JP3685625B2 - 加熱により溶融する物質を用いた粒子加工方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、いわゆる溶融造粒法の改良に関するもので、より詳しくは、水やアルコール等に不安定な薬物の造粒・コーティング等の粒子加工を行うプロセスにおいて、ワックス等の低融点物質を添加し加熱により溶融することで造粒・コーティングを行う場合の、収率を向上させ、かつ、含量均一性を高める技術に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
粒子加工の対象となる原料粉末と低融点物質(たとえば融点40℃〜120℃程度)を攪拌しながら加熱溶融して造粒する方法は、溶融造粒法として既に産業界で利用されている。目的の粒子は、サラサラで流動性がよく、粒子内部に均一に原料粉末の粒子が配合されていることが品質上重要である。しかし、従来の粒子加工方法では次のような問題点があった。
【0003】
ジャケット式加熱装置を具備した攪拌装置を使用する場合について述べると、ジャケットに熱媒を供給し、壁面加熱により低融点物質を溶融させて造粒等の粒子加工を行い、冷却により低融点物質を固化させる。このためにジャケットに熱媒(たとえば温水または冷水)を供給しているが、急速に冷却すると壁面温度が低くなり、造粒された粒子は壁面から層状に固着し、収率の低下や含量バラツキが生じる。このため、運転を停止して壁面に付着した内容物を作業者がヘラ等で掻き落としている。したがって、溶融造粒法では冷却が最も重要な操作因子であり、冷却用液体の温度、流量、タイミング、冷却パターン等、さらに季節による外気条件をも配慮した複雑な制御が求められる。
【0004】
また、フッ素樹脂等の物質を造粒容器の内面にライニングして摩擦抵抗を少なくすることにより固着を減少させる方法も採用されているが、熱伝導率が小さくなるため、内容物の冷却に時間がかかり作業性が劣る等の難点がある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、上に述べたような従来の問題点を解消することにあり、言い換えれば、壁面付着や凝集を防止して収率および含量均一性の向上を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、従来の溶融造粒法における相互付着や壁面付着の問題は、壁面温度が粒子温度よりも先行して降下することに起因するとの知見に基づき、壁面温度に先行して粒子温度を急速に降下させるようにしたものである。すなわち、粒子加工の対象となる第一の粒子と加熱により溶融軟化する第二の粒子を攪拌混合し、第二の粒子が溶融または軟化することで第一の粒子の相互付着や凝集による造粒等の粒子加工を行うにあたり、粒子加工の対象となる第一の粒子と、加熱により溶融軟化する第二の粒子を、攪拌装置に仕込み、攪拌混合しながら第二の粒子の融点温度または融点温度よりも低い温度に加熱することにより、第二の粒子を溶融または軟化させ、第一の粒子を付着・凝集させて粒子加工を行い、さらに、第三の粒子を添加することにより、第二の粒子を攪拌装置の壁面温度に先行して急速に第二の粒子の融点よりも低い温度まで降下させて粒子表面を冷却固化する。このように、第三の粒子を添加することによって、第三の粒子の熱容量により、粒子表面温度が壁面温度に先行して急速に降下し、粒子の相互付着や壁面付着が防止され、その結果、収率が高く、含量均一性の優れた粒子加工が達成される。
【0007】
第二の粒子は溶融または軟化することによって第一の粒子の付着・凝集を促すバインダーとしての役割を果たす。軟化溶融した第二の粒子は、その融点にもよるが、融点温度よりも低い温度まで壁面温度が降下した時が壁面付着や相互付着が生じ易くなる。第三の粒子を添加することによって、付着の要因である第二の粒子の溶融物表面が第三の粒子で被覆されるので付着は減少する。第一の粒子の造粒の過程で第三の粒子を添加すると、第三の粒子がいわば黄粉あるいは打粉をまぶしたように第一の粒子相互間および第一の粒子と壁面との間に介在して付着を防止する。また、第三の粒子の熱容量により装置内の粒子表面温度が壁面温度に先行して急速に降下するため、粒子表面が冷却固化して壁面付着や粒子相互の付着凝集が防止されるのである。
【0008】
なお、第一の粒子、第二の粒子、第三の粒子は、それぞれ、単一組成もしくは複数の組成でもよい。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の粒子加工方法において、攪拌装置が、縦型円筒状容器または円筒状容器の上部の径を小さくした容器を備え、容器底部に垂直軸まわりを水平回転する攪拌はねを設け、容器側面に高速回転する解砕羽根を設けたことを特徴とする。
【0011】
攪拌羽根の高速回転による粒子の相互摩擦による発熱を利用して、第二の粒子を溶融または軟化させることができるが、請求項3の発明のように、加熱装置を具備した攪拌装置を使用することもできる。加熱装置の一例として、攪拌装置の容器の側壁部分を二重壁にして内部に熱媒を供給するようにしたジャケット式加熱装置を挙げることができる。もちろん、ジャケット式以外の加熱装置を採用することも可能である。加熱装置を用いて加熱を行う場合、第三の粒子を添加する時点では、加熱を継続してもよいし、加熱を停止してもよい。さらには加熱を停止するだけでなく冷却を開始してもよい。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1の粒子加工方法において、第一の粒子を核粒子に用い、第二の粒子を加熱して溶融または軟化させることで第一の粒子表面に被覆し、さらに第三の粒子を添加することにより第二の粒子の溶融物とともに層状の被覆を形成させることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1の粒子加工方法において、第二の粒子として、融点の異なる複数の粒子を用い、融点の高い粒子から順に階層的に被覆することを特徴とする。たとえば、融点の高い第二の粒子Aを用いて粒子加工を行い、得られた粒子に第二の粒子Aよりも融点の低い第二の粒子Bを用いて被覆する。このようにすることで、苦味マスクや溶出制御を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の粒子加工方法に用いるバーチカルグラニュレーターの一例を示す。図中、符号1で指した容器は、簡略化のためジャケットの図示を省略してあるが、実際にはジャケット(2)を備えている(図2(C)参照)。ジャケット(2)の部分は二重壁で構成され、内部に熱媒を供給するようになっている。そのため、ジャケット(2)には熱媒の供給口(3)と排出口(4)を設けてある。
【0016】
容器(1)は、図2に示すように、円筒形の縦型容器(図2(A))と、円筒形の縦型容器の上部を上端に向けて徐々に小径となした形状のもの(図2(B)(C))とが知られているが、この発明はいずれの容器を使用しても実施をすることができる。図2(C)は図2(B)の形状のものにジャケット(2)を設けたものを示している。なお、図2(B)(C)の容器(1)は、粉体の理想的な流れを実現させるため、容器壁の立上がり寸法および角度に十分な配慮がなされ、攪拌・混合時にすべての壁に均等な粉体の流れを生じさせるようにしたものである。
【0017】
容器(1)の底部に水平回転する攪拌はね(5)を設け、側壁上部に垂直に高速回転する解砕はね(6)を設けてある。攪拌はね(5)は原料粉体に遠心力と回転力を与える。その結果、原料粉体は容器(1)の内壁面に沿って上昇し、中心部に向かって落下することにより、転動・圧密運動を繰り返しながら容器(1)内を旋回する。この転動途中で解砕はね(6)によって縦に剪断力を加えて、整粒を行い、転動圧密作用を加えながら球形に近い比較的重質な粒子を作り出す。
【0018】
粒子加工の対象となる原料粉末(第一の粒子)と、バインダーとなる低融点物質(第二の粒子)を、同時に、あるいは順次、容器(1)内に仕込み、溶融または軟化した第二の粒子によって第一の粒子を付着凝集させて目的の粒子加工を行い、続いて、第三の粒子を添加することによって、第二の粒子を冷却固化させる。第二の粒子は、高速攪拌に伴う発熱によっても溶融軟化するが、ここではジャケット(2)により積極的に加熱することによって溶融軟化させる場合を例示した。
【0019】
軟化溶融した第二の粒子は、その融点温度よりも容器(1)の壁面温度が1〜10℃程度降下した時が壁面付着や相互付着を起こしやすいことが経験的に知られている。このような壁面付着や粒子相互の付着凝集は、第三の粒子を添加することにより、次に述べる二つの側面から防止することができる。▲1▼恰も黄粉をまぶしたようにして第三の粒子が粒子相互間および粒子と壁面間に介在することとなる。言い換えれば、付着の要因である第二の粒子の溶融物表面が第三の粒子で被覆される。▲2▼第三の粒子の熱容量により容器(1)内の粒子表面温度が壁面温度に先行して急速に降下するため、粒子表面が冷却固化する。
【0020】
第三の粒子の添加量は、質量・比熱・表面積・粒子径等および降下させる第一、第二の粒子の温度・比熱・表面積等により決定されるべきものである。また、第一、第二、第三の粒子はそれぞれ単一種類でも、あるいは複数種類を混合したものを用いてもよい。第一の粒子と第三の粒子は同一種類の粒子とすることもできる。
【0021】
【実施例】
実施例1
図1に示すバーチカルグラニュレーター(VG−25型パウレック社製)に、第一の粒子(乳糖+エテンザミド:平均粒子径75μm)5kgと、第二の粒子(ポリエチレングリコール:融点56〜61℃)1,500gを仕込み、ジャケットに57℃に制御した温水を供給して第一、第二の粒子を49〜55℃に加熱し、第二の粒子を軟化溶融させて第一の粒子を造粒し、次に、供給する温水の供給を停止するとともに第三の粒子(乳糖:平均粒子径75μm)を1kg投入して第一、第二の粒子からなる造粒物の表面温度を43℃に降下させた。この時の壁面温度は48℃であった。これにより、平均粒子径が約300μmの造粒物7.35kgを得た。収率は98%であり、装置壁面の付着はほとんどなかった。このように従来法の収率85%〜95%に比較して大幅に改善された。
【0022】
実施例2
図1に示すバーチカルグラニュレーター(VG−25型パウレック社製)に、第一の粒子(塩化ナトリウム:粒子径250〜350μm)7kgと、第二の粒子(ポリエチレングリコール:融点56〜61℃)750gを仕込み、ジャケットに55℃の温水を供給して49〜51℃に加熱し、第二の粒子を軟化溶融させて第一の粒子表面を被覆し、ここにおいて供給する温水の温度を45℃に変更するとともに第三の粒子(アロトアミノフェン:平均粒子径50μm)1500gを供給することで急速に冷却固化させ、第一の粒子表面に第二、第三の複合物を層状に被覆した。この時の造粒物の表面温度は42℃、壁面温度は47℃であった。これにより、平均粒子径が約380μmの造粒物9.05kgを得た。収率は97.8%で、ここでも壁面付着はほとんどなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】バーチカルグラニュレーターの一部破断斜視図。
【図2】(A)は円筒状容器の側面図、(B)は上部を小径にした容器の側面図、(C)はジャケットを備えた容器の側面図。
【符号の説明】
1 容器
2 ジャケット
3 熱媒の供給口
4 熱媒の排出口
5 攪拌はね
6 解砕はね
Claims (5)
- 粒子加工の対象となる第一の粒子と加熱により溶融軟化する第二の粒子を攪拌混合し、第二の粒子が溶融または軟化することで第一の粒子の相互付着や凝集による造粒等の粒子加工を行うにあたり、粒子加工の対象となる第一の粒子と、加熱により溶融軟化する第二の粒子を、攪拌装置に仕込み、攪拌混合しながら第二の粒子の融点温度または融点温度よりも低い温度に加熱することにより、第二の粒子を溶融または軟化させ、第一の粒子を付着・凝集させて粒子加工を行い、さらに、第三の粒子を添加することにより、第二の粒子を攪拌装置の壁面温度に先行して急速に第二の粒子の融点よりも低い温度まで降下させて粒子表面を冷却固化することを特徴とする粒子加工方法。
- 前記攪拌装置が、縦型円筒状容器または円筒状容器の上部の径を小さくした容器を備え、容器底部に垂直軸まわりを水平回転する攪拌はねを設け、容器側面に高速回転する解砕羽根を設けたことを特徴とする請求項1の粒子加工方法。
- 前記攪拌装置が加熱装置を具備することを特徴とする請求項1または2の粒子加工方法。
- 第一の粒子を核粒子に用い、第二の粒子を加熱して溶融または軟化させることで第一の粒子表面に被覆し、さらに第三の粒子を添加することにより第二の粒子の溶融物とともに層状の被覆を形成させることを特徴とする請求項1の粒子加工方法。
- 第二の粒子として、融点の異なる複数の粒子を用い、融点の高い粒子から順に階層的に被覆することを特徴とする請求項1の粒子加工方法。
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JP25544498A JP3685625B2 (ja) | 1998-09-09 | 1998-09-09 | 加熱により溶融する物質を用いた粒子加工方法 |
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