JP3678343B2 - ケーブル外皮の切裂き工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブルの外皮を切り裂く工具に係り、特にスロットロッドを用いない光ファイバケーブルの外皮を切り裂くのに好適なケーブル外皮の切裂き工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバケーブルは、スロットロッドの周面に複数の溝(スロット)を放射状、かつ長手方向に螺旋状に形成し、光ファイバ(心線)をスロットロッドのスロット内に配置してスロットロッドの周囲を硬質ポリエチレンなどによって覆っていた。しかし、従来の光ファイバケーブルは、スロットロッドを用いているために高価となる。また、上記の光ファイバケーブルは、スロットロッドのスロットに光ファイバを配置しているため、光ファイバの数に比較して寸法が大きくなるとともに、大きな重量を有する。このため、近年は、図6に示したように、スロットロッドを用いない光ファイバケーブルが開発され、光ファイバケーブルのコスト削減と小型、軽量化が図られている。
【0003】
図6(1)において、光ファイバケーブル10は、ケーブル本体部12と支持線部14とを有している。支持線部14は、ケーブル本体部12と適宜の間隔をもって平行に配置してあり、長手方向に所定の間隔をもって設けた接続部(首部)16によって、ケーブル本体部12に接続してある。
【0004】
ケーブル本体部12は、図6(2)に示したように、中心部に複数の光ファイバ18がマトリックス状に配置してあり、その周囲にプラスチックからなる繊維状の保護材20が設けてある。そして、保護材20の周囲は、硬質ポリエチレンなどからなる外皮22によって覆ってある。この外皮22は、接続部16を介して支持線部14の外皮24と一体となっている。また、ケーブル本体部12には、その作用を後述する一対の切り裂き紐28(28a、28b)が外皮22の内側部に埋設して設けてある。
【0005】
切り裂き紐28は、保護材20の水平方向の両側に接して配置してある。そして、ケーブル本体12の外皮22には、切り裂き紐28と対応した部分の表面が外方に円弧状に膨出した凸部30(30a、30b)が形成してあって、切り裂き紐28が埋設してある位置が容易にわかるようにしてある。このため、ケーブル本体部12の断面形状は円形でなく、異形となっている。さらに、ケーブル本体部12の外皮22には、切り裂き紐28a、28bを配置した方向と直交する上下方向であって、光ファイバ18の両側に鋼線からなる一対の抗張力体32が埋設してあって、光ファイバケーブル10を延線する際などに、光ファイバケーブル10に張力が作用しても切断しないようにしてある。なお、図6(2)に示した符号34は、鋼線によって形成した支持線である。
【0006】
ところで、このようになっている光ファイバケーブル10は、架設したのちに途中から分岐するような場合、外皮22を除去して光ファイバ18を露出させる必要がある。この外皮22の除去は、従来、次のようにして行なっていた。(1)まず、外皮22の両側の凸部30をナイフのような刃物によって削り取り、切り裂き紐28を露出させる。(2)次に、切り裂き紐28を切断して端部をドライバなどの棒状のものに巻き付ける。(3)さらに、切り裂き紐28を巻き付けた棒状体を回転させて切り裂き紐28をさらに巻き付け、切り裂き紐28によって外皮22を適宜の長さ切り裂く。(4)その後、外皮22と保護材20とを刃物によって切除し、光ファイバ18を露出させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来、光ファイバ18を露出させる場合、外皮22の凸部30を刃物によって鉛筆を削るようにして削り取り、切り裂き紐28を露出させるようにしていた。しかし、このような方法は、作業が容易でなく、多くの時間を必要とし、また作業者の技量に依存するため、光ファイバ18を損傷するおそれもある。
【0008】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、ケーブルの外皮を容易に切り裂くことができるようにすることを目的としている。
また、本発明は、光ファイバの損傷を防止できるようにすることなどを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係るケーブル外皮の切裂き工具は、ベースと、このベースに固定した固定ブロックと、前記ベースに移動可能に設けた可動ブロックとからなる工具本体と、前記ベースに枢着されて前記可動ブロックを移動させる開閉把手と、前記ベースに形成されて前記可動ブロックに設けたスライド板が挿入され、前記可動ブロックを前記固定ブロックとの接離方向に平行に案内する案内溝と、前記固定ブロックと前記可動ブロックとの対抗面に設けられてケーブル本体を配置するケーブル配置溝と、前記ベースに固定されて前記開閉把手とともに把持され、前記開閉把手を介して前記可動ブロックを移動させて前記ケーブル配置溝を閉じる把手と、前記ケーブル配置溝に突出して設けられ、前記工具本体を前記ケーブル本体の軸線に沿ってケーブル本体と相対移動させたときに、ケーブル本体の外皮を切り裂く刃と、を有することを特徴としている。
【0010】
外皮を切り裂く刃は、回転自在ないわゆる回転刃とすることが望ましい。また、刃は、外皮に埋設してある切り裂き紐と対応した位置を切り裂くように配置する。そして、ケーブル配置溝は断面形状をケーブル本体の異形断面形状とほぼ等しく形成し、刃はケーブル配置溝に配置されたケーブル本体に埋設した切り裂き紐と対応した位置に配置するとよい。
【0011】
【作用】
上記のごとく構成した本発明は、開閉自在なケーブル配置溝にケーブル本体を配置して閉じ、工具本体とケーブル本体とを軸線に沿って相対移動させると、ケーブル配置溝に突出させた刃がケーブル本体の外皮に食い込んでこれを切り裂く。したがって、工具本体のケーブル配置溝にケーブル本体を配置し、工具本体をケーブル本体に沿って移動させるだけで所望の長さにわたって外皮を容易に切り裂くことができ、作業時間を大幅に短縮することができる。そして、刃のケーブル配置溝に突出させる量を、外皮のみを切り裂くような長さに設定しておくことにより、光ファイバを損傷するおそれがない。
【0012】
外皮を切り裂く刃を、いわゆる回転刃とすることにより、工具本体をケーブル本体に沿って移動させる際の抵抗を大幅に小さくすることが可能で、作業者の労力、負担を軽減することができる。しかも、ケーブル配置溝の断面形状がケーブル本体の断面形状とほぼ等しくなっているため、工具本体とケーブル本体とを相対移動させたときに、外皮を切り裂く軸心回りの位置(周方向位置)がずれるのを防止することができる。また、外皮の切り裂き紐と対応した位置を切り裂くことにより、刃がやや深く入ったとしても心線(光ファイバ)を損傷することがなく、切り裂き紐を容易に引き出すことができるので、その切断処理も容易に行なうことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係るケーブル外皮の切裂き工具の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るケーブル外皮の切裂き工具の正面図であり、図2は図1のB−B線に沿った断面図、図3は図1のC−C線に沿った断面図である。これらの図において、切裂き工具50は、工具本体52にケーブル配置溝54が形成してある。このケーブル配置溝54は、図2および図3に示してあるように、横断面の形状が図6(2)に示したケーブル本体部(ケーブル本体)12の断面形状にほぼ等しい異形断面形状をなしている。すなわち、ケーブル配置溝54は、ケーブル本体部12に設けた凸部30が配置される膨出部(本体凹部)55を有している。また、工具本体52は、ケーブル配置溝54の上部に、光ファイバケーブル10の接続部16との干渉を避けるための開口56を有している。
【0014】
工具本体52は、図2に示したように、直方体状の固定ブロック58と、可動ブロック60、およびベース62とからなっている。固定ブロック58は、ベース62の上面に固定してある。また、可動ブロック60は、固定ブロック58に対して接離可能となっており、可動ブロック60を図2の左右方向に移動させることにより、ケーブル配置溝54を開閉できるようになっている。そして、可動ブロック60の下面には、図3に示したように、スライド板64が固定してある。このスライド板64は、ベース62に形成した案内溝66(図4参照)に挿入してあって、案内溝66に案内されることにより、可動ブロック60がケーブル配置溝54の長手方向と直交した方向に移動するようになっている。
【0015】
ケーブル配置溝54は、固定ブロック58と可動ブロック60とのそれぞれの対面位置に形成してあって、固定ブロック58側と固定ブロック60側とで対称になっている。そして、固定ブロック58と可動ブロック60とのそれぞれには、先端側(図1の上側)の対応位置に独楽状の回転刃68が回転自在に取り付けてある。この回転刃68は、一部がケーブル配置溝54の内部に突出し、図6(2)に示したケーブル本体部12の外皮22の切裂き紐28と対応した位置、すなわち凸部30を切り裂くようになっている。すなわち、回転刃68は、図3に示したように、薄い円盤状の刃がケーブル配置溝54の膨出部(本体凹部)55と対応した位置に配置されていて、ケーブル配置溝54に配置されたケーブル本体部12の凸部30と対応した位置となるように取り付けてある。また、固定ブロック59と可動ブロック60とには、ねじなどからなる回転刃押え69が設けてあって(図2参照)、回転刃68が脱落しないようにしてある。
【0016】
ベース62の下面には、図1に示したように、把手70と開閉把手72とが取り付けてある。把手70は、ベース62の一側(固定ブロック58側)の後端部に固定してある。一方、開閉把手72は、図5に示したように、先端側がベース62の一側先端部にピン74を介して枢着してあって、矢印75のように回動させることができるようになっている。また、開閉把手72は、後端側がベース62のピン74を設けた角部のほぼ対角側に延びている。そして、開閉把手72は、長手方向の中間部に長手方向に沿った開閉長孔76が設けてあって、この開閉長孔76に可動ブロック60に立設した開閉ピン78が挿入してある。このため、開閉把手72を矢印75のように図5の時計方向に回動させると、開閉ピン78が開閉長孔76に案内されつつ同図の左方向に移動し、可動ブロック60が開閉ピン78と一体に移動して固定ブロック58から離間し、図4に示したようにケーブル配置溝54が開かれる。
【0017】
このように構成した実施形態の作用は、次の通りである。まず、開閉把手72を介して可動ブロック60を固定ブロック58から離間する方向に移動させ、図4に示したように、ケーブル配置溝54を開く。次に、光ファイバケーブル10のケーブル本体部12を固定ブロック58と可動ブロック60との間に配置したのち、把手70と開閉把手72とを相互に接近するように握り締め、可動ブロック60を図4の左方向に移動させてケーブル配置溝54を閉じ、ケーブル配置溝54内にケーブル本体部12を配置する。そして、図1に示したように、固定ブロック58と可動ブロック60との下部を密着させると、ケーブル配置溝54内に突出している一対の回転刃68がケーブル本体部12の外皮22に設けた凸部30に食い込む。そこで、把手70と開閉把手72とを握った状態のまま、切裂き工具50を光ファイバケーブル10の軸線に沿って移動させると、回転刃68が回転しつつ切り裂き紐28と対応した位置の外皮22、すなわち凸部30を切り裂く。このようにして外皮22の所望の長さ切り裂いたのちは、従来と同様にニッパなどによって外皮22と切り裂き紐28と保護材20とを切断して除去し、光ファイバ18を露出させる。
【0018】
このように、実施形態においては、光ファイバケーブル10のケーブル本体部12を切裂き工具50のケーブル配置溝54に配置し、切裂き工具50を光ファイバケーブル10と相対移動させるだけで外皮22を容易に切り裂くことができる。そして、実施形態の切裂き工具50は、一対の回転刃68をケーブル本体部12の直径方向両側に配置してあるため、切り裂かれた外皮22が半割り状態となり、外皮22の切除、光ファイバ18の露出を容易に行なうことができる。
【0019】
また、外皮22を切り裂く刃を回転刃58としたことにより、切裂き工具50を光ファイバケーブル10の軸線に沿って移動させる際の抵抗が小さくなり、作業者の労力、作業負担を軽減することができる。さらに、回転刃68は、切り裂き紐28に対応した凸部30の部分を切り裂くようになっているため、切り裂き紐28を容易に取り出して切断することができる。さらに、ケーブル配置溝54の断面形状が異形のケーブル本体部12の断面形状とほぼ等しくしてあるため、切裂き工具50を移動させたときに、外皮22の周方向における切断位置のずれを生ずることがなく、切り裂き紐28に対応した位置を確実に切り裂くことができる。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、開閉自在なケーブル配置溝にケーブル本体を配置して閉じ、工具本体をケーブル本体の軸線に沿って移動させると、ケーブル配置溝に突出させた刃がケーブル本体の外皮に食い込んでこれを切り裂くため、工具本体をケーブル本体に沿って移動させるだけで所望の長さにわたって外皮を容易に切り裂くことができ、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0021】
そして、外皮を切り裂く刃を、いわゆる回転刃としたことにより、工具本体をケーブル本体に沿って移動させる際の抵抗を大幅に小さくすることが可能で、作業者の労力、負担を軽減することができる。また、外皮の切り裂き紐と対応した位置を切り裂くことにより、刃がやや深く入ったとしても心線を損傷することがなく、切り裂き紐の切断処理も容易に行なうことができる。しかも、ケーブル配置溝の断面形状がケーブル本体の断面形状とほぼ等しくなっているため、工具本体とケーブル本体とを相対移動させたときに、外皮を切り裂く軸心回りの位置(周方向位置)がずれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るケーブル外皮の切裂き工具の正面図である。
【図2】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図3】図1のC−C線に沿った断面図である。
【図4】実施形態に係るケーブル外皮の切裂き工具のケーブル配置溝を開いた状態を示す正面図である。
【図5】実施の形態に係るケーブル外皮の切裂き工具の背面図である。
【図6】光ファイバケーブルの説明図であって、(1)は側面図、(2)は(1)のA−A線に沿った断面図である。
【符号の説明】
10………光ファイバケーブル、12………ケーブル本体(ケーブル本体部)、14………支持線部、18………光ファイバ、22………外皮、28a、28b………切り裂き紐、50………切裂き工具、52………工具本体、54………ケーブル配置溝、58………固定ブロック、60………可動ブロック、68………刃(回転刃)、70………把手、72………開閉把手、78………開閉ピン。
Claims (3)
- ベースと、このベースに固定した固定ブロックと、前記ベースに移動可能に設けた可動ブロックとからなる工具本体と、
前記ベースに枢着されて前記可動ブロックを移動させる開閉把手と、
前記ベースに形成されて前記可動ブロックに設けたスライド板が挿入され、前記可動ブロックを前記固定ブロックとの接離方向に平行に案内する案内溝と、
前記固定ブロックと前記可動ブロックとの対抗面に設けられてケーブル本体を配置するケーブル配置溝と、
前記ベースに固定されて前記開閉把手とともに把持され、前記開閉把手を介して前記可動ブロックを移動させて前記ケーブル配置溝を閉じる把手と、
前記ケーブル配置溝に突出して設けられ、前記工具本体を前記ケーブル本体の軸線に沿ってケーブル本体と相対移動させたときに、ケーブル本体の外皮を切り裂く刃と、
を有することを特徴とするケーブル外皮の切裂き工具。 - 前記刃は、前記工具本体に回転自在に取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のケーブル外皮の切裂き工具。
- 前記ケーブル配置溝は断面形状がケーブル本体の異形断面形状にほぼ等しく形成してあり、前記刃はケーブル配置溝に配置された前記ケーブル本体に埋設した切り裂き紐と対応した位置に配置してあることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル外皮の切裂き工具。
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