JP3682402B2 - X線レンズ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線レンズ及びその製造方法に関し、特に焦点距離を短くするのに適したX線レンズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、ネイチャ第384巻(1996年11月7日)の第49〜51頁に開示されているX線レンズの側面図を示す。ボロンまたはアルミニウム等からなる基材100に、図9の紙面に垂直な中心軸を有する円柱状の複数の貫通孔101が形成されている。各貫通孔101の半径は100〜1100μmであり、相互に隣接する2つの貫通孔101の間隔dは、約25μmである。
【0003】
基材100の図の左端から、X線102が入射する。入射したX線は、各貫通孔101の内周面で屈折を繰り返す。X線に対するボロンやアルミニウムの屈折率は1よりもやや小さいため、基材100の図の右端から出射するX線103は、収束光線束となる。
【0004】
種々の材料のX線領域における屈折率は非常に1に近いため、焦点距離の短いX線レンズを作製することは困難である。図9のように、複数の貫通孔101を形成し複合レンズとすることにより、焦点距離の比較的短いレンズを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
焦点距離を短くするためにレンズの枚数(図9では貫通孔101の個数に相当)を多くすると、レンズ材料によるX線の吸収が大きくなってしまう。例えば、貫通孔101の個数を50、相互に隣接する2つの貫通孔101の間隔dを0.02mmとすると、レンズの吸収体の合計の厚さは1mmになる。
【0006】
また、複合レンズの有効口径ACは、
【0007】
【数1】
C=2R(2/μRN)1/2
と表される。ここで、Rは貫通孔101の半径、μはX線吸収係数、Nはレンズ枚数である。例えば、アルミニウムのX線吸収係数μは約20cm-1である。R=0.2mm、N=50、とすると、有効口径ACは0.12mmになってしまう。
【0008】
本発明の目的は、X線吸収が少なく、かつ焦点距離を短くすることが可能なX線レンズ及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によると、改質ポリテトラフルオロエチレン、改質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、または改質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で形成されたX線レンズが提供される。主平面に平行な直線を母線とする柱面からなる第1の表面を有し、該第1の表面が前記主平面に関して面対称であり、該第1の表面と、その母線に垂直な仮想平面との交線が滑らかな第1の曲線であり、該第1の曲線の、前記主平面との交点における曲率半径が20μm以下であるような構成とすることが好ましい。
【0010】
レンズ基材として上述の改質フッ素樹脂を用いると、X線小角散乱を抑制することができる。第1の曲線の曲率半径が20μm以下であるため、第1の表面を屈折面とする焦点距離の短いX線レンズが得られる。
【0011】
本発明の他の観点によると、上述の改質フッ素樹脂により形成されたX線レンズであって、XYZ直交座標係を考えたとき、Y軸に平行な直線を母線とする柱面からなる第1の表面を有し、該第1の表面がYZ面に関して面対称な凹面であり、該第1の表面とZX面との交線が放物線になるX線レンズが提供される。
【0012】
第1の表面とZX面との交線が放物線になるような第1の表面を屈折面とすることにより、円柱面を屈折面とする場合に比べて、有効口径が大きく、かつ焦点距離の短いレンズを得ることが可能になる。
【0013】
本発明のさらに他の観点によると、上述の改質フッ素樹脂により形成された部材を準備する工程と、縁の一部に、凹状の放物線部分を含み、シンクロトロン放射光を透過させないマスクを、前記部材の表面に密着させ、または該表面からある間隔を隔てて配置する工程と、前記マスクを介して前記部材にシンクロトロン放射光を照射し、該部材の、シンクロトロン放射光の照射された部分をエッチングする工程とを含むX線レンズの製造方法が提供される。
【0014】
シンクロトロン放射光を用いて改質フッ素樹脂を加工するため、機械的に加工する場合に比べて、曲率半径の小さな曲面を容易に形成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1(A)は、本発明の実施例によるX線レンズの斜視図を示す。XYZ直交座標系を考える。改質ポリテトラフルオロエチレン(改質PTFE)からなる直方体形状の基材50が、各面をXY面、YZ面、及びZX面に平行にするように配置されている。改質PTFEの製造方法は、特開平6−116423号公報、特開平7−118423号公報、及び特開平7−118424号公報等に説明されている。本実施例では、約340℃まで加熱したPTFEの基材に、照射線量100kGyの電子線を照射して基材50を得た。電子線を照射する時には、PTFEの温度を、その融点(327℃)よりもやや高い温度とすることが好ましい。上述の公報に記載されたその他の方法を用いてPTFEを改質させてもよい。PTFEに照射する放射線は、電子線に限らず、その他の電離放射線、例えばガンマ線、X線、アルファ線等でもよい。改質PTFEは、架橋ポリテトラフルオロエチレン(架橋PTFE)とも呼ばれる。なお、改質PTFEの化学的物理的性質について、後に詳しく説明する。
【0016】
XY面に平行な2つの面に、それぞれ溝51A及び51Bが形成されている。溝51Aの内面(第1の表面52A)及び溝51Bの内面(第2の表面52B)は、共にY軸に平行な直線を母線とする柱面であり、YZ面(本明細書において、YZ面を主平面と呼ぶ)に関して面対称である。
【0017】
第1の表面52AはZ軸の負の方向を向き、第2の表面52BはZ軸の正の方向を向いている。すなわち、両者は相互に反対方向を向いている。また、第1及び第2の表面52A及び52Bは、共に凹面である。第1の表面52AとZX面との交線、及び第2の表面52BとZX面との交線は、共に放物線である。
【0018】
改質PTFEの屈折率をnとすると、
【0019】
【数2】
n=1−δ
と表すことができる。ここで、δは、屈折率低下分(refractive index decrement)である。波長0.7nmのX線に対する改質PTFEのδは7.25×10-7であり、吸収係数μは6cm-1である。
【0020】
図1(A)のZ軸の正の向きに進行するX線60が、第1の表面52Aに入射する。第1の表面52Aに入射したX線は、第1の表面52Aで屈折し、さらに第2の表面52Bで屈折し、ZX面内に関して収束するX線61が得られる。すなわち、第1及び第2の表面52A及び52Bを有する基材50は、X線に対して集光レンズとして作用する。
【0021】
図1(B)は、図1(A)のX線レンズのZX面における断面形状を示す。第1の表面52AとZX面との交線は、
【0022】
【数3】
2=2R(−Z−d/2)
と表され、第2の表面52BとZX面との交線は、
【0023】
【数4】
2=2R(Z−d/2)
と表される。ここで、R=2μm、d=10μmである。すなわち、この放物線の、YZ面との交点における曲率半径は2μmであり、YZ面上において、第1の表面52Aと第2の表面52Bとの間の厚さは10μmである。このレンズの焦点距離Fは、R/(2δ)で与えられるため、F=1.4mとなる。
【0024】
基材50のZ軸方向の厚さを1200μmとすると、Z=±600μmの位置における第1及び第2の表面52A及び52BのX座標は約±49μmになる。すなわち、このX線レンズのX軸方向の有効口径は約98μmになる。このとき、分解能σ=1μmになる。焦点距離F=1.4m、有効口径98μmの収束レンズを、1枚の円柱面のレンズで実現することは不可能である。上記特性の収束レンズを得るためには、図9に示すように、円柱面レンズを複数用いた複合レンズとしなければならない。本実施例の場合には、屈折面を放物面にしているため、1枚のレンズで焦点距離が短く、かつ有効口径の大きな収束レンズを実現することができる。
【0025】
実効的にX線を集光させることができ、かつ大きな有効口径を確保するためには、第1または第2の表面52Aまたは52BとZX面との交線の、YZ面との交点における曲率半径を20μm以下とすることが好ましい。
【0026】
また、上記実施例では、X線の光軸近傍(YZ面近傍)におけるレンズの厚さが10μm程度であるため、X線吸収量を低減することができる。X線吸収量を十分少なくするためには、第1の表面52Aと第2の表面52Bとに挟まれた部分の最小厚さを50μm以下とすることが好ましい。
【0027】
また、上記実施例では、X線の入射側と出射側の2つの屈折面を、共に放物面とした場合を説明したが、一方の面のみを放物面としてもよい。また、X線を収束させる作用を奏する曲面であれば、放物面以外の滑らかな曲面としてもよい。ただし、この場合にも、この曲面とZX面との交線の、YZ面(主平面)との交点における曲率半径を20μm以下とすることが好ましい。
【0028】
次に、図1(A)に示した実施例によるX線レンズの製造方法について説明する。
【0029】
図2(A)は、実施例によるX線レンズの加工装置の概略図である。シンクロトロンに蓄積された電子の軌道1から光軸5に沿ってシンクロトロン放射光(SR光)2が放射される。光軸5に沿った光源からの距離Lの位置に改質PTFE基材4が配置されている。基材4の前方には、間隔Gだけ離れてマスク3が配置されている。電子軌道1、基材4及びマスク3は同一の真空容器内に配置されている。
【0030】
マスク3には、SR光を実質的に透過させる領域と透過させない領域とが画定されている。なお、実質的に透過させる領域とは、改質PTFE基材4を加工するのに十分な強さのSR光を透過させる領域を意味し、実質的に透過させない領域とは、その領域をSR光が透過しないか、または透過したとしても透過光が改質PTFE基材4を加工しない程度の強さまで弱められるような領域を意味する。
【0031】
本実施例で使用したマスクは、図1(B)に示すパターンを有する厚さ10〜100μmの銅板である。すなわち、マスクの縁は、凹状の放物線部分を含む。なお、銅以外の金属を用いてもよい。なお、マスクは、2〜10μm程度の厚さのものでもよい。
【0032】
SR光2は、マスク3を介して改質PTFE基材4の表面に照射される。SR光の照射される面は、図1(A)のZX面に平行な面である。改質PTFE基材4の表面でSR光によるエッチングが生じ、SR光が照射された部分が剥離される。SR光2は高い平行度を有するため、加工された改質PTFE基材4は、光軸5に沿って見たときマスク3とほぼ同一形状になる。このため、図1(A)に示すようなX線レンズが得られる。
【0033】
図2(B)は、加工部の断面図を示す。真空容器20内に試料保持台14が配置されている。試料保持台14の試料保持面に改質PTFE基材4が保持されている。マスク3が、マスク保持手段17により改質PTFE基材4の前面に配置されている。マスク3を改質PTFE基材4の表面に密着させてもよいし、ある間隔を隔てて配置してもよい。加工時には、図の左方からマスク3を通して改質PTFE基材4の表面にSR光2を照射する。
【0034】
試料保持台14は、例えばセラミックで形成され、内部にヒータ8が埋め込まれている。ヒータ8のリード線が、真空容器20の壁に取り付けられたコネクタ21の容器内側の端子に接続されている。コネクタ21の容器外側の端子が、電源7に接続されており、電源7からヒータ8に電流が供給される。ヒータ8に電流を流すことにより、改質PTFE基材4を加熱することができる。
【0035】
試料保持台14の試料保持面に熱電対23が取り付けられている。熱電対23のリード線は、リード線取出口22を通して真空容器20の外部に導出され、温度制御装置9に接続されている。リード線取出口22は、例えばハンダ付けにより気密性が保たれている。温度制御装置9は、試料保持面の温度が所望の温度になるように、電源7を制御しヒータ8を流れる電流を調節する。
【0036】
図2(C)は、試料保持台の他の構成例を示す。試料保持台15の内部にガス流路16が形成されている。ガス流路16に所望の温度のガスを流してガスと改質PTFE基材4との熱交換を行わせ、改質PTFE基材4を所望の温度に維持することができる。
【0037】
最小曲率半径20μm以下の滑らかな曲面、及び最小の間隔が50μm以下となるような2つの屈折面を、機械的な加工によって作製することは困難である。図2(A)に示すSR光を利用した加工装置を用いることにより、最小曲率半径20μm以下の放物面を容易に形成することができる。また、2つの放物面の最小間隔が50μm以下となるX線レンズを再現性よく作製することができる。
【0038】
SR光は高い平行度を有するため、図1(A)のX線レンズのY軸方向の厚さをTとしたとき、T/Rが5以上のレンズを容易に作製することができる。T/Rが5以上となるようにすることにより、レンズをY軸方向に大きくしても、焦点距離を短く維持することができる。
【0039】
上記実施例で用いた改質PTFEは、従来の未架橋PTFEにはない種々の特徴を有している。以下、改質PTFEの特徴について説明する。
【0040】
改質PTFEに放射線を照射することにより生成するラジカル数が、未架橋PTFEに放射線を照射することにより生成するラジカル数よりも著しく多いことが、電子スピン共鳴法(ESR)により確かめられている。
【0041】
図3は、試料1〜4について、補足ラジカルの収量と、ラジカルを発生させるためのガンマ線の吸収線量との関係を示す。横軸はガンマ線の吸収線量を単位「kGy」で表し、縦軸は補足ラジカルの収量を単位「スピン/g」で表す。試料1は、放射線照射を行っていない従来の未架橋のPTFEであり、試料2〜4は、340℃に加熱したPTFEに、それぞれ電子線を100kGy、500kGy、及び3000kGyだけ照射して作製した改質PTFEである。このように準備された試料1〜4に、室温、真空雰囲気中でガンマ線を照射し、補足ラジカルの収量を測定した。
【0042】
生成したラジカル数は、各グラフの立ち上がり部の傾き(G値)で評価することができる。改質PTFE(試料2〜4)のG値は、未架橋PTFEのG値の10倍以上であることがわかる。
【0043】
図4は、試料5〜8について、破断時の伸びとガンマ線の吸収線量との関係を示す。横軸は各試料に照射したガンマ線の吸収線量を単位「kGy」で表し、縦軸は破断時の伸びを単位「%」で表す。試料5は、未架橋PTFEであり、試料6〜8は、340℃に加熱したPTFEに、それぞれ電子線を50kGy、500kGy、及び1000kGyだけ照射して作製した改質PTFEである。なお、各試料の厚さは0.5mmであり、引っ張り速度は200mm/分とした。
【0044】
図5は、上記試料5〜8について、破断時の引張強度とガンマ線の吸収線量との関係を示す。横軸は各試料に照射したガンマ線の吸収線量を単位「kGy」で表し、縦軸は破断時の引張強度を単位「MPa」で表す。
【0045】
図4及び図5からわかるように、改質PTFEは、従来の未架橋PTFEと比べて、ガンマ線を照射された後でも比較的高い機械的強度を維持している。SR光照射によってPTFEを加工すると、マスクで遮光されていた領域にも弱められたSR光が照射される。このSR光により、加工後のPTFEの機械的強度が低下する。改質PTFEを用いることにより、SR光の照射に起因する機械的強度の低下を抑制することができる。
【0046】
図6は、未架橋PTFEに、温度−196℃、室温、及び温度340℃で電子線を照射した試料の結晶化熱量ΔHcを示す。横軸は電子線の吸収線量を単位「kGy」で表し、縦軸は結晶化熱量を単位「J/g」で表す。図中の菱形、三角、及び丸記号は、それぞれ温度−196℃、室温、及び温度340℃で電子線を照射した試料の結晶化熱量の測定値を示す。
【0047】
温度−196℃、及び室温で電子線を照射した試料の結晶化熱量は、電子線の吸収線量の増加に従って急激に増加し、約80J/gでほぼ一定になる。これに対し、温度340℃で電子線を照射した試料の結晶化熱量は、電子線の吸収線量を増加させるに従って、一旦は増加するがその後減少する。結晶化熱量の減少は、架橋が生じて網目構造が構築され、結晶化が阻害されるようになったためと考えられる。結晶化熱量の増加は、電子線の照射によって分子鎖が切断され、分子鎖同士が配列しやすくなったためと考えられる。
【0048】
図6から、試料の結晶化熱量を測定することにより、未架橋PTFEと改質PTFEとの区別を行うことが可能であると考えられる。例えば、結晶化熱量が15J/g以下のものは、改質PTFEといってよいであろう。
【0049】
図7は、PTFE(未架橋のものと架橋したものを含む)の光透過率の波長依存性を示す。横軸は波長を単位「nm」で表し、縦軸は光透過率を単位「%」で表す。なお、測定対象の試料の厚さは、0.5mmであり、測定環境は大気である。図中の各曲線に付された数値は、PTFEを架橋させるために照射した電子線の吸収線量を表す。なお、電子線照射時のPTFEの温度は340℃である。PTFEを架橋させるために照射する電子線の吸収線量が増加するに従って、光透過率が大きくなっていることがわかる。試料の光透過率を測定することにより、未架橋PTFEと改質PTFEとを区別することができるであろう。例えば、波長500nmの光に対する厚さ0.5mmのPTFE板の透過率が20%以上であれば、改質PTFEといえるであろう。
【0050】
厚さ0.5mmの試料の透過率が20%であるということは、試料を構成する材料の吸光係数が約14cm-1であることに相当する。従って、波長500nmの光に対する吸光係数が14cm-1以下であれば改質PTFEといえるであろう。
【0051】
図8は、340℃の未架橋PTFEに、電子線を10MGyだけ照射して作製した改質PTFEを、高分解能19F固体NMR測定した結果を示す。横軸はケミカルシフトを単位「PPM」で表す。図中の上段及び下段のグラフは、それぞれ試料を12kHz及び15kHzで回転させながら測定したものである。また、記号*は、CF2基のメインピークのサイドバンドを表す。ピークa、d及びiは、架橋構造に由来するものであり、未架橋PTFEの測定結果には現れない。従って、高分解能19F固体NMR測定によっても、未架橋PTFEと改質PTFEとを区別することが可能である。
【0052】
次に、X線レンズの基材として改質PTFEを用いることの光学的な効果について説明する。
【0053】
PTFEは、1〜100nm程度の大きさの結晶化部と、それらを取り巻く非晶質部で構成される。一般的にPTFEの結晶化度は約40%である。結晶化部と非晶質部とは、相互に異なる密度を有するため、PTFEをX線が通過すると前方への散漫散乱が生じる。この散乱は、X線小角散乱と呼ばれる。例えば、光子エネルギ8〜10keVのX線に対するPTFEの小角散乱率が、非晶質相からなるポリメチルメタアクリレート(PMMA)の小角散乱率の500倍に達するとの報告もある(B. Lengeler et al., J. Applied Physics, Vol.84, pp.5855-5861, (1998))。X線小角散乱は、X線レンズの集光点でのボケの原因になる。その結果、得られる利得が小さくなってしまう。また、このX線レンズを用いて拡大撮像を行う場合には、X線小角散乱が空間分解能低下の要因になる。
【0054】
これに対し、改質PTFEは結晶化部を含まず、非晶質部のみで形成されている。このため、X線小角散乱を抑制することができる。これにより、集光点の大きさを小さくし、利得を大きくし、また、空間分解能の向上を図ることができるであろう。
【0055】
上記実施例では、X線レンズの基材として改質PTFEを用いた場合を説明したが、その他の改質フッ素樹脂を用いても同様の効果が期待できるであろう。改質フッ素樹脂の例として、改質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えばデュポン社の登録商標「テフロンFEP」を改質させたもの)、及び改質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(例えばデュポン社の登録商標「テフロンPFA」を改質させたもの)等が挙げられる。
【0056】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、曲率半径の小さい曲面で屈折面を構成することにより、焦点距離の短いX線レンズを得ることができる。また、SR光によるエッチングを利用してX線レンズを作製することにより、曲率半径の小さな屈折面を容易に形成し、薄いレンズを再現性よく作製することが可能になる。レンズ基材として改質フッ素樹脂を用いることにより、X線小角散乱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるX線レンズの斜視図、及び断面図である。
【図2】実施例で用いる加工装置の概略図、及び基材保持部の断面図である。
【図3】補足ラジカルの収量と、ラジカルを発生させるためのガンマ線の吸収線量との関係を示すグラフである。
【図4】破断時の伸びとガンマ線の吸収線量との関係を示すグラフである。
【図5】破断時の引張強度とガンマ線の吸収線量との関係を示すグラフである。
【図6】未架橋PTFEに、温度−196℃、室温、及び温度340℃で電子線を照射した試料の結晶化熱量を示すグラフである。
【図7】PTFE(未架橋のものと架橋したものを含む)の光透過率の波長依存性を示すグラフである。
【図8】340℃の未架橋PTFEに、電子線を10MGyだけ照射して作製した改質PTFEを、高分解能19F固体NMR測定した結果を示すグラフである。
【図9】従来例によるX線レンズの側面図である。
【符号の説明】
1 電子軌道
2 SR光
3 マスク
4 改質PTFE基材
5 光軸
7 電源
8 ヒータ
9 温度制御装置
14、15 試料保持台
16 ガス流路
17 マスク保持手段
20 真空容器
21 コネクタ
22 リード線取出口
23 熱電対
50 基材
51A、51B 溝
52A 第1の表面
52B 第2の表面
60、61 X線

Claims (9)

  1. 改質ポリテトラフルオロエチレン、改質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び改質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる群より選択された樹脂で形成されたX線レンズ。
  2. さらに、主平面に平行な直線を母線とする柱面からなる第1の表面を有し、該第1の表面が前記主平面に関して面対称であり、該第1の表面と、その母線に垂直な仮想平面との交線が滑らかな第1の曲線であり、該第1の曲線の、前記主平面との交点における曲率半径が20μm以下である請求項1に記載のX線レンズ。
  3. 前記第1の表面が凹面である請求項1または2に記載のX線レンズ。
  4. 前記第1の曲線が放物線である請求項1または2に記載のX線集光レンズ。
  5. さらに、前記第1の表面の母線に平行な直線を母線とする柱面からなり、該第1の表面とは反対方向を向く第2の表面を有し、該第2の表面が前記主平面に関して面対称な凹面であり、該第2の表面と、その母線に垂直な仮想平面との交線が滑らかな第2の曲線であり、前記第1の表面と第2の表面とに挟まれた部分の最小厚さが50μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のX線レンズ。
  6. 改質ポリテトラフルオロエチレン、改質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び改質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる群より選択された樹脂により形成されたX線レンズであって、XYZ直交座標係を考えたとき、Y軸に平行な直線を母線とする柱面からなる第1の表面を有し、該第1の表面がYZ面に関して面対称な凹面であり、該第1の表面とZX面との交線が放物線になるX線レンズ。
  7. さらに、前記第1の表面とZX面との交線の、YZ面との交点における曲率半径をR、X線レンズのY軸方向の厚さをTとしたとき、T/Rが5以上である請求項に記載のX線レンズ。
  8. 改質ポリテトラフルオロエチレン、改質テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び改質テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる群より選択された樹脂により形成された部材を準備する工程と、縁の一部に、凹状の放物線部分を含み、シンクロトロン放射光を透過させないマスクを、前記部材の表面に密着させ、または該表面からある間隔を隔てて配置する工程と、前記マスクを介して前記部材にシンクロトロン放射光を照射し、該部材の、シンクロトロン放射光の照射された部分をエッチングする工程とを含むX線レンズの製造方法。
  9. 前記マスクの縁のうち前記放物線部分の最小曲率半径が20μm以下である請求項に記載のX線レンズの製造方法。
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