JP3685333B2 - 非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は具入り包皮食品及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、油揚げ乾燥に依らず、熱風乾燥により製造される即席具入り包皮食品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
小麦粉に食塩及び水などを加えて混捏し、圧延した麺皮に種々の具材をくるんだ具入り包皮食品、例えば、餃子、焼売(シューマイ)、春巻き、雲呑(ワンタン)などは、飲食店や一般家庭において広く喫食されている。これらの具入り包皮食品のうち幾つかのものは、熱湯を注ぐか又は熱湯中で短時間煮るだけで喫食可能になる、いわゆる即席具入り包皮食品として一般に供給されている。
【0003】
しかし、一般市場に供給されている従来の即席具入り包皮食品は、油揚げ乾燥により製造されている。油揚げ乾燥の場合、具入り包皮食品を130℃〜150℃の高温度油で油揚げ処理するので、麺皮が急激に脱水され、麺皮に“火ぶくれ”状の欠陥が生じることが度々あった。この“火ぶくれ”を防止するために、小麦粉混合物の組成を変化させたり、あるいは油揚げ温度を変化させるなどの手段が講じられている。これらの手段により或る程度まで“火ぶくれ”を防止することができるが、油揚げ処理自体の欠点として、麺皮の吸油量が増大し、この油が経時的に酸化劣化し、喫食時の食感、風味が悪化したり、湯戻し後のスープなどの風味にも悪影響を及ぼすことがあった。
【0004】
油揚げ処理に伴うこれらの欠点を解決するため、油揚げに依らず、熱風で乾燥させる即席具入り包皮食品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、非油揚乾燥による即席具入り包皮食品は、油揚乾燥による即席具入り包皮食品に比べて、α化度が低く、乾燥工程の前に包皮を蒸煮して十分にα化しておく必要がある。特許文献1によれば、小麦粉混合物を混捏し、圧延した麺帯を適宜の大きさに裁断した後に蒸煮を行っている。これは蒸煮麺帯が切断し難く、所望の形状、大きさを得るにあたり、麺帯のロスを極力回避するためと思われるが、この方法で一連の作業をすると、裁断された切片の集積、整列、移送に手間暇が掛かり、更に蒸煮された切片同士が粘着することに伴うロスも無視できない。また、裁断された切片毎の蒸煮ムラが生じ、食感を損ねる恐れもあった。更に別の問題点として、蒸煮された切片で具材を包み込む際、切片の周縁部を束ねて封止しようとすると、周縁部が十分に接着せず、封止不十分な開口部分から中の具材が漏れ出すこともあった。
【0005】
【特許文献1】
特公昭56−24506号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、日持ちがよく、食感及び見栄えもよく、更に形状保持性に優れ、商品価値の高い非油揚げ具入り包皮食品の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明の非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法により解決される。
本発明の方法の第1の実施態様は、(a)小麦粉混合物を混捏して生地を調製するステップと、
(b)前記生地を圧延して麺帯を調製するステップと、
(c)前記圧延麺帯を蒸煮するステップと、
(d)前記蒸煮麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出すステップと、
(e)前記各切片に乾燥具材類を載置するステップと、
(f)前記各切片の周縁部を接合して前記具材類を該切片内に被包して包餡物を調製するステップと、
(g)前記包餡物を油揚げ以外の手段で乾燥させるステップとからなる。
【0008】
本発明の方法の第2の実施態様は、(a)小麦粉混合物を混捏して生地を調製するステップと、
(b)前記生地を圧延して麺帯を調製するステップと、
(c)前記圧延麺帯を蒸煮し、該蒸煮麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出すか、又は前記圧延麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出してから各切片を蒸煮するステップと、
(d)前記各切片に乾燥具材類を載置するステップと、
(e)前記各切片の周縁部を加熱圧着しながら接合して前記具材類を該切片内に被包して包餡物を調製するステップと、
(f)前記包餡物を油揚げ以外の手段で乾燥させるステップとからなる。
【0009】
前記第1及び第2の各実施態様の方法において、前記麺帯を蒸煮した後、該麺帯の少なくとも一方の表面を予備的に風冷し、乾燥させてから、前記切片を切り出すことが好ましい。
【0010】
更に、本発明の方法の第3の実施態様は、(a)小麦粉混合物を混捏して生地を調製するステップと、
(b)前記生地を圧延して幅広の麺帯を調製するステップと、
(c)前記圧延幅広麺帯を蒸煮するステップと、
(d)前記蒸煮幅広麺帯を冷却するステップと、
(e)前記冷却幅広麺帯を搬送する搬送手段の表面に打ち粉を施すステップと、
(f)前記搬送手段により搬送されてきた幅広麺帯を所定の幅にスリットして複数本の細幅の麺帯を調製するステップと、
(g)前記複数本の細幅麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出すステップと、
(h)前記各切片に乾燥具材類を載置するステップと、
(i)前記各切片の周縁部を接合して前記具材類を該切片内に被包して包餡物を調製するステップと、
(j)前記包餡物を油揚げ以外の手段で乾燥させるステップとからなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の前記各実施態様で使用される小麦粉混合物は小麦粉を主体とする混合物である。小麦粉に加えられる他の副素材としては、米、小麦、馬鈴薯、甘藷、玉蜀黍、葛、タピオカなどの澱粉類、これらの加工澱粉類、小麦以外の穀粉、全卵粉及び活性グルテンなどが使用できる。これらの副素材のうち一種類以上を適宜選択して、小麦粉と共に使用することができる。小麦粉混合物において、小麦粉の配合量は、混合物全体の重量を基準にして30重量%〜100重量%の範囲内であり、副素材の配合量は0重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましい。小麦粉の配合量が30重量%未満の場合、圧延時に繋がりが弱く作業性が悪い。
【0012】
小麦粉混合物は必要に応じて、食塩、調味料、油脂類、糖類、糖アルコール類、着色剤、酵素、乳化剤、抗酸化剤、品質改良剤等の周知の添加物を適宜配合することができる。これら添加物は原料粉に直接混合することもできるし、又は混捏の際の加水に溶解して添合することもできる。
【0013】
小麦粉混合物に適量の水又は“かんすい”を10重量%〜60重量%加え、常用の常圧又は減圧ミキサーで所定時間混捏する。“かんすい”とはカリウムやナトリウムの炭酸塩とリン酸塩を原料にして、そのうちの1種類か2種類以上の混合物を意味する。
【0014】
次に、生地をローラで複数回圧延(例えば、6段圧延)し麺帯とする。麺帯は初めから1枚の麺帯でも良いが、2枚の麺帯を貼り合わせて一枚の複合麺帯としたものでもよい。何れの場合も、圧延後の最終麺帯の厚さは約0.3mm〜2mm程度の範囲内であることが好ましい。最終麺帯の厚さが約0.3mm未満の場合、薄すぎて切れ易くなり、作業性が低下する。一方、最終厚さが約2mm超の場合、麺帯が厚すぎて、その後の蒸煮工程におけるα化処理に悪影響が出るばかりか、最終製品の食感も不良になる。
【0015】
本発明の各方法では、麺帯の状態で蒸煮し、α化処理を施す。蒸煮処理条件自体は本発明の必須要件ではない。一般的に、常用の蒸煮装置を使用することによりこのα化処理を実施することができる。例えば、一例として、0.5kg/cm2〜1.5kg/cm2の圧力を有し、温度が約110℃の水蒸気を例えば、100kg/時間の蒸気量で供給し、約1分間〜2分間の間処理することにより、麺帯を約95%〜約98%にまでα化させることができる。
【0016】
本発明の第1及び第2の実施態様における方法では、蒸煮後、麺帯の少なくとも一方の表面を風冷し、乾燥させる。麺帯の風冷・乾燥面は成形機に接触する側の面であることが好ましい。この予備的な風冷・乾燥処理を行わないと、カッターが麺帯に粘着し、作業効率が著しく低下するが、予備的風冷・乾燥処理により、蒸煮直後で未だ粘着性を有する麺帯からであっても、包皮用切片を効率的に裁断することができるばかりか、後の包皮用切片成形過程も容易に実施できるようになる。蒸煮麺帯温度が30℃以下になることが、裁断の作業性上好ましい。冷風は室温又は雰囲気温度以下の温度の風であることが好ましい。冷風の風速は一般的に、1〜10m/秒の範囲内であることが好ましい。また、冷風を吹き付ける時間は数秒〜30秒の範囲内であることができる。冷風の温度、風速及び吹きつけ時間の最適な組合せは、麺帯の温度低下効果と麺帯表面の乾燥度合いを考慮して適宜決定することができる。
【0017】
本発明の第1及び第2の実施態様における方法では、予備風冷・乾燥後、蒸煮済麺帯を所定のサイズと形状を有する包皮用切片に切り出す。形状は矩形(例えば、正方形又は長方形)、円形、三角形、多角形(例えば、五角形以上)、楕円形、星形など任意の形状を採用することができる。切り出しは例えば、所定形状を有する型で麺帯を打ち抜くか、又は切り刃で裁断することにより実施することができる。カットロスを最小にするために、矩形又は三角形が好ましい。包皮用切片のサイズは被包される具材の量などを考慮して適宜決定することができる。包皮用切片が正方形の場合、例えば、7cmx7cmのサイズであることが好ましい。言うまでもなく、その他のサイズの包皮用切片も同様に使用できる。
【0018】
本発明の第1及び第2の実施態様における方法は、麺帯の幅が包皮用切片の幅と概ね同じ(例えば、麺帯幅及び切片幅とも7cm)ような場合に優れた作業性を発揮する。しかし、本発明の第1及び第2の実施態様における方法を幅広の麺帯(例えば、麺帯幅42cm)に適用すると、幅広麺帯を所定の幅(例えば、7cm)の細幅麺帯にスリットする際、スリットされた細幅麺帯がスリッターにからまったり、詰まったりするばかりか、スリットされた細幅麺帯が湾曲したりして作業性が低下する。これに対して、本発明の第3の実施態様によれば、このような問題を起こすこと無く、包皮食品を効率的に大量生産することができる。
【0019】
本発明の第3の実施態様の方法では、蒸煮後の幅広麺帯を冷却し、麺帯表面温度を約15℃程度にまで低下させることが好ましい。本発明の第3の実施態様の方法における冷却は、蒸煮麺帯を低温帯域内を通過させることにより行うことが好ましい。低温帯域は例えば、冷却器により内部が例えば、+15℃〜−20℃程度の範囲内の温度にまで低下された所定の搬送距離を有するトンネル状であることができる。第3の実施態様の方法では、第1及び第2の実施態様の方法と異なり、冷風は使用せず、低温帯域内を通過させるだけで麺帯の温度を低下させる。冷風を使用せず、低温帯域内を通過させることにより麺帯の温度を低下させると、麺帯が反らずその後の作業でのトラブルが減少するばかりかスリット作業性も非常に良好となる。また、切片に切り出された後でも、表面が濡れた状態を維持しているので切片周縁部の圧着性が良好であるなどの利点を有する。
【0020】
本発明の第3の実施態様の方法では、幅広麺帯を冷却後、スリットして複数本の細幅(例えば、幅7cm)の麺帯を形成するが、麺帯冷却用の低温帯域の出口からスリッターまで麺帯を搬送するための搬送手段(例えば、送りコンベヤ)の搬送ベルト表面に打ち粉を散布する。こうすることにより、麺帯が搬送手段表面に粘着して作業性が低下する不都合を効果的に避けることができる。麺帯表面に打ち粉すると、残存した打ち粉が包皮食品を摂食する際に溶出して味を落とすことがあるので好ましくない。麺帯搬送手段として送りコンベヤを使用する場合、コンベヤベルト表面だけでなく、アッパーガイドにも打ち粉する事が好ましい。これにより、麺帯とコンベヤとの剥離性が向上する。打ち粉量は0.0014g/cm2〜0.0222g/cm2の範囲内であることが好ましい。例えば、7cmx7cm(すなわち、49cm2)の切片面積に対して0.0686g〜1.0878gの範囲内であることが好ましい。打ち粉量が0.0686g/49cm2未満では麺帯とコンベヤベルトとの剥離性改善効果が不十分となる。一方、打ち粉量が1.0878g/49cm2超では剥離性改善効果が飽和して不経済となるばかりか、過剰量の打ち粉が麺帯に付着、残存し、包皮食品の味を低下させる原因ともなるので好ましくない。打ち粉としては澱粉類を使用することが好ましい。澱粉類としては、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、さご澱粉(さごやしの芯から採取した澱粉で架橋澱粉である)などが好適である。これらのうちでも、打ち粉としてはさご澱粉が特に好ましい。なぜなら、さご澱粉は熱を加えても膨潤せず、サラサラの状態を維持するからである。打ち粉の散布は常用の散布器などを使用することにより容易に実施することができる。
【0021】
本発明の第3の実施態様の方法において、幅広麺帯を所定の幅(例えば、7cm)を有する複数本の細幅麺帯にスリットするためのスリッターとしては公知慣用のスリッターを使用することができる。このような目的に好適なスリッターは当業者が容易に選択するすることができる。ロータリー式のスリッターが好ましい。
【0022】
本発明の第3の実施態様の方法において、スリッターでスリットされて得られた細幅麺帯から所定のサイズと形状を有する包皮用切片を切り出す作業は、前記の本発明の第1及び第2の実施態様の方法における包皮用切片切出作業と概ね同一である。従って、本発明の第3の実施態様の方法における包皮用切片の形状は矩形(例えば、正方形又は長方形)、円形、三角形、多角形(例えば、五角形以上)、楕円形、星形など任意の形状を採用することができる。切り出しは例えば、所定形状を有する型で麺帯を打ち抜くか、又は切り刃で裁断することにより実施することができる。カットロスを最小にするために、矩形又は三角形が好ましい。包皮用切片のサイズは被包される具材の量などを考慮して適宜決定することができる。包皮用切片が正方形の場合、例えば、7cmx7cmのサイズであることが好ましい。
【0023】
本発明の各実施態様の方法において、包皮用切片が得られたら、この切片上に所定量の具材類を載置する。この包皮用切片に被包される具材類は、肉類、野菜類、魚介類、練り製品など任意の食材から調製することができ、必要に応じて塩、砂糖、香辛料などの周知慣用の調味料で味付けすることもできる。これらの具材類は乾燥状態のものを使用しなければならない。具材類の保存性の点から、含水率が約15%以下、例えば、10%以下であることが好ましい。
【0024】
包皮用切片上に具材類を載置した後、切片の周縁部を重ね合わせるか又は周縁部を束ねることにより具材類を切片内に被包し、該重ね合わせた又は束ねられた周縁部を圧着させるか、又は周縁部を加熱しながら圧着させ封止する。加熱温度は一般的に、30℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。加熱温度が30℃未満では封止が不十分となる恐れがある。一方、加熱温度が150℃超の場合、圧着部分が焦げたり、熔けたりして好ましくない。また、圧着させる際の圧力は0.1kg/cm2〜50kg/cm2の範囲内であることが好ましい。圧力が0.1kg/cm2未満では切片周縁部同士が十分に接着せず、封止が不十分となる恐れがある。一方、圧力が50kg/cm2超の場合、切片の接着部が圧潰され封止が破れて中の具材が飛び出してしまうことがある。加熱圧着作業は公知常用の圧着成形機を用いて実施することができる。この加熱圧着により、喫食調理時に熱湯を注いで復元させるとき、又は熱湯中で煮戻すときも、封止されたままの状態を長時間維持し、具材類が外に飛び出すような不都合な事態は殆ど発生せず、見栄えも良く、食欲を増進して美味しく喫食できる。加熱せず、圧着だけで封止した場合、このような効果を得ることはできない。
【0025】
別法として、一方の蒸煮麺帯上の所定位置に所定量の具材類を載置し、その後、他方の蒸煮麺帯を前記一方の蒸煮麺帯上に被せ、具材類を被包するように所定の形状に両麺帯を加熱・圧着して両麺帯を接着させ、この接着縁部に沿って麺帯を切り出すか又は打ち抜くことにより封止された具材入り包皮食品を製造することもできる。
【0026】
次いで、封止された具材入り包皮を乾燥させる。乾燥方法としては、通常の熱風乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、膨化乾燥などの公知慣用の乾燥方法を採用することができる。乾燥はα化包皮の“上乾き(スキンエフェクト)”の発生を避けるように、十分に時間をかけ、緩慢に行うことが好ましい。乾燥はα化包皮の含水率が約15%以下になるまで行うことが好ましい。
【0027】
乾燥された封止具入り包皮食品を常温にまで冷却した後、別途に個包装された調味液(例えば、スープ等)を添付してパッケージすることにより最終の商品が完成される。
【0028】
本発明の第1及び第2の実施態様の方法は単連方式なので、例えば、3600個/時間程度の生産能力しかないが、第3の実施態様の多連方式の方法によれば、例えば、幅広麺帯の幅を42cmとした場合、単連方式のときの麺帯幅が7cmであれば、その生産能力は6倍の約20000個/時間程度まで増大させることができる。
【0029】
本発明の方法により製造することができる具入り包皮食品は例えば、雲呑、餃子、焼売、春巻き、ラビオリ、トテリーニ、ラザーニなどの中華風又は洋風食品などである。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に例証する。
実施例1
強力小麦粉とタピオカ澱粉(55:45)との混合粉1kgに食塩24g、アルカリ無水物2.4g、ソルビット8gを溶解した水380mlを加え、15分間常圧ミキサーでミキシングし、複合はせず、6段圧延で、厚さ0.5mm、幅7cmのシート状麺帯とし、該麺帯を庫内温度98℃で1分30秒間蒸煮してα化させた後、流速が3m/secの風を上方より吹き付け風冷乾燥した。乾燥した麺帯を7.0cm×7.0cmの方形にカットし、フリーズドライポークミンチ0.8gを包み50℃に加温された圧着板を有するワンタン成形機で絞込み成形した。この時の圧力は、6kg/cm2であった。この成形品を116℃、42m/secの条件で膨化乾燥し、自然冷却を経て、即席具入り包皮食品(本発明品)を50個得た。
【0031】
比較例1
上記工程の中、圧着板の昇温のみを省略し、他は全く同様に操作して、即席具入り包皮食品(対照品)を50個得た。
【0032】
比較例2
カット前の冷却・乾燥工程を省略して製造したところ、裁断片の方形は歪み、かつ成形機にへばりついて包皮食品の製造は不可であった。
【0033】
(1)生具入り包皮食品の形状維持継続時間確認テスト
実施例1及び比較例1においてワンタンを製造する際、ワンタン成形機で絞込み成形した後の未乾燥状態の成形品を任意に15個を抜き出し、室温状態のまま自然放置し、成形後の圧着部の接合維持時間を測定した。接合状態は目視で観察した。その結果、本発明による成形品は何れも30分間経過後であっても圧着部に剥がれを生じることはなかった。これに対して、比較例1における対照品は何れのサンプルも1分間以内に接合部が剥がれて中の具材類が飛び出してしまった。
【0034】
(2)乾燥具入り包皮食品の形状維持継続時間確認テスト
実施例1及び比較例1で製造された乾燥ワンタンを熱湯中で復元調理した際の形状維持時間を測定した。テスト方法は、容量200mlのビーカー2個を準備し、各ビーカーに本発明のワンタンサンプル1個及び比較例の対照ワンタンサンプル1個をそれぞれ投入し、温度100℃の熱湯100mlを注ぎ込む。熱湯を注いで3分間経過後、箸で3回撹拌してから目視により各サンプルの形状の状態を観察する。以後、毎分毎に箸で1回撹拌し、箸でサンプルを摘み上げて形状の状態を目視観察する。観察結果を下記の表1に要約して示す。下記の表1において、「○」印は、形状を維持しており、異常が無いことを意味する。「△」印は、首(絞り部)が広がりかけていることを意味する。「×」印は首(絞り部)が広がり、中身の具材類が漏れ出していることを意味する。また、下記の表において「*」印は乾燥完了前に接合部の剥離がおきていたことを意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
(3)乾燥具入り包皮食品の保存性テスト
本発明品及び市販の即席ワンタン(油揚げ乾燥処理品)の各サンプル8個を各々即席ラーメンのカップに入れシール蓋で封緘し、室温保存を行い6ケ月後に開封確認した。形状、色調、吸湿に関しては、両者とも正常であり良好であったが、市販即席ワンタンは酸敗しており、刺激臭がきつく喫食不可であった。これに対して、本発明品は、なんら異臭なく美味しく喫食できた。
【0037】
実施例2
強力小麦粉とタピオカ澱粉(55:45)との混合粉10kgに食塩240g、アルカリ無水物24g、ソルビット80gを溶解した水3800mlを加え、15分間常圧ミキサーでミキシングし、複合はせず、6段圧延で、厚さ0.48mm、幅42cmのシート状麺帯とし、該麺帯を庫内温度98℃で1分30秒間蒸煮してα化させた後、温度15℃の冷却トンネル内を0.07m/秒の速度で移動させ、麺帯表面の温度を15℃にまで低下させた。冷却トンネルを出た後、ベルト表面にさご澱粉を0.1372g/49cm2の割合で散布した送りコンベヤで冷却幅広麺帯をスリッターまで搬送し、幅7cmの細幅麺帯6本にスリットした。その後、この各細幅麺帯から7cmx7cmの正方形状の包皮用切片を切り出した。この切片でフリーズドライポークミンチ0.5gを包み50℃に加温された圧着板を有するワンタン成形機で絞込み成形した。この時の圧力は、6kg/cm2であった。この成形品を116℃、42m/秒の条件で3分間膨化乾燥し、自然冷却を経て、即席具入り包皮食品(即席ワンタン)を300個得た。
【0038】
(1)生具入り包皮食品の形状維持継続時間確認テスト
実施例2においてワンタンを製造する際、ワンタン成形機で絞込み成形した後の未乾燥状態の成形品を任意に15個を抜き出し、室温状態のまま自然放置し、成形後の圧着部の接合維持時間を測定した。接合状態は目視で観察した。その結果、実施例2による成形品は何れも30分間経過後であっても圧着部に剥がれを生じることはなかった。
【0039】
(2)乾燥具入り包皮食品の形状維持継続時間確認テスト
実施例2で製造された乾燥ワンタンを熱湯中で復元調理した際の形状維持時間を測定した。テスト方法は、容量200mlのビーカーを準備し、ビーカーに実施例2のワンタンサンプル1個を投入し、温度100℃の熱湯100mlを注ぎ込む。熱湯を注いで3分間経過後、箸で3回撹拌してから目視によりサンプルの形状の状態を観察する。以後、毎分毎に箸で1回撹拌し、箸でサンプルを摘み上げて形状の状態を目視観察する。観察結果を下記の表2に要約して示す。下記の表2において、「○」印は、形状を維持しており、異常が無いことを意味する。「△」印は、首(絞り部)が広がりかけていることを意味する。「×」印は首(絞り部)が広がり、中身の具材類が漏れ出していることを意味する。
【0040】
【表2】
【0041】
表2と、表1の本発明品の結果を比較すると、概ね同等であり、多連式(実施態様3)においても、単連式(実施態様1及び2)と同等の製品を製造できことが理解できる。
【0042】
(3)乾燥具入り包皮食品の保存性テスト
実施例2の即席ワンタンのサンプル8個を即席ラーメンのカップに入れシール蓋で封緘し、室温保存を行い6ケ月後に開封確認した。保存後のサンプルの形状、色調、吸湿に関しては、何の異常も無く全て良好であった。更に、保存後のサンプルは全く酸敗しておらず、何の異臭もなく美味しく喫食できた。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、蒸煮してα化させた麺帯から効率的に包皮用切片を切り出すことができ、更に、この包皮用切片に具材類を被包させると、調理喫食時においても形状を維持し、封止が破れ難い非油揚乾燥具材入り包皮食品を得ることが出来る。本発明の方法は細幅の麺帯1本だけの単連方式でも実施できるし、また、幅広の麺帯から複数本の細幅の麺帯をスリットする多連方式でも実施できる。幅広麺帯を用いた多連方式で実施すると、非常に効率よく非油揚乾燥具材入り包皮食品を製造することができる。
Claims (4)
- (a)小麦粉混合物を混捏して生地を調製するステップと、
(b)前記生地を圧延して麺帯を調製するステップと、
(c)前記圧延麺帯を蒸煮し、該蒸煮麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出すステップと、
(d)前記各切片に乾燥具材類を載置するステップと、
(e)前記各切片の周縁部を接合して前記具材類を該切片内に被包して包餡物を調製するステップと、
(f)前記包餡物を油揚げ以外の手段で乾燥させるステップとからなる非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法において、
前記ステップ (e)において前記各切片の周縁部を接合する際、前記各切片の周縁部を加熱圧着しながら接合することを特徴とする非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法。 - (a)小麦粉混合物を混捏して生地を調製するステップと、
(b)前記生地を圧延して幅広の麺帯を調製するステップと、
(c)前記圧延幅広麺帯を蒸煮するステップと、
(d) 前記幅広麺帯を搬送するステップと、
(e)前記搬送されてきた幅広麺帯を所定の幅にスリットして複数本の細幅の麺帯を調製するステップと、
(f)前記複数本の細幅麺帯から所定の大きさ及び所定の形状を有する複数個の切片を切り出すステップと、
(g)前記各切片に乾燥具材類を載置するステップと、
(h)前記各切片の周縁部を接合して前記具材類を該切片内に被包して包餡物を調製するステップと、
(i)前記包餡物を油揚げ以外の手段で乾燥させるステップとからなる非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法において、
前記ステップ (d) において、前記幅広麺帯を搬送するコンベヤベルトの表面に打ち粉を、0.0014g/cm 2 〜0.222g/cm 2 の範囲内の散布量で散布することを特徴とする非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法 - 前記ステップ (d)において、打ち粉は、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ及びさご澱粉からなる群から選択される少なくとも一種類の澱粉であることを特徴とする請求項2に記載の非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法。
- 前記ステップ (h) において、前記各切片の周縁部を接合する際、
前記各切片の周縁部を加熱圧着しながら接合することを特徴とする請求項2に記載の非油揚乾燥具材入り包皮食品の製造方法。
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