JP3674929B2 - 低温焼成基板用組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、IC、LSI等を実装するのに好適な低誘電率、低膨張、高強度の低温焼成基板の作製に用いることが可能な低温焼成基板用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ICやLSI等を実装する低誘電率、低膨張、高強度の低温焼成基板の作製に用いられる絶縁材料としては、誘電率4〜4.5のホウケイ酸ガラス粉末と、アルミナ粉末或は石英ガラス粉末とからなる低温焼成基板用組成物が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのような低温焼成基板用組成物は、焼成時にガラスと、アルミナや石英ガラスとの界面で十分な反応が起こらないため、十分に機械的強度の高い基板を得ることが難しいという問題を有している。
【0004】
本発明の目的は、十分な機械的強度を有し、半導体素子を実装する低温焼成基板を作製するのに好適な低温焼成基板用組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、種々の研究を行った結果、アルミナ粉末や石英ガラス粉末の代わりに結晶化ガラス粉末を使用することにより、上記目的を達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0006】
即ち、本発明の低温焼成基板用組成物は、ホウケイ酸ガラス粉末30〜80重量部と、結晶化ガラス粉末70〜20重量部とからなり、結晶化ガラス粉末が重量%でSiO 2 5〜60%、B 2 3 1〜20%、Al 2 3 30〜90%、K 2 O 0〜3%の組成を有することを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明において、フィラーとして結晶化ガラス粉末を使用する理由は、粉末自体の強度が高く、しかもマトリックス相として非晶質部分を含むためにホウケイ酸ガラスとの馴染みがよく、焼成時に両者の界面で十分に反応が起こるためである。
【0008】
なお結晶化ガラス粉末は、非晶質部分の含有量が0.1重量%未満になるとホウケイ酸ガラスとの馴染みが悪くなって十分な反応が起こらなくなり、一方20重量%を超えるとフィラーとしての機械的強度が弱くなる。従って非晶質部分の含有量は0.1〜20重量%であることが好ましい。また結晶化ガラス粉末は、重量%でSiO2 5〜60%、B23 1〜20%、Al23 30〜90%、K2 O0〜3%の組成を有するものが低誘電率、低膨張、且つ、高強度であり、特に望ましい。なおこのような高アルミナ含有の結晶化ガラスは、例えば次のようにして作製することができる。まず、アルミナ粉末とホウケイ酸ガラス粉末とを湿式で粉砕・混合し、スプレードライヤーで造粒する。これを1600〜2000℃の炎の中に定量供給することにより、高アルミナ含有の結晶化ガラス粉末を得ることができる。
【0009】
ホウケイ酸ガラス粉末としては、誘電率が4〜4.5程度の低誘電率のもの、具体的には重量%でSiO2 60〜90%、B23 10〜25%、Al23 0〜5%、K2 O0〜3%の組成を有するものを使用することができる。
【0010】
また本発明において、ホウケイ酸ガラス粉末と結晶化ガラス粉末との割合は、ホウケイ酸ガラス粉末30〜80重量部、結晶化ガラス粉末70〜20重量部である。両者の割合をこのように限定した理由は、ホウケイ酸ガラス粉末が30重量部より少ない場合(即ち、結晶化ガラス粉末が70重量部より多い場合)は得られる焼結体が緻密化しないために基板強度が低下し、またホウケイ酸ガラス粉末が80重量部より多い場合(即ち、結晶化ガラス粉末が20重量部より少ない場合)も焼結体のガラス成分が多くなるために十分な基板強度が得られなくなるためである。
【0011】
次に、本発明の低温焼成基板用組成物を用いて、低温焼成基板を製造する方法を述べる。
【0012】
まず、ホウケイ酸ガラス粉末と結晶化ガラス粉末を所定の割合で秤取し、次いでこれらの粉末をバインダー、溶剤とともに混練してスラリー状にする。続いて得られたスラリーを、ドクターブレード法を用いてグリーンシートに成形する。その後、このグリーンシートを必要厚みの枚数重ね、850〜1000℃で焼成することにより、低温焼成基板を得ることができる。
【0013】
【実施例】
(実施例1)
まず重量百分率でSiO2 78.0%、B23 20.0%、K2 O2.0%の組成を有するホウケイ酸ガラス粉末(平均粒径3μm)を用意した。
【0014】
またこのホウケイ酸ガラス粉末とアルミナ粉末(平均粒径2μm)とを重量比で59:41の割合で混合し、さらに純水を加えてスラリー状にした後、流動攪拌ミルにて粉砕混合した。続いてこのスラリーをスプレードライヤーで造粒乾燥させた後、噴霧溶融法を用いて2000℃の炎の中に供給して熱処理することにより、重量百分率でSiO2 46.0%、B23 11.8%、Al23 41.0%、K2 O1.2%の組成を有し、非晶質部分を10重量%含む結晶化ガラス粉末(平均粒径3μm)を得た。
【0015】
次にホウケイ酸ガラス粉末と結晶化ガラス粉末とを重量比で70:30の割合で混合し、試料を得た。
【0016】
このようにして得られた試料について、焼成温度、抗折強度、誘電率、熱膨張係数を評価したところ、焼成温度が900℃、抗折強度が1800kg/cm2 、誘電率が4.5、熱膨張係数が39×10-7/℃(30〜380℃)であった。
【0017】
なお抗折強度、誘電率及び熱膨張係数は、次のようにして測定した。まず試料を幅15mm、長さ50mm、厚み1mmの短冊状試験体、直径40mm、厚み1mmの円板状試験体、直径5mm、及び長さ50mmの丸棒状試験体にプレス成形した後、900℃で10分間焼成した。続いて短冊状試験体を用いて万能試験機にて抗折強度を、円板状試験体を用いて誘電率を、丸棒状試験体を用いて押棒式熱膨張測定機にて熱膨張係数をそれぞれ測定した。
【0018】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ホウケイ酸ガラス粉末及び結晶化ガラス粉末を用意した。次いで両者を重量比で50:50の割合で混合し、試料を得た。
【0019】
このようにして得られた試料について、実施例1と同様にして焼成温度、抗折強度、誘電率、熱膨張係数を評価したところ、焼成温度が1000℃、抗折強度が2000kg/cm2 、誘電率が4.9、熱膨張係数が44×10-7/℃(30〜380℃)であった。
【0020】
(実施例3)
実施例1と同様にして、ホウケイ酸ガラス粉末を用意した。
【0021】
また、ホウケイ酸ガラス粉末とアルミナ粉末の割合を重量比で30:70とし、他は実施例と同様の方法で製造することによって、重量百分率でSiO2 23.4%、B23 6.0%、Al23 70.0%、K2 O0.6%の組成を有し、非晶質部分を5重量%含む結晶化ガラス粉末(平均粒径3μm)を得た。
【0022】
次いでホウケイ酸ガラス粉末と結晶化ガラス粉末とを重量比で55:45の割合で混合し、試料を得た。
【0023】
このようにして得られた試料は、焼成温度が950℃、抗折強度が1900kg/cm2 、誘電率が5.2、熱膨張係数が46×10-7/℃(30〜380℃)であった。
【0024】
(比較例)
フィラーとして結晶化ガラス粉末の代わりにアルミナ粉末(平均粒径2μm)を用い、他は実施例1と同様にして試料を作製した。
【0025】
このようにして得られた試料について、焼成温度、抗折強度、誘電率、熱膨張係数を評価したところ、焼成温度が850℃、誘電率が4.5、熱膨張係数が42×10-7/℃(30〜380℃)であり、実施例と同等の値を示したものの、抗折強度が1600kg/cm2 であり、実施例1に比べて200kg/cm2 も低い値であった。
【0026】
【発明の効果】
本発明の低温焼成基板用組成物は、フィラーとして使用する結晶化ガラス粉末の機械的強度が高く、しかも焼成時にホウケイ酸ガラスと結晶化ガラスとの界面で十分な反応が起こるため、機械的強度の高い低温焼成基板を得ることができる。しかも低誘電率、低膨張の結晶化ガラス粉末を使用することにより、半導体素子の実装に好適な低温焼成基板を作製することが可能である。

Claims (2)

  1. ホウケイ酸ガラス粉末30〜80重量部と、結晶化ガラス粉末70〜20重量部とからなり、結晶化ガラス粉末が重量%でSiO 2 5〜60%、B 2 3 1〜20%、Al 2 3 30〜90%、K 2 O 0〜3%の組成を有することを特徴とする低温焼成基板用組成物。
  2. 結晶化ガラス粉末が、マトリックス相として非晶質部分を0.1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1の低温焼成基板用組成物。
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