JP3680648B2 - 永久磁石型モータその他の永久磁石応用装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータの固定ディスクやフロッピーディスクの駆動装置、プリンター等のコンピュータ周辺機器をはじめ、各種の機器に使用される制御用及び駆動用の永久磁石応用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
可動部もしくは固定部に永久磁石を備えた永久磁石型モータや、これを用いたアクチュエータは、コンピュータ関連機器、プリンター、カメラ、時計等の制御用及び駆動用として幅広く利用されている。また、永久磁石からなる磁気スケールと、ホール素子や磁気抵抗素子のような磁気検出素子を備えた磁気式エンコーダは、長さや角度等の変位を測定するセンサーの1種として知られている。
【0003】
従来から、永久磁石型モータの可動部もしくは固定部及び磁気式エンコーダの磁気スケール等に用いられる永久磁石としては、ネオジム(Nd)−鉄(Fe)−ホウ素(B)系やサマリウム(Sm)−コバルト(Co)系等の焼結磁石、あるいはNd−Fe−B系急冷磁石粉末を樹脂結合剤で結合したボンド磁石等が主に使用されてきた。
【0004】
しかしながら、Nd−Fe−B系やSm−Co系の焼結磁石は、これらの磁石粉末にバインダーを混合して成形し、焼結することによって製造するため、焼結したままの状態では必要な寸法精度が得られない。従って、永久磁石型モータ等の小型精密機器用途に用いるためには、焼結後に十分な寸法精度が得られるまで研削等の機械加工を施す必要があった。
【0005】
一方、Nd−Fe−B系のボンド磁石や希土類−鉄−窒素系のボンド磁石は、圧縮成型や射出成形により製造するため、十分な寸法精度で大量生産できる利点がある。また、フェライト系の焼結磁石やボンド磁石は、Nd−Fe−B系や希土類−鉄−窒素系のボンド磁石と比較して特性は劣るが、非常に安価であるという利点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、各種機器の小型化に伴って、永久磁石型モータや磁気式エンコーダ等についても益々小型化、高特性化、低価格化の要求が高まっている。そのため、永久磁石型モータや磁気式エンコーダ等に用いる永久磁石においても、小型で高特性であり、加工が容易で生産性が高く、且つ安価な永久磁石が求められている。しかし、このような小型化の要求により、焼結磁石は益々加工が困難になり、ボンド磁石は小型化するほど高い特性を維持することが難しくなる。
【0007】
しかも、最近の磁石の小型化は、ボンド磁石においてNd−Fe−B系急冷磁石粉末の粒子径のバラツキが問題となるところまで進展している。即ち、多極着磁した場合に、その一つの磁極の大きさに対する磁石粉末粒子の大きさが問題となり、各磁極の強さが不均一になっている現状である。その結果、かかるボンド磁石を用いた永久磁石型モータやアクチュエータは動作が滑らかでなくなり、磁気式エンコーダでは出力信号にエラーが発生しやすいという欠点があった。
【0008】
また、従来のNd−Fe−B系急冷磁石粉末を利用したボンド磁石では、多極着磁する際の着磁工程でかなり大きな磁界を必要とする。ところが、磁石が小型化すると、多極着磁を行うために小さな着磁ヨークを用いることになり、一つの磁極の大きさが数ミリメートル以下となるため着磁に十分な磁界を発生させることができず、従って十分に大きな磁界で着磁した場合に比較して特性が低くならざるを得なかった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、生産性が良く、多極着磁しても磁束のバラツキが少ないボンド磁石を用いて、一層の小型化・高性能化・低コスト化への対応が可能な永久磁石型モータ、及びこれを用いたアクチュエータ、並びに磁気式エンコーダを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、可動部もしくは固定部に永久磁石を備えた永久磁石型モータ、及びその永久磁石型モータを用いるアクチュエータを提供するものであって、前記永久磁石が、平均粒径4μm以下の希土類−鉄−窒素系磁石粉末と磁石粉末全体に対し10〜99重量%のフェライト系磁石粉末を樹脂結合し、リング状に成形され多極着磁されたボンド磁石からなり、該ボンド磁石の多極着磁された各磁極間の距離が1 . 7mm以下であり、且つ多極着磁された各磁極からの磁束密度の絶対値のバラツキが10%未満であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、磁気スケールと磁気検出素子を備えた磁気式エンコーダを提供するものであり、該磁気スケールが、平均粒径4μm以下の希土類−鉄−窒素系磁石粉末と磁石粉末全体に対し10〜99重量%のフェライト系磁石粉末を樹脂結合し、多極着磁されたリング状又は平板状のボンド磁石からなり、該ボンド磁石の多極着磁された各磁極間の距離が1 . 7mm以下であり、且つ多極着磁された各磁極からの磁束密度の絶対値のバラツキが10%未満であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる永久磁石は、粒径10μm以下の希土類−鉄−窒素系磁石粉末とフェライト系磁石粉末を樹脂結合剤で結合したボンド磁石であって、多極着磁したものである。希土類−鉄−窒素系磁石粉末を用いたボンド磁石は、多極着磁しても各磁極の磁束密度のバラツキが小さいという特徴を備え、中でも希土類元素としてサマリウム(Sm)が最も好ましく、代表的な磁石粉末の組成としては24〜25重量%Sm−3〜4重量%N−残部Feがある。また、鉄の一部をコバルト(Co)で置換しても良い。
【0014】
上記の希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、例えば特開平2−57663号公報に記載の溶解鋳造法、あるいは特許第1702544号公報や特開平9−157803号公報に記載の還元拡散法により希土類−鉄系合金粉末を製造し、これを窒化することによって得られる。この希土類−鉄−窒素系磁石粉末は、微粉砕することにより、粒径10μm以下又は平均粒径では4μm以下とする。磁石粉末の粒径を10μm以下又は平均粒径を4μm以下とするのは、多極着磁したときの各磁極の大きさに対して十分小さな粒径とすることで、磁束密度のバラツキを抑えるためである。
【0015】
尚、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の粒径が10μm以下とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により磁石粉末を観察して、観察された粒子100個の最大径を測定したとき、その最大径が10μm以下の粒子が95個以上を占めることを意味する。また、平均粒径とは、上記のごとく測定された各最大径を体積換算して求めた体積基準の平均粒径である。
【0016】
かかる希土類−鉄−窒素系磁石粉末にフェライト系磁石粉末を添加混合することによって、希土類−鉄−窒素系磁石粉末の多極着磁しても各磁極の磁束密度のバラツキが小さい等の特性を損なうことなく、より安価なボンド磁石を得ることができる。磁石粉末全体に対するフェライト系磁石粉末の混合割合は、10重量%未満では十分なコスト低下とならず、99重量%を超えると上記した希土類−鉄−窒素系磁石粉末の特性が殆ど失われるので、10〜99重量%の範囲が好ましく、40〜97重量%の範囲が更に好ましい。尚、フェライト系磁石粉末の種類は特定されず、通常のBaフェライト磁石粉末やSrフェライト磁石粉末等を使用することができ、例えば日本弁柄工業製のNF−110 Srフェライト等がある。このSrフェライト磁石粉末の粒径は10μm以下、平均粒径は1.4μmである。
【0017】
希土類−鉄−窒素系磁石粉末とフェライト系磁石粉末を結合するために用いる樹脂結合剤は、従来からボンド磁石の製造に使用されているもので良く、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいはポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリステイレン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。一般的に、圧縮成型の場合にはエポキシ樹脂が好ましく、射出成形の場合にはナイロン12樹脂を使用し、及び押出成形を行う場合にはポリオレフィン樹脂を用いるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明で用いるボンド磁石は、上記の希土類−鉄−窒素系磁石粉末及びフェライト系磁石粉末を樹脂結合剤と混合し、通常のボンド磁石と同様に、圧縮成型、射出成形、又は押出成形することにより製造することができる。その際、成形金型には配向磁界発生用の電磁石あるいは永久磁石を組み込み、磁石粉末に磁界を与えて磁気配向させる。得られたボンド磁石は、着磁ヨークを用いて多極着磁させる。
【0019】
ボンド磁石の形状及び多極着磁の状態は、それを用いる装置に合わせて適宜選定する。例えば、永久磁石型モータでは、駆動コイルの内側又は外側に可動部である磁石ロータを配置するロータ形が一般的であるから、説明のためにNS極を図示した図1に示すように、リング状のボンド磁石の外周面又は内周面に多極着磁させる。また、リニア形の永久磁石型モータでは、例えば図2に示すように、可動部となる平板状のボンド磁石の平面にNS極を縞状のパターンで多極着磁させる。
【0020】
磁気式エンコーダの場合も同様であって、その磁気スケールとして用いる永久磁石は、ロータリー形エンコーダではリング状又は円板状のボンド磁石の外周面に多極着磁させ、リニア形エンコーダにおいては平板状のボンド磁石の平面に多極着磁させる。
【0021】
尚、永久磁石型モータ、アクチュエータ、及び磁気式エンコーダは、それらの設計思想に基づき構成が決定されるものであり、どのような構造でも差し支えない。例えば、代表的なインナーロータ形の永久磁石型モータでは、本発明の多極着磁させたボンド磁石からなるリング状の磁石ロータの外側に、複数の駆動コイルを備えたステータヨークが配置される。また、磁気式エンコーダにおいては、本発明の多極着磁されたボンド磁石からなる磁気スケールに対向して、ホール素子又は磁気抵抗素子が配置される。
【0022】
一般に多極着磁された各磁極の間の距離が短くなる程、多極着磁が難しく、各磁極の磁束密度のバラツキが大きくなりやすいが、本発明で用いる希土類−鉄−窒素系磁石粉末を含むボンド磁石では、磁石の小型化により一つの磁極の大きさが小さくなっても、多極着磁させた各磁極に十分大きな磁界を発生させ、且つ各磁極の磁束のバラツキを小さく抑えることができる。
【0023】
具体的には、多極着磁された各磁極からの磁束密度の絶対値のバラツキを10%未満に抑えることができ、従って、本発明の永久磁石型モータやアクチュエータは動作が滑らかであり、また磁気式エンコーダにおいてはエラーのない安定した出力信号が得られる。この作用効果は、ボンド磁石の多極着磁された各磁極の距離が10mm以下のとき、従来のものと比較して特に顕著である。
【0024】
【実施例】
実施例1
組成がSm:24重量%、Fe:72.5重量%、N:3.5重量%であり、粒径が10μm以下、平均粒径が4μmの微細なSm−Fe−N系磁石粉末と、Srフェライト磁石粉末とを重量比で1:1に混合し、これにエポキシ樹脂5重量%を添加混合した後、成形金型のキャビティに入れて圧縮成型し、外径4.3mm、内径2mm、高さ5mmのリング状のボンド磁石を製造した。その際、成形金型に配向磁界発生用の磁石を組み込み、キャビティ外側から配向磁界を与えて磁石粉末が磁気配向するように構成した。
【0025】
このリング状のボンド磁石を、着磁ヨークを用いて、図1に示すように外周面に沿い周方向に8極に多極着磁した。得られた多極着磁されたボンド磁石の各磁極の間の距離は1.7mmであり、各磁極の中心における磁束密度は最大で1.5kG、磁束密度のバラツキ(各極の磁束密度の絶対値の最大値と最小値との差を最大値で除した値)は6.8%であった。
【0026】
次に、この多極着磁させたリング状のボンド磁石を磁石ロータとし、その外側に複数の駆動コイルを備えたステータヨークを配置して、永久磁石型モータを作製した。このモータのトルクを測定したところ、トルク変動(1回転中のトルクの最大値と最小値の差を最大値で除した値)は3%であった。
【0027】
比較例1
組成がNd:13重量%、Fe:81重量%、B:6重量%であり、粒径が200μm以下30μm以上であるNd−Fe−B系磁石粉末(マグネクエンチインターナショナル製、MQP−B)と、Srフェライト磁石粉末とを重量比で1:1に混合した以外は、実施例1と同様にして、外径4.3mm、内径2mm、高さ5mmのリング状のボンド磁石を製造した。
【0028】
このボンド磁石を着磁ヨークを用いて実施例1と同様に8極に多極着磁した永久磁石は、磁束密度が最大で1.2kG、及び磁束密度のバラツキが15%であった。また、この永久磁石を用いて実施例1と同様に永久磁石型モータを作製したところ、そのトルク変動は6%と大きかった。
【0029】
実施例2
実施例1と同一のSm−Fe−N系磁石粉末とSrフェライト磁石粉末とを重量比で1:1に混合し、これにナイロン12樹脂8重量%を添加混合した後、配向磁界発生用の磁石を組み込んだ成形金型を用いて射出成形することにより、外径2.0mm、内径1mm、高さ3mmのリング状のボンド磁石を製造した。
【0030】
このリング状のボンド磁石を、実施例1と同様に着磁ヨークを用いて外周面に径方向に4極に多極着磁した。多極着磁されたボンド磁石の各磁極の間の距離は1.6mmであり、各磁極の中心における磁束密度は最大で0.8kG、磁束密度のバラツキは8.4%であった。
【0031】
次に、この多極着磁させたリング状のボンド磁石を磁石ロータとし、その外側に駆動コイルを備えたステータヨークを配置して永久磁石型モータを作製した。このモータのトルクを測定したところ、トルク変動は4%であった。
【0032】
比較例2
比較例1と同一のNd−Fe−B系磁石粉末とSrフェライト磁石粉末とを用い、実施例2と同様にして、外径2.0mm、内径1mm、高さ3mmのリング状のボンド磁石を製造した。このボンド磁石を着磁ヨークを用いて実施例2と同様に4極に多極着磁した永久磁石は、磁束密度が最大で0.75kG、及び磁束密度のバラツキが17%であった。また、この永久磁石を用いて実施例2と同様に永久磁石型モータを作製したところ、そのトルク変動は7%と大きかった。
【0036】
実施例4
実施例1と同一のSm−Fe−N系磁石粉末とSrフェライト磁石粉末を重量比で35:65に混合し、これに更にナイロン12樹脂8重量%を混合した後、配向磁界発生用の磁石を組み込んだ成形金型を用いて射出成形して、長さ10mm、幅3mm、厚さ1mmの平板状のボンド磁石を製造した。
【0037】
この平板状のボンド磁石を、着磁ヨークを用いて長さ方向に10極に多極着磁した。この多極着磁された永久磁石の各磁極の間の距離は1mmであり、各磁極の中心における磁束密度は最大で440G、磁束密度のバラツキは6.5%であった。
【0038】
次に、この多極着磁された平板状の永久磁石を磁気スケールとして用い、ホール素子で信号検出を行う磁気式エンコーダを作製した。この磁気式エンコーダの信号出力のバラツキ(各磁極に対応する位置のピーク電圧の最大値と最小値の差を最大値で除した値)を測定したところ、4.9%であった。
【0039】
比較例4
比較例1と同一のNd−Fe−B系磁石粉末とSrフェライト磁石粉末を用いた以外は、実施例4と同様にして、長さ10mm、幅3mm、厚さ1mmの平板状のボンド磁石を製造した。このボンド磁石を着磁ヨークを用いて実施例4と同様に10極に多極着磁したところ、得られた永久磁石は磁束密度が最大で340G、及び磁束密度のバラツキが14.0%であった。
【0040】
この多極着磁された平板状の永久磁石を用い、実施例4と同様に磁気式エンコーダを作製した。この磁気式エンコーダの信号出力のバラツキを測定したところ10.9%と大きかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、希土類−鉄−窒素系磁石粉末とフェライト系磁石粉末を併用することで、生産性に優れ、強い磁力を有し、且つ多極着磁しても磁束のバラツキが少ないボンド磁石を安価に得ることができ、このボンド磁石からなる永久磁石を用いることによって、一層の小型化・高性能化・低コスト化への対応が可能な永久磁石型モータ及びこれを用いたアクチュエータ、並びに磁気式エンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多極着磁したリング状のボンド磁石のNS極を模式的に示す平面図である。
【図2】多極着磁した平板状のボンド磁石のNS極を模式的に示す斜視図である。
Claims (4)
- 可動部もしくは固定部に永久磁石を備えた永久磁石型モータであって、該永久磁石が、平均粒径4μm以下の希土類−鉄−窒素系磁石粉末と磁石粉末全体に対し10〜99重量%のフェライト系磁石粉末を樹脂結合し、リング状に成形され多極着磁されたボンド磁石からなり、該ボンド磁石の多極着磁された各磁極間の距離が1 . 7mm以下であり、且つ多極着磁された各磁極からの磁束密度の絶対値のバラツキが10%未満であることを特徴とする永久磁石型モータ。
- 前記リング状に成形されたボンド磁石の外径が4 . 3mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石型モータ。
- 請求項1又は2に記載の永久磁石型モータを用いることを特徴とするアクチュエータ。
- 磁気スケールと磁気検出素子とを備えた磁気式エンコーダであって、該磁気スケールが、平均粒径4μm以下の希土類−鉄−窒素系磁石粉末と磁石粉末全体に対し10〜99重量%のフェライト系磁石粉末を樹脂結合し、多極着磁されたリング状又は平板状のボンド磁石からなり、該ボンド磁石の多極着磁された各磁極間の距離が1 . 7mm以下であり、且つ多極着磁された各磁極からの磁束密度の絶対値のバラツキが10%未満であることを特徴とする磁気式エンコーダ。
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