JP3675598B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関し、特に印刷製版用に適している熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱現像処理法を用いて写真画像を形成する熱現像感光材料は、例えば米国特許第3152904号、同3457075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1969年に開示されている。
【0003】
このような熱現像感光材料は、還元可能な銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、銀の色調を制御する色調剤および還元剤を通常バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。熱現像感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0004】
このような熱現像感光材料は、マイクロ感光材料や、レントゲン用等の医療用感光材料に使われてきたが、印刷用感光材料としては一部で使われているのみである。それは、得られる画像のDmaxが低く、階調が軟調なために、印刷用感光材料としては画質が著しく悪いからであった。
【0005】
一方、近年レーザーや発光ダイオードの発達により、600〜800nmに発振波長を有するスキャナーやイメージセッターが広く普及し、これらの出力機に適性を有する、感度、Dmaxが高く、かつ硬調な感光材料の開発が強く望まれていた。また、簡易処理、ドライ化への要求も強くなっている。
【0006】
米国特許第5464738号には、ドライシルバーの還元剤としてスルホニルヒドラジドを用いると、硬調な画像が得られることが記載されている。
【0007】
米国特許第5496695号には、ドライシルバーの還元剤としてヒンダード・フェノールとホルミルヒドラジン、もしくはトリチル・ヒドラジンの併用によって硬調画像が得られることが記載されている。
【0008】
これらの画像形成法は、いずれも120℃以上の高温で熱現像することを特徴としており、硬調画像形成に伴ういくつかの問題を有している。その1つは、ヒドラジン類を用いた時の黒点(pepper fog)と呼ばれるノイズである。ヒドラジン類を用いた時の通常の湿式現像では良く知られている現象として、黒ポツがあるが、ドライ熱現像システムで発生する黒点は、かなり様相を異にし、熱現像温度依存性が極めて大きく、高温ほど発生しやすい。第2の問題点は、現像ムラの発生である。特に網点画像を作成した時、網点面積が1枚のフィルムの中で場所によって不規則にバラつくことである。第3の問題点は、熱現像処理によって、プラスチックフィルム支持体が不規則に変形し、平坦性を失ってしまうことである。このような問題点は、いずれも印刷製版用中間材料として極めて重要な問題であり、その解決が望まれた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、超硬調で、Dmaxが高く、黒点の発生がなく、かつ均一性にすぐれた印刷製版用の熱現像感光材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記(1)〜(9)の特定事項よって達成される。
(1)支持体の一方の面に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤および超硬調化剤を有する熱現像感光材料において、前記超硬調化剤が、ヒドラジン誘導体であり、かつ、導電性金属酸化物を含むポリマー層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
(2)前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の有機銀塩を有する面と同じ面側にあることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(3)前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の有機銀塩を有する面と反対面側にあることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(4) 前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の少なくとも一方の面の最外層であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
(5)前記感光材料の少なくとも1層に、さらに含フッ素界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
(6)前記感光性ハロゲン化銀の粒子が、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルトおよび鉄から選ばれる金属錯体の少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
(7)前記金属錯体を2種以上含有することを特徴とする(6)に記載の熱現像感光材料。
(8)前記導電性金属酸化物が異種原子を含むものであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
(9)前記導電性金属酸化物を含むポリマー層の表面抵抗率は、25℃25%RHの雰囲気下で10 12 Ω以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の熱現像感光材料は超硬調の印刷用の感光材料であり、支持体の一方の面に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤および超硬調化剤としてヒドラジン誘導体を有する。また、支持体の他方の面(バック面)には好ましくはバック層が設層されている。そして、このような感光材料において支持体の有機銀塩を有する面側の層およびバック層側の層のなかの少なくとも1層は導電性金属酸化物を含むポリマー層、すなわち導電層である。
【0012】
このようなポリマー層を設けることによって、熱現像時における黒点の発生が抑制される。また現像ムラの発生がなく、均一な画像が得られる。また、特に、支持体としてプラスチックフィルムを用いた場合のゆがみが防止され、感光材料の平坦性が保たれる。さらには静電気の発生が防止され、これによるトラブルを防止することができる。
【0013】
本発明の導電層に用いられる導電性物質としては、導電性金属酸化物であるが、これらについて説明する。
【0014】
本発明に用いられる導電性金属酸化物として好ましいのは結晶性の金属酸化物粒子であるが、酸素欠陥を含むもの、および用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は一般的に言って導電性が高いので特に好ましく、特に後者はハロゲン化銀乳剤にカブリを与えないので特に好ましい。金属酸化物の例としては、ZnO,TiO2 ,SnO2 ,Al2 O3 ,In2 O3 ,SiO2 ,MgO,BaO,MoO3 ,V2 O5 等、あるいはこれらの複合酸化物が良く、特にZnO,TiO2 およびSnO2 が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl,In等の添加、SnO2 に対してはSb,Nb,ハロゲン元素等の添加、またTiO2 に対してはNb,Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜10mol%であれば特に好ましい。
【0015】
本発明の金属酸化物微粒子は導電性を有しており、その体積抵抗率は107 Ω−cm以下、特に105 Ω−cm以下(通常101 Ω−cm以上)であることが好ましい。
【0016】
これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号などに記載されている。
【0017】
更にまた、特公昭59−6235号に記載のように、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。
【0018】
利用できる粒子サイズは10μm 以下が好ましいが、2μm 以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。また光散乱性をできるだけ小さくするために、0.5μm 以下(通常0.05μm以上)の導電性粒子を利用すると透明感光材料を形成することが可能となり大変好ましい。
【0019】
また、導電性材料が針状あるいは繊維状の場合はその長さは30μm以下で直径が2μm 以下が好ましく、特に好ましいのは長さが25μm 以下(通常1μm以上)で直径0.5μm 以下(通常0.05μm以上)であり長さ/直径比が3以上である。
【0020】
本発明では、前記導電性金属酸化物と併用して導電性高分子化合物を用いてもよく、導電性高分子化合物としては、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸塩類、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、米国特許第4,108,802号、同4,118,231号、同4,126,467号、同4,137,217号に記載の4級塩ポリマー類、米国特許第4,070,189号、OLS2,830,767号、特開昭61−296352号、同61−62033号等に記載のポリマーラテックスが好ましい。
【0021】
以下に本発明で好ましく使用される導電性高分子化合物の具体例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0022】
【化1】
【0023】
本発明の導電性金属酸化物またはこれと併用する導電性高分子化合物はバインダー中に分散または溶解させて用いられる。
【0025】
バインダーとしては、ポリマーが用いられ、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げることができる。
【0026】
特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン等が好ましい。
【0027】
本発明の導電性金属酸化物あるいはこれと併用する導電性高分子化合物をより効果的に使用して導電層の抵抗を下げるために、導電層中における導電性物質の体積含有率は高い方が好ましいが、層としての強度を十分に持たせるために最低5%程度のバインダーが必要であるので、導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物の体積含有率は5〜95%の範囲が望ましい。
【0028】
本発明の導電性金属酸化物あるいはこれと併用する導電性高分子化合物の使用量は、感光材料1m2当たり0.05〜20gが好ましく、特に0.1〜10gが好ましい。本発明の導電層の表面抵抗率は25℃25%RHの雰囲気下で1012Ω以下で、好ましくは1011Ω以下(通常104 Ω以上)が良い。これにより良好な帯電防止性が得られる。
【0029】
本発明では導電性金属酸化物あるいはこれと併用する導電性高分子化合物を含有する導電層は、支持体の有機銀塩を有する面と同じ側または反対面のバック層側に設けられ、感光材料の構成層、例えば、感光性ハロゲン化銀を含有する感光層(乳剤層)と通常同一層である有機銀塩含有層、乳剤面表面保護層、中間層、下塗層、バック層、バック面保護層などのいずれかに導電性物質を含有させることができる。このような導電層は必要に応じて2層以上設けることもできる。
【0030】
なかでも、乳剤面、バック面のいずれにおいても、それぞれの最外層として設けることが好ましく、最外層として設けることによって本発明の効果が向上する。このような最外層としては、バック層(この上にバック面表面保護層等を設けない構成)、バック面表面保護層や乳剤面表面保護層(表面保護層はオーバーコート層と称される場合も含む)などであってよく、なかでも表面保護層ないしオーバーコート層、特にはバック面の表面保護層ないしオーバーコート層であることが好ましい。
【0031】
なお、本発明では、支持体の一方の面に感光層を有し、他方の面にバック層を有する片面感光材料が好ましいが、支持体の両面に感光層を有する両面感光材料であってもよく、このような両面感光材料における導電層は最外層である乳剤面の表面保護層ないしオーバーコート層であることが好ましい。
【0032】
本発明においては、上記導電性物質の他に、更に含フッ素界面活性剤を併用することによって更に良好な帯電防止性を得ることができる。
【0033】
本発明に用いられる好ましい含フッ素界面活性剤としては、炭素数4以上のフルオローアルキル基、アルケニル基、またはアリール基を有し、イオン性基としてアニオン基(スルホン酸(塩)、硫酸(塩)、カルボン酸(塩)、リン酸(塩))、カチオン基(アミン塩、アンモニウム塩、芳香族アミン塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩)、ベタイン基(カルボキシアミン塩、カルボキシアンモニウム塩、スルホアミン塩、スルホアンモニウム塩、ホスホアンモニウム塩)またはノニオン基(置換、無置換のポリオキシアルキレン基、ポリグリセリル基またはソルビタン残基)を有する界面活性剤が挙げられる。
【0034】
これらの含フッ素界面活性剤は特開昭49−10722号、英国特許第1,330,356号、米国特許第4,335,201号、同4,347,308号、英国特許第1,417,915号、特開昭55−149938号、同58−196544号、英国特許第1,439,402号、などに記載されている。
これらの具体例のいつくかを以下に記す。
【0035】
【化2】
【0036】
本発明の含フッ素界面活性剤を添加する層は感光材料の少なくとも1層であれば特に限定されず、例えば表面保護層、乳剤層、中間層、下塗層、バック層などを挙げることができる。その中でも好ましい添加場所としては表面保護層であり、乳剤層側もしくはバック層側のどちらか一方でもよいが、両方の表面保護層に添加した場合は更に好ましい。表面保護層が2層以上から成る場合はそのいずれの層でもよく、また表面保護層の上にさらにオーバーコートして用いることもできる。
【0037】
本発明の含フッ素界面活性剤の使用量は感光材料の1m2当たり、0.0001〜1gであればよいが、より好ましくは0.0002〜0.25g、特に好ましいのは0.0003〜0.1gである。
【0038】
また、本発明の含フッ素界面活性剤は、2種以上混合してもよい。
【0039】
本発明の含フッ素界面活性剤を含有する層あるいは他の層に別の帯電防止剤を併用することもでき、こうすることによって更に好ましい帯電防止効果を得ることもできる。
【0040】
一般に印刷製版用感光材料において、導電性金属酸化物、あるいは導電性高分子化合物を含む導電性層を感光性層と支持体との間、あるいはバック面に設けることは良く知られている。これは、感材をハンドリングしている間に静電気によってゴミが付着し、露光時にノイズになることを防止するためである。
【0041】
今回、思いがけずに見出された本発明の効果は、超硬調化剤を含む熱現像感光材料の現像処理時における黒点発生の抑制、網点ムラの軽減であり、従来の効果とは全く異なるものである。
【0042】
本発明に用いられる超硬調化剤について説明する。
本発明で用いられる超硬調化剤は、単独では現像薬として機能しないが、現像薬としての還元剤と併用することで、超硬調な画像を与えることができる。
【0043】
本発明において、超硬調化剤として、ヒドラジン誘導体を使用するものである。
【0044】
超硬調化剤としてのヒドラジン誘導体は、下記式(I)によって表わされる化合物が好ましい。
【0045】
【化3】
【0046】
式(I)中、R01は脂肪族基または芳香族基を表わし、R02は水素原子、アルキル基、アリール基、不飽和ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヒドラジノ基を表わし、G01は−CO−基、−SO2 −基、−SO−基、下記に示される基、
【0047】
【化4】
【0048】
−CO−CO−基、チオカルボニル基、またはイミノメチレン基を表わし、A01,A02はともに水素原子、あるいは一方が水素原子で他方が置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアシル基を表わす。R03はR02に定義した基と同じ範囲内より選ばれ、R02と同じでも異なってもよい。
【0049】
式(I)において、R01で表わされる脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基である。ここで分岐アルキル基はその中に1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んだ飽和のヘテロ環を形成するように環化されていてもよい。また、このアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0050】
式(I)において、R01で表わされる芳香族基は単環または2環のアリール基または不飽和ヘテロ環基である。ここで、不飽和ヘテロ環基は単環または2環のアリール基と縮環してヘテロアリール基を形成してもよい。例えばベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンスイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等から誘導される一価の基があるが、なかでもベンゼン環を含むものが好ましい。
【0051】
R01として特に好ましいものはアリール基である。
【0052】
R01の脂肪族基または芳香族基は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えばアルキル基(アラルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環を含む基、ピリジニウム基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アルキルまたはアリールスルホニルオキシ基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ウレタン基、ヒドラジド構造を持つ基、4級アンモニウム構造を持つ基、アルキルまたはアリールチオ基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、カルボキシル基、スルホ基、アシル基、アルコキシまたはアリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ニトロシル基、リン酸アミド基、ジアシルアミノ基、イミド基、アシルウレア構造を持つ基、セレン原子またはテルル原子を含む基、3級スルホニウム構造または4級スルホニウム構造を持つ基などが挙げられ、好ましい置換基としては直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のもの)、アラルキル基(好ましくはアルキル部分の炭素数が1〜3の単環または2環のもの)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のもの)、置換アミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30を持つもの)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜30を持つもの)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30を持つもの)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30のもの)などである。
【0053】
式(I)において、R02で表わされるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、アリール基としては単環または2環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環を含むものである。
【0054】
不飽和ヘテロ環基としては少なくとも1つの窒素、酸素、および硫黄原子を含む5〜6員環の化合物で、例えばイミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリジニウム基、キノリニウム基、キノリニル基などがある。ピリジル基またはピリジニウム基が特に好ましい。
【0055】
アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基としては単環のものが好ましく、アミノ基としては無置換アミノ基、および炭素数1〜10のアルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい。
【0056】
R02は置換されていても良く、好ましい置換基としてはR01の置換基として例示したものがあてはまる。
【0057】
R02で表わされる基のうち好ましいものは、G01が−CO−基の場合には、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−メタンスルホンアミドプロピル基、フェニルスルホニルメチル基など)、アラルキル基(例えば、o−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、o−メタンスルホンアミドフェニル基、4−メタンスルホニルフェニル基、2−ヒドロキシメチルフェニル基など)、−C2 F4 COOM(M:水素原子、アルカリ金属原子)などである。
【0058】
また、G01が−SO2 −基の場合には、R02はアルキル基(例えば、メチル基など)、アラルキル基(例えば、o−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えば、フェニル基など)または置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基など)などが好ましい。
【0059】
G01が−COCO−基の場合にはアルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基が好ましい。
【0060】
式(I)のG01としては−CO−基、−COCO−基が好ましく、−CO−基が最も好ましい。
【0061】
また、R02はG01−R02の部分を残余分子から分裂させ、−G01−R02部分の原子を含む環式構造を生成させる環化反応を生起するようなものであってもよく、その例としては、例えば特開昭63−29751号などに記載のものが挙げられる。
【0062】
R01またはR02に少なくとも1つのニトロ基、またはニトロシル基を持つヒドラジン誘導体が好ましい。特にR01に少なくとも1つのニトロ基、またはニトロシル基を有するものが好ましい。
【0063】
A01,A02は水素原子、炭素数20以下のアルキルまたはアリールスルホニル基(好ましくはフェニルスルホニル基、またはハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたフェニルスルホニル基)、炭素数20以下のアシル基(好ましくはベンゾイル基、またはハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたベンゾイル基、あるいは直鎖もしくは分岐状、もしくは環状の無置換または置換脂肪族アシル基(置換基としては、例えばハロゲン原子、エーテル基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基が挙げられる))である。
【0064】
A01,A02としては水素原子が最も好ましい。
【0065】
式(I)のR01,R02の置換基はさらに置換されていても良く、好ましい例としてはR01の置換基として例示したものが挙げられる。さらにその置換基、その置換基の置換基、置換基の置換基の置換基・・・、というように多重に置換されていても良く、好ましい例はやはりR01の置換基として例示したものがあてはまる。
【0066】
式(I)のR02は、米国特許US5496695号に記載されているようなトリチル基であってもよい。
【0067】
式(I)のR01またはR02はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0068】
式(I)のR01またはR02はその中にハロゲン化銀粒子表面に対する吸着を強める基が組み込まれているものでもよい。このような吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、複素環チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基が挙げられる。
【0069】
式(I)で示される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0070】
【化5】
【0071】
【化6】
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】
【化9】
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
【0083】
【化18】
【0084】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体としては、上記のものの他に、RESEARCHDISCLOSURE Item 23516(1983年11月号、P.346)およびそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同4,269,929号、同4,276,364号、同4,278,748号、同4,385,108号、同4,459,347号、同4,478,928号、同4,560,638号、同4,686,167号、同4,912,016号、同4,988,604号、同4,994,365号、同5,041,355号、同5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同301,799号、同356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、特願平5−94925号に記載されたものを用いることができる。
【0085】
またこの他にも次の化合物を用いることができる。特公平6−77138号に記載(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載の化合物。特公平6−93082号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物。特開平6−230497号に記載の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜化合物4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、および39頁、40頁に記載の化合物6−1〜化合物6−7。特開平6−289520号に記載の一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)および2−1)。特開平6−313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜19頁に記載の化合物。特開平6−313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁〜5頁に記載の化合物。特開平7−5610号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜10頁に記載の化合物I−1〜I−38。特開平7−77783号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜II−102。特開平7−104426号に記載の一般式(H)および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H−1〜H−44。
【0086】
本発明におけるヒドラジン誘導体の添加量としては有機酸銀とハロゲン化銀とを合わせたトータルの銀1モル当たり1×10-6モルないし1×10-1モル含有されるのが好ましく、特に1×10-5モルないし5×10-2モルの範囲が好ましい添加量である。
【0087】
本発明のヒドラジン誘導体は、適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどに溶解して用いることができる。
【0088】
また、既に良く知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0089】
本発明ではヒドラジン誘導体と併用して、カブリ防止剤としてインダゾール類(例えばニトロインダゾール)を使用することが好ましい。
【0090】
感光材料には、ヒドラジン誘導体と併用して、アミン誘導体、オニウム塩化合物、ジスルフィド誘導体、およびヒドロキシアミン誘導体などの造核促進剤を添加することが好ましい。
【0091】
造核促進剤の化合物例としては、特願平7−266204号に記載のA−1〜A−47が挙げられる。
【0113】
超硬調化剤として使用するヒドラジン誘導体は、ハロゲン化銀乳剤層(感光層)側の層ならば、どの層にも用いることができるが、好ましくはハロゲン化銀乳剤層またはその隣接層に用いることが好ましい。また、添加量はハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類などにより最適量は異なるが、一般的にハロゲン化銀1モルあたり10 -6 〜10 -1 モルの範囲が好ましく、特に10 -5 〜10 -2 モルの範囲が好ましい。なお、さらに好ましくは、前述のように、有機酸銀とハロゲン化銀とを合わせたトータルの銀1モル当たりで規定した添加量である。
【0114】
本発明に用いられる有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層の1〜10重量%として存在すべきである。多層構成において、還元剤をエマルジョン層以外の層に加える場合は、わずかに高い割合である約2〜15重量%がより望ましい傾向がある。
【0115】
有機銀塩を利用した熱現像写真感光材料においては広範囲の還元剤が開示されている。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2′−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2′,4′−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの、5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−t−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオンなどがある。
【0116】
本発明で特に好ましい還元剤として下記式(R−I)、式(R−II)、式(R− III)、式(R−IV)で表される化合物が挙げられる。
【0117】
【化27】
【0118】
なお、式(R− III)においてZが形成する環構造は下記の(Z−1)、(Z−2)で示されるものである。
【0119】
【化28】
【0120】
また、式(R−IV)においてZが形成する環構造は下記の(Z−3)、(Z−4)で示されるものである。
【0121】
【化29】
【0122】
式中、L1 ,L2 は、CH−R6 で表される基もしくは硫黄原子である。nは自然数を表す。
【0123】
R(R1 〜R10,R1 ′〜R5 ′,R11〜R13,R11′〜R13′,R21〜R26,R21′〜R24′を含み、これらをまとめて示す)は、水素原子、アルキル基(炭素数1〜30)、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、アミノ基もしくは、O−Aで表される置換基である。ただし、R1 〜R5 の少なくとも一つおよびR1 ′〜R5 ′の少なくとも一つおよびR7 〜R10の少なくとも一つは−O−Aで表される基である。また、R同士で環を形成しても良い。A,A′は、水素原子、アルキル基(炭素数1〜30)、アシル基(炭素数1〜30)、アリール基、リン酸基、スルホニル基を表す。R,A,A′は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えばアルキル基(活性メチン基を含む)、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環を含む基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環(例えばピリジニオ基)を含む基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基を含む基、4級のアンモニオ基を含む基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、リン酸アミド基、リン酸エステル構造を含む基、アシルウレア構造を持つ基、セレン原子またはテルル原子を含む基、3級スルホニウム構造または4級スルホニウム構造を持つ基などが挙げられる。R,A,A′の置換基はさらに置換されていても良く、好ましい例としてはRの置換基として例示したものが挙げられる。さらにその置換基、その置換基の置換基、置換基の置換基の置換基・・・、というように多重に置換されていても良く、好ましい例はやはりR,A,A′の置換基として例示したものがあてはまる。
【0124】
以下に、式(R−I)、式(R−II)、式(R− III)、式(R−IV)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。なお、式中の表示を用い、R1 等の組合せを用いて示すものもある。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【化30】
【0128】
【表3】
【0129】
【化31】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
本発明で使用される還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-3〜10モルであり、より好ましくは1×10-2〜1.5モルである。
【0135】
また本発明では還元剤と前記硬調化剤のモル比を1:10-3〜1:10-1の範囲に設定することが好ましい。
【0136】
本発明の還元剤は、水、もしくは水混和性の有機溶媒(メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなど)に溶解して用いることができる。
【0137】
また、既に良く知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、還元剤の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0138】
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理法を用いて写真画像を形成するものである。このような熱現像感光材料としては前述のとおり例えば米国特許第3152904号、同3457075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1969年)等に開示されている。
【0139】
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理を用いて写真画像を形成するものであればよいが、還元可能な銀源(有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、銀の色調を抑制する色調剤および還元剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している熱現像感光材料であることが好ましい。本発明の熱現像感光材料は常温で安定であるが、露光後処理液を供給することなく高温(例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上また、好ましくは120℃以下)に加熱することで現像される。加熱することで還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0140】
本発明では、この画像形成過程に硬調化剤が関与して超硬調な画像を形成するものと考えられる。硬調化剤による超硬調な画像形成は液処理されるシステムでは公知であるが、有機銀塩を用いた熱現像システムにおいては全く知られておらず、予想外のことである。
【0141】
本発明の熱現像感光材料は支持体上に少なくとも一層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成しても良いが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。
【0142】
感光層に通過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対側にフィルター層を形成しても良いし、感光層に染料または顔料を含ませても良い。染料としては特願平7−11184号の化合物が好ましい。
【0143】
感光層は複数層にしても良く、また階調の調節のため感度を高感層/低感層または低感層/高感層にしても良い。
【0144】
各種の添加剤は感光層、非感光層、またはその他の形成層のいずれに添加しても良い。
【0145】
本発明の熱現像感光材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。
【0146】
好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば;ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ−(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水または有機溶媒またはエマルジョンから被覆形成してもよい。
【0147】
色調剤の添加は非常に望ましい。好適な色調剤の例は調査報告第17029号に開示されており、次のものがある:イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、およびキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium) 誘導体およびある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、および2−(トリプロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(benzothiazolinylidene))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(oxazolidinedione)) ;フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、および2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、およびフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体およびその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類および不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン。
【0148】
好ましい色調剤としてはフタラゾンである。
【0149】
触媒活性量の光触媒として有用なハロゲン化銀は感光性のいかなるハロゲン化銀(例えば、臭化銀、ヨウ化銀、銀化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀等)であってもよいがヨウ素イオンを含むことが好ましい。このハロゲン化銀はいかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀は還元可能な銀源に近接するように配置する。一般にハロゲン化銀は還元可能銀源に対して0.75〜30重量%の量を含有することが好ましい。ハロゲン化銀は、ハロゲンイオンとの反応による銀石鹸部の変換によって調製してもよく、予備形成して石鹸の発生時にこれを添加してもよく、またはこれらの方法の組み合わせも可能である。後者が好ましい。この感光性ハロゲン化銀については後述する。
【0150】
還元可能な銀源は還元可能な銀イオン源を含有する有機およびヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸が好ましい。配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定度定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure 第17029および29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド)、ヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸)、チオエン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオエン、および3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾールおよび1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾールおよびベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;およびメルカプチド類の銀塩。好ましい銀源はベヘン酸銀である。還元可能な銀源は好ましくは銀量として感光材料1m2当たりの塗布量で示して5g/m2以下である。さらに好ましくは0.3〜3.0g/m2である。
【0151】
このような感光材料中にはカブリ防止剤が含まれて良い。最も有効なカブリ防止剤は水銀イオンであった。感光材料中にカブリ防止剤として水銀化合物を使用することについては、例えば米国特許第3589903号に開示されている。しかし、水銀化合物は環境的に好ましくない。非水銀カブリ防止剤としては例えば米国特許第4546075号および同4452885号および日本特許公開第59−57234号に開示されているようなカブリ防止剤が好ましい。
【0152】
特に好ましい非水銀カブリ防止剤は、米国特許第3874946号および同4756999号に開示されているような化合物、−C(X1 )(X2 )(X3 )(ここでX1 およびX2 はハロゲン(例えば、F,Cl,BrおよびI)でX3 は水素またはハロゲン)で表される1以上の置換基を備えたヘテロ還状化合物である。好適なカブリ防止剤の例としては次のものがある。
【0153】
【化32】
【0154】
【化33】
【0155】
更により好適なカブリ防止剤は米国特許第5028523号および英国特許出願第92221383.4号、同9300147.7号、同9311790.1号に開示されている。
【0156】
本発明の熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4639414号、同4740455号、同4741966号、同4751175号、同4835096号に記載された増感色素が使用できる。
【0157】
本発明に使用される有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同 Item 1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0158】
特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。
【0159】
例えば、
A)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許第2,161,331号、西独特許936,071号、特願平3−189532号記載のシンプルメロシアニン類、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号に示された三核シアニン色素類、特願平6−103272号に示されたメロシアニン類、C)LED光源および赤色半導体レーザーに対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号へ特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、D)赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、特開昭60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類などが有利に選択される。
【0160】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0161】
本発明の熱現像感光材料の露光は、Arレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(780nm,830nm)などが好ましい。
【0162】
本発明の熱現像感光材料にはハレーション防止層として、染料を含有する層を設けることができる。Arレーザー、He−Neレーザー、赤色半導体レーザー用には400nm〜750nmの範囲で、露光波長に少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加する。赤外半導体レーザー用には750nm〜1500nmの範囲で、露光波長に少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加する。染料は1種でも数種を組み合わせても良い。
【0163】
このような染料は感光層と同じ側の支持体に近い染料層あるいは、感光層と反対側の染料層に添加することができる。
【0164】
本発明で用いられる支持体は、紙、合成紙、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)をラミネートした紙、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート)、金属板(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、鉄、銅)、上記のような金属がラミネートあるいは蒸着された紙やプラスチックフィルムなどが用いられる。
【0165】
一方、プラスチックフィルムを熱現像機に通すとフィルムの寸法が伸縮する。印刷感光材料として使用する場合、この伸縮は精密多色印刷を行う時に重大な問題となる。よって本発明では寸法変化の小さいフィルムを用いることが好ましい。例えば、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体や熱処理したポリエステルなどがある。ガラス転移点の高いものも好ましく、ポリエーテルエチルケトン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート等が使用できる。
【0166】
本発明には現像を抑制あるいは促進させる現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0167】
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、Ar−SM,Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する芳香環基または縮合芳香環基である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2′−ジチオビス−ベンゾチアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0168】
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1モル当たり0.01〜0.3モルの量である。
【0169】
本発明における感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができる。本発明で用いることのできる具体的な方法としては、調製された有機銀塩中にハロゲン含有化合物を添加することにより有機銀塩の銀の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する方法、ゼラチンあるいは他のポリマー溶液の中に銀供給化合物およびハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀粒子を調製し有機銀塩と混合する方法を用いることができる。本発明において好ましくは後者の方法を用いることができる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0170】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100}面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数{100}面の比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29,165(1985年)に記載の方法により求めることができる。感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成としては特に制限はなく、前記したように、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀のいずれであっても良いが、本発明においては臭化銀、あるいはヨウ臭化銀を好ましく用いることができる。特に好ましくはヨウ臭化銀であり、ヨウ化銀含有率は0.1モル%以上40モル%以下が好ましく、0.1モル%以上20モル%以下がより好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよいが、好ましい例として粒子内部のヨウ化銀含有率の高いヨウ臭化銀粒子を使用することができる。また、好ましくはコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。
【0171】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、コバルトまたは鉄から選ばれる金属の錯体を少なくとも一種含有することが好ましい。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を二種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1nモルから10mモルの範囲が好ましく、10nから100μモルの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。コバルト、鉄の化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体の含有量は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
【0172】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0173】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0174】
本発明の感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0175】
本発明における銀の塗布量は感光材料1m2当たり0.1〜5g、さらには0.3〜3.0gであることが好ましい。
【0176】
本発明における熱現像感光材料は、前述のように、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光層を有し、他方の側にバック層(バッキング層)を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0177】
本発明において片面感光材料は、搬送性改良のためにマット剤を添加しても良い。マット剤は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子である。マット剤としては任意のものを使用でき、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同1,260,772号、同2,192,241号、同3,257,206号、同3,370,951号、同3,523,022号、同3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界で良く知られたものを用いることができる。例えば具体的にはマット剤として用いることのできる有機化合物の例としては、水分散性ビニル重合体の例としてポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素−ホルムアルデヒド−澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微少カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなど好ましく用いることができる。無機化合物の例としては二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。一方、マット剤は感材のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0178】
本発明においてバッキング層のマット度としてはベック平滑度が250秒以下10秒以上が好ましく、さらに好ましくは180秒以下50秒以上である。
【0179】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0180】
本発明においてバッキング層の好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール)、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水または有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0181】
本発明においてバッキング層は、所望の波長範囲での最大吸収が0.3以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上2以下のIR吸収であり、かつ可視領域においての吸収が0.001以上0.5未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001以上0.3未満の光学濃度を有するハレーション防止層であることが好ましい。
【0182】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、この染料は所望の波長範囲で目的の吸収を有し、可視領域での吸収が充分少なく、上記バッキング層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でも良い。例えば、特開平7−13295号、米国特許第5,380,635号記載の化合物、特開平2−68539号公報第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目、同3−24539号公報第14頁左下欄から同第16頁右下欄記載の化合物があげられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0183】
米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backside resistive heating layer)を本発明のような感光性熱現像写真画像系に使用することもできる。
【0184】
本発明における感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層としては、いかなる付着防止材料を使用してもよい。付着防止材料の例としては、ワックス、シリカ粒子、スチレン含有エラストマー性ブロックコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン)、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートやこれらの混合物などがある。
【0185】
本発明における乳剤層もしくは乳剤層の保護層には、米国特許第3,253,921号、同第2,274,782号、同第2,527,583号および同第2,956,879号に記載されているような光吸収物質およびフィルター染料を使用することができる。また、例えば米国特許第3,282,699号に記載のように染料を媒染することができる。
【0186】
本発明における乳剤層もしくは乳剤層の保護層には、艶消剤、例えばデンプン、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、米国特許第2,992,101号および同第2,701,245号に記載された種類のビーズを含むポリマービーズなどを含有することができる。また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が1000秒以上10000秒以下が好ましく、特に2000秒以上10000秒以下が好ましい。
【0187】
本発明における乳剤層のバインダーとしては、よく知られている天然または合成樹脂、例えば、ゼラチン、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートなどから任意のものを選択することができる。当然ながら、コポリマーおよびターポリマーも含まれる。好ましいポリマーは、ポリビニルブチラール、ブチルエチルセルロース、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリスチレンおよびブタジエン−スチレンコポリマーである。必要に応じて、これらのポリマーを2種またはそれ以上組合せて使用することができる。そのようなポリマーは、成分をその中に保持するのに十分な量で使用される。すなわち、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で使用される。効果的な範囲は、当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を保持する場合の目安として、バインダー対有機銀塩の割合は、15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。
【0188】
本発明における乳剤層のバインダーとしては、熱可塑製樹脂の水性分散物を用いることができる。
【0189】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、支持体上に塗布され、加熱乾燥によって皮膜を形成しうるように、乾燥温度で熱可塑性の樹脂である。乾燥温度は通常室温から約100℃の間であり、乾燥はこの範囲の温度で行われる。本発明に用いられる熱可塑性樹脂の例として、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリウレタン類、ポリ酢酸ビニルおよびアクリル樹脂(アクリルゴムも含む)などが好ましい。
【0190】
このようなポリマーの平均分子量は重量平均分子量Mwで1000〜10万程度である。
【0191】
本発明の熱可塑性樹脂の水性分散物は、公知の分散法によって作成することができる。例えば、これらの樹脂粉末に5〜80wt%の可塑剤(例えば、飽和、もしくは不飽和の高級脂肪酸エステルなど)と、分散剤としてアルキルアリールスルホン酸塩を1〜30wt%加え、Tg以上の温度に加熱して溶解した後、乳化分散機によって攪拌しながら、水を加えて行き、water-in-resin型の分散体を一旦形成させた後に、さらに水を加えて行き、相転移させ、resin-in-water型の分散物を形成する。分散物の粒子サイズはできるだけ細かい方がよく、樹脂溶液相の粘度と分散機による剪断力によってコントロールされる。好ましくは平均粒子サイズが1μm以下(通常0.01μm 以上)に微細化するのがよい。
【0192】
市販の水分散物として、例えば、Butvar Dispersion FP、あるいは同BR(いずれもモンサント(株)の商品名)などのポリビニルブチラールの水分散物、あるいは、アデカボンタイターHUX−350,同232,同551,同290H,同401(いずれも旭電化工業(株)の商品名)などのアニオン系ポリウレタン水分散物やKR−120、KR−134、KC−1、KR−2060、KR−173(いずれも光洋産業(株)製)などの水性ビニルウレタン系水分散物、マルカUVボンド#10、#31、同#50(サイデン化学(株)製)などの水性ビニルウレタン系水分散物を用いることができる。さらには、スチレン−ブタジエンコポリマーの業界統一品番で、#1500、#1502、#1507、#1712、#1778などの種々の銘柄の住友SBRラテックス(住友化学工業(株))やJSRラテックス(日本合成ゴム(株))やNipolラテックス(日本ゼオン(株))を用いることができる。
【0193】
また、アクリルゴムとして一般に知られるアクリル系ラテックス、例えばNipol AR31、AR32、あるいはHycar4021(いずれも日本ゼオン(株)の商品名)を用いることができる。
【0194】
上記のポリビニルブチラール水分散物に用いられるポリビニルブチラールのホモポリマーまたはコポリマーは、重量平均分子量Mwが1000〜10万程度であることが好ましい。また、コポリマー中におけるポリビニルブチラール成分の比率は30重量%以上であることが好ましい。
【0195】
またポリウレタン水分散物に用いられるポリウレタンのホモポリマーまたはコポリマーは、重量平均分子量Mwが1000〜10万程度であることが好ましい。また、コポリマー中におけるポリウレタン成分の比率は30%重量以上であることが好ましい。
【0196】
スチレン−ブタジエンコポリマーラテックスは、スチレンとブタジエンの共重合比(重量)が10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜60/40が好ましい。ハイスチレンラテックスと呼ばれる60/40〜90/10の比率のものは、スチレン含率の低い(10/90〜30/70)ラテックスと混合して用いるのが、感光層の耐傷性、物理的強度を高める上で好ましい。混合比率(重量)は、20/80〜80/20の範囲内が好ましい。
【0197】
ハイスチレンラテックスとしては、JSR0051や同0061(以上、日本合成ゴム(株)の商品名)、およびNipol 2001、2057、2007(日本ゼオン(株)の商品名)などの市販品が使える。またスチレン含率の低いラテックスとしては、上記のハイスチレンラテックスとして列挙した以外の通常のものが挙げられ、例えばJSR#1500、#1502、#1507、#1712、#1778等がある。
【0198】
本発明の熱可塑性樹脂は、バインダーとして機能するのに効果的範囲内で使用される。効果的範囲は当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を膜中に保持する場合の目安として、バインダー対有機銀塩の割合は、重量比で15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。
【0199】
この熱可塑性樹脂の水性分散物には有機銀塩のほかハロゲン化銀も分散する。
【0200】
この熱可塑性樹脂の水性分散物を用いる場合、還元剤は固体分散物にして添加するのが好ましい。
銀1モル当たり1×10-2〜10モルの還元剤を添加すると感光層の物理的強度が弱くなる傾向があるが、固体分散して添加した場合が最も強度低下が少なく、好ましいからである。例えば、還元剤1〜50wt%と分散剤として、界面活性剤を固形分に対して1〜30wt%を混合した水スラリーを分散機によって分散することができる。平均粒子サイズが1μm以下(通常0.01μm 以上)の微細分散物にすることが望ましい。
【0201】
ハロゲン化銀乳剤層およびその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、特開平2−18542号公報第3頁右下1行目から20行目に記載のバインダーが用いられる。
【0202】
【実施例】
実施例1
《有機酸銀乳剤の調製》
ベヘン酸840g、ステアリン酸95gを12リットルの水に添加し90℃に保ちながら、水酸化ナトリウム48g、炭酸ナトリウム63gを1.5リットルの水に溶解したものを添加した。30分撹拌した後50℃とし、N−ブロモスクシンイミド1%水溶液1.1リットルを添加し、次いで硝酸銀17%水溶液2.3リットルを撹拌しながら徐々に添加した。さらに液温を35℃とし、撹拌しながら臭化カリウム2%水溶液1.5リットルを2分間かけて添加した後30分間撹拌し、N−ブロモスクシンイミド1%水溶液2.4リットルを添加した。この水系混合物に撹拌しながら1.2重量%ポリ酢酸ビニルの酢酸ブチル溶液3300gを加えた後10分間静置し2層に分離させ水層を取り除き、さらに残されたゲルを水で2回洗浄した。こうして得られたゲル状のベヘン酸/ステアリン酸銀および臭化銀の混合物をポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−K)の2.6%イソプロピルアルコール溶液1800gで分散し、さらにポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製デンカブチラール#4000−2)600g、イソプロピルアルコール300gと共に分散し有機酸銀塩乳剤(平均短径0.05μm、平均長径1.2μm、変動係数25%の針状粒子)を得た。
【0203】
《乳剤層塗布液の調製》
上記で得た有機酸銀乳剤に銀1モル当たり以下の量となるように各薬品を添加した。25℃でフェニルチオスルホン酸ナトリウム10mg、70mgの色素a、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール2g、4−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸21.5gと2−ブタノン580g、ジメチルホルムアミド220gを撹拌しながら添加し3時間放置した。ついで、5−トリブロモメチルスルフォニル−2−メチルチアジアゾール8g、2−トリブロモメチルスルフォニルベンゾチアゾール6g、4,6−ジトリクロロメチル−2−フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物aを2g、還元剤としてR−I−5を0.3モル、超硬調化剤としてI−65を6.5×10-3モルを添加し、テトラクロロフタル酸5g、メガファックスF−176P(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤)1.1g、2−ブタノン590g、メチルイソブチルケトン10gを撹拌しながら添加した。
【0204】
上記において用いた化合物は以下のとおりである。
【0205】
【化34】
【0206】
《乳剤面保護層塗布液》
CAB171−15S(イーストマンケミカル(株)製酢酸酪酸セルロース)75g、4−メチルフタル酸5.7g、テトラクロロフタル酸無水物1.5g、フタラジン12.5g、0.3gのメガファックスF−176P、シルデックスH31(洞海化学社製真球状シリカ平均サイズ3μm)2g、sumidur N3500(住友バイエルウレタン社製ポリイソシアネート)7gを2−ブタノン3070gと酢酸エチル30gに溶解したものを調製した。
【0207】
《バック面を有した支持体の作成》
両面が塩化ピニリデンを含む下塗りからなる100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、支持体から近い順に下記処方の導電層および保護層を順次塗布した。
【0208】
【0209】
上記において用いた化合物を以下に示す。
【0210】
【化35】
【0211】
《感光層面の塗布》
上記のバック面を塗布した支持体の反対側の面に、乳剤層塗布液を銀が2g/m2となるように塗布した後、乳剤面上に乳剤面保護層塗布液を乾燥厚さ2μmとなるように塗布した。こうして、本発明のサンプル1を作成した。
【0212】
《比較サンプルの作成》
本発明のサンプル1のバック面の導電層と保護層を除き、代りに1m2当たり以下の塗布量となるように水溶液でバック層とバック面表面保護層を順次塗布した。バック層塗布量はゼラチン1.5g、p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30mg、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン100mg、染料a50mg、染料b100mg、染料c30mg、染料d50mg、プロキセル1mgであり、バック面表面保護層はゼラチン1.5g、平均粒径2.5μmのポリメチルメタクリレート20mg、p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15mg、ジヘキシル−α−スルホサクシン酸ナトリウム15mg、酢酸ナトリウム50mg、プロキセル1mgである。
【0213】
上記において用いた化合物を以下に示す。
【0214】
【化36】
【0215】
その他はサンプル1と全く同様にして比較サンプル1Aを作成した。
【0216】
《表面電気抵抗率の測定》
バック面の導電層、もしくはバック層を塗布した段階でサンプリングして、それらの表面電気抵抗率を測定した。
【0217】
表面抵抗率の測定は試料を25℃25%RHで12時間放置後電極間隔0.14cm、長さ10cmの真鍮製電極( 試料と接する部分はステンレス使用)に挟み、タケダ理研製エレクトロメーターTR8651を用いて1分後の値を測定した。
【0218】
その結果、本発明のサンプル1は、108 Ω、比較サンプル1Aは1015Ωであった。サンプル1は、熱現像を通しても静電気によるゴミ付着や、装置への貼りつきなどのトラブルも少なかった。
【0219】
《写真性能の評価》
633nmHe−Neレーザー感光計で感光材料を露光した後、バック面をヒートドラムに120℃20秒接触させて現像し、得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmax、Dmin、および特性曲線で濃度0.3と3.0の点を結ぶ直線の傾きを階調γとして示したものについてである。結果を表8に示す。
【0220】
【表8】
【0221】
表8からいずれのサンプルも高いDmaxと硬調性能を示すことがわかる。
【0222】
《黒点の評価》
現像時間を変えて現像を行い、黒点を評価した。黒点の数は、25倍のルーペで観察した時の直径3mmの円内に観察される数である。結果を表9に示す。
【0223】
【表9】
【0224】
表9に示すように、比較サンプルに比べて、本発明のサンプルは、黒点の発生が少ないことがわかる。
【0225】
《網点ムラの評価》
上記のサンプルを633nmにピークを持つ干渉フィルターを介して、網点面積が10%付近になるようにキセノン・フラッシュ光で露光して、120℃20秒現像した。得られた網点フィルムの均一性を視覚的に判定した。その結果、比較サンプル1Aには明らかに場所によって濃度が高いところや低いところが認められるのに対して、サンプル1は濃度ムラが目立たず、均一であった。また、比較サンプル1Aでは現像処理後にフィルムのゆがみが認められるのに対してサンプル1はゆがみがなく平坦性が良好であった。
【0226】
実施例2
実施例1における超硬調化剤I−65の代わりにI−75、I−77、I−57、I−48、I−27、I−21およびI−16を用いた。実施例1と同様の結果を示し、本発明のサンプルでは、サンプル1と同様の良好な結果が得られた。
【0227】
実施例3
実施例1において、導電層とその上の保護層を除き、代わりに次の導電層を塗布し、そのほかは同様にしてサンプル3を得た。
サンプル3について実施例1と同様にして表面電気抵抗率を測定したところ、表面電気抵抗率は、6.0×107 Ωと極めて低く、静電気によるゴミ付着や、装置の貼りつきなどのトラブルがさらに少なくなった。
【0228】
また、サンプル3について、実施例1と同様にして写真性能、黒点、網点ムラの評価を行った。写真性能、黒点についての結果を表10、11(後記)に示す。
【0229】
これらの結果から明らかに黒点の数がさらに減少することがわかる。
また、網点ムラについては全く問題がなかった。
【0230】
実施例4
実施例1において、乳剤面保護層の上に、次のオーバーコート層(OC層)を塗布し、そのほかは同様にしてサンプル4を得た。
オーバーコート層(導電層)
CAB171−15S 51mg/m2
SnO2 /Sn(9/1重量比、平均粒径0.25μm ) 187mg/m2
【0231】
サンプル4の乳剤面側の表面電気抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、乳剤面側の表面電気抵抗率は、2.5×107 Ωと極めて低く、静電気によるゴミ付着等も少なかった。
【0232】
また、サンプル4について、実施例1と同様にして写真性能、黒点、網点ムラの評価を行った写真性能、黒点についての結果を表10、11(後記)に示す。
【0233】
これらの結果から、黒点の数がさらに減少することがわかる。
また網点ムラについては全く問題がなかった。
【0234】
なお、実施例3、4において、実施例2と同様に、超硬調化剤I−65からI−75、I−77、I−57、I−48、I−27、I−21およびI−16の各化合物にかえるほかは同様にしてサンプルを作成し、同様の評価を行ったところ、その構成に応じサンプル3、4と同様の良好な結果が得られた。
【0235】
実施例5
(感光性ハロゲン化銀粒子Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5gおよび臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。この時に硝酸銀添加開始と同時に5分間かけてヘキサシアノ鉄(III) 酸塩とヘキサクロロイリジウム(III) 錯塩と1×10-5モル/Agモル添加する。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザイデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
【0236】
(有機脂肪酸銀を含む感光性乳剤Aの調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、充分撹拌した状態で1Nの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1Nのリン酸7.0mlを添加して充分撹拌した状態でN−ブロモこはく酸イミド0.13gを添加した。その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀粒子Aをベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加熱した状態で攪拌しながら添加した。さらに1N硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま撹拌した状態で1時間放置した。
【0237】
この水系分散物をろ過し、過剰な塩類を除いた。得られた湿った分散物にポリスチレン−ブタジエンラテックスJSR#1500(日本合成ゴム(株))をベヘン酸銀1g当りポリマー固形分が5gになるように加え、超音波分散機によって、再分散を行った。
【0238】
(塗布サンプルの作成)
バック面側の塗布
以下の組成の水系塗布液をポリビニルアルコールが5g/m2になるように実施例1と同じ支持体上に塗布した。
【0239】
(バック層)
ポリビニルアルコール 6.0g
水 100ml
硼酸 0.2g
染料S−1 0.05g
【0240】
上記において用いた化合物は以下に示すとおりである。
【0241】
【化37】
【0242】
さらに、バック層上に次のバックオーバーコート層を塗布した。
(バックオーバーコート層:導電層)
ヒドロキシエチルセルロース 38mg/m2
SnO2 /Sb(9/1重量比、平均粒径0.25μm ) 210mg/m2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5mg/m2
【0243】
上記のバック面を塗布した支持体の反対側の面に感光層と表面保護層とを同時重層塗布した。
【0244】
感光層面側塗布
感光層:以下の組成の液(水性塗布液)を塗布銀量が2.0g/m2になるように塗布した。
感光性乳剤A73g
増感色素−1(0.05%メタノール溶液) 2ml
カブリ防止剤−1(0.01%メタノール溶液) 3ml
カブリ防止剤−2(1.5%メタノール溶液) 8ml
カブリ防止剤−3(2.4%DMF溶液) 5ml
フタラジンと現像剤−1の混合水分散物(固形分28wt% ) 10g
ヒドラジン誘導体H−1(I−58:1%メタノール溶液) 2ml
【0245】
フタラジンと現像剤−1の混合水分散物は、次のようにして作成した。
【0246】
フタラジン5.0gと現像剤−1:18gに、分散剤としてデモールSN−B(花王(株)の商品名)を4.6gを加え、水72mlを加えて、ガラスビーズをメディアとしたサンドミル分散機で分散した。分散物の平均粒子径は0.3μmであった。
【0247】
表面保護層:以下の組成の液を湿潤厚さ100μm になるように塗布した。
水190ml
シリカ(平均粒子サイズ3.0μm) 0.2g
ポリビニルアルコール 8.0g
4−メチルフタル酸 0.72g
テトラクロロフタル酸 0.8g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2.0g
【0248】
上記において用いた化合物は以下に示すとおりである。
【0249】
【化38】
【0250】
【化39】
【0251】
このようにして塗布設層したのち、60℃で2分間乾燥し、熱現像感光材料のサンプル5を得た。
【0252】
得られたサンプル5のバック面の表面電気抵抗率を実施例1と同様にして測定したところ、表面電気抵抗率は、2.0×107 Ωと極めて小さく、静電気によるゴミ付着等のトラブルが少なくなった。
【0253】
さらに、サンプル5について、実施例1と同様にして写真性能、黒点、網点ムラの評価を行った。写真性能、黒点についての結果を表10、11に示す。
【0254】
これらの結果からわかるように、高いDmax を有し、黒点が少ない良好な性能を示す。
また、網点ムラについては全く問題がなかった。
【0255】
【表10】
【0256】
【表11】
【0257】
【発明の効果】
本発明によれば、写真性能が良好で、黒点の発生および画像ムラが防止される。従って、印刷用の熱現像感光材料に適したものとなる。
Claims (9)
- 支持体の一方の面に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤および超硬調化剤を有する熱現像感光材料において、前記超硬調化剤が、ヒドラジン誘導体であり、かつ、導電性金属酸化物を含むポリマー層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の有機銀塩を有する面と同じ面側にあることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の有機銀塩を有する面と反対面側にあることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記導電性金属酸化物を含むポリマー層が、支持体の少なくとも一方の面の最外層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光材料の少なくとも1層に、さらに含フッ素界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の粒子が、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルトおよび鉄から選ばれる金属錯体の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記金属錯体を2種以上含有することを特徴とする請求項6に記載の熱現像感光材料。
- 前記導電性金属酸化物が異種原子を含むものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
- 前記導電性金属酸化物を含むポリマー層の表面抵抗率は、25℃25%RHの雰囲気下で1012Ω以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
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