JP3677514B2 - 車両用カーペット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用カーペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用ニードルパンチカーペットとしては、繊維ウエブを200〜400g/m2程度の目付けでニードリングを施して不織布状とした表層材の裏面にPE(ポリエチレン)フィルムシート(融点110〜130℃)を400g/m2程度の目付けで塗工したものを原反とし、これを所定形状に裁断し、その裏面側から遠赤外線を照射してPEフィルムシートを加熱軟化させながらプレス金型等によって所定形状、即ち、各車両のフロアの凹凸形状に沿うように加圧成型したものが多用されている。
【0003】
上記PEフィルムシートは、車両用カーペットの最終的な形状に成型・保形させることや成形型の下にセットしてある防音用フェルトと同時に接着させること等を目的として使用されている。
また、従来、PEフィルムシートによる防音用フェルトへの接着機能の代わりに、ニードルパンチ加工で不織布状とされた表層材の裏面にホットメルトパウダーを散布接着させたり、蜘蛛の巣状に加工したホットメルトシートやフィルム状ホットメルトからなる接着シートを表層材の裏面に熱融着により重ね合わせたり、表層材側からニードルパンチ加工し、表層材の繊維束を裏面の接着シート層を貫通して突出させ、この突出する繊維束で表層材と接着シート層とを接合したものは公知である(例えば、特開昭59−82476号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記PEフィルムシートを400g/m2程度の目付けで表層材の裏面
に塗工した従来の車両用カーペットは、上記PEフィルムシートの塗工工程が、表層材の製造工程(カード、ラッピング、ニードリング工程等からなる不織布製造工程)とは全く別の工程となり、しかも、PEフィルムシートの塗工装置を必要とするため製品コストが高価となり、その主要なユーザーである自動車メーカー等から、より安くすることが要求されている。
一方、特開昭59−82476号公報のものも、接着シート層が表層材の製造工程(カード、ラッピング、ニードリング工程等からなる不織布製造工程)とは全く別の工程で製造された蜘蛛の巣状のホットメルト織布やホットメルトフィルムを使用するものであるため、製品コストが高価となる欠点があり、しかも、ニードリング方向を表層材の表側から裏側の接着シート層側に向けて行うだけに限定されるため、表面に針穴が残ったり、カーペットの表層の色柄や模様等が単調となる傾向があった。
【0005】
そこで本発明は、従来のPEフィルムバッキングと同等の機能を有する安価な車両用カーペット及びその製造方法を提供することを課題としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、短繊維ウェブで構成された表層と、該表層の裏面に接合され、中心部に高融点繊維を有する芯鞘型熱可塑性繊維であって前記表層とは異なる色彩の繊維で構成した低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に20〜80%混綿してウェブ状に構成された成型・保形層と、該成型・保形層の裏面に接合され、低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に50%以上混綿してウェブ状に構成されたフェルト接着層とをニードルパンチングで一体化して車両用カーペットを構成したものである。この構成により、表層と成型・保形層と接着層との繊維ウエブをニードルパンチング加工して不織布状にする加工のみで車両用カーペットを製造することができ、従来のようなPEフィルムシートの塗工(不織布製造工程とは別の工程)を省略できるため、車両用カーペットを安価に提供することができる。
【0007】
また、本発明は、低融点熱可塑性繊維が混綿された成型・保形層と、該成型・保形層の裏面に接合された低融点熱可塑性繊維を主体とするフェルト接着層とを設けたことにより、車両用カーペットに求められる機能を分けることができ、その結果、それぞれの層での低融点熱可塑性繊維の混綿割合を適切に調整して必要とされる剛性や接着性を自由に設定変更することができる。
【0008】
また、本発明は、前記成型・保形層が、低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に20〜80%混入してあることを特徴とする。なお、低融点熱可塑性繊維の混入割合は、20%以下では所定の成型・保形機能が維持できなくなり、また、80%以上では、硬くなりすぎるため、上記範囲が妥当であり、より好ましくは、30〜70%の範囲である。
【0009】
また、本発明は、前記接着層が、低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に50%以上混入してあることを特徴とする。この構成により、車両用カーペットとして必要とされる防音用フェルトへの接着性を十分に発揮させることができる。なお、低融点熱可塑性繊維の混入割合は、70%で良好かつ十分な接着機能が得られるが、仮接着程度で良い時は、50%程度でもよい。
【0010】
また、本発明は、前記成型・保形層の低融点熱可塑性繊維を、中心部に高融点繊維を有する芯鞘型熱可塑性繊維で構成することが好ましい。この構成により、成型・保形層の繊維ウエブは、後の加熱・加圧成型工程において、芯鞘型の鞘部の低融点熱可塑性繊維だけが溶融し、芯部の高融点繊維が溶融せずに残存して他の繊維と融着し、剛性の均一性を高めることができ、しかも、加熱時の収縮も小さくでき、さらに、割れにも強くなる利点がある。
【0011】
また、本発明の車両用カーペットの製造方法は、低融点熱可塑性繊維を主体とする接着層用の短繊維ウェブの上に低融点熱可塑性繊維を混綿した成型・保形層用の短繊維ウェブを重ね合せ、さらにその上に表層用の短繊維ウェブを重ね合せ、これらをニードルパンチング加工により接合し、その後、前記低融点熱可塑性繊維を加熱溶融させつつ所定形状に加圧成型することを特徴とする。この構成とすることにより、表層の繊維と成型・保形層及び接着層の繊維とを一緒にニードルパンチング加工して不織布状に加工すると同時に三層の繊維を相互に絡み合わせて接合することができ、従来のようなPEフィルムシートの塗工(不織布加工工程とは別の工程)を省略して工数を削減できるため、車両用カーペットを安価に製造することができる。
【0012】
本発明はまた、表層の短繊維ウェブと低融点熱可塑性繊維を混綿した成型・保形層の短繊維ウェブと低融点熱可塑性繊維を主体とする接着層の短繊維ウェブとをそれぞれ別に不織布にし、これら3層の不織布を重ね合わせてニードリングにより一体に接合するか、または、表層の短繊維ウェブをプレーン状あるいは立毛状の不織布に別に製造しておき、前記組成の成型・保形層及びフェルト接着層の複合短繊維ウェブをニードルパンチする際、前記表層不織布を重ね合せて一緒にニードリングして接合するか、或いは、表層の短繊維ウェブと前記組成の成型・保形層の短繊維ウェブをそれぞれ別にニードリングして不織布としておき、前記組成のフェルト接着層の短繊維ウェブをニードリングして不織布とする際、前記表層及び成形・保形層の不織布を重ね合わせて一緒にニードリングにより一体に接合し、その後、前記低融点熱可塑性繊維を加熱溶融させつつ所定形状に加圧成型することを特徴とする。この構成とすることによっても上記と同様に、従来のようなPEフィルムシートの塗工(不織布加工工程とは別の工程)を省略して工数を削減できるため、車両用カーペットを安価に製造することができる。
【0013】
また、本発明は、前記低融点熱可塑性繊維を加熱溶融させつつ所定形状に加圧成型する際、接着層の裏面側の所定位置に防音用フェルトを同時に接着させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記ニードルパンチング加工を接着層側から表層側に向けて行うことも可能であり、この構成により、成型・保形層及び接着層の繊維の一部をニードルパンチング用針の串刺しピッチに対応した状態で表層側に露出させることができ、従って、表層と成型・保形層及び接着層とに別色彩の繊維を使用することにより、表層側に成型・保形層及び接着層側の繊維を前記ピッチに対応する模様状に表出させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図1の(A)は本発明に係る車両用カーペットの原反の概略構成を示す拡大縦断側面図、(B)は成型状態の概略縦断側面図を示している。
【0016】
図1において、1は表層、2は成型・保形層2aとフェルト接着層2bとからなる裏層である。表層1は、ポリプロピレン繊維その他の繊維の単一又は複数種の混合した繊維を混綿工程、カード工程、ラッピング工程などを経て適宜の目付けでウエブ状とされた繊維ウェブまたは不織布を使用する。例えば、本実施形態例では、ポリエステル繊維を使用し、150g/m2の目付けの短繊維ウェブを
使用した。
【0017】
裏層2は、成型・保形層2aとフェルト接着層2bとに分けて構成する。成型・保形層2aの繊維ウエブは、通常の融点をもつ熱可塑性繊維(例えば、レギュラーPET繊維等)に低融点の熱可塑性繊維(低融点オレフィン系繊維等)を20〜80%混入し、これらを混綿工程、カード工程、ラッピング工程等を経て適宜の目付けの短繊維ウエブ状とする。低融点熱可塑性繊維の混入割合は、20%以下では所定の成型・保形機能が維持できなくなり、また、80%以上では、硬くなりすぎるため、上記範囲が妥当であり、より好ましくは、30〜70%の範囲である。本実施例における成型・保形層2aは、低融点の熱可塑性繊維(低融点PET繊維)を通常の融点の熱可塑性繊維(レギュラーPET繊維)に対して50%混綿して、250g/m2の目付けとした。
【0018】
また、前記成型・保形層2aの繊維ウエブ中の低融点熱可塑性繊維は、中心部に高融点繊維を有する芯鞘型熱可塑性繊維で構成する。この構成により、成型・保形層2aの繊維ウエブは、後の加熱・加圧成型工程において、芯鞘型の鞘部の低融点繊維だけが溶融し、芯部の高融点繊維が溶融せずに残存して加熱時の収縮を抑え、しかも、他の繊維と融着して原反の剛性を高めると共に、剛性分布密度を均一に保持させ、さらに、割れ難くし、全体の成型・保形性を均等に発揮させることができる。
【0019】
また、フェルト接着層2bの繊維ウエブは、通常の融点をもつ熱可塑性繊維(例えば、レギュラーPET繊維等)に低融点の熱可塑性繊維(低融点オレフィン系繊維等)を50%以上混入し、これらを混綿工程、カード工程、ラッピング工程等を経て適宜の目付けの短繊維ウエブ状とする。低融点熱可塑性繊維の混入割合は、70%で良好なフェルト接着性が得られるが、仮接着程度で良い場合には、50%程度としてもよい。本実施形態例では、フェルト接着層2bは、低融点の熱可塑性繊維(低融点PET繊維)を通常の融点をもつ熱可塑性繊維(レギュラーPET繊維)に対して70%混綿して、100g/m2の目付けとした。
【0020】
本発明の車両用カーペットの製造方法は、同一ラインに構成されたカード工程で上流より先ず、低融点熱可塑性繊維を主体とする接着層2b用の短繊維ウェブを供給し、次にその上に低融点熱可塑性繊維を混綿した成型・保形層2a用の短繊維ウェブを供給して重ね合せ、最後にさらにその上に表層1用の短繊維ウェブを供給して重ね合せ、これらを一括して一緒にニードルパンチング加工により接合して不織布状として、図1の(A)に示すような3層に積層された車両用カーペットの原反とされる。その後、前記低融点熱可塑性繊維を加熱溶融させつつ上下の金型(図示省略)により加圧成型して、図1の(B)に示すような所定形状の車両用カーペット3に成型される。
【0021】
なお、図1の(B)において、両側下面には、防音用フェルト4、4を加熱・加圧成型時、下型の所定位置(例えば、車両フロア上の各座席に対応した位置)に予めセットしておくことによって、カーペットの成形と同時に前記フェルト接着層2bによって防音用フェルト4、4をカーペットの裏面に接着させることができる。
【0022】
上記加熱・加圧成型工程では、熱風を吸引して前記積層体の繊維ウエブ中を潜通させて加熱する吸引加熱方式を採用することができ、成型時の繊維の可塑化及び溶融を均一に行わせることができ、成形性及び保形性を向上させることができる。なお、従来のPEフィルムシートの場合では、該PEフィルムシートが熱風の通過を妨害するため、遠赤外線照射等の輻射加熱しか採用できず、加熱源に近い側と遠い側とで温度差が生じ、繊維ウェブ全体を均一な温度分布で加熱することができない欠点があり、しかも、製造コストも嵩む欠点があった。
【0023】
上記構成とすることにより、成型・保形層2a及びフェルト接着層2bの短繊維ウェブを表層1の短繊維ウェブと一緒にニードリング加工して表層1の裏面に接合すること、即ち、不織布加工工程のみで車両用カーペットを製造することが可能となり、従来のようなPEフィルムシートの塗工(不織布加工とは別の加工工程)が省略でき、車両用カーペットを安価に製造することができる。
【0024】
なお、本発明の製造方法は、その変形例として、表層1の短繊維ウェブと低融点熱可塑性繊維を混綿した成型・保形層2aの短繊維ウェブと低融点熱可塑性繊維を主体とするフェルト接着層2bの短繊維ウェブとをそれぞれ別に不織布にし、これら3層の不織布を重ね合わせてニードリングにより一体に接合するか、または、表層1の短繊維ウェブをプレーン状あるいは立毛状の不織布に別に製造しておき、前記組成の成型・保形層2a及びフェルト接着層2bの複合短繊維ウェブをニードルパンチする際、前記表層1の不織布を重ね合せて一緒にニードリングして接合するか、或いは、表層1の短繊維ウェブと前記組成の成型・保形層2aの短繊維ウェブをそれぞれ別にニードリングして不織布としておき、前記組成のフェルト接着層2bの短繊維ウェブをニードリングして不織布とする際、前記表層1及び成形・保形層2aの不織布を重ね合わせて一緒にニードリングにより一体に接合し、その後、前記低融点熱可塑性繊維を加熱溶融させつつ所定形状に加圧成型してもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、成型・保形層の繊維と接着層の繊維とを表層の繊維と一緒に同時にニードルパンチング加工するだけで車両用カーペットを製造することができるため、不織布加工工程以外の工程を排除して車両用カーペットを安価に提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、車両用カーペットのバッキングに求められる機能を成型・保形層と接着層とに分けることができ、その結果、それぞれの層での低融点熱可塑性繊維の混綿割合を適切に調整して求められる車両に適合した成型・保形性、剛性並びに接着性を発揮させることができる。
【0027】
なお、成型・保形層の低融点熱可塑性繊維の混入割合は、20%以下では所定の成型・保形機能が維持できなくなり、また、80%以上では硬くなりすぎるため、上記範囲が妥当であり、より好ましくは、30〜70%の範囲である。
【0028】
また、接着層の低融点熱可塑性繊維の混入割合は、50%以上好ましくは70%以上とするのが好ましい。
【0029】
また、成型・保形層やフェルト接着層に混綿される低融点熱可塑性繊維は、中実型や芯鞘型のいずれでもよく、それぞれの層に求められている機能にマッチさせるようにすればよい。
【0030】
また、本発明の車両用カーペットの製造方法によれば、表層繊維、成型・保形層繊維及び接着層繊維を短繊維ウェブとし、これらをニードリング加工して車両用カーペットを製造するものであるため、製造コストを安価とすることができ、また、防音用フェルトを接着する場合でも加熱成型工程で同時に行わせることができ、製造コストを一層低減することができる。
【0031】
また、本発明によれば、成型・保形層及び接着層の繊維の一部をニードルパンチング時のニードルピッチに対応した状態で裏側から表層側に露出させることができ、従って、表層と成型・保形層及び接着層とに別色彩の繊維を使用することにより、表層側に成型・保形層及び接着層側の繊維を前記ピッチに対応する模様状に表出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明に係る車両用カーペットの原反の概略構成を示す拡大縦断側面図、(B)は成型状態の概略縦断側面図。
【符号の説明】
1 表層
2 裏層
2a 成型・保形層
2b 接着層
3 車両用カーペット
4 防音用フェルト
Claims (1)
- 短繊維ウェブで構成された表層と、該表層の裏面に接合され、中心部に高融点繊維を有する芯鞘型熱可塑性繊維であって前記表層とは異なる色彩の繊維で構成した低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に20〜80%混綿してウェブ状に構成された成型・保形層と、該成型・保形層の裏面に接合され、低融点熱可塑性繊維をそれよりも高融点の熱可塑性繊維に50%以上混綿してウェブ状に構成されたフェルト接着層とをニードルパンチングで一体化されていることを特徴とする車両用カーペット。
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