JP3684487B2 - 樹脂シート並びに真空断熱パネル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷蔵庫等の壁材の一部として断熱を目的に配設して用いる真空断熱パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば地球大気上層のオゾン層の破壊防止をはじめとするいわゆる地球環境保護が強く要請されているが、これを目的として使用された発泡断熱材に用いる発泡剤の脱塩素化代替物質によってもたらされる断熱性能の悪化を防止し、かつ省電力化が推進された断熱材の開発が各方面で進行中である。
そして、これと共に、それ自体が環境破壊の促進や有害性を有することもない上にリサイクルも容易に行えるという利点を有する真空断熱パネルを、冷蔵庫等の断熱材に適用することが必要になってきている。
【0003】
従来の冷蔵庫における構成を例として、図9に示す真空断熱パネルの使用例図に従って説明する。
意匠性を有する冷蔵庫の外郭には、それを構成する複合金属板からなるラミネート鋼板の折り曲げ加工で作られた外箱1とABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)等のスチレン系樹脂を真空成形等によって形成した樹脂成型品である内箱2との間隙に、補助的な断熱材である発泡ウレタン3と主たる断熱作用を受け持つ真空断熱パネル4が配設されている。真空断熱パネル4は外箱1の主として平坦部に接着剤5を介して固定され、更に内箱2との固定を発泡ウレタン3を用いて内箱2の複雑な形状を賦型しながら壁内に残った空間に充填すると共に接着させることによって、構造体としてのサンドイッチ構造を確保している。
【0004】
ここで、真空断熱パネル4は、その部分の詳細を示す図10の構成を有している。この真空断熱パネル4の製造方法を、図2を参照しながら、図11のフロー図に示す。図10において、まず繊維や熱伝導性の小さい粒子の集合物又は連続気泡を有する発泡体等の多孔質な構造を有する芯材6を箱状の下外郭7(図10では上側に図示の凹状体)の空間部に投入・充填する。次いで、優れた断熱性を発現させるために、内部を排気して高真空状態を確保した後、予め被せていた上外郭8の周囲を熱シールして外気の侵入を防止する。このようにして、発生した大気圧による圧縮力を芯材6が受けとめて変形を防ぎ、真空断熱パネル4の形状の維持を図っている。
【0005】
この場合、真空断熱パネル4の内部に外気からのガス侵入を遮断又は抑制して断熱性を維持する目的のために、下外郭7と上外郭8は多層膜としてそれぞれ中間層に金属薄膜層9,9aを挿入して併用することもあり、さらに挿入口を完全に封止するために優れた溶着性を有する材料が内部層10,10aに用いられ、例えば冷蔵庫の箱体では壁の曲げ強度を確保する為に発泡ウレタン3との接着を安定して確保できる材料を表面層11,11aに用いている。このように、全ての項目を満足する特性を得るために、異なった材料の膜を積層したものとし、例えば3層以上の多層シート12が下外郭7と上外郭8を構成する外殻用の樹脂シートとして用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した多層シートの内部層10,10aには、一般にフタル酸系及び/又はテレフタル酸系のポリエステル樹脂が用いられており、これによって挿入口を熱シールして密閉し、外部からのガスの侵入を防止するのに充分な接着性を安定して確保している。しかし、これらポリエステル樹脂は柔らかくて傷が入りやすい上に、空気等の気体透過率が高く、金属薄膜層9,9aにピンホール等の欠陥が存在することを考慮すると、できるだけ気体透過率が低い樹脂を用いて多層化した多層シートとすることが必要である。
【0007】
しかし、これら気体透過率の低い樹脂は、一般に結晶性樹脂であることから、多層シートを箱状の成型品等に成形する際、延伸時のシート間にかかるせん断応力によって他の樹脂層や金属薄膜層と剥離し易く、その結果として多層シートの気体透過抑制に支障を来したり、さらにはピンホールやクラックなどの欠陥を発生するという問題もあった。
【0008】
さらに、真空断熱パネルを断熱性を必要とする製品の壁の面材や冷蔵庫ではもう一方の断熱材である発泡ウレタン等と接する表面材や芯材と接する内層材に用いれば、芯材や製品の壁材と接着し難いことから、壁の曲げ強度を発現するためのサンドイッチ構造が確保できず、発泡ウレタンのみを断熱材とした壁と比較して、主として強度の面で劣っていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る真空断熱パネルは、少なくとも内部層が非晶性ポリエチレンテレフタレートからなる多層シート間に芯材を配置し、内部の真空状態を確保しながら多層シートの内部層端部の同士を溶着することによって熱シールして形成した真空断熱パネルであって、熱シール後に、溶融に至らない温度以下で熱処理を行い、非晶性ポリエチレンテレフタレートの結晶構造を増加させたものである。
【0012】
すなわち、本発明においては、熱可塑性樹脂であってポリエチレンテレフタレート(以下PETという)が持っている結晶構造をつぶし易くしたことによって、結晶構造を殆ど持たなくし、従ってPETの機械的および化学的特性を維持しつつもPETの欠点である柔軟性と接着性に優れている非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、A−PETとよぶ)を真空断熱パネルを構成する外郭に、成型品として適用することを骨子としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
本実施の形態1では、本発明の構成・効果を、幾つかの実施例に基づき具体的に説明する。さらに、真空断熱パネルの外郭として必要な外周シールの接着性、表面硬度、冷熱繰り返し試験における中間層との剥離、さらに芯材との溶着性について調べた結果を、本発明による真空断熱パネルの構成と共に説明する。
図1は本発明による真空断熱パネルを示す断面説明図であり、図2は樹脂シート作成用の多層シート形成装置、図3は真空シール装置である。
【0014】
[真空断熱パネル及びその作成]まず、図1において、A−PETを内部層30,30aと外部層31,31aとに用い、アルミニウム(以下アルミという)等の金属箔14を中間層として金属薄膜層29,29aに用いた多層シート32を図2に示した多層シート形成装置を用いて真空断熱パネル22を得た。ここで用いたPET樹脂は三菱化学KK製のNOVAPEX−GS400であり、金属箔14とラミネートする迄に1. 1〜2. 5倍の延伸をかけながら、内部層30,30aを50μm、金属薄膜層29,29aを10μm、外部層31,31aを30μmの各厚さになるように多層シート32(樹脂シート)を成形した。
【0015】
この樹脂シートを応用してパネル状の真空断熱パネルを形成すれば、折りじわが発生して、鋭角に折られた部分に亀裂や穴等の欠陥が発生し、外気の侵入(リークともいう)を来すこととなるので、多層シート32を真空成型機を用いて図5に示す凹型の断面形状で、大きさが300mm×300mm×20mm(t)の内寸を有する箱形の下外郭に成形した。これに大きなブロック状に発泡した連続気泡を有する発泡ウレタンを、箱形成型品の内寸と同形状に裁断したボード状加工品を芯材36として充填した後、真空成形に用いた3層シートの上外郭38を重ね合わせ、その端面を図3に示す装置を用いて165℃のシート温度の真空状態下で加圧、溶着して真空断熱パネル22を作成した。
【0016】
その作成方法を以下説明する。まず、図2に示すような多層シート形成装置を用いて、A−PETを押出し成形機13,13aにより内部層30と表面層31となるA−PETシートを中間層の金属薄膜層29,29aとなるアルミ等の金属箔14を挟み込みながら圧着用ロール15でラミネートした後、A−PETの非晶性を確保して熱シールを確実なものとし得る溶着性を得るために、内部層30,30a側に20〜50℃に温調した冷却用ロール16を用いて急冷した三層の多層シート32を作製する。なお、図2では三層の多層シートの場合を示したが、三層以上の多層シートも同様方法で適用できる。
【0017】
このようにして得られた多層シート32をそのまま平板状の上外郭38として用い、さらに真空成形等によって箱状、あるいはブロー成型等によって袋状に成形したものを下外郭37として用いる。これに、芯材36を投入した後、図3に示すようなシート加熱機構17,17aと端部をシールする為のシール用加圧機構18,18aとを具備した真空シール装置19を用いて真空状態を確保しながら周囲の端部を熱シールして、図1に示す真空断熱パネル22を得る。
この場合、外郭周囲の端部に対する熱シールは、埋め込まれたヒータ23で温度調整が可能な機構を有する加圧バー20,20aを合板状態のパネルの端部に押し当てて熱シールを行うことで達成される。
【0018】
そして、大気中の空気等が真空断熱パネル22内に侵入(漏洩)することの抑制効果を向上させるには、A−PETを加熱処理することにより容易に樹脂の結晶構造を増加させてその目的を達成できる。その効率的な方法として、多層シート32の全面にわたって加熱ヒータ17,17aによる均一な加熱を行い、その温度が融点近傍に到達後、外周部分をエアー駆動のシール用加圧機構(プレス)18で加圧してヒータ23で個別に温度調整が可能な加圧バー20,20aを用いて熱シールしてもよい。
【0019】
この時、真空調整用バルブ21の操作によって外気の流入による冷却を行えば、芯材36に樹脂シートが押し付けらる際に芯材36と下外郭37及び上外郭38とが接着してサンドイッチ構造体を形成し、曲げ強度に優れた真空断熱パネル22が得られる効果もあることも見出している。
【0020】
以上のように、本発明におけるA−PETの適用は、非晶性樹脂特有の溶着が可能で熱シール性に優れ、高い引張り伸び率と耐薬品性を有している上に、熱処理を行えば容易に結晶化度が上昇して、PET(これをC−PETということもある)と同等にまで耐熱性(熱変形温度)と剛性や硬度等の機械的特性の向上が図れることに加え、気体の透過率も低減して外気の侵入を高度に抑制できて、断熱性の低下を防止できる効果を利用したものとなっている。
【0021】
このうち、A−PETの融着による金属箔との接着性が高い接着強度を維持して容易に剥がれることがない利点は、樹脂シートの伸び率が極めて高いために真空成型時の引張りにおける内部歪みを残存させることが少ないことにもよる。
さらに、このことは下外郭37と上外郭38の外周のシール等における再度の加熱や除冷時に変形や剥離が発生することもない効果を示すものである。
【0022】
[実施の形態2]
本実施の形態では、真空断熱パネルの接着強度、表面硬度、冷熱繰り返し試験及び芯材との溶着性評価試験を行った結果について説明する。
[試験1;接着強度]まず、真空成形した真空断熱パネルにおける外郭周辺部の剥離に対する耐性として、接着強度を調べた。図6に示すように、A−PETを用いて作った真空断熱パネル22から、幅25mmで、端部を中心に上下の各外郭から50mmを切り取って採取した短冊状の接着強度用試験片23を実施例1の試料として用い引っ張り試験機による引っ張りでの破断強度を測定した。破断時の強度がシート単体での破断強度である8kg以上で破断した場合には◎、8kg以下でも溶着部外で破断した場合には△、溶着部で破断した場合は×と評価した。
【0023】
[試験2;表面硬度]成型品の使用時における擦れや引っかき等によるきず発生に対する耐性を評価するため、表面硬度を調べた。試料の接着硬度用試験片24は、図6に示す採取位置から150mm×150mmの大きさに切り取り、JIS・K- 5401に基づく鉛筆硬度法による表面硬さを調べ、2H以上を○、HB以上を△、それ以下を×と評価した。
【0024】
[試験3;冷熱繰り返し試験]冷蔵庫に適用した場合に、運転時に外箱1に配設したコンデンサーパイプ(図示せず)からの放熱による温度上昇の繰り返し等で発生する剥離による浮きやクラック発生等の外観異常の促進試験として行った。真空断熱パネル22を、−30℃と60℃の環境試験槽内に各々2hr以上放置した後、もう一方の部屋に30秒以内に移動させる「繰り返し熱衝撃試験」を行い、多層シート32のクラックと浮きの発生状況を調べた。クラックが全く発生しなかったものを○、スジ状の白化を確認したが割れに至っていないものを△、割れが確認できたものを×として評価した。また、浮きが全く発生しなかったものを○、8カ所の各角部にのみわずかに確認したものを△、表面部に部分的にでも発生したものを×として評価した。
【0025】
[試験4;芯材との溶着性評価試験]真空断熱パネルにおける芯材36との剥離に対する耐性として、接着強度を調べた。図6に示すように、A−PETを用いて作った真空断熱パネル22から、幅25mm、長さ150mmで切れ目を入れた後、端部から25mmを強制的に剥離させた短冊状試料の溶着性評価用試験片25の端部を実施例1の試料とし、引っ張り試験機を用いて試料と直角を維持しながら引っ張った時に発現する剥離強度を測定した。剥離強度が0. 2kg以上の場合には○、0. 2kg以下の場合は×と評価した。
【0026】
[比較例1]A−PETに替えて、テレフタル酸とエチレングリコールからなるC−PETの樹脂シートを用いて作成した同様の多層シート(図示せず)を比較例1−1、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールのポリエステル共重合体(モル比=80:20)の同様試料を比較例1−2とし、試験1〜4を各々行った。なお、本発明のA−PETを用いた多層シート32による真空断熱パネル22の外郭の端部のみを加熱して熱シールして、多層シート32に加熱処理を行わないものについては参考例として示した。以上の各試験結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から明らかなように、実施例1の試料は全ての試験項目に対して、一様に良好な特性を示した。これに対して、比較例1−1に示した従来材の一つであるC−PETは接着性に極めて劣り、溶着も不可であった。また、比較例1−2であるポリエステル樹脂でも端部や芯材との溶着に劣るものの全く不可な状態ではない結果を示した。しかし比較例1−2は、繰り返し冷熱下におけるクラック発生や表面硬度に関し、冷蔵庫の断熱層を形成するための各種製造工程における外郭を構成するための材料としての信頼性に劣ることは明白である。
【0029】
[実施の形態3]
本実施の形態では、本発明による多層シートを用いた真空断熱パネルを応用して冷蔵庫の断熱箱体の外箱を形成し、その適性について各種品質評価を行った。A−PETを内部層30,30aと外部層31,31aに用い、アルミ箔を中間層に用いた多層シート32を図2に示した方法で外箱1を形成した。ここで用いたPET樹脂は三菱化学KK社製のNOVAPEX−GS400であり、アルミ箔とラミネートする迄に1. 1〜2. 5倍の延伸をかけながら、内部層を50μm、中間層の金属箔14を10μm、外部層を30μmの各厚さになるように成形した。これを図3の真空シール装置19を用いて、図5に示す形状で大きさが500mm×300mm×20mm(t)の内寸を有する箱形に成形し、これに芯材36に連通気泡を有する発泡ウレタンを充填した後、この上に真空成形に用いた3層シートを重ね合わせた端面を図3に示す装置を用いて165℃のシート温度の真空状態下で加圧・溶着して図6に示す真空断熱パネル22を作成した。
【0030】
この真空断熱パネル22を冷蔵庫外箱1の図7に示す位置にウレタン系接着剤を用いて接着固定し、ABS樹脂製の内箱2を外箱に嵌合した後、残った空隙に発泡ウレタンを充填することによって、断熱箱体39を実施例2の試料として作製した。従って、得られた断熱箱体39の断面は、図4に示すような構造を有することとなる。用いた冷蔵庫は、三菱電機KKの内容積が120Lの小型冷凍冷蔵庫である「MR−12」で、試験用に用意した冷蔵庫の数は3である。
【0031】
[試験5;耐環境試験]試作した冷蔵庫断熱箱体39を、−30℃と60℃の環境試験室内で各々2hr以上放置した後、もう一方の部屋に30秒以内に移動させる「繰り返し熱衝撃試験」を行い、外箱表面から芯材及び外箱との固定に用いた接着剤と実施例2及び比較例2(後述)に用いた多層シート32との剥離を、断熱箱体を解体して確認した。
多層シートが起因する剥離については、真空断熱パネル22の表面が界面部分で剥離しているか、隣接する材料である接着剤または発泡ウレタンが付着した凝集状態で剥離しているかによって評価した。すべての表面が凝集状態で剥離したものを◎、真空パネルの側面のみが界面剥離したものを○、真空パネルの表面部が界面剥離したものを×として評価した。
【0032】
[比較例2]多層シートとしてC−PETを表層に20μm、PVC−PVAc共重合体が20μmの厚さである二層シートをイソフタル酸系−テレフタル酸系エステル共重合樹脂である接着剤を介し、アルミ箔を中間に配設したラミネートした多層シートを用いて真空断熱パネル(図示せず)を作製した。この真空断熱パネルを用いて、図7の位置に配設した冷蔵庫断熱箱体を成形し、これを比較例2として同様評価を実施した。以上の各試験結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の結果から明らかなように、A−PETを多層シートの外側層に用いて作成した真空断熱パネル22を冷蔵庫の外箱1の固定に用いて形成した断熱箱体39の実施例2の試料は、接着剤とその反対面を固定した発泡ウレタンとの剥離による浮きが非常に少なく、従来品の比較例2との比較においても優れている。
【0035】
[実施の形態4]
本実施の形態では、真空断熱パネルの外郭面とシール部分となる端部から漏洩して侵入する外気によって真空度が低下することによる断熱性能の経時変化を調べた。この試験のために、図8に示す形状の真空断熱パネル22aを作成した。その形成方法を以下に示す。A−PETを扁平ダイスを有する押し出し機を用いて押し出した後に空気を内部に吹き込むこと( ブロー) によって風船状のパリソン(:ブロー成形に使用される管状の定形プラスチック形材)を作り、次いで金型内にパリソンを送り込んで二回目のブローを行うことによって成型品を得る宇部興産KK社製のダブルブロー成型機の「B80/132R」型機を用いて、図8のような袋状の外郭26用の成型品を得た。ここで用いたPET樹脂は三菱化学KK社製のNOVAPEX−GS400である。真空断熱パネル22aは、この外郭用成型品に大きなブロック状に発泡した連続気泡を有する発泡ウレタンを裁断して得た板状の芯材36を挿入、その端面を図3に示す真空シール装置19を用いて真空度を0. 01±0. 002mmHgに調整した真空状態下で加圧、溶着して実施例3の試料を作成した。
【0036】
上述のように、外郭材としての外気の侵入抑制に関する特性のみを把握するために、アルミ等の金属箔14を介在させた多層シートを用いずに、実施例3の試料の外郭26は、厚さ50μmのA−PETのみの単層シートを用いた。
真空断熱パネルの外郭は端部のみを加熱して熱シールし、シートへの加熱処理を100℃で10分のガラス転移点以上の低温域での加熱の後に、150℃で25分の溶融温度以下での高温域での加熱を行った。なお、シートに加熱処理を行わないものについては参考例として示した。
【0037】
[試験6;熱伝導率の経時変化の評価]この真空断熱パネル22aを冷蔵庫外箱の最大到達温度である50℃の恒温下で、大気中と発泡剤であるHCFC141b(1,1 −ジクロロ−1−フルオロエタン)の雰囲気中に放置して、10日後と30日後との熱伝導率の変化量をそれぞれ調べた。熱伝導率は栄弘精機KK社製のオートラムダ測定装置を用いて測定した。
【0038】
[比較例3]従来から外郭材に用いる一般的な多層シートで、C−PETを表層に20μm、PVC−PVAc共重合体を20μmの厚さとする二層シートに、10μm厚さのイソフタル酸系−テレフタル酸系エステル共重合樹脂である接着層をさらに積層した3層シート(図示せず)を用い、図8と同様の真空断熱パネルの比較例3試料を作製した。以上の試料による各試験結果を表3及び表4に示した。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
表3を見ると、A−PETを熱処理せずに用いた参考例では、表4に示す酸素の透過と水分の透過(透湿度)の結果でも分かるように、気体の透過速度がPETよりも早い、つまり外気が侵入して真空度が低下し易いにもかかわらず大気中とHCFC-141b 雰囲気中の何れの場合であっても、断熱性能の低下が小さいような、つまり外気の侵入が少ない結果を有している。このことはシールした端部の欠陥が少なくて、熱シールが良好になされたことを示すものである。
そして、A−PETに熱処理を施した外郭を用いた実施例3の場合には、経時変化が比較例3及び参考例の何れよりも、空気や発泡剤であるHCFC−141b雰囲気中の何れであっても、明らかに外気の侵入を抑制して断熱性能を安定維持できる効果に優れていることが分かる。
【0042】
以上の実施の形態1〜4の結果から明らかなように、本発明による樹脂シートのA−PETシートは、接着剤との接着性や加工時の延伸性に優れた性能を有している反面、これを加熱処理することによって剛性や耐熱性の向上、さらには加工時に蓄積された残存歪みを無くすることができる。これによって、従来の外郭材に比較して、多層シート成形や溶着などの加工が容易性であることに加え、成型品における多層シート間の剥離や溶着部の外気侵入が可能な微小未溶着部等の欠陥の発生がない等の信頼性に優れる製造方法と成型品を提供できる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、延伸性や溶着性に優れたA−PETを用いて真空断熱パネルの外郭に用いる樹脂シートとその成型品を得て、さらに芯材を内部に配設した後、この成型品端部を溶着することによって熱シールを行い真空断熱パネルを作製する。この熱シールの際に溶融に至らない温度以下で熱処理を行うことによって、硬度の向上と空気の透過を抑制する特性と芯材との接着によって外郭と芯材が一体化した高性能の真空断熱パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の真空断熱パネルの断面図である。
【図2】 本発明による多層シート製造装置の概念図である。
【図3】 本発明による真空断熱パネル製造装置の概念図である。
【図4】 本発明の真空断熱パネルの冷蔵庫への配設を示す概念図である。
【図5】 袋状形状を有する真空断熱パネル外郭成型品の断面図である。
【図6】 真空断熱パネル外郭の評価試験片の採取位置を示す概念図である。
【図7】 真空断熱パネル外郭の評価試験片の採取位置を示す概念図である。
【図8】 本発明の他の真空断熱パネルの断面図である。
【図9】 従来の真空断熱パネルを断熱壁に配設した場合の断面図である。
【図10】 従来の真空断熱パネル成型品の断面図である。
【図11】 真空断熱パネルの製造工程フロー図である。
【符号の説明】
1 外箱、2 内箱、3 断熱材、4 真空断熱パネル、6,36 芯材、29,29a 金属薄膜層、30,30a 内部層、 31,31a 表面層、12,32 多層シート、13 押し出し機、15 圧着ロール、16 冷却用ロール、17 シート加熱装置、18 シール用加圧機構、19 真空シール装置、22 真空断熱パネル、23 接着強度用試験片、24 表面硬度用試験片、25 溶着性評価用試験片、26 外郭、37 下外郭、38 上外郭。
Claims (3)
- 少なくとも内部層が非晶性ポリエチレンテレフタレートからなる多層シート間に芯材を配置し、内部の真空状態を確保しながら前記多層シートの内部層の端部同士を溶着することによって熱シールして形成した真空断熱パネルであって、
前記熱シール後に、溶融に至らない温度以下で熱処理を行い、前記非晶性ポリエチレンテレフタレートの結晶構造を増加させたことを特徴とする真空断熱パネル。 - 前記多層シートの一方が箱型に成形した成形品であり、前記芯材を前記箱内に充填したことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル。
- 前記熱処理を前記熱シールと同時に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空断熱パネル。
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