JP3685077B2 - 演奏データの自動編集装置および自動編集方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データを自動的に編集する演奏データの自動編集装置および自動編集方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、演奏データを自動的に編集して、同データの再生によって発生される楽音信号に表情(演奏手法によって発生楽音に付与される一種の音楽的効果)を付けるようにした演奏データ編集装置は知られている。この演奏データ編集装置においては、演奏データに基づいて予め定められた表情付けルールに従った所定の音符を検索し、同検索した所定の音符に対応した楽音信号に同ルールに従った所定の音楽的効果を付与するように演奏データを自動的に変更する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の装置にあっては、同一の音符に対して異なる表情付けルールが適用されて、楽音信号に複数の異なる表情付けが同時に適用されると、音楽的に好ましくない場合がある。
【0004】
例えば、図6(A)に示すように、「隣り合う3個の音符列W1,W2,W3において、第1音符W1から第2音符W2への音高変化が3半音分上昇する変化であり、かつ第2音符W2から第3音符W3への音高変化が2半音分上昇する変化であるとき、第2音符W2と第3音符W3をチョーキング効果で結び(すなわち、第2音符W2と第3音符W3とのピッチを連続的に変化させて結び)、かつピッチの変化を遅めにする」という表情付けルールが用意されているとする。これによれば、図6(B)のピッチチェンジPCとして示すように、第3音符W3の発音開始タイミングより少し前のタイミングにて楽音信号のピッチを第2音符W2の本来の音高ピッチから徐々に上昇させ始めて、第3音符W3の発音開始タイミングより少し後のタイミングにて楽音信号のピッチが第3音符Wの本来の音高ピッチになる。
【0005】
また、別の表情付けルールとして、「2分音符以上の長さの音符にはビブラートを付加する」というルールがあったとする。これによれば、図6(C)のピッチチェンジPCとして示すように、第3音符W3の発音開始タイミングから楽音信号のピッチが第3音符Wの本来の音高ピッチを中心に低周波数にて周期的に変動するようになる。
【0006】
そして、前記のような2つの表情付けルールが適用されれば、図6(D)のピッチチェンジPCとして示すように、前者の表情付けルール(チョーキング)の適用によって楽音信号のピッチが変化している最中に、後者の表情付けルール(ビブラート)の適用によって楽音信号のピッチが低周波数で変動し始める。すなわち、楽音信号のピッチが、第3音符W3の音高ピッチに安定する前に、ビブラートの付与によって変動し始める。その結果、楽音信号のピッチ変化が不自然となり、音楽的に好ましくない。
【0007】
【発明の概要】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、楽音信号に対して同時に2つの表情付けがなされないようにすることにより、音楽的に好ましい表情付けがなされるようにした演奏データの自動編集装置および自動編集方法を提供することにある。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の特徴は、記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データに効果を自動的に付与する演奏データの自動編集装置において、演奏データについて所定の第1条件に合致する音符を検索する第1検索手段と、第1条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第1態様に変更されるように演奏データの一部を変更する第1変更手段と、演奏データについて第1条件とは異なる所定の第2条件に合致する音符を検索する第2検索手段と、第2条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第2態様に変更されるように、第1変更手段により楽音信号の発生態様が第1態様に変更された範囲を避けて演奏データの一部を変更する第2変更手段とを設けたことにある。
【0009】
この場合、楽音信号の発生態様が第1変更手段によって第1態様に変更された範囲を避けて、第2変更手段が演奏データの一部を変更することを実現するために、第1変更手段により楽音信号の発生態様が第1態様に変更された範囲を表す変更範囲データを記憶する変更範囲記憶手段を設け、第2変更手段は、変更範囲記憶手段に記憶されている変更範囲データによって表される範囲を避けて演奏データの一部を変更するようにすればよい。
【0010】
これによれば、同一の音符に対して異なる表情付けルールが適用されても、楽音信号に複数の異なる表情付けが同時に適用されることを避けることができ、不自然さを回避したうえで音楽的に好ましい表情付けが自動的になされる。例えば、上述のように、チョーキングおよびビブラートによる表情付けが同一音符の楽音信号に適用される場合でも、チョーキングによる楽音信号のピッチ変化が終了した時点でビブラートによるピッチ変化が楽音信号に付与されるようにすることができる。その結果、楽音信号の不自然なピッチ変化を回避して、音楽的に好ましい表情付けが自動的になされる。
【0011】
また、本発明を他の観点から捉えれば、本発明の他の特徴は、記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データに効果を自動的に付与する演奏データの自動編集方法において、演奏データについて所定の第1条件に合致する音符を検索し、第1条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第1態様に変更されるように演奏データの一部を変更し、演奏データについて第1条件とは異なる所定の第2条件に合致する音符を検索し、第2条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第2態様に変更されるように、楽音信号の発生態様が第1態様に変更された範囲を避けて演奏データの一部を変更するようにしたことにもある。
【0012】
さらに、本発明を他の観点から捉えれば、本発明の他の特徴は、前記演奏データの自動編集方法を実現するプログラムおよび同プログラムを記憶した記録媒体にもある。これらによっても、上述した場合と同様に、楽音信号の発生態様の不自然な変化を回避して、音楽的に好ましい表情付けが自動的になされる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明すると、図1は本発明の適用されたパーソナルコンピュータを概略的に示している。
【0014】
このパーソナルコンピュータは、複数の操作子11、表示装置12および音源回路13を備えている。操作子11は、文字入力キー、数字入力キー、カーソル移動キー、マウスなどからなり、ユーザによるデータ入力、動作の指示などのために利用される。この操作子11の操作は、通信バス20に接続された操作子検出回路14によって検出されるようになっている。なお、操作子11としては、ジョイスティックなどの特殊なスイッチ、電子楽器のキーまたは操作子など、データ入力、作動指示などのためにユーザによって操作されるものであれば、種々の操作子を利用できる。
【0015】
表示装置12は、液晶ディスプレイ、CRTなどで構成され、文字、図形などを表示する。この表示装置12の表示状態は、通信バス20に接続された表示回路15によって制御される。音源回路13は、演奏データを入力して同データに対応した楽音信号を形成して、同形成した楽音信号をサウンドシステム16に出力する。サウンドシステム16は、アンプ、スピーカなどを含み、音源回路13からの楽音信号に対応した楽音を発音する。
【0016】
通信バス20には、コンピュータ本体部を構成するCPU21、タイマ22、ROM23、RAM24および外部記憶装置25が接続されている。CPU21は、後述するプログラムを含む各種プログラムを実行して、演奏データの編集処理、演奏データの再生処理などを行う。タイマ22は、時間計測に利用される。ROM23は、各種プログラムおよび各種データを記憶する。RAM24は、各種プログラムを記憶するとともに、各種データ、各種フラグなどの各種プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶する。本実施形態の場合、このRAM24には、特に編集される演奏データ(元演奏データ)、編集された演奏データ(新演奏データ)、および編集のために変更された演奏データの範囲を示す変更範囲データが記憶される記憶領域が用意される。
【0017】
外部記憶装置25は、このパーソナルコンピュータに予め組み込まれているハードディスクHD、同コンピュータに装着可能なコンパクトディスクCD、ミニディスクMD、フロッピーディスクFDなどの種々の記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、大量のデータおよびプログラムを記憶および読み出し可能にしている。本実施形態の場合、ハードディスクHDには、図2のプログラムを含む各種プログラム、表情付けルールデータ、各種演奏データなどが記憶されている。これらのプログラム、表情付けルールデータ、演奏データは、コンパクトディスクCD、ミニディスクMD、フロッピーディスクFDからハードディスクHDに供給されたり、後述するミディーインターフェース回路(MIDI I/F)31に接続された各種音楽機器、通信ネットワーク34を介した外部からハードディスクHDに供給されるようにしてもよい。
【0018】
表情付けルールデータとは、音符列のうちの一つまたは複数の音符を特定するための条件と、同条件に合致した音符に対応した楽音信号の変更態様とを規定する複数種類のデータ群であり、テーブルの形で記憶されている。この変更態様を本明細書では表情付けともいい、同変更態様は演奏手法によって発生楽音に付与される一種の音楽的効果である。具体例を挙げれば、「隣り合う3個の音符列W1,W2,W3において、第1音符W1から第2音符W2への音高変化が3半音分上昇する変化であり、かつ第2音符W2から第3音符W3への音高変化が2半音分上昇する変化であるとき、第2音符W2と第3音符W3をチョーキングで結び(すなわち、第2音符W2と第3音符W3とのピッチを連続的に変化させて結び)、かつピッチの変化を遅めにする」、「2分音符以上の長さの音符にはビブラートを付加する」などである。
【0019】
演奏データとは、各種楽曲の音符列を表すもので、図3(A)〜(C)に示すように、音符イベントデータ、ピッチチェンジデータなどの各種イベントデータと、タイミングデータとからなる。イベントデータとは、楽音信号の発生態様の変化の種類を表すデータである。そして、同イベントデータの一種である音符イベントデータは、発音の開始される楽音信号すなわち音符の音高(ノートコード)を表す。ピッチチェンジデータは、発生中の楽音信号のピッチの変化量を表す。タイミングデータは、前回のイベントデータに対応した楽音信号の発生態様の変化から今回のイベントデータに対応した楽音信号の発生態様の変化までの時間を表す。この場合、前回および今回のイベントデータが共に音符イベントデータであれば、それらの間のタイミングデータは前回の音符イベントデータに対応した音符の長さに対応する。
【0020】
また、通信バス20には、ミディーインターフェース回路31および通信インターフェース回路32も接続されている。ミディーインターフェース回路31には、電子楽器、シーケンサなどの各種音楽機器が接続されるようになっており、各種音楽機器はミディー通信規格に従ったデータの授受を行えるようになっている。なお、図1においては、このミディーインターフェース回路31に電子楽器が接続されている例が示されている。通信インターフェース回路32は、インターネットなどの外部の通信ネットワーク34に接続されるようになっている。
【0021】
次に、上記のように構成した実施形態の動作を説明する。まず、ユーザは、パーソナルコンピュータの電源スイッチ(図示しない)を投入し、演奏データの自動編集動作を行わせるために操作子11を操作する。これにより、CPU21は、ROM23に記憶された図示しないプログラムの実行により、外部記憶装置25のハードディスクHDに記憶されている図2のプログラムを含む演奏データの自動編集動作を行わせるための自動編集用プログラムおよび同プログラムの実行時に利用される表情付けルールデータなどを読み出してRAM24に記憶させ、同RAM24に記憶された自動編集用プログラムを起動する。なお、自動編集用プログラムがハードディスクHDに記憶されていない場合には、コンパクトディスクCD、ミニディスクMD、フロッピーディスクFDなどに記憶されている自動編集用プログラムをハードディスクHDに記憶させた後、またはミディーインターフェース回路31に接続された音楽機器もしくは通信ネットワーク34を介した外部から前記自動編集用プログラムをハードディスクHDにダウンロードした後、前記自動編集用プログラムをRAM24に転送して起動する。
【0022】
この自動編集用プログラムの起動後、ユーザは、同自動編集用プログラムの図示しない処理に従って、編集されるべき楽曲の演奏データを選択する。この選択により、外部記憶装置25のハードディスクHDに記憶されている演奏データに対応した複数の楽曲のうちで所望の楽曲が指定されると、同楽曲に関する演奏データがハードディスクHDから読み出されてRAM24に書き込まれる。また、ユーザが所望とする楽曲に関する演奏データがハードディスクHDに記憶されていない場合には、コンパクトディスクCD、ミニディスクMD、フロッピーディスクFDから所望の楽曲に関する演奏データをRAM24に読み込んだり、ミディーインターフェース回路31に接続された音楽機器から、または通信ネットワーク34を介した外部から所望の楽曲に関する演奏データをRAM24に読み込むようにしてもよい。ただし、この場合には、演奏データの繰り返し利用を実現するために、RAM24に書き込んだ演奏データをハードディスクHDにも書き込んでおくとよい。
【0023】
このようなRAM24に書き込まれた演奏データの一部を図3(A)に示す。図3(A)は、図5の3個の音符列W1,W2,W3及びその前後の音符X,Y(図示せず)に関する演奏データを示している。前記演奏データのRAM24への書き込み後、CPU21は、図示しないプログラムの実行により、前記演奏データに基づいてRAM24内に各音符に対応した変更範囲データ記憶領域を用意する。この変更範囲データ記憶領域を説明するために、図4(A)に前記音符列W1,W2,W3に対する変更範囲データ記憶領域を示す。この変更範囲データ記憶領域内の各音符に対応した各領域は、音符の長さとは無関係に各音符ごとの領域を確保するようにしておいてもよいが、各音符ごとに音符の長さに対応した容量(長さ)の領域を確保しておくようにしてもよい。
【0024】
このような処理の後、ユーザが図2の表情付けプログラムの実行開始を指示すると、CPU21はステップS10にてこの表情付けプログラムの実行を開始する。この表情付けプログラムの実行開始後、ステップS12,S14にて、表情付けルールデータを用い、演奏データについて表情付けルールデータに従った表情付けのための各種条件に合致する一つまたは複数の音符を検索する。そして、ステップS16にて、優先順位の高い表情付けのために、前記検索した音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の態様に変更されるように、演奏データの一部を変更する。このステップS16の処理後、ステップS18にて、前記ステップS16の処理により楽音信号の発生態様が変更された範囲を表す変更範囲データを、前記予め用意されたRAM内の変更範囲データ記憶領域に書き込んでおく。
【0025】
この場合、変更範囲データ記憶領域の各音符に対応した各領域として音符の長さとは無関係に各音符ごとの領域を確保するようにしておいた場合には、楽音信号の発生態様を変更した範囲の開始タイミングと同範囲の長さを表すデータを記憶するようにすればよい。また、各音符ごとに音符の長さに対応した容量(長さ)の領域を確保するようにしておいた場合には、楽音信号の発生態様を変更した範囲に対応した記憶領域にわたって、楽音信号の発生態様を変更したことを表すデータを連続して書き込み、その他の領域における楽音信号の発生態様を変更していないことを表すデータ(未使用を表すデータ)を初期に書き込んだままにしておけばよい。
【0026】
つぎに、ステップS20にて、次に優先順位の高い表情付けのために検索された音符に関し、前記楽音信号の発生態様が変更された範囲を除く領域、言い換えれば開放領域があるかを判定する。そして、開放領域があれば、ステップS20にて「YES」と判定し、ステップS22にて、次に優先順位の高い表情付けのために、前記検索した音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の態様に変更されるように、前記開放領域にある演奏データを変更する。このステップS22の処理後、ステップS24にて、前記ステップS22の処理により楽音信号の発生態様が変更された範囲を表す変更範囲データを、前記予め用意されたRAM24内の変更範囲データ記憶領域に書き込んでおく。そして、ステップS26にてこの表情付けプログラムの実行を終了する。なお、前記ステップS20にて「NO」すなわち開放領域がないと判定された場合には、ステップS26にてこの表情付けプログラムの実行を終了する。
【0027】
前記表情付けプログラムでは、2種類の表情付けのみについて説明した。しかし、表情付けルールデータがさらに多くの種類の表情付けルールを表している場合には、ステップS12,S14の検索処理を各表情付けルールごとに行い、ステップS20,S22,S24の処理を表情付けの優先順に繰返し行うようにすればよい。
【0028】
次に、表情付けルールが、第1および第2ルールの2種類のみであり、かつ第1ルールが第2ルールよりも優先順位が高い場合について、図2のフローチャートに沿って具体的に説明する。ここで、第1ルールは、前述した「隣り合う3個の音符列W1,W2,W3において、第1音符W1から第2音符W2への音高変化が3半音分上昇する変化であり、かつ第2音符W2から第3音符W3への音高変化が2半音分上昇する変化であるとき、第2音符W2と第3音符W3をチョーキングで結び(すなわち、第2音符W2と第3音符W3とのピッチを連続的に変化させて結び)、かつピッチの変化を遅めにする」というものである。第2ルールは、「2分音符以上の長さの音符にはビブラートを付加する」というものである。
【0029】
ステップS10の表情付けプログラムの実行開始後、ステップS12にて、RAM24内の演奏データについて、前記第1ルールで規定される「隣り合う3個の音符列W1,W2,W3において、第1音符W1から第2音符W2への音高変化が3半音分上昇する変化であり、かつ第2音符W2から第3音符W3への音高変化が2半音分上昇する変化である」という条件に合致する音符列を検索する。この検索により、例えば、図5(A)に示すような音符列W1,W2,W3が検索される。
【0030】
次に、ステップS14にて、RAM24内の演奏データについて、前記第2ルールで規定される「2分音符以上の長さの音符である」という条件に合致する音符を検索する。この検索により、例えば、図5(A)に示すような音符W3が検索される。そして、この状態では、図4(A)に示すように、RAM24に用意された変更範囲データ記憶領域の音符列W1,W2,W3に対応した各領域は未使用(開放領域)のままに保たれる。
【0031】
次に、ステップS16にて、第1ルールに従った表情付け(チョーキング付与)のために、演奏データの一部を変更する。この演奏データの変更は、図4(A)および図5(A)の音符列を例にとれば、音符W3の発音開始タイミングt3よりも少し前のタイミングt21から同音符W3の発音開始タイミングt3よりも少し後のタイミングt31までの時間にわたり、発生楽音信号のピッチが音符W2の音高ピッチから音符W3の音高ピッチまで徐々に変化するように演奏データを変更することを意味する。
【0032】
したがって、図3(A)に示す演奏データのうちで、音符W2の音長に関するタイミングデータ(W2)、音符W3に関する音符イベントデータ(W3)および音符W3の音長に関するタイミングデータ(W3)が、図3(B)に示すようなチョーキングに相当するピッチチェンジデータ列に変更される。具体的には、タイミングデータ(W2)、音符イベントデータ(W3)およびタイミングデータ(W3)を削除して、音符W2に対応した楽音信号の発生開始タイミングt2からピッチの変更開始タイミングt21までの時間を表すタイミングデータ(W2’)を音符イベントデータ(W2)の直後に配置する。そして、微小なピッチ変化を表す多数のピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPmをタイミングデータ(W2’)の後に挿入するとともに、ピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPmの各間に、微小時間を表すタイミングデータΔT1,ΔT2・・・ΔTm-1を挿入する。最後に、音符W3に対応した楽音信号の発生開始タイミングt3からピッチの変更終了タイミングt31までの時間をタイミングデータ(W3)から減算した値を表すタイミングデータ(W3’)を、ピッチチェンジデータΔPmと音符イベントデータ(Y)との間に挿入する。この場合、ピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPmおよびタイミングデータΔT1,ΔT2・・・ΔTm-1は、発生される楽音信号のピッチを音符W2の音高ピッチから音符W3の音高ピッチまでに徐々に上昇させるもので、各ピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPmの合計は、音符W2の音高ピッチと音符W3の音高ピッチとの差に等しい。
【0033】
次に、ステップS18にて、前記ステップS16の処理により演奏データを変更した範囲すなわちチョーキングのためにピッチチェンジデータを挿入した範囲を表す変更範囲データを、RAM24内の変更範囲データ記憶領域に書き込む。この処理により、図4(B)に示すように、変更範囲データ記憶領域の開放領域(未使用領域)中に、チョーキングを付与した範囲(t21〜t31)を表すデータが書き込まれる。
【0034】
前記ステップS18の処理後、ステップS20にて、第2ルールに従って検索された音符に関し、変更範囲データ記憶領域に書き込まれているデータに基づいて同第2ルールに従ったビブラートを付加できる開放領域があるかを判定する。前記図4,5の例では検索音符はW3であり、この場合、ステップS20にて、音符W3に関して開放領域があるか否かを判定することになる。
【0035】
開放領域が存在しなければ、ステップS20にて「NO」と判定して、ステップS26にてこの表情付けプログラムの実行を終了する。前記図4,5の例では、音符W3に関するタイミングt31から次の音符Yの発音開始タイミングまでは開放領域であるので、ステップS20にて「YES」と判定してステップS22に進む。
【0036】
ステップS22においては、第2ルールに従った表情付け(ビブラート付与)のために、演奏データの一部を変更する。この演奏データの変更も、図4(B)および図5(B)の音符列を例にとれば、音符W3の発音開始タイミングt3よりも少し後のタイミングt31から次の音符Yの発音開始タイミングまでの時間にわたり、発生楽音信号のピッチが低周波数で周期的に変化するように演奏データを変更することを意味する。
【0037】
したがって、図3(B)に示す演奏データのうちで、タイミングデータ(W3’)が、図3(C)に示すようなビブラートに相当するピッチチェンジデータ列に変更される。具体的には、タイミングデータ(W3’)を削除して、ピッチチェンジデータΔPmの直後に、同データΔPmに対応した楽音信号のピッチを持続させる時間を表すタイミングデータ(W3”)を配置する。そして、微小なピッチ変化を表す多数のピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPnをタイミングデータ(W3”)の後に挿入するとともに、ピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPnの各後に、微小時間を表すタイミングデータΔT1,ΔT2・・・ΔTnを配置する。この場合、ピッチチェンジデータΔP1,ΔP2・・・ΔPnおよびタイミングデータΔT1,ΔT2・・・ΔTnは、発生される楽音信号のピッチを低周波数で周期的かつ滑らかに変動させるためのものである。
【0038】
次に、ステップS24にて、前記ステップS22の処理により演奏データを変更した範囲すなわちビブラートのためにピッチチェンジデータを挿入した範囲を表す変更範囲データを、RAM24内の変更範囲データ記憶領域に書き込む。この処理により、図4(C)に示すように、変更範囲データ記憶領域の開放領域(未使用領域)中に、ビブラートを付与した範囲(t31〜)を表すデータが書き込まれる。そして、ステップS26にて、この表情付けプログラムの実行を終了する。なお、この場合には、他の表情付けルールは存在しないので、ステップS20〜S24の処理を繰返し実行することはない。
【0039】
このようにして種々の表情付けルールに従って変更した演奏データを図示しない自動演奏プログラムを用いて再生すると、前記ルールに従って表情付けされた楽音信号が音源回路13にて形成される。そして、この形成された楽音信号に対応した楽音がサウンドシステム16を介して発音される。その結果、豊かな演奏表現力をもった楽音が再生される。
【0040】
前記図5の例によれば、(B)に示すように、音符W2に対応した音高ピッチの楽音が発音中、タイミングt21になるとチョーキングが付加されて、ピッチが徐々に上昇し始める。そして、タイミングt31にて発音中の楽音のピッチが音符W3に対応した音高ピッチに達する。その後、発音中の楽音にビブラートが付加され、同楽音のピッチは音符W3に対応した音高ピッチを中心に低周波数で周期的かつ滑らかに変動し始める。
【0041】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、音符W3のように同一の音符に対して異なる表情付けルール(チョーキングおよびビブラート)が適用される場合でも、楽音信号に複数の異なる表情付け(チョーキングおよびビブラート)が同時に適用されることを避けることができる。その結果、チョーキングとビブラートとの同時付与による不自然なピッチ変化のように、複数の異なる表情付けの同時付与による楽音信号の不自然な発生態様を回避でき、音楽的に好ましい表情付けが自動的になされるようになる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、具体的な表情付けの例として、楽音信号の周波数に関係したチョーキングおよびビブラートについてのみ説明した。しかし、表情付けの音楽的効果として、楽音信号の他の要素である音量および/または音色を変更することを採用することもでき、これらの表情付けにより楽音信号の発生態様をより複雑に種々に時間変化させることもできる。
【0043】
また、上記実施形態においては、変更範囲データ記憶領域を各音符に対応させてRAM24内に設けて、表情付けの処理ごとに開放領域と表情付け領域とを更新するようにした。しかし、これに代えて、各表情付けのルールごとに変更範囲データ記憶領域を設けるようにしておき、各ルールごとに開放領域と表情つき表領域とを管理するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、複数の異なる表情付けを完全に分離して付与するようにしたが、僅かな部分において異なる表情付けをオーバーラップさせるようにしてもよい。この場合、フェードイン・フェードアウトのように、先に付与されている表情付けの重みを徐々に小さくして、後に付与される表情付けの重みを徐々に大きくするようにすると、さらによい。また、本発明のような複数の異なる表情付けの同時付与禁止と、前記オーバーラップによる複数の異なる表情付けの同時付与許容とをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、本発明に係る演奏データの自動編集装置および自動編集方法をパーソナルコンピュータで実現したが、これらの自動編集装置および自動編集方法は、コンピュータ装置を備えた電子楽器、シーケンサ、その他の音楽機器でも実現できるものである。また、コンピュータ装置さえ備えていれば、他の電子機器でも実現できるものである。
【0046】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るパーソナルコンピュータの概略ブロック図である。
【図2】 図1のパーソナルコンピュータにて実行される表情付けプログラムのフローチャートである。
【図3】 (A)〜(C)は、本発明に係る演奏データの一例を示すデータフォーマット図である。
【図4】 (A)〜(C)は、図3の演奏データに対応して設けた変更範囲データ記憶領域を説明するための図である。
【図5】 (A)(B)は、本発明による楽音信号の発生態様の変更を説明するための図である。
【図6】 (A)〜(D)は、従来例における楽音信号の発生態様の変更を説明するための図である。
【符号の説明】
11…操作子、12…表示装置、13…音源回路、21…CPU,23…ROM,24…RAM、25…外部記憶装置。

Claims (3)

  1. 記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データに効果を自動的に付与する演奏データの自動編集装置において、
    前記演奏データについて所定の第1条件に合致する音符を検索する第1検索手段と、
    前記第1条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第1態様に変更されるように、前記演奏データの一部を変更する第1変更手段と、
    前記演奏データについて前記第1条件とは異なる所定の第2条件に合致する音符を検索する第2検索手段と、
    前記第2条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第2態様に変更されるように、前記第1変更手段によって第1態様に変更された範囲を避けて前記演奏データの一部を変更する第2変更手段と
    を設けたことを特徴とする演奏データの自動編集装置。
  2. 記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データに効果を自動的に付与する演奏データの自動編集装置において、
    前記演奏データについて所定の第1条件に合致する音符を検索する第1検索手段と、
    前記第1条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第1態様に変更されるように、前記演奏データの一部を変更する第1変更手段と、
    楽音信号の発生態様が前記第1変更手段によって第1態様に変更された範囲を表す変更範囲データを記憶する変更範囲記憶手段と、
    前記演奏データについて前記第1条件とは異なる所定の第2条件に合致する音符を検索する第2検索手段と、
    前記第2条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第2態様に変更されるように、前記変更範囲記憶手段に記憶されている変更範囲データによって表される範囲を避けて前記演奏データの一部を変更する第2変更手段と
    を設けたことを特徴とする演奏データの自動編集装置。
  3. 記憶装置内に記憶されていて音符列を表す演奏データに効果を自動的に付与する演奏データの自動編集方法において、
    前記演奏データについて所定の第1条件に合致する音符を検索し、
    前記第1条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第1態様に変更されるように、前記演奏データの一部を変更し、
    前記演奏データについて前記第1条件とは異なる所定の第2条件に合致する音符を検索し、
    前記第2条件に合致する音符に対応した楽音信号の発生態様が所定の第2態様に変更されるように、前記楽音信号の発生態様が第1態様に変更された範囲を避けて前記演奏データの一部を変更する
    ようにしたことを特徴とする演奏データの自動編集方法。
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