ部材23をやや緩め、血管カテーテル16をチューブ前部2を経由して血管の目的部位まで挿入し、ねじ部材23を締めて血管カテーテル16を固定し、血管カテーテル16のバルーン32を膨らませて、血管を閉鎖することや薬液注入など必要な措置を行う。
【0016】
前記に際し、ガイドワイヤを固定するには同様にしてガイドワイヤをチューブ前部2を経由して血管の目的部位まで挿入する。そして、ねじ部材23を締めてガイドワイヤを固定した後、カニューレ1を抜き、別のカニューレ又はカテーテルをそれに沿って挿入する措置を行う。
【0017】
【発明の効果】
請求項1ないし5の発明は前記のような構成からなるので、従来のカニューレではなかなかできなかった挿入する血管の切開長を可及的に短くすることができ、血管に挿入するための傷を小さくすることができる。また、挿入抵抗が比較的大きい血管カテーテル等を挿入する場合でも屈曲しにくく、挿入に際して力を入れ易い等、優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態の血管挿入用カニューレの長さ方向の一部を省略して示す全体の縦断正面図である。
【図2】シールコネクタの斜視図である。
【図3】シールコネクタが枝管の後部に取り付けられた状態の拡大縦断正面図である。
【図4】シールコネクタを介して血管挿入用カニューレに血管カテーテルを取り付けた状態の、その長さ方向の一部を省略して示す全体の正面図である。
【符号の説明】
1 カニューレ
2 チューブ前部
3 チューブ中間部
4 枝管
5 チューブ後部
6 空気抜き管
7 キャップ
8 係止ピン
10,11 疎水性フィルター
15 シールコネクタ
16 血管カテーテル
19 切り込み溝
20 コネクタ本体
23 ねじ部材
24,25 シール部材
Claims (5)
- 血管に挿入して、血液を体外循環回路に送り、或いは体外循環回路から血管に戻すとともに、必要に応じて挿入する血管カテーテル又はガイドワイヤを血管にスムーズに挿入するための補助として用いるカニューレであって、軟質樹脂で成形され先端に向かって先細のテーパ状になっている挿入側のチューブ前部と、硬質樹脂で成形され途中から後部側へ向け所定角度で傾斜して分岐した枝管を有する連結用チューブ中間部と、軟質樹脂で成形されているチューブ後部とがほぼ直線状をなすように一体に連結されているとともに、前記枝管の後端開口部とチューブ後部の後端開口部にそれぞれ疎水性フィルターが着脱可能に取り付けられていることを特徴とする血管挿入用カニューレ。
- 枝管の分岐角度が15°〜25°の範囲である請求項1記載の血管挿入用カニューレ。
- 枝管にキャップ付きの空気抜き管が分岐して設けられている請求項1又は2記載の血管挿入用カニューレ。
- 後端開口部から疎水性フィルターが取り外された枝管に血管カテーテル又はガイドワイヤ挿入固定用シールコネクタが着脱可能に取り付けられるようになっている請求項1ないし3記載の血管挿入用カニューレ。
- シールコネクタは、血管カテーテル又はガイドワイヤを挿通可能な径の内孔が形成されているとともに、周壁に鍵状の切り込み溝が形成されて枝管に嵌合される両端開口の中空筒状コネクタ本体と、このコネクタ本体に螺合して取り付けられ、血管カテーテル又はガイドワイヤを挿通可能な径の内孔が形成されているねじ部材と、このねじ部材とコネクタ本体との間及びコネクタ本体と枝管との間に配置されるシール部材とを具え、取付けに際して前記切り込み溝が枝管に設けた係止ピンに係止するようになっている請求項4記載の血管挿入用カニューレ。
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