JP3685476B2 - 自然斜面安定化工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自然斜面の安定化を図るための自然斜面安定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自然斜面の安定化を図る自然斜面安定化工法として、図7に示すように、自然斜面に複数のアンカー1を一定の配列で施工するとともに、各アンカー1に支圧板2を取り付けこれを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー1間をワイヤロープ3等の線状部材で連結する工法が知られている。図7は従来例を示すものであるが、この種の自然斜面安定化工法においては、アンカー1の配列は、各アンカー1が縦方向および横方向に直線的に並ぶ配列、すなわち縦横の四辺を持つ四角形網目を形成するような格子状配列とするのが一般的である。そして、各アンカー1間を連結するワイヤロープ3は、アンカー1の格子状配列に合わせてそれぞれ縦方向および横方向にワイヤロープを通してワイヤロープによる四角形網目を形成し、縦横のワイヤロープの交差点をアンカーと結合させるのが一般的である(特開平10−88577号参照)。
【0003】
また、アンカーの配列を三角形網目を形成するような配列とする場合もあるが、その場合でも、少なくともその三角形の1辺は横方向をなす配列であり、したがって、横方向をなすワイヤロープが存在する(特開昭56−142935号の第2図等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の工法において、各アンカー1間を連結するワイヤロープ3は、斜面滑動時の引き留め効果を発揮するとともに、アンカー1同士を一体化させる効果があり、斜面安定化に有効である。また、自然斜面では草木や石等が地表を覆っておりまた起伏もあるので、そのような地表においては、各アンカー1の連結を剛性のある棒状部材で行うより、柔軟性のあるワイヤロープ3で行うのが適切である。
【0005】
しかし、上記従来の工法では、必ずしもすべてのワイヤロープが斜面滑動の引き留め力を作用させてはいない。すなわち、図8において、1つのアンカー1(これをAで示す)が法面地盤の滑り力で変形しようとした場合に、その周囲のアンカー1(A’,B、C)からワイヤロープ3を介して作用する引き留め力を考えると、図8に示すように、A−B、A−A’、A−Cのワイヤロープの作用が考えられるが、A−B、およびA−Cの横方向のワイヤロープは引き留め力を作用させないので、引き留め力を作用させるののはA−A’のワイヤロープのみである。したがって、引き留め力を得るための配列として効率が悪い。また、A−A’のワイヤロープの負担が大きく、引張り強度の十分高いものが必要となる。しかし、引張り強度の高いワイヤロープは曲げ剛性も高く、自然斜面の起伏に沿った施工が困難となり、また、施工性も低下する。
【0006】
ところで、アンカーに引き抜き力が作用した時のその引き抜き力が周辺地盤に及ぼす影響範囲(引き抜き力影響範囲)は、そのアンカーを中心とする円形範囲である。いま、図9(イ)のように、隣接するアンカー1間隔が狭く、各アンカー1の引き抜き力影響範囲が互いに重なり合っていると、杭でいえば群杭効果となり、引き抜き抵抗が低下する。しかし、図9(ロ)のように引き抜き力影響範囲が重なり合わないように、アンカー1間隔が広くとった場合には、支圧板による支圧力の及ばない範囲が生じ(あるいは及ばない範囲が広くなり)、十分な斜面安定効果が得られない場合も生じる。したがって、図9(ハ)のように、引き抜き力影響範囲が重ならない範囲で、各アンカー1を接近させて配列することが望ましい。図9(ハ)の状態を平面図で示すと図10の通りであり、ハッチングの部分がアンカー11に対する引き抜き力の影響範囲である。
【0007】
さらに、各アンカー1間を連結する作業は、草木や石等が地表を覆い起伏もある自然斜面でのものであるから、柔軟なワイヤロープ3であっても作業がしにくいので、これを能率的に行えることが望まれる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、配列したアンカーに群杭効果をもたらすことなく各アンカーの支圧板による支圧効果を効率的に得ることができ、かつ、アンカー間のワイヤロープ連結作業を容易に行うことのできる自然斜面安定化工法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、自然斜面に複数のアンカーを一定の配列で施工するとともに、各アンカーに支圧板を取り付けこれを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー間を柔軟な線状体で連結する自然斜面安定化工法において、
前記アンカーの配列を、一辺が斜面傾斜方向をなす正三角形を1つの網目形状とする正三角形網の各交点にそれぞれ位置するような配列とするとともに、前記1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー間を1本の線状体で連結し、かつ、その線状体による連結に際して、辺を共有する隣接の正三角形網目についてはいずれか一方の正三角形網目だけを選択することで、前記アンカー間を連結する線状体が重複して存在しないようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項2は、請求項1の自然斜面安定化工法を施工するに際して、施工領域の最外側の正三角形網目を形成する3本のアンカーについて、その正三角形の一辺に線状体が存在しない場合に、当該正三角形網目を形成する3本のアンカー間も1本の線状体で連結して、その正三角形の二辺で線状体が重複するようにしたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に示した一実施例の自然斜面安定化工法を参照して説明する。
図1は一実施例の自然斜面安定化工法を施工した自然斜面におけるアンカー配列および線状体を示す平面図、図2は図1における、1つの正三角形網目を形成する3つのアンカーの部分のみを示した詳細拡大図である。
本発明の自然斜面安定化工法は、自然斜面に複数のアンカー11を一定の配列で施工するとともに、各アンカー11に支圧板12を取り付けこれを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー11間を柔軟な線状体例えばワイヤロープ13で連結する工法である。そして、本発明では、前記アンカー11の配列を、1つの正三角形網目部分の詳細を示した図2のように、一辺が斜面傾斜方向(図1、図2で上下方向)をなす正三角形を1つの網目形状とする正三角形網の各交点に各アンカー11が位置するような配列とし、そして、前記1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー11間を1本のワイヤロープ13で連結するものである。
【0016】
実施例の支圧板12は、鋼板製であり、図3、図4にも示すように、底板15と、この底板15の中心部にあけたアンカー挿通穴15aに合わせて溶接固定した筒体16と、この筒体16を補強するように底板15および筒体16に溶接固定したリブ17とからなる。図示例では、底板15が頂部を切り欠いた概ね正三角形状をなし、リブ17は筒体16の外周面から正三角形の頂部側に向かう向きで設けられている。また、リブ17の筒体16との接続部にワイヤロープ連結用の切り欠き17aを設けている。図2において14は3つのアンカー11に廻らせた1本のワイヤロープ13の両端を連結した連結金具である。
なお、本発明における支圧板は、必ずしも実施例のようなリブを持つ構造に限定されない。筒体および底板の剛性が十分高く、かつ筒体が底板に堅固に固定される構造であれば、単に底板に筒体を固定した構造でもよい。
【0017】
次に、具体的な施工手順の一例について説明すると、施工領域の自然斜面において複数のアンカー11を、前述した図1の配列で施工する。すなわち各アンカー11が、一辺が斜面傾斜方向をなす正三角形を1つの網目形状とする正三角形網の各交点にそれぞれ位置するような配列で施工する。このアンカー施工は、打ち込み機による衝撃力でアンカー11を地盤に打ち込む方法でもよいし、アンカー穴を掘削しアンカー11を挿入した後、グラウトを注入する方法でもよい。その後、支圧板12をアンカー11の頭部に挿入して、位置を調整した後で、支圧力を与えて地面に固定する。
【0018】
次いで、例えば、図1で▲1▼で示す1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー11を1本のワイヤロープ13で連結する。この場合、図2、図3に示すように、ワイヤロープ13を各アンカー11の支圧板12におけるリブ17の切り欠き17aを通して各筒体16の外周を廻らせ、緊張し、その両端を連結金具14で連結して、ワイヤロープ13の正三角形を形成する。このワイヤロープ13の緊張、連結金具による連結は工具を用いて行う。
このように、ワイヤロープ13によるアンカー11間の連結は、3つのアンカー11がなす正三角形を1つのユニットとして行うが、この場合、基本的にはワイヤロープ13が重ならないようにして行う。すなわち、1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー11間を1本のワイヤロープ13で連結するに際して、辺を共有する隣接の正三角形網目についてはいずれか一方の正三角形網目だけを選択する。図1の左端近傍の場合でいえば、▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲6▼、▲7▼、▲8▼、▲9▼等の正三角形について、アンカー11間を連結すると、重複せず効率のよいワイヤロープ13の引き回しができる。その結果、各アンカー11がワイヤロープ13によって、連結されることになる。
しかし、施工領域の最外側の正三角形網目を形成する3本のアンカー11(例えば図1の左端近傍でいえば、▲4▼、▲5▼の正三角形をなすアンカー)については、この▲4▼、▲5▼の正三角形についても3本のアンカー11間を1本のワイヤロープ13で連結する。したがって、この最外側の▲4▼、▲5▼の正三角形の部分では、二辺でワイヤロープ13が重複することになる。これにより、最外側のアンカー11についても、有効な引き留め効果が得られる。
【0019】
上記のように施工された自然斜面においては、アンカー11間を連結する各ワイヤロープ13はいずれもアンカー11に対する引き留め力を負担する。すなわち、図5において、1つのアンカー11(これをAで示す)が法面地盤の滑り力で変形しようとした時、このアンカー11に斜面上部の3方向から連結されたワイヤロープ(A−B、A−C、A−D)13は、そのいずれもが角度を持つので、いずれも引き留め力を作用させる。したがって、ワイヤロープ13による引き留め力を得るためのアンカー配列として極めて効率が良い。また、1つのワイヤロープ(A−C)の負担が特別に大きくなることがないので、これを特別に引張り強度の高いものとする必要がなく、曲げ剛性が低く柔軟なものを使用でき、自然斜面の起伏に沿った施工でも容易に行うことができる。
【0020】
また、隣接するアンカー11相互の位置関係が正三角形をなすので、図6に示すようにアンカー11に対する引き抜き力の影響範囲(図6のハッチングの部分)が重ならない範囲で接近させると、隣接するアンカー11についてその支圧板による支圧力の及ばない範囲が生じないようにする乃至及ばない範囲を小さくすることができる。従来の格子状配列の場合(図10)と比べると、支圧板による支圧力の及ばない範囲を小さくすることができることは明らかである。
【0021】
本発明において、支圧板の構造は特に限定されるものではなく、例えば、底板は四角形その他の形状でもよい。また、鋼板製に限らない。要するに、アンカーに作用する張力を支圧力として地盤に伝達できるものであればよい。また、ワイヤロープのアンカーとの係合は、筒体16を廻らせる仕方に限らず、リブにあけた穴に直接通す仕方、あるいはアンカーに直接連結する仕方等、任意である。また、ワイヤロープに限らず、樹脂製ロープ等、柔軟な線状体であればよい。
【0022】
なお、本発明の自然斜面安定化工法では、3本のアンカーがなす正三角形の一辺は斜面傾斜方向となる、すなわちアンカーの縦配列が斜面傾斜方向となるが、実際の自然斜面での施工において、すべてのアンカーの縦配列について厳格に斜面傾斜方向であることをいうものではない。すなわち、自然斜面は起伏があるのが通常であり、基準とする1つの縦配列を斜面傾斜方向としても、その横方向に分布させたアンカーの縦配列では必ずしも厳格に斜面傾斜方向とならないが、施工方針としてすなわち施工思想として、斜面傾斜方向を意図するものであればよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、アンカーの配列を、一辺が斜面傾斜方向をなす正三角形を1つの網目形状とする正三角形網の各交点にそれぞれ位置するような配列としているので、アンカー間を連結するすべての線状体が引き留め力を作用させることができ、線状体による斜面滑動時の引き留め効果を効率よく得ることができる。
また、隣接するアンカーに引き抜き力が作用した時の影響範囲が互いに重なって群杭効果が生じることを避けることと、隣接するアンカーについてその支圧板による支圧力の及ばない範囲が生じないようにあるいは及ばない範囲を小さくすることとの両者を効率よく満足することができる。
【0024】
また、1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー間を1本の線状体で連結するので、アンカー間に線状体を連結する作業は容易であり、草木が地表を覆い起伏のある自然斜面を広い範囲にわたって施工する場合でも、線状体連結作業を能率的に行うことが可能となる。
【0025】
また、配列した各アンカー間を線状体で連結するに際して、線状体の重複がないので必要な個所への線状体連結をムダがなくかつ確実に行うことができるとともに、実際の現場でのそのようなムダなく確実な線状体連結を簡単に実現できる。
【0027】
請求項2によれば、施工領域の最外側部分においても線状体連結の効果を得て、自然斜面安定化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自然斜面安定化工法の一実施例を示すもので、自然斜面におけるアンカー配列および線状体を示す平面図である。
【図2】図1における、1つの正三角形網目を形成する3つのアンカーの部分のみを示した詳細拡大図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】図3における支圧板のみを示した平面図である。
【図5】上記実施例の自然斜面安定化工法における、ワイヤロープに作用する引き留め力についての説明図である。
【図6】上記実施例の自然斜面安定化工法において、隣接するアンカー間で引き抜き力影響範囲が重ならない範囲で互いに接近させた場合についての説明図である。
【図7】従来の自然斜面安定化工法を示すもので、自然斜面におけるアンカー配列および線状体連結態様を示す平面図である。
【図8】図7の自然斜面安定化工法における、ワイヤロープに作用する引き留め力についての説明図である。
【図9】自然斜面安定化工法において、アンカーに引き抜き力が作用した時の影響範囲を説明する図である。
【図10】図7の自然斜面安定化工法における、隣接するアンカー間で引き抜き力影響範囲が重ならない範囲で互いに接近させた場合についての説明図である。
【符号の説明】
11 アンカー
12 支圧板
13 ワイヤロープ
15 底板
15a アンカー挿通穴
16 筒体
17 リブ
17a 切り欠き
Claims (2)
- 自然斜面に複数のアンカーを一定の配列で施工するとともに、各アンカーに支圧板を取り付けこれを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー間を柔軟な線状体で連結する自然斜面安定化工法において、
前記アンカーの配列を、一辺が斜面傾斜方向をなす正三角形を1つの網目形状とする正三角形網の各交点にそれぞれ位置するような配列とするとともに、前記1つの正三角形網目を形成する3つのアンカー間を1本の線状体で連結し、かつ、その線状体による連結に際して、辺を共有する隣接の正三角形網目についてはいずれか一方の正三角形網目だけを選択することで、前記アンカー間を連結する線状体が重複して存在しないようにしたことを特徴とする自然斜面安定化工法。 - 施工領域の最外側の正三角形網目を形成する3本のアンカーについて、その正三角形の一辺に線状体が存在しない場合に、当該正三角形網目を形成する3本のアンカー間も1本の線状体で連結して、その正三角形の二辺で線状体が重複するようにしたことを特徴とする請求項1記載の自然斜面安定化工法。
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