JP2668426B2 - 自己温度制御特性をもつ有機質感温素子及びその製造法 - Google Patents

自己温度制御特性をもつ有機質感温素子及びその製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、約100℃以下の低温領域で特定温度の検知
および自己温度制御機能を有する新規な有機質感温素子
に関する。
〔従来の技術〕
従来、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に黒鉛、カー
ボンブラック又は金属粉などの導電性物質を配合して導
電性樹脂もしくは半導電性樹脂を形成し、これら有機質
の優れた特性を利用して電子部品或いは発熱体として広
く使用されている。
しかし、これらの宿命的欠点は安定性に欠けて居り、
信頼されるものが無いことである。特に、長期使用後の
経時変化等を免れ得なかった。
〔発明が解決しようとする課題〕
例えば約100℃以下の低温領域において安定な温度−
導電特性をもち、昇温−冷却を繰返しても電気抵抗値に
経時変化がなく、しかも特定温度検知及び特定温度領域
での正の特性変化の大きな自己温度制御機能をもつ、安
定性の優れた有機質素材の開発が要請されている。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、上記の課題を達成すべく鋭意検討した結
果、黒鉛またはカーボンブラックが二次元の典型的六員
環網目平面状の堅固な共有結合構造を有し、平面層間で
は結合力が比較的ゆるく、よくスリップするが、かなり
の吸着力を有して面間膨潤、縮退すること、および二次
平面内ではいわゆる共役系共有結合として金属と同様の
導電性を示すが、層面間はいわゆるπ電子雲の存在によ
る導電性を示すことに着目し、この黒鉛またはカーボン
ブラックの層間に吸着特性の強い反応誘導剤などを吸着
させて層間距離を拡大するとともに、その上下の炭素層
間に結晶性低分子量有機化合物を浸入させ、吸着した反
応誘導剤の一部又は全量を置換し、又は炭素層と直接吸
着させて架橋化することにより層間の導電抵抗を自由に
コントロールすることができることを見出し、本発明を
完成させるに至った。
すなわち、本発明の自己温度制御特性をもつ有機質感
温素子は、黒鉛またはカーボンブラックと線状高分子化
合物とアルカン系直鎖低分子有機化合物とを含み、且つ
架橋型高分子により三次元網状構造化されている複合体
からなることを特徴とする。
上記の如き本発明の有機質感温素子は、黒鉛又はカー
ボンブラックと線状高分子化合物とアルカン系直鎖低分
子有機化合物と架橋型高分子のプレポリマーとを含む複
合組成物を架橋反応条件下に置くことにより、該架橋型
高分子のプレポリマーを三次元網状構造の架橋型高分子
に転化することにより製造することができる。そして好
ましくは、導電性黒鉛またはカーボンブラックに架橋型
高分子のモノマーと低次元物質である線状高分子化合物
の微粉末又は液状ポリマー及びアルカン系直鎖低分子有
機化合物を配合し、有機溶媒中でブレンドおよび重合さ
せることにより製造することができる。
本発明において、黒鉛またはカーボンブラックとして
は、天然または人造黒鉛、ファーネスブラック、アセチ
レンブラックなどが挙げられ、粒径1μ以下、特に0.1
μ以下のものを使用するのが好ましい。
架橋型高分子としては、三次元網状構造を形成する熱
硬化樹脂、たとえばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、シリコン樹脂などとその変性樹脂などが
好適であり、このような三次元網状構造を形成するため
の材料として、上記のような架橋型高分子のプレポリマ
ー、すなわち単量体やオリゴ体などが好適に使用され
る。
線状高分子化合物としてはポリエチレン、エチレン酢
酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポ
リプロピレンなどのオレフィン系重合体、液状ポリブタ
ジエンなどのジエン系レジン、アイオノマレジンなどが
挙げられ、好ましいのは液状ポリブタジエン又は結晶性
を有する微粉末ポリエチレンである。
また、アルカン系直鎖低分子有機化合物としての代表
例としては炭素数20以上のアルカン系直鎖炭化水素また
はその脂肪酸が挙げられる。
有機溶媒または反応誘導剤としては、ベンゼン、トル
エン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n−ブタノー
ル、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレング
リコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオー
ルなどの脂肪族グリコール、シクロペンタン−1,2−ジ
オールなどの脂環族ジオール、ヒドロキノンなどのフエ
ノール類、メチルエチルケトンなどのケトン類やテトラ
ヒドロフランなどが挙げられる。
本発明の感温素子の製造に際し、上記関連物質の配合
は、黒鉛と架橋型高分子とからなる導電性高次元物質10
0部に対し、黒鉛は10〜60部、架橋型高分子は40〜90部
の範囲となるようにするのが適当である。
架橋型高分子が90部をこえると導電性が悪くなる。ま
た、40部より少ないと、すなわち黒鉛が60部をこえても
増量効果に乏しい。そして黒鉛又はカーボンブラックの
配合は種類と量によって室温での基本導電率はそれぞれ
違ってくるが、特定温度検知及び自己温度制御特性に対
しては一律的に決めてよい。又架橋型高分子もカーボン
ブラックとグラフト化すれば導電性物質のマトリックス
(母体)となるから基本導電率はそれぞれ違ってくる
が、やはり一律的に決められてよい。
線状(鎖状)高分子化合物は、導電性の安定化を図る
ため、上記架橋型高分子と黒鉛を合算した量100部に対
し5〜100部の範囲で加えるのがよい。100部をこえる
と、導電性が極度に低下し、実用範囲をこえる。
アルカン系直鎖低分子有機化合物、例えば上記の炭化
水素は3〜30部の範囲とする。30部をこえると製品の靭
性が低下し、3部以下では特性の効果が乏しくなる。
反応誘導剤すなわち有機溶媒は最少25部以上必要であ
るが、更に混合作業などの際の必要があれば任意に増量
し得る。
〔作用〕
本発明の感温素子は、前記配合成分が順次に混合され
る過程でまず架橋型高分子のプレポリマーが黒鉛などに
グラフトし、更にプレポリマーと混合した線状高分子化
合物が、熱処理過程で重合反応により生成した架橋型高
分子の三次元網状構造に組み込まれ、全体が一体化した
組成物となることにより、形成される。このことは、素
子製品の均質性から判断される。また、素子製品に可撓
性を与え、特性の安定化のために架橋型高分子の三次元
化および重合度と線状高分子化合物の存在とは非常に重
要な役割をしている。
こうして、線状高分子化合物は、とかく硬くなりがち
な三次元網状化合物に柔軟性とエントロピー剛性を与
え、低温でフレキシビリティーを付与し、高温で逆にゆ
るくなるのを防ぎ、しまりを与えて全系を安定化してい
る。
低分子有機化合物は、直接に或いは反応誘導剤の協働
によって黒鉛層間に浸入し、或いはこれを拡大し、黒鉛
層に強力に吸着して層間化合物を形成するものとみられ
る。
これは、本発明の感温素子が反復高温加熱(アルカン
系直鎖低分子有機化合物の融点よりもはるかに高い温
度、例えば65℃の配合物に対して130℃まで)にも耐
え、特性が殆ど変化しないという実験結果から裏付けら
れる。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。な
お、以下の説明において記載されている各成分の部は重
量部を表す。
実施例1 カーボンブラック(平均粒径0.1μ以下) 45部 アルキドメラミンレジンモノマー 55部 n−パラフィン(平均粒径5μ以下の微粉末) 25部 高分子量ポリエチレン(平均粒径15μ以下の粉末)25部 トルエン 45部 MEK 25部 n−ブタノール 30部 上記の配合によって得られた混合溶液は黒汁状の液
で、これを硝子板の上に塗布し、遠赤外線照射により被
照射温度155℃×10分程反応させると塗膜表面にクラッ
クの無いものに仕上がった。
試片は極間巾60mm×極長23mm、比抵抗値25℃で8.5×1
0-1Ω−cmであった。
この素子をアルミナウールで素子面の上下を保温して
電圧を印加した。電圧印加直前の素子電気抵抗値は13.0
KΩ、素子表面温度25℃であったが、AC100Vで印加する
と温度の上昇に従って抵抗値も比例して、16.8KΩに上
昇した。温度は62℃に達し、この温度を8000時間以上キ
ープし、それ以上温度の上昇がなかった。
その後、同一試験片に2倍の電力即ち141VAC印加する
と発熱温度は75℃を長時間維持して、それ以上温度上昇
は全く無かった。この温度での素子の抵抗測定値は23.4
KΩに上昇していた。
また、素子に電圧印加をカットして常温25.0℃に戻っ
たときの素子の抵抗は完全に13.0KΩに復帰した。これ
を12回反復して上記と全く同一の結果であったので、本
配合の素子は完全な安定化された温度依存性自己温度制
御素子であることが確認された。
第1図は、本実施例で得られた感温素子に対する印加
電圧を変えたときの素子表面温度と抵抗値との関係を示
すグラフである。
第2図は、同じく昇温特性を示すグラフであり、横軸
は時間(分)、縦軸は温度(℃)を表す。
実施例2 カーボンブラック(平均粒径0.1μ以下) 30部 アクリル−エポキシレジンモノマー 70部 アイオノマレジン 35部 n−パラフィン(平均粒径5μ以下の粉末) 15部 キシレン 35部 MEK 15部 n−ブタノール 15部 ダイアセトンアルコール 25部 上記配合により、実施例1と同様にして感温素子を作
成した。試片は極間巾60mm×極長23mm、比抵抗は25℃で
1.9×10-1Ω−cmであった。また、その昇温特性を第3
図に示した。アクリル−エポキシレジンは三次元構造化
の重合度が進む程安定姓が増すが、一方素子として非常
に脆く、実用上大きな欠点になる。この欠点をイオン結
合アイオノマレジンで補完している。
アイオノマレジンは、熱可塑性エラストマーとして特
に室温近くの低温において、素子全系に安定性を維持し
ながら柔軟性を付与する。アクリル−エポキシモノマー
との相溶性も非常によく、よくブレンドされる。
実施例3 架橋型高分子として、表−1の配合表に示すように、
アルキッドメラミンレジンモノマーを使用し、カーボン
ブラックとの配合比を変えて実施例1と同様に感温素子
を作製し、常温における体積固有抵抗(Ω−cm)を測定
した。
また、カーボンブラックの配合比を一定(45部)にし
て、架橋型高分子としてフェノールレジンモノマー、ア
クリル−エポキシレジンモノマーを使用したときの体積
固有抵抗(Ω−cm)を測定した。
測定はそれぞれ実施例1と同様に混合液をパイレック
ス硝子板(厚さ1mm)に塗布し、遠赤外線照射により被
照射温度155℃×10分で処理し極間巾60mm×極長10mmの
試片を作成して行った。
架橋型高分子として、アルキッドメラミンレジンモノ
マーを用いた第4図に示すように、カーボンブラックの
配合量が50〜60部を越えると、体積固有抵抗は架橋型高
分子の種類によって異なるが、各感温素子についてほぼ
一定になる。
〔発明の効果〕 以上説明したように、本発明によれば、繰り返し使用
によっても抵抗値の経時変化が極めて少なく、安定な温
度−導電特性を有し、しかも局部過熱のおそれがなく、
分子レベルのセンサとして種々の段階の自己温度感知お
よび制御機能をもつ感温素子を提供することができる。
また、この感温素子は昇温時においても柔軟で弾性に
富み、しかも適度の剛性を有するフレキシブルエラスト
マーとしての性質を備え、種々の形態に加工することが
でき、製造方法も容易で低コストで製造することが可能
であり、巾広い用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で得られた感温素子の印加電圧を変
えたときの素子表面温度と抵抗値との関係を示すグラフ
である。 第2図は、同上の昇温特性を示すグラフである。 第3図は、同じく実施例2で得られた感温素子の昇温特
性を示すグラフである。 第4図は、実施例3についてのアルキッドメラミン樹脂
とカーボンブラックの配合比と体積固有抵抗(常温)と
の関係を示すグラフである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】黒鉛またはカーボンブラックと線状高分子
    化合物とアルカン系直鎖低分子有機化合物とを含み、且
    つ架橋型高分子により三次元網状構造化されている複合
    体からなることを特徴とする自己温度制御特性をもつ有
    機質感温素子。
  2. 【請求項2】黒鉛またはカーボンブラックと線状高分子
    化合物とアルカン系直鎖低分子有機化合物と架橋型高分
    子のプレポリマーとを含む複合組成物を架橋反応条件下
    に置くことにより、該架橋型高分子のプレポリマーを三
    次元網状構造の架橋型高分子に転化することを特徴とす
    る自己温度制御特性をもつ有機質感温素子の製造法。
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