JP3684867B2 - Ptc組成物および面状発熱体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PTC組成物およびそれを用いた面状発熱体に関する。更に詳しくは、広範囲な温度環境下で安定した作動を示すPTC組成物およびそれを用いた面状発熱体に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は先に、非晶質ポリマー、導電性充填材およびこの非晶質ポリマーと相溶性のない結晶性ポリマー粒子からなるPTC組成物を提案している( 特開平6-45105 号公報) 。
【0003】
このPTC組成物は、結晶性ポリマーを用いることによって得られる高い正温度特性を維持したまま、バラツキの低減と生産性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0004】
しかしながら、従来知られている多くのPTC組成物はPTC特性の向上やその特性の安定化の面から検討されていることが多く、それの使用環境下での安定性について検討されているものは少なく前記提案の場合もその例外ではない。
【0005】
一方、特公昭59−2693号公報には、導電性カーボンブラックにグラファイトを組合せたPTC組成物が記載されており、グラファイトは抵抗安定作用を有することが記載されている。
【0006】
しかるに、この抵抗安定作用というのは、電圧を印加したとき一定の発熱温度が得られ、その後抵抗変化を生じ、自己温度制御作用が発揮されるが、その作用がくり返し行なわれる電圧印加時にも安定的に発揮されるという効果であって、使用環境が変化した場合の挙動についての記載はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来技術におけるPTC組成物を用いた面状発熱体は、室温条件下での発熱に対しては良好な特性を維持することが可能であるが、例えば−30℃というような極寒環境下や+60℃程度以上の高温環境下で用いられることもある。
【0008】
しかしながら、このような温度環境下で面状発熱体が長期間使用されると、抵抗値が大きく変化してしまい耐久性が低くなるという問題があった。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、耐久性を低下させることなく使用可能な温度範囲を拡大したPTC組成物を提供することにある。また、他の目的として、かかるPTC組成物を用いた面状発熱体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のPTCを利用する物品に用いるための組成物にあっては、ガラス転移点の異なるポリアルキルシロキサンを2種類混合して得られたブレンドポリマーと、導電性粒子とからなるPTCを利用する物品に用いるための組成物であって、
前記ブレンドポリマーは、5〜50重量%のガラス転移点が−20〜20℃のポリアルキルシロキサンと、95〜50重量%のガラス転移点が70〜100℃のポリアルキルシロキサンと、の2種類のポリアルキルシロキサンを混合し100重量%としたものであり、
このブレンドポリマーに対し、導電性粒子であるカーボンブラックを必要な抵抗値に合わせて分散させたことを特徴とする
【0012】
面状発熱体にあっては、PTCを利用する物品に用いるための組成物の架橋物を、樹脂フィルム基材上に形成された導電層上に配設する。
【0013】
マトリックスとなるポリアルキルシロキサンは、−40℃から100℃のガラス転移点を備えるものであり、ガラス転移点が複数となることで、温度に対する形状変化の度合いを緩やかにすることが可能となる。
【0014】
尚、ブレンド割合の好適な範囲としては、ガラス転移点が−20〜20℃のシリコーン系ポリマー5〜30重量%、ガラス転移点が70〜100℃のシリコーン系ポリマー95〜70重量%である。
【0016】
導電性カーボンブラックとしては、ストラクチャーが小さく、粒径が約30〜150mμ程度と比較的大きいもの、例えばSRF、GPF、FEF、FTなどに分類されるものが、約3〜50容積%、好ましくは約5〜40容積%の割合で用いられる。
【0017】
また、前記各成分を必須成分とする組成物中には、導電性を損なわない範囲内、一般には約5容積%以下、好ましくは約1容積%以下の割合で、架橋剤、架橋促進剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0018】
組成物の調製は、複数種類のシリコーン系ポリマーを導電性カーボンブラックと共に混合する方法、またはブレンドポリマーを生成した後に導電性カーボンブラックを加えて分散させる方法などによって行われる。
【0019】
これらの操作は、湿式分散装置、例えばダイノーミルや3本ロール等を用いて行われ、粒ゲージを用いて所定の分散度合になったことを確認するようにする。調製されたペースト状の分散液は、更に溶剤で希釈し、スクリーン印刷に適した溶液粘度および固形分濃度に調整した上で用いることもできる。
【0020】
このように、本発明のPTC組成物は好ましくはインク状またはペースト状にして用いられるが、これらの各成分をロールミル、バンバリーミキサ、ニーダ等を用いて行われる通常の混練方法によって混練し、混練物をそのまま樹脂フィルム基材上に形成された電極上に配設することもできる。
【0021】
PTC組成物がインク状またはペースト状あるいは混練物として配設される樹脂フィルム基材としては、一般に厚さが約10〜100μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルムが用いられ、発熱体としての使用を考えたとき耐熱温度の高い材料が望ましい。
【0022】
樹脂フィルム基材上への導電層としての金属箔の配設は、樹脂フィルム基材上へ接着剤を介して厚さが約10〜50μm程度の銅箔、アルミニウム箔等の金属箔、好ましくは銅箔を貼り合わせ、エッチング加工して所望のパターンを形成させることにより行われ、くし形あるいはジグザグ状のものなど細かいパターンや複雑なパターンのものを形成させることができる。
【0023】
このようにして形成された樹脂フィルム基材上の導電層へのPTC組成物の配設は、PTC組成物が単なる混練物の場合には、熱プレス等で圧着するだけで容易に行うことができる。
【0024】
また、PTC組成物はインク状またはペースト状として用いる場合も多く、この場合の樹脂フィルム基材上への前記PTC組成物インクまたはペーストの塗布は、スクリーン印刷、ナイフコータ、グラビアコータを用いる方法など、均一な厚さでの塗布が可能な方法であれば任意の方法を使用することができるが、発熱層を特定のパターンとして形成させる場合には、スクリーン印刷法をとることが好ましい。
【0025】
塗布されたインクまたはペーストは、約80〜200℃で約1〜60分間程度乾燥させることにより、膜厚約10〜300μm程度の発熱層を形成させる。
【0026】
形成された発熱層は、その性能を安定させるために、加熱や放射線照射によって架橋させておくことが好ましい。加熱架橋は、オーブン加熱あるいは熱プレスなどによって行われる。
【0027】
このようにしてPTC組成物の架橋物を、樹脂フィルム基材上に形成させた電極としても作用する導電層上に配設し、この電極に接点を付設し、好ましくは更にPTC組成物発熱層の表面に、基材としても用いられた樹脂フィルムよりなる絶縁層で被覆することにより、そこに面状発熱体が形成される。
【0028】
【発明の効果】
本発明に係るPTC組成物から形成された面状発熱体は、低温から高温領域にわたり、長期使用後の抵抗値の変化を抑えることができ、耐久性を低下させることなく使用可能な温度範囲を拡大することが可能となる。
【0029】
【実施例】
次に、実施例及び比較例について本発明を説明する。
【0030】
(実施例)東芝シリコーン(株)製シリコーン樹脂YR3370(ガラス転移点:83℃)を90重量%、同シリコーン樹脂TSR116(ガラス転移点:−2℃)を10重量%をブレンドしたブレンドポリマーに、導電製粒子として中部カーボン(株)製HTC#S(カーボンブラック)を分散する。
【0031】
分散比率は、ブレンドポリマー90容量%に対してHTC#S10容量%である。
【0032】
(比較例)比較例1として、同YR3370を95容量%に対し、同HTC#Sを5容量%混合したもの。
【0033】
比較例2として、同TSR116を75容量%に対し、同HTC#Sを25容量%混合したもの。
【0034】
実施例と比較例1,2のPTC組成物に対し、電極を配設して25℃,60℃,−40℃の各温度環境下において、100Vの電圧を印加し発熱させた。電圧印加後、1000時間経過した後に各PTC組成物の抵抗値の変化を測定した結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003684867
この表1の結果より、本発明を適用した実施例においては、1000時間のテスト後にテスト開始時の抵抗値よりも各温度において、−30%の抵抗値の変化に留まった。
【0036】
比較例1では25℃,60℃では実施例と同じ−30%の抵抗値の変化であったが、−40℃では−60%の抵抗値の変化が発生した。
【0037】
比較例2では−40℃では+30%の抵抗値の変化であったが、25℃,60℃ではそれぞれ+200%,+350%の抵抗値の変化が発生した。

Claims (2)

  1. ガラス転移点の異なるポリアルキルシロキサンを2種類混合して得られたブレンドポリマーと、導電性粒子とからなるPTCを利用する物品に用いるための組成物であって、
    前記ブレンドポリマーは、5〜50重量%のガラス転移点が−20〜20℃のポリアルキルシロキサンと、95〜50重量%のガラス転移点が70〜100℃のポリアルキルシロキサンと、の2種類のポリアルキルシロキサンを混合し100重量%としたものであり、
    このブレンドポリマーに対し、導電性粒子であるカーボンブラックを必要な抵抗値に合わせて分散させたことを特徴とするPTCを利用する物品に用いるための組成物
  2. 請求項1記の組成物の架橋物を、樹脂フィルム基材上に形成された導電層上に配設してなる面状発熱体。
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