JP3685211B2 - 塗料組成物と塗膜形成方法 - Google Patents

塗料組成物と塗膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は複数の干渉色顔料を用いた意匠性にすぐれた塗膜を形成する塗料組成物およびそれを用いた複層塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
二酸化チタンで薄膜被覆してなるリン片状雲母などの干渉色顔料を用いた塗料はすでに広く使用されている。干渉色顔料は、通常、隠蔽性は弱く光を透過しやすく、干渉色および透過色の2色を発生することができ、光の正反射方向では薄膜の干渉による反射色とその下層のカラーベースによる吸収色との混色がみられる。この色の見え方は、干渉色顔料の大きさ、形、二酸化チタン被膜の厚さなどによって種々変化する。例えば、二酸化チタン被膜が薄いと正反射方向での観察色がゴールド色で、順次厚くなるにつれて、レッド、バイオレット、ブルー、グリーンへと変化していく。
【0003】
従来、かかる干渉顔料は塗料に1種もしくは2種以上併用して塗料に配合されていた。特に2種以上併用するケースでは、一般に反射色が同一もしくは近似色のものを選んで使用されていた。その理由として、干渉色顔料本来の効果を最大限に引き出せ彩度の高い色が設計できるということがあげられる。
【0004】
しかしながら、同一もしくは近似色の干渉顔料を併用すると、角度による見え方の変化が大きすぎ、例えば正反射(ハイライト)部分に対して非正反射(シェイド)部分では補色がでる。また、得られる干渉色は粒子感が弱いなどの欠陥があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決することが主たる目的であり、その特徴は、複数併用する干渉顔料のうち、少なくとも2種の干渉顔料が特定の色相の範囲に含まれているものを使用することにより上記欠陥がすべて解消されることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、少なくとも2種の干渉顔料が特定の異なる色相の範囲に含まれているものを使用してなる塗料組成物およびそれを用いた複層塗膜形成方法に関する下記3つの発明からなっている。
【0007】
第1発明:干渉色顔料を2種以上含有させてなる塗料であって、該干渉色顔料が、色相環を100分割し、右回り+50、左回り−50で表示したとき、その1つの干渉色顔料の色相を0にした場合、残りの干渉色顔料の少なくとも1種の色相が+40〜+50および−40〜−50の範囲内に含まれるものであることを特徴とする塗料組成物。
【0008】
第2発明:干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料として該第1発明の塗料組成物を使用することを特徴とする塗膜形成方法。
【0009】
第3発明:カラーベース塗料、干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料として該第1発明の塗料組成物を使用することを特徴とする塗膜形成方法。
【0010】
本発明についてさらに具体的に説明する。
【0011】
第1発明:干渉色顔料を2種以上含有させてなる塗料であって、該干渉色顔料が、色相環を100分割し、右回り+50、左回り−50で表示したとき、その1つの干渉色顔料の色相を0にした場合、残りの干渉色顔料の少なくとも1種の色相が+40〜+50および−40〜−50の範囲内に含まれるものであることを特徴とする塗料組成物。
【0012】
該塗料組成物は、樹脂組成物、該干渉色顔料および溶剤を必須成分として含有する組成物である。
【0013】
樹脂組成物としては、通常の塗料に使用されている常温乾燥型および架橋硬化型のいずれでも使用できるが、架橋硬化型が好ましい。後者として、水酸基、エポキシ基、アミノ基などの架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂ポリウレタン樹脂にメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化物も含む)などの架橋剤を配合してなる室温もしくは加熱架橋型樹脂組成物が好ましい。これらの樹脂組成物を溶解もしくは分散させるための溶剤は有機溶剤および(または)水が使用できる。
【0014】
本発明では干渉色顔料としてそれ自体既知のものが使用できる。例えば、雲母、雲母状酸化鉄またはグラファイトなどから選ばれたりん片状粒子の表面を、酸化チタン(TiOn nは1〜2の小数を含む実数である)またはFe23 などの金属酸化物で被覆したものがあげられる。このうち、酸化チタンで被覆したりん片状雲母粒子が好ましい。
【0015】
りん片状粒子の大きさは目的に応じて任意に選択できるが、長手方向が2〜150μ、特に5〜40μ、厚さは0.01〜1.5μ、特に0.05〜0.5μの範囲内であることが好ましい。
【0016】
また、りん片状粒子表面を酸化チタンやFe23 などの金属酸化物での被覆は既知の方法で行うことができ、その被覆厚さによってその色相が異なる。例えば、酸化チタン被覆りん片状雲母粒子において、酸化チタン被覆層が薄いと金色で、厚膜になるにしたがって赤、紫、青、緑の順で変化する。つまり、膜厚によって色相を調節できるのである。
【0017】
本発明の塗料組成物において干渉色顔料の色相は、正反射方向での干渉による反射色に基くもので、ミノルタ製の色差計「CR−200」で測定した。具体的には、黒色ベーコートの塗面に、顔料として該干渉色顔料のみを樹脂組成物100重量部(固形分)あたり15重量部配合した塗料組成物を硬化膜厚で15〜20μになるように塗装し硬化させてなる試験板を調製し、これを用いて上記CR−200で測定した色相(hue)を、マンセル色相環100分割に変換し、それを右回り+50、左回り−50に分割して示したものである。
【0018】
色相は赤、緑、青などの色知覚の性質を特徴づける色の属性をいい、赤に始まって黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、赤と循環移行性があるので、これを連続的に円形に配置し(色相環)、100に分割して目盛り付けたものがマンセル色相環100分割に変換したものである。本発明ではそれを右回り+50、左回り−50に分割した。
【0019】
メルク社製のりん片状雲母(長手方向が10〜40μ、厚さが0.05〜0.5μ)の表面を二酸化チタンで被覆してなり、その厚さを異ならせて種々の干渉色を示す干渉色顔料の色相は、例えば Iriodin 9205WR (干渉ゴールド)は+24.2、Iriodin 9217WR (干渉レッドa)は+1.7、Iriodin 9225WR(干渉ブルー)は−27.2、Iriodin 9235WR(干渉グリーン)は+43.0、Iriodin 9219WR(干渉バイオレット)は−16.8、Iriodin 9215WR(干渉レッドb)は−5.2であった。下記の実施例などではこれらの干渉色顔料を用いた。
【0020】
これらの干渉色顔料のそれぞれの色相環での関連性(差)についてみると、表1のとおりである。
【0021】
【表1】
Figure 0003685211
【0022】
表1において、*を付した部分の干渉色顔料の組合せは「+40〜+50および−40〜−50」の範囲内に含まれるものであるので、本発明の塗料組成物の上記要件を満たしており本発明に適用できるが、無印のものはこの範囲外であるので適合しない。
【0023】
本発明において、干渉色顔料はどちらか一方の顔料(イ)の色相を0とし、それと他方の顔料(ロ)の色相との差が「+40〜+50および−40〜−50の範囲内」にあれば、その両者の干渉色顔料は本発明において適用できる。例えば、上記表1において、ゴールドとレッドaとの差は−22.5であるために本発明に適用できないが、ゴールドとブル−の差は+48.6であるために本発明に適用できるのである。この顔料(イ)と(ロ)との比率は、両者の合計重量にもとづいて、(イ)は10〜90%、特に30〜70%、(ロ)は90〜10%、特に70〜30%が好ましい。
【0024】
本発明の塗料組成物は上記の樹脂組成物、干渉色顔料(複数)および溶剤を必須成分として含有する組成物であり、該干渉色顔料は該樹脂組成物の固形分100重量部あたり、1〜60重量部、特に5〜30重量部が好ましい。さらに必要に応じて着色顔料、上記要件に含まれない干渉色顔料、メタリック顔料および各種塗料用添加剤などを適宜配合することができる。
【0025】
第2発明:干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料として該第1発明の塗料組成物を使用することを特徴とする塗膜形成方法。
【0026】
クリヤ塗料は、樹脂組成物および溶剤を含有する組成物で、必要に応じて着色顔料および/またはメタリック顔料を配合してなる塗料である。
【0027】
該クリヤ塗料の樹脂組成物としては、通常の塗料に使用されている常温乾燥型および架橋硬化型のいずれでも使用できるが、架橋硬化型が好ましい。後者として、水酸基、エポキシ基、アミノ基などの架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂にメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化物も含む)などの架橋剤を配合してなる室温もしくは加熱架橋型樹脂組成物が好ましい。これらの樹脂組成物を溶解もしくは分散させるための溶剤は有機溶剤および(または)水が使用できる。クリヤ塗料にもこれらの着色顔料および/またはメタリック顔料を配合することは干渉色塗料塗膜の意匠性を損なわない程度であれば差支えない。
【0028】
第2発明の干渉色塗料は、上記第1発明で説明した塗料組成物である。
【0029】
第3発明:カラーベース塗料、干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料として該第1発明の塗料組成物を使用することを特徴とする塗膜形成方法である。
【0030】
ここで、干渉色塗料およびクリヤ塗料としては、上記第2発明で説明したものが使用できる。
【0031】
また、該ベースコートは、上記第2発明で説明した樹脂組成物および溶剤を含有する組成物に、さらに着色顔料および/またはメタリック顔料を配合したものであり、その色彩は、干渉色塗料における干渉色顔料の色相とは関係なく、自在の選択が可能である。
【0032】
第2および第3発明における複層塗膜は、上記のカラーベース塗料(第3発明のみ)、干渉色塗料およびクリヤ塗料を順次塗装することによって形成できる。これらの塗装方法は、噴霧塗装が好適であるがこれ以外の塗装法も使用できる。塗装膜厚も目的に応じて任意に選択でき、硬化塗膜に基いて、カラーベース塗料は10〜70μ、特に25〜45μ、干渉色塗料は10〜70μ、特に25〜45μ、クリヤ塗料は15〜100μ、特に25〜60μの範囲が好ましい。これらの3塗料の塗装方式は、3コート1ベイク、3コート2ベイクおよび3コート3ベイクのいずれかが好ましい。そしてこれらの塗膜の硬化はその樹脂組成物の成分によってきまり常温もしくは加熱により行う。
【0033】
【発明の効果】
1.本発明の塗料組成物において併用する干渉色顔料の組合せが上記要件のうち、特に補色もしくはそれに近いほど、ハイライト面での干渉効果がマイルドになる。すなわち、干渉色顔料特有の連続面での発色が減じ、粒子感のある干渉色として見える。
【0034】
2.上記のように補色もしくはそれに近いほど、干渉色が各種混ざって見えるので、多色感効果が得られる。
【0035】
3.2種以上の干渉色顔料を補色もしくはそれに近い組合せで併用することにより、干渉色顔料特有のカラーフロップが減じ、角度による見え方がマイルドになった。
【0036】
4.上記効果は、酸化チタンで被覆したりん片状雲母粒子を使用すると顕著に得られる。
【0037】
以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。部および%は原則として重量に基く。
【0038】
1)実施例1〜2および比較例1〜4
表2に示した成分を混合して第1発明に相当する塗料組成物(干渉色塗料)を調製した(第1発明相当)
【0039】
【表2】
Figure 0003685211
【0040】
表2において
アクリル樹脂溶液は水酸基含有アクリル樹脂の50%溶液。
【0041】
メラミン樹脂溶液はブチル化メラミン樹脂の60%溶液。
【0042】
カーボンブラックは、「カーボンブラックFW−200」商品名、デグサ社製。
【0043】
フタロシアニンブルーは、「Paliogen Blue L-7080」商品名、BASF社製。
実施例1および2の塗膜は光輝性粒子が複数の様々な発色を示すが、比較例のものはいずれも1つの干渉色しか示さない。
【0044】
2)実施例3〜4および比較例5〜8
表2に示した塗料組成物(干渉色塗料)およびクリヤ塗料を表3に示した工程で塗装して複層塗膜を形成した(第2発明相当)。
【0045】
【表3】
Figure 0003685211
【0046】
クリヤ塗料としてアクリル樹脂/メラミン樹脂系有機溶剤塗料を使用し、上記塗料組成物の未硬化塗膜面(膜厚は硬化塗膜として25μ、以下同様)に、硬化塗膜として40μになるように塗装し、140℃で30分加熱して両塗膜を硬化させた。
【0047】
得られた複層塗膜の意匠効果について観察したところ、実施例1および2の塗膜は光輝性粒子が複数の様々を発色し、多色性を示すが、比較例のものはいずれも1つの干渉色しか示さず、実施例に比べて意匠性が十分でなかった。
【0048】
3)実施例5〜6および比較例9〜10
カラーベース塗料、塗料組成物(干渉色塗料)およびクリヤ塗料を表4に示した工程で塗装して複層塗膜を形成した(第3発明相当)。
【0049】
表4において、カラーベース塗料は着色熱硬化性アクリル樹脂/メラミン樹脂系有機溶剤型塗料であって、その色調は色相(hue)4.5p、明度(value)8.5、彩度(chroma)0.3の塗膜を形成する。また、干渉マイカはいずれも前記のものと同様である。クリヤ塗料は上記表3で使用したものと同一である。
【0050】
カラーベース塗料を硬化塗膜として25μになるように塗装し、140℃で30分加熱して硬化させてから、該塗面に干渉色塗料を硬化塗膜として35μになるように塗装し、室温で5分放置してから、クリヤ塗料を該未硬化塗膜面に硬化塗膜として40μになるように塗装し、140℃で30分加熱して両塗膜を硬化させた。
【0051】
【表4】
Figure 0003685211
【0052】
得られた複層塗膜の意匠効果について観察したところ、実施例1および2の塗膜は光輝性粒子が複数の様々を発色し、多色性を示すが、比較例のものはいずれも1つの干渉色しか示さず、実施例に比べて意匠性が十分でなかった。

Claims (3)

  1. 干渉色顔料を2種以上含有させてなる塗料であって、該干渉色顔料が、色相環を100分割し、右回り+50、左回り−50で表示したとき、その1つの干渉色顔料の色相を0にした場合、残りの干渉色顔料の少なくとも1種の色相が+40〜+50および−40〜−50の範囲内に含まれるものであることを特徴とする塗料組成物。
  2. 干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料が、干渉色顔料を2種以上含有させてなる塗料であって、該干渉色顔料が、色相環を100分割し、右回り+50、左回り−50で表示したとき、その1つの干渉色顔料の色相を0にした場合、残りの干渉色顔料の少なくとも1種の色相が+40〜+50および−40〜−50の範囲内に含まれるものである塗料組成物であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
  3. カラーベース塗料、干渉色塗料およびクリヤ塗料を塗装してなる複層塗膜において、該干渉色塗料が、干渉色顔料を2種以上含有させてなる塗料であって、該干渉色顔料が、色相環を100分割し、右回り+50、左回り−50で表示したとき、その1つの干渉色顔料の色相を0にした場合、残りの干渉色顔料の少なくとも1種の色相が+40〜+50および−40〜−50の範囲内に含まれるものである塗料組成物であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
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