JP3679394B2 - スロープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、避難時等に人が移動するために使用されるスロープに関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化社会を迎え、各種公共施設をはじめ、住宅においても戸建て住宅・集合住宅を問わず、バリアフリー仕様の物件が提供されている。行政においても、公共性の高い建物は勿論のこと、集合住宅についても、新築建物や増築・大規模改修建物に対してバリアフリー仕様(特に共用部)の指導を行っている。バリアフリーの配慮がなされることにより、障害をもつ人や車椅子を使用する人でも不自由のない生活ができるようになりつつある。
【0003】
しかし、日常生活はともかく、地震や火災等の災害時、非常時の避難については十分な配慮がなされているとはいえない。例えば、高層の集合住宅において、建物の避難設備としては、一般に避難階段が挙げられる。通常のエレベーターは停電により止まる等の問題があり、また、非常用のエレベータは基本的には消火・救助用として使用されるため、避難用としては利用しないことになっている。避難階段は、健常者にとっては問題はないが、車椅子での利用は不可能であり、身体障害者や高齢者等にとっては利用しにくい。このため、非常時の安全性が十分に確保されているとはいえない。
【0004】
住宅等において段差を解消するためにスロープを設けることは知られている。また、駐車設備等、車が移動するためのスロープについての提案はなされているが、集合住宅等において避難設備として多数の人が使用し得るスロープについては未だ充分な検討はなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、特に歩行障害者や高齢者等の非常時の安全性を十分に確保することができ、さらに、コンパクトな形態で多層建物等の建造物に効率的に配置することができ、建築計画上の融通性に優れる等の特徴をもつスロープを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1) 人が移動するために構築され、使用されるスロープであって、
スロープは、スロープ内のある位置を起点として所定の昇降高さ分、上又は下に移動し、平面視、同一起点に戻ることのできる一つのスロープ単位が連層的に設けられることにより構築され、所定の平面形状を有しており、かつ
スロープの平面形は、進路をほぼ180°反転する、少なくとも複数箇所の反転部を有するとともに、ほぼ環状をなす通路によって巻かれた囲繞領域を有する、スロープである。
【0007】
本発明はさらに、次のような構成を有するものとすることができる。
(2) スロープの平面形は、進路をほぼ180°反転する、2箇所の反転部を有し、
反転部同士を迂回して結ぶ外周通路と、該外周通路の内側に沿って反転部同士を結ぶ内周通路とを形成して、ほぼ環状をなす内周通路の内側かつスロープのほぼ中央に囲繞領域を設けた。
(3) 囲繞領域に、上下方向に連通する無床空間が形成されている。
(4) 囲繞領域に階段を備えている。
(5) 囲繞領域に有床スペースを備えている。
(6) スロープの平面形はほぼロ字形をなす。
(7) スロープの平面形はほぼO字形をなす。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において同じ要素には同じ符号を用い、適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
<実施例>
図1は、本発明(請求項1)に係るスロープ1の実施例1を示すもので、(a)は平面図、(b)は上下方向の中間部(Fn+1階とFn階との間)における構造を示す斜視図である。
図2は、多層の建物(建物の図は省略している)の上下方向に複数階にわたって設けられたスロープ1を示す斜視図である。
スロープ1は、人(車椅子使用者を含む。以下「歩行者」ともいう。)が移動するために構築され、使用されるものであって、自動車や2輪自動車の移動は対象外である。また、スロープ1は、避難時に使用可能であれば、平常時に使用し得るものでもよいのは勿論である。
スロープ1は、傾斜面と適宜水平面とを含んで構成される移動路であって、スロープ内のある位置を起点として所定の昇降高さ分(通常、階高に相当する1階分の高さh)上又は下に移動し、平面視、同一起点に戻ることのできる一つのスロープ単位(スロープユニット)が連層的に設けられることにより構築され、所定の平面形状を有する。
スロープ1は、奥行方向(図1の横方向)の長さL、幅方向(図1の縦方向)の長さBのほぼ正方形の設置領域に設けられており、フロア(床部)と連絡している(IN1)。スロープ1が連絡するフロアとしては、例えば、建物の場合、共用廊下(わたり廊下を含む)、エレベータホール、附室等が挙げられる。
なお、図面において歩行者の動線を一点鎖線又は破線矢印で例示している。フロアからのスロープ1への進入をIN1、階段7への進入をIN2と表示し、連絡口を示している。連絡口は図示の位置に限定されない。
【0010】
本発明に係るスロープ1は、その平面形に重要な特徴を有している。実施例1のスロープ1の平面形は、進路をほぼ180°反転する、2箇所の反転部10,11を有している。図1に示す例では、反転部10は、ほぼ矩形(例えば正方形)のスロープの設置領域の角部に位置し、これに隣り合って反転部11が配置されている。反転部10,11は、反転を容易にするため、通常、水平面として形成されるが、適宜勾配を形成してもよい。進路をほぼ180°反転する各反転部10,11には、夫々2本の通路(外周通路、内周通路)が近接して接続されるので、2箇所の反転部10,11には、合計4本の通路が接続されている態様となっている。
図示の例では、反転部10に、フロアとの連絡口(出入口:矢印及びIN1で表示)を設けている。連絡口を介してフロアとの出入がスムーズに行なえるよう、反転部10は、フロア3(例えば建物の各階)に相当するレベルに設置するのが好ましい。反転部11は、上下階の反転部10,10の中間レベル(上下方向の位置)に位置している。
【0011】
スロープ1には、反転部10,11同士を迂回して結ぶ外周通路20と、該外周通路20の内側に沿って反転部10,11同士を結ぶ内周通路40とが形成されている。反転部10,11間を迂回してほぼ環状に結ぶ、並行する内外二重の通路が形成されている態様であり、これらの通路を移動することによって昇降する。スロープの平面形はほぼロ字形をなしている。外周通路20及び内周通路40は、車椅子の移動に適した所要の幅員(例えば0.9m以上、好ましくは1.2m以上)を有する。
図示の例では、ほぼ正方形のスロープ設置領域の輪郭に沿って設けた外周通路20の一方端部20aは反転部10(図1(b)のFn+1階)に接続され、他方端部20bは反転部11に接続されており、反転部10から反転部11に向けて下降する昇降路を形成している。そして、内周通路40の一方端部40aは反転部11に接続され、他方端部40bは1階下(図1(b)のFn階)の反転部10に接続されており、反転部11から1階下の反転部10(図1(b)のFn階)に向けて下降する昇降路を形成している。外周通路20と内周通路40とを連続して移動することにより、1階分(所定の高さ分h)下へと移動することができるようになっている。
【0012】
内周通路40は外周通路20の内側に沿って形成されている。内周通路40は、外周通路20の内側に位置しており、平面視重ならないように位置をずらして構成されているため、内周通路40と外周通路20における歩行者の動線が重なったり、交叉することがない。したがって、スロープ1を移動する歩行者の頭上には、ほぼ昇降高さ(h)に相当する上下方向の空間(ほぼ階高に相当)が確保され、安全かつスピーディーな移動が可能となる。車椅子のみの移動を見れば、さほどの頭上高さは必要ないものの、十分な頭上高さがないと介助者や健常者の移動が困難となり、安全性が得られにくい。
上階(Fn+1階)から下階(Fn階)に移動する歩行者の動線は、反転部10,11を結ぶ外周通路20におけるほぼ矩形の環状形と、その内側を外周通路20に沿って逆方向の道筋をたどる内周通路40における環状形とが組み合わされた内外2重の環状の形態となり、その動線の軌跡は平面視ほぼ白抜きのC字形をなすものとなっている。
【0013】
外周通路20は、図示の例では、ほぼ正方形のスロープ設置領域の輪郭に沿って配置された4本の直線状の直進部21,22,23,24と、これらの直進部21,22,23,24の端部同士を連絡する外周コーナー部25,25,25とを有している。外周コーナー部25,25,25は、ほぼ正方形のスロープ設置領域の角部に位置している。外周コーナー部25,25,25は、通常、水平面として形成されるが、傾斜したバンク面等に形成してもよい。また、外周コーナー部25,25,25は転回を容易にするため、内側角部は隅切り(コーナーカット)されている。外周コーナー部25,25,25の形状は任意であり、例えば、弧状に形成してもよい。外周コーナー部25,25,25において進路が、ほぼ90°転回されるようになっている。
図において、外周通路20に、斜線ハッチングで示しているのは、傾斜面部(傾斜路)である。4本の直線状の直進部21,22,23,24に傾斜面部を設けて構成している。
【0014】
内周通路40は、外周通路20の内側に沿うように形成され、外周通路20とほぼ相似形をなしている。内周通路40は、4本の直線状の直進部41,42,43,44と、これらの直進部41,42,43,44の端部同士を接続する内周コーナー部45,45,45とを有している。内周コーナー部45,45,45は、外周コーナー部25,25,25の各内側に位置している。内周コーナー部45,45,45は、通常、水平面として形成される。また、内周コーナー部45,45,45は転回を容易にするため、内側角部は隅切り(コーナーカット)されている。内周コーナー部45,45,45の形状は任意であり、例えば、弧状に形成してもよい。
図において、内周通路40に、斜線ハッチングで示しているのは、傾斜面部(傾斜路)である。4本の直線状の直進部41,42,43,44に傾斜面部を設けて構成している。
外周通路20及び内周通路40に形成される傾斜面部は、適度な勾配(例えば、1/8〜1/20、好ましくは1/12以下)に形成される。傾斜面部の途中には適宜、水平面を設けてもよい。
なお、外周通路20と内周通路40との間に水平方向に、適宜クリアランスないしスペースを設けてもよい。
【0015】
ほぼ環状をなす内周通路40の内側には、内周通路40によって巻かれた囲繞領域5(奥行L1、幅L2)が設けられている。囲繞領域5はスロープ1のほぼ中央に設けられている。外周通路20及び内周端部40の各端部にある反転部10,11が隣り合っており、囲繞領域5は反転部10と反転部11とによってほぼ閉じられている。
隣り合う2箇所の反転部10,11を有し、スロープの中央部(囲繞領域5)の周りに内外二重の通路が形成されるため、スロープをコンパクトな形状にまとめることができる。
囲繞領域5はそのまま、上下方向に連通する無床空間として、開放的な空間として形成してもよいし、必要に応じて、この領域に諸設備等を設けて有効利用を図ることができる。囲繞領域5を上下方向に連通する無床空間として残す場合、例えば、これを上方から自然光による採光の得られる空間として使用することができる。これは、スロープ1を、構造物の内部に設ける場合に特に有益である。なお、囲繞領域5は、平面的に見て完全にスロープ通路によって閉鎖されている必要はなく、隣り合う2箇所の反転部10,11間に間隙を設け、囲繞領域5がスロープ1の外部と連通するように形成してもよい。
スロープ1は、建物その他の構造物の外部又は内部に設置されるが、これらの構造物と平面的配置関係は、自由に設定することができる。
【0016】
スロープ1は、上記のとおり、スロープ中央の囲繞領域5の周りに内外二重の通路が形成されたものとなっている。スロープは、階段と異なり、勾配が緩やかでなければ、使用上支障を来す。一方、スロープは勾配が緩やかなため、移動距離(進行方向の長さ)は必然的に長くなる。
例えば、建物の階高を約3mと想定した場合、平面視1本の直線状のスロープでは、その勾配を1/12とすると、傾斜面部の進行方向の総長さ(1階当たり)は36mにも及ぶものとなる。一の折返し部を有する平面視2本の直線状のスロープでも、その平面形状は、長手方向の長さが約25. 5m(スロープ中途に水平面の踊り場を設けた場合)にも及び、短手方向の幅は約3. 0m(通路の幅を1.5mとした場合)の矩形であり、その平面形の辺長比(α=長辺/短辺)は約8. 5となる。
しかし、上記のように反転部10,11間を迂回してほぼ環状に結ぶ、並行する内外二重の通路が形成されている態様として構成することにより、歩行者の頭上高さを確保するとともに、スロープ1の設置領域の長手方向の長さを短くすることができる。例えば、実施例1のように構成した場合、スロープ設置領域の矩形の平面形の辺長比(α=L/B)は約1(正方形)であり、一辺の長さ(L,B)を約10m程度に抑えることができる。
それゆえ、このような平面形の特徴によって、スロープ1を、屋外や屋内に配置する建築計画上の融通性がより向上する。建物の形状・構造、敷地の形状等に合わせて建物の内部あるいは外部に、建物の外観を損なわないように、効率的にスロープ1を配置することができる。また、囲繞領域5を種々の用途に利用することができる。
【0017】
上記スロープ1は、一辺L及び辺長比(α=L/B)が比較的小さい矩形の平面形の設置領域内において、直方体状をなすスロープ設置空間(図2に一点鎖線で表示)に、効率的かつコンパクトに設けることができる。そして、スロープ1を移動する歩行者の頭上に常に昇降高さ(h)に相当する空間が確保される。
【0018】
上記のように、一辺L、他辺Bを有する矩形の平面形の設置領域内に設けられるスロープ1(スロープユニット)の代表例の平面的な特徴を、さらに図3〜4に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、スロープ1の平面的設置領域は、一辺L、他辺Bを有する矩形の平面形として形成され、中央の奥行L1、幅L2を有する囲繞領域5を除くほぼロ字形部分に、通路を備えたスロープ1が配設される。
図3(b)に示すとおり、このロ字形部分を内外方向に2等分する中心線で仕切り、幅W1を有する外周通路Oと内周通路Iとに区分する。
図4(a)に示すとおり、矩形の設置領域の角部に、外周通路Oと内周通路Iとを接続して進路を反転させるための反転部Cを設けるとともに、この角部の反転部Cに隣接させて反転部Cを設ける。これにより、外周通路Oと内周通路I夫々の端部は、反転部C,Cに接続される(ただし、内いずれか1箇所は1階下又は1階上の階に位置する反転部Cである)。外周通路Oの内側にぴったりと沿う態様で内周通路Iが設けられる。
図4(b)に示すとおり、外周通路Oに4本の直線状の直進部A1,A2,A3,A4が順次形成される。内周通路Iに4本の直線状の直進部B1,B2,B3,B4が順次形成される。これらの部分は、昇降路として上下方向への移動を基本的機能とし、基本的には勾配を有する傾斜面として形成される。
外周通路Oの4本の直進部A1,A2,A3,A4は、矩形の設置領域の角部に位置するコーナー部D,D,Dで接続される。内周通路Iの直進部B4,B3,B2,B1は、コーナー部D,D,Dの内側においてコーナー部E,E,E,で接続される。
図5(a)は、直進部A1,A2,A3,A4、B4,B3,B2,B1はこの順で下降する傾斜面を形成した例を示し、図5(b)は、その逆の順で下降する傾斜面を形成した例を示す。
設置領域の中央に囲繞領域を設けるとともに、その余の部分を効率的に分割することにより形成された反転部C,C、直進部A1,A2,A3,A4、B4,B3,B2,B1の各部を移動することにより、所定の頭上高さを確保しつつ、建物の上下方向に所定の昇降高さ(通常、階高に相当)移動することができる。このような一つの基本形をなすスロープユニットを上下方向に連続して設けることにより、ほぼ矩形の平面形の設置領域内に、この設置領域の寸法に見合った形で、囲繞領域5を有するスロープ1を効率的かつコンパクトに設けることができる。スロープ1は反転部Cでフロア3と連絡させるのが好ましいが、外周通路Oの適宜水平レベルでフロア3と連絡させるようにしてもよい。移動する人の動線の軌跡は平面視ほぼ白抜きのC字形に形成される。
【0019】
また、スロープ1は、例えば図2に模式的に示すように多層の建物の上下方向に複数階にわたって連層的に設けられ、好ましくは、建物の上階又は地下階から避難階まで歩行者の避難経路が確保される直通構造に構成される。この直通構造は、歩行者がスロープ1以外の他の部分を迂回することなく、スロープ1のみを経由して、目的とする避難階まで辿りつく構造である。すなわち、歩行者は、一旦、建物のフロア等からスロープ1内に入ると、スロープ1の内部を移動するだけで、目的とする下階(例えば避難階)に到達することができる。また、スロープ1を昇れば、下階から上階への移動も可能である。スロープ1は車椅子使用者や歩行障害者が自力で移動することができるため、健常者が非常階段を使用して避難するのと同様な非常時の安全な避難経路が担保される。
避難階とは、地上又は地上に準ずる避難上安全な場所に直接通じる出入口のある階をいう。通常、1階が避難階である場合が多いが、1階以外の階である場合もある。
【0020】
<変形例>
図6〜13は、実施例1に示したスロープ1の変形例を示すものである。
図6に示すものは、実施例1のスロープ1において、スロープ1の外周に所定の耐火性能を有する壁8を設けたものである。スロープ1は、その周囲が所定の耐火性能を有する壁8で仕切られており、避難設備としての安全性が高められている。また、囲繞領域5とスロープ1との間に両者間を仕切る、透明性ないし透光性を有する壁材8aを設けてもよい。
【0021】
図7は、外周通路20の外周コーナー部25,25,25及び内周通路40の内周コーナー部45,45,45の各内側角部に隅切りを施していない例を示す。図7(a)は、反転部10にフロアからのスロープ1へ連絡口を設けた(IN1)例、図7(b)は、反転部11にフロアからのスロープ1へ連絡口を設けた(IN1)例を示している。図7(b)では、反転部11から反転部10に向けて直線部24,23,22,21の順で下降する昇降路を形成し、反転部10から反転部11に向けて直線部44,43,42,41の順で下降する昇降路を形成している。
【0022】
図8は、2箇所の反転部10,11の内、一方の反転部10が、スロープ1の平面形において矩形の辺部から突出した位置に設けられている例を示す。
【0023】
図9に示すものでは、実施例1のスロープ1と異なり、隣り合う2箇所の反転部10,11間に間隙を設け、囲繞領域5がスロープ1の外部と連通するように連通部5aを形成している。ほぼ環状をなす通路によって巻かれた囲繞領域5は、スロープ通路によって完全には閉鎖されていない態様である。
【0024】
図10に示すものは、図9に示すスロープと同様、隣り合う2箇所の反転部10,11間に間隙を設け、囲繞領域5がスロープ1の外部と連通するように連通部5aを形成している。これに加えて、囲繞領域5に、階段7を設け、建物等のフロアからスロープ1及び階段7の双方に進入できるようにしている。階段7への進入(階段7への連絡口IN2と表示)は、連通部5aの位置に設けた出入部7aを通るようにしている。出入部7aを附室に形成して、スロープと階段とを附室を介して接続し、スロープの外周部及びスロープと階段との間に、所定の耐火性能を有する壁を配置してもよい。
歩行障害者と健常者の両者が利用し得る避難設備として有用である。災害時等の非常時に歩行者が避難階まで避難する経路は、スロープ1による避難経路と、階段7による避難経路の2つのルートが設けられ、歩行障害者はスロープ1を利用し、健常者と共に、あるいは自力で安全に避難階まで避難することができる。さらに、健常者にあっては、2つのルートを自由に選択して安全に避難することができる。
【0025】
図11は、囲繞領域5に有床スペース9を設けた例を示す。有床スペース9の使用目的、使用方法は様々なものが考えられ、特に限定されるものではない。非常時に限らず、例えば平常時にリハビリテーションや休息等の目的で使用するようにしてもよい。有床スペース9は、各階毎に設置して建物等の各階のフロア3と連絡できるようにすると便利である。有床スペース9には、壁を設けて部屋として種々の目的で使用し得るようにしてもよい。トイレや遊び場を設けたり、機械室等の設備室、倉庫等として構成してもよい。
スロープ1内の通路(動線)から外れる位置に有床スペース9が設けられているため、有床スペース9において休憩等をとる場合に、歩行者の邪魔になることがない。非常時には、スロープ1の通路を移動する人(特に車椅子を使う人)が一旦通路の人の流れから離脱して休息をとるのに便利であり、また非常時における混乱を一時的に避けるための待避所として構成することが有益である。有床スペースに長時間稼動する非常用電源設備を設置することにより、暗闇になるのを防止することができる。
有床スペース9をスロープ1に対してどの水平レベル(床レベル)に設定するかは任意であり、反転部10,11又は内周通路40の一部と連絡させることができる。図示のものは、反転部10と同レベルに設置した例を示す。また、反転部10,11間の間隙に設けた出入部9aを通って建物等のフロアから有床スペース9へ進入できるようにしている(IN3)。
図11(a)のものでは、反転部10と出入部9a間で連絡できるようにしている。有床スペースと、スロープの反転部又は内周通路とを結ぶ連絡口を設けることが好ましい。
図11(b)のものでは、反転部10と出入部9aは、排煙設備を有する附室9bに接続されており、建物等のフロアからこの附室9bを介してスロープ1へ進入することができるようになっている(IN)。スロープ1と有床スペース9の両者を兼用する一の附室9bが設けられているものであり、一の附室9bを経由して、スロープ1(IN1)又は有床スペース9(IN3)へ進入することができるものである。また、附室9bを含みスロープ1は、その周囲が所定の耐火性能を有する壁8で仕切られており、避難設備としての安全性が高められている。スロープ1と有床スペース9との間も耐火性能を有する壁で仕切ってもよい。有床スペース9の構築構造は何ら限定されない。
【0026】
図12(a)(b)に示すものは、スロープ設置領域における奥行L及び幅Bが実施例1のものと異なっており、スロープ設置領域は、長辺と短辺とで形成される長方形となっている。また、反転部10を、ほぼ矩形の設置領域の角部に配置せずに、反転部10,11の双方を矩形領域の辺部に配置している。図12(b)のものは、図12(a)のものにおいて、隣り合う2箇所の反転部10,11間に間隙を設け、囲繞領域5がスロープ1の外部と連通するように連通部5aを形成している。
【0027】
図13は、実施例1と異なり、スロープの平面形がほぼO字形をなしている例を示す。スロープの設置領域は直径Dを有する円形である。
反転部10,11同士を迂回して結ぶ外周通路20と、該外周通路20の内側に沿って反転部10,11同士を結ぶ内周通路40とは、それぞれほぼ円形をなすように曲線状に形成されている。反転部10,11間を迂回してほぼ環状に結ぶ、並行する内外二重の通路が形成されている態様であり、これらの通路20,40を移動することによって昇降する点等、実施例1と同様である。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形、付加等が可能である。スロープ1は、建物に対し、最上階又は地下階から避難階まで上下方向に連層的に設置されているのが好ましいが、必要に応じて途中階から設けてもよい。
スロープ1の構造種別は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、PC、その他により構成し得、何ら限定されるものではない。また、スロープ1を支持する骨組については、説明していないが、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、その他により構成し得、何ら限定されるものではない。手摺や側壁等の形成は任意に行うことができる。スロープ1が適用される建物の形状、構造、階数等も任意である。集合住宅に好適に適用されるが、他の用途の建物、例えば、病院、福祉施設、駅舎、劇場、ホテル、オフィスビル等にも適用することができる。スロープ1は、建物の内部又は外部いずれにも設置可能であり、建物との平面的位置関係は限定されない。附室、排煙設備等を備えたものとしてもよい。
矩形及び円形のスロープ設置領域に設けるスロープ1を例示したが、スロープ1の平面形は、矩形のほか、各種多角形、半円形等に形成することができ、またスロープ通路を直進部及び曲線部を適宜組み合わせて構成することができる。
また、スロープ1は、建物の地上階の他、建物の地下階に設けることもできるし、建物に限らず、地下建造物(例えば、地下鉄駅構内や地下街等)の一部に設ける等、地下構造体として構築することができる。
囲繞領域には、エレベータ等の昇降設備を設置してもよいし、任意の各種設備を設置することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るスロープによれば、特に歩行障害者や高齢者等の非常時の安全性を十分に確保することができ、また、コンパクトな形態で多層建物等の建造物に効率的に配置することができ、建築計画上の融通性に優れる。囲繞領域は、種々の用途に利用可能である。囲繞領域に、上下方向に連通する無床空間を形成することにより、開放感のあるスロープとなし得、上方から自然光による採光を得るようにすることも可能である。無床空間をスロープの内側からアクセス可能な救助空間として構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスロープ1の実施例1を示すもので、(a)は平面図、(b)は上下方向の中間部(Fn+1階とFn階との間)における構造を示す斜視図である。
【図2】多層の建物(建物の図は省略している)の上下方向に複数階にわたって設けられたスロープ1を示す斜視図である。
【図3】スロープ構造体1の基本形の平面的な特徴の説明図である。
【図4】スロープ構造体1の基本形の平面的な特徴の説明図である。
【図5】スロープ構造体1の基本形の平面的な特徴の説明図である。
【図6】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図7】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図8】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図9】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図10】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図11】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図12】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【図13】スロープ1の構成例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 スロープ
5 囲繞領域
7 階段
9 有床スペース
10,11 反転部
20 外周通路
40 内周通路
Claims (7)
- 人が移動するために構築され、使用されるスロープであって、
スロープは、スロープ内のある位置を起点として所定の昇降高さ分、上又は下に移動し、平面視、同一起点に戻ることのできる一つのスロープ単位が連層的に設けられることにより構築され、所定の平面形状を有しており、かつ
スロープの平面形は、進路をほぼ180°反転する、少なくとも複数箇所の反転部を有するとともに、ほぼ環状をなす通路によって巻かれた囲繞領域を有する、スロープ。 - スロープの平面形は、進路をほぼ180°反転する、2箇所の反転部を有し、
反転部同士を迂回して結ぶ外周通路と、該外周通路の内側に沿って反転部同士を結ぶ内周通路とを形成して、ほぼ環状をなす内周通路の内側かつスロープのほぼ中央に囲繞領域を設けた、請求項1に記載のスロープ。 - 囲繞領域に、上下方向に連通する無床空間が形成された、請求項1又は2に記載のスロープ。
- 囲繞領域に階段を設けた、請求項1〜3のいずれかに記載のスロープ。
- 囲繞領域に有床スペースを備えた、請求項1〜4のいずれかに記載のスロープ。
- スロープの平面形はほぼロ字形をなす、請求項2〜5のいずれかに記載のスロープ。
- スロープの平面形はほぼO字形をなす、請求項2〜5のいずれかに記載のスロープ。
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