JP3675983B2 - ヘリウムリークディテクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍機のコンプレッサーや自動車のラジェーター等の気密を要する機器の内部にヘリウムガスを封入加圧し、その漏れの有無をプローブを使用して試験するヘリウムリークディテクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘリウムリークディテクターに於いてヘリウムガスを測定する分析管は、その内部を質量分析の原理に基づき10-3Pa程度の圧力に排気しなければならない。スニッファー法、すなわちヘリウムリークディテクターから延びるプローブで試験体の表面を走査し、コンプレッサー等の試験体から大気中に漏れてくるヘリウムガスを吸引する方法により該試験体の漏洩箇所を探知するには、ヘリウムリークディテクターに必ず大気と真空との差圧をつくる箇所が必要で、これがないと分析管の内部が10-3Pa程度の圧力にならず漏洩探知ができない。近時はターボ分子ポンプの排気口から分析管内へヘリウムガスを逆拡散させて漏洩を探知するカウンターフローという探知手法が開発され、試験体の圧力が100Pa程度であっても探知ができるヘリウムリークディテクターが出現しているが、この種のリークディテクターは分岐点が多く、そのためにヘリウムガス濃度が減少して分析管の感度が鈍りプローブによる漏洩探知には適さない不都合がある。
【0003】
従来のカウンターフロー(逆拡散)式の代表的な例は図1に示す如くであり、これのプローブaは排気管bを介して掃引ポンプcに常時吸引されるように接続され、該プローブaを試験体の周囲に接近させ、該試験体から漏れるヘリウムガスを大気と共に該排気管b内へ吸入する。該排気管bの途中の分岐点Aからは流量調整バルブdを設けた分岐管iが分岐され、該分岐管iの端部はターボ分子ポンプfの排気口と補助排気ポンプgを結ぶ接続管hの途中に接続される。該流量調整バルブdの役割は、該ターボ分子ポンプfが分析管eの内部を10-3Pa程度の圧力に排気するための背圧大気圧との差圧を与えることである。
【0004】
該排気管b内へ吸入されたヘリウムガスと大気の一部は、分岐点Aから流量調整バルブdを介して分岐点Bから接続管hへ流入し、補助排気ポンプgへ導かれるが、ヘリウムガスの一部のみが該分岐点Bからターボ分子ポンプf内を逆拡散して分析管eへ到達し、そこで質量分析されて検出器によりその漏れ量が検出される。
【0005】
また、図2に示したものは、ダイレクトフローとも称されるもので、通常、プローブa自体が大気圧との間に10-3Pa程度の差圧を生じさせる流量調整機能を有する構成になっており、排気管bを直接に分析管eに接続してヘリウムガスと大気を導入する形式のものである。この場合、該排気管bを点線で示すように接続管hに接続してカウンターフローとすることも行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図1のカウンターフロー式の場合、掃引ポンプcによってプローブaの吸引力を上げられるため、漏洩探知の際に見落としが少ないという利点があるが、排気管bに吸入されたヘリウムガスは、2箇所の分岐点を通過するたびに大幅に減少し、分析管eに到達する量はわずかになり、図2のものと比較すると分析管eに於ける検出感度は2桁ほど低下する欠点がある。
【0007】
一方、図2の場合は、プローブaの吸引力が極めて小さいため、高濃度のヘリウムガスを分析管eへ導入できるが、プローブaを動かす速さや試験体からの距離に気を付けないと吸引力が弱いので漏洩箇所を見落としてしまう欠点がある。これらの欠点は、相反するもので、従来のヘリウムリークディテクターでは解決されていない問題点である。
【0008】
本発明は、分析感度が良くプローブの吸引力が大きいスニッファー法による漏洩探知に適したヘリウムリークディテクターを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、質量分析可能な圧力に分析管内を排気するターボ分子ポンプの排気口に第1の接続管を介して補助排気ポンプを接続し、プローブに接続した排気管を流量調整バルブを介して第1の接続管へ接続したヘリウムリークディテクターに於いて、第1の接続管にターボ分子ポンプと直列に接続した第2ターボ分子ポンプを介在させ、第2ターボ分子ポンプの前方の第1の接続管に流量調整バルブを介して排気管を接続すると共に、第2ターボ分子ポンプの後方の第2の接続管に流量調整バルブの前方の第1の排気管を接続しており、プローブにより吸引されたヘリウムと空気との混合ガスを外部へ排除する分岐点を補助排気ポンプの吸気口側の一箇所にして吸引されたヘリウムガスを高濃度状態に維持可能にすると共に、分析管内の質量分析可能な圧力を維持しつつ、流量調整バルブが第1の接続管への吸引されたヘリウムと空気との混合ガスの導入圧力を1000パスカルまで調節可能とした構成を有している。
さらに、本発明は、上記構成に加え、ターボ分子ポンプと第2ターボ分子ポンプとの掛け合わせた圧縮比を、空気に対して10 6 として、分析管内の圧力を10 -3 パスカル付近に保持可能である構成を有している。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図3に基づき説明すると、同図において符号1はガスを質量分析する分析管、2は該分析管1内を排気するターボ分子ポンプ、3aは該ターボ分子ポンプ2の排気口に接続した接続管、4は該接続管3aの後端に接続した補助排気ポンプを示す。こうした分析管1の補助排気系の配列は従来のものと同様であるが、本発明のものでは、該接続管3aにもう1つの第2ターボ分子ポンプ5を介在させ、該第2ターボ分子ポンプ5の前方の第1の接続管3aにプローブ6から延びる流量調整バルブ8を備えた排気管7を接続すると共に該第2ターボ分子ポンプ5の後方の第2の接続管3bに流量調整バルブ8の前方の第1の排気管7を分岐管9を介して接続するものとし、分析管1の分析感度の向上とプローブ6の吸引力の増大が得られるようにした。
なお、図3中、3は接続管を示す。
【0011】
これを更に説明すると、ターボ分子ポンプ2及び第2ターボ分子ポンプ5として、例えば両ポンプ2、5の掛け合わせた圧縮比が空気に対して106となるものを使用し、分岐部Xの圧力が1000Pa程度であっても分析管1内の圧力として10-3Pa付近を得ることができるようにした。一般に管路を流れる流量Qは排気速度(S)×圧力(P)で表されるから、補助排気ポンプ4の排気速度を8×10-5m3/sとすると、プローブ6の流量はおよそ8×10-2Pa・m3/sとなる。この流量は、図2の場合の補助排気ポンプgがこの排気速度である場合の100倍以上の流量になり、プローブ6の吸引力が高まるから前記した漏洩箇所の見落とし等を防ぐことができる。また、図1の分岐点A、Bのようなヘリウムガスを外部へ排除することになる分岐点は、本発明のものではY点のみであるから、排気管7内へ吸引されたヘリウムガスを高濃度の状態に維持できる。従って、本発明のものでは、プローブ6の排気速度が速く、しかも高濃度のヘリウムガスが接続管3aに供給されるから分析管1へ逆拡散するヘリウムガスの量も多くなり、分析管1の感度が大きくなる。
【0012】
ターボ分子ポンプ2の大気に対する圧縮比を例えば10000程度に設定すれば、分岐点Xの圧力を10Pa程度にできる。排気管7に介在させた流量調整バルブ8は接続管3aへの導入圧力を調整するもので、第2ターボ分子ポンプ5の排気速度が例えば2×10-3m3/sであれば、該流量調整バルブ8の流量はおよそ2×10-2Pa・m3/sとなり、分岐点Yへ分岐管9から流入する流量とほぼ同じになる。排気管7内と分岐管9内のヘリウムガスの分圧は同じであるから、圧縮比の低い分岐点Xの方が感度が高いということになる。また、分岐点Yから第2ターボ分子ポンプ5を介して分岐点Xへとヘリウムガスが逆拡散するから、従来の接続管に於ける分岐点が1箇所しかなかったものに比べ、分岐点Xにおけるヘリウムガス量が多く、分析管1におけるヘリウムガスの検出量が大きくなって実質的な感度が向上する。
【0013】
分岐管9及び排気管7の圧力は接続管3aに比べて圧力が高く、補助排気ポンプ4から分岐管9、流量調整バルブ8を介して接続管3aへのガス循環をも生じるが、補助排気ポンプ4がオイルミスト等の汚染物質を生じるものであると、ターボ分子ポンプ2、5に汚染物質が吸入されてその起動を損なうので、該補助排気ポンプ4にはロータリポンプ等のドライポンプを使用するものとした。
【0014】
その作動を説明すると、ます補助排気ポンプ4を起動すると共に排気管7内が所定の圧力になったらターボ分子ポンプ2、5を起動し、ヘリウムガスを注入した試験体の周面をプローブ6で走査してスニッファー法で漏洩探査する。試験体から漏れたヘリウムガスは付近の空気と共に混合ガスとなってプローブ6から排気管7内へ導入され、一部は流量調整バルブ8を介して接続管3aに流入し、残りは分岐管9を介して補助排気ポンプ4から外部へ排出される。該プローブ6は補助排気ポンプ4に直結されているから排気速度が速く、試験体周面の広範囲の漏洩探査を行える。また、該混合ガスは、接続管3aへ流入するまでの間に外部へ排除されることがないから、ヘリウムガスの濃度が高く、とりわけ分岐点Xでは分岐点Yから第2ターボ分子ポンプ5を逆拡散してヘリウムガスが流入するのみならず分岐点Yから分岐管9及び流量調整バルブ8を介してもヘリウムガスが循環流入するので、ヘリウム濃度が高まり、その結果、分析管1へ拡散するヘリウムガス量が多くなって分析管1の検出感度が高まる。排気速度が大きいため分岐点Xのヘリウムガス濃度の上昇も速く、そのため分析管1に於けるレスポンスも良好になる。更に、該流量調整バルブ8を閉じれば、ターボ分子ポンプ2、5により分析管1の圧力が短時間に低下し、クリーンアップも短時間に行える。
【0015】
【発明の効果】
以上のように本発明によるときは、逆拡散式のヘリウムリークディテクターのターボ分子ポンプの排気口と補助排気ポンプを結ぶ接続管に第2ターボ分子ポンプを介在させ、該第2ターボ分子ポンプの前方の接続管に流量調整バルブを介して該排気管を接続すると共にその後方の接続管に該流量調整バルブの前方の排気管を接続したので、分析感度が良くプローブの吸引力が大きくスニッファー法による漏洩探査に適したヘリウムリークディテクターが得られ、その構成も簡単で製作が容易になる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の説明図
【図2】他の従来例の説明図
【図3】本発明の実施例の説明図
【符号の説明】
1 分析管、2 ターボ分子ポンプ、3、3a、3b 接続管、4 補助排気ポンプ、5 第2ターボ分子ポンプ、6 プローブ、7 排気管、8 流量調整バルブ、9 分岐管、
Claims (2)
- 質量分析可能な圧力に分析管内を排気するターボ分子ポンプの排気口に第1の接続管を介して補助排気ポンプを接続し、プローブに接続した排気管を流量調整バルブを介して第1の接続管へ接続したヘリウムリークディテクターに於いて、
前記第1の接続管に前記ターボ分子ポンプと直列に接続した第2ターボ分子ポンプを介在させ、前記第2ターボ分子ポンプの前方の第1の接続管に流量調整バルブを介して前記排気管を接続すると共に、前記第2ターボ分子ポンプの後方の第2の接続管に前記流量調整バルブの前方の第1の排気管を接続しており、
前記プローブにより吸引されたヘリウムと空気との混合ガスを外部へ排除する分岐点を前記補助排気ポンプの吸気口側の一箇所にして吸引されたヘリウムガスを高濃度状態に維持可能にすると共に、前記分析管内の前記質量分析可能な圧力を維持しつつ、前記流量調整バルブが前記第1の接続管への前記吸引されたヘリウムと空気との混合ガスの導入圧力を1000パスカルまで調節可能としたことを特徴とするヘリウムリークディテクター。 - 前記ターボ分子ポンプと前記第2ターボ分子ポンプとの掛け合わせた圧縮比を空気に対して10 6 として、前記分析管内の圧力を10 -3 パスカル付近に保持可能であることを特徴とする請求項1に記載のヘリウムリークディテクター。
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