JP4957439B2 - 正抵抗温度特性抵抗体 - Google Patents

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Description

本発明は、自己温度制御発熱体、温度センサー、過電流保護装置などに用いられる正抵抗温度特性を有する抵抗体に関するものである。
従来、この種の正抵抗温度特性抵抗体は、抵抗値を調整するために、結晶性重合体である低密度ポリエチレンに対して、導電性微粉末であるカーボンブラックの組成比を変更すると、20℃の抵抗値に対する抵抗値比率、すなわち、抵抗温度特性の変化比率が、大きく変化することを示している(例えば、特許文献1参照)。これは、カーボンブラックの組成比が下がると、フィラーの充填による形状保持機能が低下し、温度変化に対する正抵抗温度特性抵抗体の比容の変化率が増大することと、カーボンブラック相互の接触状態が疎になり、比容がわずかに変化しても導電経路が増大しやすくなることが重なって、抵抗温度特性の変化比率が急激に増大するためである。
特公昭62−59415号公報
しかしながら、正抵抗温度特性抵抗体を用いて、例えば、発熱体を形成する場合には、発熱体の外形寸法や形状に応じて、電極パターンや電極間隔を設定し、目標の抵抗値となるように正抵抗温度特性抵抗体の体積固有抵抗値を調整する必要がある。この場合、正抵抗温度特性抵抗体の体積固有抵抗値に合わせ、電極パターンや電極間隔を設定することも可能であるが、通常、発熱体の外形寸法や形状による制約があるために調整の範囲は限られる。また、電極パターンや電極間隔を変えずに、異なる電源電圧で、同一の発熱特性を得たい場合には、正抵抗温度特性抵抗体の体積固有抵抗値を電源電圧の2乗に比例して調整する必要がある。従来の正抵抗温度特性抵抗体でこのように比較的大きな抵抗値の調整を行うと、抵抗温度特性の変化比率が大きく変化し、突入電量と飽和温度のバランスが失われ、突入電力を一定にすると飽和温度が変動し、飽和温度を一定にすると突入電力が変動するなどの現象が生じて、所定の発熱特性が得ることができなかった。このように、抵抗温度特性の変化比率を変化させずに、体積固有抵抗値を調整するのは容易なことではなく、導電性微粉末の組成比だけでなく、種類やグレード変更、さらには結晶性重合体の種類やグレード変更が必要であり、材料開発的な要素を伴うという課題を有していた。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、導電性微粉末の添加比率を調整するのではなく、抵抗値調整用の重合体の添加比率を調整することによって、体積固有抵抗値を簡単に連続的に調整することが可能で、しかも、抵抗温度特性の変化比率が略一定となるようにすることのできる正抵抗温度特性抵抗体を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の正抵抗温度特性抵抗体は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分としてなる導電性組織と、前記導電性組織に添加される抵抗調整重合体からなり、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、前記難溶融混合性部分の存在によって前記抵抗調整重合体は前記導電性組織の細部までの混合が制約され、前記抵抗調整重合体を添加して抵抗値の調整を行った時に、抵抗温度特性の変化比率が略一定を保持することが可能なようにしたものである。
これによって、単に、導電性微粉末の添加比率によって抵抗値を調整しようとすると、
フィラーの充填効果による正抵抗温度特性抵抗体の比容の変化率への影響、さらに、導電性微粉末の接触状態の影響によって、抵抗温度特性も変動してしまう。しかし、溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体を、抵抗調整重合体として添加する方法であれば、難溶融混合性部分の存在によって導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めないために、導電性組織の導電性微粉末の充填量やその接触状態には影響が及ばない。導電性組織中の導電性微粉末の充填量が変化しなければ導電性組織の比容の変化率や導電性微粉末の接触状態も変化しない。したがって、抵抗調整重合体は導電性組織の中で、導電経路を遮断するか、迂回させるかの作用、すなわち抵抗値の調整作用を主体的に行い、抵抗温度特性の変化比率には大きな影響を及ぼさない。このように、導電性微粉末の添加比率を調整するのではなく、抵抗調整重合体の添加比率を調整することにより抵抗温度特性の変化比率を略一定に保持しつつ、広範囲の抵抗値の調整が可能となる。
本発明の正抵抗温度特性抵抗体は、体積固有抵抗値を連続的に調整することが可能で、しかも、抵抗温度特性が略一定である正抵抗温度特性抵抗体を提供するものである。発熱体に応用すれば、電極構成を変える必要がなく、電源電圧に応じた抵抗値となるように抵抗調整重合体の組成比を調整するだけで、同一の発熱特性を得ることができる。センサーであれば、電極構成を変える必要がなく、負荷抵抗に応じた抵抗値となるように抵抗調整重合体の組成比を調整するだけで、同一の制御特性を得ることができる。
第1の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分としてなる導電性組織と、前記導電性組織に添加される抵抗調整重合体からなり、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、前記難溶融混合性部分の存在によって前記抵抗調整重合体は前記導電性組織の細部までの混合が制約され、前記抵抗調整重合体を添加して抵抗値の調整を行った時に、抵抗温度特性の変化比率が略一定を保持する正抵抗温度特性抵抗体を形成するものである。このことにより、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分としてなる導電性組織は、結晶性重合体の融点近傍での比容の急激な増大により、導電性微粉末の導電経路が遮断され、正抵抗温度特性を示す。溶融状態で混合され、導電性組織中に混在する抵抗調整重合体は、導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、難溶融混合性部分の存在によって導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めないために、抵抗調整重合体の添加比率を調整しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に分散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。
第2の発明は、特に、第1の発明の抵抗調整重合体の溶融混合性部分が結晶性の重合体であり、難溶融混合性部分が非結晶性の重合体であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分がブロック状に形成された複合重合体からなるものである。抵抗調整重合体に含まれる結晶性の重合体部分は結晶性が失われる温度で溶融し、混合や分散が容易にできるので溶融混合性部分となる。非結晶性の重合体部分は、室温では柔軟であるものの、明確な溶融温度はなく、混合は不可能ではないが、細部までの分散にはより多くのエネルギーや時間を要する傾向にある。抵抗調整重合体は、このような非結晶性の重合体をブロック状の塊にして含有しているために、ブロック単位での混合は容易であったとしても、ブロックを崩してその内部に分散するにはより多くのエネルギーや時間を要する。この部分は、通常の溶融混合では難溶融混合性部分となる。このような内部構造を持つ抵抗調整重合体と導電性組織を通常の溶融混合で分散しようとしても、非結晶性の重合体のブロック
が障害となって、導電性組織の細部まで抵抗調整重合体が入り込むことはできない。したがって、導電性組織と抵抗調整重合体を溶融混合しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現する導電性微粉末の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に分散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。さらに、抵抗調整重合体に含まれる非結晶性の重合体は、抵抗調整重合体の結晶性を緩和するので、抵抗調整重合体の結晶融解に伴う比容の急激な変化をもたらすこともない。したがって、抵抗調整重合体を添加比率を調整しても、抵抗温度特性の抵抗変化比率を略一定に保つことができる。
第3の発明は、特に、第1の発明の抵抗調整重合体の溶融混合性部分が結晶性の重合体の非架橋部分であり、難溶融混合性部分が結晶性の重合体の架橋部分であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分が化学結合された複合重合体からなるものである。抵抗調整重合体に含まれる結晶性重合体の非架橋部分が導電性組織に含まれる結晶性重合体の細部までに分散しようとしても、抵抗調整重合体に含まれる結晶性重合体の架橋部分は化学的に3次元結合されているために組織を崩すことは容易でなく、溶融混合を妨げる。この架橋部分と非架橋部分は化学的に結合されているために、非架橋部分のみが架橋部分と分離して溶融混合することはなく、導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めない。したがって、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に拡散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。
第4の発明は、特に、第1の発明の抵抗調整重合体の溶融混合性部分は結晶性の重合体であり、難溶融混合性部分は架橋された非結晶性の重合体であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分が化学結合された複合重合体により形成されてなるものである。抵抗調整重合体に含まれる結晶性重合体の非架橋部分が導電性組織に含まれる結晶性重合体の細部までに分散しようとしても、抵抗調整重合体に含まれる非結晶性の重合体の架橋部分は化学的に3次元結合されているために、組織を崩すことは容易でなく、溶融混合を妨げる。この架橋部分と非架橋部分は化学的に結合されているために、非架橋部分のみが架橋部分と分離して溶融混合することはなく、導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めない。導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に拡散することも抑制されるために、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。さらに、抵抗調整重合体に含まれる非結晶性の重合体は、抵抗調整重合体の結晶性を緩和するので、抵抗調整重合体の結晶融解に伴う比容の急激な変化をもたらすこともない。したがって、抵抗調整重合体を添加比率を調整しても、抵抗温度特性の抵抗変化比率を略一定に保つことができる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の導電性組織が架橋されてなるものであり、架橋により結晶性重合体相互、あるいは、結晶性重合体と導電性微粉末間を化
学結合することにより、溶融粘度が増し、容易に溶融混合できなくなる。したがって、導電性組織と抵抗調整重合体を熱溶融混合する場合に、導電性組織側にも抵抗調整重合体と容易に混合しないような物性を付与することができる。その結果、導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込まなくなる。したがって、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に拡散することも抑制されるために、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の導電性微粉末が正抵抗温度特性の制御成分を含んでなるものである。正抵抗温度特性は導電性組織の比容のわずかな変化を導電性微粉末の配列に反映して、抵抗特性を変化させるものであるが、その反映の感度を抑制することによって、抵抗調整重合体を添加したときの抵抗温度特性の変化比率を小さくすることができる。
第7の発明は、特に、第6の発明の制御成分に高ストラクチャーのカーボンブラックを含んでなるものである。ストラクチャーが発達した高ストラクチャーのカーボンブラックはカーボンブラック粒子が大きく連なっており、導電性組織の比容にわずかな変化があってもカーボンブラックの導電経路は影響を受け難い。したがって、高ストラクチャーのカーボンブラックを正抵抗温度特性の制御成分として適切な量を添加することによって、抵抗調整重合体を添加したときに生じる抵抗温度特性の変化比率の変動を小さくすることができる。
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の抵抗調整重合体を添加した導電性組織に、溶剤を介在させて流動性を付与し、これを塗布乾燥して形成する抵抗体であって、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して、溶剤存在下においても溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体からなるものである。溶剤を介在させて流動性を付与した時点、さらに、塗布乾燥時に溶剤と共に加熱された時点においても、溶剤の存在下に係わらず、抵抗調整重合体は導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、難溶融混合性部分の存在によって導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めないために、抵抗調整重合体の添加比率を調整しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に分散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。
第9の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の導電性組織及び抵抗調整重合体それぞれに、溶剤を介在させて流動性を付与した状態で混合したものを塗布乾燥して形成する抵抗体であって、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して、溶剤存在下においても溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体からなるものである。溶剤を介在させて流動性を付与した状態で混合した時点、さらに、塗布乾燥時に溶剤と共に加熱された時点においても、溶剤の存在下に係わらず、抵抗調整重合体は導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、難溶融混合性部分の存在によって導電性組織の細部に抵抗調整重合体が入り込めないために、抵抗調整重合体の添加比率を調整しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラ
ックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に分散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)52部、導電性微粉末としてカーボンブラック(アセチレンブラック)48部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。次に、抵抗調整重合体を作製するためにポリプロピレン40部と低密度ポリエチレン60部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練しつつ、架橋剤としてジクミールパーオキサイド2部を加えた。ロール上で一部がゲル化し、架橋反応が生じたが、最終的には熱溶融性を失わず、外見的に均質感のある抵抗調整重合体が得られた。次に、最初に作製した導電性組成物100部に対して、抵抗調整重合体を0部、15部、30部、45部配合したものを、加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得た。この抵抗値を調整した導電性組成物を熱プレスで厚さ0.1mmのシート状に成形し、長方形に切り出して、その両端に常温乾燥の銀ペーストを塗布し、一対の電極を形成して抵抗特性測定用のサンプルを作製した。これらの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表1に示す。表1からも明らかなように、20℃抵抗値を約5倍ほど増大させたにも係わらず20℃と50℃の抵抗値の比率は大きく変わらない結果が得られた。
なお、実施の形態1の比較サンプルとして次に示す比較サンプル1a及び1bを作製した。比較サンプル1aは、抵抗調整重合体として、ポリプロピレン40部とポリエチレン60部を混練しただけで、以降の架橋工程を省略したものを用意し、これを15部加えて、抵抗値を調整した導電性組成物を作製した。比較サンプル1aの20℃の面積抵抗値は40.0kΩ/□であり、20℃と50℃の抵抗値の比率は2.45倍であった。比較サンプル1aでは、抵抗調整重合体を15部添加することにより、実施の形態1の場合よりも大きく20℃の抵抗値が増大し、それと共に、抵抗温度特性の変化比率も増大する結果となっている。これは従来の技術で示した、カーボンブラックの組成比による抵抗値の調整と同様の現象であり、同様のメカニズムが作用した結果である。比較サンプル1bは、抵抗調整重合体として、導電性組成物に使用されているエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)を用意し、これを15部、30部、45部加えて、抵抗値を調整した導電性組成物を作製した。以降、実施の形態1と同様にして抵抗特性測定用のサンプルを作製した。比較サンプル1bの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表2に示す。
比較サンプル1bも、1aと同じく、実施の形態1に比較して、抵抗調整重合体の添加量に対する20℃の抵抗値の増加率が大きく、それと共に、抵抗温度特性の変化比率が増大する結果となっている。これは、カーボンブラックの添加量によって抵抗値を調整することと実質的に同じであり、従来技術の再現であると言える。
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。エチレン酢酸ビニル共重合体は結晶性重合体であり、これにカーボンブラックを分散した導電性組織は、結晶性が失われる融点近傍において比容が急激に増大する物性がある。したがって、融点に向かって温度を上げていくと、カーボンブラック相互の接触点が減少することにより、正の抵抗温度特性を示す。また、ポリプロピレンとポリエチレンからなり、架橋処理されて作製された抵抗調整重合体は、ポリエチレン部分は架橋処理によって容易に架橋し、溶融しなくなるが、ポリプロピレン部分は架橋処理によって架橋せず、むしろ溶融粘度が低下する性質がある。したがって、両者が混在する抵抗調整重合体は、溶融しないポリエチレンを内部に保有する溶融性のポリプロピレンとなる。上述した導電性組織とこの抵抗調整重合体を溶融させて混合すると、抵抗調整重合体中に存在するポリプロピレンは、導電性組織に対して熱溶融混合が容易な溶融混合性部分となり、ポリエチレンは、導電性組織に対して熱溶融混合が困難な難溶融混合性部分となる。このポリプロピレンとポリエチレンは化学的に結合しているために一体であり、ポリエチレンが導電性組織の細部にまで分散できないために、ポリプロピレンも導電性組織の細部にまで分散できない。このために、このポリエチレンとポリプロピレンからなる抵抗調整重合体を添加しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織が抵抗調整重合体中に分散することもなく、抵抗調整重合体は実質的に電気絶縁性であり、抵抗調整重合体の混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。
(実施の形態2)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)52部、導電性微粉末としてカーボンブラック(アセチレンブラック)48部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。さらに、この導電性組成物100部に対して、抵抗調整重合体として水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを0部、15部、30部、45部配合したものを、加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得た。この抵抗値を調整した導電性組成物を熱プレスで厚さ0.1mmのシート状に成形し、長方形に切り出して、その両端に常温乾燥の銀ペーストを塗布し、一対の電極を形成して抵抗特性測定用のサンプルを作製した。これらの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表3に示す。表3から明らかなように、抵抗値を約14倍ほど調整したにも係わらず、20℃と50℃の抵抗値の比率が、ほぼ一定という結果が得られた。
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。導電性組織は実施の形態1と同一である。この導電性組織中にスチレン系熱可塑性エラストマーを錬り込むと、このスチレン系熱可塑性エラストマーはオレフィン系重合体との相溶性があり、容易に混合することができる。しかしながら、このスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーであり、結晶性重合体であるスチレンと非結晶性重合体であるブタジエンのそれぞれのブロック構成単位を内部に持っているために、スチレン部分が融点以上で結晶性を失って溶融しても、ブタジエン部分は明確な融点はなく、溶融しても高粘度である。このように溶融時に高粘度の重合体のブロックを内部に持つスチレン系熱可塑性エラストマーを、導電性組織に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の細部までに分散しようとしても、そのブロックを崩すためには時間を要するために、通常の溶融混合では分散できない。この高粘度の重合体のブロックが抵抗となって、導電性組織の細部までスチレン系熱可塑性エラストマーが入り込むことはできない。したがって、導電性組織とスチレン系熱可塑性エラストマーを溶融混合しても、導電性組織内で正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織がスチレン系熱可塑性エラストマー中に分散することもなく、スチレン系熱可塑性エラストマーは実質的に電気絶縁性であり、スチレン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、スチレン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。また、特に、このスチレン系熱可塑性エラストマーに含まれるブタジエン部分は非結晶性重合体であり、スチレン系熱可塑性エラストマーの結晶性を緩和するので、スチレン系熱可塑性エラストマーの結晶融解に伴う比容の急激な変化をもたらすこともなく、正抵抗温度特性を略一定に保つことができる。
なお、上記の実施の形態2では抵抗調整重合体として水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを使用したが、水素添加は必須ではなく、耐熱性が向上する等の利点が多いために選定したものであり、一般的なスチレン系熱可塑性エラストマーでも同等の作用効果が得られる。
(実施の形態3)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)52部、導電性微粉末としてカーボンブラック(アセチレンブラック)48部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。次に、抵抗調整重合体としてオレフィン系熱可塑エラストマーを用意し、導電性組成物100部に対して、抵抗調整重合体を0部、15部、30部、45部配合したものを、加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得た。この抵抗値を調整した導電性組成物を熱プレスで厚さ0.1mmのシート状に成形し、長方形に切り出して、その両端に常温乾燥の銀ペーストを塗布し、一対の電極を形成して抵抗特性測定用のサンプルを作製した。これらの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表4に示す。表4から明らかなように、20℃抵抗値が約8倍ほど増大したにも係わらず、20℃と50℃の抵抗値の比率はほぼ一定という結果が得られた。
なお、実施の形態3の比較サンプルとして以下に示す比較サンプル3aを作製した。比較サンプル3aはオレフィン系熱可塑性エラストマーの代わりに、エチレンプロピレンターポリマーを15部加えた。以降、実施の形態3と同様にして抵抗体を作製した。比較サンプル3aの20℃の面積抵抗値は48.3kΩ/□であり、20℃と50℃の抵抗値の比率は2.52倍であった。比較サンプル3aでは、抵抗調整重合体を15部添加することにより、実施の形態3の場合よりも大きく20℃の抵抗値が増大し、それと共に、抵抗温度特性の変化比率も増大する結果となっている。これは従来の技術で示した、カーボンブラックの組成比による抵抗値の調整と同様の現象であり、同様のメカニズムが作用した結果である。
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。実施の形態2と比較すると、導電性組織はと同一であり、抵抗調整重合体をスチレン系熱可塑性エラストマーからオレフィン系熱可塑性エラストマーに変更したものである。このオレフィン系熱可塑性エラストマーはエチレン・プロピレン系ゴムとポリプロピレンの動的架橋によって製造されたものである。この組成物は、エチレン・プロピレン系ゴムの部分が架橋されてゴム弾性を示すと共に溶融しなくなるが、ポリプロピレン部分は架橋せず、むしろ溶融粘度が低下する性質がある。したがって、両者が混在する動的架橋によるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、溶融しないエチレン・プロピレン系ゴムを内部に保有する熱溶融性のポリプロピレンとなる。上述した導電性組織とこの抵抗調整重合体を熱溶融させて混合すると、抵抗調整重合体中に存在するポリプロピレンは結晶性の重合体であり、架橋されていないために導電性組織に対して熱溶融混合が容易な溶融混合性部分となる。エチレン・プロピレン系ゴムは、非結晶性の重合体であり、架橋されているために導電性組織に対して熱溶融混合が困難な難溶融混合性部分となる。このポリプロピレンからなる溶融混合性部分とエチレン・プロピレン系ゴムからなる難溶融混合性部分は化学的に結合されて複合重合体となっているために、熱溶融状態においても容易に分離したり、混合したりしない安定な組成物となっている。したがって、抵抗調整重合体に含まれる溶融混合性部分が導電性組織の細部にまで分散しようとしても、抵抗調整重合体に含まれる難溶融混合性部分が導電性組織の細部にまで分散できないために、溶融混合性部分も導電性組織の細部にまで入り込めない。このために、抵抗調整重合体を添加しても導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織がオレフィン系熱可塑性エラストマー中に分散することもなく、オレフィン系熱可塑性エラストマーは実質的に電気絶縁性であり、オレフィン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、オレフィン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。また、特に、このオレフィン系熱可塑性エラストマーに含まれるエチレン・プロピレン系ゴム部分は非結晶性重合体であり、オレフィン系熱可塑性エラストマーの結晶性を緩和するので、オレフィン系熱可塑性エラストマーの結晶融解に伴う比容の急激な変化をもたらすこともなく、正抵抗温度特性を略一定に保つことができる。
(実施の形態4)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)52部、導電性微粉末としてカーボンブラック(アセチレンブラック)48部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させた後、架橋剤としてジクミールパ−オキサイド1部を添加し、さらに、これを150℃で60分の熱処理を施し、架橋された導電性組成物を得た。この導電性組成物は架橋後に、加熱ミキシングロール機で混練が可能であり、熱可塑性を損なわない範囲で架橋されたものであることが確認できた。さらに、この導電性組成物100部に対して、抵抗調整重合体として水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを0部、15部、30部、45部配合したものを、加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得た。この抵抗値を調整した導電性組成物を熱プレスで厚さ0.1mmのシート状に成形し、長方形に切り出して、その両端に常温乾燥の銀ペーストを塗布し、一対の電極を形成して抵抗特性測定用のサンプルを作製した。これらの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表5に示す。表5から明らかなように、抵抗値を約11倍ほど調整したにも係わらず、20℃と50℃の抵抗値の比率が、ほぼ一定であるという結果が得られた。
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。実施の形態2との差異は、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる導電性組織が架橋されている点であり、スチレン系熱可塑性エラストマーの抵抗調整重合体は同一である。導電性組織を架橋することによって、エチレン酢酸ビニル共重合体相互、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの間が化学結合する。導電性組成物が架橋されているためにスチレン系熱可塑性エラストマーからなる抵抗調整重合体と熱溶融混合する際に、容易に熱溶融混合しなくなる作用、すなわち、難熱溶融混合性を導電性組成物側に付与することができる。この導電性組織中にスチレン系熱可塑性エラストマーを錬り込むと、このスチレン系熱可塑性エラストマーはオレフィン系重合体との相溶性はあるが、導電性組成物が架橋されているために、溶融粘度が高く、結合力も強いために、短時間の熱溶融混合でその細部まで分散させることはできない。また、このスチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーであり、結晶性重合体であるスチレンと非結晶性重合体であるブタジエンのそれぞれのブロック構成単位を内部に持っているために、スチレン部分が融点以上で結晶性を失って溶融しても、ブタジエン部分は明確な融点はなく、溶融しても高粘度である。このように溶融時に高粘度の重合体のブロックを内部に持つスチレン系熱可塑性エラストマーを、導電性組織に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の細部までに分散しようとしても、そのブロックを崩すためには時間を要するために、通常の溶融混合では分散できない。このスチレン系熱可塑性エラストマー特有の内部構造と、架橋された導電性組織の強い結合力によって、導電性組織の細部までスチレン系熱可塑性エラストマーが入り込むことはできない。したがって、導電性組織とスチレン系熱可塑性エラストマーを溶融混合しても、導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現するカーボンブラックの微細部分の分散状態は影響を受けない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織がスチレン系熱可塑性エラストマー中に分散することもなく、スチレン系熱可塑性エラストマーは実質的に電気絶縁性であり、スチレン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定とな
る。この結果、スチレン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。また、特に、このスチレン系熱可塑性エラストマーに含まれるブタジエン部分は非結晶性重合体であり、スチレン系熱可塑性エラストマーの結晶性を緩和するので、スチレン系熱可塑性エラストマーの結晶融解に伴う比容の急激な変化をもたらすこともなく、正抵抗温度特性を略一定に保つことができる。
(実施の形態5)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)52部、導電性微粉末としてカーボンブラック(アセチレンブラック)48部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させた後、架橋剤としてジクミールパ−オキサイド1部を添加し、さらに、これを160℃で60分の熱処理を施し、架橋された導電性組成物を得た。次に、抵抗調整重合体としてオレフィン系熱可塑エラストマーを用意し、架橋された導電性組成物100部に対して、抵抗調整重合体を0部、15部、30部、45部配合したものを、加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得た。この抵抗調整導電性組成物をテトラヒドロナフタレンを用いて、ペースト状に溶解し、銀ペーストによる電極パターンを形成したポリエチレンテレフタレートのフィルム面にスクリーン印刷し、150℃の熱風乾燥炉で30分乾燥して抵抗体を作製した。これらの抵抗体の20℃における面積抵抗値及び20℃と50℃の抵抗値の比率を表6に示す。表6から明らかなように、抵抗値を約8倍ほど調整したにも係わらず、20℃と50℃の抵抗値の比率が、ほぼ一定であるという結果が得られた。
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。実施の形態3との差異は導電性組織が架橋されている点、抵抗調整導電性組成物がペースト化を経て、印刷、乾燥によって抵抗体加工される点である。導電性組織を架橋することによって、エチレン酢酸ビニル共重合体相互、あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの間が化学結合する。導電性組成物が架橋されているためにオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる抵抗調整重合体と溶融混合する際に、容易に混合しなくなる作用、すなわち、難熱溶融混合性を導電性組成物側に付与することができる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる抵抗調整重合体は、実施の形態3と同様、架橋されたエチレンプロピレン系ゴムが難溶融混合性部分となり、この難溶融混合性部分の存在により、抵抗調整重合体が導電性組成物の細部まで分散されるのを抑制する。また、テトラヒドロナフタレンのように溶解性の強い溶剤の存在下においても、導電性組成物及びエチレンプロピレン系ゴムが架橋されているために、この部分は容易に溶解しない。また、印刷後の乾燥時に溶剤と共に加熱された時点においても、架橋された導電性組成物及び架橋されたエチレンプロピレン系ゴムが難熱溶融混合性を保持し、この難溶融混合性部分の存在により、抵抗調整重合体が導電性組成物の細部まで分散されるのを抑制する。このように、溶剤の存在下でも、抵抗調整重合体は導電性組織内にあって正抵抗温度特性を発現する導電性組織のカーボンブラックの微細部分に入り込まないために、その分散状態に影響を与えない。また、添加量をさらに増量しても、この導電性組織内の分散状態は変化しない。また、逆に、導電性組織がオレフィン系熱可塑性エラストマー中に拡散することもなく、オレフィン系熱可塑性エラストマーは実質的に電気絶縁性であり、オレフィン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、導電性組織内で導電経路の遮断や導電経
路の迂回の作用が生じ、抵抗値は変動するが、抵抗温度特性の変化率は略一定となる。この結果、オレフィン系熱可塑性エラストマーの混合比率に応じて、抵抗値のみが変動し、抵抗温度特性は略一定となる。また、特に、このオレフィン系熱可塑性エラストマーは、結晶性重合体と非結晶性重合体の複合重合体であるために、結晶性重合体と非結晶性重合体の中間の比容の温度依存性を示し、正抵抗温度特性のメカニズムに大きく作用しないものと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態1から5、比較サンプル1a及び1bについて、抵抗調整重合体の添加量と抵抗値の関係を図1に、同じく、抵抗調整重合体の添加量と抵抗変化比率の関係を図2に示した。図1及び図2から明らかなように、抵抗調整重合体の添加量を増やすと抵抗値は増大する傾向は共通である。しかし、抵抗変化比率は、従来技術と実質的に同等と考えられる比較サンプル1a、1bと、実施の形態1から5とでは、明らかに区別されるものであって、導電性微粉末の添加量を調整するのではなく、抵抗調整重合体を添加することにより抵抗温度特性の変化比率を変えずに、抵抗値を調整できることが示されている。
なお、上記の実施の形態5では導電性組成物と抵抗調整重合体を加熱ミキシングロール機で混練して、抵抗値を調整した導電性組成物を得て、この抵抗調整導電性組成物をペースト状に溶解するものであった。しかしながら、導電性組成物と抵抗調整重合体は溶融混練時のみならず、溶剤の存在下でのペースト化においても、適度の溶融混合性と溶融混合制限性を保持するので、導電性組成物と抵抗調整重合体を別々にペースト化し、そのペーストを混合する方法でも、同等の特性を有する抵抗調整導電性組成物を得ることができる。当然ながら、抵抗調整導電性組成物をペースト化したものに、抵抗調整重合体のペーストをさらに追加して混合する方法でも有効である。
さらに、上記の実施の形態1から5では導電性微粉末としてカーボンブラックの一種であるアセチレンブラックを使用しているが、このカーボンブラックはストラクチャーが発達していて、カーボンブラックの粒子が大きく連なっており、導電性組織の比容にわずかな変化があってもカーボンブラックの導電経路は影響を受け難い。このような高ストラクチャーのカーボンブラックを添加すると、当然ながら、抵抗温度特性の変化比率は低下するが、抵抗値の安定性を高めることができる。高ストラクチャーのカーボンブラックを正抵抗温度特性の制御成分として適切な量を添加することによって、抵抗調整重合体を添加したときに生じる抵抗温度特性の変化比率の変動を小さくすることができるので、極めて有用である。正抵抗温度特性の制御成分としては、ここに示した高ストラクチャーのカーボンブラックだけでなく、カーボンブラックよりも粒子径が大きいグラファイトや導電性繊維等も導電性組織の比容にわずかな変化があっても、導電経路は影響を受け難く、適切な量を添加すると有用である。
さらに、上記の実施の形態1から5では結晶性重合体にエチレン酢酸ビニル共重合体を用いたが、この重合体は比較的低温域で大きな正抵抗温度特性を示す有用な重合体であるが、他に有用な結晶性重合体としては、オレフィン系ではエチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が有用であり、また、アイオノマー等のような特殊な重合体も有用である。また、オレフィン系のみならず、ナイロン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、シリコン系等も有用である。
以上のように、本発明にかかる正抵抗温度特性抵抗体は、導電性微粉末の添加量を調整するのではなく、抵抗調整重合体を添加することにより抵抗温度特性の変化比率を変えずに、抵抗値を調整できるものである。面状発熱体等に応用すれば、電極間隔を変えずに、
様々な電源電圧で同一の発熱特性を得ることが容易にできることになり、製品ごとに抵抗体材料を開発する必要がなくなり、極めて有用である。例えば、同一の構成、同一の設備で、100V及び200Vに対応した、同一の発熱特性を示す、正抵抗温度特性面状発熱体を、同一時期に提供できる。
本発明の第1から第5の実施の形態及び比較サンプル1a及び1bの抵抗値を示した特性図 本発明の第1から第5の実施の形態及び比較サンプル1a及び1bの抵抗値の変化比率を示した特性図 従来の抵抗体の抵抗温度特性を示した特性図

Claims (9)

  1. 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分としてなる導電性組織と、前記導電性組織に添加される抵抗調整重合体からなり、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体であり、前記難溶融混合性部分の存在によって前記抵抗調整重合体は前記導電性組織の細部までの混合が制約され、前記抵抗調整重合体を添加して抵抗値の調整を行った時に、抵抗温度特性の変化比率が略一定を保持する正抵抗温度特性抵抗体。
  2. 抵抗調整重合体の溶融混合性部分が結晶性の重合体であり、難溶融混合性部分が非結晶性の重合体であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分がブロック状に形成された複合重合体である請求項1に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  3. 抵抗調整重合体の溶融混合性部分が結晶性の重合体の非架橋部分であり、難溶融混合性部分が結晶性の重合体の架橋部分であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分が化学結合された複合重合体である請求項1に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  4. 抵抗調整重合体の溶融混合性部分は結晶性の重合体であり、難溶融混合性部分は架橋された非結晶性の重合体であり、前記溶融混合性部分と前記難溶融混合性部分が化学結合された複合重合体である請求項1に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  5. 導電性組織が架橋されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  6. 導電性微粉末が正抵抗温度特性の制御成分を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  7. 制御成分に高ストラクチャーのカーボンブラックを含んでなる請求項6に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  8. 抵抗調整重合体を添加した導電性組織に溶剤を介在させて流動性を付与し、これを塗布乾燥して形成する抵抗体であって、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して、溶剤存在下においても溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
  9. 導電性組織及び抵抗調整重合体それぞれに、溶剤を介在させて流動性を付与した状態で混合したものを塗布乾燥して形成する抵抗体であって、前記抵抗調整重合体は前記導電性組織に対して、溶剤存在下においても溶融混合性部分と難溶融混合性部分を保有する複合重合体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
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