JP3685995B2 - 合成枕木、その合成枕木を有するレール支持装置および前記合成枕木の製造方法 - Google Patents

合成枕木、その合成枕木を有するレール支持装置および前記合成枕木の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄道軌道に用いられる枕木に関し、特にタイプレートを枕木にねじ止めする部材を埋込んだ合成枕木、その合成枕木を有するレール支持装置および前記合成枕木の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より長繊維で補強された硬質樹脂発泡体を角柱状に形成した合成枕木が知られており、この枕木にめねじを有する埋込栓を埋設しておき、埋込栓に固定ボルトを螺着してタイプレートを枕木に取付けることが知られている。
【0003】
しかし前記埋込栓は円筒状で、しかも枕木に穿った筒状孔に遊挿し、例えばウレタン系若しくはエポキシ系接着剤で固定するもので、埋込栓の横圧力およびふく進力に対する強度が充分ではなく、しかも引抜抵抗力も充分ではない。
【0004】
また従来よりタイプレートに正円の取付孔を穿設し、この取付孔に固定ボルトを挿通するとともに前記埋込栓に螺着してタイプレートを合成枕木に固定することが知られている。
【0005】
しかしレールの軌間調整作業の際にタイプレートの交換およびボルト・ナットの取外しをし、しかも埋込栓の位置修正を限られた時間内にしなければならず、当該作業が困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記不都合を解消し、枕木に埋込んだねじ部への横圧力およびふく進力に対する強度を向上させ、しかも引抜抵抗力を大きくすることを課題とする。
【0007】
また軸間調整作業を容易かつ迅速にすることを課題とする。
【0008】
さらに前記強度の大きいねじ部を埋込んだ合成枕木を容易に製造することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明はねじ部の下端に鍔部を一体化し、前記ねじ部を前記鍔部とともに枕木に埋込み、かつ固定することを特徴とする。
【0010】
本明細書においてねじ部とはめねじを有する埋込栓若しくは軸部におねじを螺設したアンカーボルトを意味する。前記のように構成すると、鍔部により引抜抵抗力が増大するのは勿論、枕木内に固定されているねじ部が鍔部により、さらに固定かつ補強され、横圧力(車輪とレールとの間に働く車軸方向の力)およびふく進(レールが軸方向にずれる)力に対する強度が向上する。
【0011】
また本発明はねじ部の下端に鍔部を一体化し、前記ねじ部を前記鍔部とともに枕木に埋込み、かつ固定する合成枕木と、前記枕木への取付用細長孔をプレート長手方向に平行に設けたタイプレートとを有し、しかも前記取付用細長孔にボルトを通すとともに螺着して前記タイプレートを前記枕木に取付けることを特徴とするものである。
【0012】
前記のように構成すると、軌間調整作業の際に前記ねじ部が埋込栓のときはボルトを緩め、ねじ部がアンカーボルトの場合はこれに螺着したナットを緩め、タイプレートの長孔位置をずらし、ねじ部を緊締し直すだけでよく、限られた時間内に迅速かつ容易にすることができる。
【0013】
さらに本発明は枕木にねじ部用孔と鍔部係止溝とを連設し、ねじ部を前記ねじ部用孔に入れるとともに接着剤で固定し、鍔部を係止した前記鍔部係止溝に接着剤を充填することを特徴とし、また貼り合わせ前の第1の枕木部分にねじ部用孔を穿設し、貼り合わせ前の第2の枕木部分に鍔部係止溝を凹設し、前記ねじ部用孔にねじ部を入れるとともに接着剤で固定し、前記ねじ部と一体の鍔部に前記鍔部係止溝を外嵌かつ接着するとともに前記第1および第2の枕木部分を接着して貼り合わせることを特徴とするものである。
【0014】
このようにすればねじ部とともに鍔部が確実に取付けられ、強度の大きいねじ部を有する合成枕木を容易かつ迅速に製造することができ、生産効率が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に第1および第2の実施の形態を示す。いずれにしても枕木1は合成枕木であり、長繊維で補強された硬質樹脂発泡体を角柱状に形成したもので、具体例としてはガラス繊維とウレタン樹脂を主成分とし、少量の触媒、整泡剤及び発泡剤を添加した原料により得たFFU(Fiber reinforced Foamed Urethane)と呼ばれる成形板を積層するとともに接着した周知のものである。
【0016】
図1、2で示すように第1の実施の形態では、ねじ部2として金属製の筒状体20にめねじ21を螺設して埋込栓2aを形成し、埋込栓2aの下端に平面からみて正方形または正円の金属製板よりなる鍔部3を溶接により固着して埋込栓2aと鍔部3とを一体化する。
【0017】
筒状体20および鍔部3はプラスチックにより一体的に形成してもよいが、前者の金属製の方が強度が大きく、後者のプラスチック製の場合は容易、迅速かつ安価に製造することができ、また図3で示すようにいずれの筒状体20の外周面におねじなどの凹凸9を形成してもよく、このようにすれば後述の埋設、接着の際に接着力が大となるとともにせん断抵抗が付加され、より強固な引き抜き抵抗力を得ることが可能となる。
【0018】
鍔部3付き埋込栓2aは図1〜3のように個別に形成してもよいが、図4、5および7で示す第1の実施の形態における他の変形例のように複数個連結することが好ましく、図4、5では間隔をおいてレール方向に立設した2個の埋込栓2a、2aを一枚の長方形若しくは長円形の鍔部3で連結するものであり、図7では間隔をおいて前後左右に立設した4個の埋込栓2a、2a、2a、2aを孔30を有する1枚の枠板よりなる鍔部3で連結するものであり、この鍔部3は1枚の長方形板であってもよい。このように複数個の埋込栓2aを1枚の鍔部3で連結する方が各埋込栓2aの取付時の位置狂いを防止でき、しかも強度及び生産効率が向上し、また鍔部3を枠状にする方が長方形板で形成するより材料の無駄がなくなり、好ましい。
【0019】
なお先述の個別の鍔部3付き埋込栓2aの場合は状況により自由に使用することができ有効である。
【0020】
前記ねじ部2は埋込栓2aとしたが、図6で示すように第2の実施の形態ではねじ部2をアンカーボルト2bとするもので、本実施例ではナットよりなる上部の鍔部3′をアンカーボルト2に螺着するもので、この鍔部3′を枕木1にあらかじめ形成した鍔部係止溝7′に嵌入しておくものである。このため下部の鍔部3と相俟ってより確実に位置決めすることができる。なおアンカーボルト2の材質およびアンカーボルト2bの下端に鍔部3を一体化する構成および鍔部3付きアンカーボルト2bの個別形成若しくは1枚の鍔部3への複数のアンカーボルト2b、2b・・の立設形成の構成については先の埋込栓2aの場合と同じであり、重複説明を省略する。なお埋設用のねじ部2が埋込栓2aの場合はアンカーボルト2bに比べて埋込栓2aの外径が大きくなり、したがって枕木1に穿ったねじ部用孔6との付着面積が大きくなり、引き抜き抵抗力が大きくなる点で有効であり、アンカーボルト2bの場合はボルト取付前の埋込栓2aのようにめねじ21内に水の進入による腐食のおそれがなく、有効である。
【0021】
本発明の第1、第2の実施の形態では枕木1のうちねじ部2を取付ける位置に枕木1の上面若しくは下面から遊挿孔よりなるねじ部用孔6を穿設する。またねじ部用孔6の下に鍔部係止溝7を切削により連設する。なお図10(A)の仮想線で示す符号7′はアンカーボルト2bを埋込む場合の上方の鍔部3′を嵌入するための鍔部係止溝7′である。
【0022】
図10(A)で示すように枕木1の上下を逆にし、枕木1にねじ部用孔6と鍔部係止溝7とを連設する。なお製造工程としては先にねじ部用孔6を穿設し、その後鍔部係止溝7を形成してもその逆でもよい。
【0023】
また前述のように鍔部3が個別の場合には鍔部係止溝7も個別かつ嵌入可能に形成し、鍔部3が1個で、2個または4個のねじ部2を連結するように複数のねじ部2を連結するタイプの場合には、図4、図7で示すように鍔部係止溝7を前記各種の鍔部3が枕木1内に収まるように平面から見て鍔部3の形状に合わせ、嵌入可能に形成する。
【0024】
しかる後、図10の(B)で示すようにねじ部2をねじ部用孔6に入れる。このときねじ部2が埋込栓2aの場合はその上面2a′を枕木1の上面10と同一平面位置となるように、また図6で示すようにねじ部2がアンカーボルト2bの場合はアンカーボルト2bの上方部2b′が枕木1の上面10より突出する位置にそれぞれ入れ、その後、図10(C)で示すようにねじ部用孔6にウレタン系若しくはエポキシ系等硬化型の接着剤8を注入硬化させてねじ部2を固定する。なお図3では埋込栓2aの外周面に凹凸9を形成した例を示したが、このようにすると既述のとおり外周面の接着力だけでなく、凹凸9のせん断抵抗が付加され、より強固な引き抜き抵抗を得ることができ効果的である。
【0025】
次に鍔部係止用溝7に前記材料と同じ硬化型の接着剤8を充填して鍔部3を固定する。なお図3で示すように鍔部係止用溝7内に合成枕木1と同材質の板材1′を蓋板として入れ、鍔部3とともに前記接着剤8で固定してもよく、或いは図2の仮想線で示すようにねじ部用孔6′を実線のねじ部用孔6より深く形成するとともに鍔部係止溝7′を実線の鍔部係止溝7より浅く形成してもよく、これらのようにすれば枕木1の外観が美麗となり、有効である。
【0026】
前述の製造方法の場合の枕木1は複数の成形板を積層するとともにすべての成形板を接着して角柱状に形成したものであるが、図11は他の製造方法例を示すもので、すべての成形板を貼り合わせる前に、図11(A)で示すように厚肉に貼り合わせ、若しくは厚肉単体の第1の枕木部分1aに遊挿孔よりなるねじ部用孔6を穿設し、1枚若しくは薄肉に貼り合わせた第2の枕木部分1bに鍔部係止溝7を凹設し、次に図11(B)で示すようにねじ部用孔6にねじ部2(埋込栓2aまたはアンカーボルト2b)を第1の製造方法と同様に入れ、続いて図11(C)で示すように第1の製造方法と同様の接着剤8をねじ部用孔6に注入硬化させてねじ部2を固定する。
【0027】
しかる後、図11(D)で示すようにねじ部2と一体の鍔部3に鍔部係止溝7を外嵌かつ接着剤8で接着して鍔部3を固定するとともに枕木部分1a、1bを接着して貼り合わせる。図11(D)で示す枕木1も図10(C)で示す枕木1もその厚さ、大きさは同じである。第1の製造方法によれば枕木1にねじ部用孔6と鍔部係止溝7を穿つだけなので作業性が良好であり、また第2の製造方法によれば枕木1の下面から鍔部係止溝7の加工処理が視認できず、外観が良好である。
【0028】
図8、9に示す符号4は本発明の構成部分のタイプレートであり、前述の構成よりなる本発明の合成枕木とともに使用されるもので、枕木1への取付用孔として細長孔5、5、5、5をそれぞれ前後左右に間隔をおき、しかも各取付用細長孔5をタイプレート長手方向と平行に穿設する。
【0029】
そしてねじ部2が埋込栓2aの場合には枕木1上にタイプレート4を敷き、各取付用細長孔5に固定ボルト11を通すとともに埋込栓2aのめねじ21に螺着する。なお図9では一方の固定ボルト11を省略してあるが、これは取付用細長孔5とめねじ21を明瞭に表現するためで、前記取付用細長孔5に固定ボルト11を通すとともに前記めねじ21に螺着することは勿論である。また図6で示すようにねじ部2がアンカーボルト2bの場合には各アンカーボルト2bの上方部2b′に各取付用細長孔5を外挿しながら枕木1にタイプレート4を敷き、各アンカーボルト2bをナット12締めする。
【0030】
ここに締結レールRに振動が生じても鍔部3を有するため引抜抵抗が極めて大きく、かつねじ部は接着され、鍔部も接着かつ嵌合されているのでその固定力は非常に大きく、横圧力及びふく進力に対する強度が向上し、また軌間調整の必要性を生じた場合にはねじ部2に対応する他のねじ部、すなわち固定ボルト11またはナット12を緩めてタイプレート4の細長孔5位置を車軸方向にずらし、その後固定ボルト11またはナット12を緊締すればよい。
【0031】
なお図9で示すようにタイプレート4同様、取付用細長孔5に対応する位置に取付用細長孔5′を穿った調整板4′を枕木1とタイプレート4間に介在させることが好ましく、このようにすれば前述の軌間調整のみならず、高さ調整も可能となるものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、枕木に埋込まれたねじ部への横圧力およびふく進力に対する強度が向上し、しかも引抜抵抗力が大きく、確実にタイプレートを止めることができる。
【0033】
また本発明によれば、軸間調整作業を容易かつ迅速にすることができる。
【0034】
さらに本発明によれば、強度の大きいねじ部を埋込んだ合成枕木を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明枕木の第1の実施の形態の要部を示す一部切欠平面図である。
【図2】X−X断面図である。
【図3】本発明枕木の第1の実施の形態の変形例を示す縦断正面図である。
【図4】本発明枕木の第1の実施の形態の他の変形例を示す一部切欠平面図である。
【図5】Y−Y断面図である。
【図6】本発明枕木の第2の実施の形態の使用状態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明枕木の第1の実施の形態のさらに他の変形例を示す一部切欠平面図である。
【図8】本発明のレール支持装置を構成する合成枕木とタイプレートの使用状態を示す平面図である。
【図9】本発明のレール支持装置を使用した状態で、かつ一方の固定ボルトを省略した一部切欠正面図である。
【図10】本発明枕木の製造方法を示す説明図である。
【図11】本発明枕木の他の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 枕木
2 ねじ部
3 鍔部
4 タイプレート
5 取付用細長孔
6 ねじ部用孔
7 鍔部係止溝
8 接着剤
1a 第1の枕木部分
1b 第2の枕木部分

Claims (4)

  1. ねじ部の下端に鍔部を一体化し、またねじ部用孔と鍔部係止溝とを連設し、前記ねじ部を前記ねじ部用孔に入れるとともに接着剤で固定し、前記鍔部を前記鍔部係止溝に係止するとともに接着剤で固定することを特徴とする合成枕木。
  2. ねじ部の下端に鍔部を一体化し、前記ねじ部を前記鍔部とともに枕木に埋込み、かつ接着剤で固定する合成枕木と、前記枕木への取付用細長孔をプレート長手方向に平行に設けたタイプレートとを有し、しかも前記取付用細長孔にボルトを通すとともに螺着して前記タイプレートを前記枕木に取付けることを特徴とするレール支持装置。
  3. 枕木にねじ部用孔と鍔部係止溝とを連設し、ねじ部を前記ねじ部用孔に入れるとともに接着剤で固定し、鍔部を係止した前記鍔部係止溝に接着剤を充填することを特徴とする合成枕木の製造方法。
  4. 貼り合わせ前の第1の枕木部分にねじ部用孔を穿設し、貼り合わせ前の第2の枕木部分に鍔部係止溝を凹設し、前記ねじ部用孔にねじ部を入れるとともに接着剤で固定し、前記ねじ部と一体の鍔部に前記鍔部係止溝を外嵌かつ接着するとともに前記第1および第2の枕木部分を接着して貼り合わせることを特徴とする合成枕木の製造方法。
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