JP4165113B2 - 正抵抗温度特性抵抗体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己温度制御発熱体、温度センサー、過電流保護装置などに用いられる正抵抗温度特性を有する抵抗体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の抵抗体としては、例えば、特開昭51−32984号公報及び特開昭52−50596号公報に記載されるようなものがあった。特開昭51−32984号公報では、樹脂を結合剤とし、これに導電粉末あるいは導電粉末と充填剤粉末との混合体を分散させたものを、有機過酸化物あるいは電離性放射線によって架橋し、これを粉砕し、他の樹脂結着剤に分散させることによって形成するものであった。また、特開昭52−50596号公報では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、あるいはこれらの材料の共重合体に導電性粉末を分散させた後粉砕し、この粉体と親和性を示す液体を含有する非結晶性重合体溶液に混合分散させて得たペーストを支持基材に塗布乾燥して形成するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成では、抵抗体はペーストを加工して、印刷や塗布などの方法によって塗膜を形成する方式が主流であって、特に、抵抗体を50μm程度の膜厚に仕上げるには、ペースト塗布に限られていた。ペーストの利点は、印刷やコーティングなど加工性と精度が優れていること、基材に対する密着性が優れていることである。その反面、溶剤が基材を侵すために、基材の材質が限定されるという欠点がある。特に、伸縮性や風合いなどの新たな附加機能を基材に求めるような場合は、基材は多様な素材から構成されることになる。そのような構成材料を侵さない溶剤を選定することは容易でなく、特に、正抵抗温度特性抵抗体を発現する結晶性重合体をペースト化できる溶剤は、溶解性が強く、これに耐える基材は限られていた。また、溶剤を乾燥するためには、所定の温度条件が必要であり、その熱による基材の収縮や劣化にも注意を払う必要があった。さらに、ペースト塗布方式では膜厚に制約があり、膜厚が50μmを超えると、数回に分けて塗布するなど、工程上の課題があった。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、伸縮性や風合いなどの機能性素材からなる基材上に、基材の諸物性を損なうことなく、優れた正抵抗温度特性の抵抗体を形成する手段を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の抵抗体は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、基材面と一体に結合して形成するものである。このことによって、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする重合体組成物はペーストとして基材に塗布されるのではなく、基材面に粉体として膜状に塗布され、基材面と一体に結合して形成されるために、溶剤に起因する課題が一挙に解消する。また、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0006】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合して形成するものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。この正抵抗温度特性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加するとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合して形成するものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。この材料を架橋した重合体組成物は様々なストレスに対して抵抗特性が安定化し、電気、物理、化学的特性も改善される。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、結晶性重合体と導電性微粉末から形成される組成物は、結晶性重合体中に導電性微粉末を多量に含有するために硬く、脆い性質がある。一方、非結晶性重合体は非常に柔軟な重合体であり、これをを加えた重合体組成物に柔軟性を付与することができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加するとともに、有機過酸化物または電離性放射線によって架橋されてなる架橋重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、結晶性重合体と導電性微粉末から形成される組成物は、結晶性重合体中に導電性微粉末を多量に含有するために硬く、脆い性質がある。一方、非結晶性重合体は非常に柔軟な重合体であり、これをを加えた重合体組成物に柔軟性を付与することができる。また、架橋された重合体組成物は、非結晶性重合体の柔軟性組織を取り込んで架橋されるために、柔軟性重合体組成物となり、様々なストレスに対して抵抗特性が安定化し、電気、物理、化学的特性も改善される。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、特に、請求項3、4いずれか1項記載の非結晶性重合体は熱可塑エラストマで構成するものである。このことにより、熱可塑性エラストマは結晶性重合体と溶融混練が可能な半面、既に架橋されたエラストマを内包するために、架橋しなくても、あるいは、低レベルでの架橋処理を施すだけで、正抵抗温度特性に加えて、柔軟性を兼ね備えることができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有するとともに柔軟性に優れた抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0011】
請求項6に記載の発明は、特に、請求項4記載の非結晶性重合体は、未架橋エラストマからなるものである。このことにより、未架橋のエラストマは混練性が極めて良好であり、架橋後には極めて優れた柔軟性を発揮する材料であることから、架橋後の重合体組成物は、正抵抗温度特性に加えて、柔軟性を兼ね備えることができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有するとともに柔軟性に優れた抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0012】
請求項7に記載の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする組成物と、前記組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、接着性重合体は接着性に優れた重合体であり、これを加えた重合体組成物は接着性の重合体組成物となる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤で接着性の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0013】
請求項8に記載の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とするとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物と、前記架橋重合体組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、結晶性重合体と導電性微粉末から形成される組成物を架橋した架橋重合体組成物は、熱可塑性を低下させると共に、構成材料の相互の化学結合が進み、様々なストレスに対して抵抗特性が安定化する。一方、接着性重合体は接着性に優れた重合体であり、この架橋重合体組成物と接着性重合体の混練物に接着性を付与することができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤で接着性の粉体を基材面にに膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0014】
請求項9に記載の発明は、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とするとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物の微粉砕物と、前記架橋重合体組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、結晶性重合体と導電性微粉末から形成される組成物を架橋した架橋重合体組成物は、熱可塑性を失うと共に、構成材料の相互の結合が進み、様々なストレスに対して抵抗特性が安定化する。この架橋重合体組成物を熱溶融加工することは容易でないが、微粉砕することによって、別の重合体中に分散することが可能となる。一方、接着性重合体は接着性を有する重合体であり、この架橋重合体組成物の微粉砕物と接着性重合体の混練物を一体の組成物とすることができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤で接着性の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0015】
請求項10に記載の発明は、特に、請求項7、8、9いずれか1項記載の接着性重合体は熱可塑エラストマからなるものである。このことにより、結晶性重合体はその融点近傍の急激な比容積の増大により、導電性微粉末の導電経路を減少させ、抵抗値を急激に増大させる。また、熱可塑性エラストマは溶融混練が可能な半面、既に架橋されたエラストマを内包するために、架橋しなくても優れた柔軟性を付与することができる重合体である。また、熱可塑性エラストマは、多くの種別があり、結晶性重合体の種別に応じて接着性のある材料を選定することができる。これらの重合体と導電性微粉末とから構成される重合体組成物は、正抵抗温度特性に加えて、柔軟性を兼ね備えることができる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有するとともに柔軟性に優れた抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0016】
請求項11に記載の発明は、特に、請求項7、8、9いずれか1項に記載の接着性重合体は結晶性重合体よりも高温域に融点を持つ結晶性重合体からなるものである。接着性重合体に高融点の結晶性重合体を選定すれば、粉体の保存や粉体加工時の発熱などによる粉体同士の熱溶着を防止できるとともに、高温域における正抵抗温度特性を付与することができる。このように、特性面と加工面でのさらなる改善を図ることができる。
【0017】
請求項12に記載の発明は、特に、請求項2、4、8、9いずれか1項に記載の結晶性重合体は架橋高分子型結晶性重合体と架橋分解型結晶性重合体からなるものである。このことにより、架橋した後の熱溶融結合性を改善することができる。この場合、高密度ポリエチレンは架橋によって高分子化し、溶融しにくくなるが、ポリプロピレンは架橋によってむしろ低分子化し、熱溶融しやすくなる。これらの架橋高分子型結晶性重合体と架橋分解型の結晶性重合体から形成される粉体は、架橋度を高めても、熱溶融結合が可能である。したがって、架橋による抵抗値の安定性と熱溶融結合性を両立させることが可能となる。このように、特性面と加工面でのさらなる改善を図ることができる。
【0018】
請求項13に記載の発明は、特に、請求項2、4、8、9いずれか1項記載の結晶性重合体は、実使用温度よりも高温域に融点を持つ結晶性重合体と、実使用温度近傍に融点を持つ結晶性重合体で構成するものである。このことにより、架橋重合体組成物は実使用温度よりも高温域で正抵抗温度特性が得られる重合体と、実使用温度域で正抵抗温度特性が得られる重合体との複合材料となり、使用温度域で大きな抵抗温度係数が得られると共に、より高温域でも抵抗温度特性が確保できる作用がある。また、これらの重合体は架橋によって結合しているために、分子量分布の広い一体の重合体として機能し、熱的にも安定する。この架橋重合体組成物は架橋によって、電気、物理、化学特性が安定化したものとなる。この物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面に膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0019】
請求項14に記載の発明は、特に、請求項2記載の架橋重合体組成物は、熱可塑性を失わない水準で架橋されるものであり、このことにより、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、架橋による高分子化が制限されるために、熱可塑性を失わず、柔軟性を保持している。また、請求項4記載の、結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を失わない水準で架橋されるものであり、このことにより、非結晶性重合体が柔軟性を附加するために、一層の柔軟性を保持している。また、請求項8記載の、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を失わない水準で架橋されるものであり、このことにより、熱溶融加工が可能であり、接着性重合体を添加することによって、架橋重合体組成物に接着性を付与できる。これらの架橋重合体組成物の物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、もしくは、接着結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、柔軟性で正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0020】
請求項15に記載の発明は、特に、請求項14記載の熱可塑性を失わない水準の架橋は、大気中で比表面積10/cm以上の形態にて架橋されることによるものである。このことにより、大気中で架橋処理を行なうと、その表面では、架橋反応を引き起こすラジカルが大気中の酸素によって阻害され、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じず、導電性微粉末の表面を活性化させ、導電性微粉末と重合体間のグラフト結合をするに留まる。比表面積が大きいと酸素にさらされる部分が大きく、熱可塑性を失うような架橋に至らず、柔軟性を保持している。この結果、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を失わず、柔軟性を保持している。また、結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物の場合は、非結晶性重合体が柔軟性を附加するために、一層の柔軟性を保持している。また、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を保持しているために、熱溶融加工が可能であり、接着性重合体を添加することによって、架橋重合体組成物に接着性を付与できる。これらの架橋重合体組成物の物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、もしくは、接着結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、柔軟性で正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0021】
請求項16に記載の発明は、特に、請求項14記載の架橋は、有機過酸化物によるものであり、熱可塑性を失わない水準の架橋は、大気中で、混練時間中に活性酸素が半減する温度以上で混練することによりなされるものである。このことにより、有機過酸化物を添加した重合体組成物を大気中で、混練時間中に活性酸素が半減する温度以上で混練すると、架橋剤は混練中に反応するが、架橋反応を引き起こすラジカルが大気中の酸素によって阻害され、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じず、導電性微粉末の表面を活性化させ、導電性微粉末と重合体間のグラフト結合をするような反応が生じる。したがって、熱可塑性を失うような架橋に至らず、柔軟性も保持される。この結果、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を失わず、柔軟性を保持している。また、結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物の場合は、非結晶性重合体が柔軟性を附加するために、一層の柔軟性を保持している。また、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする架橋重合体組成物は、熱可塑性を保持しているために、熱溶融加工が可能であり、接着性重合体を添加することによって、架橋重合体組成物に接着性を付与できる。これらの架橋重合体組成物の物性は粉体化した後も保持され、この無溶剤の粉体を基材面にに膜状に塗布し、基材面と一体に熱溶融結合することにより、もしくは、接着結合することにより、基材が溶剤に侵されることなく、柔軟性で正抵抗温度特性を有する抵抗体が形成される。また、基材からの溶出成分が正抵抗温度特性を阻害することもなく、厚膜の形成も非常に容易であり、工程上の課題も解決できる。
【0022】
【実施例】
以下本発明の実施例について、説明する。
【0023】
(実施例1)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(エバテートD2011、住友化学製)45部、導電性微粉末としてカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径800nm、三菱化学製)55部を用意した。まず、120℃の加熱ミキシングロールでエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックを混練した。この混練物を粗粉砕した後、冷凍粉砕にて平均粒子径20μmの粉体を作製した。この粉体をウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に噴霧し、塗布膜厚約55μmの粉体層を形成した。さらに、遠赤外線ヒータで粉体層を加熱し、粉体同志、あるいは粉体と複合繊維シートの間を熱融着によって仮接着した。その後、表面温度150℃のフッ素樹脂処理ロールで圧着し、粉体同志、あるいは粉体と複合繊維シートの間を一体に熱融着させた。この熱融着された抵抗体層の厚みは約30μmであった。この熱融着シートを縦100mm、横100mmに切り出し、一対の常温乾燥の銀ペーストを印刷し、電極を形成した。その結果、20℃の面積抵抗値は550Ω近辺であり、抵抗温度特性の変化桁数は20℃と120℃で4桁を越える変化が見られた。また、この複合繊維シートはウレタン繊維との複合による風合いの優れた素材であるが、溶剤を含む抵抗ペーストを塗布乾燥した時のように、ウレタン素材が溶剤によって溶解したような痕跡は全くなく、外観や風合いを損なうことはなかった。また、面積抵抗値が低く、抵抗値の変化桁数も大きいことから、ウレタン素材が抵抗層へ溶出して、抵抗値を増大させたり、正抵抗温度特性を阻害するような現象が解消されていることを確認した。
【0024】
以上のように構成された抵抗体において、以下、その作用を説明する。エチレン酢酸ビニル共重合体は結晶性の重合体であって、特に、その融点近傍において急峻な抵抗値の増大をもたらす。また、平均粒子径800nmのファーネス系のカーボンブラックは大きな正抵抗温度特性の変化桁数をもたらす導電性微粉末であり、エチレン酢酸ビニル共重合体の融点近傍での比容の急激な増大によって、抵抗値を大きく増大させる。上記のエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物の特性は粉体化しても保持され、粉体の粒子径が小さいため、噴霧によって、基材面に薄肉の粉体層を形成できる。この粉体層は熱可塑性の重合体であるから、融点以上に加熱し、加圧することによって、相互に融着させると共に、緻密な層に仕上げることができる。また、粉体の複合繊維シートとの接触面は、粉体の一部が繊維シート内部に拡散するので、熱融着後には一体に接合して、剥離不能となる。このように、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物の特性がそのまま再現される。また、熱ロールによる圧延や熱プレスによるシート成形では100μm以下の薄肉成形が容易でないが、粉体化して塗布することによって、印刷レベルの膜厚を実現できる。本実施例に示した抵抗体を構成する材料は以上に示したような作用を有する。
【0025】
以上のように、本実施例においては、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物を粉体化し、ウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に粉体層を形成し、これを加熱及び加圧して複合繊維シート面に緻密かつ薄肉の抵抗体膜を形成するものである。このことにより、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物の特性がそのまま再現される。その結果、基材材料の制約が少なく、印刷に匹敵する薄い膜厚、低い面積抵抗値、大きな抵抗値変化桁数を有する正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。
【0026】
また、本実施例の、結晶性重合体として、エチレン酢酸ビニル共重合体を示したが、他に、低密度ポリエチレン、鎖状ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート、アイオノマなどのオレフィン系の結晶性重合体、さらに、ポリ弗化ビニリデン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂など、オレフィン系以外の結晶性重合体でも同様の作用と効果を奏するものである。
【0027】
また、本実施例の、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物に、例えば、オレフィン系の熱可塑エラストマ(TPE1900、住友化学製)などの非結晶性重合体を加えることにより、柔軟性を有する組成物を形成することができる。オレフィン系の熱可塑エラストマは、既に架橋されたエチレンプロピレンターポリマを主要成分とし、熱可塑性を付与するポリプロピレンが添加されている重合体であるために、熱可塑性でありながら優れたエラストマでもあるという非結晶性重合体である。エチレン酢酸ビニル共重合体とオレフィン系の熱可塑エラストマとは分散が容易であり、その分散物は柔軟で、正抵抗温度特性の変化桁数が低下しないという特長がある。この物性は粉体化しても保持されるので、この粉体を用い、本実施例と同様の加工法で抵抗体を加工すれば、柔軟性を兼ね備えた正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。なお、熱可塑性エラストマとしては、オレフィン系に限定されるものでなく、これ以外にも、エステル系、ウレタン系、スチレン系、アミド系などの熱可塑エラストマがあり、エチレン酢酸ビニル共重合体との組合せは勿論、その他の結晶性重合体との組み合わせで、これらのエラストマでも同様の作用と効果を奏するものである。
【0028】
また、本実施例の、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物に、例えば、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を加えることにより、帯電性能を付与することができる。帯電性能を付与することによって、粉体を電磁気的に操作することが可能となる。本実施例に示したように、粉体を基材面に単に噴霧して形成するのではなく、粉体に電荷を帯びさせて、所望の方向に導くとともに、基材に極性を与えて、粉体を基材面に導くことができる。このように、帯電性能が付与されると、粉体の飛散による損失を防ぐと共に、より精密に塗膜の形成ができるようになる。さらに、基材面に所望のパターンで帯電した部分と帯電しない部分を形成し、この基材面に粉体を導いて、塗布すれば、パターンを描くことも可能になる。なお、帯電制御剤としては、4級アンモニウム塩に限定されるものではなく、例えば、界面活性剤や、イオン性、分極性などの材料でも同様の作用と効果を奏するものである。
【0029】
(実施例2)
結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(エバテートD2011、住友化学製)52.5部、導電性微粉末としてカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径800nm、三菱化学製)57.5部、架橋剤としてジクミールパーオキサイド0.5部を用意した。まず、120℃の加熱ミキシングロールでエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックを混練した。カーボンブラックを均一に分散させた後に、ジクミールパーオキサイドを分散し、混練を完了した。この混練物を1mm厚みのシートに成形し、180℃の熱風乾燥炉で60分間熱処理し、架橋剤を完全に反応させた。さらに、このシートを粗粉砕した後、冷凍粉砕にて平均粒子径20μmの粉体を作製した。以下、実施例1と同一の条件で、この粉体をウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に形成した。20℃の面積抵抗値は650Ω近辺と、十分に低く、抵抗温度特性の変化桁数は20℃と120℃で3.5桁を越える、十分に大きな変化が見られた。また、この複合繊維シートはウレタン繊維との複合による風合いの優れた素材であるが、溶剤を含む抵抗ペーストを塗布乾燥した時のように、ウレタン素材が溶剤によって溶解したような痕跡は全くなく、外観や風合いを損なうことはなかった。また、面積抵抗値が低く、抵抗値の変化桁数も大きいことから、ウレタン素材が抵抗層へ溶出して、抵抗値を増大させたり、正抵抗温度特性を阻害するような現象が解消されていることを確認した。
【0030】
以上のように構成された抵抗体において、以下、その作用を説明する。実施例1と異なる点は、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物が架橋されている点である。架橋により、組成物は様々なストレスに対して抵抗特性が安定化し、電気、物理、化学的特性も改善される。本実施例では、大気中でシート厚み1mmの形態にて架橋している。大気中で架橋処理を行なうと、その表面では、架橋反応を引き起こすラジカルが大気中の酸素によって阻害され、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じず、導電性微粉末の表面を活性化させ、導電性微粉末と重合体間のグラフト結合を生じる。このグラフト反応によって、導電機構は安定化し、長期の信頼性が可能となる。この反応は比表面積が大きく、酸素にさらされる比率が大きいときに顕著となる。シート厚み2mm以上となると、酸素が内部までに拡散できる厚み限界を超えるために、急激に、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じて、熱可塑性は失われる。シート厚み2mmは、シート周囲の厚み部分の面積を除くと、比表面積では10/cmとなる。本実施例ではシート厚みが1mmであるので、熱可塑性を失うような架橋に至らない。したがって、本実施例の粉体は、実施例1と同様な加工が可能であり、実施例1と同様の作用を有すると共に、架橋による導電機構の安定化、長期信頼性の改善の作用を有する。
【0031】
以上のように、本実施例においては、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物を、熱可塑性を失わない水準の架橋を施し、粉体化し、ウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に粉体層を形成し、これを加熱及び加圧して複合繊維シート面に緻密かつ薄肉の抵抗体膜を形成するものである。このことにより、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物を架橋した時の特性がそのまま再現される。その結果、基材材料の制約が少なく、印刷に匹敵する薄い膜厚、低い面積抵抗値、大きな抵抗値変化桁数、長期信頼性を有する正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。
【0032】
また、本実施例の結晶性重合体として、エチレン酢酸ビニル共重合体を示したが、他に、低密度ポリエチレン、鎖状ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート、アイオノマなどのオレフィン系の結晶性重合体、さらに、ポリ弗化ビニリデン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂など、オレフィン系以外の結晶性重合体でも同様の作用と効果を奏するものである。
【0033】
また、本実施例においては、架橋剤の混練を120℃で行なったが、この温度であれば、ジクミールパーオキサイドの活性酸素の量が半減するまでの時間は約7時間であり、一般的な混練時間であれば殆ど反応しない条件である。このように、混練中に殆ど反応しないようにするためには、活性酸素の量が半減するまでの時間が、混練時間よりも十分に長くなるような温度で混練すれば良い。ジクミールパーオキサイドの場合、活性酸素が0.5時間で半減する温度は140℃であり、この温度以下であれば、一般的な混練時間では架橋剤を殆ど反応させずに分散が可能である。
【0034】
また、本実施例においては、1mm厚みのシート形状で、空気中で架橋処理を行ったが、混練中に架橋することも可能である。この場合、加熱ミキシングロール機などで、架橋剤が反応開始する温度以上で所定時間混練すると、架橋剤が反応する一方で、空気中の酸素が混練物の内部まで拡散するために、ラジカルが生成しても、重合体の主鎖が結合するような架橋には至らず、カーボンブラックの表面を活性化し、重合体とカーボンブラックがグラフト結合する形態の架橋反応がより多く生じる。このような条件を満たす混練温度は、混練時間中に架橋剤の活性酸素が半減する温度以上を選定すれば良い。ジクミールパーオキサイドの場合の例を示すと、活性酸素が0.5時間で半減する温度は140℃であるので、140℃で0.5時間以上の混練条件を設定すれば良い。また、活性酸素が0.1時間で半減する温度は153℃であるので、153℃で0.1時間以上の混練条件を設定すれば良い。
【0035】
また、本実施例の、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物に、例えば、エチレンプロピレンターポリマ(EPT1045、三井化学製)などの非結晶性重合体を加えることにより、柔軟性を有する組成物を形成することができる。エチレンプロピレンターポリマは、未架橋のエラストマであって、加工後に、架橋することによって優れたエラストマとなる重合体である。エチレン酢酸ビニル共重合体とエチレンプロピレンターポリマは分散性が良く、カーボンブラックを分散した組成物は大きな正抵抗温度特性の変化桁数が得られる。この組成物を架橋することにより、柔軟性が付与される。この組成物の物性は粉体化しても保持されるので、この粉体を用い、本実施例と同様の加工法で抵抗体を加工すれば、柔軟性を兼ね備えた正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。なお、非結晶性重合体は、エチレンプロピレンターポリマに限定されるものでなく、他にも、ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、などの未架橋エラストマでも同等の作用がある。さらに、共重合ポリエステル、共重合ナイロン、共重合ウレタンなど、結晶性重合体と相容性が多少ある非結晶性重合体でも同等の作用を有する。
【0036】
また、本実施例の、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物に、例えば、オレフィン系の熱可塑エラストマ(TPE1900、住友化学製)などの非結晶性重合体を加えることにより、柔軟性を有する組成物を形成することができる。オレフィン系の熱可塑エラストマは、既に架橋されたエチレンプロピレンターポリマを主要成分とし、熱可塑性を付与するポリプロピレンが添加されている重合体であるために、熱可塑性でありながら優れたエラストマでもあるという非結晶性重合体である。エチレン酢酸ビニル共重合体とオレフィン系の熱可塑エラストマとは分散が容易であり、その分散物は柔軟で、正抵抗温度特性の変化桁数が低下しないという特長がある。このような非結晶性重合体は、既に架橋されているために、本実施例に示したような熱可塑性を失わない水準の架橋、すなわち、弱い架橋を施す場合には理想的な重合体である。このような非結晶性重合体を含む組成物の物性は粉体化しても保持されるので、この粉体を用い、本実施例と同様の加工法で抵抗体を加工すれば、柔軟性を兼ね備えた正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。なお、熱可塑性エラストマとしては、オレフィン系に限定されるものでなく、これ以外にも、エステル系、ウレタン系、スチレン系、アミド系などの熱可塑エラストマがあり、エチレン酢酸ビニル共重合体との組合せは勿論、その他の結晶性重合体との組み合わせで、これらのエラストマでも同様の作用と効果を奏するものである。
【0037】
また、本実施例の、結晶性重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体であるが、例えば、この抵抗体の使用温度が60℃近辺であれば、融点が60℃近辺にあるエチレン酢酸ビニル共重合体と、融点が使用温度よりも高く、130℃近辺にある高密度ポリエチレンを併用することによって、抵抗体の使用可能温度範囲を拡大するとともに抵抗温度特性を調整することが可能となる。この場合、エチレン酢酸ビニル共重合体は使用温度域において、必要な抵抗温度係数を確保するとともに、高密度ポリエチレンが使用温度よりも高温域における抵抗温度係数を確保する作用がある。したがって、熱変形温度は高密度ポリエチレンと同等でありながら、低温域で大きな抵抗温度係数を有する抵抗体となる。また、これらの融点の異なる結晶性重合体は架橋によって化学結合しているために、長期の使用においても、分離することなく抵抗特性が安定する。さらに、融点の範囲が広いために、粉体の熱溶融結合が容易になるなど、極めて有用な作用と効果を奏するものである。
【0038】
また、本実施例の、結晶性重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体であるが、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体とポリプロピレンを併用することによって、架橋した後の熱溶融結合性を改善することができる。この場合、エチレン酢酸ビニル共重合体は架橋によって高分子化し、溶融しにくくなるが、ポリプロピレンは架橋によってむしろ低分子化し、熱溶融しやすくなる。これらの架橋高分子型結晶性重合体と架橋分解型の結晶性重合体から形成される粉体は、架橋度を高めても、熱溶融結合が極めて容易にできる。したがって、架橋による抵抗値の安定性と熱溶融結合性を両立させることが可能であり、極めて有用な作用と効果を奏するものである。
【0039】
また、本実施例の、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックと架橋剤からなる組成物に、例えば、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を加えることにより、帯電性能を付与することができる。帯電性能を付与することによって、粉体を電磁気的に操作することが可能となる。本実施例に示したように、粉体を基材面に単に噴霧して形成するのではなく、粉体に電荷を帯びさせて、所望の方向に導くとともに、基材に極性を与えて、粉体を基材面に導くことができる。このように、帯電性能が付与されると、粉体の飛散による損失を防ぐと共に、より精密に塗膜の形成ができるようになる。さらに、基材面に所望のパターンで帯電した部分と帯電しない部分を形成し、この基材面に粉体を導いて、塗布すれば、パターンを描くことも可能になる。なお、帯電制御剤としては、4級アンモニウム塩に限定されるものではなく、例えば、界面活性剤や、イオン性、分極性などの材料でも同様の作用と効果を奏するものである。また、本実施例のエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックと架橋剤からなる組成物に、非結晶性重合体を加えた組成物でも同様の作用と効果をもたらすものである。
【0040】
(実施例3)
結晶性重合体として高密度ポリエチレン(ハイゼックス2100J、三井化学製)35部、接着性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(エバテートH4011、住友化学製)15部、導電性微粉末としてカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径800nm、三菱化学製)50部を用意した。まず、160℃の加熱ミキシングロールで高密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体を混練し、次いで、カーボンブラックを均一に分散して混練を完了した。さらに、この混練物を粗粉砕した後、冷凍粉砕にて平均粒子径20μmの粉体を作製した。以下、実施例1と同一の条件で、この粉体をウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に形成した。20℃の面積抵抗値は250Ω近辺と、十分に低く、抵抗温度特性の変化桁数は20℃と150℃で4.5桁を越える、十分に大きな変化が見られた。また、この複合繊維シートはウレタン繊維との複合による風合いの優れた素材であるが、溶剤を含む抵抗ペーストを塗布乾燥した時のように、ウレタン素材が溶剤によって溶解したような痕跡は全くなく、外観や風合いを損なうことはなかった。また、面積抵抗値が低く、抵抗値の変化桁数も大きいことから、ウレタン素材が抵抗層へ溶出して、正抵抗温度特性を阻害するような現象が解消されていることを確認した。
【0041】
以上のように構成された抵抗体において、以下、その作用を説明する。高密度ポリエチレンは高結晶化度の結晶性重合体であって、特に、その約130℃の融点近傍において急峻な比容積の増大をもたらす。また、平均粒子径800nmのファーネス系のカーボンブラックは大きな正抵抗温度特性の変化桁数をもたらす導電性微粉末であり、高密度ポリエチレンの融点近傍での比容の急激な増大によって、抵抗値を大きく増大させる。また、エチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル比率が20%、融点が84℃、メルトフローレートが20のグレードであり、高密度ポリエチレンよりも低い温度で熱溶融して、被着体などに溶着する性質を付与する。また、エチレン酢酸ビニル共重合体は、結晶性重合体でもあり、その材料固有の抵抗温度特性を示す。エチレン酢酸ビニル共重合体の融点を、使用温度域に設定すれば、使用温度域における抵抗温度係数を高める作用もある。
【0042】
これらの材料から構成される組成物の物性と特性は、粉体化しても保持され、粉体の粒子径が小さいため、噴霧によって、基材面に薄肉の粉体層を形成できる。この粉体層は熱可塑性の重合体であり、特に、低温で溶融し、熱接着に優れた接着性重合体を含んでいるために、接着性重合体の融点以上に加熱し、加圧することによって、相互に融着させると共に、緻密な層に仕上げることができる。この粉体を塗布した複合繊維シートとの接触面は、粉体の一部が繊維シート内部に拡散するので、熱融着後には一体に接合して、剥離不能となる。このように、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物の特性がそのまま再現される。また、熱ロールによる圧延や熱プレスによるシート成形では100μm以下の薄肉成形が容易でないが、粉体化して塗布することによって、印刷レベルの膜厚を実現できる。
【0043】
以上のように、本実施例においては、高密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物を、粉体化し、ウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に粉体を塗布し、これを加熱及び加圧して複合繊維シート面に緻密かつ薄肉の抵抗体膜を形成するものである。そして、低融点かつ高流動性のエチレン酢酸ビニル共重合体が接着性重合体として添加されているために、加熱及び加圧時の膜形成性ならびに接着性が大幅に改善されるものである。無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートの構成材料の一部が溶出することもなく、高密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックからなる組成物の特性がそのまま再現される。その結果、基材材料の制約が少なく、印刷に匹敵する薄い膜厚、低い面積抵抗値、大きな抵抗値変化桁数、長期信頼性を有する正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。
【0044】
なお、本実施例では、接着性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体を示したが、この重合体に限定されるものではなく、結晶性重合体と導電性微粉末との混練物に接着性を示すと共に、それ自身が相互に接着する重合体の中から選定された重合体でも、同様の作用と効果を奏するものである。特に、本実施例のように、結晶性重合体よりも低融点の結晶性重合体を接着性重合体に選定すれば、低温域での熱溶融性と、低温域での正抵抗温度特性を付与することができるが、高融点の結晶性重合体を選定すれば、粉体の保存や粉体加工時の発熱などによる粉体同士の熱溶着を防止できるとともに、高温域における正抵抗温度特性を付与することができる。その中でも、特に、融点が165℃近辺の高温域にあるポリプロピレンは、通常の粉体加工や保存温度では熱溶融によって溶着することがなく、一方で、塗布された粉体を熱ロールなどによって熱溶融結合することが容易な結晶性重合体であり、極めて有用な材料である。また、オレフィン熱可塑エラストマなどの熱可塑エラストマを使用すれば、熱溶融結合するだけでなく、柔軟性を付与できるので、さらに有用である。
【0045】
また、本実施例で、接着性重合体として使用したエチレン酢酸ビニル共重合体に、例えば、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を加えることにより、粉体に帯電性能を付与することができる。帯電性能は導電性によって打ち消される場合があるが、接着性重合体部分に添加することにより、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる導電性の組織とは別の、非導電性部分に分散されるために、効果的に帯電性能を付与することができる。適正な帯電性能を付与された粉体は、電磁気的に操作することが可能になり、数多くの好ましい結果をもたらす。例えば、本実施例に示したように、粉体を基材面に単に噴霧して形成するのではなく、粉体に電荷を帯びさせて、所望の方向に導くとともに、基材に極性を与えて、粉体を基材面に導くことができるようになる。このように、帯電性能が付与されると、粉体の飛散による損失を防ぐと共に、より精密な塗膜の形成ができるようになる。さらに、基材面に所望のパターンで帯電した部分と帯電しない部分を形成し、この基材面に粉体を導いて、塗布すれば、パターンを描くことも可能になる。
【0046】
(実施例4)
結晶性重合体として高密度ポリエチレン(ハイゼックス2100J、三井化学製)45部、導電性微粉末としてカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径800nm、三菱化学製)55部、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリ−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(パーヘキシン25B、日本油脂製)0.5部、接着性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(エバテートH4011、住友化学製)25部を用意した。まず、155℃の加熱ミキシングロールで高密度ポリエチレンとカーボンブラックを混練した。カーボンブラックを均一に分散させた後に、架橋剤を分散し、混練を完了した。この混練物を1mm厚みのシートに成形し、180℃の熱風乾燥炉で60分間熱処理し、架橋剤を完全に反応させた。さらに、このシートの粗粉砕物を、155℃の加熱ミキシングロールで、エチレン酢酸ビニル共重合体(エバテートH4011、住友化学製)と共に混練した。次いで、この組成物を粗粉砕し、さらに、冷凍粉砕にて平均粒子径20μmの粉体を作製した。以下、実施例1と同一の条件で、この粉体をウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に形成した。20℃の面積抵抗値は350Ω近辺と、十分に低く、抵抗温度特性の変化桁数は20℃と150℃で4桁を越える、十分に大きな変化が見られた。また、この複合繊維シートはウレタン繊維との複合による風合いの優れた素材であるが、外観や風合いを損なうこともなかった。
【0047】
以上のように構成された抵抗体において、以下、その作用を説明する。高密度ポリエチレンは高結晶化度の結晶性重合体であって、特に、その約130℃の融点近傍において急峻な比容積の増大をもたらす。また、平均粒子径500nmのファーネス系のカーボンブラックは大きな正抵抗温度特性の変化桁数をもたらす導電性微粉末であり、高密度ポリエチレンの融点近傍での比容の急激な増大によって、抵抗値を大きく増大させる。実施例3と異なる点は、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物が架橋されている点である。架橋により、組成物は様々なストレスに対して抵抗特性が安定化し、電気、物理、化学的特性も改善される。本実施例では、大気中でシート厚み1mmの形態にて架橋している。大気中で架橋処理を行なうと、その表面では、架橋反応を引き起こすラジカルが大気中の酸素によって阻害され、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じず、導電性微粉末の表面を活性化させ、導電性微粉末と重合体間のグラフト結合を生じる。このグラフト反応によって、導電機構は安定化し、長期の信頼性が可能となる。この反応は比表面積が大きく、酸素にさらされる比率が大きいときに顕著となる。シート厚み2mm以上となると、酸素が内部までに拡散できる厚み限界を超えるために、急激に、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じて、熱可塑性は失われる。シート厚み2mmは、シート周囲の厚み部分の面積を除くと、比表面積では10/cmとなる。本実施例ではシート厚みが1mmであるので、熱可塑性を失うような架橋に至らない。このようにして架橋された高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物は、エチレン酢酸ビニル共重合体と共に混練することが可能であり、また、エチレン酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル比率が20%、融点が84℃、メルトフローレートが20のグレードであり、その融点以上で熱溶融して、被着体などに溶着する性質を付与する。
【0048】
また、エチレン酢酸ビニル共重合体は、結晶性重合体でもあり、その材料固有の抵抗温度特性を示す。これらの材料から構成される組成物の物性と特性は、粉体化しても保持され、粉体の粒子径が小さいため、噴霧によって、基材面に薄肉の粉体層を形成できる。この粉体層は熱可塑性の重合体であり、特に、低温で溶融し、熱接着に優れた接着性重合体を含んでいるために、接着性重合体の融点以上に加熱し、加圧することによって、相互に融着させると共に、緻密な層に仕上げることができる。この粉体を塗布した複合繊維シートとの接触面は、粉体の一部が繊維シート内部に拡散するので、熱融着後には一体に接合して、剥離不能となる。このように、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、抵抗体組成物の特性がそのまま再現される。また、熱ロールによる圧延や熱プレスによるシート成形では100μm以下の薄肉成形が容易でないが、粉体化して塗布することによって、印刷レベルの膜厚を実現できる。
【0049】
以上のように、本実施例においては、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物を、熱可塑性を失わない水準の架橋を施し、これに接着性重合体として低融点のエチレン酢酸ビニル共重合体を分散し、これを粉体化し、ウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に粉体層を形成し、これを加熱及び加圧して複合繊維シート面に緻密かつ薄肉の抵抗体膜を形成するものである。このことにより、高密度ポリエチレンとカーボンブラックが化学結合するので抵抗値の安定性が改善される。また、エチレン酢酸ビニル共重合体によって接着性が改善される。このように、無溶剤で抵抗体膜が形成されるために、複合繊維シートの構成材料の一部が溶出することもなく、抵抗体組成物の特性がそのまま再現される。その結果、基材材料の制約が少なく、印刷に匹敵する薄い膜厚、低い面積抵抗値、大きな抵抗値変化桁数が可能となる。そして、さらに、長期信頼性を備えた正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。
【0050】
なお、本実施例では、接着性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体を示したが、この重合体に限定されるものではなく、結晶性重合体と導電性微粉末との混練物に接着性を示すと共に、それ自身が相互に接着する重合体の中から選定された重合体でも、同様の作用と効果を奏するものである。特に、本実施例のように、結晶性重合体よりも低融点の結晶性重合体を接着性重合体に選定すれば、低温域での熱溶融性と、低温域での正抵抗温度特性を付与することができるが、高融点の結晶性重合体を選定すれば、粉体の保存や粉体加工時の発熱などによる粉体同士の熱溶着を防止できるとともに、高温域における正抵抗温度特性を付与することができる。その中でも、特に、融点が165℃近辺の高温域にあるポリプロピレンは、通常の粉体加工や保存温度では熱溶融によって溶着することがなく、一方で、塗布された粉体を熱ロールなどによって熱溶融結合することが容易な結晶性重合体であり、極めて有用な材料である。また、オレフィン熱可塑エラストマなどの熱可塑エラストマを使用すれば、熱溶融結合するだけでなく、柔軟性を付与できるので、さらに有用である。
【0051】
また、本実施例で、接着性重合体として使用したエチレン酢酸ビニル共重合体に、例えば、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を加えることにより、粉体に帯電性能を付与することができる。帯電性能は導電性によって打ち消される場合があるが、接着性重合体部分に添加することにより、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる導電性の組織とは別の、非導電性部分に分散されるために、効果的に帯電性能を付与することができる。適正な帯電性能を付与された粉体は、電磁気的に操作することが可能になり、数多くの好ましい結果をもたらす。例えば、本実施例に示したように、粉体を基材面に単に噴霧して形成するのではなく、粉体に電荷を帯びさせて、所望の方向に導くとともに、基材に極性を与えて、粉体を基材面に導くことができるようになる。このように、帯電性能が付与されると、粉体の飛散による損失を防ぐと共に、より精密な塗膜の形成ができるようになる。さらに、基材面に所望のパターンで帯電した部分と帯電しない部分を形成し、この基材面に粉体を導いて、塗布すれば、パターンを描くことも可能になる。
【0052】
また、本実施例の、結晶性重合体は高密度ポリエチレンであるが、例えば、高密度ポリエチレンとポリプロピレンを併用することによって、架橋した後の熱溶融結合性を改善することができる。この場合、高密度ポリエチレンは架橋によって高分子化し、溶融しにくくなるが、ポリプロピレンは架橋によってむしろ低分子化し、熱溶融しやすくなる。これらの架橋高分子型結晶性重合体と架橋分解型の結晶性重合体から形成される粉体は、架橋度を高めても、熱溶融結合が可能で有る。したがって、架橋による抵抗値の安定性と熱溶融結合性を両立させることが可能であり、極めて有用な作用と効果を奏するものである。
【0053】
(実施例5)
結晶性重合体として高密度ポリエチレン(ハイゼックス2100J、三井化学製)45部、導電性微粉末としてカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径80nm、三菱化学製)55部、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリ−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(パーヘキシン25B、日本油脂製)2.0部、接着性重合体としてポリプロピレン(H501、住友化学製)20部を用意した。まず、155℃の加熱ミキシングロールで高密度ポリエチレンとカーボンブラックを混練した。カーボンブラックを均一に分散させた後に、架橋剤を分散し、混練を完了した。この混練物を10mm厚みのシートに成形し、190℃の熱風乾燥炉で120分間熱処理し、架橋剤を完全に反応させた。さらに、このシートを冷凍粉砕にて微粉砕し、架橋重合体の微粉末を得た。この微粉末を、175℃の加熱ミキシングロールで、ポリプロピレンと共に混練し、組成物を得た。次いで、この組成物を粗粉砕し、さらに、冷凍粉砕にて平均粒子径20μmの粉体を作製した。以下、実施例1と同様の条件で、ただし、ロール温度185℃に設定し、この粉体をウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に形成した。20℃の面積抵抗値は830Ω近辺と、十分に低く、抵抗温度特性の変化桁数は20℃と150℃で4桁を越える、十分に大きな変化が見られた。また、この複合繊維シートはウレタン繊維との複合による風合いの優れた素材であるが、外観や風合いを損なうこともなかった。
【0054】
以上のように構成された抵抗体において、以下、その作用を説明する。高密度ポリエチレンは高結晶化度の結晶性重合体であって、特に、その約130℃の融点近傍において急峻な比容積の増大をもたらす。また、平均粒子径500nmのファーネス系のカーボンブラックは大きな正抵抗温度特性の変化桁数をもたらす導電性微粉末であり、高密度ポリエチレンの融点近傍での比容の急激な増大によって、抵抗値を大きく増大させる。実施例4と基本的に異なる点は、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物が熱可塑性を失う水準にまで架橋されている点である。十分に架橋することにより、組成物の熱溶融性は失われるが、様々なストレスに対する抵抗特性の安定性が大幅に改善される。
【0055】
また、電気、物理、化学的特性も大幅に改善される。本実施例では、大気中でシート厚み10mmの形態にて架橋している。大気中で架橋処理を行なうと、その表面では、架橋反応を引き起こすラジカルが大気中の酸素によって阻害され、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じず、導電性微粉末の表面を活性化させ、導電性微粉末と重合体間のグラフト結合を生じる。しかし、シート厚み2mm以上となると、酸素が内部までに拡散できる厚み限界を超えるために、急激に、重合体の主鎖間を結合するような架橋反応が生じて、熱可塑性は失われる。シート厚み10mmでは、このような架橋反応が生じ、熱可塑性は失われる。
【0056】
このようにして架橋された高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物は、冷凍粉砕などの手段によって微粉砕し、粉体加工することは可能であるが、この粉体同士は熱溶融によって容易に結合しないため、そのままでは加工しにくい。この組成物は粉体化した後、熱溶融性のポリプロピレンと共に混練することによって、ポリプロピレンの中に微粒子となって分散される。この混練物を、粉砕することによって、接着性のポリプロピレンを散在させた接着性の粉体が得られる。高密度ポリエチレンとカーボンブラックは容易に熱溶融しない水準まで架橋されているため、ポリプロピレンが、架橋された材料中に大量に混合することはなく、大半は分離状態で分散される。
【0057】
このポリプロピレンは、その融点以上で熱溶融して、被着体などに溶着密着する性質を付与する。これらの材料から構成される粉体は、その粒子径が小さいため、噴霧によって、基材面に薄肉の粉体層を形成できる。この粉体層は熱接着性であり、特に、粉体の加工温度や保存温度では熱溶融しないが、165℃以上で溶融し、接着性重合体の融点以上に加熱し、加圧することによって、相互に融着させると共に、緻密な層に仕上げることができる。この粉体を塗布した複合繊維シートとの接触面は、粉体の一部が繊維シート内部に拡散するので、熱融着後には一体に接合して、剥離不能となる。このように、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物の特性がそのまま再現される。
【0058】
また、熱ロールによる圧延や熱プレスによるシート成形では100μm以下の薄肉成形が容易でないが、粉体化して塗布することによって、印刷レベルの膜厚を実現できる。
【0059】
以上のように、本実施例においては、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる組成物を、熱可塑性を失う水準まで架橋し、その粉砕物を高融点のポリプロピレン中に分散し、これを粉体化し、ウレタン繊維とポリエステル繊維との複合繊維シート面に粉体層を形成し、これを加熱及び加圧して複合繊維シート面に緻密かつ薄肉の抵抗体膜を形成するものである。このことにより、高密度ポリエチレンとカーボンブラックが強固に化学結合するので抵抗値の安定性が飛躍的に改善される。また、無溶剤で抵抗体が形成されるために、複合繊維シートのウレタンが溶出することもなく、抵抗体組成物の特性がそのまま再現される。その結果、基材材料の制約が少なく、印刷に匹敵する薄い膜厚、低い面積抵抗値、大きな抵抗値変化桁数が得られる。そして、さらに、長期にわたって高度の信頼性を有する正抵抗温度特性抵抗体を形成することができる。
【0060】
なお、本実施例では、接着性重合体としてポリプロピレンを使用したが、この重合体に限定されるものではなく、結晶性重合体と導電性微粉末との混練物に接着性を示すと共に、それ自身が相互に接着する重合体の中から選定された重合体でも、同様の作用と効果を奏するものである。特に、本実施例のように、高融点の結晶性重合体を選定すれば、粉体の保存や粉体加工時の発熱などによる粉体同士の熱溶着を防止できるとともに、高温域における正抵抗温度特性を付与することができる。また、結晶性重合体よりも低融点の結晶性重合体を接着性重合体に選定すれば、低温域での熱溶融性と、低温域での正抵抗温度特性を付与することができる。その中でも、特に、融点が165℃近辺の高温域にあるポリプロピレンは、通常の粉体加工や保存温度では熱溶融によって溶着することがなく、一方で、塗布された粉体を熱ロールなどによって熱溶融結合することが容易な結晶性重合体であり、極めて有用な材料である。また、オレフィン熱可塑エラストマなどの熱可塑エラストマを使用すれば、熱溶融結合するだけでなく、柔軟性を付与できるので、さらに有用である。
【0061】
また、本実施例で、接着性重合体として使用したポリプロピレンに、例えば、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を加えることにより、粉体に帯電性能を付与することができる。帯電性能は導電性によって打ち消される場合があるが、接着性重合体部分に添加することにより、高密度ポリエチレンとカーボンブラックからなる導電性の組織とは別の、非導電性部分に分散されるために、効果的に帯電性能を付与することができる。適正な帯電性能を付与された粉体は、電磁気的に操作することが可能になり、数多くの好ましい結果をもたらす。例えば、本実施例に示したように、粉体を基材面に単に噴霧して形成するのではなく、粉体に電荷を帯びさせて、所望の方向に導くとともに、基材に極性を与えて、粉体を基材面に導くことができるようになる。このように、帯電性能が付与されると、粉体の飛散による損失を防ぐと共に、より精密な塗膜の形成ができるようになる。さらに、基材面に所望のパターンで帯電した部分と帯電しない部分を形成し、この基材面に粉体を導いて、塗布すれば、パターンを描くことも可能になる。
【0062】
以上、本発明の実施例について、実施例1から5に示したが、本発明は実施例に示した材料に限定されるものではなく、以下に示す材料であっても同様の作用を有するものである。
【0063】
導電性微粉末については、平均粒子径が大きく、ストラクチャーの発達していないファーネス系のカーボンブラックが大きな正抵抗温度特性を得やすいが、分散方法などの加工条件によっては、これに限定されるものではなく、極めて多くのカーボンブラックの中から選定できる。また、さらに、カーボンブラックに限定されるものでなく、グラファイト、金属めっきグラファイト、金属粉末、無機導電性粉末などの導電性微粉末の中から選定できる。また、架橋剤については、有機過酸化物による架橋に限定されるものでなく、電子線などの電離性放射線でも同等の作用を奏する。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合して形成するものである。このことにより、伸縮性や風合いなどの機能性素材からなる基材上に、基材の諸物性を損なうことなく、優れた正抵抗温度特性の抵抗体を形成することができる。
Claims (16)
- 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加するとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と非結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とし、帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加するとともに、有機過酸化物または電離性放射線によって架橋されてなる架橋重合体組成物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 非結晶性重合体は熱可塑エラストマである請求項3、4のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 非結晶性重合体は、未架橋エラストマからなる請求項4に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とする組成物と、前記組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とするとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物と、前記架橋重合体組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体と導電性微粉末を主成分とするとともに、有機過酸化物または電離性放射線で架橋されてなる架橋重合体組成物の微粉砕物と、前記架橋重合体組成物に対して接着性を示し、かつ帯電性能を付与するための帯電制御剤を添加してなる接着性重合体との混練物を粉体化し、前記粉体に電荷を帯びさせるとともに、基材に極性を与えて基材面に粉体を導いて膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる正抵抗温度特性抵抗体。
- 接着性重合体は熱可塑エラストマである請求項7、8、9のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 接着性重合体は結晶性重合体よりも高温域に融点を持つ結晶性重合体からなる請求項7、8、9いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体は架橋高分子型結晶性重合体と架橋分解型結晶性重合体からなる請求項2、4、8、9いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 結晶性重合体は実使用温度よりも高温域に融点を持つ結晶性重合体と、実使用温度近傍に融点を持つ結晶性重合体からなる請求項2、4、8、9いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 架橋重合体組成物は熱可塑性を失わない水準で架橋されるものであり、前記架橋重合体組成物を粉体化し、前記粉体を基材面に膜状に塗布し、前記基材面と一体に熱溶融結合してなる請求項2、4、8のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 熱可塑性を失わない水準の架橋は、大気中で比表面積10/cm以上の形態にて架橋されることによる請求項14記載の正抵抗温度特性抵抗体。
- 架橋は有機過酸化物によるものであり、熱可塑性を失わない水準の架橋は、大気中で、混練時間中に活性酸素が半減する温度以上で混練することによりなされる請求項14に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
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