JP3677103B2 - X線発生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子ビーム等の荷電粒子ビームを多層薄膜に入射させることによって多層薄膜から多重干渉X線を発生させるX線発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型で強力なX線源として、電子ビーム等の荷電粒子ビームを多層薄膜に入射させた際に発生する共鳴遷移放射光(resonance transition radiation)が注目されている。
【0003】
図10には従来のこの種のX線発生装置の概略構成が示されている。
図中1は電子ビームを発生し、これを加速して送出する電子ビーム発生装置をを示している。電子ビーム発生装置1から送出された電子ビーム2は、進行路途上に配置された多層薄膜ターゲット3に入射する。この入射によって多層薄膜ターゲット3から波長が1オングストローム以下のX線4が放出される。このX線4は図示しない案内路を介して導かれ、たとえば露光などに用いられる。多層薄膜ターゲット3を通過した電子ビーム2は、ビームダンプ5で回収される。
【0004】
図11には多層薄膜ターゲット3の構成例が示されている。(a) は多層薄膜ターゲット3の縦断面図であり、(b) は多層薄膜ターゲット3の正面図である。
同図に示すように、環状に形成された固定台6の一方の面に径および高さの異なる複数の薄膜固定用リング7を同心円状に配設し、これら薄膜固定用リング7にマイラ製の薄膜8を接着によってそれぞれ取り付けたものとなっている。通常は、各薄膜固定用リング7の高さの調整で薄膜相互の間隔を一定の値に保つようにしている。また、薄膜8を形成する素材としては、マイラの他にBe(ベリリウム)等のようにX線の吸収の少ない原始番号の低い物質が用いられている。
【0005】
しかしながら、上記のように構成された従来のX線発生装置にあっては次のような問題があった。
すなわち、従来の装置では、多層薄膜ターゲット3に入射して一度多重干渉X線の発生に供された電子ビーム2をビームダンプ5に捨てる構成を採用している。このため、効率が悪く、容量の大きい電子ビーム発生装置1を必要とする問題があった。
【0006】
また、多層薄膜ターゲット3を構成する薄膜8として市販されている薄膜を利用する場合には、厚さの選択に制限があり、さらに複数の均一な薄膜から多層膜を作成する際には、固定台6と薄膜固定用リング7との間に介在されるスペーサ等の間隔調整用治具が必要となるため、多層薄膜ターゲット3の構造が複雑になるという問題点もあった。
【0007】
また、X線源としてのエネルギを変化させるためには、電子ビームのエネルギが一定の場合、多層膜ターゲット3を構成している薄膜8の膜厚および膜間隔を変化させることが必要であるが、Be薄膜やマイラ薄膜等の既製品を利用する場合には、任意の膜厚を選択することが難しいため、多層膜ターゲット3より得られるX線のエネルギが必然的に狭い範囲に制限されるという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、多層薄膜から多重干渉X線を発生させるようにした従来のX線発生装置にあっては、荷電粒子ビームの利用効率が低く、これが原因して容量の大きい荷電粒子ビーム発生装置を必要とするばかりか、多層薄膜ターゲットの構造が複雑で、しかも任意の膜厚および膜間隔を選択することが難しいため、得られるX線のエネルギが狭い範囲に制限されるという不具合があった。
そこで本発明は、上述した不具合を解消でき、強力なエネルギを持つX線を発生させることのできるX線発生装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るX線発生装置では、荷電粒子ビームを発生し、これを加速して送出する粒子ビーム発生装置と、この粒子ビーム発生装置から送出された荷電粒子ビームを真空状態に保持された空胴内に導入し、該空胴内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置と、前記空胴内に配置され、周回する前記荷電粒子ビームの入射を受けて多重干渉X線を発生する多層膜ターゲットとを備えている。
【0010】
ここで、前記多層膜ターゲットは、各薄膜としてシリコンウェハ等へのエッチング加工で形成された膜を用いたものであることが好ましい。具体的には、荷電粒子ビームの通過領域となる薄肉のビーム通過領域と該ビーム通過領域より厚肉のビーム非通過領域とを備えた薄膜を、上記ビーム非通過領域の部分をスペーサとして複数積層して構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記多層膜ターゲットは、前記各薄膜における前記ビーム通過領域と前記ビーム非通過領域との段差によって形成された各隙間を外部へ解放している構成を採用していてもよい。
【0012】
また、前記多層膜ターゲットは、前記各薄膜が結晶構造をなす素材で形成され、かつ上記各薄膜における前記ビーム通過領域の結晶面が前記荷電粒子ビームの入射方向に対して所定の角度をなすように配置されていてもよい。
【0013】
また、前記空胴内に所定の電子エネルギに対してそれぞれ異なるエネルギの多重干渉X線を発生する複数の多層膜ターゲットが配置するとともに、これら多層膜ターゲットのうちの任意の1つを荷電粒子ビームの周回軌道上に位置させる交換手段をさらに備えていてもよい。
【0014】
さらに、前記粒子ビーム保存装置は、周回する前記荷電粒子ビームを加速する高周波加速空胴を備えていてもよい。
さらにまた、前記粒子ビーム保存装置は、所定の時間だけ前記多層膜ターゲットに前記荷電粒子ビームを入射させるバンプ軌道を形成するパルス電磁石を備えていてもよい。
【0015】
上記構成のX線発生装置では、粒子ビーム発生装置から送出された荷電粒子ビームを真空状態に保持された空胴内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置を設け、上記空胴内に多層膜ターゲットを配置しているので、同じ荷電粒子を複数回に亘って多層膜ターゲットに入射させることができ、荷電粒子ビームの利用効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0016】
また、多層膜ターゲットの薄膜としてシリコンウェハ等へのエッチング加工で形成された膜を用いると、所望とする膜厚および膜間隔の多層膜ターゲットを簡単な工程で製作できる。特に、薄膜として荷電粒子ビームの通過領域となる薄肉のビーム通過領域と該ビーム通過領域より厚肉のビーム非通過領域とを備えたものを用い、この薄膜を上記ビーム非通過領域の部分をスペーサとして複数積層した構成を採用すると、多層膜ターゲットの構成を単純化でき、所望とするエネルギに対応したものを簡単な工程で製作できる。
【0017】
また、粒子ビーム保存装置の空胴内に所定の電子エネルギに対してそれぞれ異なるエネルギの多重干渉X線を発生する複数の多層膜ターゲットが配置するとともに、これら多層膜ターゲットのうちの任意の1つを荷電粒子ビームの周回軌道上に位置させる交換手段を備えていると、エネルギ可変の強力なX線源を得ることが可能となる。
【0018】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照しながら発明の実施形態を説明する。
図1には本発明の一実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図が示されている。
【0019】
同図において、21は荷電粒子である電子ビームを発生し、これを所定エネルギまで加速して送出する電子ビーム発生装置を示している。
電子ビーム発生装置21から送出された電子ビームは、入射装置22を介して電子ビーム保存装置23に導入される。この電子ビーム保存装置23は、全体がレーストラック状に形成され、内部が真空状態に保持された空胴24と、この空胴24のいわゆる4隅に配置された偏向磁石25とを備えている。そして、電子ビーム発生装置21から送出された電子ビームは、空胴24内に入射され、偏向磁石25による偏向を受けて空胴24内を多数回に亘って周回する。
【0020】
一方、空胴24内には、周回する電子ビームの入射を受けて多重干渉X線26を発生する多層膜ターゲット27がターゲットホルダ28に保持された状態で、かつ電子ビーム軌道を横切るように配置されている。なお、発生したX線26は、案内路29を介して使用場所へ導かれる。
【0021】
多層膜ターゲット27は、図2(a) ,(b) に示すように、複数の薄膜30を積層した構成となっている。各薄膜30は、シリコンウェハ等のようにX線吸収の少ない素材にエッチング加工を施して形成されたもので、周回する電子ビームの通過領域となる薄肉のビーム通過領域31と、このビーム通過領域31より厚肉のビーム非通過領域32とを備えており、ビーム非通過領域32の部分をスペーサとして積層されている。ビーム通過領域31の厚みは、積層方向の両面の境界面からの遷移放射によるX線が干渉する条件によって決められる。通常は、たとえば10μm程度である。また、積層方向に隣接するビーム通過領域31相互の間隔は、ビーム非通過領域32との間の段差によって調節され、その値は異なる薄膜間の遷移放射X線が干渉する条件で決定される。
【0022】
なお、この例の場合には、各薄膜30に存在しているビーム通過領域31とビーム非通過領域32との段差によって各薄膜30相互間に形成された各隙間33が外部、つまり真空雰囲気に解放されるようにビーム通過領域31が中心部から偏った位置に形成されている。このため、多層膜ターゲット27を真空雰囲気中に配置したとき、薄膜30間からの排気が速やかに行われ、その結果、薄膜30間の圧力差をなくすことができ、ビーム通過領域31相互間の間隔を均一に保持することが可能となる。また、電子ビームを所定時間だけ多層膜ターゲット27に入射させる場合、電子ビームをビーム通過領域31に近付けたり、遠ざけたりする際に、大きなビーム損失を招くビーム非通過領域32に電子ビームを通過させる必要がないので、余分な電子ビームの損失を抑えることができる。
【0023】
ここで、薄膜30の製造方法の一例を図3を参照しながら説明する。
薄膜30は、たとえば両面鏡面研磨したシリコンウェハに異方性エッチングで形状加工を施した後に、膜相当領域を切り出すことにより製造される。
【0024】
(a) 最初に、シリコンウェハ34の両面(100面)にシリコン酸化膜35を形成する。このシリコン酸化膜35は、異方性エッチングの際のマスク層として使用するもので、形成方法は酸化に限らず、CVDなど酸化シリコンの堆積層でもよい。また、マスク材料はシリコン酸化膜とは限らない。たとえば、異方性エッチャントして水酸化カリウム水溶液を用いる場合は、酸化膜を厚くして対処することもあるが、水酸化カリウム水溶液がシリコン酸化膜を比較的よく溶かすので、水酸化カリウム水溶液に溶け難いシリコン窒化膜を形成する場合も多い。また、この窒化膜は金属膜でもよい。
【0025】
(b) 次に、薄膜形成のためにシリコン酸化膜35のパターニングを行なう。
(c) パターニングされたウェハ34を、薄膜部形成のためにシリコン異方性エッチャントで所定の深さまでエッチングする。この異方性エッチャントとしては、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液などが知られている。
【0026】
(d) 形状加工されたウェハ34に対して、シリコン酸化膜35の除去(このプロセスは省略可能)を行った後にもう一度酸化膜35を形成し、さらに形状加工した面と反対側の面のシリコン酸化膜を除去する。
【0027】
(e) ウェハ34に対して異方性エッチングを施し、最終的に得られる薄膜の膜厚まで薄くする。異方性エッチングの特徴としてエッチングは(100)面に垂直に均一に進行し、エッチング面は非常に滑らかになる。したがって、エッチングで形成された薄膜は厚さが均一で表面は非常に滑らかな鏡面になる。
【0028】
(f) 次に、薄くしたウェハ34から酸化膜を除去する。
(g) 酸化膜を除去したウェハ34をダイシングして各薄膜30を切り離す。
以上の工程によって、多層膜ターゲット27を構成する薄膜30を得ることができる。なお、工程(f) は、工程(g) の後に行なうこともできる。この場合、酸化膜が付いている面だけであるが、ダイシング時のシリコン表面のダメージや汚れを少なくできる。
【0029】
図1に示す構成のX線発生装置では、電子ビーム発生装置21から送出された電子ビームを真空状態に保持された空胴24内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置23を設け、空胴24内に多層膜ターゲット27を配置しているので、同じ電子を複数回に亘って多層膜ターゲット27に入射させることができ、電子ビームの利用効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0030】
また、多層膜ターゲット27の薄膜30としてシリコンウェハ等へのエッチング加工で形成された膜を用いているので、所望とする膜厚および膜間隔の多層膜ターゲット27を簡単な工程で製作できる。特に、薄膜30として電子ビームの通過領域となる薄肉のビーム通過領域31と該ビーム通過領域31より厚肉のビーム非通過領域32とを備えたものを用い、これらの薄膜30をビーム非通過領域32の部分をスペーサとして複数積層した多層膜ターゲット27を用いているので、多層膜ターゲット27の構成を単純化でき、所望とするエネルギに対応したものを簡単な工程で製作できる。
【0031】
なお、図1に示した例では、多層膜ターゲット27の積層面が周回する電子ビームの軌道と直交するように多層膜ターゲット27を設けているが、図4に示すように、電子ビームの入射方向36に対して薄膜30aの結晶面が角度θB をなすように多層膜ターゲット27aを配置してもよい。
【0032】
図5(a) に多層薄膜ターゲット27aを構成している薄膜30aの正面図を示し、図5(b) に多層薄膜ターゲット27aの局部的断面図を示す。この例においても、各薄膜30aは、段差の形成によってビーム通過領域31aと該ビーム通過領域31aより厚肉のビーム非通過領域32aとを備えている。ビーム通過領域31aの厚みは、積層方向の両面の境界面からの遷移放射によるX線が干渉する条件によって決められる。また、積層方向に隣接するビーム通過領域31a相互の間隔は、ビーム非通過領域32aとの間の段差によって調節され、その値は異なる薄膜間の遷移放射X線が干渉する条件で決定される。
【0033】
この例では、薄膜30aとしてたとえばシリコン単結晶の(100) 面に前述の如く段差を付けたものを用い、所定の遷移放射X線のエネルギで結晶面(たとえば、(011) 面)に対するBragg 条件の角度となるように多層薄膜ターゲット27aを傾けている。
【0034】
このため、薄膜30aの境界面から発生する遷移放射X線26aを電子ビームの方向36に対して比較的大きな角度の方向へ取出すことが可能となる。上述のように多重干渉の共鳴条件を満たす膜厚および間隔に配置されているため、Bragg 条件の角度に放出されたX線も多重干渉することになる。
【0035】
また、図2、図5に示した例では、各薄膜30(30a)に存在しているビーム通過領域31(31a)とビーム非通過領域32(32a)との段差によって各薄膜相互間に形成された隙間33(33a)が外部、つまり真空雰囲気に解放されるようにビーム通過領域31(31a)が中心部から偏った位置に形成されているが、図6(a) ,(b) に示すように、薄肉のビーム通過領域31bが中央部に形成され、厚肉のビーム非通過領域32bがビーム通過領域31bの周辺に形成されている薄膜30bを積層した多層膜ターゲット27bを用いてもよい。
【0036】
図7には本発明の別の実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図が示されている。なお、この図では図1と同一機能部分が同一符号で示されている。したがって、重複する部分の説明は省略する。
【0037】
このX線発生装置が図1に示した装置と異なる点は、空胴24内に複数の多層膜ターゲット271 ,272 ,…27n を配置したことにある。すなわち、これら多層膜ターゲット271 ,272 ,…27n は、図2と同様な構造に形成されているが、所定の電子エネルギに対してあるX線が多重干渉するように膜厚および膜間隔が最適化されている。これら多層膜ターゲット271 ,272 ,…27n は、それぞれターゲットホルダ281 ,282 ,…28n に支持されてターゲット交換装置40内に配置されている。そして、遠隔操作あるいは手動操作でターゲット交換装置40を操作することによって任意の多層膜ターゲットを電子ビームの周回軌道上に位置させることができるようになっている。
【0038】
したがって、上記構成であると、多層膜ターゲットを適宜交換して使用することで、エネルギ可変の強力なX線源を実現できることになる。
図8には本発明のさらに別の実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図が示されている。なお、この図では図1と同一機能部分が同一符号で示されている。したがって、重複する部分の説明は省略する。
【0039】
このX線発生装置が図1に示した装置と異なる点は、空胴24に電子ビームを加速する高周波加速空胴41を設けたことにある。
空胴24内を周回する電子ビームは、多層膜ターゲット27を通過する度に放射損失でエネルギを失うと同時に多層膜内でのクーロン多重散乱によりエミッタンスが増加する。上記構成であると、多層膜ターゲット27および偏向磁石25の通過で電子ビームが失ったエネルギ分だけ高周波加速空胴41で加速することが可能となる。したがって、高周波加速空胴41がない場合に較べて、エネルギ損失によるビーム損失をなくすことができる。このため、電子ビーム保存装置23a内において電子ビームが多層膜ターゲット27を通過する回数を増加できるため、パルス幅の長い強力なX線を発生させることができる。
【0040】
図9には本発明のさらに異なる実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図が示されている。なお、この図では図8と同一機能部分が同一符号で示されている。したがって、重複する部分の説明は省略する。
【0041】
このX線発生装置が図8に示した装置と異なる点は、電子ビーム保存装置23b内で多層膜ターゲット27の配設位置を境にして上流側と下流側とにパルス電磁石51a,51b,52a,52bを設けていることにある。
【0042】
各パルス電磁石51a,51b,52a,52bは、所定の時間間隔で励磁される。そして、励磁されている期間に電子ビームが偏向を受けて多層膜ターゲット27に入射し、それ以外の期間は多層膜ターゲット27には当たらずに周回する。すなわち、各パルス電磁石51a,51b,52a,52bは、バンプ軌道を構成する役目を担っている。
【0043】
この例では、電子ビーム保存装置23bに入射した電子ビームを高周波加速空胴41で加速し、所定のエネルギまで加速した後に多層膜ターゲット27に入射させることもできる。また、多層膜ターゲット27を通過した際にビームサイズが増大した電子ビームを、一定の時間だけ多層膜ターゲットを通過させないことで、ビームサイズを再び小さくすることも可能である。
【0044】
このように、電子ビーム保存装置23bに高周波加速空胴41およびパルス電磁石51a,51b,52a,52bを配置することで、所定のエネルギの電子ビームを必要な時間だけ、多層膜ターゲット27に入射させることが可能となる。さらに、一度大きくなったビームサイズを再び小さくして再度、多層膜ターゲットに入射させることができる。
【0045】
なお、上述した各例では、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いているが、電子ビームに限られるものではない。また、多層膜ターゲットの各薄膜の形成素材もシリコンウェハに限られるものではない。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のX線発生装置によれば、荷電粒子ビームの利用効率を向上させることができるとともに、任意の入射エネルギに対して所定のX線エネルギを発生するための多層薄膜ターゲットの準備が容易できるため、効率良く広いエネルギ範囲のX線を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図
【図2】 (a) は同装置に組込まれた多層膜ターゲットの正面図で(b) は同ターゲットを(a) におけるA−A線に沿って切断し矢印方向にみた局部的断面図
【図3】同多層膜ターゲットを構成する薄膜の一製造方法を説明するための図
【図4】多層膜ターゲットの配置角度を変えた例を説明するための図
【図5】 (a) は同多層膜ターゲットの正面図で(b) は同ターゲットを(a) におけるB−B線に沿って切断し矢印方向にみた局部的断面図
【図6】 (a) は多層膜ターゲットの変形例の正面図で(b) は同ターゲットを(a) におけるC−C線に沿って切断し矢印方向にみた局部的断面図
【図7】本発明の別の実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図
【図9】本発明の異なる実施形態に係るX線発生装置の模式的構成図
【図10】従来のX線発生装置の模式的構成図
【図11】 (a) は同装置に組込まれた多層膜ターゲットの縦断面図で(b) は同ターゲットを(a) におけるD−D線に沿って矢印方向にみた図
【符号の説明】
21…電子ビーム発生装置
22…入射装置
23,23a,23b…ビーム保存装置
24…真空状態に保持された空胴
25…偏向磁石
26…X線
27,27a,27b,271 〜27n …多層膜ターゲット
30,30a,30b…薄膜
31,31a,31b…ビーム通過領域
32,32a,32b…ビーム非通過領域
33,33a,33b…隙間
41…高周波加速空胴
51a,51b,52a,52b…バンプ軌道形成用のパルス電磁石

Claims (7)

  1. 荷電粒子ビームを発生し、これを加速して送出する粒子ビーム発生装置と、この粒子ビーム発生装置から送出された荷電粒子ビームを真空状態に保持された空胴内に導入し、該空胴内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置と、前記空胴内に配置され、周回する前記荷電粒子ビームの入射を受けて多重干渉X線を発生する多層膜ターゲットとを具備し、前記多層膜ターゲットは、前記荷電粒子ビームの通過領域となる薄肉のビーム通過領域と該ビーム通過領域より厚肉のビーム非通過領域とを備えた薄膜を、上記ビーム非通過領域の部分をスペーサとして複数積層して構成されていることを特徴とするX線発生装置。
  2. 前記多層膜ターゲットは、前記各薄膜における前記ビーム通過領域と前記ビーム非通過領域との段差によって形成された各隙間を外部へ解放していることを特徴とする請求項に記載のX線発生装置。
  3. 前記多層膜ターゲットは、前記各薄膜が結晶構造をなす素材で形成され、かつ上記各薄膜における前記ビーム通過領域の結晶面が前記荷電粒子ビームの入射方向に対して所定の角度をなすように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のX線発生装置。
  4. 前記多層膜ターゲットは、前記各薄膜としてシリコンウェハへのエッチング加工で形成された膜を用いていることを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1項に記載のX線発生装置。
  5. 荷電粒子ビームを発生し、これを加速して送出する粒子ビーム発生装置と、この粒子ビーム発生装置から送出された荷電粒子ビームを真空状態に保持された空胴内に導入し、該空胴内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置と、前記空胴内に配置され、周回する前記荷電粒子ビームの入射を受けて所定の電子エネルギに対してそれぞれ異なるエネルギの多重干渉X線を発生する多層膜ターゲットと、これら複数の多層膜ターゲットのうちの任意の1つを前記荷電粒子ビームの周回軌道上に位置させる交換手段とを具備することを特徴とするX線発生装置。
  6. 荷電粒子ビームを発生し、これを加速して送出する粒子ビーム発生装置と、この粒子ビーム発生装置から送出された荷電粒子ビームを真空状態に保持された空胴内に導入し、該空胴内で複数回周回させる粒子ビーム保存装置と、前記空胴内に配置され、周回する前記荷電粒子ビームの入射を受けて多重干渉X線を発生する多層膜ターゲットとを具備し、前記粒子ビーム保存装置は、所定の時間だけ前記多層膜ターゲットに前記荷電粒子ビームを入射させるバンプ軌道を形成するパルス電磁石を備えていることを特徴とするX線発生装置。
  7. 前記粒子ビーム保存装置は、周回する前記荷電粒子ビームを加速する高周波加速空胴を備えていることを特徴とする請求項に記載のX線発生装置。
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